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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058046
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】光学素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/14 20060101AFI20240418BHJP
   B29C 59/00 20060101ALI20240418BHJP
   B29C 53/04 20060101ALI20240418BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240418BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20240418BHJP
   B29C 65/54 20060101ALI20240418BHJP
   B29C 53/84 20060101ALI20240418BHJP
   B29L 11/00 20060101ALN20240418BHJP
【FI】
B29C51/14
B29C59/00 Z
B29C53/04
G02B5/30
B29C33/42
B29C65/54
B29C53/84
B29L11:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165159
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】日野 有一
【テーマコード(参考)】
2H149
4F202
4F208
4F209
4F211
【Fターム(参考)】
2H149AA01
2H149AB02
2H149BA02
2H149BA12
2H149DA02
2H149DA04
2H149DA05
2H149DA12
2H149EA02
2H149EA22
2H149FA02Z
2H149FA24Y
2H149FA42Z
2H149FA61
2H149FA63
2H149FA69
2H149FD35
4F202AH75
4F202CA17
4F202CB01
4F202CB29
4F202CN01
4F202CN18
4F202CP01
4F202CP06
4F208AA44
4F208AC03
4F208AD18
4F208AG03
4F208AG05
4F208AH73
4F208AK07
4F208MA03
4F208MB01
4F208MB22
4F208MC01
4F208MG04
4F208MG11
4F208MH06
4F208MK01
4F208MK08
4F209AA44B
4F209AF01
4F209AG05
4F209AH73
4F209NA01
4F209NB01
4F209NG02
4F209NG05
4F209NH06
4F209NJ22
4F209NK10
4F209NL01
4F209PA02
4F209PB01
4F209PC05
4F209PN06
4F209PN09
4F209PQ11
4F209PW26
4F211AD08
4F211AD24
4F211AG03
4F211AH73
4F211TA03
4F211TC02
4F211TD11
4F211TN45
4F211TN60
(57)【要約】
【課題】位相差板の曲げ加工に起因するリタデーションのばらつきを低減する、技術を提供する。
【解決手段】光学素子の製造方法は、液晶層を有する位相差板と、接着層と、前記接着層を介して前記位相差板と対向する曲面を有する3次元構造物と、を備える光学素子の製造方法である。前記製造方法は、前記3次元構造物を取り囲むと共に、前記3次元構造物と前記位相差板とを間隔をおいて保持する、第1型を準備することを有する。前記第1型は開口部が形成される平面と前記平面から突出する凸部とを有し、前記凸部は前記開口部の縁の一部に沿って設けられる。平面視で、前記位相差板は、貯蔵弾性率が180°周期で変化する。前記凸部は、前記貯蔵弾性率が最大になる位置に一対設けられる。前記製造方法は、前記平面と前記凸部とで前記位相差板を支持しながら前記位相差板を前記3次元構造物の曲面に沿って曲げ加工することを有する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶層を有する位相差板と、接着層と、前記接着層を介して前記位相差板と対向する曲面を有する3次元構造物と、を備える光学素子の製造方法であって、
前記3次元構造物を取り囲むと共に、前記3次元構造物と前記位相差板とを間隔をおいて保持する、第1型を準備することを有し、
前記第1型は開口部が形成される平面と前記平面から突出する凸部とを有し、前記凸部は前記開口部の縁の一部に沿って設けられ、
平面視で、前記位相差板は、貯蔵弾性率が180°周期で変化し、
前記凸部は、前記貯蔵弾性率が最大になる位置に一対設けられ、
前記製造方法は、前記平面と前記凸部とで前記位相差板を支持しながら前記位相差板を前記3次元構造物の曲面に沿って曲げ加工することを有する、光学素子の製造方法。
【請求項2】
前記位相差板は、前記液晶層として、1/2波長板と1/4波長板を有する、請求項1に記載の光学素子の製造方法。
【請求項3】
前記位相差板は、前記1/2波長板と前記1/4波長板との間に垂直配向液晶層を有する、請求項2に記載の光学素子の製造方法。
【請求項4】
前記位相差板を基準として前記第1型とは反対側に第2型を配置することと、
前記第2型における前記第1型との対向面の凹部に前記凸部を挿入した状態で、前記第2型が前記凹部に前記位相差板を吸着することと、
前記第2型が前記位相差板を吸着した状態で前記第2型が前記位相差板を加熱することと、
前記第2型が前記位相差板にガスを噴射すると同時に前記第1型が減圧されることで、前記位相差板を前記3次元構造物の曲面に沿って曲げ加工することと、
を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の光学レンズは、位相差体を有する。位相差体は、フィルム又はコーティングである。コーティング材料は、例えば液晶ポリマーである。フィルム材料は、開示されていない。位相差体は、例えば1/4波長板である。
【0003】
特許文献2には、モールドの凹凸パターンを転写するための光硬化性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2019-534484号公報
【特許文献2】特許第5978761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フィルム状の位相差板は、接着層を介して3次元構造物の曲面に接着される。位相差板と接着層と3次元構造部とで、光学素子が構成される。光学素子の製造方法は、3次元構造物の曲面に沿って位相差板を曲げ加工する工程を有する。
【0006】
フィルム状の位相差板が液晶層を含むことがある。液晶層は、液晶分子を有する。液晶層は、液晶分子の長軸方向に伸ばし難く、液晶分子の短軸方向に伸ばし易い。それゆえ、位相差板を曲げ加工することで、厚みがばらつき、リタデーションがばらつくことがあった。
【0007】
本開示の一態様は、位相差板の曲げ加工に起因するリタデーションのばらつきを低減する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る光学素子の製造方法は、液晶層を有する位相差板と、接着層と、前記接着層を介して前記位相差板と対向する曲面を有する3次元構造物と、を備える光学素子の製造方法である。前記製造方法は、前記3次元構造物を取り囲むと共に、前記3次元構造物と前記位相差板とを間隔をおいて保持する、第1型を準備することを有する。前記第1型は開口部が形成される平面と前記平面から突出する凸部とを有し、前記凸部は前記開口部の縁の一部に沿って設けられる。平面視で、前記位相差板は、貯蔵弾性率が180°周期で変化する。前記凸部は、前記貯蔵弾性率が最大になる位置に一対設けられる。前記製造方法は、前記平面と前記凸部とで前記位相差板を支持しながら前記位相差板を前記3次元構造物の曲面に沿って曲げ加工することを有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、平面と平面から突出する凸部とで位相差板を支持しながら位相差板を曲げ加工することで、位相差板の厚みのばらつきを低減でき、リタデーションのばらつきを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(A)は一実施形態に係る位相差板と3次元構造物と接着層を示す断面図であり、図1(B)は一実施形態に係る光学素子の断面図であり、図1(C)は図1(B)に示す光学素子の平面図である。
図2図2(A)は透明基材と配向層の一例を示す斜視図であり、図2(B)は図2(A)に示す配向層によって配向された液晶分子の一例を示す斜視図である。
図3図3は、位相差板の変形例を示す断面図である。
図4図4は、位相差板の貯蔵弾性率の異方性の一例を示す平面図である。
図5図5は、第1型の一例を示す平面図である。
図6図6は、光学素子の製造方法の一例を示す断面図である。
図7図7は、図6に続いて光学素子の製造方法の一例を示す断面図である。
図8図8は、図7に続いて光学素子の製造方法の一例を示す断面図である。
図9図9は、図8に続いて光学素子の製造方法の一例を示す断面図である。
図10図10は、実施例1と比較例1で作製した光学素子のリタデーションのばらつきを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。また、明細書中、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0012】
本明細書において、1/2波長板は、公知の1/2波長板のほかに、液晶層にカイラル剤を含み、光学軸の向きが厚み方向に応じて回転する領域を有するもの、且つ、1/4波長板の倍の厚みを有するものを含む。
【0013】
本明細書において、1/4波長板は、公知の1/4波長板のほかに、例えば液晶層にカイラル剤を含み、光学軸の向きが厚み方向に応じて回転する領域を有するものも含む。
【0014】
図1及び図2を参照して、一実施形態に係る光学素子1について説明する。光学素子1は、用途によっては、性能の観点から、曲面を有することが望まれる。例えば、光学素子1は、曲面40aを有する3次元構造物40を含む。3次元構造物40は、例えばレンズ、プリズム、ミラーが挙げられる。3次元構造物40がレンズの場合は、球面レンズでもよいし、非球面レンズでもよい。また、3次元構造物40がレンズの場合、両凹レンズ、平凹レンズ、凹メニスカスレンズ、両凸レンズ、平凸レンズ、及び凸メニスカスレンズのいずれでもよい。
【0015】
3次元構造物40は、曲面40aを有する。曲面40aは、例えば10mm~100mmの曲率半径Rを全面又は一部に有する。曲面40aの曲率半径Rは、好ましくは20mm~80mm、より好ましくは30mm~45mmであり、特に好ましくは35mm~40mmである。
【0016】
曲面40aは、例えば、図1(A)及び図1(B)に示すように、凹曲面である。凹曲面は、重心P0が周縁よりも凹む曲面である。X軸方向に垂直な断面でも、Y軸方向に垂直な断面でも、凹曲面の重心P0は、凹曲面の周縁よりも凹む。X軸方向とY軸方向とZ軸方向とは、互いに垂直である。Z軸方向は、凹曲面の重心P0における法線方向である。XY平面は、凹曲面の重心P0における接平面に対して平行である。
【0017】
なお、曲面40aは、本実施形態では凹曲面であるが、凸曲面であってもよい。凸曲面は、重心P0が周縁よりも凸む(突出する)曲面である。X軸方向に垂直な断面でも、Y軸方向に垂直な断面でも、凸曲面の重心P0は、凸曲面の周縁よりも凸む。
【0018】
3次元構造物40の外形は、図1(C)に示す円形には限定されず、例えば楕円形、又は多角形(例えば四角形)等であってもよい。
【0019】
3次元構造物40の材質は、樹脂でもよいし、ガラスでもよい。3次元構造物40が樹脂レンズである場合、樹脂レンズの樹脂は、例えばポリカーボネート、ポリイミド、ポリアクリレート、または環状オレフィンである。3次元構造物40がガラスレンズの場合、ガラスレンズのガラスは、例えばBK7、または合成石英である。
【0020】
光学素子1は、位相差板10を含む。位相差板10は、3次元構造物40の曲面40aに沿って湾曲する。位相差板10は、例えば、透明基材11と、透明基材11の上に形成される配向層12と、配向層12の上に形成される液晶層13と、を含む。
【0021】
位相差板10は、例えば、図1(B)に示すように3次元構造物40側から、透明基材11と、配向層12と、液晶層13とを、この順番で含む。なお、図示しないが、位相差板10は、3次元構造物40側から、液晶層13と、配向層12と、透明基材11とを、この順番で含んでもよい。
【0022】
透明基材11は、例えばガラス基材又は樹脂基材で構成される。ガラス基材又は樹脂基材は、赤外線、可視光、及び紫外線のいずれか1つ、又は2つ以上に対して反射機能又は吸収機能を有し、特定の波長帯の光を透過する構成としてもよい。透明基材11は、単一の基材の単層構造でもよいし、主基材(ガラス基材又は樹脂基材)に反射や吸収機能を付与する層を積層し特定の波長帯の光を透過させる複数層構造でもよい。また、透明基材11は、反射機能や吸収機能の他に、防汚などの機能を付与する層を積層してもよい。
【0023】
例えば、透明基材11は、ガラス基材又は樹脂基材の他に、更に樹脂層又は無機層を含んでもよい。樹脂層は、例えば、色調補正フィルタ、シランカップリング剤等の下地層、又は防汚層等の機能を有する層である。樹脂層は、例えば、スクリーン印刷、蒸着、スプレーコート法又はスピンコート法等で形成される。無機層は、例えば光干渉層(反射防止や波長選択フィルタ)としての機能を有する金属酸化物層等である。無機層は、例えば、スパッタリング法、蒸着、又はCVD法等で形成される。
【0024】
透明基材11は、曲げ加工性の観点から、好ましくは樹脂基材である。樹脂基材の樹脂の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、トリアセチルセルロース(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はポリカーボネート(PC)が挙げられる。
【0025】
透明基材11の位相差(リタデーション)は、例えば5nm以下であり、好ましくは3nm以下である。透明基材11の位相差は、色調のバラツキを低減する観点から、小さいほどよく、ゼロであってもよい。透明基材11の位相差は、例えば平行ニコル回転法により測定する。
【0026】
透明基材11のガラス転移点Tg_fは、例えば80℃~200℃であり、好ましくは90℃~180℃であり、より好ましくは100℃~160℃である。Tg_fが上記範囲内であれば、曲げ加工性が良い。透明基材11のガラス転移点は、例えば熱機械分析(TMA)により測定される。
【0027】
透明基材11の厚みT1(図2参照)は、例えば0.01mm~0.3mmであり、好ましくは0.02mm~0.1mmであり、より好ましくは0.03mm~0.09mmである。T1が上記範囲内であれば、曲げ加工性と、ハンドリング性とを両立できる。
【0028】
配向層12は、液晶層13の液晶分子を配向させる。配向層12の液晶層13と接する表面121には、例えば、互いに平行な複数の溝122が形成されている。複数の溝122は、例えばストライプパターン状に形成される。Z軸方向視で、溝122の長手方向がX軸方向であり、溝122の幅方向がY軸方向である。
【0029】
溝122の平行度は、例えば0°~5°であり、好ましくは0°~1°である。溝122の平行度とは、Z軸方向視で、隣り合う2つの溝122のなす角の最大値である。隣り合う2つの溝122のなす角が0°に近いほど、平行度が良い。
【0030】
溝122の深さDは、例えば3nm~500nmであり、好ましくは5nm~300nmであり、より好ましくは10nm~150nmである。Dが3nm以上であれば、配向規制力が大きく、液晶分子が配向されやすい。一方、Dが500nm以下であれば、モールドの凹凸パターンの転写性が良い。また、Dが500nm以下であれば、回折光も発生しにくい。
【0031】
溝122のピッチpは、例えば10nm~600nmであり、好ましくは50nm~300nmであり、より好ましくは80nm~200nmである。pが600nm以下であれば、配向規制力が大きく、液晶分子が配向されやすい。また、pが300nm以下であれば、回折光が発生しにくい。一方、pが10nm以上であれば、モールドの凹凸パターンの形成が容易である。
【0032】
溝122の開口幅Wは、例えば5nm~500nmであり、好ましくは20nm~200nmであり、より好ましくは30nm~150nmである。なお、ピッチpと開口幅Wの差(p-W:p>W)が、溝122同士の間隔(2つの溝122を隔てる凸部の幅)である。
【0033】
溝122の長手方向(X軸方向)に垂直な断面は、図2では矩形であるが、三角形であってもよい。断面三角形の溝122は、深さが浅くなるほど、幅が広くなる。この場合、インプリント法で使用されるモールドの剥離が容易である。
【0034】
配向層12は、エネルギー硬化性組成物の共重合体である。エネルギー硬化性組成物は、光硬化性組成物、又は熱硬化性組成物である。特に加工性、耐熱性及び耐久性に優れる点から光硬化性組成物が好ましい。光硬化性組成物は、例えば、単量体(モノマー)、光重合開始剤、溶剤、及び必要に応じた添加剤(例えば界面活性剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤)を含む組成物である。光硬化性組成物として、例えば特許文献2の段落0028~0060に記載されているものが使用される。
【0035】
配向層12は、例えばインプリント法で形成される。インプリント法では、透明基材11とモールドの間にエネルギー硬化性組成物を挟み、モールドの凹凸パターンをエネルギー硬化性組成物に転写し、エネルギー硬化性組成物を硬化する。インプリント法を用いれば、溝122の寸法及び形状を精度良く制御でき、異物の混入も軽減できる。
【0036】
エネルギー硬化性組成物は、透明基材11の上に塗布されてもよいし、モールドの上に塗布されてもよい。その塗布方法は、スピンコート法、バーコート法、ディップコート法、キャスト法、スプレーコート法、ビードコート法、ワイヤーバーコート法、ブレードコート法、ローラーコート法、カーテンコート法、スリットダイコート法、グラビアコート法、スリットリバースコート法、マイクログラビア法、又はコンマコート法等である。
【0037】
配向層12の厚みT2(図2参照)は、例えば1nm~20μmであり、好ましくは50nm~10μmであり、より好ましくは100nm~5μmである。配向層12の厚みT2は、透明基材11の配向層12が形成される表面11aの各点における法線方向に測定する。配向層12が溝122を有する場合、本明細書において、配向層12の厚みT2とは、溝122の底と透明基材11の表面11aとの間隔のことである。配向層12の厚みT2が20μm以下であれば加工性が良い。
【0038】
配向層12のガラス転移点Tg_alは、例えば40℃~200℃であり、好ましくは60℃~180℃であり、より好ましくは80℃~150℃である。Tg_alが上記範囲内であれば、曲げ加工性が良い。配向層12のガラス転移点は、例えばTMAにより測定される。
【0039】
なお、配向層12は、微細な平行溝構造を含むものには限定されない。配向層12は、下記の処理が施されたものであってもよい。配向層12に施される処理としては、ポリイミドのラビング処理、偏光UV照射によるシランカップリング剤若しくはポリイミドの光分解、偏光UV照射による光二量化若しくは光異性化、剪断力による流動配向処理、又は無機物の斜め蒸着による配向処理等が挙げられる。複数の処理が、組み合わせて使用されてもよい。
【0040】
配向層12は、任意の構成であって、無くてもよい。その場合、透明基材11には、液晶層13の液晶分子を配向させる処理が施されてもよい。その処理は、例えばポリイミドのラビング、偏光UV照射によるシランカップリング剤又はポリイミドの光分解、偏光UV照射による光二量化若しくは光異性化の利用、剪断力による流動配向処理、又は無機物の斜め蒸着による配向処理等である。
【0041】
液晶層13は、例えば1/4波長板である。1/4波長板と、不図示の直線偏光板とが組み合わせて用いられてもよい。直線偏光板の吸収軸と、1/4波長板の遅相軸とは、45°ずらして配置される。直線偏光板と1/4波長板とで、円偏光板が構成される。
【0042】
液晶層13は、遅相軸と進相軸を有する。Z軸方向視で、遅相軸はX軸方向であり、進相軸はY軸方向である。遅相軸は屈折率の最も大きい方向であり、進相軸は屈折率の最も小さい方向である。遅相軸の屈折率neと進相軸の屈折率noとの差Δn(Δn=ne-no)と、液晶層13のZ軸方向寸法dとの積が、リタデーションRdである。つまり、Rdは、Rd=Δn×dの式から求められる。
【0043】
液晶層13は、図2(B)に示すように、配向層12によって互いに平行に配向される複数の液晶分子131を含む。Z軸方向視で、液晶分子131の長軸方向はX軸方向であり、液晶分子131の短軸方向はY軸方向である。液晶分子131は、本実施形態では棒状液晶であるが、ディスコティック液晶であってもよい。液晶分子131は、ツイストしていてもよい。
【0044】
液晶層13は、液晶組成物の塗布及び乾燥によって形成される。液晶組成物は、アクリル基又はメタクリル基を含む光硬化性の液晶を含む。液晶組成物は、単独で液晶相を示さない成分を含んでいてもよい。重合によって液晶相が生じればよい。液晶相を示さない成分として、例えば単官能の(メタ)アクリレート、2官能の(メタ)アクリレート、3官能以上の(メタ)アクリレートなどが用いられる。液晶組成物は、光硬化性のモノマーを含んでいてもよい。重合性の液晶組成物は、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、重合開始剤、界面活性剤、カイラル剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、消泡剤、又は二色性色素など用いられる。複数種類の添加剤が併用されてもよい。
【0045】
液晶組成物の塗布方法は、一般的なものであってよい。液晶組成物の塗布方法は、例えば、スピンコート法、バーコート法、押し出しコート法、ダイレクトグラビアコート法、リバースグラビアコート法、又はダイコート法等である。液晶組成物の溶剤は、塗布後の加熱によって除去される。
【0046】
液晶組成物の溶剤は、例えば有機溶剤である。有機溶剤は、アルコール(例えばイソプロピルアルコール)、アミド(例えばN,N-ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例えばジメチルスルホキシド)、炭化水素(例えばベンゼン、若しくはヘキサン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、若しくはプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート)、ケトン(例えばアセトン、若しくはメチルエチルケトン)、又はエーテル(例えばテトラヒドロフラン、若しくは1,2-ジメトキシエタン)である。2種類以上の有機溶剤が併用されてもよい。なお、液晶層13は、溶剤を使用しない蒸着法または真空注入法で形成されてもよい。
【0047】
使用する液晶組成物は、硬化後のΔn値の波長分散が正のものを用いても良いし、負のものを用いても良い。
【0048】
液晶組成物は、重合性の化合物として、例えば下記式(a-1)~(a-13)に示す化合物を含む。
【0049】
【化1】
【化2】
【化3】
上記式(a-5)及び(a-8)中、nは3~6の整数である。上記式(a-6)及び(a-7)中、Rは炭素原子数3~6のアルキル基である。
【0050】
液晶層13の厚みT3(図2参照)は、光の波長と、位相差と、Δn(Δn=ne-no)とに基づいて決められる。例えば、光の波長が543nmであり、位相差が1/4波長である場合、Rdは136nmである。Rdが136nmであってΔnが0.1である場合、液晶層13の厚みT3は1360nmである。
【0051】
液晶層13の厚みT3は、上記の通り、光の波長と、位相差と、Δnとに基づいて決められ、特に限定されないが、例えば0.3μm~30μmであり、好ましくは0.5μm~20μmであり、より好ましくは0.8μm~10μmである。T3が0.3μm以上であれば、目的の位相差が得られやすい。また、T3が30μm以下であれば、液晶分子131が配向しやすい。
【0052】
なお、液晶層13は、1/4波長板には限定されず、1/2波長板等であってもよい。また、液晶層13は、直交する2つの直線偏光成分間の位相をずらす位相差層には限定されず、補償層であってもよい。補償層は、例えば、液晶ディスプレイの異なる視野角で生じる位相差を補正し、所定の視野角内で画面のコントラストを向上させる。
【0053】
液晶層13の厚みT3は、透明基材11の表面11aの各点における法線方向に測定する。配向層12が溝122を有する場合、本明細書において、液晶層13の厚みT3とは、溝122の底と液晶層13の配向層12とは反対側の表面との間隔のことである。
【0054】
液晶層13のガラス転移点Tg_aは、例えば50℃~200℃であり、好ましくは80℃~180℃である。Tg_aが上記範囲内であれば、曲げ加工性が良い。液晶層13のガラス転移点Tg_aは、例えばTMAで測定される。
【0055】
位相差板10の厚みT4は、特に限定されないが、例えば0.011mm~0.301mmであり、好ましくは0.021mm~0.101mmであり、より好ましくは0.031mm~0.091mmである。位相差板10の厚みT4は、透明基材11の表面11aの各点における法線方向に測定する。
【0056】
なお、位相差板10は、図示しないが、液晶層13とは遅相軸の方向が異なる液晶層を含んでもよく、当該液晶層の液晶分子を配向させる配向層を更に含んでもよい。つまり、位相差板10は、広帯域位相差板であってもよい。位相差板10に含まれる液晶層の数は、2つ以上であってもよい。
【0057】
位相差板10は、接着層20を介して、3次元構造物40と接着される。接着層20は、例えば、透明光学粘着剤(OCA)、液体接着剤(OSA)、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、シクロオレフィンポリマー(COP)、又は熱可塑性ポリウレタン(TPU)である。
【0058】
接着層20は、位相差板10と3次元構造物40を接着する。位相差板10と3次元構造物40の接着前に、接着層20は位相差板10と積層される。位相差板10と接着層20で積層板30が構成される。なお、位相差板10と3次元構造物40の接着前に、接着層20は3次元構造物40と積層されてもよい。
【0059】
接着層20の位相差(リタデーション)は、例えば5nm以下であり、好ましくは3nm以下である。接着層20の位相差は、色調のバラツキを低減する観点から、小さいほどよく、ゼロであってもよい。接着層20の位相差は、例えば平行ニコル回転法により測定する。
【0060】
接着層20のガラス転移点は、例えば-60℃~100℃であり、好ましくは-40℃~50℃である。接着層20のガラス転移点が上記範囲内であれば、曲げ加工性と形状追従性とを両立できる。接着層20のガラス転移点は、例えばTMAにより測定される。
【0061】
位相差板10と3次元構造物40とは、加熱されながら接着される。加熱温度(℃)は、透明基材11のガラス転移点Tg_fを基準として設定され、例えば(Tg_f-10)℃以上、(Tg_f+30)℃以下の範囲内で設定される。位相差板10と3次元構造物40の接着は、真空中で実施されてもよい。
【0062】
次に、図3を参照して、位相差板10の変形例について説明する。位相差板10は、透明基材11と、配向層12Aと、1/4波長板13Aと、支持層14と、垂直配向液晶層13Bと、配向層12Cと、1/2波長板13Cと、を有する。1/4波長板13Aと、垂直配向液晶層13Bと、1/2波長板13Cは、液晶層13の一例である。
【0063】
位相差板10は、光の透過方向(図3において矢印方向)に、1/2波長板13Cと、垂直配向液晶層13Bと、1/4波長板13Aと、をこの順番で有する。位相差板10は、円偏光板として用いられる。1/2波長板13Cは、直線偏光板である。
【0064】
1/4波長板13Aと1/2波長板13Cは、ホモジニアス配向またはツイスト配向の状態で固定させられた液晶分子を含む。垂直配向液晶層13Bは、ホメオトロピック配向の状態で固定させられた液晶分子を含む。ホモジニアス配向またはツイスト配向は、液晶分子の長軸が位相差板10の板面に対して平行な配向である。ホメオトロピック配向は、液晶分子の長軸が位相差板10の板面に対して垂直な配向である。
【0065】
配向層12A、12Cは、配向層12の一例である。配向層12Aは、1/4波長板13Aを構成する液晶分子を配向させる。配向層12Cは、1/2波長板13Cを構成する液晶分子を配向させる。なお、液晶分子が所望の方向に配向させた状態で固定されればよく、これらの配向層12A、12Cは無くてもよい。支持層14は、図示しない基材シートの上に形成した垂直配向液晶層13Bを、基材シートから転写するための層である。
【0066】
なお、本変形例の位相差板10は、1/4波長板13Aと1/2波長板13Cの間に垂直配向液晶層13Bを有するが、垂直配向液晶層13Bを有しなくてもよい。位相差板10は、液晶層13として、1/4波長板13Aと1/2波長板13Cのみを有してもよい。また、位相差板10は、液晶層13として、1/4波長板13Aのみ、または1/2波長板13Cのみを有してもよい。
【0067】
次に、主に図4を参照して、位相差板10の貯蔵弾性率の異方性の一例について説明する。位相差板10の液晶層13は、液晶分子131(図2(B)参照)の長軸方向に伸ばし難く、液晶分子131の短軸方向に伸ばし易い。伸ばし難さは、例えば貯蔵弾性率で表される。貯蔵弾性率Eは、ISO 6721-4:1994に準拠して測定する。貯蔵弾性率が最大になる方向で、伸ばし難さが最大になる。
【0068】
平面視で液晶分子131が配向していれば、平面視で液晶層13の貯蔵弾性率が180°周期で変化する。本明細書において、平面視とは、位相差板10の板面に対して垂直な方向から見たことを意味する。なお、垂直配向液晶層13Bは、液晶分子が垂直に配向しており、平面視で貯蔵弾性率が一様である。
【0069】
平面視で、1/4波長板13Aと1/2波長板13Cは、貯蔵弾性率が180°周期で変化する。1/4波長板13Aは、図4に示すθ1方向とθ5方向において貯蔵弾性率が最大になる。また、1/2波長板13Cは、図4に示すθ3方向とθ7方向において貯蔵弾性率が最大になる。
【0070】
平面視で液晶層13の貯蔵弾性率が180°周期で変化していれば、平面視で位相差板10の貯蔵弾性率が180°周期で変化する。
【0071】
例えば、位相差板10が1/4波長板13Aと1/2波長板13Cを有する場合、位相差板10の貯蔵弾性率は、θ2方向とθ6方向において最大になる。θ2方向は、θ1方向とθ3方向を二等分する方向である。θ6方向は、θ5方向とθ7方向を二等分する方向である。θ2方向とθ6方向とは180°離れている。
【0072】
また、位相差板10が1/4波長板13Aと1/2波長板13Cを有する場合、位相差板10の貯蔵弾性率は、θ4方向とθ8方向において最小になる。θ4方向とθ8方向は、θ2方向とθ6方向に対して垂直な方向である。θ4方向とθ8方向とは180°離れている。
【0073】
なお、位相差板10は、1/4波長板13Aと1/2波長板13Cの両方を有しなくてもよく、いずれか一方を有していてもよい。後者の場合も、平面視で、位相差板10の貯蔵弾性率が180°周期で変化する。
【0074】
次に、主に図5図9を参照して、光学素子1の製造方法の一例について説明する。光学素子1の製造方法は、第1型50を準備する工程を有する。第1型50は、3次元構造物40を取り囲むと共に、3次元構造物40と位相差板10とを間隔をおいて保持する。なお、接着層20の図示は省略する。
【0075】
第1型50は、例えば、位相差板10の周縁を保持する外枠51と、外枠51の内側に配置される内枠52と、を有する。内枠52は、図示しない複数のブロックに分割されている。それゆえ、内枠52は、3次元構造物40と位相差板10の間隔を変更可能である。また、内枠52は、真空ポンプなどで排気可能である。
【0076】
第1型50は、好ましくは、位相差板10と同じ外寸を有する。つまり、第1型50の周縁は、好ましくは、位相差板10の周縁と同じ大きさを有する。位相差板10の周縁が外枠51の周縁に一致するように、位相差板10が設置される。これにより、液晶分子の配向方向を所望の方向に調整できる。
【0077】
平面視で、第1型50と位相差板10とは、いずれも、長辺と短辺を有する長方形であることが好ましい。位相差板10の光学特性は、180°周期で変化する。第1型50と位相差板10とを長辺同士が一致するように重ね合わせれば、液晶分子の配向方向を所望の方向に調整できる。
【0078】
なお、平面視で、第1型50と位相差板10とは、いずれも、正方形であってもよい。この場合、位相差板10には、液晶分子の配向方向を表すアライメントマークが形成されていることが好ましい。アライメントマークを基に、液晶分子の配向方向を所望の方向に調整できる。
【0079】
第1型50は、開口部53が形成される平面54と、平面54から突出する凸部55とを有する。凸部55は、開口部53の縁の一部に沿って設けられる。凸部55は、図5図9に示すように開口部53の縁から離れていることが好ましいが、開口部53の縁に接していてもよい。
【0080】
図5に示すように、凸部55は、位相差板10の貯蔵弾性率が最大になる位置に一対設けられる。例えば、位相差板10が1/4波長板13Aと1/2波長板13Cを有する場合、位相差板10の貯蔵弾性率はθ2方向とθ6方向において最大になる。それゆえ、θ2方向とθ6方向に凸部55が設けられる。
【0081】
図6図9に示すように、光学素子1の製造方法は、平面54と凸部55とで位相差板10を支持しながら位相差板10を3次元構造物40の曲面40aに沿って曲げ加工する工程を有する。凸部55は、平面54に比べて、位相差板10と3次元構造物40との高低差を大きくできる。
【0082】
位相差板10と3次元構造物40との高低差が大きいほど、位相差板10が伸ばし易い。位相差板10の貯蔵弾性率が最大になる位置に凸部55を設けることで、位相差板10を均等に伸ばすことができる。よって、位相差板10の厚みのばらつきを低減でき、位相差板10のリタデーションRdのばらつきを低減できる。
【0083】
図7に示すように、光学素子1の製造方法は、位相差板10を基準として第1型50とは反対側(例えば上側)に第2型60を配置する工程を有してもよい。第1型50が下型であって、第2型60が上型である。第2型60は、例えば、位相差板10に接触するベースプレート61と、ベースプレート61を介して位相差板10を加熱する加熱プレート62と、を有する。
【0084】
ベースプレート61は、位相差板10との対向面に凹部63を有する。凹部63には、凸部55が挿入される。凹部63の壁面には、不図示のガス穴が複数形成される。ガス穴は、凹部63のガス(例えば空気)を吸引する。また、ガス穴は、凹部63にガス(例えば圧縮空気)を噴射する。吸引用のガス穴と、噴射用のガス穴とは、別々に設けられてもよい。
【0085】
図7に示すように、ベースプレート61のガス穴が、凹部63のガスを吸引することで、凹部63の壁面に位相差板10を吸着する。この状態で、加熱プレート62のヒータが、ベースプレート61を介して位相差板10を加熱し、位相差板10を軟化する。位相差板10がベースプレート61に密着しているので、加熱プレート62の熱が位相差板10に伝わりやすい。
【0086】
その後、図8に示すように、ベースプレート61のガス穴が凹部63にガスを噴射すると同時に第1型50が真空ポンプで減圧されることで、位相差板10が3次元構造物40に押し付けられる。位相差板10は、最初に3次元構造物40の曲面40aの中心に接触し、続いて中心から周縁に向けて徐々に接触する。中心から周縁に向けて空気を逃がすことができ、空気の噛み込みを抑制できる。
【0087】
図9に示すように、位相差板10は、3次元構造物40の曲面40aの全体に接触する。位相差板10の曲面40aからはみ出した部分は、切除される。これにより、光学素子1が得られる。
【実施例0088】
以下、実験データについて説明する。実施例1と比較例1は、凸部55の有無以外、同じ条件で光学素子1を作製した。実施例1では凸部55の有る第1型50を使用したのに対し、比較例1では凸部55の無い第1型50を使用した。比較例1では、凸部55を取り外し、平面54のみで位相差板10を支持しながら、位相差板10を3次元構造物40の曲面40aに沿って曲げ加工した。
【0089】
実施例1と比較例1では、位相差板10として、図3に示すように、透明基材11と、配向層12Aと、1/4波長板13Aと、支持層14と、垂直配向液晶層13Bと、配向層12Cと、1/2波長板13Cと、をこの順番で有する物を準備した。透明基材11は、TACフィルムを用意した。配向層12Aは、新中村化学工業社製のNKエステル ADCPを用いて、転写法でストライプパターン状の格子(ピッチp:90nm、溝の深さD:30nm、厚みT2:1.8μm)を形成した。1/4波長板13Aは、スピンコート法でBASF社製のLC242を配向層12Aの上に塗布し、加熱によって乾燥し、UV露光によって硬化させることで形成した。1/4波長板13Aの厚みT3は1.2μmであった。支持層14は、新中村化学工業社製のNKエステル A-200を1/4波長板13Aの上に転写し、UV露光によって硬化させることで形成した。支持層14の厚みは1.3μmであった。垂直配向液晶層13Bは、ENEOS液晶株式会社製のNV FILMを支持層14の上に転写することで形成した。垂直配向液晶層13Bの厚みT3は、0.8μmであった。配向層12Cは、新中村化学工業社製のNKエステル ADCPを用いて、転写法でストライプパターン状の格子(ピッチp:90nm、溝の深さD:30nm、厚みT2:5.1μm)を形成した。1/2波長板13Cは、スピンコート法でBASF社製のLC242を配向層12Aの上に塗布し、加熱によって乾燥し、UV露光によって硬化させることで形成した。1/2波長板13Cの厚みT3は、2.3μmであった。
【0090】
次に、位相差板10(詳細には透明基材11)に接着層20を貼合することで、積層板30を作製した。接着層20の貼合には、ハンドローラーを用いた。
【0091】
次に、図6に示すように、第1型50の開口部53に3次元構造物40を収容し、第1型50の平面54の上に位相差板10を載せた。その後、位相差板10の上に、第2型60を設置した。
【0092】
次に、図7に示すように、第2型60が凹部63の壁面に位相差板10を吸着した。この状態で、第2型60が位相差板10を加熱し、位相差板10を軟化した。位相差板10の加熱温度は、150℃であった。
【0093】
次に、図8に示すように、第2型60がガスを0.9MPaで噴射すると同時に第1型50が真空ポンプで減圧されることで、位相差板10を3次元構造物40に押し付けた。位相差板10は、最初に3次元構造物40の曲面40aの中心に接触し、続いて中心から周縁に向けて徐々に接触した。
【0094】
図9に示すように3次元構造物40の曲面40aの全体に位相差板10を接着した後、位相差板10の曲面40aからはみ出した部分を切除した。これにより、光学素子1を作製した。
【0095】
実施例1と比較例1で作製した光学素子のリタデーションRdは、フォトニックラティス社製のWPA-200-Lを用いて測定した。測定点は、曲面40aの重心P0から15mmの円周上に等ピッチで配置し、0°方向から180°方向まで22.5°間隔で配置した。なお、図4に示す+y方向が0°方向であり、図4に示す-x方向が90°方向であり、図4に示す-y方向が180°方向である。測定結果を図10に示す。
【0096】
図10において、実線は実施例1で作製した光学素子のリタデーションRdであり、破線は比較例1で作製した光学素子のリタデーションRdである。図10から明らかなように、凸部55が有れば、凸部55が無い場合に比べて、光学素子のリタデーションRdのばらつきを低減できることが分かる。
【0097】
以上、本開示に係る光学素子の製造方法について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除および組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0098】
1 光学素子
10 位相差板
13 液晶層
20 接着層
40 3次元構造物
40a 曲面
50 第1型
53 開口部
54 平面
55 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10