IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社前川製作所の特許一覧

<>
  • 特開-冷凍装置及び冷凍装置の制御方法 図1
  • 特開-冷凍装置及び冷凍装置の制御方法 図2
  • 特開-冷凍装置及び冷凍装置の制御方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005797
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】冷凍装置及び冷凍装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/10 20060101AFI20240110BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240110BHJP
   F25B 43/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F25B1/10 E
F25B1/00 311C
F25B1/00 396D
F25B1/00 304H
F25B43/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106173
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 剛
(57)【要約】
【課題】二段圧縮を行うように構成された冷凍装置において高段圧縮機に吸入される冷媒の過熱度を効率的に抑制する。
【解決手段】本開示の少なくとも一実施形態に係る冷凍装置は、冷媒を圧縮するための低段圧縮機と、低段圧縮機で圧縮された後の冷媒を圧縮するための高段圧縮機と、高段圧縮機で圧縮された後の冷媒を受け入れることができるフラッシュタンクと、低段圧縮機で圧縮されて前記低段圧縮機から排出された後の冷媒にフラッシュタンク内の冷媒液を供給するための液インジェクション流路と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮するための低段圧縮機と、
前記低段圧縮機で圧縮された後の前記冷媒を圧縮するための高段圧縮機と、
前記高段圧縮機で圧縮された後の前記冷媒を受け入れることができるフラッシュタンクと、
前記低段圧縮機で圧縮されて前記低段圧縮機から排出された後の前記冷媒に前記フラッシュタンク内の冷媒液を供給するための液インジェクション流路と、
を備える冷凍装置。
【請求項2】
前記液インジェクション流路は、前記フラッシュタンクの液相部と前記低段圧縮機で圧縮された後の前記冷媒が流通する流路とを連通するように設けられ、
前記液インジェクション流路の下流端は、前記流路に接続される、
請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
前記液インジェクション流路に設けられる第1膨張弁、
を備える、
請求項1又は2に記載の冷凍装置。
【請求項4】
前記高段圧縮機で圧縮された後の前記冷媒を冷却するための凝縮器と、
前記凝縮器と前記フラッシュタンクとを接続する流路に設けられる第2膨張弁と、
を備える、
請求項1又は2に記載の冷凍装置。
【請求項5】
前記低段圧縮機で圧縮された後の前記冷媒が流通する流路に設けられた気液分離器、
を備え、
前記液インジェクション流路は、前記フラッシュタンクの液相部と前記流路とを連通するように設けられ、
前記液インジェクション流路の下流端は、前記流路の内、前記低段圧縮機と前記気液分離器との間の流路に接続される、
請求項1又は2に記載の冷凍装置。
【請求項6】
前記低段圧縮機で圧縮された後の前記冷媒に前記フラッシュタンク内の冷媒ガスを供給するためのフラッシュガス流路、
を備える、
請求項1又は2に記載の冷凍装置。
【請求項7】
前記低段圧縮機で圧縮された後の前記冷媒が流通する流路に設けられた気液分離器、
を備え、
前記フラッシュガス流路は、前記フラッシュタンクの気相部と前記流路とを連通するように設けられ、
前記フラッシュガス流路の下流端は、前記流路の内、前記低段圧縮機と前記気液分離器との間の流路に接続される、
請求項6に記載の冷凍装置。
【請求項8】
前記冷媒は、CO冷媒である、
請求項1又は2に記載の冷凍装置。
【請求項9】
前記液インジェクション流路に設けられる第1膨張弁と、
前記高段圧縮機に吸入される前記冷媒の吸入温度を検出するための吸入温度センサと、
前記高段圧縮機に吸入される前記冷媒の吸入圧力を検出するための吸入圧力センサと、
前記第1膨張弁の開度を調節するための制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記吸入温度センサで検出された前記吸入温度と、前記吸入圧力センサで検出された前記吸入圧力とに基づいて、前記高段圧縮機に吸入される前記冷媒の吸入過熱度を算出し、算出された前記吸入過熱度が予め設定された目標値となるように前記第1膨張弁の開度を調節するように構成されている
請求項1又は2に記載の冷凍装置。
【請求項10】
冷凍装置の制御方法であって、
前記冷凍装置は、
冷媒を圧縮するための低段圧縮機と、
前記低段圧縮機で圧縮された後の前記冷媒を圧縮するための高段圧縮機と、
前記高段圧縮機で圧縮された後の前記冷媒を受け入れることができるフラッシュタンクと、
前記低段圧縮機で圧縮された後の前記冷媒に前記フラッシュタンク内の冷媒液を供給するための液インジェクション流路と、
前記液インジェクション流路に設けられる第1膨張弁と、
を備え、
前記高段圧縮機に吸入される前記冷媒の吸入温度を検出する吸入温度検出ステップと、
前記高段圧縮機に吸入される前記冷媒の吸入圧力を検出する吸入圧力検出ステップと、
検出された前記吸入温度と、検出された前記吸入圧力とに基づいて、前記高段圧縮機に吸入される前記冷媒の吸入過熱度を算出する吸入過熱度算出ステップと、
算出された前記吸入過熱度が予め設定された目標値となるように前記第1膨張弁の開度を調節する開度調節ステップと、
を備える冷凍装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍装置及び冷凍装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低段圧縮機と高段圧縮機とを備え、二段圧縮を行うように構成された冷凍装置が知られている。このような冷凍装置において、高段圧縮機の効率を上げるためには高段圧縮機に吸入される冷媒の過熱度を抑制する必要がある。そこで、高段圧縮機に吸入される冷媒の過熱度を抑制するために、低段圧縮機の吐出冷媒を冷却する中間冷却器を設けた構成が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009‐133585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような中間冷却器を設ける場合、設置場所及び放熱スペースの確保やコスト増といった課題が生じ、特に空冷式の場合は騒音の課題も生じる。また外気温度が高い場合は低段圧縮機の吐出冷媒を十分に冷却出来ない虞もある。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、二段圧縮を行うように構成された冷凍装置において、高段圧縮機に吸入される冷媒の過熱度を効率的に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る冷凍装置は、
冷媒を圧縮するための低段圧縮機と、
前記低段圧縮機で圧縮された後の前記冷媒を圧縮するための高段圧縮機と、
前記高段圧縮機で圧縮された後の前記冷媒を受け入れることができるフラッシュタンクと、
前記低段圧縮機で圧縮されて前記低段圧縮機から排出された後の前記冷媒に前記フラッシュタンク内の冷媒液を供給するための液インジェクション流路と、
を備える。
【0007】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係る冷凍装置の制御方法は、
冷凍装置の制御方法であって、
前記冷凍装置は、
冷媒を圧縮するための低段圧縮機と、
前記低段圧縮機で圧縮された後の前記冷媒を圧縮するための高段圧縮機と、
前記高段圧縮機で圧縮された後の前記冷媒を受け入れることができるフラッシュタンクと、
前記低段圧縮機で圧縮された後の前記冷媒に前記フラッシュタンク内の冷媒液を供給するための液インジェクション流路と、
前記液インジェクション流路に設けられる第1膨張弁と、
を備え、
前記高段圧縮機に吸入される前記冷媒の吸入温度を検出する吸入温度検出ステップと、
前記高段圧縮機に吸入される前記冷媒の吸入圧力を検出する吸入圧力検出ステップと、
検出された前記吸入温度と、検出された前記吸入圧力とに基づいて、前記高段圧縮機に吸入される前記冷媒の吸入過熱度を算出する吸入過熱度算出ステップと、
算出された前記吸入過熱度が予め設定された目標値となるように前記第1膨張弁の開度を調節する開度調節ステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、二段圧縮を行うように構成された冷凍装置において高段圧縮機に吸入される冷媒の過熱度を効率的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る冷凍装置の系統図である。
図2】CO冷媒を使用する一実施形態に係る冷凍装置のモリエル線図の一例である。
図3】第1膨張弁の開度の調節のために制御装置において実施される処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0011】
図1は、一実施形態に係る冷凍装置の系統図である。一実施形態に係る冷凍装置1は、例えばCO冷媒を使用する二段圧縮二段膨張式の冷凍装置である。一実施形態に係る冷凍装置1は、冷媒循環路30に、低段圧縮機11と、高段圧縮機12と、フラッシュタンク13とが設けられている。一実施形態に係る冷凍装置1では、冷媒循環路30に対して例えば2基の低段圧縮機11が並列に設けられている。一実施形態に係る冷凍装置1では、冷媒循環路30に対して例えば2基の高段圧縮機12が並列に設けられている。
【0012】
一実施形態に係る冷凍装置1は、低段圧縮機11の出口と高段圧縮機12の入口とを接続する冷媒流路31にアキュムレータ14が設けられている。
一実施形態に係る冷凍装置1は、高段圧縮機12の出口とフラッシュタンク13の入口とを接続する冷媒流路32にガスクーラとして作動する凝縮器15が設けられている。一実施形態に係る冷凍装置1は、冷媒循環路30に、フラッシュタンク13の液相部と例えば冷却負荷としての蒸発器16を経た冷媒とを熱交換するための熱交換器17が設けられている。
【0013】
一実施形態に係る冷凍装置1は、フラッシュタンク13の液相部と、低段圧縮機11の出口と高段圧縮機12の入口とを接続する冷媒流路31の内、低段圧縮機11の出口とアキュムレータ14とを接続する冷媒流路31aとを接続する液インジェクション流路35を備えている。
一実施形態に係る冷凍装置1は、フラッシュタンク13の気相部と、低段圧縮機11の出口とアキュムレータ14とを接続する冷媒流路31aとを接続するフラッシュガス流路36を備えている。
【0014】
一実施形態に係る冷凍装置1は、液インジェクション流路35に第1膨張弁41が設けられ、凝縮器15とフラッシュタンク13の入口とを接続する冷媒流路32bに第2膨張弁(高段膨張弁)42が設けられている。一実施形態に係る冷凍装置1は、フラッシュタンク13内の冷媒液を蒸発器16に供給するための冷媒流路34の内、熱交換器17と蒸発器16とを接続する冷媒流路34bに第3膨張弁(低段膨張弁)43が設けられている。一実施形態に係る冷凍装置1は、フラッシュガス流路36に第4膨張弁44が設けられている。
【0015】
一実施形態に係る冷凍装置1は、高段圧縮機12の出口と凝縮器15とを接続する冷媒流路32aに冷媒ガスと冷凍機油とを分離するための油分離器21が設けられている。一実施形態に係る冷凍装置1では、油分離器21で分離された冷凍機油は、不図示の油タンクを介して低段圧縮機11及び高段圧縮機12に戻されるように構成されている。
【0016】
一実施形態に係る冷凍装置1は、冷凍装置1の各部を制御するための制御装置50を備えている。制御装置50は、各種演算処理を実行するプロセッサ51と、プロセッサ51によって処理される各種データを非一時的または一時的に記憶するメモリ53とを備える。プロセッサ51は、CPU、GPU、MPU、DSP、これら以外の各種演算装置、又はこれらの組み合わせなどによって実現される。メモリ53は、ROM、RAM、フラシュメモリ、またはこれらの組み合わせなどによって実現される。
以下の説明では、制御装置50の制御内容について、主に第1膨張弁41の開度の調節に関して説明する。なお、制御装置50の制御内容については、後で詳述する。
一実施形態に係る冷凍装置1は、冷凍装置1の各部を制御するための各種のセンサを備えている。冷凍装置1の各部を制御するための各種のセンサには、例えば高段圧縮機12に吸入される冷媒の吸入温度Tiを検出するための吸入温度センサ55と、高段圧縮機12に吸入される冷媒の吸入圧力Piを検出するため吸入圧力センサ57とが含まれる。
【0017】
このように構成される一実施形態に係る冷凍装置1では、低段圧縮機11及び高段圧縮機12で圧縮された冷媒は、凝縮器15で冷却される。凝縮器15で冷却された冷媒は、第2膨張弁42を通って減圧された後、フラッシュタンク13に送られ気相と液相に分離される。
フラッシュタンク13内の液相部を形成する冷媒液は、フラッシュタンク13から出て、熱交換器17で蒸発器16から戻る冷媒と熱交換して該冷媒を加熱する。フラッシュタンク13から熱交換器17に送られた冷媒液は、熱交換器17を出て第3膨張弁43を経て減圧され、蒸発器16及び熱交換器17を経由して気化し、低段圧縮機11に供給される。
【0018】
一実施形態に係る冷凍装置1では、上述したように、低段圧縮機11で圧縮されて低段圧縮機11から排出された後の冷媒にフラッシュタンク13内の冷媒液を供給するための液インジェクション流路35を備えている。
高段圧縮機12の効率を上げるためには、高段圧縮機12に吸入される冷媒の過熱度を抑制する必要がある。そこで、高段圧縮機12に吸入される冷媒を冷却するための熱交換器を用いることが考えられる。しかし、このような熱交換器を設ける場合、設置場所の確保やコスト増といった課題が生じる。
発明者らが鋭意検討した結果、低段圧縮機11で圧縮されて低段圧縮機11から排出された後の冷媒にフラッシュタンク13内の冷媒液を供給することで、高段圧縮機12に吸入される冷媒の過熱度を効率的に抑制できることが判明した。
一実施形態に係る冷凍装置1によれば、高段圧縮機12に吸入される冷媒を冷却するための熱交換器を設ける設置場所や該熱交換器を設けるためのコストの負担がなく、また外気の温度条件に左右されず高段圧縮機12に吸入される冷媒の過熱度を効率的に抑制できる。これにより、高段圧縮機12の効率向上を低コストで実現できる。
【0019】
一実施形態に係る冷凍装置1では、液インジェクション流路35は、フラッシュタンク13の液相部と、低段圧縮機11で圧縮された後の冷媒が流通する流路である低段圧縮機11の出口と高段圧縮機12の入口とを接続する冷媒流路31と、を連通するように設けられるとよい。液インジェクション流路35の下流端35dは、上記冷媒流路31に接続されるとよい。
これにより、単純な構成により低段圧縮機11で圧縮された後の冷媒にフラッシュタンク13内の冷媒液を供給できる。
なお、液インジェクション流路35の上流端35uは、図1に示すようにフラッシュタンク13内の冷媒液を蒸発器16に供給するための冷媒流路34の内、フラッシュタンク13と熱交換器17とを接続する冷媒流路34aに接続されていてもよいし、フラッシュタンク13に直接接続されていてもよい。
【0020】
一実施形態に係る冷凍装置1では、液インジェクション流路35に設けられる第1膨張弁41を備えるとよい。
これにより、低段圧縮機11で圧縮された後の冷媒にフラッシュタンク13内の冷媒液を制御性良く供給できる。
【0021】
一実施形態に係る冷凍装置1では、凝縮器15とフラッシュタンク13とを接続する流路である冷媒流路32bに設けられる第2膨張弁42を備えるとよい。
これにより、高段圧縮機12の吐出圧力を調節できる。
また、一実施形態に係る冷凍装置1では、フラッシュタンク13の気相部と、低段圧縮機11の出口とアキュムレータ14とを接続する冷媒流路31aとを接続するフラッシュガス流路36に設けられる第4膨張弁44を備えるとよい。
第4膨張弁44によってフラッシュタンク13内の圧力を調節することができるので、低段圧縮機11で圧縮された後の冷媒に供給されるフラッシュタンク13内の冷媒液の供給が安定する。これにより、高段圧縮機12に供給される冷媒の過熱度を安定的に抑制できる。
【0022】
一実施形態に係る冷凍装置1では、低段圧縮機11で圧縮された後の冷媒が流通する流路である冷媒流路31に設けられた気液分離器としてのアキュムレータ14を備えているとよい。液インジェクション流路35は、フラッシュタンク13の液相部と上記冷媒流路31とを連通するように設けられているとよい。液インジェクション流路35の下流端35dは、上記冷媒流路31の内、低段圧縮機11とアキュムレータ14との間の冷媒流路31aに接続されるとよい。
これにより、フラッシュタンク内の冷媒液が液体のまま高段圧縮機に供給されることを防止できる。
【0023】
一実施形態に係る冷凍装置1では、低段圧縮機11で圧縮された後の冷媒にフラッシュタンク13内の気相部の冷媒ガスを供給するためのフラッシュガス流路36を備えていてもよい。
これにより、フラッシュタンク13内で発生した冷媒ガスを高段圧縮機12に戻すことができる。
【0024】
一実施形態に係る冷凍装置1では、フラッシュガス流路36は、フラッシュタンク13の気相部と上記冷媒流路31とを連通するように設けられているとよい。フラッシュガス流路36の下流端36dは、上記冷媒流路31の内、低段圧縮機11とアキュムレータ14との間の冷媒流路31aに接続されるとよい。
これにより、フラッシュガス流路36を流れる冷媒に冷媒液が含まれたとしても、冷媒液が液体のまま高段圧縮機12に供給されることを防止できる。
【0025】
一実施形態に係る冷凍装置1では、冷媒は、CO冷媒であるとよい。その理由について、以下で説明する。
図2は、CO冷媒を使用する一実施形態に係る冷凍装置1のモリエル線図の一例である。
CO冷媒では、図2に示したモリエル線図において、ある一定の圧力において比エンタルピが大きくなるほど、図2において複数の細い実線で示した等エントロピ線Eiの傾きは小さくなる。そのため、高段圧縮機12に吸入される冷媒の吸入圧力が同じであり、高段圧縮機12から吐出される冷媒の吐出圧力が同じであっても、高段圧縮機12に吸入される冷媒の比エンタルピと高段圧縮機12から吐出される冷媒の比エンタルピとの差は、高段圧縮機12に吸入される冷媒の比エンタルピが小さくなるほど小さくなる。
低段圧縮機11で圧縮された後の冷媒にフラッシュタンク13内の冷媒液を供給することで、高段圧縮機12に吸入される冷媒の吸入量が増えるが、上述したように高段圧縮機12に吸入される冷媒の比エンタルピと高段圧縮機12から吐出される冷媒の比エンタルピとの差が小さくなる。
発明者らが鋭意検討した結果、低段圧縮機11で圧縮された後の冷媒にフラッシュタンク13内の冷媒液を供給する場合と供給しない場合とでは、高段圧縮機12の消費動力にほとんど差がないことが判明した。
これにより、高段圧縮機12の消費動力の増加を抑制しつつ、高段圧縮機12に吸入される冷媒の過熱度を効率的に抑制できる。
【0026】
なお、図2において、n点はCOの臨界点であり、n点より左側のラインXは飽和液線であり、n点より右側のラインYは飽和蒸気線である。a点は低段圧縮機11の入口における冷媒の状態量であり、b点は低段圧縮機11の出口における冷媒の状態量である。c点は高段圧縮機12の入口における冷媒の状態量であり、d点は高段圧縮機12の出口における冷媒の状態量である。e点はガスクーラとしての凝縮器15の出口における冷媒の状態量であり、f点は第2膨張弁42出口の気液混合状態の冷媒の状態量である。g点はフラッシュタンク13の液相部の状態量であり、h点はフラッシュタンク13で気液分離された後の気相部の状態量である。i点はフラッシュタンク13から出て熱交換器17を通過した後の冷媒の状態量であり、j点は第3膨張弁43出口の冷媒の状態量であり、k点は蒸発器16出口の冷媒の状態量である。l点は第4膨張弁44出口の冷媒の状態量であり、m点は第1膨張弁41出口の冷媒の状態量である。
【0027】
一実施形態に係る冷凍装置1では、b点、すなわち低段圧縮機11とアキュムレータ14との間の冷媒流路31aにおいて、液インジェクション流路35及びフラッシュガス流路36が合流しているので、c点、すなわち高段圧縮機12の入口における冷媒の比エンタルピhは、b点より下がる。
なお、理解の便宜のため、図1中の同一の場所にも符号a~mを付している。
【0028】
(第1膨張弁41の開度の調節について)
上述したように、一実施形態に係る制御装置50は、冷凍装置1の各部を制御するための制御装置であり、第1膨張弁41の開度の調節も行う。制御装置50は、吸入温度センサ55で検出された吸入温度と、吸入圧力センサ57で検出された吸入圧力とに基づいて、高段圧縮機12に吸入される冷媒の吸入過熱度を算出し、算出された吸入過熱度が予め設定された目標値となるように第1膨張弁41の開度を調節するように構成されている。
これにより、後述するように、高段圧縮機12に吸入される冷媒の吸入過熱度を安定して抑制できる。
【0029】
図3は、第1膨張弁41の開度の調節のために制御装置50において実施される処理の流れを示すフローチャートである。図3のフローチャートに示す処理を実行するためのプログラムは、プロセッサ51がメモリ53から読み込んで実行する。
【0030】
一実施形態に係る冷凍装置1の制御方法は、吸入温度検出ステップS10と、吸入圧力検出ステップS20と、吸入過熱度算出ステップS30と、開度調節ステップS40と、を備える。
【0031】
吸入温度検出ステップS10は、高段圧縮機12に吸入される冷媒の吸入温度Tiを検出するステップである。吸入温度検出ステップS10では、プロセッサ51は、吸入温度センサ55で検出した冷媒の吸入温度Tiを取得する。
吸入圧力検出ステップS20は、高段圧縮機12に吸入される冷媒の吸入圧力Piを検出するステップである。吸入圧力検出ステップS20では、プロセッサ51は、吸入圧力センサ57で検出した冷媒の吸入圧力Piを取得する。
【0032】
吸入過熱度算出ステップS30は、検出された吸入温度Tiと、検出された吸入圧力Piとに基づいて、高段圧縮機12に吸入される冷媒の吸入過熱度を算出するステップである。吸入過熱度算出ステップS30では、プロセッサ51は、吸入温度検出ステップS10で取得した冷媒の吸入温度Tiと、吸入圧力検出ステップS20で取得した冷媒の吸入圧力Piとに基づいて、高段圧縮機12に吸入される冷媒の吸入過熱度を算出する。
【0033】
開度調節ステップS40は、算出された吸入過熱度が予め設定された目標値となるように第1膨張弁41の開度を調節するステップである。開度調節ステップS40では、プロセッサ51は、吸入過熱度算出ステップS30で算出した冷媒の吸入過熱度が、予め設定されていてメモリ53に記憶されている吸入過熱度の目標値となるように第1膨張弁41の開度を算出し、算出した開度となるように第1膨張弁41の不図示のアクチュエータを駆動するための制御信号を出力する。
第1膨張弁41では、当該制御信号を受信することで不図示のアクチュエータが第1膨張弁41における開度を調節する。これにより、高段圧縮機12に吸入される冷媒の吸入過熱度が吸入過熱度の目標値となるように第1膨張弁41における開度が調節される。
一実施形態に係る冷凍装置1の制御方法によれば、高段圧縮機12に吸入される冷媒の吸入過熱度を安定して抑制できる。これにより、高段圧縮機12の効率を安定して向上できる。
【0034】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0035】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る冷凍装置1は、冷媒を圧縮するための低段圧縮機11と、低段圧縮機11で圧縮された後の冷媒を圧縮するための高段圧縮機12と、高段圧縮機12で圧縮された後の冷媒を受け入れることができるフラッシュタンク13と、低段圧縮機11で圧縮されて低段圧縮機11から排出された後の冷媒にフラッシュタンク13内の冷媒液を供給するための液インジェクション流路35と、を備える。
【0036】
上記(1)の構成によれば、高段圧縮機12に吸入される冷媒を冷却するための熱交換器を設ける設置場所や該熱交換器を設けるためのコストの負担がなく、高段圧縮機12に吸入される冷媒の過熱度を効率的に抑制できる。これにより、高段圧縮機12の効率向上を低コストで実現できる。
【0037】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、液インジェクション流路35は、フラッシュタンク13の液相部と低段圧縮機11で圧縮された後の冷媒が流通する流路(冷媒流路31)とを連通するように設けられるとよい。液インジェクション流路35の下流端35dは、上記流路(冷媒流路31)に接続されるとよい。
【0038】
上記(2)の構成によれば、単純な構成により低段圧縮機11で圧縮された後の冷媒にフラッシュタンク13内の冷媒液を供給できる。
【0039】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、液インジェクション流路35に設けられる第1膨張弁41を備えるとよい。
【0040】
上記(3)の構成によれば、低段圧縮機11で圧縮された後の冷媒にフラッシュタンク13内の冷媒液を安定的に供給できる。
【0041】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、高段圧縮機12で圧縮された後の冷媒を冷却するための凝縮器と、凝縮器15とフラッシュタンク13とを接続する流路(冷媒流路32b)に設けられる第2膨張弁42と、を備えるとよい。
【0042】
上記(4)の構成によれば、高段圧縮機12の吐出圧力を調節できる。
【0043】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、低段圧縮機11で圧縮された後の冷媒が流通する流路(冷媒流路31)に設けられた気液分離器(アキュムレータ14)を備えているとよい。液インジェクション流路35は、フラッシュタンク13の液相部と上記流路(冷媒流路31)とを連通するように設けられているとよい。液インジェクション流路35の下流端35dは、上記流路(冷媒流路31)の内、低段圧縮機11と気液分離器(アキュムレータ14)との間の流路(冷媒流路31a)に接続されるとよい。
【0044】
上記(5)の構成によれば、フラッシュタンク13内の冷媒液が液体のまま高段圧縮機12に供給されることを防止できる。
【0045】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、低段圧縮機11で圧縮された後の冷媒にフラッシュタンク13内の冷媒ガスを供給するためのフラッシュガス流路36を備えていてもよい。
【0046】
上記(6)の構成によれば、フラッシュタンク13内で発生した冷媒ガスを高段圧縮機12に戻すことができる。また、フラッシュタンク13内で発生した冷媒ガスによって高段圧縮機12に吸入される冷媒の過熱度を抑制できる。
【0047】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、低段圧縮機11で圧縮された後の冷媒が流通する流路(冷媒流路31)に設けられた気液分離器(アキュムレータ14)を備えているとよい。フラッシュガス流路36は、フラッシュタンク13の気相部と上記流路(冷媒流路31)とを連通するように設けられているとよい。フラッシュガス流路36の下流端36dは、上記流路(冷媒流路31)の内、低段圧縮機11と気液分離器(アキュムレータ14)との間の流路(冷媒流路31a)に接続されるとよい。
【0048】
上記(7)の構成によれば、フラッシュガス流路36を流れる冷媒に冷媒液が含まれたとしても、冷媒液が液体のまま高段圧縮機12に供給されることを防止できる。
【0049】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、冷媒は、CO冷媒であるとよい。
【0050】
上記(8)の構成によれば、高段圧縮機12の消費動力の増加を抑制しつつ、高段圧縮機12に吸入される冷媒の過熱度を効率的に抑制できる。
【0051】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかの構成において、液インジェクション流路35に設けられる第1膨張弁41と、高段圧縮機12に吸入される冷媒の吸入温度Tiを検出するための吸入温度センサ55と、高段圧縮機12に吸入される冷媒の吸入圧力Piを検出するための吸入圧力センサ57と、第1膨張弁41の開度を調節するための制御装置50と、を備えるとよい。制御装置50は、吸入温度センサ55で検出された吸入温度Tiと、吸入圧力センサ57で検出された吸入圧力Piとに基づいて、高段圧縮機12に吸入される冷媒の吸入過熱度を算出し、算出された吸入過熱度が予め設定された目標値となるように第1膨張弁41の開度を調節するように構成されているとよい。
【0052】
上記(9)の構成によれば、高段圧縮機12に吸入される冷媒の吸入過熱度を安定して抑制できる。
【0053】
(10)本開示の少なくとも一実施形態に係る冷凍装置1の制御方法は、冷凍装置1の制御方法である。冷凍装置1は、冷媒を圧縮するための低段圧縮機11と、低段圧縮機11で圧縮された後の冷媒を圧縮するための高段圧縮機12と、高段圧縮機12で圧縮された後の冷媒を受け入れることができるフラッシュタンク13と、低段圧縮機11で圧縮された後の冷媒にフラッシュタンク13内の冷媒液を供給するための液インジェクション流路35と、液インジェクション流路35に設けられる第1膨張弁41と、を備える。本開示の少なくとも一実施形態に係る冷凍装置1の制御方法は、高段圧縮機12に吸入される冷媒の吸入温度Tiを検出する吸入温度検出ステップS10と、高段圧縮機12に吸入される冷媒の吸入圧力Piを検出する吸入圧力検出ステップS20と、検出された吸入温度Tiと、検出された吸入圧力Piとに基づいて、高段圧縮機12に吸入される冷媒の吸入過熱度を算出する吸入過熱度算出ステップS30と、算出された吸入過熱度が予め設定された目標値となるように第1膨張弁41の開度を調節する開度調節ステップS40と、を備える。
【0054】
上記(10)の方法によれば、高段圧縮機12に吸入される冷媒の吸入過熱度を外気温度によらず安定して抑制できることにより、高段圧縮機12の効率を安定して向上できる。
【符号の説明】
【0055】
1 冷凍装置
11 低段圧縮機
12 高段圧縮機
13 フラッシュタンク
14 アキュムレータ
15 凝縮器
16 蒸発器
35 液インジェクション流路
36 フラッシュガス流路
41 第1膨張弁
42 第2膨張弁(高段膨張弁)
43 第3膨張弁(低段膨張弁)
44 第4膨張弁
50 制御装置
55 吸入温度センサ
57 吸入温度センサ
図1
図2
図3