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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057950
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】アルミニウム端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 11/12 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
H01R11/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164959
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591086843
【氏名又は名称】古河電工産業電線株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596091956
【氏名又は名称】冨士端子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】桜井 裕士
(72)【発明者】
【氏名】森 澄人
(72)【発明者】
【氏名】伊美 志峰
(72)【発明者】
【氏名】関谷 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 久弥
(72)【発明者】
【氏名】京田 猛
(57)【要約】
【課題】通電時における温度上昇量を抑制できるアルミニウム端子を提供する。
【解決手段】アルミニウム端子は、導線と接続する導線接続部と、対向する第1主面から第2主面まで貫通する貫通穴を有する板状接続部と、を有し、前記第1主面および前記第2主面の少なくとも一方の主面には、錐台状の複数の凸部が設けられ、前記複数の凸部の高さは、30μm以上600μm以下であり、前記複数の凸部における先端部の表面粗さは、3.0μm以上70.0μm以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線と接続する導線接続部と、
対向する第1主面から第2主面まで貫通する貫通穴を有する板状接続部と、
を有し、
前記第1主面および前記第2主面の少なくとも一方の主面には、錐台状の複数の凸部が設けられ、
前記複数の凸部の高さは、30μm以上600μm以下であり、
前記複数の凸部における先端部の表面粗さは、3.0μm以上70.0μm以下である、
アルミニウム端子。
【請求項2】
前記複数の凸部を備える前記主面の面積に対する前記複数の凸部の先端部表面の合計面積の比は、0.100以上0.800以下である、請求項1に記載のアルミニウム端子。
【請求項3】
前記複数の凸部を構成する各々の凸部の先端部表面の面積は、0.080mm以上0.500mm以下である、請求項1に記載のアルミニウム端子。
【請求項4】
前記主面における前記複数の凸部の存在密度は、0.400個/mm以上4.000個/mm以下である、請求項1に記載のアルミニウム端子。
【請求項5】
少なくとも前記複数の凸部の先端部表面を被覆するSnめっき層をさらに有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のアルミニウム端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アルミニウム端子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電線・ケーブル(以下、電線・ケーブルを単にケーブルという。)の導体を配電盤やキュービクル等の内部に設置された配線用遮断器(ブレーカ)の端子取り付け部や端子台の端子取り付け部等(以下、まとめて端子取り付け部という。)に接続する場合には、まず、端子を導体に取り付ける。その際、端子の管状の導体接続部にケーブルの導体を差し込み、圧縮端子の場合は導体ごと圧縮筒部全体を覆うようにかしめ、圧着端子の場合は導体ごと圧着筒部を局部的にかしめて取り付ける。
【0003】
そして、ケーブルの導体が取り付けられた端子の板状接続部を各端子取り付け部に締め付けるなどしてそれぞれ接続する。
【0004】
一方、現在、配電用に使用されているケーブルの導体には銅が広く使用されているが、作業性の向上や作業者の負担の軽減等を図るため、銅より軽いアルミニウムが用いられることがある。すなわち、これまで広く用いられてきた銅導体ケーブルがアルミ導体ケーブルに置き換える場合が増えている。
【0005】
そして、アルミ導体ケーブルには、銅製の端子ではなく、導体と端子の熱膨張係数を同じにするためにアルミニウム製のものが使用される。
【0006】
なお、本明細書で、銅と言う場合には純銅だけでなく銅合金も含まれ、アルミニウムと言う場合には純アルミニウムだけでなくアルミニウム合金も含まれる。また、本明細書では、導体が銅又は銅合金の電線・ケーブルを銅導体ケーブルといい、導体がアルミニウム又はアルミニウム合金の電線・ケーブルをアルミ導体ケーブルという。
【0007】
ここで、特許文献1には、導電性材料から形成され、端子台の端子取り付け部との接触面に複数個のスパイク状突起部を設けた電線接続用の圧着端子が記載されている。特許文献1では、端子取り付け部と接触する表面に、複数個のスパイク状突起部を設けることで、圧着端子と端子取り付け部との接続強度を高めている。
【0008】
しかしながら、特許文献1では、端子取り付け部との接続後に長時間に亘って通電する使用状況で圧着端子が端子取り付け部との間で低い接触抵抗を維持できるかどうか、さらには、このような使用状況で圧着端子の発熱が抑制できるかどうかについては、何ら検討されておらず、さらには言及されていないため不明である。そのため、特許文献1の圧着端子や特許文献1の圧着端子構造を適用したアルミニウム端子について、通電中に生じる端子の熱膨張による端子と端子取り付け部との機械的なずれや端子の応力緩和などが生じ、端子の板状接続部の接触面と端子取り付け部との間の接触抵抗が増大し、その結果、発熱、あるいは最悪の場合には発火事故を招く恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実全昭61-169967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示の目的は、通電時における温度上昇量を抑制できるアルミニウム端子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1] 導線と接続する導線接続部と、対向する第1主面から第2主面まで貫通する貫通穴を有する板状接続部と、を有し、前記第1主面および前記第2主面の少なくとも一方の主面には、錐台状の複数の凸部が設けられ、前記複数の凸部の高さは、30μm以上600μm以下であり、前記複数の凸部における先端部の表面粗さは、3.0μm以上70.0μm以下である、アルミニウム端子。
[2] 前記複数の凸部を備える前記主面の面積に対する前記複数の凸部の先端部表面の合計面積の比は、0.100以上0.800以下である、上記[1]に記載のアルミニウム端子。
[3] 前記複数の凸部を構成する各々の凸部の先端部表面の面積は、0.080mm以上0.500mm以下である、上記[1]または[2]に記載のアルミニウム端子。
[4] 前記主面における前記複数の凸部の存在密度は、0.400個/mm以上4.000個/mm以下である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載のアルミニウム端子。
[5] 少なくとも前記複数の凸部の先端部表面を被覆するSnめっき層をさらに有する、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のアルミニウム端子。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、通電時における温度上昇量を抑制できるアルミニウム端子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態のアルミニウム端子の要部構成の一例を示す斜視図である。
図2図2は、図1のアルミニウム端子を構成する板状接続部を示す拡大斜視図である。
図3図3は、図1のアルミニウム系端子を構成する凸部を示す側面図である。
図4図4は、実施形態のアルミニウム端子と電線とが圧着された状態の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態に基づき詳細に説明する。
【0015】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、板状接続部の主面に所定形状を有する凸部を複数設けることによって、複数の凸部を接触面として板状接続部を端子取り付け部に接続しても、通電時におけるアルミニウム端子の温度上昇量を抑制できることを見出し、かかる知見に基づき本開示を完成させるに至った。
【0016】
実施形態のアルミニウム端子は、導線と接続する導線接続部と、対向する第1主面から第2主面まで貫通する貫通穴を有する板状接続部と、を有し、第1主面および第2主面の少なくとも一方の主面には、錐台状の複数の凸部が設けられ、複数の凸部の高さは、30μm以上600μm以下であり、複数の凸部における先端部の表面粗さは、3.0μm以上70.0μm以下である。
【0017】
図1は、実施形態のアルミニウム端子の要部構成の一例を示す斜視図である。図2は、図1のアルミニウム端子を構成する板状接続部を示す拡大斜視図である。図3は、図1のアルミニウム系端子を構成する凸部を示す側面図である。図4は、実施形態のアルミニウム端子と電線とが圧着された状態の一例を示す斜視図である。
【0018】
図1に示すように、アルミニウム端子1は、導線接続部10と板状接続部20とを有する圧着端子である。アルミニウム端子1は、純アルミニウムおよびアルミニウム合金を含むアルミニウム系材料から形成される。例えば、アルミニウム端子1は、A1070から形成される。
【0019】
アルミニウム端子1を構成する管状の導線接続部10は、図4に示すように、導線51と接続する。導線51は、例えば図4に示すように、少なくとも1つ以上の素線51aから構成される。導線51は、図4に示すような複数の素線51aを撚り合わせた撚線でもよいし、複数の素線51aを束ねた束線でもよいし、1本の素線51aでもよい。導線51および素線51aは、例えば、純アルミニウムおよびアルミニウム合金を含むアルミニウム系材料、または純銅および銅合金を含む銅系材料から形成される。
【0020】
また、導線51の外周には、絶縁被覆部52が設けられてもよく、絶縁被覆部52の外周には、シース53が設けられてもよい。
【0021】
図4では、導線51、絶縁被覆部52およびシース53を備える電線50の一端側において、導線51の外周を覆う絶縁被覆部52と絶縁被覆部52の外周を覆うシース53とが電線50から剥ぎ取られて、導線51が露出している。
【0022】
図4に示すように、アルミニウム端子1の一端側には、電線50の一端側で露出している導線51を挿入する管状の導線接続部10が設けられている。以下、圧着接続の場合を例に説明するが、圧縮接続の場合やボルトを締め付けて接続するなど、かしめ方法や取り付け方法が異なるだけで、他は同様である。導線51がアルミニウム端子1の導線接続部10に挿入している状態で、アルミニウム端子1の導線接続部10がかしめられると、圧着部11が導線接続部10に形成される。導線接続部10は、圧着部11を介して導線51に圧着され、導線51と電気的に接続される。圧着部11では、電線50の導線51がアルミニウム端子1の導線接続部10に圧着されている。
【0023】
ここでは、導線接続部10の板状接続部20側が密閉されているクローズ型の管状形状である例について示しているが、導線接続部10が導線51に圧着して電気的に接続されるのであれば、導線接続部10の形状は限定されるものではない。導線接続部10は、例えば板状接続部20側が開放されているオープン型の管状形状であってもよい。
【0024】
図1および図4に示すように、アルミニウム端子1の他端側には、板状接続部20が設けられる。板状接続部20は、いわゆる羽子板部である。板状接続部20は、互いに対向する第1主面21aから第2主面21bまで貫通する貫通穴22を備える。板状接続部20の貫通穴22にボルトなどの締結部材(不図示)を挿通して、アルミニウム端子1の板状接続部20を端子取り付け部(不図示)に機械的かつ電気的に接続させる。
【0025】
ここでは、矩形状の板状接続部20を図示しているが、板状接続部20の形状は、特に限定されるものではなく、端子取り付け部の形状に応じて適宜設定してもよい。例えば、板状接続部20は円状などでもよい。また、貫通穴22に円柱状の締結部材を挿通することから、貫通穴22は円形状であることが好ましい。
【0026】
図2~3に示すように、板状接続部20において、第1主面21aおよび第2主面21bの少なくとも一方の主面(以下、単に主面ともいう)の表面には、錐台状の複数の凸部30が設けられている。ここでは、複数の凸部30が第2主面21bのみ(片面のみ)に設けられる板状接続部20を図示しているが、複数の凸部30は第1主面21aおよび第2主面21bに(両面に)設けられてもよい。
【0027】
図3に示すように、複数の凸部30は、所定の高さhを有する錐台状であり、複数の凸部30における先端部の表面30aは所定の表面粗さを有する。このように、複数の凸部30の先端部形状については、巨視的には、尖形状や球状ではなく、所定の表面粗さを有する平面状であり、複数の凸部30の先端部の表面には、複数の微視的な凸形状部が設けられている。
【0028】
凸部30は、板状接続部20の第2主面21b上において基端部の表面30bを有する。また、板状接続部20が不図示の締結部材に接続された状態になると、凸部30の先端側の表面30aは端子取り付け部と機械的かつ電気的に接続される。
【0029】
複数の凸部30を備える主面(ここでは第2主面21b側)を不図示の端子取り付け部に機械的かつ電気的に接続させるため、板状接続部20の第2主面21b上にある複数の凸部30の先端部の表面30aと端子取り付け部の表面とを接触させた状態で加圧させる。複数の凸部30は所定の高さhを有することから、加圧時における端子取り付け部に対する凸部30の接圧は、凸部30がない第2主面21bを端子取り付け部に接触させて加圧させる場合に比べて大きい。複数の凸部30が大きい接圧で端子取り付け部に押しつけられると、所定の表面粗さを有する先端部の表面30aが端子取り付け部の表面に接触しながら、先端部の表面30aに存在する複数の微視的な凸形状部(不図示)がつぶれるように変形し、凸部30の先端部の表面30aが端子取り付け部の表面に密着する。そのため、凸部30の先端部の表面30aと端子取り付け部の表面との電気的な接触点が増え、接触面積が大きくなる。その結果、凸部30と端子取り付け部との接触抵抗が低くなり、通電時におけるアルミニウム端子1の温度上昇量を抑制できる。
【0030】
なお、凸部30の大きさに比べて、凸部30の先端部の表面30aに設けられる微視的な凸形状部は非常に小さい。
【0031】
凸部30の先端部の表面30aと端子取り付け部の表面との接触圧力を増やし、凸部30と端子取り付け部との間の電気抵抗を下げる観点から、板状接続部20の主面(ここでは第2主面21b)における複数の凸部30が設けられる部分は、端子取り付け部と接触する部分の少なくとも一部分であり、端子取り付け部と接触する全面であることが好ましい。
【0032】
不図示の端子取り付け部の表面は、純アルミニウムおよびアルミニウム合金を含むアルミニウム系材料、または純銅および銅合金を含む銅系材料から形成されることが好ましい。
【0033】
また、複数の凸部30の高さhについて、下限値は、30μm以上、好ましくは100μm以上であり、上限値は、600μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下である。複数の凸部30の高さhが30μm以上であると、上記のように加圧時における端子取り付け部に対する凸部30の接圧が十分に大きいことから、凸部30と端子取り付け部との接触抵抗を十分に低下できる。そのため、通電時におけるアルミニウム端子1の温度上昇量を抑制できる。また、複数の凸部30の高さhが600μm以下であると、後述する複数の凸部30の形成時に用いる金型が凸部30を含む板状接続部20から型離れする離型性(以下、板状接続部20に対する金型の離型性ともいう)が良好であり、所定の形状を有する複数の凸部30を容易に形成できる。そのため、通電時におけるアルミニウム端子1の温度上昇量を抑制できる。
【0034】
複数の凸部30の高さhは以下のようにして測定する。レーザー顕微鏡を用いて、第2主面21bと凸部30の中心近傍を含むように表面を観察する。観察領域に対し、凸部30上の最上点と第2主面21bの最下点の高さの差(Sz)を計算する。この測定を複数の異なる観察領域に対して行い、値を平均して複数の凸部30の高さhを得る。
【0035】
また、複数の凸部30における先端部の表面30aの表面粗さは、3.0μm以上70.0μm以下である。表面30aの表面粗さが上記範囲内であると、上記のように先端部の表面30aに存在する複数の微視的な凸形状部がつぶれるように変形することから、凸部30の先端部の表面30aと端子取り付け部の表面との接触面積を十分に大きくできる。そのため、通電時におけるアルミニウム端子1の温度上昇量を抑制できる。
【0036】
複数の凸部30における先端部の表面30aの表面粗さは以下のようにして測定する。まず、レーザー顕微鏡を用いて先端部の表面を観察する。観察領域に対し、極点高さの最上点、最下点をそれぞれ0%、10%と設定して、極点高さを算出する。観察領域が重ならないように、この測定を複数回行う。なお、凸部30の高さhと表面粗さを測定するときの観察領域は同一であってもよいが、その限りではない。そして、これら複数の極点高さの値を平均して、極点高さSxpを得る。極点高さSxpをもって、先端部の表面30aの表面粗さとする。
【0037】
また、複数の凸部30を備える主面(ここでは第2主面21b)の面積に対する複数の凸部30の先端部表面30aの合計面積の比(先端部の表面30aの合計面積/主面の面積)について、下限値は、好ましくは0.100以上、より好ましくは0.200以上であり、上限値は、好ましくは0.800以下、より好ましくは0.700以下である。上記比が0.100以上であると、凸部30と端子取り付け部との接触抵抗をさらに低下できるため、通電時におけるアルミニウム端子1の温度上昇量をさらに抑制できる。また、上記比が0.800以下であると、板状接続部20に対する金型の離型性をさらに向上できることから、上記比を満たす複数の凸部30をさらに容易に形成できる。そのため、通電時におけるアルミニウム端子1の温度上昇量をさらに抑制できる。
【0038】
また、複数の凸部30を構成する各々の凸部30の先端部表面30aの面積について、下限値は、好ましくは0.080mm以上、より好ましくは0.150mm以上であり、上限値は、好ましくは0.500mm以下、より好ましくは0.400mm以下である。各々の凸部30の先端部表面30aの面積が0.080mm以上であると、凸部30と端子取り付け部との接触抵抗をさらに低下できるため、通電時におけるアルミニウム端子1の温度上昇量をさらに抑制できる。また、各々の凸部30の先端部表面30aの面積が0.500mm以下であると、板状接続部20に対する金型の離型性をさらに向上できることから、所定の形状を有する複数の凸部30をさらに容易に形成できる。そのため、通電時におけるアルミニウム端子1の温度上昇量をさらに抑制できる。
【0039】
また、複数の凸部30については、基端部の表面30bの面積に比べて、先端部の表面30aの面積は小さいことが好ましい。基端部の表面30bよりも先端部の表面30aの面積が小さいと、板状接続部20に対する金型の離型性が良好であり、所定の形状を有する複数の凸部30をさらに容易に形成できる。そのため、通電時におけるアルミニウム端子1の温度上昇量をさらに抑制できる。
【0040】
また、錐台状の凸部30の形状は、図2~3に示すような円錐台状であることが好ましい。複数の凸部30が円錐台状であると、板状接続部20に対する金型の離型性が良好である。なお、複数の凸部30の全てが円錐台状である例を図示しているが、複数の凸部30の全てが同じ錐台形状でなくてもよく、例えば、一部の凸部30が角錐台状でもよい。
【0041】
また、複数の凸部30を備える主面(ここでは第2主面21b)における複数の凸部30の存在密度について、下限値は、好ましくは0.400個/mm以上、より好ましくは0.600個/mm以上であり、上限値は、好ましくは4.000個/mm以下、より好ましくは3.500個/mm以下である。上記凸部30の存在密度が0.400個/mm以上であると、凸部30と端子取り付け部との接触抵抗をさらに低下できるため、通電時におけるアルミニウム端子1の温度上昇量をさらに抑制できる。また、上記凸部30の存在密度が4.000個/mm以下であると、板状接続部20に対する金型の離型性をさらに向上できることから、上記存在密度を満たす複数の凸部30をさらに容易に形成できる。そのため、通電時におけるアルミニウム端子1の温度上昇量をさらに抑制できる。
【0042】
また、アルミニウム端子1は、少なくとも複数の凸部30の先端部表面30aを被覆するSnめっき層(不図示)をさらに有することが好ましい。Snめっき層が複数の凸部30の先端部表面30aに設けられると、凸部30と端子取り付け部との接触抵抗をさらに低下できるため、通電時におけるアルミニウム端子1の温度上昇量をさらに抑制できる。また、Snめっき層の形成を容易にする観点から、Snめっき層は、先端部表面30aを含む複数の凸部30の全面を被覆することが好ましく、凸部30を含む、凸部30を備える主面(ここでは第2主面21b)を被覆することがより好ましい。
【0043】
次に、アルミニウム端子1を構成する板状接続部20の形成方法の一例について説明する。
【0044】
一例として、鍛造によって導線接続部10と反対側の端部を金型に入れて圧縮し、板状部を形成する。続いて、錐台状の複数の凸部30を形成するための金型(以下、単に金型ともいう)を板状部の少なくとも一方の主面に押しつける。こうして、一方の主面(ここでは第2主面21b)に錐台状の複数の凸部30を備える板状接続部20を形成する。また、両方の主面(第1主面21aと第2主面21b)に複数の凸部30を形成する場合には、金型を板状部の両方の主面に押しつけてもよいし、2つの金型で板状部を両方の主面から挟んでもよい。
【0045】
また、他の例として、鍛造によって、板状部および複数の凸部30を形成するための金型に対して導線接続部10と反対側の端部を入れて圧縮することで、主面に複数の凸部30を備える板状接続部20を形成する。
【0046】
このように、金型を用いて複数の凸部30を形成するため、複数の凸部30を容易に大面積に形成できると共に、複数の凸部30の形状精度に優れている。
【0047】
なお、複数の凸部30の巨視的な形状が錐台状ではなく尖形状や球状である場合、錐台状の凸部30を形成するときに比べて、板状接続部20に対する金型の離型性が劣る。そのため、所定の形状を有する凸部30を形成することが容易ではない。
【0048】
また、アルミニウム端子1がSnめっき層を有する場合には、板状接続部20の表面をめっき処理することにより、Snめっき層が形成される。
【0049】
また、板状部または板状接続部20を打ち抜き加工することにより、貫通穴22が形成される。
【0050】
また、例えばアルミニウム系材料で構成される丸棒の中心部を鍛造で圧縮することにより、導線接続部10を形成できる。
【0051】
以上説明した実施形態によれば、板状接続部の主面に設けた所定形状を有する複数の凸部を接触面として、板状接続部を端子取り付け部に接続して通電しても、アルミニウム端子の温度上昇量を抑制することができる。そのため、通電を行っても、発熱することなく、安心かつ安全に使用することができる。
【0052】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本開示の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例0053】
次に、実施例および比較例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0054】
(実施例1~18)
表1に示す成分のアルミニウム系材料で構成される丸棒の中心部を鍛造で圧縮し、導線接続部を形成した。
【0055】
続いて、鍛造によって導線接続部と反対側の端部を金型に入れて圧縮し、板状部を形成した。続いて、板状部を打ち抜き加工して、貫通穴を形成した。続いて、表1に示す各値になるように、板状部の一方の主面に対して、錐台状の複数の凸部を形成するための金型を押しつけた。こうして、一方の主面に錐台状の複数の凸部を備える板状接続部を形成した。形成した複数の凸部について、基端部の面積に比べて、先端部の面積は小さかった。
【0056】
こうして、アルミニウム端子を製造した。
【0057】
(比較例1~2)
錐台状の複数の凸部を形成するための金型を板状部の表面に対して押しつけず、板状部の一方の主面の表面粗さが表1に示す各値になるように板状部の一方の主面を粗したこと以外は上記実施例と同様にして、板状接続部を形成した。すなわち、比較例1~2では、板状接続部の主面には、錐台状の複数の凸部が設けられていない。また、比較例1~2について、表1に示す表面粗さは、複数の凸部における先端部の表面粗さではなく、板状接続部の主面の表面粗さである。
【0058】
[測定および評価]
上記実施例および比較例で得られたアルミニウム端子について、下記の測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0059】
[1] 複数の凸部の高さ
レーザー顕微鏡を用いて、複数の凸部を備える一方の主面と凸部の中心近傍を含むように表面を観察した。貫通孔を囲うように観察領域(2.1mm×2.7mm)を6か所設定し、観察領域に対し、凸部上の最上点と上記主面の最下点の高さの差(Sz)を計算し、これら複数の値を平均して複数の凸部の高さhを得た。
【0060】
[2] 複数の凸部における先端部表面の表面粗さ
レーザー顕微鏡を用いて複数の凸部における先端部の表面を観察した。貫通孔を囲うように観察領域(2.1mm×2.7mm)を6か所設定し、観察領域に対し、極点高さの最上点、最下点をそれぞれ0%、10%と設定して、極点高さを算出した。そして、これら複数の極点高さの値を平均して、先端部表面の表面粗さである極点高さSxpを得た。
【0061】
[3] 比(複数の凸部の先端部表面の合計面積/複数の凸部を備える主面の面積)、複数の凸部を構成する各々の凸部の先端部表面の面積、および複数の凸部を備える主面における複数の凸部の存在密度
複数の凸部を備える一方の主面において、貫通孔を囲うように観察領域(2.1mm×2.7mm)を6か所設定し、観察領域をレーザー顕微鏡で観察して得られた各値の複数データを平均することによって、各値を測定した。
【0062】
[4] ヒートサイクル試験
「JIS C 2810 屋内配線用電線コネクタ通則-分離不能形」に記載のヒートサイクル試験に準じ、評価を行った。導体断面積250mmのアルミ導体ケーブルを複数本用意し、これにアルミニウム端子を取り付けてから直列に接続した。なお、通常は端子羽子板部(板状接続部)同士を直接合わせてケーブルを直列に接続するが、発明者らは実使用状態を加味し、端子台の端子取付板を介してアルミニウム端子同士を直列に接続した。電流値はケーブル導体が105℃となるように設定し、これを1時間通電、1時間停電を1サイクルとして500サイクル実施した。試験中の各部の温度測定は、測定個所に熱電対を取り付けて測定した。
【0063】
ヒートサイクル試験の合否は、25サイクル時点の羽子板部(板状接続部)の温度上昇値が、ケーブル導体の温度上昇値以下であり、その後の羽子板部の各測定値は25サイクル目の測定値に8Kを加えた値以下であれば合格(○)となる。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示すように、実施例では、複数の凸部が所定範囲内の高さおよび所定範囲内の先端部の表面粗さを有していたため、板状接続部と端子取り付け部を接続させたヒートサイクル試験では、問題ないことを確認した。
【符号の説明】
【0066】
1 アルミニウム端子
10 導線接続部
11 圧着部
20 板状接続部
21a 第1主面
21b 第2主面
22 貫通穴
30 凸部
30a 凸部の先端部の表面
30b 凸部の基端部の表面
50 電線
51 導線
51a 素線
52 絶縁被覆部
53 シース
h 凸部の高さ
図1
図2
図3
図4