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特開2024-58077発光装置、前照灯及びそれを備えた車両
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  • 特開-発光装置、前照灯及びそれを備えた車両 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058077
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】発光装置、前照灯及びそれを備えた車両
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20240418BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20240418BHJP
   C09K 11/79 20060101ALI20240418BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20240418BHJP
   C09K 11/59 20060101ALI20240418BHJP
   C09K 11/61 20060101ALI20240418BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20240418BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20240418BHJP
   F21S 41/14 20180101ALI20240418BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20240418BHJP
   F21Y 115/00 20160101ALN20240418BHJP
【FI】
H01L33/50
C09K11/80
C09K11/79
C09K11/64
C09K11/59
C09K11/61
C09K11/08 J
C09K11/02 Z
F21S41/14
F21W102:00
F21Y115:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165217
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日野 はるか
(72)【発明者】
【氏名】佐野 由紀子
【テーマコード(参考)】
4H001
5F142
【Fターム(参考)】
4H001CA02
4H001CA05
4H001XA01
4H001XA03
4H001XA07
4H001XA08
4H001XA11
4H001XA12
4H001XA13
4H001XA14
4H001XA19
4H001XA20
4H001XA21
4H001XA31
4H001XA37
4H001XA38
4H001XA39
4H001XA55
4H001XA56
4H001XA64
4H001XA65
4H001XA71
4H001XA90
4H001XB32
4H001XB41
4H001XB42
4H001YA58
4H001YA63
5F142BA02
5F142BA32
5F142CA11
5F142CA13
5F142CB03
5F142CD02
5F142CG01
5F142DA13
5F142DA22
5F142DA32
5F142DA35
5F142DA56
5F142DA73
5F142DB24
5F142FA28
5F142GA29
5F142HA01
(57)【要約】
【課題】グレアを低減することができ、耐久性を高めた発光装置、前照灯及びそれを備えた車両を提供する。
【解決手段】400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、480nm以上580nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体と、580nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、第1蛍光体の組成とは異なる組成を有する第2蛍光体と、を含む波長変換部材と、を備えた発光装置であり、発光装置は、CIEで規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線を考慮した前記発光装置の発光の輝度Lに対する、ヒトの明所視標準比視感度曲線及びヒトのS錐体の分光感度を考慮した発光装置の発光の第1実効放射輝度Lsの比である第1輝度比Ls/Lが0.9以下である光を発し、第1蛍光体が、式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体を含む、発光装置である。
【選択図】図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、
480nm以上580nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体と、580nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、前記第1蛍光体の組成とは異なる組成を有する第2蛍光体と、を含む波長変換部材と、
を備えた発光装置であり、
前記発光装置は、CIE(国際照明委員会)で規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線を考慮した380nm以上780nm以下の範囲の前記発光装置の発光の輝度Lに対する、前記ヒトの明所視標準比視感度曲線及びヒトのS錐体の分光感度を考慮した380nm以上780nm以下の範囲の前記発光装置の発光の第1実効放射輝度Lsの比であり、下記式(1)から導き出される第1輝度比Ls/Lが0.9以下である光を発し、
前記第1蛍光体が、下記式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体を含む、発光装置。
(式(1)中、S(λ)は発光装置の発光の分光放射輝度であり、V(λ)はCIE(国際照明委員会)で規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線であり、Gs(λ)は波長λnmが380nm以上550nm以下の範囲内におけるヒトのS錐体の分光感度である。)
Ln 3-eCe(Al1-aGa12 (1A)
(式(1A)中、Lnは、Y、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、a及びeは、0≦a≦0.5、0.019≦e≦0.2を満たす。)
【請求項2】
相関色温度が1800K以上5000K以下の光を発する、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1蛍光体は、発光スペクトルの半値全幅が90nm以上125nm以下の範囲内である、請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第2蛍光体は、発光スペクトルの半値全幅が3nm以上15nm以下の範囲内であるか、又は発光スペクトルの半値全幅が60nm以上120nm以下の範囲内である、請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項5】
前記式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体のフィッシャーサブシーブサイザー法により測定された平均粒径が15μm以上40μm以下の範囲内である、請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第1蛍光体が、前記式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体を含み、さらに下記式(1B)で表される組成を有する第1窒化物蛍光体を含む、請求項1又は2に記載の発光装置。
LaCeLn Si:Ce (1B)
(式(1B)中、Lnは、Y及びGdからなる群から選択される少なくとも1種を必須として含み、Sc及びLuからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよく、組成1モル中に含まれるLn元素を100モル%としたときに、Lnに含まれるY及びGdの合計が90モル%以上であり、w、x、y及びzは、1.2≦w≦2.2、0.5≦x≦1.2、10≦y≦12、0.5≦z≦1.2、1.80<w+x<2.40、2.9≦w+x+z≦3.1を満たす。)
【請求項7】
前記第2蛍光体が、下記式(2A)で表される組成を有する第2窒化物蛍光体、下記式(2B)で表される組成を有する第3窒化物蛍光体、下記式(2C)で表される組成を有するフッ化物蛍光体、及び下記式(2C)とは組成が異なる下記式(2C’)で表される組成を有するフッ化物蛍光体、及び下記式(2G)で表される組成を有するαサイアロン蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の発光装置。
Si:Eu (2A)
(式(2A)中、Mは、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含むアルカリ土類金属元素である。)
SrCaAlSi:Eu (2B)
(式(2B)中、q、s、t、u及びvは、それぞれ0≦q<1、0<s≦1、q+s≦1、0.9≦t≦1.1、0.9≦u≦1.1、2.5≦v≦3.5を満たす。)
[M 1-bMn4+ ] (2C)
(式(2C)中、Aは、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種を含み、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、bは、0<b<0.2を満たし、cは、[M 1-bMn4+ ]イオンの電荷の絶対値であり、dは、5<d<7を満たす。)
A’c’[M1-b’Mn4+ b’d’] (2C’)
(式(2C’)中、A’は、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種を含み、M’は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、b’は、0<b’<0.2を満たし、c’は、[M1-b’Mn4+ b’d’]イオンの電荷の絶対値であり、d’は、5<d’<7を満たす。)
v3Si12-(w3+x3)Alw3+x3x316-x3:Eu (2G)
(式(2G)中、Mは、Li、Mg、Ca、Sr、Y及びランタノイド元素(但し、LaとCeを除く。)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、v3、w3及びx3は、それぞれ0<v3≦2.0、2.0≦w3≦6.0、0≦x3≦1.0を満たす。)
【請求項8】
前記波長変換部材が、前記第1蛍光体及び前記第2蛍光体と、透光性材料とを含む波長変換体を備え、波長変換体中の透光性材料100質量部に対して、第1蛍光体及び第2蛍光体の総量が50質量部以上500質量部以下の範囲内である、請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項9】
前記波長変換部材が、前記第1蛍光体及び前記第2蛍光体と、透光性材料とを含む波長変換体を備え、
前記波長変換体が、前記第1蛍光体及び前記第2蛍光体の充填率が高い高濃度層と、前記第1蛍光体及び前記第2蛍光体の充填率が低い低濃度層とを備え、
前記高濃度層が前記発光素子の側に配置された、請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項10】
前記請求項1又は2に記載の発光装置を備えた、前照灯。
【請求項11】
前記第1輝度比Ls/Lの値がそれぞれ異なる2種以上の発光装置を備えた、請求項10に記載の前照灯。
【請求項12】
前記請求項1又は2に記載の発光装置を含む第1発光装置と、CIE(国際照明委員会)で規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線を考慮した380nm以上780nm以下の発光装置の発光の輝度Lに対する、前記ヒトの明所視標準比視感度曲線及びヒトのS錐体の分光感度を考慮した380nm以上780nm以下の発光装置の発光の第1実効放射輝度の比であり、下記式(1)から導き出される第1輝度比Ls/Lが0.9を超える光を発する第2発光装置の2種以上の発光装置を備えた、前照灯。
(式(1)中、S(λ)は発光装置の発光の分光放射輝度であり、V(λ)はCIE(国際照明委員会)で規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線であり、Gs(λ)は波長λnmが380nm以上550nm以下の範囲内におけるヒトのS錐体の分光感度である。)
【請求項13】
400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、
480nm以上580nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体と、580nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、前記第1蛍光体の組成とは異なる組成を有する第2蛍光体と、を含む波長変換部材と、
を備えた発光装置であり、
前記発光装置は、300nm以上800nm以下の範囲において前記発光装置の発光の放射輝度Aに対する、波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線を考慮した300nm以上800nm以下の範囲の発光装置の発光の第2実効放射輝度Bの比であり、下記式(2)から導き出される第2輝度比B/Aが0.104以下である光を発し、
前記第1蛍光体が、下記式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体を含む、発光装置。
(式(2)中、S(λ)は発光装置の発光の分光放射輝度であり、Dc(λ)はレイリー散乱において、波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線である。)
Ln 3-eCe(Al1-aGa12 (1A)
(式(1A)中、Lnは、Y、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、a及びeは、0≦a≦0.5、0.019≦e≦0.2を満たす。)
【請求項14】
相関色温度が1800K以上5000K以下の光を発する、請求項13に記載の発光装置。
【請求項15】
前記第1蛍光体は、発光スペクトルの半値全幅が90nm以上125nm以下の範囲内である、請求項13又は14に記載の発光装置。
【請求項16】
前記第2蛍光体は、発光スペクトルの半値全幅が3nm以上15nm以下の範囲内であるか、又は発光スペクトルの半値全幅が60nm以上120nm以下の範囲内である、請求項13又は14に記載の発光装置。
【請求項17】
前記第1蛍光体が、前記式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体を含み、さらに下記式(1B)で表される組成を有する第1窒化物蛍光体を含む、請求項13又は14に記載の発光装置。
LaCeLn Si:Ce (1B)
(式(1B)中、Lnは、Y及びGdからなる群から選択される少なくとも1種を必須として含み、Sc及びLuからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよく、組成1モル中に含まれるLn元素を100モル%としたときに、Lnに含まれるY及びGdの合計が90モル%以上であり、w、x、y及びzは、1.2≦w≦2.2、0.5≦x≦1.2、10≦y≦12、0.5≦z≦1.2、1.80<w+x<2.40、2.9≦w+x+z≦3.1を満たす。)
【請求項18】
前記第2蛍光体が、下記式(2A)で表される組成を有する第2窒化物蛍光体、下記式(2B)で表される組成を有する第3窒化物蛍光体、及び下記式(2C)で表される組成を有するフッ化物蛍光体、下記式(2C)とは組成が異なる下記式(2C’)で表される組成を有するフッ化物蛍光体、及び下記式(2G)で表される組成を有するαサイアロン蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項13又は14に記載の発光装置。
Si:Eu (2A)
(式(2A)中、Mは、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含むアルカリ土類金属元素である。)
SrCaAlSi:Eu (2B)
(式(2B)中、q、s、t、u及びvは、それぞれ0≦q<1、0<s≦1、q+s≦1、0.9≦t≦1.1、0.9≦u≦1.1、2.5≦v≦3.5を満たす。)
[M 1-bMn4+ ] (2C)
(式(2C)中、Aは、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種を含み、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、bは、0<b<0.2を満たし、cは、[M 1-bMn4+ ]イオンの電荷の絶対値であり、dは、5<d<7を満たす。)
A’c’[M1-b’Mn4+ b’d’] (2C’)
(式(2C’)中、A’は、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種を含み、M’は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、b’は、0<b’<0.2を満たし、c’は、[M1-b’Mn4+ b’d’]イオンの電荷の絶対値であり、d’は、5<d’<7を満たす。)
v3Si12-(w3+x3)Alw3+x3x316-x3:Eu (2G)
(式(2G)中、Mは、Li、Mg、Ca、Sr、Y及びランタノイド元素(但し、LaとCeを除く。)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、v3、w3及びx3は、それぞれ0<v3≦2.0、2.0≦w3≦6.0、0≦x3≦1.0を満たす。)
【請求項19】
前記式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体のフィッシャーサブシーブサイザー法により測定された平均粒径が15μm以上40μm以下の範囲内である、請求項13又は14に記載の発光装置。
【請求項20】
前記波長変換部材が、前記第1蛍光体及び前記第2蛍光体と、透光性材料とを含む波長変換体を備え、波長変換体中の透光性材料100質量部に対して、第1蛍光体及び第2蛍光体の総量が50質量部以上500質量部以下の範囲内である、請求項13又は14に記載の発光装置。
【請求項21】
前記波長変換部材が、前記第1蛍光体及び前記第2蛍光体と、透光性材料とを含む波長変換体を備え、
前記波長変換体が、前記第1蛍光体及び前記第2蛍光体の充填率が高い高濃度層と、前記第1蛍光体及び前記第2蛍光体の充填率が低い低濃度層とを備え、
前記高濃度層が、前記発光素子の側に配置された、請求項13又は14に記載の発光装置。
【請求項22】
前記請求項13又は14に記載の発光装置を備えた、前照灯。
【請求項23】
前記第2輝度比B/Aの値がそれぞれ異なる2種以上の発光装置を備えた、請求項22に記載の前照灯。
【請求項24】
前記請求項13又は14に記載の発光装置を含む第1発光装置と、
300nm以上800nm以下の範囲において発光装置の発光の放射輝度Aに対する、波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線を考慮した300nm以上800nm以下の範囲の発光装置の発光の第2実効放射輝度Bの比であり、下記式(2)から導き出される第2輝度比B/Aが0.104を超える光を発する第2発光装置の2種以上の発光装置を備えた、前照灯。
(式(2)中、S(λ)は発光装置の発光の分光放射輝度であり、Dc(λ)はレイリー散乱において、波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線である。)
【請求項25】
前記請求項1又は13に記載の発光装置を備えた、車両。
【請求項26】
前記請求項12又は24に記載の前照灯を備えた、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、前照灯及びそれを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動四輪車や自動二輪車等の道路運送車両や、整地・運搬・積込用機械のようなトラクター系又は堀削用機械等のショベル系の車両系建設機械の前照灯は、例えばハロゲンランプ、HIDランプ(High-Intensity Discharge Lamp)、半導体発光素子を励起光源とする発光装置等の灯具が用いられる。例えば自動車用の前照灯は、前面の左右にそれぞれ1個又は複数個が運転者の視点よりも低い位置で左右対称に取り付けられる。前照灯は、ハイビーム(走行用前照灯)用灯具と、ロービーム(すれ違い用前照灯)用灯具とを備え、これらの切り換えができるようになっている。ハイビームは比較的遠方の例えば100m程度までの前方を照らし、ロービームはハイビームよりもやや下方の近い部分、例えば40m程度の前方を照らす。
【0003】
例えば特許文献1には、ロービームモードで点灯させる第1灯具ユニットと、ハイビームモードで同時点灯させる第1灯具ユニット及び第2灯具ユニットとを備えた車両用前照灯が開示されている。特許文献1には、第1灯具ユニットとして、4000Kから6500Kの相関色温度で発光する白色発光LEDを光源として用い、第2灯具ユニットとして、4000Kから5000Kの相関色温度で発光するHIDランプの一種であるメタルハライドランプを光源として用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-141917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前照灯からの発光によって先行車や対向車の運転者の視覚が刺激され、不快感や物の見えづらさを感じさせるグレアが生じる場合がある。グレアは、視野内の不適切な輝度分布又は極端な輝度の対比によって生じる感覚であり、不快感及び見る能力の低下を伴う(JIS Z9110)。さらに、前照灯の発光によって、走行車の運転者自体も反射光によって、グレアが生じる場合がある。
本発明の一態様は、グレアを低減することができ、耐久性を高めた発光装置、前照灯及びそれを備えた車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様は、400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、480nm以上580nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体と、580nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、前記第1蛍光体の組成とは異なる組成を有する第2蛍光体と、を含む波長変換部材と、を備えた発光装置であり、前記発光装置は、CIE(国際照明委員会)で規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線を考慮した380nm以上780nm以下の範囲の前記発光装置の発光の輝度Lに対する、前記ヒトの明所視標準比視感度曲線及びヒトのS錐体の分光感度を考慮した380nm以上780nm以下の範囲の前記発光装置の発光の第1実効放射輝度Lsの比であり、下記式(1)から導き出される第1輝度比Ls/Lが0.9以下である光を発し、前記第1蛍光体が、下記式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体を含む、発光装置である。
【0007】
【数1】
(式(1)中、S(λ)は発光装置の発光の分光放射輝度であり、V(λ)はCIEで規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線であり、Gs(λ)は波長λnmが380nm以上550nm以下の範囲内におけるヒトのS錐体の分光感度である。)
Ln 3-eCe(Al1-aGa12 (1A)
(式(1A)中、Lnは、Y、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、a及びeは、0≦a≦0.5、0.019≦e≦0.2を満たす。)
【0008】
第2態様は、400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、480nm以上580nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体と、580nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、前記第1蛍光体の組成とは異なる組成を有する第2蛍光体と、を含む波長変換部材と、を備えた発光装置であり、前記発光装置は、300nm以上800nm以下の範囲において前記発光装置の発光の放射輝度Aに対する、波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線を考慮した300nm以上800nm以下の範囲の発光装置の発光の第2実効放射輝度Bの比であり、下記式(2)から導き出される第2輝度比B/Aが0.104以下である光を発し、前記第1蛍光体が、下記式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体を含む、発光装置である。
【0009】
【数2】
(式(2)中、S(λ)は発光装置の発光の分光放射輝度であり、Dc(λ)はレイリー散乱において、波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの散乱強度曲線である。)
Ln 3-eCe(Al1-aGa12 (1A)
(式(1A)中、Lnは、Y、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、a及びeは、0≦a≦0.5、0.019≦e≦0.2を満たす。)
【0010】
第3態様は、前記発光装置を備えた前照灯である。
【0011】
第4態様は、前記発光装置又は前記前照灯を備えた車両である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、グレアを低減することができ、耐久性を高めた発光装置、前照灯及びそれを備えた車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】非特許文献2に開示されているヒトのS錐体の分光感度Gs(λ)である。
図1B】非特許文献2に開示されているCIEで規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線V(λ)である。
図1C】非特許文献2に開示されているV(λ):K=1.260に対応する曲線であり、グレアに対応する分光視感度V(λ)の例示である。
図2】波長300nmにおける散乱強度を1としたレイリー散乱の強度曲線Dc(λ)を示す図である。
図3A】発光装置の概略平面図である。
図3B】発光装置の概略断面図である。
図3C】発光装置の概略断面の一部の拡大図である。
図4】前照灯の水平断面図である。
図5】前照灯の正面図である。
図6】信頼性評価試験前の実施例1に係る発光装置の発光スペクトルを示す図である。
図7】信頼性評価試験後の実施例1に係る発光装置の発光スペクトルを示す図である。
図8】信頼性評価試験後の実施例1に係る発光装置の透光体面を2値化した写真である。
図9】信頼性評価試験後の比較例1に係る発光装置の透光体面を2値化した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、発光装置、前照灯及びそれを備えた車両を例示するものであって、本発明は、以下に示す、発光装置、前照灯及びそれを備えた車両に限定されない。また、特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に限定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量をいう。本明細書において、半値全幅は、発光スペクトルにおいて、最大の発光強度を示す発光ピーク波長における発光強度に対して発光強度が50%となる波長幅をいう。
【0015】
車両の前照灯には、光束やエネルギー等の特性によって、HIDランプ、ハロゲンランプ、LEDを用いた発光装置等の様々な光源が用いられている。光源の相違により、眩しく感じさせるグレアや見かけの明るさが異なる。例えば、路面の明るさは、青色光成分や、光の相関色温度にも影響を受ける。非特許文献1には、高齢者、非高齢者にかかわらず、相関色温度が例えば6600Kと高いLED光源は、ヒトが眩しいと感じる評価が開示されている(非特許文献1:橋本博等著、「白色LEDの色温度の違いによる眩しさへの影響」、財団法人日本自動車研究所、予防安全研究部、2006年10月、自動車研究、第28巻、第10号、p569からp572)。ヒトの網膜照度の低下や桿体細胞の劣化等によってもヒトが不快に感じるグレアは異なり、ヒトの年齢によっても眩しさが変化する場合がある。ヒトの網膜に存在する光受容細胞である錐体細胞の中でも、S錐体は、短波長光に対して光反応する。S錐体は、440nm付近に感度のピーク波長がある。非特許文献2には、CIE1931表色系の側光システムで用いられているヒトの明所視標準比視感度曲線V(λ)に、波長λにおけるヒトのS錐体の分光感度Gs(λ)を考慮した、グレアに対応する新たな分光視感度V(λ)の下記式(3)が開示されている(非特許文献2:小林正自等、「ヘッドランプ光源の分光分布が不快グレアに与える影響に関する研究」、社団法人自動車技術会 学術講演会前刷集、No.5から10、p9からp14)。本明細書において、分光放射輝度は、分光分布と同義である。
【0016】
【数3】
【0017】
図1Aは、非特許文献2に開示されているヒトのS錐体の分光感度Gs(λ)である。図1Aに基づき、ヒトのS錐体の分光感度Gs(λ)の数値を導くことができる。ヒトのS錐体の分光感度Gs(λ)は、380nm以上550nm以下の範囲内に分光感度のピークを有する。図1Bは、非特許文献2に開示されているCIEで規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線V(λ)である。図1Aから図1Cに示す相対値は、CIEで規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線V(λ)のピークトップを1とした値である。図1Bに基づき、CIEで規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線V(λ)の数値を導くことができる。図1Cは、非特許文献2に開示されているV(λ):K=1.260に対応する曲線であり、CIEで規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線と、ヒトのS錐体の分光感度を考慮した、グレアに対応する分光視感度V(λ)の例示である。Kは、ヒトのS錐体の分光感度Gs(λ)が寄与する割合を決定する係数である。ハロゲン電球の場合の係数Kは1.260である。
【0018】
発光装置の発光の輝度Lは、下記式(4)によって導き出される。発光装置の発光の輝度Lは、380nm以上780nm以下の範囲の発光装置の分光放射輝度S(λ)と、CIEで規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線V(λ)の積分値である。
【0019】
【数4】
【0020】
発光装置の発光の第1実効放射輝度Lsは、下記式(5)によって導き出される。発光装置の発光の第1実効放射輝度Lsは、380nm以上780nm以下の範囲の発光装置の分光放射輝度S(λ)と、前記式(3)で表されるグレアに対応するヒトの分光視感度V(λ)(=K・Gs(λ)+V(λ))との積分値を、ハロゲン電球の場合の係数K(=1.260)を用いて前記式(3)によって導かれたV(λ)のピークトップである2.3で除した数値である。
【0021】
【数5】
【0022】
発光装置の発光の第1輝度比Ls/Lは、CIEで規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線を考慮した発光装置の発光の輝度Lに対する、CIEで規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線及びヒトのS錐体の分光感度を考慮した発光装置の発光の第1実効放射輝度Lsの比である。第1輝度比Ls/Lは、発光装置の発光のグレアの低減の程度を表す。
【0023】
第1実施形態の発光装置は、400nm以上490nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する発光素子と、480nm以上580nm未満の範囲に発光ピーク波長を有する第1蛍光体と、580nm以上680nm以下の範囲に発光ピーク波長を有し、第1蛍光体の組成とは異なる組成を有する第2蛍光体と、を備える。発光装置は、下記式(1)から導き出される第1輝度比Ls/Lが0.9以下の光を発する。
【0024】
【数6】
(式(1)中、S(λ)は発光装置の発光の分光放射輝度であり、V(λ)はCIEで規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線であり、Gs(λ)は波長λnmが380nm以上550nm以下の範囲内におけるヒトのS錐体の分光感度である。)
【0025】
発光装置の発光の第1輝度比Ls/Lが0.9以下であれば、グレアを低減した光が発光装置から発せられる。発光装置の発光の第1輝度比Ls/Lが0.9を超えると、ヒトのS錐体の分光感度を考慮していない発光装置の発光の輝度Lに近くなり、グレアが低減されていない。ヒトが不快に感じるグレアを低減するために、発光装置の発光の第1輝度比Ls/Lは、0.85以下であることが好ましく、0.83以下であることがより好ましく、0.80以下であることがさらに好ましく、0.7以下でもよい。発光装置の発光は、ヒトのS錐体の分光感度を考慮すると、第1輝度比Ls/Lが0.1以上でもよく、0.2以上でもよく、0.3以上であることが好ましく、0.4以上であることがさらに好ましく、0.5以上であることがよりさらに好ましい。
【0026】
第1輝度比Ls/Lが0.9以下の光を発する発光装置は、後述する第2輝度比A/Bが0.104以下の光を発することが好ましい。第1輝度比Ls/Lが0.9以下であり、かつ、後述する第2輝度比A/Bが0.104以下である光を発する発光装置は、グレアを低減しながら、光を遠くまで到達させることができる。グレアを低減しながら光を遠くまで到達させることができる、第1実施形態の発光装置は、前照灯及びこの前照灯を備えた車両に用いることができる。第1実施形態の発光装置を用いた前照灯及びこの前照灯を備えた車両は、前照灯及び車両から発する光のグレアを低減しながら、光を遠くまで到達させることができる。
【0027】
第1実施形態の発光装置は、第1蛍光体が、下記式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体を含む。
Ln 3-eCe(Al1-aGa12 (1A)
(式(1A)中、Lnは、Y、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、a及びeは、0≦a≦0.5、0.019≦e≦0.2を満たす。)
【0028】
前記式(1A)で表される希土類アルミン酸塩蛍光体は、組成における賦活元素であるCeのモル比を表す変数eが0.019以上0.2以下(0.019≦e≦0.2)と多いため、発光装置に含まれる第1蛍光体の含有量を少なくすることができ、第1蛍光体の含有量が少ない場合であっても、発光装置は、所望の色調の光を発することができる。また、発光装置は、前記式(1A)で表される希土類アルミン酸塩蛍光体の組成における賦活元素であるCeのモル比を表す変数eが0.019以上0.2以下(0.019≦e≦0.2)と多いため、発光装置に含まれる第1蛍光体の含有量を少なくすることができ、蛍光体から発する熱を低減することができ、熱による発光装置の割れやクラック等の劣化を抑制することができ、発光装置の耐久性を高めることができる。
【0029】
前記式(1A)において、賦活元素であるCeのモル比を表す変数eは、0.019以上0.118以下の範囲内(0.019≦e≦0.118)でもよく、0.019以上0.115以下の範囲内(0.019≦e≦0.115)でもよい。前記式(1A)において、変数aと5の積でGaのモル比を表す変数aは、0以上0.45以下の範囲内(0≦a≦0.45)でもよく、0以上0.40以下の範囲内(0≦a≦0.40)でもよい。
【0030】
第2実施形態の発光装置は、440nm以上490nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する発光素子と、480nm以上580nm未満の範囲に発光ピーク波長を有する第1蛍光体と、580nm以上680nm以下の範囲に発光ピーク波長を有し、第1蛍光体の組成とは異なる組成を有する第2蛍光体と、を備える。発光装置は、300nm以上800nm以下の範囲において発光装置の発光の放射輝度Aに対する、波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線を考慮した300nm以上800nm以下の範囲の発光装置の発光の第2実効放射輝度Bの比であり、下記式(2)から導き出される第2輝度比B/Aが0.104以下である光を発する。
【0031】
【数7】
(式(2)中、S(λ)は発光装置の発光の分光放射輝度であり、Dc(λ)はレイリー散乱において、波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線である。)
【0032】
光と微粒子の相互作用によって生じる光の散乱は、光の波長λと微粒子の大きさDとの相対関係で決定される。空気中に含まれる微粒子の大きさDは光の波長λよりもはるかに小さい。レイリー散乱は、光の波長よりも小さいサイズの粒子による光の散乱である。空気中において、光は波長が短いほど散乱されやすい。光の散乱が抑制されていれば、光を遠くまで到達させることができる。光を遠くまで到達させることができる発光装置は、例えば100m程度の比較的遠い前方を照らすハイビームモード用の前照灯に好適に用いることができる。第2実施形態の発光装置は、散乱を抑制して光を比較的遠方まで到達させることができる。また、第2実施形態の発光装置を用いた前照灯及びこの前照灯を備えた車両は、光を比較的遠方まで到達させることができる。
【0033】
発光装置の発光の放射輝度Aは、下記式(6)によって導き出される。発光装置の発光の放射輝度Aは、300nm以上800nm以下の範囲における発光装置の分光放射輝度S(λ)の積分値である。
【0034】
【数8】
【0035】
図2は、波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線Dc(λ)を示す。
【0036】
発光装置の発光の第2実効放射輝度Bは、下記式(7)によって導き出される。発光装置の発光の第2実効放射輝度Bは、300nm以上800nm以下の範囲における、前述の散乱強度曲線Dc(λ)と前述の発光装置の分光放射輝度S(λ)の積分値である。
【0037】
【数9】
【0038】
発光装置の発光の第2輝度比B/Aは、300nm以上800nm以下の範囲の発光装置の発光の放射輝度Aに対する、波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線を考慮した300nm以上800nm以下の範囲の発光装置の発光の第2実効放射輝度Bの比である。第2輝度比B/Aは、発光装置の発光の散乱の程度を表す。
【0039】
発光装置の発光の第2輝度比B/Aが0.104以下であれば、散乱が抑制され、比較的遠方まで到達する光が発光装置から発せられる。発光装置の発光の第2輝度比B/Aが0.104を超えると、レイリー散乱が考慮されていない発光装置の発光の放射輝度Aに近くなる。散乱を抑制し、比較的遠方まで到達する光を発するために、発光装置の発光の第2輝度比B/Aは、0.102以下であることが好ましく、0.100以下であることがより好ましく、0.099以下であることがさらに好ましく、0.098以下であることがよりさらに好ましく、0.090以下であることが特に好ましく、0.085以下であることがさらに特に好ましい。光の散乱を抑制するためには、発光装置の発光の第2輝度比B/Aは、0.104以下であり、発光装置の発光の第2輝度比B/Aが小さい数値であることが好ましいが、発光装置の発光の第2輝度比B/Aが小さくなりすぎると、分光放射輝度が小さくなり、比較的遠方まで光を到達させることが困難になる場合がある。発光装置の発光は、レイリー散乱を考慮すると、第2輝度比B/Aが0.01以上でもよく、0.02以上でもよく、0.03以上であることが好ましく、0.04以上であることがより好ましく、0.05以上であることがよりさらに好ましい。
【0040】
第2輝度比B/Aが0.104以下の光を発する発光装置は、前述の第1輝度比Ls/Lが0.9以下の光を発することが好ましい。第2輝度比A/Bが0.104以下であり、かつ、第1輝度比Ls/Lが0.9以下である光を発する発光装置は、比較的遠くまで光を到達させることができ、グレアも低減することができる。
【0041】
第2実施形態の発光装置は、第1蛍光体が、前記式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体を含む。前記式(1A)において、賦活元素であるCeのモル比を表す変数eは、0.019以上0.118以下の範囲内(0.019≦e≦0.118)でもよく、0.019以上0.115以下の範囲内(0.019≦e≦0.115)でもよい。前記式(1A)で表される希土類アルミン酸塩蛍光体は、組成における賦活元素であるCeのモル比を表す変数eが0.019以上0.2以下(0.019≦e≦0.2)と多いため、発光装置に含まれる第1蛍光体の含有量を少なくすることができ、第1蛍光体の含有量が少ない場合であっても、発光装置は、所望の色調の光を発することができる。また、発光装置は、前記式(1A)で表される希土類アルミン酸塩蛍光体の組成における賦活元素であるCeのモル比を表す変数eが多いため、発光装置に含まれる第1蛍光体の含有量を少なくすることができ、蛍光体から発する熱を低減することができ、熱による発光装置の劣化を抑制することができ、発光装置の耐久性を高めることができる。
【0042】
以下、第1輝度比Ls/Lが0.9以下の光を発する発光装置及び/又は第2輝度比B/Aが0.104以下の光を発する発光装置について説明する。第1輝度比Ls/Lが0.9以下の光を発する発光装置と、第2輝度比B/Aが0.104以下の光を発する発光装置は、相関色温度が同一の範囲であることが好ましく、同一の部材を用いた同一の形態の発光装置でもよい。
【0043】
発光装置は、相関色温度が1800K以上5000K以下の光を発することが好ましく、2000K以上5000K以下の光を発することがより好ましい。例えば前照灯に備えられた発光装置から発せられる光の相関色温度が低い方が、先行車、対向車又は走行車自体の運転者等が眩しいと感じるグレアを低減することができる。
【0044】
発光素子
発光素子は、400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する。発光素子の発光ピーク波長は、420nm以上480nm以下の範囲内にあることが好ましく、さらに440nm以上460nm以下の範囲内でもよい。発光素子の発光の少なくとも一部が第1蛍光体及び第2蛍光体の励起光として利用されるため、それらの蛍光体を励起し易い発光ピーク波長を有することが好ましい。発光素子の発光スペクトルの半値全幅は、好ましくは30nm以下、より好ましくは25nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。発光素子は、例えば、窒化物系半導体を用いた半導体発光素子を用いることが好ましい。これにより、高効率であり、入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。
【0045】
第1蛍光体
第1蛍光体は、400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子の発光によって励起され、480nm以上580nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有する光を発する。第1蛍光体は、発光スペクトルの半値全幅が、90nm以上125nm以下の範囲内であることが好ましく、100nm以上124nm以下の範囲内でもよく、110nm以上123nm以下の範囲内でもよい。第1蛍光体が、480nm以上580nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有すると、発光素子からの励起光を波長変換し、発光素子からの光と、第1蛍光体及び第2蛍光体で波長変換した光の混色光が発光装置から発せられる。
【0046】
第1蛍光体は、前記式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体を含み、下記式(1B)で表される組成を有する第1窒化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
LaLn CeSi (1B)
(式(1B)中、Lnは、Y及びGdからなる群から選択される少なくとも1種を必須として含み、Sc及びLuからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよく、組成1モルに含まれるLn元素を100モル%としたときに、Lnに含まれるY及びGdの合計が90モル%以上であり、w、x、y及びzは、1.2≦w≦2.2、0.5≦x≦1.2、10≦y≦12、0.5≦z≦1.2、1.80<w+x<2.40、2.9≦w+x+z≦3.1を満たす。)
【0047】
第1蛍光体は、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体及びアルカリ土類金属ハロシリケート蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体を含んでいてもよい。アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、例えば、ストロンチウムを少なくとも含み、ユウロピウムで賦活される蛍光体であり、例えば、下記式(1C)で表される組成を有する。またアルカリ土類金属ハロシリケートは、例えば、カルシウムと塩素を少なくとも含み、ユウロピウムで賦活される蛍光体であり、例えば、下記式(1D)で表される組成を有する。
SrAl1425:Eu (1C)
(Ca,Sr,Ba)MgSi16(F,Cl,Br):Eu (1D)
式(1C)中、Srの一部はMg、Ca、Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素で置換されていてもよい。
式(1C)で表される組成を有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体及び式(1D)で表される組成を有するアルカリ土類金属ハロシリケート蛍光体は、480nm以上520nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有し、好ましくは485nm以上515nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する。
式(1C)で表される組成を有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体及び式(1D)で表される組成を有するアルカリ土類金属ハロシリケート蛍光体は、発光スペクトルにおける半値全幅が、例えば30nm以上、好ましくは40nm以上、より好ましくは50nm以上であり、また例えば80nm以下、好ましくは70nm以下である。
本明細書において、蛍光体の組成を表す式中、コロン(:)の前は母体結晶及び蛍光体の組成1モル中の各元素のモル比を表し、コロン(:)の後は賦活元素を表す。また、本明細書において、蛍光体の組成を示す式中、カンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、これら複数の元素のうち少なくとも1種の元素を組成中に含むことを意味し、複数の元素から2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0048】
第1蛍光体は、βサイアロン蛍光体、第1硫化物蛍光体、スカンジウム系蛍光体、アルカリ土類金属シリケート蛍光体及びランタノイドケイ窒化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体を含んでいてもよい。βサイアロン蛍光体は、例えば、下記式(1E)で表される組成を有する。第1硫化物蛍光体は、例えば、下記式(1F)で表される組成を有する。スカンジウム系蛍光体は、例えば、下記式(1G)で表される組成を有する。アルカリ土類金属シリケート蛍光体は、例えば、下記式(1H)で表される組成又は下記式(1J)で表される組成を有する。ランタノイドケイ窒化物蛍光体は、例えば、下記式(1K)で表される組成を有する。
Si6-gAl8-g:Eu(0<g≦4.2) (1E)
(Sr,M)Ga:Eu (1F)
(式(1F)中、Mは、Be、Mg、Ca、Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。)
(Ca,Sr)Sc:Ce (1G)
(Ca,Sr)(Sc,Mg)Si12:Ce (1H)
(Ca,Sr,Ba)SiO:Eu (1J)
(La,Y,Gd,Lu)Si11:Ce (1K)
【0049】
βサイアロン蛍光体、第1硫化物蛍光体、スカンジウム系蛍光体、アルカリ土類金属シリケート蛍光体及びランタノイドケイ窒化物蛍光体は、それぞれ520nm以上580nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有し、好ましくは525nm以上565nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する。βサイアロン蛍光体、第1硫化物蛍光体、スカンジウム系蛍光体、アルカリ土類金属シリケート蛍光体及びランタノイド系窒化物蛍光体は、それぞれ発光スペクトルにおける半値全幅が、例えば20nm以上、好ましくは30nm以上であり、また例えば120nm以下、好ましくは115nm以下である。
【0050】
第1蛍光体は、前記式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体を含み、前記式(1B)で表される組成を有する第1窒化物蛍光体、前記式(1C)で表される組成を有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、前記式(1D)で表される組成を有するアルカリ土類金属ハロシリケート蛍光体、前記式(1E)で表される組成を有するβサイアロン蛍光体、前記式(1F)で表される組成を有する第1硫化物蛍光体、前記式(1G)で表される組成を有するスカンジウム系蛍光体、前記式(1H)で表される組成を有するアルカリ土類金属シリケート蛍光体、前記式(1J)で表される組成を有するアルカリ土類金属シリケート蛍光体、及び前記式(1K)で表される組成を有するランタノイドケイ窒化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体を含んでいてもよい。第1蛍光体は、前記式(1A)で表される組成を有する少なくとも1種の蛍光体を単独で含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0051】
第2蛍光体
第2蛍光体は、400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子の発光によって励起され、580nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光を発し、第1蛍光体の組成とは異なる組成を有する。第2蛍光体は、発光スペクトルにおける半値全幅が、3nm以上15nm以下の範囲内であることが好ましい。このような第2蛍光体として、例えば、下記式(2C)で表される組成を有するフッ化物蛍光体、又は、下記式(2C’)で表される組成を有するフッ化物蛍光体を含むことが好ましい。又は、発光スペクトルにおける半値全幅が60nm以上125nm以下の範囲内であることが好ましい。このような第2蛍光体として、例えば、下記式(2A)で表される組成を有する第2窒化物蛍光体、下記式(2B)で表される組成を有する第3窒化物蛍光体、又は、下記式(2G)で表される組成を有するαサイアロン蛍光体を含むことが好ましい。第2蛍光体により、発光素子からの励起光を波長変換し、発光素子からの光と、第1蛍光体及び第2蛍光体で波長変換した光の混色光が発光装置から発せられる。
【0052】
第2蛍光体は、下記式(2A)で表される組成を有する第2窒化物蛍光体、下記式(2B)で表される組成を有する第3窒化物蛍光体、下記式(2C)で表される組成を有するフッ化物蛍光体、下記式(2C)とは組成が異なる下記式(2C’)で表される組成を有するフッ化物蛍光体、及び下記式(2G)で表される組成を有するαサイアロン蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。本明細書において、下記式(2A)で表される組成を有する第2窒化物蛍光体を、BSESN蛍光体と表記する場合があり、下記式(2B)で表される組成を有する第3窒化物蛍光体を、SCASN蛍光体と表記する場合がある。
Si:Eu (2A)
(式(2A)中、Mは、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含むアルカリ土類金属元素である。)
SrCaAlSi:Eu (2B)
(式(2B)中、q、s、t、u、vは、それぞれ0≦q<1、0<s≦1、q+s≦1、0.9≦t≦1.1、0.9≦u≦1.1、2.5≦v≦3.5を満たす。)
[M 1-bMn4+ ] (2C)
(式(2C)中、Aは、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH から成る群から選択される少なくとも1種を含み、その中でもKが好ましい。Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、その中でもSi、Geが好ましい。bは、0<b<0.2を満たし、cは、[M 1-bMn4+ ]イオンの電荷の絶対値であり、dは、5<d<7を満たす。)
A’c’[M1-b’Mn4+ b’d’] (2C’)
(式(2C’)中、A’は、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH から成る群から選択される少なくとも1種を含み、その中でもKが好ましい。M’は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、その中でもSi、Alが好ましい。b’は、0<b’<0.2を満たし、c’は、[M1-b’Mn4+ b’d’]イオンの電荷の絶対値であり、d’は、5<d’<7を満たす。)
v3Si12-(w3+x3)Alw3+x3x316-x3:Eu (2G)
(式(2G)中、Mは、Li、Mg、Ca、Sr、Y及びランタノイド元素(但し、LaとCeを除く。)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、v3、w3及びx3は、それぞれ0<v3≦2.0、2.0≦w3≦6.0、0≦x3≦1.0を満たす。)
【0053】
第2蛍光体は、フルオロジャーマネ―ト蛍光体、第4窒化物蛍光体、及び第2硫化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体を含んでいてもよい。フルオロジャーマネート蛍光体は、例えば、下記式(2D)で表される組成を有する。第4窒化物蛍光体は、例えば、下記式(2E)で表される組成を有する。第2硫化物蛍光体は、例えば、下記式(2F)で表される組成を有する。
(i-j)MgO・(j/2)Sc・kMgF・mCaF・(1-n)GeO・(n/2)M :Mn (2D)
(式(2D)中、MはAl、Ga及Inからなる群から選択される少なくとも1種である。i、j、k、m、n及びzはそれぞれ、2≦i≦4、0≦j<0.5、0<k<1.5、0≦m<1.5、0≦n<0.5を満たす。)
v2 w2Al3-y2Siy2z2:M (2E)
(式(2E)中、Mは、Ca、Sr、Ba及びMgからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、Mは、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、Mは、Eu、Ce、Tb及びMnからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、v2、w2、y2及びz2は、それぞれ0.80≦v2≦1.05、0.80≦w2≦1.05、0≦y2≦0.5、3.0≦z2≦5.0を満たす。)
(Ca,Sr)S:Eu (2F)
【0054】
式(2D)で表される組成を有するフルオロジャーマネート蛍光体は、下記式(2d)で表される組成を有していてもよい。
3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn (2d)
【0055】
式(2E)で表される組成を有する第4窒化物蛍光体は、下記式(2e)で表される組成を有していてもよい。
v2 w2 x2Al3-y2Siy2z2 (2e)
(式(2e)中、M、M、及びMは、それぞれ式(2E)中のM、M、及びMと同義であり、Ce、Tb及びMnからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、v2、w2、y2及びz2は、それぞれ式(2E)中のv2、w2、y2及びz2と同義であり、x2は、0.001<x2≦0.1を満たす。)
【0056】
フルオロジャーマネート蛍光体、第4窒化物蛍光体、及び第2硫化物蛍光体は、それぞれ、580nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、好ましくは600nm以上630nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する。フルオロジャーマネート蛍光体、第4窒化物蛍光体、及び第2硫化物蛍光体は、それぞれ、発光スペクトルにおける発光ピークの半値全幅が、例えば5nm以上100nm以下であり、好ましくは6nm以上90nm以下である。
【0057】
第2蛍光体は、前記式(2A)で表される組成を有する第2窒化物蛍光体、前記式(2B)で表される組成を有する第3窒化物蛍光体、前記式(2C)で表される組成を有するフッ化物蛍光体、前記式(2C’)で表されるフッ化物蛍光体、前記式(2D)で表される組成を有するフルオロジャーマネート蛍光体、前記式(2E)で表される組成を有する第4窒化物蛍光体、前記式(2F)で表される組成を有する第2硫化物蛍光体、及び前記式(2G)で表される組成を有するαサイアロン蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。第2蛍光体は、少なくとも1種の蛍光体を単独で含んでいてもよく、2種以上の蛍光体を含んでいてもよい。
【0058】
第2蛍光体は、前記式(2A)で表される組成を有する第2窒化物蛍光体(BSESN蛍光体)、前記式(2B)で表される組成を有する第3窒化物蛍光体(SCASN蛍光体)、及び前記式(2G)で表される組成を有するαサイアロン蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。BSESN蛍光体、SCASN蛍光体及びαサイアロン蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の第2蛍光体は、温度特性が良好であり、温度の変化による発光エネルギーの変化が少ない。例えば、第1蛍光体として、前記式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体を含み、第2蛍光体として、BSESN蛍光体、SCASN蛍光体及びαサイアロン蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種を含む波長変換部材を備えた発光装置は、第1蛍光体及び第2蛍光体の温度特性が良好であるため、例えば-40℃の寒冷雰囲気で使用した場合や100℃を超える高温雰囲気で用いた場合においても、第1輝度比Ls/Lが0.9以下を維持した状態で第1輝度比Ls/Lの変化率が少なく、使用環境の雰囲気温度の影響を受けにくく、グレアを低減した光を発光装置から発することができる。第1輝度比Ls/Lが0.9以下を維持した状態で、発光装置の使用環境の温度が変化した場合であっても、第1輝度比Ls/Lの変化率が少ない光を発光することができる発光装置は、温度特性が良好であるという場合がある。
第1蛍光体として、前記式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体を含み、第2蛍光体として、BSESN蛍光体、SCASN蛍光体及びαサイアロン蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種を含む波長変換部材を備えた発光装置は、第1蛍光体及び第2蛍光体の温度特性が良好であるため、使用環境の雰囲気温度の影響を受けにくく、第2輝度比B/Aが0.104以下を維持した状態で第2輝度比B/Aの変化率が少なく、使用環境の雰囲気温度の影響を受けにくく、散乱を抑制して比較的遠くまで到達する光を発光装置から発することができる。第2輝度比B/Aが0.104以下を維持した状態で、発光装置の使用環境の温度が変化した場合であっても、第2輝度比B/Aの変化率が少ない光を発光することができる発光装置は、温度特性が良好であるという場合がある。
【0059】
第1蛍光体及び第2蛍光体を含む蛍光体は、フィッシャーサブシーブサイザー(Fisher Sub-Sieve Sizer、以下「FSSS」ともいう。)法により測定された平均粒径が5μm以上40μm以下の範囲内であることが好ましく、6μm以上35μm以下の範囲内であることがより好ましく、7μm以上30μm以下の範囲内であることがさらに好ましい。蛍光体の平均粒径が5μm以上40μm以下の範囲内であれば、励起光源から発せられる光を蛍光体で効率よく吸収して波長変換し、グレアを低減した光又は光の散乱を抑制して比較的遠くまで到達する光、を発光装置から発することができる。
【0060】
前記式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体は、FSSS法により測定された平均粒径が15μm以上40μmの範囲内であることが好ましく、16μm以上35μm以下の範囲内であることがより好ましく、17μm以上30μm以下の範囲内であることがさらに好ましい。前記式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体のFSSS法で測定された平均粒径が15μm以上40μm以下の範囲内と比較的大きい蛍光体であれば、発光装置に含まれる第1蛍光体の含有量を少なくすることができ、第1蛍光体の含有量が少ない場合であっても、発光装置は、所望の色調の光を発することができる。
【0061】
発光装置
発光装置の形態について説明する。図3Aは、発光装置の一例を示し、発光装置101の概略平面図である。図3Bは、図3Aに示す発光装置101のIII-III’線の概略断面図である。発光装置101は、400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子10と、発光素子10からの光により励起されて発光する第1蛍光体71及び第2蛍光体72を含む波長変換体41とその波長変換体41が配置された透光体42とを含む波長変換部材40と、を備える。発光素子10は、基板1上に導電部材60であるバンプを介してフリップチップ実装されている。波長変換部材40の波長変換体31は、接着層80を介して発光素子10の発光面上に設けられている。発光素子10及び波長変換部材40は、その側面が光を反射する被覆部材90によって覆われている。波長変換体41は、発光素子10からの光により励起されて、480nm以上580nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体71と、580nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、第1蛍光体71の組成とは異なる組成を有する第2蛍光体72と、を含む。発光素子10は、基板1上に形成された配線及び導電部材60を介して、発光装置101の外部からの電力の供給を受けて、発光装置101を発光させることができる。発光装置101は、発光素子10を過大な電圧の印加による破壊から防ぐための保護素子等の半導体素子50を含んでいてもよい。被覆部材90は、例えば半導体素子50を覆うように設けられる。以下、発光装置に用いる各部材について説明する。なお、詳細は、例えば特開2014-112635号公報の開示を参照することもできる。
【0062】
波長変換部材
波長変換部材は、蛍光体と透光性材料を含む波長変換体を波長変換部材としてもよいし、さらにその波長変換体が配置される透光体を備えた波長変換部材としてもよい。波長変換体は、第1蛍光体及び第2蛍光体と透光性材料とを含むことが好ましい。波長変換体は、板状、シート状又は層状に形成されていてもよい。波長変換部材は、板状、シート状又は層状以外の他の形態の波長変換体を備えていてもよい。波長変換部材は、第1蛍光体及び第2蛍光体と、透光性材料と、を含む波長変換体を備え、波長変換体は、透光性材料の100質量部に対して、第1蛍光体及び第2蛍光体の総量が50質量部以上500質量部以下の範囲内であることが好ましい。波長変換体に含まれる第1蛍光体及び第2蛍光体の総量が、透光性材料100質量部に対して、50質量部以上500質量部以下の範囲内であれば、透光性材料に対して、第1蛍光体及び第2蛍光体の総量が比較的少なく、蛍光体が励起光を吸収して発光するときの熱を低減することができ、熱による発光装置の劣化を抑制することができ、発光装置の耐久性を高めることができる。波長変換体に含まれる第1蛍光体及び第2蛍光体の総量は、透光性材料100質量部に対して、80質量部以上400質量部以下の範囲内でもよく、90質量部以上350質量部以下の範囲内でもよく、100質量部以上300質量部以下の範囲内でもよく、100質量部以上270質量部以下の範囲内でもよい。第1蛍光体及び第2蛍光体の総量を、蛍光体の総量ともいう。
【0063】
波長変換部材は、第1蛍光体及び第2蛍光体と、透光性材料と、を含む波長変換体を備え、波長変換体は、断面の厚さ方向に第1蛍光体及び第2蛍光体の充填率が高く、第1蛍光体及び第2蛍光体の濃度が高い高濃度層と、第1蛍光体及び第2蛍光体の充填率が低く、第1蛍光体及び第2蛍光体の濃度が低い低濃度層を備えることが好ましい。波長変換体は、第1蛍光体及び第2蛍光体の充填率が高い、高濃度層を備えていることによって、透光性材料に対する蛍光体の総量が少ない場合であっても、波長変換体に割れやクラックが発生しにくくなる。波長変換体は、高濃度層が発光素子側に配置されることが好ましい。波長変換体は、高濃度層が発光素子側に配置されることによって、発光素子から発生した熱を波長変換体中の第1蛍光体及び第2蛍光体を介して放熱することができる。蛍光体の充填率は、波長変換体の断面又は波長変換部材の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、その断面における樹脂と蛍光体との面積比から蛍光体の充填率を測定可能である。蛍光体の充填率が高い高濃度層は、波長変換体の断面又は波長変換部材の断面において、蛍光体の面積が樹脂の面積よりも高い層をいう。蛍光体の充填率が低い低濃度層は、波長変換体の断面又は波長変換部材の断面において、蛍光体の面積が樹脂の面積よりも低い層をいう。低濃度層は、実質的に蛍光体が存在せず、蛍光体の面積がなく、樹脂のみの面積が確認できる層でもよい。SEMで観察した波長変換体の断面において、高濃度層の厚みと低濃度層の厚みの比率は、波長変換体の全体の厚みを100%とした場合に、低濃度層の厚みが40%以下でもよく、35%以下でもよく、34%以下でもよく、3%以上でもよく、5%以上でもよい。低濃度層の厚みの比率が大きい方が高濃度層の厚みの比率が小さく、高濃度層に含まれる第1蛍光体及び第2蛍光体の充填率が高く、高濃度層の密度が高いことを表す。波長変換体の割れやクラックを抑制し、放熱性を高くするためには、高濃度層における第1蛍光体及び第2蛍光体の充填率が高く、第1蛍光体及び第2蛍光体の密度が高いことが好ましい。
【0064】
図3Cは、図3Bに示す発光装置の概略断面の一部P1の部分拡大図である。説明のため、図3Cは、図3Bと縮尺が異なる場合がある。
【0065】
波長変換体41は、第1蛍光体71及び第2蛍光体72の充填率が高い高濃度層41aと、第1蛍光体71及び第2蛍光体72の充填率が低い低濃度層41bとを備え、高濃度層41aが発光素子10側に配置される。波長変換体41の低濃度層41bは、透光体42側に配置される。波長変換体41は、接着層80を介して発光素子10の発光面上に設けられる。
【0066】
前照灯には高出力な発光装置が用いられてきているため、耐熱性の高いガラスからなる透光体に蛍光体を含む樹脂組成物を塗布した波長変換部材や、蛍光体と透光性材料とを含む焼結体のような耐熱性の高い波長変換部材が用いられる場合がある。耐熱性の高い波長変換部材に含まれる蛍光体についても、他の蛍光体と比べて比較的耐熱性が高いと考えられる蛍光体、例えばYAl12:Ceで表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体が用いられる場合がある。この希土類アルミン酸塩蛍光体は、例えば570nm以上の長波長側の発光強度が比較的小さいことから、前照灯に用いた場合、6000K付近の相関色温度の光を発するのが通常とされている。そのため、波長変換部材に含まれる蛍光体が、例えばYAl12:Ceで表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体だけである場合は、5000K以下の相関色温度の光を発する前照灯を実現することは困難であると考えられている。第1実施形態の発光装置又は第2実施形態の発光装置は、波長変換部材に用いられる焼結体に含まれる蛍光体として、前述の第1蛍光体及び第2蛍光体のうち1種の蛍光体が単独で含まれていてもよく、前述の第1蛍光体及び第2蛍光体のうち2種以上の蛍光体が含まれていてもよい。焼結体に含まれる蛍光体としては、第1蛍光体として、前記式(1A)で表される組成を有する蛍光体を含み、例えば以下の蛍光体を含んでいてもよい。
(Ba,Sr,Ca)Si:Eu
(La,Y,Gd,Lu)Si11:Ce
(Ca,Sr)AlSiN:Eu
また、波長変換部材に用いられる焼結体は、前記式(1A)で表される組成を有する蛍光体と第2窒化物蛍光体を1つ焼結体に含む焼結体や、前記式(1A)で表される組成を有する蛍光体を含む焼結体と第2窒化物蛍光体を含む焼結体とを2層に組み合わせたものを用いてもよい。
また、波長変換部材に用いられる波長変換体としては、透光性材料としてガラスを用いて、例えば、ガラスと、組成式がM v3(Si,Al)12(O,N)16:Eu(Mは、Li、Mg、Ca、Y及びLaとCeを除くランタニド元素であり、v3は、0<v3≦2を満たす。)で表されるαサイアロン蛍光体を含む波長変換体を用いてもよい。
これらを波長変換部材とすることでも、発光装置は、5000K以下の相関色温度の光を発し、この発光装置を用いることにより、グレアを低減することができる前照灯及びそれを備えた車両を提供することができると考えられる。
【0067】
透光性材料
透光性材料は、樹脂、ガラス及び無機物からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。樹脂は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、及びポリイミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。無機物は、酸化アルミニウム及び窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0068】
透光性材料が樹脂である場合、ショアA硬度が30以上80以下の範囲内である樹脂であることが好ましい。透光性材料は、シリコーン樹脂であることが好ましく、ショアA硬度が30以上80以下の範囲内であるシリコーン樹脂であることが好ましい。透光性材料であるシリコーン樹脂のショアA硬度は、40以上75以下の範囲内であることがより好ましく、50以上70以下の範囲内であることがさらに好ましい。透光性材料が樹脂である場合、樹脂は、光や熱によって膨張又は収縮が生じる。透光性材料がショアA硬度が30以上80以下のシリコーン樹脂であれば靭性、伸びが優れるため、環境雰囲気の温度が変化した場合であっても、温度変化に追従して柔軟に膨張及び収縮し、波長変換体の割れやクラック等が発生しにくく、第1輝度比Ls/Lを0.9以下に維持した光を発することができ、温度特性が良好である。透光性材料がショアA硬度が30以上80以下のシリコーン樹脂である場合、温度変化に追従して柔軟に膨張及び収縮し、波長変換体に割れやクラック等が発生しにくく、第2輝度比B/Aを0.104以下に維持した光を発することができ、温度特性が良好である。樹脂のショアA硬度は、JIS K6253に準拠して、デュロメータータイプAを使用して測定することができる。
【0069】
例えばショアA硬度が30未満程度のショアA硬度の低い樹脂を透光性材料として用いて、波長変換体を形成した場合、波長変換体が柔らかく粘着性があるため、複数の発光素子を備えた複合基板から個々の発光装置を個片化する際に切断しにくく、また、搬送や梱包がし難く量産性に劣る場合が生じる。
【0070】
そこで、ショアA硬度が30以上80以下の樹脂を透光性材料として用いることによって、波長変換体又は波長変換部材に割れやクラック等が発生しにくく、温度特性の良好な波長変換体を得ることができる。
【0071】
透光体
波長変換部材は、透光体を備えていてもよい。透光体は、ガラスや樹脂のような透光性材料からなる板状体を用いることができる。ガラスは、例えばホウ珪酸ガラスや石英ガラスが挙げられる。樹脂は、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂が挙げられる。透光体の厚さは、製造工程における機械的強度が低下せず、波長変換体を十分に支持することができる厚さであればよい。
【0072】
基板
基板は、絶縁性材料であって、発光素子からの光や外光を透過し難い材料からなることが好ましい。基板の材料としては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等のセラミックス、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BTレジン)、ポリフタルアミド(PPA)樹脂等の樹脂を上げることができる。セラミックスは耐熱性が高いため、基板の材料として好ましい。
【0073】
接着層
発光素子と波長変換部材の間には、接着層が介在し、発光素子と波長変換部材とを固着する。接着層を構成する接着剤は、発光素子と波長変換部材を光学的に連結できる材料からなることが好ましい。接着層を構成する材料としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、及びポリイミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。
【0074】
半導体素子
発光装置に必要に応じて設けられる半導体素子は、例えば発光素子を制御するためのトランジスタや、過大な電圧印加による発光素子の破壊や性能劣化を抑制するための保護素子が挙げられる。保護素子としてはツェナーダイオード(Zener Diode)が挙げられる。
【0075】
被覆部材
被覆部材の材料としては、絶縁性材料を用いることが好ましい。より具体的には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BTレジン)、ポリフタルアミド(PPA)樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。被覆部材には、必要に応じて着色剤、蛍光体、フィラーを添加してもよい。
【0076】
導電部材
導電部材としては、バンプを用いることができ、バンプの材料としては、Auあるいはその合金、他の導電部材として、共晶ハンダ(Au-Sn)、Pb-Sn、鉛フリーハンダ等を用いることができる。
【0077】
発光装置の製造方法
発光装置の製造方法の一例を説明する。なお、詳細は、例えば特開2014-112635号公報、又は、特開2017-117912号公報の開示を参照することもできる。発光装置の製造方法は、発光素子の配置工程、必要に応じて半導体素子の配置工程、波長変換体を含む波長変換部材の形成工程、発光素子と波長変換部材の接着工程、被覆部材の形成工程を含むことが好ましい。
【0078】
発光素子の配置工程
基板上に発光素子を配置する。発光素子と半導体素子とは、例えば、基板上にフリップチップ実装される。
【0079】
波長変換体を含む波長変換部材の形成工程
波長変換体を含む波長変換部材の形成工程において、波長変換体は、透光体の一面に印刷法、接着法、圧縮成形法、電着法により板状、シート状又は層状の波長変換体を形成することによって得てもよい。例えば、印刷法は、蛍光体と、透光性材料となる樹脂とを含む波長変換体用組成物を、透光体の一面に印刷し、波長変換体を含む波長変換部材を形成することができる。
【0080】
波長変換体用組成物
波長変換体又は波長変換部材を構成する波長変換体用組成物は、透光性材料と、第1蛍光体及び第2蛍光体とを含み、溶剤を含んでいてもよい。波長変換体用組成物が溶剤を含む場合には、波長変換体用組成物の粘度が低下し、波長変換体用組成物を硬化させるときに、透光性材料に対する蛍光体の総量が少ない場合であっても、重力方向に第1蛍光体及び第2蛍光体の密度が大きくなり、波長変換体中又は波長変換部材中で第1蛍光体及び第2蛍光体の充填率が異なる波長変換体又は波長変換部材を製造することができる。波長変換体又は波長変換部材は、第1蛍光体及び第2蛍光体の充填率が高い部分が存在することによって、波長変換体に割れやクラックが発生しにくくなる。波長変換体の第1蛍光体及び第2蛍光体の充填率が高い高濃度層側を発光素子側に配置することによって、高出力の発光素子を使用した場合であっても、発光素子から発生した熱を波長変換体中の第1蛍光体及び第2蛍光体を介して放熱することができ、波長変換体を構成する樹脂の割れやクラックを抑制し、第1輝度比Ls/Lを0.9以下に維持した光を発することができ、温度特性が良好である。波長変換体の第1蛍光体及び第2蛍光体の充填率が高い高濃度層側を発光素子側に配置することによって、高出力の発光素子を使用した場合であっても、発光素子から発生した熱を波長変換体中の第1蛍光体及び第2蛍光体を介して放熱することができ、波長変換体を構成する樹脂の割れやクラックを抑制し、第2輝度比B/Aを0.104以下に維持した光を発することができ、温度特性が良好である。
【0081】
溶剤は、透光性樹脂への溶解性と揮発性を考慮して、標準圧力(0.101MPa)下の沸点が、150℃以上320℃以下の範囲内であることが好ましく、170℃以上305℃以下の範囲内であることがより好ましく、180℃以上300℃以下の範囲内であることがさらに好ましく、190℃以上290℃以下の範囲内であることが特に好ましい。標準圧力下における沸点が150℃以上320℃以下の範囲内である溶剤は、波長変換体用組成物の含まれることにより、波長変換体用組成物の粘度を低下させて、硬化させる際に、重力方向に第1蛍光体及び第2蛍光体を含む蛍光体の充填率が高い高濃度層と、第1蛍光体及び第2蛍光体の充填率が低い低濃度層とを形成することができる。
【0082】
波長変換体用組成物は、E型粘度計で、25℃、1rpmの粘度が5mPa・s以上400mPa・s以下の範囲であることが好ましく、6mPa・s以上300mPa・s以下の範囲内であることがより好ましく、8mPa・s以上250mPa・s以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0083】
透光性材料がシリコーン樹脂である場合、波長変換体用組成物は、透光性材料の100質量部に対して、蛍光体の総量が50質量部以上500質量部以下の範囲内で含む場合に、溶剤の含有量が、透光性材料100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下の範囲内であることが好ましく、2質量部以上40質量部以下の範囲内であることがより好ましく、3質量部以上30質量部以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0084】
溶剤は、有機化合物の液体であり、一部は常温で蒸発(揮発)し、例えば180℃以上で加熱することで波長変換体用組成物中に残存する溶剤を揮発させて、波長変換体用組成物を硬化させ、波長変換体又は波長変換部材を形成することができる。溶剤は、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アルデヒド系溶剤、グリコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、グリコールエステル系溶剤等が挙げられる。炭化水素系溶剤は、ヘキサン、キシレン、ヘプタン、デカン、ドデカン、トリデカン等が挙げられる。ケトン系溶剤は、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。アルコール系溶剤は、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。アルデヒド系溶剤は、ノナナール、デカナール等が挙げられる。グリコール系溶剤は、トリエチレングリコール等が挙げられる。エーテル系溶剤は、ジエチルエーテル等が挙げられる。エステル系溶剤は、酢酸メチル、酢酸エチル等が挙げられる。グリコールエーテル系溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。グリコールエステル系溶剤は、エチレングルコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。溶剤は、ヘキサン、キシレン、ヘプタン、アセトン、エタノール、イソプロピルアルコール、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ノナナール、デカナール及びトリエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。溶剤は、ドデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、及びトリデカンからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0085】
波長変換体又は波長変換部材
波長変換体用組成物が、溶剤を含む場合、波長変換体用組成物を硬化させるときの重力方向に第1蛍光体及び第2蛍光体の充填率が高い高濃度層と、第1蛍光体及び第2蛍光体の充填率が低い低濃度層に分かれた波長変換体又は波長変換部材を形成することができる。本明細書において、波長変換体の断面の厚さ方向に蛍光体の充填率が高い高濃度層と蛍光体の充填率が低い低濃度層を確認することができる。蛍光体の充填率は、前述のとおり、波長変換体の断面又は波長変換部材の断面をSEMで観察し、その断面における樹脂と蛍光体との面積比から蛍光体の充填率を測定することができる。一つの層と他の層の境界は、直線上ではなく凹凸を有していてもよい。
【0086】
発光素子と波長変換部材の接着工程
発光素子と波長変換部材の接着工程において、波長変換部材を発光素子の発光面に対向させて、発光素子上に波長変換部材を接着層により接合する。波長変換部材が、波長変換体及び透光体を含み、波長変換体が蛍光体の充填率が高い高濃度層と蛍光体の充填率が低い低濃度層を含む場合には、波長変換体の充填率が高い高濃度層を発光素子側に配置して、発光素子上に波長変換部材を接合することが好ましい。第1蛍光体及び第2蛍光体を含む蛍光体は、樹脂よりも熱伝導率が高く、波長変換体の蛍光体の充填率が高い高濃度層を発光素子側に配置して波長変換部材を接合することにより、熱引きがよくなり、波長変換体の割れやクラック等が発生しにくく、温度特性が良好である。
【0087】
被覆部材の形成工程
被覆部材の形成工程において、発光素子及び波長変換部材の側面が被覆部材用組成物で覆われる。この被覆部材は、発光素子から出射された光を反射させるためのものであり、発光装置が半導体素子も備える場合は、その半導体素子が被覆部材で埋設されるように形成することが好ましい。一つ基板上に複数の発光素子及び半導体素子を備えた複合基板から個々の発光装置に個片化する工程を含んでいてもよい。
【0088】
例えばショアA硬度が30未満程度のショアA硬度の低い樹脂を透光性材料として用いて、波長変換体を形成した場合、波長変換体が柔らかく粘着性があるため、複数の発光素子を備えた複合基板から個々の発光装置を個片化する際に切断しにくく、また、搬送や梱包がし難く量産性に劣る場合が生じる。
【0089】
そこで、ショアA硬度が30以上80以下の樹脂を透光性材料として用いることによって、波長変換体又は波長変換部材に割れやクラック等が発生しにくく、温度特性の良好な波長変換体を得ることができる。
【0090】
前照灯
発光装置は、前照灯用の光源ユニットの支持基板等に配置され、車両に搭載される前照灯として用いられてもよい。前照灯用の光源ユニットは、例えば特開2003-317513号公報に開示されている光源ユニットを用いることができる。光源ユニットは、例えばリフレクタと、投影レンズと、発光装置を配置する支持基板等を備える。前照灯用の光源ユニットは、例えば特開平8-67199号公報に開示されているような車両用ランプシステムによって点灯等が制御されてもよい。発光装置は、例えば特開2005-123165号公報に開示されているようなターンシグナルランプに用いる前照灯の光源として用いられてもよい。図4は、前照灯の水平断面図である。図5は、前照灯の正面図である。図4及び図5に示した前照灯200は、例えば車両前方の右側に設けられる。前照灯200は、ランプボディ24、アウターレンズ22、複数の基板32、複数の発光装置100、光学フィルタ26、及び導光部材34を備える。ランプボディ24及びアウターレンズ22は、前照灯200の灯室を形成し、この灯室内に、複数の基板32、及び複数の発光装置100を、防水しつつ保持する。ランプボディ24は、例えば樹脂により、複数の基板32、及び複数の発光装置100を車両の後方から覆うように形成される。光学フィルタ26は、複数のネジ28により、ランプボディ24に固定される。複数の発光装置100のそれぞれは、基板32を介して点灯制御部12から受け取る電力に応じて点灯する。
【0091】
前照灯は、例えば特開2003-317513号公報に開示されているように、1つの光源ユニットに1つの発光装置を配置した第1灯具ユニットを複数備える場合がある。また、前照灯は、例えば特開2005-141917号公報に開示されているように、複数のリフレクタと、複数の投影レンズと、複数の支持基板が一体的に形成された1つの光源ユニットに、複数の発光装置を配置した第2灯具ユニットを備える場合がある。前照灯は、第1輝度比Ls/Lがそれぞれ異なる2種以上の発光装置を備えていてもよい。第1輝度比Ls/Lが異なる2種以上の発光装置は、1つの発光装置がそれぞれ1つの光源ユニットに配置されていてもよい。第1輝度比Ls/Lが異なる2種以上の発光装置は、1つの光源ユニットに2種以上の発光装置が配置されていてもよい。前照灯は、第2輝度比B/Aがそれぞれ異なる2種以上の発光装置を備えていてもよい。第2輝度比B/Aが異なる2種以上の発光装置は、1つの発光装置がそれぞれ1つの光源ユニットに配置されていてもよい。第2輝度比B/Aが異なる2種以上の発光装置は、1つの光源ユニットに2種以上の発光装置が配置されていてもよい。
【0092】
前照灯は、第1輝度比Ls/Lが0.9以下である光を発する前述の発光装置を第1発光装置とし、第1輝度比Ls/Lが0.9を超える光を発する発光装置を第2発光装置として、2種以上の発光装置を備えていてもよい。
【0093】
前照灯は、第2輝度比B/Aが0.104以下である光を発する前述の発光装置を第1発光装置とし、第2輝度比B/Aが0.104を超える光を発する発光装置を第2発光装置として、2種以上の発光装置を備えていてもよい。
【0094】
第2発光装置は、第1輝度比Ls/Lが0.9を超える光を発する発光装置又は第2輝度比B/Aが0.104を超える光を発する発光装置であればよい。第2発光装置は、例えば図3A及び図3Bに示す第1発光装置と同様の形態でもよい。第2発光装置は、例えば400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、480nm以上580nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体とを、備え、第2蛍光体を備えていない、発光装置が挙げられる。第1蛍光体は、前述の第1蛍光体と同様の蛍光体が挙げられる。第2発光装置は、400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、第1蛍光体として式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体を備え、第2蛍光体を備えておらず、第1輝度比Ls/Lが0.9を超えて、又は、第2輝度比B/Aが0.104を超えて、相関色温度が5000K以上6500K以下の範囲内の光を発するものが挙げられる。
【0095】
車両
第3実施形態の車両は、前述の発光装置又は前照灯が搭載され得る車両が挙げられる。前述の発光装置又は前照灯が搭載される車両としては、例えば自動二輪車、自動四輪車等の道路運送車両や、鉄道車両、整地・運搬・積込用機械のようなトラクター系又は堀削用機械等のショベル系の車両系建設機械に用いる車両等が挙げられる。
【0096】
本発明に係る実施形態は、以下の発光装置、前照灯及び車両を含む。
【0097】
[項1]
400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、
480nm以上580nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体と、580nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、前記第1蛍光体の組成とは異なる組成を有する第2蛍光体と、を含む波長変換部材と、
を備えた発光装置であり、
前記発光装置は、CIE(国際照明委員会)で規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線を考慮した380nm以上780nm以下の範囲の前記発光装置の発光の輝度Lに対する、前記ヒトの明所視標準比視感度曲線及びヒトのS錐体の分光感度を考慮した380nm以上780nm以下の範囲の前記発光装置の発光の第1実効放射輝度Lsの比であり、下記式(1)から導き出される第1輝度比Ls/Lが0.9以下である光を発し、
前記第1蛍光体が、下記式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体を含む、発光装置。
(式(1)中、S(λ)は発光装置の発光の分光放射輝度であり、V(λ)はCIE(国際照明委員会)で規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線であり、Gs(λ)は波長λnmが380nm以上550nm以下の範囲内におけるヒトのS錐体の分光感度である。)
Ln 3-eCe(Al1-aGa12 (1A)
(式(1A)中、Lnは、Y、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、a及びeは、0≦a≦0.5、0.019≦e≦0.2を満たす。)
[項2]
相関色温度が1800K以上5000K以下の光を発する、項1に記載の発光装置。
[項3]
前記第1蛍光体は、発光スペクトルの半値全幅が90nm以上125nm以下の範囲内である、項1又は2に記載の発光装置。
[項4]
前記第2蛍光体は、発光スペクトルの半値全幅が3nm以上15nm以下の範囲内であるか、又は発光スペクトルの半値全幅が60nm以上120nm以下の範囲内である、項1から3のいずれか1項に記載の発光装置。
[項5]
前記式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体のフィッシャーサブシーブサイザー法により測定された平均粒径が15μm以上40μm以下の範囲内である、項1から4のいずれか1項に記載の発光装置。
[項6]
前記第1蛍光体が、前記式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体を含み、さらに下記式(1B)で表される組成を有する第1窒化物蛍光体を含む、項1から5のいずれか1項に記載の発光装置。
LaLn CeSi (1B)
(式(1B)中、Lnは、Y及びGdからなる群から選択される少なくとも1種を必須として含み、Sc及びLuからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよく、組成1モル中に含まれるLn元素を100モル%としたときに、Lnに含まれるY及びGdの合計が90モル%以上であり、w、x、y及びzは、1.2≦w≦2.2、0.5≦x≦1.2、10≦y≦12、0.5≦z≦1.2、1.80<w+x<2.40、2.9≦w+x+z≦3.1を満たす。)
[項7]
前記第2蛍光体が、下記式(2A)で表される組成を有する第2窒化物蛍光体、下記式(2B)で表される組成を有する第3窒化物蛍光体、下記式(2C)で表される組成を有するフッ化物蛍光体、下記式(2C)とは組成が異なる下記式(2C’)で表される組成を有するフッ化物蛍光体、及び下記式(2G)で表される組成を有するαサイアロン蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種を含む、項1から6のいずれか1項に記載の発光装置。
Si:Eu (2A)
(式(2A)中、Mは、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含むアルカリ土類金属元素である。)
SrCaAlSi:Eu (2B)
(式(2B)中、q、s、t、u及びvは、それぞれ0≦q<1、0<s≦1、q+s≦1、0.9≦t≦1.1、0.9≦u≦1.1、2.5≦v≦3.5を満たす。)
[M 1-bMn4+ ] (2C)
(式(2C)中、Aは、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種を含み、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、bは、0<b<0.2を満たし、cは、[M 1-bMn4+ ]イオンの電荷の絶対値であり、dは、5<d<7を満たす。)
A’c’[M1-b’Mn4+ b’d’] (2C’)
(式(2C’)中、A’は、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種を含み、M’は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、b’は、0<b’<0.2を満たし、c’は、[M1-b’Mn4+ b’d’]イオンの電荷の絶対値であり、d’は、5<d’<7を満たす。)
v3Si12-(w3+x3)Alw3+x3x316-x3:Eu (2G)
(式(2G)中、Mは、Li、Mg、Ca、Sr、Y及びランタノイド元素(但し、LaとCeを除く。)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、v3、w3及びx3は、それぞれ0<v3≦2.0、2.0≦w3≦6.0、0≦x3≦1.0を満たす。)
[項8]
前記波長変換部材が、前記第1蛍光体及び前記第2蛍光体と、透光性材料とを含む波長変換体を備え、波長変換体中の透光性材料100質量部に対して、第1蛍光体及び第2蛍光体の総量が50質量部以上500質量部以下の範囲内である、項1から7のいずれか1項に記載の発光装置。
[項9]
前記波長変換部材が、前記第1蛍光体及び前記第2蛍光体と、透光性材料とを含む波長変換体を備え、
前記波長変換体が、前記第1蛍光体及び前記第2蛍光体の充填率が高い高濃度層と、前記第1蛍光体及び前記第2蛍光体の充填率が低い低濃度層とを備え、
前記高濃度層が前記発光素子の側に配置された、項1から8のいずれか1項に記載の発光装置。
[項10]
前記項1から9のいずれか1項に記載の発光装置を備えた、前照灯。
[項11]
前記第1輝度比Ls/Lの値がそれぞれ異なる2種以上の発光装置を備えた、項10に記載の前照灯。
[項12]
前記項1から9のいずれか1項に記載の発光装置を含む第1発光装置と、CIE(国際照明委員会)で規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線を考慮した380nm以上780nm以下の発光装置の発光の輝度Lに対する、前記ヒトの明所視標準比視感度曲線及びヒトのS錐体の分光感度を考慮した380nm以上780nm以下の発光装置の発光の第1実効放射輝度の比であり、下記式(1)から導き出される第1輝度比Ls/Lが0.9を超える光を発する第2発光装置の2種以上の発光装置を備えた、前照灯。
(式(1)中、S(λ)は発光装置の発光の分光放射輝度であり、V(λ)はCIE(国際照明委員会)で規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線であり、Gs(λ)は波長λnmが380nm以上550nm以下の範囲内におけるヒトのS錐体の分光感度である。)
[項13]
400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、
480nm以上580nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体と、580nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、前記第1蛍光体の組成とは異なる組成を有する第2蛍光体と、を含む波長変換部材と、
を備えた発光装置であり、
前記発光装置は、300nm以上800nm以下の範囲において前記発光装置の発光の放射輝度Aに対する、波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線を考慮した300nm以上800nm以下の範囲の発光装置の発光の第2実効放射輝度Bの比であり、下記式(2)から導き出される第2輝度比B/Aが0.104以下である光を発すし、
前記第1蛍光体が、下記式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体を含む、発光装置。
(式(2)中、S(λ)は発光装置の発光の分光放射輝度であり、Dc(λ)はレイリー散乱において、波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線である。)
Ln 3-eCe(Al1-aGa12 (1A)
(式(1A)中、Lnは、Y、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、a及びeは、0≦a≦0.5、0.019≦e≦0.2を満たす。)
[項14]
相関色温度が1800K以上5000K以下の光を発する、項13に記載の発光装置。
[項15]
前記第1蛍光体は、発光スペクトルの半値全幅が90nm以上125nm以下の範囲内である、項13又は14に記載の発光装置。
[項16]
前記第2蛍光体は、発光スペクトルの半値全幅が3nm以上15nm以下の範囲内であるか、又は発光スペクトルの半値全幅が60nm以上120nm以下の範囲内である、項13から15のいずれか1項に記載の発光装置。
[項17]
前記第1蛍光体が、前記式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体を含み、さらに下記式(1B)で表される組成を有する第1窒化物蛍光体を含む、項13から16のいずれか1項に記載の発光装置。
LaLn CeSi: (1B)
(式(II)中、Lnは、Y及びGdからなる群から選択される少なくとも1種を必須として含み、Sc及びLuからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよく、組成1モル中に含まれるLn元素を100モル%としたときに、Lnに含まれるY及びGdの合計が90モル%以上であり、w、x、y及びzは、1.2≦w≦2.2、0.5≦x≦1.2、10≦y≦12、0.5≦z≦1.2、1.80<w+x<2.40、2.9≦w+x+z≦3.1を満たす。)
[項18]
前記第2蛍光体が、下記式(2A)で表される組成を有する第2窒化物蛍光体、下記式(2B)で表される組成を有する第3窒化物蛍光体、下記式(2C)で表される組成を有するフッ化物蛍光体、下記式(2C)とは組成が異なる下記式(2C’)で表される組成を有するフッ化物蛍光体、及び下記式(2G)で表される組成を有するαサイアロン蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種を含む、項13から17のいずれか1項に記載の発光装置。
Si:Eu (2A)
(式(2A)中、Mは、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含むアルカリ土類金属元素である。)
SrCaAlSi:Eu (2B)
(式(2B)中、q、s、t、u及びvは、それぞれ0≦q<1、0<s≦1、q+s≦1、0.9≦t≦1.1、0.9≦u≦1.1、2.5≦v≦3.5を満たす。)
[M 1-bMn4+ ] (2C)
(式(2C)中、Aは、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種を含み、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、bは、0<b<0.2を満たし、cは、[M 1-bMn4+ ]イオンの電荷の絶対値であり、dは、5<d<7を満たす。)
A’c’[M1-b’Mn4+ b’d’] (2C’)
(式(2C’)中、A’は、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種を含み、M’は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、b’は、0<b’<0.2を満たし、c’は、[M1-b’Mn4+ b’d’]イオンの電荷の絶対値であり、d’は、5<d’<7を満たす。)
v3Si12-(w3+x3)Alw3+x3x316-x3:Eu (2G)
(式(2G)中、Mは、Li、Mg、Ca、Sr、Y及びランタノイド元素(但し、LaとCeを除く。)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、v3、w3及びx3は、それぞれ0<v3≦2.0、2.0≦w3≦6.0、0≦x3≦1.0を満たす。)
[項19]
前記式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体のフィッシャーサブシーブサイザー法により測定された平均粒径が15μm以上40μm以下の範囲内である、項13から18のいずれか1項に記載の発光装置。
[項20]
前記波長変換部材が、前記第1蛍光体及び前記第2蛍光体と、透光性材料とを含む波長変換体を備え、波長変換体中の透光性材料100質量部に対して、第1蛍光体及び第2蛍光体の総量が50質量部以上500質量部以下の範囲内である、項13から19のいずれか1項に記載の発光装置。
[項21]
前記波長変換部材が、前記第1蛍光体及び前記第2蛍光体と、透光性材料とを含む波長変換体を備え、
前記波長変換体が、前記第1蛍光体及び前記第2蛍光体の充填率が高い高濃度層と、前記第1蛍光体及び前記第2蛍光体の充填率が低い低濃度層とを備え、
前記高濃度層が、前記発光素子の側に配置された、項13から20のいずれか1項に記載の発光装置。
[項22]
前記項13から21のいずれか1項に記載の発光装置を備えた、前照灯。
[項23]
前記第2輝度比B/Aの値がそれぞれ異なる2種以上の発光装置を備えた、項22に記載の前照灯。
[項24]
前記項13から21のいずれか1項に記載の発光装置を含む第1発光装置と、
300nm以上800nm以下の範囲において発光装置の発光の放射輝度Aに対する、波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線を考慮した300nm以上800nm以下の範囲の発光装置の発光の第2実効放射輝度Bの比であり、下記式(2)から導き出される第2輝度比B/Aが0.104を超える光を発する第2発光装置の2種以上の発光装置を備えた、前照灯。
(式(2)中、S(λ)は発光装置の発光の分光放射輝度であり、Dc(λ)はレイリー散乱において、波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線である。)
[項25]
前記項1から9及び13から21のいずれか1項に記載の発光装置を備えた、車両。
[項26]
前記項10から12及び22から24のいずれか1項に記載の前照灯を備えた、車両。
【実施例0098】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0099】
各実施例及び比較例の発光装置には、以下の第1蛍光体及び第2蛍光体を用いた。
【0100】
第1蛍光体
第1蛍光体として、前記式(1A)で表される組成を有し、前記式(1A)で表されるLnがYであり、組成に含まれるCeのモル比(前記式(1A)中の変数e)が、それぞれ表1に示す数値である、希土類アルミン酸塩蛍光体のYAG-1、YAG-2、YAG-3、YAG-4、及びYAG-5を準備した。また、第1蛍光体として、前記式(1A)に含まれない組成を有し、前記式(1A)で表されるLnがYであり、組成に含まれるCeのモル比が0.018である、YAG-6を準備した。これらの第1蛍光体は、表1に示すように、それぞれ異なる、FSSS法により測定した平均粒径、CIE色度座標(x、y)、発光ピーク波長、及び半値全幅を有する。本明細書において、表1中、「-」の記号は、該当する項目又は数値がないことを表す。
【0101】
第2蛍光体
第2蛍光体として、前記式(2A)で表される組成を有する第2窒化物蛍光体である、BSESN-1を準備した。第2蛍光体は、表1に示すように、FSSS法により測定した平均粒径、CIE色度座標(x、y)、発光ピーク波長、半値全幅を有する。
【0102】
蛍光体の発光スペクトル
各蛍光体は、量子効率測定装置(QE-2000、大塚電子株式会社製)を用いて、励起波長450nmの光を各蛍光体に照射し、室温(約25℃)における発光スペクトルを測定し、各発光スペクトルからCIE1931の色度座標におけるx値及びy値、発光ピーク波長、半値全幅を測定した。
【0103】
蛍光体の平均粒径
各蛍光体は、Fisher Sub-Sieve Sizer Model 95(Fisher Scientific社製)を用いて、FSSS法により平均粒径を測定した。具体的には、1cm分の体積の試料となる蛍光体を計り取り、専用の管状容器にパッキングした後、一定圧力の乾燥空気を流し、差圧から比表面積を読み取り、平均粒径(Fisher Sub-Sieve Sizer’s No.)に換算した値である。
【0104】
【表1】
【0105】
実施例1から6
図3A及び図3Bに示される形態の発光装置を製造した。
発光素子の配置工程において、基板は、窒化アルミニウムを材料とするセラミックス基板を用いた。発光素子は、発光ピーク波長が450nmである窒化物系半導体層が積層された発光素子を用いた。発光素子の大きさは、平面形状が約1.0mm四方の略正方形であり、厚さが約0.11mmである。発光素子は、光出射面が基板側になるように配置し、Auからなる導電部材を用いたバンプによってフリップチップ実装した。また、発光素子と間隔を空けて半導体素子をAuからなる導電部材を用いたバンプによってフリップチップ実装した。
【0106】
透光性材料として、シリコーン樹脂a(ショアA硬度70)を用いた。波長変換体を含む波長変換部材の形成工程において、透光性材料としてシリコーン樹脂aの100質量部に対する、第1蛍光体及び第2蛍光体を表2に示す配合で用いた。表2中、蛍光体総量は、シリコーン樹脂aの100質量部に対する、第1蛍光体及び第2蛍光体の総量を示す。また、表2中、第1蛍光体の質量割合(質量%)及び第2蛍光体の質量割合(質量%)は、第1蛍光体及び第2蛍光体の合計の含有量を100質量%としたときの第1蛍光体の質量割合及び第2蛍光体の質量割合を示す。発光装置に含まれる第1蛍光体の含有量又は第2蛍光体の含有量は、第1蛍光体及び第2蛍光体の総量(質量部)と、第1蛍光体及び第2蛍光体の各質量割合(質量%)の積を100で除すことによって算出することができる。透光体として、ホウ珪酸ガラスからなり、発光素子の平面形状よりも縦横に約0.15mm大きい、平面形状が約1.15mm四方の略正方形であり、厚さが約0.10mmである透光体を準備した。透光体の略正方形状の一面に波長変換体用組成物を印刷法により印刷し、180℃で2時間加熱して、波長変換体用組成物を硬化させて、厚さ約80μmの層状の波長変換体を形成し、層状又は板状の波長変換体と透光体が一体となった波長変換部材を形成した。本明細書において、シリコーン樹脂のショアA硬度は、JIS K6253に準拠して、デュロメータータイプA(製品名:GS-709G、TECLOCK社製)を使用して測定した。
【0107】
発光素子と波長変換部材の接着工程において、波長変換部材の平面形状が約1.15mm四方の略正方形の一面と、発光素子の平面形状が約1.0mm四方の略正方形の一面とを、シリコーン樹脂を含む接着剤を用いて接着し、発光素子と波長変換部材の間に接着層を形成した。
【0108】
被覆部材の形成工程において、ジメチルシリコーン樹脂と酸化チタン粒子とを含み、ジメチルシリコーン樹脂の100質量部に対して酸化チタン粒子を30質量部含む被覆部材用組成物を準備した。基板上に配置された発光素子及び波長変換部材及び透光体を含む波長変換体の側面を被覆部材用組成物で覆い、半導体素子は完全に被覆部材用組成物に埋設するように、被覆部材用組成物を充填し、被覆部材用組成物を硬化させ、被覆部材を形成して、樹脂パッケージを形成し、発光装置を製造した。
【0109】
比較例1
第1蛍光体として、前記式(1A)に含まれない組成を有するYAG-6を用いて、第1蛍光体及び第2蛍光体を表2に示す配合で用いたこと以外は、実施例1と同様にして、発光装置を製造した。
【0110】
各発光装置について、以下の測定を行った。結果を表2に示す。
【0111】
発光装置の発光スペクトル、色度座標(x、y)、相関色温度(K)
各発光装置について、分光測光装置(PMA-11、浜松ホトニクス株式会社製)と積分球を組み合わせた光計測システムを用いて、室温(25℃±5℃)における発光スペクトルを測定した。各発光装置の発光スペクトルから、CIE1931の色度座標におけるx値及びy値と、JIS Z8725に準拠して相関色温度(K)と、を測定した。図6に、最大の発光強度を1としたときの実施例1に係る発光装置の発光スペクトルを示す。
【0112】
第1輝度比Ls/L
各発光装置について測定した各発光スペクトルS(λ)、図1Aから求められるヒトのS錐体の分光感度Gs(λ)、図1Bから求められるCIEで規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線V(λ)を、前記式(1)に算入し、各発光装置の発光の第1輝度比Ls/Lを測定した。
【0113】
第2輝度比B/A
各発光装置について測定した各発光スペクトルS(λ)、図2から求められる散乱強度曲線Dc(λ)を、前記式(2)に算入し、各発光装置の発光の第2輝度比B/Aを測定した。
【0114】
相対光束(%)
積分球を使用した全光束測定装置を用いて、各発光装置について光束を測定した。比較例1の発光装置の光束を100%として、比較例1以外の各発光装置の相対光束を算出した。
【0115】
【表2】
【0116】
実施例1から6に係る発光装置は、相関色温度が1800K以上5000K以下の光を発し、第1輝度比Ls/Lが0.9以下である光を発した。実施例1から6に係る発光装置は、グレアを低減した光が発せられる。
【0117】
実施例1から6に係る発光装置は、第2輝度比B/Aが0.104以下である光を発した。実施例1から6に係る発光装置は、光の散乱が抑制され、比較的遠方まで到達する光が発せられる。
【0118】
実施例1から6に係る発光装置は、前記式(1A)で表される組成を有する第1蛍光体を含み、前記式(1A)において、賦活元素であるCeのモル比を表す変数eが、0.019以上0.2以下の範囲(0.019≦e≦0.2)を満たし、より具体的には、0.025以上0.112以下の範囲であり、前記式(1A)で表される組成式に含まれていない組成を有する第1蛍光体よりも、発光装置に含まれる第1蛍光体の含有量(蛍光体総量と第1蛍光体の質量割合の積を100で除した量)を少なくすることができた。また、実施例1から6に係る発光装置は、前記式(1A)で表される組成を有する第1蛍光体を含み、前記式(1A)において、賦活元素であるCeのモル比を表す変数eが、0.019以上0.2以下の範囲(0.019≦e≦0.2)を満たしているので、波長変換部材に含まれる蛍光体総量も比較例1に係る発光装置に用いた波長変換部材よりも少なくすることができ、蛍光体総量が少ない場合であっても、CIE色度座標の目的する範囲の色調を有し、第1輝度比Ls/Lが0.9以下であり、第2輝度比B/Aが0.104以下である光を発した。
【0119】
信頼性評価試験、剥離の割合の数値化
各発光装置について、信頼性評価を行った。結果を表3に示す。信頼性評価としては、発光装置を85℃かつ相対湿度85%の環境試験機内で、700時間、電流1200mAで30分間ずつONとOFFを繰り返して信頼性評価試験を行った。信頼性評価試験後、発光装置の波長変換部材をマイクロスコープで観察し、波長変換体と透光体の間に生じる剥離の割合を数値化することで、耐久性を評価した。図3Bにおいて、波長変換部材40の波長変換体41及び透光体42の間に生じる剥離の割合を数値化した。
剥離の割合の数値化には、アメリカ国立衛生研究所が開発したオープンソースであるパブリックドメインの画像解析処理ソフトウェア「ImageJ」を用いた。マイクロスコープで発光装置を透光体面側から撮影した写真を透光体面だけになるように切り抜き、透光体を撮影したカラー写真の三原色RGBに分離し、三原色RGBのうちGだけを抽出した。Gは、光のコントラスト(明暗)がはっきりと明確になりやすいためである。発光装置の透光体を撮影したカラー写真のGだけを取り出した写真のコントラストを調整して波長変換体と透光体の間に生じた剥離部分を強調し、剥離部分を2値化して、透光体面の面積に対する透光体面中の剥離部分の合計の面積の割合(剥離面/透光体面(%))を剥離の割合として算出した。算出した剥離の割合の数値は表3に示す。表3には、各発光装置の波長変換部材に含まれる、前記式(1A)で表される第1蛍光体の種類と、第1蛍光体に含まれるCeのモル比(前記式(1A)中の変数e)も示す。また、図8は、700時間の信頼性評価試験後の実施例1に係る発光装置の透光体面を2値化した写真を示す。図9は、700時間の信頼性評価試験後の比較例1に係る発光装置の透光体面を2値化した写真を示す。
【0120】
上述の信頼性評価試験後の各発光装置について、信頼性評価試験前と同様にして、第1輝度比、第2輝度比を算出した。また、信頼性評価試験前と同様にして、信頼性評価試験後の各発光装置の発光スペクトルを測定し、各発光装置の発光スペクトルからCIE1931の色度座標におけるx値及びy値と、JIS Z8725に準拠して相関色温度(K)を測定した。具体的には信頼性評価試験前の初期状態の発光装置から発する混色光のCIE色度座標におけるx値及びy値を、x1値及びy1値とし、発光装置を85℃かつ相対湿度85%の環境試験機内で、700時間、電流1200mAで30分間ずつONとOFFを繰り返した後、発光装置から発する混色光のCIE色度座標におけるx2及びy2値を測定し、x1値とx2値との差分Δxとy1値とy2値の差分Δyの絶対値を算出した。図7に、最大の発光強度を1としたときの前述の信頼性評価試験後の実施例1に係る発光装置の発光スペクトルを示す。
【0121】
【表3】
【0122】
実施例1から6に係る発光装置は、85℃かつ相対湿度85%の環境試験機内で、700時間の信頼性評価試験後においても、相関色温度が1800K以上5000K以下の光を発し、第1輝度比Ls/Lが0.9以下である光を発した。実施例1から6に係る発光装置は、グレアを低減した光が発せられる。
【0123】
実施例1から6に係る発光装置は、85℃かつ相対湿度85%の環境試験機内で、700時間の信頼性評価試験後においても、第2輝度比B/Aが0.104以下である光を発した。実施例1から6に係る発光装置は、光の散乱が抑制され、比較的遠方まで到達する光が発せられる。
【0124】
また、実施例1から6に係る発光装置は、前記式(1A)で表される組成を有する第1蛍光体を含み、前記式(1A)において、賦活元素であるCeのモル比を表す変数eが、0.019以上0.2以下の範囲(0.019≦e≦0.2)を満たしているので、波長変換部材に含まれる蛍光体総量が比較例1に係る発光装置に用いた波長変換部材よりも少ない量とすることができ、85℃かつ相対湿度85%の環境試験機内で、700時間の信頼性評価試験後において、波長変換部材40の波長変換体41と透光体42の間に生じる剥離の割合が、比較例1に係る発光装置と比較して少なく、耐久性を高めることができた。また、また、実施例1から6に係る発光装置は、前記式(1A)で表される組成を有する第1蛍光体を含み、前記式(1A)において、賦活元素であるCeのモル比を表す変数eが、0.019以上0.2以下の範囲(0.019≦e≦0.2)を満たしているので、信頼性評価試験前後の色度の変化を表すΔx及びΔyの値が、比較例1に係る発光装置のΔx及びΔyよりも小さくなり、色度ずれを抑制し、耐久性を高めることができた。
【0125】
図6に示す信頼性評価試験前の実施例1に係る発光装置の発光スペクトルと、図7に示す信頼性評価試験後の実施例1に係る発光装置の発光スペクトルとでは、発光スペクトルにほぼ変化がなく、85℃かつ相対湿度85%の環境試験機内で、700時間の信頼性評価試験後において、前述のとおり、グレアを低減した光が発せられ、光の散乱が抑制され、比較的遠方まで到達する光が発せられる。
【0126】
図8に示す700時間の信頼性評価試験後の実施例1に係る発光装置の透光体面を2値化した写真において、白色の剥離部分がほとんど確認できず、発光装置の耐久性が高められていた。
【0127】
図9に示す700時間の信頼性評価試験後の比較例1に係る発光装置の透光体面を2値化した写真において、波長変換体と透光体の間の剥離部分を示す白色が多くみられた。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本開示の実施形態の発光装置は、前照灯に用いることができる。本開示の実施形態による発光装置を備えた前照灯は、例えば自動二輪車、自動四輪車等の道路運送車両、鉄道車両、整地・運搬・積込用機械のようなトラクター系又は堀削用機械等のショベル系の車両系建設機械に用いる車両に用いることができる。
【符号の説明】
【0129】
1:基板、10:発光素子、12:点灯制御部、22:アウターレンズ、24:ランプボディ、26:光学フィルタ、28:ネジ、32:基板、34:導光部材、40:波長変換部材、41:波長変換体、41a:高濃度層、41b:低濃度層、42:透光体、50:半導体素子、60:導電部材、71:第1蛍光体、72:第2蛍光体、80:接着層、90:被覆部材、100、101:発光装置、200:前照灯。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9