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特開2024-579833-メチル-1-ブテン系重合体粒子及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057983
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】3-メチル-1-ブテン系重合体粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/14 20060101AFI20240418BHJP
   C08F 4/64 20060101ALI20240418BHJP
   C08F 4/654 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
C08F10/14
C08F4/64
C08F4/654
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165028
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】稲田 翼
(72)【発明者】
【氏名】村田 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 悠
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA02Q
4J100AA03Q
4J100AA04Q
4J100AA07Q
4J100AA15Q
4J100AA16Q
4J100AA17Q
4J100AA18P
4J100AA19Q
4J100AS15Q
4J100CA04
4J100DA24
4J100EA09
4J100FA09
4J100JA00
4J100JA01
4J128AA02
4J128AB02
4J128AC01
4J128AC05
4J128AC10
4J128AC15
4J128AC20
4J128AC28
4J128BA00A
4J128BA01B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC14B
4J128BC15B
4J128BC16B
4J128BC17B
4J128BC19B
4J128BC27B
4J128CA16A
4J128CA28A
4J128CB27A
4J128CB30A
4J128CB35A
4J128CB43A
4J128CB44A
4J128CB45A
4J128EB07
4J128EC01
4J128EC02
4J128FA02
4J128GA19
4J128GA24
4J128GB01
(57)【要約】
【課題】所定の粒径を有し、粒径分布が狭い3-メチル-1-ブテン系重合体粒子、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】累積体積50%の粒径(Dv50)が30~200μmであり、累積体積50%の粒径(Dv50)と累積個数50%の粒径(Dn50)の比(Dv50/Dn50)が2.00以下である、3-メチル-1-ブテン系重合体粒子。
周期表第4族遷移金属原子を有する化合物を担持させ、下記式(1)を満たす固体触媒を用いて配位重合を行う工程を有する、3-メチル-1-ブテン系重合体粒子の製造方法。
20≦Dv’50×Y^(1/3)≦150 (1)
(式(1)中、Dv’50は、前記固体触媒の累積体積50%の粒子径(μm)であり、Yは、製造された3-メチル-1-ブテン系重合体粒子量(g)を製造時に用いた前記固体触媒量(g)で除した値である触媒活性値(Y)である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
累積体積50%の粒径(Dv50)が30~200μmであり、累積体積50%の粒径(Dv50)と累積個数50%の粒径(Dn50)の比(Dv50/Dn50)が2.00以下である、3-メチル-1-ブテン系重合体粒子。
【請求項2】
示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される融点Tmが265.0~290.0℃である、請求項1に記載の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子。
【請求項3】
配位重合を行う工程を有する製造方法により製造される、請求項1又は2に記載の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子。
【請求項4】
周期表第4族遷移金属原子を有する化合物を担持させた固体触媒を用いて前記配位重合を行う、請求項3に記載の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子。
【請求項5】
前記固体触媒の累積体積50%の粒子径(Dv’50[μm])と、前記製造方法により製造された前記3-メチル-1-ブテン系重合体粒子量(g)を製造時に用いた前記固体触媒量(g)で除した値である触媒活性値(Y)が、下記式(1)を満たす、請求項4に記載の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子。
20≦Dv’50×Y^(1/3)≦150 (1)
【請求項6】
前記固体触媒の累積体積50%の粒径(Dv’50)が、2.5~30μmである、請求項4又は5に記載の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子。
【請求項7】
前記触媒活性値(Y)が100以上である、請求項5又は6に記載の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子。
【請求項8】
前記3-メチル-1-ブテン100質量部に対し、前記金属原子量が0.00150~0.01000質量部となるように前記固体触媒を添加して前記配位重合を行う、請求項4~7に記載の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子。
【請求項9】
周期表第4族遷移金属原子を有する化合物を担持させ、下記式(1)を満たす固体触媒を用いて配位重合を行う工程を有する、3-メチル-1-ブテン系重合体粒子の製造方法。
20≦Dv’50×Y^(1/3)≦150 (1)
(式(1)中、Dv’50は、前記固体触媒の累積体積50%の粒子径(μm)であり、Yは、製造された3-メチル-1-ブテン系重合体粒子量(g)を製造時に用いた前記固体触媒量(g)で除した値である触媒活性値(Y)である。)
【請求項10】
前記固体触媒の累積体積50%の粒径(Dv’50)が、2.5~30μmである、請求項9に記載の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3-メチル-1-ブテン系重合体粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3-メチル-1-ブテン系重合物は電気特性、熱的特性、耐薬品性等に優れており、これらの物性を活かして様々な分野への展開が期待されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、高分子量3メチルブテン-1重合体及びそのグラフト変性ポリマーが、粉体塗装材料として有効であることが記載されている。
また、特許文献2には、選択的焼結付加製造方法及びそれに使用される粉体に関する記載があり、粉体に含まれるポリオレフィンの一例として、3-メチル-1-ブテンのホモポリマー及びコポリマーが記載されている。
また、特許文献3には、レーザー焼結性粉体及びレーザー焼結性粉体より形成される成形体に関する記載があり、レーザー焼結性粉体に含まれるポリオレフィン系樹脂の構成単量体単位であるオレフィン類の一例として、3-メチル-1-ブテンが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60-206805号公報
【特許文献2】特表2018-531163号公報
【特許文献3】特開2009-40870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3に記載のように、3-メチル-1-ブテン系重合体を微粒子化することにより、粉体塗装材料や、粉体を焼結することにより造形する分野の材料、例えば3DプリンターのSLS方式により製造される成形体を形成する材料への展開が検討されている。
しかしながら、特許文献1においては、高分子量3メチルブテン-1重合体及びそのグラフト変性ポリマーにより形成される粉体(粒子)は、比較的粗大な粉体のみ記載されており、小粒径の粉体については記載がない。
また、特許文献2及び3においては、3-メチル-1-ブテン系重合体を用いた検討は具体的になされていない。
【0006】
一般的に、粒子が過度に小さい場合、粒子間の凝集が生じやすくなる。粒子間の凝集が生じ粒径が過度に大きくなった粒子や、粗大な粉体として製造された粒子は、粉体塗装用途として用いた場合、外観が不良となる傾向にある。また、そのような粒子を3DプリンターのSLS方式用途として用いた場合においても、外観が不良となる傾向にあり、また、所望の寸法を有する成形体を得られ難くなる。よって、粉体塗装用途や3DプリンターのSLS方式用途として用いられる粒子は、適切な粒径を有するものが望まれる。
また、粒径の分布が大きい粒子においても、上記と同様な問題があり、粒径の分布が狭いものが望まれる。
【0007】
そこで本発明は、所定の粒径を有し、粒径分布が狭い3-メチル-1-ブテン系重合体粒子、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは下記本発明を想到し、当該課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]累積体積50%の粒径(Dv50)が30~200μmであり、累積体積50%の粒径(Dv50)と累積個数50%の粒径(Dn50)の比(Dv50/Dn50)が2.00以下である、3-メチル-1-ブテン系重合体粒子。
[2]示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される融点Tmが265.0~290.0℃である、上記[1]に記載の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子。
[3]配位重合を行う工程を有する製造方法により製造される、上記[1]又は[2]に記載の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子。
[4]周期表第4族遷移金属原子を有する化合物を担持させた固体触媒を用いて前記配位重合を行う、上記[3]に記載の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子。
[5]前記固体触媒の累積体積50%の粒子径(Dv’50[μm])と、前記製造方法により製造された前記3-メチル-1-ブテン系重合体粒子量(g)を製造時に用いた前記固体触媒量(g)で除した値である触媒活性値(Y)が、下記式(1)を満たす、上記[4]に記載の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子。
20≦Dv’50×Y^(1/3)≦150 (1)
[6]前記固体触媒の累積体積50%の粒径(Dv’50)が、2.5~30μmである、上記[4]又は[5]に記載の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子。
[7]前記触媒活性値(Y)が100以上である、上記[5]又は[6]に記載の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子。
[8]前記3-メチル-1-ブテン100質量部に対し、前記金属原子量が0.00150~0.01000質量部となるように前記固体触媒を添加して前記配位重合を行う、上記[4]~[7]に記載の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子。
[9]周期表第4族遷移金属原子を有する化合物を担持させ、下記式(1)を満たす固体触媒を用いて配位重合を行う工程を有する、3-メチル-1-ブテン系重合体粒子の製造方法。
20≦Dv’50×Y^(1/3)≦150 (1)
(式(1)中、Dv’50は、前記固体触媒の累積体積50%の粒子径(μm)であり、Yは、製造された3-メチル-1-ブテン系重合体粒子量(g)を製造時に用いた前記固体触媒量(g)で除した値である触媒活性値(Y)である。)
[10]前記固体触媒の累積体積50%の粒径(Dv’50)が、2.5~30μmである、上記[9]に記載の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所定の粒径を有し、粒径分布が狭い3-メチル-1-ブテン系重合体粒子、及びその製造方法を提供することができる。
本発明の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子は、粉体塗装材料や、3DプリンターのSLS方式により製造される成形体を形成する材料として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施態様の一例に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施態様は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下の記載に限定されない。
また本明細書において、実施態様の好ましい形態を示すが、個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、好ましい形態である。数値範囲で示した事項について、いくつかの数値範囲がある場合、それらの下限値と上限値とを選択的に組み合わせて好ましい形態とすることができる。
なお、本明細書において、「XX~YY」との数値範囲の記載がある場合、「XX以上YY以下」を意味する。
【0011】
<3-メチル-1-ブテン系重合体粒子>
本実施形態の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子(以下、重合体粒子とも言う。)は、累積体積50%の粒径(Dv50)が30~200μmであり、累積体積50%の粒径(以下、Dv50とも言う。)と累積個数50%の粒径(以下、Dn50とも言う。)の比(Dv50/Dn50)が2.00以下であることを特徴とする。
本明細書において、累積体積50%の粒径(Dv50)とは、JIS Z 8827-1:2008に準じて測定される、累積体積が50%となる粒径を意味し、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
本明細書において、累積個数50%の粒径(Dn50)とは、JIS Z 8827-1:2008に準じて測定される、累積個数が50%となる粒径を意味し、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
また、Dv50とDn50との比(Dv50/Dn50)は、粒径分布の指標であり、この比が大きいほど粒径分布が広いことを意味する。
【0012】
本実施形態の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子の累積体積50%の粒径(Dv50)は、30~200μmである。3-メチル-1-ブテン系重合体粒子のDv50が、上記範囲内であると、粒子の凝集を抑制することができ、また、粉体塗装用途に用いた場合には、良好な外観を有する塗膜を得ることができ、3DプリンターのSLS方式用途として用いた場合には、良好な外観を有し、かつ所望の寸法を有する成形体を得ることができる。また、生産性も良好である。
粒子の凝集を抑制し、粉体塗装用途や3DプリンターのSLS方式用途としてより好適な3-メチル-1-ブテン系重合体粒子を得る観点、及び生産性の観点から、3-メチル-1-ブテン系重合体粒子のDv50は、好ましくは35~190μm、より好ましくは40~185μm、さらに好ましくは43~180μmである。
なお、3-メチル-1-ブテンを重合する際に使用する固体触媒の累積体積50%の粒径(以下、Dv’50とも言う。)と、後述の触媒活性値(Y)を制御することにより、所定の粒径を有する3-メチル-1-ブテン系重合体粒子を得ることができる。
【0013】
本実施形態の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子の累積体積50%の粒径(Dv50)と累積個数50%の粒径(Dn50)の比(Dv50/Dn50)は、2.0以下である。3-メチル-1-ブテン系重合体粒子のDv50/Dn50が、上記範囲内であると、粉体塗装用途に用いた場合には、良好な外観を有する塗膜を得ることができ、3DプリンターのSLS方式用途として用いた場合には、良好な外観を有し、かつ所望の寸法を有する成形体を得ることができる。
粉体塗装用途や、3DプリンターのSLS方式用途としてより好適な3-メチル-1-ブテン系重合体粒子を得る観点から、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.3以下である。
なお、後述する周期表第4族遷移金属原子を有する化合物を担持させた固体触媒を用いて前記配位重合を行い、重合体粒子を製造することで、狭い粒径分布を有する3-メチル-1-ブテン系重合体粒子を得ることができる。
【0014】
本実施形態の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子の示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される融点Tmは、3-メチル-1-ブテン系重合体粒子を用いた塗膜や成形体(例えば、粉体塗装により形成された塗膜や、3DプリンターのSLS方式により製造される成形体等)の耐熱性向上の観点から、好ましくは265.0℃以上、より好ましくは270.0℃以上、さらに好ましくは275.0℃以上であり、成型時の熱安定性の観点から、好ましくは290.0℃以下、より好ましくは289.0℃以下、さらに好ましくは288.0℃以下である。すなわち、3-メチル-1-ブテン系重合体粒子の融点Tmは、好ましくは265.0~290.0℃、より好ましくは270.0~289.0℃、さらに好ましくは275.0~288.0である。
なお、後述するα-オレフィン等をコモノマーとし、α-オレフィンの種類及び含有量を調節して3-メチル-1-ブテンと共重合を行い、重合体粒子を製造することで、所望の融点を有する3-メチル-1-ブテン系重合体粒子を得ることができる。
なお、3-メチル-1-ブテン系重合体粒子の示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される融点Tmとは、示差走査熱量測定器を用い、試験片を窒素流量下(100mL/分)で30℃から320℃まで10℃/分で昇温させ、320℃で5分保持後、-70℃まで10℃/分で降温させた後、-70℃で5分保持後320℃まで10℃/分で昇温させた際のピーク温度を意味し、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
【0015】
[3-メチル-1-ブテン系重合体]
3-メチル-1-ブテン系重合体は、3-メチル-1-ブテン単独重合体であってもよく、3-メチル-1-ブテンと不飽和炭化水素との共重合体であってもよい。上記不飽和炭化水素は、例えば、α-オレフィンが挙げられ、共重合性がよい観点から、好ましくは炭素数2~20のα-オレフィンである。
塗膜や成形体の機械特性(適度な強度と柔軟性、及び耐衝撃性)を好適に発揮させる観点から、3-メチル-1-ブテン系重合体は、好ましくは3-メチル-1-ブテン単独重合体、及び3-メチル-1-ブテンと炭素数2~20のα-オレフィンとの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは3-メチル-1-ブテンと炭素数2~20のα-オレフィンとの共重合体である。
上記共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、交互共重合体であってもよい。上記共重合体の製造方法は、本発明の効果を損なわなければ制限されず、公知の共重合法を採用することができる。
【0016】
3-メチル-1-ブテン系重合体が上記共重合体である場合、共重合体における、α-オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、好ましくは0モル%超20モル%以下である。
塗膜や成形体の柔軟性及び耐衝撃性の観点から、共重合体における、α-オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、より好ましくは0.1モル%以上、さらに好ましくは0.5モル%以上である。
また、塗膜や成形体の耐熱性の観点から、α-オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、より好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。
なお、共重合体における、α-オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)によって求めることができる。
【0017】
3-メチル-1-ブテン系重合体が上記共重合体である場合、共重合体における、3-メチル-1-ブテンに由来する構造単位の含有割合は、好ましくは80モル%以上100モル%未満である。
塗膜や成形体の耐熱性の観点から、共重合体における、3-メチル-1-ブテンに由来する構造単位の含有割合は、より好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上であり、塗膜や成形体の柔軟性及び耐衝撃性の観点から、共重合体における、3-メチル-1-ブテンに由来する構造単位の含有割合は、より好ましくは99.9モル%以下、さらに好ましくは99.5モル%以下である。すなわち、共重合体における、3-メチル-1-ブテンに由来する構造単位の含有割合は、より好ましくは85~99.9モル%、さらに好ましくは90~99.5モル%である。
【0018】
3-メチル-1-ブテン系重合体の物性をより好適に発揮させる観点から、炭素数2~20のα-オレフィンは、好ましくは炭素数4~16のα-オレフィン、より好ましくは炭素数4~12のα-オレフィンである。また、炭素数2~20のα-オレフィンは、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
【0019】
炭素数2~20のα-オレフィンは、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-へキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、ビニルシクロヘキセン、ビニルノルボルナン等が挙げられる。
炭素数2~20のα-オレフィンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
本実施形態の3-メチル-1-ブテン系重合体の融点Tmは、3-メチル-1-ブテン系重合体粒子の融点と同じである。
なお、3-メチル-1-ブテン系重合体の融点Tmとは、3-メチル-1-ブテン系重合体粒子の融点Tmの測定方法と同様の方法で測定した際のピーク温度を意味し、具体的には実施例に記載の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子の融点Tmの測定方法で測定することができる。
【0021】
3-メチル-1-ブテン系重合体粒子における、3-メチル-1-ブテン系重合体の含有割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0022】
本発明の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子は、後述の配位重合を行う工程を有する製造方法により製造されることが好ましく、後述の<3-メチル-1-ブテン系重合体粒子の製造方法>により製造されることがより好ましい。
【0023】
<3-メチル-1-ブテン系重合体粒子の製造方法>
本実施形態の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子の製造方法は、周期表第4族遷移金属原子を有する化合物を担持させ、下記式(1)を満たす固体触媒を用いて配位重合を行う工程を有する。
20≦Dv’50×Y^(1/3)≦150 (1)
式(1)中、Dv’50は、前記固体触媒の累積体積50%の粒子径(μm)であり、Yは、製造された3-メチル-1-ブテン系重合体粒子量(g)を製造時に用いた前記固体触媒量(g)で除した値である触媒活性値(Y)である。
【0024】
[固体触媒]
配位重合を行う工程における3-メチル-1-ブテンの重合反応は、周期表第4族遷移金属原子を有する化合物を担持させた固体触媒を用いる。3-メチル-1-ブテンの重合反応は、担持型メタロセン系触媒、及びチーグラー・ナッタ触媒等の周知の固体触媒の存在下で行われることが好ましい。
上記固体触媒に用いられる周期表第4族遷移金属原子の具体例としては、チタン、ジルコニウム、及びハフニウム等が挙げられ、好ましくはチタンである。
【0025】
周期表第4族遷移金属原子を有する化合物を担持させた固体触媒(担持型触媒とも言う。)は、不活性有機溶媒(好ましくは、飽和脂肪族炭化水素)に懸濁して重合反応系に供給することが好ましい。
【0026】
上記担持型触媒の好ましい一例は、周期表第4族遷移金属原子を有する化合物が塩化チタンであり、担体が塩化マグネシウムである、マグネシウム担持型チタン触媒であり、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒、あるいはメタロセン系触媒を塩化マグネシウムやシリカ等に担持させた担持型メタロセン系触媒である。取り扱い性や入手容易性、触媒コスト等の観点から、チーグラー・ナッタ触媒がより好ましい。具体的には、不活性炭化水素溶媒に懸濁させたマグネシウム化合物と、液体状のチタン化合物と、必要に応じてエステル結合あるいはエーテル結合を有する電子供与体化合物を接触させて得られる、マグネシウム担持型チタン触媒である。当該マグネシウム担持型チタン触媒は、チタン原子、マグネシウム原子、ハロゲン原子、複数のエステル結合あるいはエーテル結合を有する。
【0027】
上記マグネシウム担持型チタン触媒の製造に用いられる不活性炭化水素溶媒としては、ヘキサン、デカン及びドデカン等が挙げられる。また、マグネシウム化合物としては、無水塩化マグネシウム、ジエトキシマグネシウム及びメトキシ塩化マグネシウム等が挙げられる。また、電子供与体としての複数の原子を間に介してエステル結合を有する化合物としては、安息香酸アルキル(アルキル基は炭素数1~8であることが好ましい。)、p-トルイル酸アルキル(アルキル基は炭素数1~8であることが好ましい。)、ピバル酸アルキル(アルキル基は炭素数1~8であることが好ましい。)、フタル酸ジアルキル(アルキル基は炭素数1~8であることが好ましい。)、マロン酸ジアルキル(アルキル基は炭素数1~8であることが好ましい。)及びコハク酸ジアルキル(アルキル基は炭素数1~8であることが好ましい。)等が挙げられる。また、電子供与体としての複数の原子を間に介してエーテル結合を有する化合物としては、2-イソブチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン及び2-イソペンチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン等が挙げられる。
【0028】
マグネシウム担持型チタン触媒におけるハロゲン原子及びチタン原子の原子比率(ハロゲン原子/チタン原子)は、通常2~100であり、好ましくは4~90である。マグネシウム担持型チタン触媒におけるエステル結合あるいはエーテル結合を有する電子供与体化合物とチタン原子のモル比率(電子供与体化合物/チタン原子)は、通常0.01~100、好ましくは0.2~10である。マグネシウム担持型チタン触媒におけるマグネシウム原子及びチタン原子の原子比率(マグネシウム原子/チタン原子)は、通常2~100、好ましくは4~50である。
【0029】
3-メチル-1-ブテンの重合反応を液相重合法で行う場合には、マグネシウム担持型チタン触媒を、全液体容積1L当りチタン原子に換算して、通常0.001~2ミリモル、好ましくは0.005~1ミリモルの量で用いることが好ましい。
【0030】
固体触媒の累積体積50%の粒径(以下、Dv’50とも言う。)は、好ましくは2.5~30μm、より好ましくは4~28μm、さらに好ましくは5~27μmである。前記固体触媒のDv’50が上記範囲であれば、3-メチル-1-ブテンの重合反応後に、さらに微粒子化する工程を経ることなく、所定の粒径を有し、かつ粒径分布が狭い3-メチル-1-ブテン系重合体粒子を得やすくなる。
固体触媒の累積体積50%の粒径を上記範囲とすることで、所定の粒径を有し、かつ粒径分布が狭い3-メチル-1-ブテン系重合体粒子を得やすくなる理由は定かではないが、次のように考えられる。
固体触媒を用いて3-メチル-1-ブテンを重合する際、生成される重合体は固体触媒の周囲を被覆するような形で成長する。そのため、固体触媒の粒径に応じた3-メチル-1-ブテン系重合体粒子が得られる。よって、固体触媒の累積体積50%の粒径を上記範囲とすることで、所定の粒径を有する3-メチル-1-ブテン系重合体粒子が得やすくなると考えられる。
また、周期表第4族遷移金属原子を有する化合物を担持させた固体触媒の累積体積50%の粒径(Dv’50)と累積個数50%の粒径(Dn’50)の比(Dv’50/Dn’50)は、通常、2.0以下であり、粒径分布が狭い。それにより、粒径分布が狭い3-メチル-1-ブテン系重合体粒子が得やすくなると考えられる。
【0031】
配位重合を行う際、3-メチル-1-ブテン100質量部に対し、前記金属原子量が0.00150~0.01000質量部となるように添加することが好ましく、より好ましくは0.00175~0.00800質量部、さらに好ましくは0.00200~0.00750質量部である。前記金属原子量が0.00150質量部以上であると、良好な生産性となる。また、前記金属原子量が0.01000質量部以下であると、3-メチル-1-ブテン系重合体粒子に残留する金属残渣によって、塗膜や成形体等の加工性が低下することを抑制することができる。
【0032】
本実施形態の製造方法により製造された3-メチル-1-ブテン系重合体粒子量(g)を製造時に用いた固体触媒量(g)で除した値である触媒活性値(Y)は、好ましくは100以上である。上記範囲であれば、所定の粒径を有し、かつ粒径分布が狭い3-メチル-1-ブテン系重合体粒子を、経済性よく得やすくなる。触媒活性値(Y)は、より好ましくは150以上、さらに好ましくは200以上である。
【0033】
本実施形態における3-メチル-1-ブテン系重合体粒子の累積体積50%(Dv50)は、周期表第4族遷移金属原子を有する化合物を担持させた固体触媒の累積体積50%の粒径(Dv’50)と触媒活性値(Y)により制御することができ、触媒活性値(Y)は、下記式(1)を満たす。
20≦Dv’50×Y^(1/3)≦150 (1)
触媒活性値(Y)が上記式(1)を満たすことで、所定の粒子径を有する3-メチル-1-ブテン系重合体粒子を得ることができる。
より所定の粒子径を有する3-メチル-1-ブテン系重合体粒子を得る観点から、Dv’50とY^(1/3)の積は、より好ましくは25以上138以下、さらに好ましくは29以上135以下、よりさらに好ましくは、31以上131以下である。
【0034】
周期表第4族遷移金属原子を有する化合物を担持させた固体触媒としては、例えば、特開昭54-107989号等に記載されている固体状三塩化チタン触媒;特開昭57-63310号、特開昭58-83006号、特開平3-706号、特許3476793号、特開平4-218508号、特開2003-105022号等に記載されているマグネシウム担持型チタン触媒;特開2009-144148号、又は特開2022-37931公報に記載されている担体担持型メタロセン系触媒;等が好適に用いられる。
【0035】
上記固体触媒は、上記公知文献を参照して製造したものであってもよく、市販品であってもよい。
固体状三塩化チタン触媒の市販品としては、例えば、東ソー・ファインケム社製「Solvay触媒 CATA-1」等が挙げられる。マグネシウム担持型チタン触媒の市販品としては、例えば、東邦チタニウム社製「THCシリーズ」やクラリアント社製「PolyMaxシリーズ」等が挙げられる。
【0036】
[共触媒成分]
3-メチル-1-ブテンの重合反応には、共触媒を用いることが好ましい。
3-メチル-1-ブテンの重合反応に用いられる共触媒成分は、有機金属化合物触媒成分であることが好ましく、具体的には有機アルミニウム化合物あるいはその加水重合体が挙げられる。有機アルミニウム化合物は、例えば、R AlX3-nで示される。
【0037】
AlX3-nにおけるRは、好ましくは炭素原子数1~12の炭化水素基であり、例えば、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基である。
炭素原子数1~12の炭化水素基は、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、及びトリル基等である。
AlX3-nにおけるXは、好ましくはハロゲン原子又は水素原子であり、nは好ましくは1~3の整数である。
【0038】
AlX3-nで示される有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、及びトリ2-エチルヘキシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;イソプレニルアルミニウム等のアルケニルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、及びジメチルアルミニウムブロミド等のジアルキルアルミニウムハライド;メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、及びエチルアルミニウムセスキブロミド等のアルキルアルミニウムセスキハライド;メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、及びエチルアルミニウムジブロミド等のアルキルアルミニウムジハライド;ジエチルアルミニウムハイドライド、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド等のアルキルアルミニウムハイドライド等が挙げられる。
上記具体例のうち、トリエチルアルミニウム及びトリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウムが好ましい。
【0039】
例えば、周期表第4族遷移金属原子を有する化合物を含む固体触媒がマグネシウム担持型チタン触媒成分である場合、共触媒成分の添加量は、マグネシウム担持型チタン触媒成分1g当たり、通常0.1~10,000g、好ましくは1~5,000gの重合体が生成するような量であればよく、マグネシウム担持型チタン触媒成分中のチタン原子1モル当たり、通常0.1~1000モル、好ましくは約0.5~500モル、より好ましくは1~200モルの量である。
【0040】
[重合反応]
3-メチル-1-ブテンの重合反応は、溶液重合、懸濁重合(スラリー重合)、バルク重合法等の液相重合法や、気相重合法や、その他公知の重合方法で行うことができる。上記重合反応は、好ましくは懸濁重合法である。
【0041】
[溶媒]
3-メチル-1-ブテンの重合反応を液相重合法で行う場合、溶媒は不使用であってもよく、溶媒として不活性炭化水素を使用してもよい。
不活性炭化水素である溶媒としては、例えば、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、イソオクタン等の飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;等が挙げられる。
溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
[重合条件]
(重合方法)
3-メチル-1-ブテンの重合反応は、回分式、半連続式、連続式の何れの方法においても行うことができる。また、上記重合反応は、反応条件を変えて2段以上に分けて行うこともできる。
(重合温度)
3-メチル-1-ブテンの重合反応における重合温度は、通常10~150℃、好ましくは30~120℃である。重合温度が上記範囲であれば、触媒活性を良好に維持しつつ、重合反応の進行を促進でき、生産性が良好になる。
(重合圧力)
3-メチル-1-ブテンの重合反応における重合圧力は、通常、常圧~5MPaG、好ましくは0.05~4MPaGである。重合圧力が上記範囲であれば、高い耐圧の反応器や排気ポンプ等の装置が不要となり経済的に有利である。
(重合時間)
3-メチル-1-ブテンの重合反応における重合時間は、通常0.1~10時間、好ましくは0.5~7時間である。重合時間が上記範囲であれば、熱劣化に起因する重合体の物性低下が抑制され、物性が良好な重合体粒子を製造しやすい。
(重合の停止)
3-メチル-1-ブテンの重合反応は、モノマーを蒸留や濾過により除去することで停止してもよいし、必要に応じて任意の重合停止剤を添加して停止してもよい。重合停止剤としては、周期表第4族遷移金属原子を有する化合物を含む触媒と反応する化合物が好ましい。重合停止剤は、例えば、水、アルコール、第1級アミン、第2級アミン、チオール、及びブレステット酸等の活性プロトンを有する化合物や、エーテル、ホスフィン、第3級アミン、チオエーテル、二酸化炭素、及び酸素分子等が挙げられる。
重合停止剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
[添加剤]
必要に応じて、重合反応系に添加剤を添加してもよい。上記添加剤としては、例えば、水素;メチル(シクロヘキシル)ジメトキシシラン等のシラン化合物;安息香酸エチル等のエステル化合物;2,2-アルキル置換-1,3-ジメトキシプロパン等のエーテル化合物;2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等のアミン化合物;等が挙げられる。
添加剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
(水素)
重合反応系に水素を添加してもよい。その添加方法は一括添加でも、逐次添加でも、連続添加でもよいが、より均質な分子量を有する重合体粒子を得る観点から、連続添加が好ましい。水素を添加することにより、触媒活性値(Y)が向上し、重合体粒子の溶融粘度等の物性も調整することができる。触媒活性値(Y)の向上に伴い、重合体粒子の粒径が増大するため、水素の添加により重合体粒子の粒径を調整することも可能である。
水素の添加量としては、所定の粒径を有する3-メチル-1-ブテン系重合体粒子を得る観点から、重合反応系に導入したモノマー1kgに対しての総量として、好ましくは2.4NL以下、より好ましくは2.0NL以下、さらに好ましくは1.8NL以下である。
【0045】
[固体触媒成分の除去]
本実施形態の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子の製造方法は、上述の重合反応後、当該重合体中に含まれる固体触媒成分を除去する工程を行うことが好ましい。固体触媒成分の除去の方法に関しては、特に限定されず公知の方法をとり得る。例えば、上述の重合反応により得られた粗3-メチル-1-ブテン系重合体粒子にイソブタノールや2-プロパノール等のアルコールを加え、10~100℃程度の温度で攪拌した後、当該重合体を分離する方法、及び、上述の重合反応により得られた粗3-メチル-1-ブテン系重合体粒子にイソブタノールや2-プロパノール等のアルコールと塩酸や硝酸等の鉱酸とを加え、10~100℃程度の温度で処理した後、当該重合体粒子を分離する方法等が挙げられる。
上記固体触媒成分の除去操作は、重合反応直後の重合体スラリーのまま実施してもよいし、重合体スラリーから未反応モノマーや反応溶媒を蒸留や濾過で除去した後に実施してもよいし、後述する可溶分ポリマー成分の除去操作を行った後に実施してもよい。
【0046】
[可溶成分の除去]
上述の重合反応後の粗3-メチル-1-ブテン系重合体粒子には、加熱した炭化水素系溶剤(炭素数4~20の分岐や環状構造を有してもよい炭化水素化合物)に可溶な重合成分(以下、「可溶成分」と称す。)が含まれることがある。可溶成分の詳細は明らかではないが、可溶成分としては、3-メチル-1-ブテン系重合体粒子のオリゴマー成分、立体規則性が低い重合体成分、3-メチル-1-ブテンに由来する構造単位の含有割合が低い重合体成分等が考えられる。よって、可溶成分が粗3-メチル-1-ブテン系重合体粒子に含まれる場合、本実施形態の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子の製造方法は、当該可溶成分を除去する工程を行ってもよいし、除去せずそのまま各種用途に用いてもよい。
上記可溶成分の除去する方法に関しては、特に限定されず公知の方法をとり得る。可溶成分の除去操作は、例えば、得られた粗3-メチル-1-ブテン系重合体粒子にヘプタン等の炭化水素溶剤を加え、50~100℃程度の温度で攪拌した後、溶液を濾過する方法等が挙げられる。また、可溶成分は未反応モノマーにも上記炭化水素系溶剤と同様に溶解することから、上述の重合反応で得られた重合体スラリーを50~100℃程度の温度で攪拌した後、溶液を濾過する方法でも除去することができる。これら除去操作は繰り返し行ってもよい。
上記可溶成分の除去操作は、重合反応直後の重合体スラリーのまま実施してもよいし、重合体スラリーから未反応モノマーや反応溶媒を蒸留や濾過で除去した後に実施してもよい。
【0047】
[3-メチル-1-ブテン系重合体粒子の乾燥]
本実施形態の3-メチル-1-ブテン系重合体粒子の製造方法は、上述の配位重合を行う工程及び必要に応じて行われる各種工程を経た後、得られた3-メチル-1-ブテン系重合体粒子を乾燥する工程を行ってもよい。
上記乾燥は、特に限定されず公知の方法をとり得る。乾燥は、例えば、常圧~1mmHg、及び20~200℃での条件で揮発分を飛ばすことによって行ってもよい。また、乾燥を行っている間、3-メチル-1-ブテン系重合体粒子は、静置していてもよく、空気あるいは不活性ガス等を当てることで流動していてもよく、撹拌回転翼型乾燥装置、ロータリー型乾燥装置、連続棚段型乾燥装置、流動型乾燥装置等の機械的な手法により流動していてもよい。
【0048】
<3-メチル-1-ブテン系重合体粒子の用途>
前述の方法で製造した3-メチル-1-ブテン系重合体の粒子は、その優れた電気特性、熱的特性、耐薬品性等を活かして様々な分野への展開できる。例えば、粉体のまま他の樹脂に添加しその樹脂の改質剤として使用してもよいし、粉体塗装の原料やレーザー焼結性粉体として用いてもよい。あるいは、一般的な熱可塑性樹脂と同様に、公知の成形方法、例えば射出成形、押出成形あるいは圧縮成形等により成形を付与する原料として用いてもよい。
【0049】
<流動浸漬塗装法>
3-メチル-1-ブテン系重合体粒子を用いた粉体塗装の方法として、流動浸漬塗装法が挙げられる。流動浸漬塗装法は、3-メチル-1-ブテン系重合体粒子を含む粉体塗料(以下、粉体塗料とも言う。)を収容した流動槽の底部から空気を導入した状態で、予熱した被塗装物を粉体塗料の少なくとも一部に浸漬し、粉体塗料から出した後、前記被塗装物に付着した粉体塗料の膜を加熱する方法である。
【0050】
連続薄膜塗装を実現する観点から、流動浸漬塗装法は、粉体塗料を収容した流動槽の底部から、底部の単位面積当たりの平均通気速度5mm/分以上20mm/分以下で空気を導入し、粉体塗料の浮上率を5%以上20%以下とした状態で、融点+10℃~融点+30℃の範囲で予熱した被塗装物を粉体塗料の少なくとも一部に浸漬し、粉体塗料から出した後、被塗装物に付着した粉体塗料の膜を加熱する方法であることが好ましい。
【0051】
流動浸漬塗装法において、被塗装物を粉体塗料に浸漬し、粉体塗料から出す方法としては、被塗装物を保持した状態で、流動槽に収容された粉体塗料の上方から、被塗装物を粉体塗料に浸漬し、引き上げる方法、被塗装物を流動槽に収容された粉体塗料に、被塗装物を落下させた後、振動搬送により被塗装物を出す方法等、周知の方法が採用できる。
被塗装物を粉体塗料に浸漬する前、または浸漬している間、粉体塗料に振動を付与してもよい。
被塗装物を粉体塗料に浸漬している間、被塗装物は、静止状態でもよいが、例えば、10~20mm/秒で直線状又は円弧を描くように移動させてもよい。
被塗装物は、一部を粉体塗料に浸漬しても、全部を粉体塗料に浸漬してもよく、塗装膜を形成する領域に応じて選択する。
【0052】
流動槽の底部から導入する空気の平均通気速度は、連続薄膜塗装を実現する観点から、5mm/分以上20mm/分以下であること好ましく、5mm/分以上10mm/分以下であることがより好ましい。
平均通気速度が5mm/分以上であると、粉体塗料の流動性を確保でき、被塗装物に不連続に粉体塗料が接着することを抑制し、連続した塗装膜が得られやすい。一方、平均通気速度が20mm/分以下であると、必要な嵩密度(およそ80%以上)を確保することができ、軟化接着膜の緻密さが良好となり、凹凸や欠陥の発生を抑制することができ、溶融後の塗装膜の品質が良好となる。
なお、本明細書において、平均通気速度とは、流動槽の底部から、単位時間(分)当たりに導入する空気の体積を流動槽の底部(その空気導入面)の面積で割った値である。
【0053】
粉体塗料の浮上率は、連続薄膜塗装を実現する観点から、5%以上20%以下であること好ましく、10%以上15%以下であることがより好ましい。
浮上率が5%以上であると、粉体塗料の流動性を確保することができ、被塗装物に不連続に粉体塗料が接着することを抑制し、連続した塗装膜が得られやすい。一方、浮上率が20%以下であると、必要な嵩密度(およそ80%以上)を確保することができ、軟化接着膜の緻密さが良好となり、凹凸や欠陥の発生を抑制することができ、溶融後の塗装膜の品質が良好となる。
本明細書において、浮上率とは、次の式Hにより算出した値である。
式H:浮上率(%)=(H2-H1)/H1×100
式H中、H1は、空気を導入していない時の、流動槽に収容された粉体塗料の表面の高さ(つまり、流動槽の底部から粉体塗料の表面までの高さ)を示す。
H2は、空気を導入したときの、流動槽に収容された粉体塗料の表面の高さ(つまり、流動槽の底部から粉体塗料の表面までの高さ)を示す。
【0054】
被塗装物の温度は、連続薄膜塗装を実現する観点から、粉体塗料の融点~融点+20℃の温度であることが好ましい。
被塗装物の温度を上記範囲とすることで、必要な粉体塗料の軟化接着が生じ、連続薄膜塗装を実現できやすくなる。
なお、被塗装物の温度とは、被塗装物を粉体塗料に浸漬した時の被塗装物の表面温度である。
【0055】
被塗装物の予熱温度は、連続薄膜塗装を実現する観点から、融点+10℃~融点+30℃であることが好ましい。
予熱温度が融点+10℃以上であれば、必要な粉体塗料の軟化接着時間経過を待たずに被塗装物の温度が下がりすぎることを抑制し、塗着不足の発生を抑制することができる。同じく、予熱温度が融点+30℃以下であれば、浸漬開始時に被塗装物表面に溶融液滴が発生することを抑制でき、連続した塗装膜が得られやすい。
【0056】
被塗装物の浸漬時間は、生産性と連続薄膜塗装を実現する観点から、5秒以上20秒以下が好ましく、5秒以上10秒以下がより好ましい。
【0057】
被塗装物に付着した粉体塗料の膜を加熱する温度は、融点以上融点+20℃以下が好ましい。焼付けの加熱時間(焼付時間)は、加熱温度(焼付温度)に応じて調節する。
【0058】
<選択的焼結付加製造方法>
3-メチル-1-ブテン系重合体粒子を用いて立体造形物(成形体)を製造する方法として、選択的焼結付加製造方法が挙げられる。
選択的焼結付加製造方法は、具体的には、(1)前述の重合体粒子からなる薄層を形成する薄層形成工程と、(2)重合体粒子を予備加熱する予備加熱工程と、(3)予備加熱された重合体粒子からなる薄層にレーザ光を選択的に照射して、前記重合体粒子に含まれる樹脂粒子どうしが溶融結合した造形物層を形成するレーザ光照射工程と、を含む方法とすることができる。そして工程(1)~工程(3)を複数回繰り返し、造形物層を積層することで、立体造形物を製造することができる。なお、工程(1)および工程(2)は、いずれを先に行ってもよい。
【0059】
[薄層形成工程(工程(1))]
本工程では、前記重合体粒子材料の薄層を形成する。例えば、重合体粒子供給部から供給された前記重合体粒子材料を、リコータによって造形ステージ上に平らに敷き詰める。薄層は、造形ステージ上に直接形成してもよいし、すでに敷き詰められている重合体粒子材料またはすでに形成されている造形物層の上に接するように形成してもよい。
【0060】
薄層の厚さは、所望の造形物層の厚さと同じとする。薄層の厚さは、製造しようとする立体造形物の精度に応じて任意に設定することができるが、通常、0.01mm以上0.30mm以下である。薄層の厚さを0.01mm以上とすることで、次の造形物層を形成するためのレーザ光照射によって下の層の重合体粒子が溶融結合されることを防ぐことができる。均一な重合体粒子の敷き詰めが可能となる。また、薄層の厚さを0.30mm以下とすることで、レーザ光のエネルギーを薄層の下部まで伝導させて、薄層を構成する重合体粒子材料に含まれる重合体粒子を、厚み方向の全体にわたって十分に溶融結合させることができる。前記観点からは、薄層の厚さは0.01mm以上0.10mm以下であることがより好ましい。また、薄層の厚み方向の全体にわたってより十分に重合体粒子を溶融結合させ、造形物層の割れをより生じにくくする観点からは、薄層の厚さは、後述するレーザ光のビームスポット径との差が0.10mm以内になるよう設定することが好ましい。
【0061】
[予備加熱工程(工程(2))]
本工程では、重合体粒子材料を予備加熱する。前述のように、工程(1)および工程(2)は、いずれを先に行ってもよい。例えば、重合体粒子材料を予備加熱してから薄層を形成してもよく、薄層を形成してから重合体粒子材料の予備加熱を行ってもよい。
【0062】
予備加熱温度は、3-メチル-1-ブテン系重合体粒子においては、250℃以下の温度とすることが好ましく、200℃以上250以下であることがより好ましい。予備加熱温度を、250以下とすることで、予備加熱時における重合体粒子どうしの融着を抑制することが可能となる。
【0063】
またこのとき、加熱時間は1~60秒とすることが好ましく、5~30秒とすることがより好ましい。加熱温度および加熱時間を上記範囲とすることで、重合体粒子中のコアを十分に軟化もしくは溶解させることができ、低いレーザ照射量で立体造形物を製造することができる。
【0064】
[レーザ光照射工程(工程(3))]
本工程では、予備加熱された粉末材料からなる薄層のうち、造形物層を形成すべき位置にレーザ光を選択的に照射し、所望の位置の重合体粒子を溶融結合させる。溶融した重合体粒子(特にコア)は、隣接する重合体粒子と溶融し合って造形物層となる。このとき、レーザ光のエネルギーを受け取った重合体粒子は、すでに形成された造形物層とも溶融結合するため、隣り合う層間の接着も生じる。
【0065】
レーザ光の波長は、重合体粒子が吸収する波長の範囲内で設定すればよい。このとき、レーザ光の波長と、重合体粒子(特にシェル材)の吸収率が最も高くなる波長との差が小さくなるようにすることが好ましく、例えばCOレーザ等の波長帯域の広いレーザ光を用いることができる。レーザ光の波長は、例えば0.8μm以上12μm以下とすることができる。
【0066】
レーザ光の出力時のパワーは、後述するレーザ光の走査速度において、重合体粒子の温度を上昇させることが可能な範囲で設定すればよい。具体的には、5.0W以上60W以下とすることができる。レーザ光のエネルギーを低くして、製造コストを低くし、かつ、製造装置の構成を簡易なものにする観点からは、レーザ光の出力時のパワーは30W以下であることが好ましく、20W以下であることがより好ましい。
【0067】
レーザ光の走査速度は、製造コストを高めず、かつ、装置構成を過剰に複雑にしない範囲内で設定すればよい。具体的には、1m/秒以上10m/秒以下とすることが好ましく、2m/秒以上8m/秒以下とすることがより好ましく、3m/秒以上7m/秒以下とすることがさらに好ましい。レーザ光のビーム径は、製造しようとする立体造形物の精度に応じて適宜設定することができる。
【0068】
立体造形物の製造の際には、上述の工程(1)~工程(3)を、任意の回数繰り返す。これにより、造形物層が積層されて、所望の立体造形物が得られることとなる。
【0069】
なお、溶融結合中の重合体粒子の酸化等によって、立体造形物の強度が低下することを防ぐ観点からは、少なくとも工程(3)は減圧下または不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。減圧するときの圧力は10-2Pa以下であることが好ましく、10-3Pa以下であることがより好ましい。本実施形態で使用することができる不活性ガスの例には、窒素ガス及び希ガスが含まれる。これらの不活性ガスのうち、入手の容易さの観点からは、窒素(N)ガス、ヘリウム(He)ガスまたはアルゴン(Ar)ガスが好ましい。製造工程を簡略化する観点からは、工程(1)~工程(3)のすべてを減圧下または不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
【0070】
<任意成分>
本実施形態の3-メチル-1-ブテン系共重合体粒子を粉体塗装材料や、3-メチル-1-ブテン系共重合体粒子等の粉体を焼結することにより造形する分野の材料、例えば3DプリンターのSLS方式により製造される成形体を形成する材料へ展開する場合、酸化防止剤、アルキルラジカル捕捉剤、制酸剤、充填剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、重合禁止剤、重金属不活性化剤、紫外線吸収剤、核剤、透明化剤、滑剤、蛍光増白剤、及び発錆防止剤等の添加剤を、任意成分として含んでもよい。
上記任意成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【実施例0071】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
<測定>
以下の方法により、各種物性を測定又は評価した。
[コモノマーに由来する構造単位の含有割合]
実施例1~4、比較例1~3で得られた3-メチル-1-ブテン系重合体粒子の3-メチル-1-ブテン以外のα-オレフィン(コモノマー)に由来する構造単位の含有割合を、分析装置としてFT-IR(Ailent Techonolies社製、装置名「cary 600 series FTIR spectrometer」)を用い、ATR法にてIR測定を行い、次のとおり求めた。
3-メチル-1-ブテン単独重合体の主鎖メチレン基由来の変角振動1,461cm-1のピーク面積と、α-オレフィンの単独重合体の側鎖メチレン基由来の変角振動727cm-1のピーク面積との比、及びそれぞれの樹脂の添加割合から検量線を作成した。実施例1~4で得られた3-メチル-1-ブテン系共重合体粒子について上記IR測定を行い、得られた測定値を上記検量線に挿入し、3-メチル-1-ブテン以外のα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合を求めた。
【0073】
[融点]
実施例1~4、比較例1~3で得られた3-メチル-1-ブテン系重合体粒子を、示差走査熱量測定器(TA Instrument社製「DSC25」)を用い、窒素流量下(100mL/分)で30℃から320℃まで10℃/分で昇温させ、320℃で5分保持後、-70℃まで10℃/分で降温させた。-70℃で5分保持後320℃まで10℃/分で昇温させた際のピーク温度を測定し、その温度を融点とした。
【0074】
[Dv50、Dv50/Dn50、Dv’50、及びDv’50/Dn’50]
製造例1~5で得られたチタン固体触媒、及び実施例1~4、比較例1~3で得られた3-メチル-1-ブテン系重合体粒子のDv50、Dn50、Dv’50、及びDn’50を、JIS Z 8827-1:2008に準拠して測定した。測定装置として、走査型電子顕微鏡(株式会社キーエンス製「3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡 VE-9800」)を用い、得られた画像を画像解析ソフト「imageJ」(アメリカ国立衛生研究所製)を用いて解析した。なお、Dv50/Dn50及びDv’50/Dn’50は、得られたDv50、Dn50、Dv’50、及びDn’50から算出した。
【0075】
[触媒活性値(Y)]
実施例1~4、比較例1~3で得られた3-メチル-1-ブテン系重合体粒子量(g)を、製造で用いたチタン固体触媒成分量(g)で除した値を触媒活性値(Y)とした。
【0076】
〈チタン固体触媒成分の調製〉
[製造例1]
無水塩化マグネシウム47.6g(500mmol)、デカン250ml及び2-エチルヘキシルアルコール234ml(1.5mo1)を130℃で2時間加熱反応を行い均一溶液とした。得られた均一溶液を室温(23℃)に冷却した後、-20℃に保持された四塩化チタン2L(18mol)中に1時間に渡って装置滴下した。滴下終了後、混合液の温度を2時間かけて90℃に昇温し、90℃に達したところで安息香酸エチル11.4mL (80mmol)を添加し、2時間同温度にて攪拌しながら、保持した。2時間の反応終了後、静置してから、上澄み液を除去した。ここにデカン及びヘキサンを加え、固体成分を3回洗浄した後、2Lの四塩化チタンにて再懸濁させ、再び90℃で2時間、加熱反応を行った。反応終了後、デカン及びヘキサンを用いて再び静置し、上澄み液の除去を繰り返し、洗液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなる迄充分洗浄した。得られた懸濁成分を室温下で6時間減圧乾燥して、チタン固体触媒成分(1)を得た。
得られたチタン固体触媒成分(1)の組成は、チタン5.4質量%、塩素58.6質量%、マグネシウム15.3質量%、安息香酸エチル9.7質量%並びにデカン及びヘキサンからなる炭化水素系溶媒11.0質量%であった。
チタン固体触媒成分(1)のDv’50とDv’50/Dn’50を表1に示す。
【0077】
[製造例2]
製造例1において、安息香酸エチルの量を、22.8mL(160mmol)にしたこと以外は同様にして、チタン固体触媒成分(2)を得た。
得られたチタン固体触媒成分(2)の組成は、チタン3.9質量%、塩素57.0質量%、マグネシウム16.4質量%、安息香酸エチル15.2質量%並びにデカン及びヘキサンからなる炭化水素系溶媒7.5質量%であった。
チタン固体触媒成分(2)のDv’50とDv’50/Dn’50を表1に示す。
【0078】
[製造例3]
製造例1において、安息香酸エチルの量を、8.2mL(57mmol)にしたこと以外は同様にして、チタン固体触媒成分(3)を製造した。
得られたチタン固体触媒成分(3)の組成は、チタン4.7質量%、塩素63.0質量%、マグネシウム17.4質量%、安息香酸エチル8.2質量%並びにデカン及びヘキサンからなる炭化水素系溶媒6.7質量%であった。
チタン固体触媒成分(3)のDv’50とDv’50/Dn’50を表1に示す。
【0079】
[製造例4]
製造例1において、安息香酸エチルの量を、3.2mL(22mmol)にしたこと以外は同様にして、チタン固体触媒成分(4)を製造した。
得られたチタン固体触媒成分の組成はチタン5.0重量%、塩素62,8重量%、マグネシウム19.2重量%および安息香酸エチル5.7重量%並びにデカン及びヘキサンからなる炭化水素系溶媒7.3質量%であった。
チタン固体触媒成分(4)のDv’50とDv’50/Dn’50を表1に示す。
【0080】
[製造例5]
製造例1において、安息香酸エチルの量を、30.5mL(212mmol)にしたこと以外は同様にして、チタン固体触媒成分(5)を製造した。
得られたチタン固体触媒成分の組成はチタン4.0重量%、塩素55.5重量%、マグネシウム17.2重量%および安息香酸エチル18.9重量%並びにデカン及びヘキサンからなる炭化水素系溶媒4.4質量%であった。
チタン固体触媒成分(5)のDv’50とDv’50/Dn’50を表1に示す。
【0081】
〈3-メチル-1-ブテン系重合体粒子の製造〉
[実施例1]
20Lのステンレス製オートクレーブに、3-メチル-1-ブテン8.0kg、1-デセン0.6kg、1mol/Lの濃度になるようにヘキサンで希釈されたトリエチルアルミニウム50g、製造例1で製造したチタン固体触媒成分(1)11gを添加し、70℃で4時間配位重合反応を実施した。4時間後にイソアミルアルコール200gを圧入し、反応を停止して余剰の未反応モノマーを追い出した。次いでノルマルヘプタン2kgを導入し、60℃で30分間攪拌させた後に、加圧ろ過器で固形分を濾別した。この操作を2回繰り返した後、溶媒をノルマルヘプタン2kgから2-プロパノール3kgに変えて同じ操作を2回繰り返した。
得られた粗ポリマー7.2kgを、攪拌機を備えた50Lの容器にいれ、その後、1mol/Lの塩酸8kg及び2-プロパノール16kgを加え、1時間攪拌した。この懸濁液を減圧濾過で濾別し、2-プロパノール10kgで洗い流した。この粗ポリマーを、攪拌機を備えた50Lの容器に入れ、その後、2-プロパノール20kgを加え、1時間攪拌した。この懸濁液を減圧濾過で濾別し、2-プロパノール10kgで洗い流した。得られた洗浄後のポリマーを80℃で2日間減圧乾燥させることで3-メチル-1-ブテン系重合体粒子(X1)を3.0kg得た。
得られた3-メチル-1-ブテン系重合体粒子(X1)の測定結果を表1に示す。
【0082】
[実施例2]
実施例1において、チタン固体触媒成分(1)の代わりに製造例2で製造したチタン固体触媒成分(2)を使用したこと以外は同様にして、3-メチル-1-ブテン系重合体粒子(X2)を2.5kg得た。
得られた3-メチル-1-ブテン系重合体粒子(X2)の測定結果を表1に示す。
【0083】
[実施例3]
実施例1において、チタン固体触媒成分(1)の代わりに製造例3で製造したチタン固体触媒成分(3)を使用したこと以外は同様にして、3-メチル-1-ブテン系重合体粒子(X3)を3.2kg得た。
得られた3-メチル-1-ブテン系重合体粒子(X3)の測定結果を表1に示す。
【0084】
[実施例4]
実施例1において、チタン固体触媒成分(1)の代わりに製造例3で製造したチタン固体触媒成分(3)を4g使用し、重合反応中に水素を40mL/分の速度で連続的に供給したこと以外は同様にして、3-メチル-1-ブテン系重合物粒子を3.6kg得た。
得られた3-メチル-1-ブテン系重合体粒子(X4)の測定結果を表1に示す。
【0085】
[比較例1]
実施例2において、チタン固体触媒成分(2)を4g使用し、重合反応中に水素を40mL/分の速度で連続的に供給したこと以外は同様にして、3-メチル-1-ブテン系重合体粒子(Y1)を2.6kg得た。
得られた3-メチル-1-ブテン系重合体粒子(Y1)の測定結果を表1に示す。
【0086】
[比較例2]
実施例1において、チタン固体触媒成分(1)の代わりに製造例4で製造したチタン固体触媒成分(4)を4g使用し、重合反応中に水素を40mL/分の速度で連続的に供給したこと以外は同様にして、3-メチル-1-ブテン系重合物粒子を3.3kg得た。
得られた3-メチル-1-ブテン系重合体粒子(Y2)の測定結果を表1に示す。
【0087】
[比較例3]
実施例1において、チタン固体触媒成分(1)の代わりに製造例5で製造したチタン固体触媒成分(5)を11g使用したこと以外は同様にして、3-メチル-1-ブテン系重合物粒子を3.0kg得た。
得られた3-メチル-1-ブテン系重合体粒子(Y3)の測定結果を表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
表1から、実施例で得られた3-メチル-1-ブテン系重合体粒子は、所定の粒径を有し、粒径分布が狭いことがわかる。
本実施形態における3-メチル-1-ブテン系重合体粒子は、粉体塗装材料や、3DプリンターのSLS方式により製造される成形体を形成する材料として好適である。