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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058089
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】のど厚測定器及びのど厚測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 3/20 20060101AFI20240418BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
G01B3/20 E
B23K31/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165232
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】三好 竜介
(72)【発明者】
【氏名】島津 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 直史
【テーマコード(参考)】
2F061
【Fターム(参考)】
2F061AA20
2F061FF34
2F061FF73
2F061GG01
2F061GG07
2F061JJ81
2F061RR01
2F061RR07
(57)【要約】
【課題】入隅角度が直角でない入隅に形成された隅肉溶接におけるのど厚を測定できるのど厚測定器およびのど厚測定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】のど厚測定器100は、直線状の基準軸Pに沿って延びるピンゲージ10と、基準軸Pに垂直な第1基準面21の面上に、基準軸Pから第1基準距離L1で等しく離れる一対の第1エッジ22,22を有する第1ゲージ20と、第1基準面21から離間して第1基準面21と平行な第2基準面31の面上に、基準軸Pから第2基準距離L2で等しく離れる一対の第2エッジ32,32を有する第2ゲージ30と、を備えている。第1ゲージ20及び第2ゲージ30は、ピンゲージ10に対して基準軸Pに沿って平行移動自在に支持される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状の基準軸に沿って延びるピンゲージと、
前記基準軸に垂直な第1基準面の面上に、前記基準軸から第1基準距離で等しく離れる一対の第1エッジを有する第1ゲージと、
前記第1基準面から離間して前記第1基準面と平行な第2基準面の面上に、前記基準軸から第2基準距離で等しく離れる一対の第2エッジを有する第2ゲージと、を備え、
前記第1ゲージ及び前記第2ゲージは、前記ピンゲージに対して前記基準軸に沿って平行移動自在に支持される
のど厚測定器。
【請求項2】
前記ピンゲージと前記第1ゲージとを位置決め自在に締結する第1ロックと、
前記ピンゲージと前記第2ゲージとを位置決め自在に締結する第2ロックと、を備える
請求項1に記載ののど厚測定器。
【請求項3】
前記ピンゲージは、前記第1ロック及び前記第2ロックを嵌合してガイドし、前記基準軸に沿って形成されるキー溝を有する
請求項2に記載ののど厚測定器。
【請求項4】
前記ピンゲージは、先端に向けて凸の球面を有する
請求項1または2に記載ののど厚測定器。
【請求項5】
前記第1ゲージは、前記第1基準距離を示す第1基準マークを有し、
前記第2ゲージは、前記第2基準距離を示す第2基準マークを有する
請求項1または2に記載ののど厚測定器。
【請求項6】
前記ピンゲージは、先端から前記第1基準面までの第1測定距離を示す第1測定マークと、
前記第1基準面から前記第2基準面までの第2測定距離を示す第2測定マークと、を有する
請求項1または2に記載ののど厚測定器。
【請求項7】
前記第1エッジ及び前記第2エッジは、前記基準軸を中心とする円形状である
請求項1または2に記載ののど厚測定器。
【請求項8】
前記ピンゲージの先端を第1母材と第2母材との間に形成された隅肉溶接の表面に当て、前記第1エッジを前記第1母材及び前記第2母材に当て、前記第2エッジを前記第1母材及び前記第2母材に当てるセット工程と、
前記先端から前記第1基準面までの第1測定距離及び前記先端から前記第2基準面までの第2測定距離を測定する測定工程と、
前記第1基準距離、前記第2基準距離、前記第1測定距離及び前記第2測定距離に基づいて、前記隅肉溶接ののど厚を演算する演算工程と、を含む
請求項1または2に記載ののど厚測定器を用いたのど厚測定方法。
【請求項9】
前記測定工程は、前記基準軸の垂直方向から前記のど厚測定器を撮像した画像を取得し、前記画像から前記第1測定距離及び前記第2測定距離を演算することを含む
請求項8に記載ののど厚測定器を用いたのど厚測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、のど厚測定器及びのど厚測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶接サイズを測定する測定器があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-180904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の測定器は、一方の母材と、その母材の表面に対して垂直な方向に延びる表面を有する他方の母材との間の入隅角度が直角となる入隅に形成された隅肉溶接の溶接サイズを測定するものであった。そのため、入隅角度が直角でない入隅に形成された隅肉溶接におけるのど厚を測定できなかった。
【0005】
本発明は、入隅角度が直角でない入隅に形成された隅肉溶接におけるのど厚を測定できるのど厚測定器及びのど厚測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
(1)本発明に係る一態様ののど厚測定器は、直線状の基準軸に沿って延びるピンゲージと、前記基準軸に垂直な第1基準面の面上に、前記基準軸から第1基準距離で等しく離れる一対の第1エッジを有する第1ゲージと、前記第1基準面から離間して前記第1基準面と平行な第2基準面の面上に、前記基準軸から第2基準距離で等しく離れる一対の第2エッジを有する第2ゲージと、を備え、前記第1ゲージ及び前記第2ゲージは、前記ピンゲージに対して前記基準軸に沿って平行移動自在に支持される。
(2)上記(1)において、前記ピンゲージと前記第1ゲージとを位置決め自在に締結する第1ロックと、前記ピンゲージと前記第2ゲージとを位置決め自在に締結する第2ロックと、を備えてよい。
(3)上記(2)において、前記ピンゲージは、前記第1ロック及び前記第2ロックを嵌合してガイドし、前記基準軸に沿って形成されるキー溝を有してよい。
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記ピンゲージは、先端に向けて凸の球面を有してよい。
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、前記第1ゲージは、前記第1基準距離を示す第1基準マークを有し、前記第2ゲージは、前記第2基準距離を示す第2基準マークを有してよい。
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、前記ピンゲージは、先端から前記第1基準面までの第1測定距離を示す第1測定マークと、前記第1基準面から前記第2基準面までの第2測定距離を示す第2測定マークと、を有してよい。
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記第1エッジ及び前記第2エッジは、前記基準軸を中心とする円形状であってよい。
(8)本発明に係る一態様ののど厚測定方法は、上記(1)から(7)のいずれかののど厚測定器を用い、前記ピンゲージの先端を第1母材と第2母材との間に形成された隅肉溶接の表面に当て、前記第1エッジを前記第1母材及び前記第2母材に当て、前記第2エッジを前記第1母材及び前記第2母材に当てるセット工程と、前記先端から前記第1基準面までの第1測定距離及び前記先端から前記第2基準面までの第2測定距離を測定する測定工程と、前記第1基準距離、前記第2基準距離、前記第1測定距離及び前記第2測定距離に基づいて、前記隅肉溶接ののど厚を演算する演算工程と、を含む。
(9)上記(8)において、前記測定工程は、前記基準軸の垂直方向から前記のど厚測定器を撮像した画像を取得し、前記画像から前記第1測定距離及び前記第2測定距離を演算することを含んでよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、入隅角度が直角でない入隅に形成された隅肉溶接におけるのど厚を測定できるのど厚測定器およびのど厚測定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るのど厚測定器の説明図である。
図2】ピンゲージの正面図(左)及び右側面図(右)である。
図3】第1ゲージ及び第2ゲージの平面図(上)、正面図(下)及び右側面図(右)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態]
以下、実施形態に係るのど厚測定器100を説明する。
図1は、実施形態に係るのど厚測定器100の説明図である。なお、図1は、隅肉溶接Wの延在方向に対して垂直な任意の断面を表している。
【0010】
図1に示すように、実施形態に係るのど厚測定器100は、一方の第1母材Aと、第1母材Aの表面Asに対して交差する方向に延びる表面Bsを有する他方の第2母材Bとの間の入隅Cに、表面Asと表面Bsとの間を跨るように形成された隅肉溶接Wの溶接サイズ、特に、のど厚Tを測定するものである。なお、ここで、のど厚Tは、理論のど厚ではなく、実際のど厚を意味している。なお、のど厚Tは、隅肉溶接の延在方向に垂直な任意の断面において、表面Asと表面Bsとから等距離にある位置(表面Asと表面Bsとがなす入隅角度2θを二分割した位置)での、表面Asと表面Bsとの交点Zから隅肉溶接の表面Wsまでの距離である。
【0011】
のど厚測定器100で測定する対象となる隅肉溶接Wが形成される入隅Cにおける一方の第1母材Aの表面Asと他方の第2母材Bの表面Bsとでなす入隅角度2θは、鋭角であってよく、直角であってよく、鈍角であってよい。
【0012】
図1に示すように、のど厚測定器100は、直線状の基準軸Pに沿って延びるピンゲージ10と、基準軸Pに垂直な第1基準面21の面上に、基準軸Pから第1基準距離L1で等しく離れる一対の第1エッジ22,22を有する第1ゲージ20と、第1基準面21から離間して第1基準面21と平行な第2基準面31の面上に、基準軸Pから第2基準距離L2で等しく離れる一対の第2エッジ32,32を有する第2ゲージ30と、を備えている。そして、第1ゲージ20及び第2ゲージ30は、ピンゲージ10に対して基準軸Pに沿って平行移動(又は並進)自在に支持されている。
このような構造であるので、ピンゲージ10に対して、長さの異なる組み合わせの第1ゲージ20及び第2ゲージ30をそれぞれ独立させて平行移動させてスライドさせることができる。したがって、ピンゲージ10に対して第1ゲージ20及び第2ゲージ30のそれぞれの位置を調整できる。したがって、後述のように、ピンゲージ10の先端を第1母材とA第2母材Bとの間に形成された隅肉溶接Wの表面Wsに当て、第1エッジ22,22を第1母材A及び第2母材Bに当て、第2エッジ32,32を第1母材A及び第2母材Bに当てた状態にできる。そして、第1測定距離H1及び第2測定距離H2を測定することで、第1測定距離H1及び第2測定距離H2に基づいて、幾何学的な関係を利用して、隅肉溶接Wののど厚Tを演算できる。
よって、本実施形態に係るのど厚測定器100によれば、入隅角度2θが直角である場合に限ることなく、入隅角度2θに依存することなくのど厚Tを測定できる。すなわち、入隅角度2θが直角でない入隅に形成された隅肉溶接Wにおけるのど厚Tを測定できる。さらに、回転するポンプシャフトに溶接されるインペラ、ポンプケーシングの内面に溶接されるガイドベーンのような、三次元的に複雑な構造における隅肉溶接Wのように、入隅角度2θが隅肉溶接Wの延在方向に沿って変化する場合であっても、隅肉溶接Wの延在方向に沿う任意の位置におけるのど厚Tを測定できる。
【0013】
(ピンゲージ)
図2は、ピンゲージ10の正面図(左)及び右側面図(右)である。
図2に示すように、ピンゲージ10は、円柱状の棒体である。ピンゲージ10は、例えば、鋼製であってよい。ピンゲージ10は、第1ゲージ20及び第2ゲージ30のそれぞれに設けられるガイド孔の内径に対して実質的に遊びなく嵌合する外径を有している。よって、ピンゲージ10の延在方向に沿って第1ゲージ20及び第2ゲージ30を、平行移動させることができる。
ピンゲージ10は、隅肉溶接Wの表面Wsに接する先端部11を有している。先端部11は、隅肉溶接Wの表面Wsに対して点で接触するように、先端に向けて(延在方向に沿って外方に向けて)凸の湾曲面であることが好ましい。ピンゲージ10は、先端に向けて凸の湾曲面を有していることが好ましい。湾曲面は球面の一部であってよい。これにより、のど厚Tを演算するための要素となる第1測定距離H1を、精度よく測定できる。
【0014】
ピンゲージ10は、第1ロック40及び第2ロック50を嵌合してガイドし、基準軸Pに沿って形成されるキー溝(不図示)を有してよい。キー溝の溝幅は、第1ロック40及び第2ロック50のそれぞれの軸部の先端が嵌合できるように、軸部の先端における外径と実質的に同等となっている。これにより、第1ゲージ20及び第2ゲージ30を、基準軸Pに沿って平行移動自在のまま、基準軸Pを中心として自由に回転しないようにできる。
【0015】
ピンゲージは、先端から第1基準面21までの第1測定距離H1を示す第1測定マーク(不図示)と、第1基準面21から第2基準面31までの第2測定距離H2を示す第2測定マーク(不図示)と、を有してよい。第1測定マーク及び第2測定マークは、例えば、ピンゲージ10の延在方向に沿って1ミリの間隔で平行に記された目盛りである。これにより、ピンゲージ10の先端から第1基準面21までの第1測定距離H1と、第1基準面21から第2基準面31までの第2測定距離H2を、直接読み取ることができる。よって、第1測定距離H1及び第2測定距離H2を測定しやすくできる。
【0016】
(第1ゲージ)
図3は、第1ゲージ20及び第2ゲージ30の平面図(上)、正面図(下)及び右側面図(右)である。
図1に示すように、第1ゲージ20は、ピンゲージ10に対して基準軸Pに沿って平行移動自在に支持される。
図3に示すように、第1ゲージ20は、棒状体であってよい。第1ゲージ20は、例えば、鋼製であってよい。第1ゲージ20は、第2ゲージ30より短い。
第1ゲージ20は、第1ガイド孔25を有している。第1ガイド孔25は、第1エッジ22,22を両端とする線分上でその両端から等しい第1基準距離L1にある中点を中心とする孔である。
第1ゲージ20は、ピンゲージ10を第1ガイド孔25に貫通させた状態で実質的に遊びが無い状態でピンゲージ10とスライド自在に嵌合している。これにより、第1ゲージ20は、ピンゲージ10の延在方向である基準軸Pに沿って平行移動する。第1ゲージ20は、第2ゲージ30より隅肉溶接W寄りに配置されている。
【0017】
第1ゲージ20は、基準軸Pに垂直な第1基準面21の面上に、基準軸Pから第1基準距離L1で等しく離れる一対の第1エッジ22,22を有している。第1基準面21は、第1ゲージ20の底面と一致していてよい。
第1エッジ22,22は、図3に示すような直線状の辺であってよいが、円弧状の辺であってよく、実質的な点であってもよい。これにより、第1エッジ22,22を、第1母材及び第2母材Bに精度良く当てることができる。
【0018】
第1エッジ22は、基準軸Pを中心とする円形状であってよい。第1エッジ22は、例えば、円盤形状の第1ゲージ20の外周縁である。これにより、第1ゲージ20の基準軸Pを中心とする回転位置に依存することなく、基準軸Pから第1基準距離L1だけ離れた位置で、第1ゲージ20を第1母材A及び第2母材Bに当てることができる。
【0019】
第1ゲージ20は、第1ロック孔24を有している。第1ロック孔24は、第1ロック40に設けられる雄ねじに螺合可能な雌ねじを有している。第1ロック孔24には、第1ロック40の軸部が通される。
【0020】
第1ゲージ20は、第1基準距離L1を示す第1基準マーク(不図示)を有していてよい。第1基準マークは、例えば、第1基準距離L1(第1ゲージ20の全長の半分の長さ)をミリメートルを単位とした場合のアラビア数字である。これにより、第1基準距離L1を直接読み取ることができる。よって、第1基準距離L1を測定せずに確認できる。
【0021】
(第2ゲージ)
図1に示すように、第2ゲージ30は、ピンゲージ10に対して基準軸Pに沿って平行移動自在に支持される。
図3に示すように、第2ゲージ30は、第1ゲージ20と同様に、棒状体であってよい。第2ゲージ30は、例えば、鋼製であってよい。第2ゲージ30は、第1ゲージ20より長い。
第2ゲージ30は、第2ガイド孔35を有している。第2ガイド孔35は、第2エッジ32,32を両端とする線分上でその両端から等しい第2基準距離L2にある中点を中心とする孔である。
第2ゲージ30は、ピンゲージ10を第2ガイド孔35に貫通させた状態で実質的に遊びが無い状態でピンゲージ10とスライド自在に嵌合している。これにより、第2ゲージ30は、ピンゲージ10の延在方向である基準軸Pに沿って平行移動する。第2ゲージ30は、第1ゲージ20より隅肉溶接Wから離れる側に配置されている。
【0022】
第2ゲージ30は、基準軸Pに垂直な第2基準面31の面上に、基準軸Pから第2基準距離L2で等しく離れる一対の第2エッジ32,32を有している。第2基準面31は、第2ゲージ30の底面と一致していてよい。
第2エッジ32,32は、図3に示すような直線状の辺であってよいが、円弧状の辺であってよく、実質的な点であってもよい。これにより、第2エッジ32を、第1母材及び第2母材Bに精度良く当てることができる。
【0023】
第2エッジ32は、基準軸Pを中心とする円形状であってよい。第2エッジ32は、例えば、円盤形状の第2ゲージ30の外周縁である。これにより、第2エッジ32の基準軸Pを中心とする回転位置に依存することなく、基準軸Pから第1基準距離L1だけ離れた位置で、第1ゲージ20を第1母材A及び第2母材Bに当てることができる。
【0024】
第2ゲージ30は、第2ロック孔34を有している。第2ロック孔34は、第2ロック50に設けられる雄ねじに螺合可能な雌ねじを有している。第2ロック孔34には、第2ロック50の軸部が通される。
【0025】
第2ゲージ30は、第2基準距離L2を示す第2基準マーク(不図示)を有していてよい。第2基準マークは、例えば、第2基準距離L2(第2ゲージ30の全長の半分の長さ)をミリメートルを単位とした場合のアラビア数字である。これにより、第2基準距離L2を直接読み取ることができる。よって、第2基準距離L2を測定せずに確認できる。
【0026】
(ロック機構)
のど厚測定器100は、ピンゲージ10と第1ゲージ20とを位置決め自在に締結する第1ロック40と、ピンゲージ10と第2ゲージ30とを位置決め自在に締結する第2ロック50と、を備えていてよい。これにより、のど厚測定器100を隅肉溶接Wと第1母材Aと第2母材Bとに当てて接しさせた状態で、ピンゲージ10と第1ゲージ20及び第2ゲージ30との位置関係を固定できる。よって、第1測定距離H1及び第2測定距離H2を測定しやすくできる。
【0027】
(第1ロック)
第1ロック40は、頭部に蝶の羽根のような形状の取手を有し、頭部に続く軸部に雄ねじを有する蝶ボルトであってよい。第1ロック40の軸部は、雄ねじを有している。
第1ロック40の雄ねじは、第1ゲージ20の第1ロック孔24に設けられた雌ねじに螺合される。第1ロック40の先端は、第1ゲージ20に形成された第1ガイド孔25に露出している。第1ロック40の先端は、第1ガイド孔25に通されたピンゲージ10の側面を押圧できるようになっている。
【0028】
(第2ロック)
第2ロック50は、第1ロック40と同様に、頭部に蝶の羽根のような形状の取手を有し、頭部に続く軸部に雄ねじを有する蝶ボルトであってよい。第2ロック50の軸部は、雄ねじを有している。
第2ロック50の雄ねじは、第2ゲージ30の第2ロック孔34に設けられた雌ねじに螺合される。第2ロック50の先端は、第2ゲージ30に形成された第2ガイド孔35に露出している。第2ロック50の先端は、第2ガイド孔35に通されたピンゲージ10の側面を押圧できるようになっている。
【0029】
のど厚測定器100は、第1ロック40及び第2ロック50により、ピンゲージ10に対して第1ゲージ20及び第2ゲージ30のそれぞれの位置の、固定と固定解除を切り替え可能になっている。
【0030】
第1ゲージ20の第1ロック孔24の雌ねじに螺合された第1ロック40を締めると、ピンゲージ10の側面が第1ロック40の軸部の先端に押圧されて、第1ゲージ20がピンゲージ10に対する平行移動に抵抗する力が高まり、第1ゲージ20とピンゲージ10との位置関係が固定される。反対に、第1ロック40を緩めると、ピンゲージ10の側面が第1ロック40の軸部の先端から離れて、第1ゲージ20とピンゲージ10との位置関係の固定が解除されて、第1ゲージ20がピンゲージ10に対して平行移動自在になる。
【0031】
また、第2ゲージ30の第2ロック孔34の雌ねじに螺合された第2ロック50を締めると、ピンゲージ10の側面が第2ロック50の軸部の先端に押圧されて、第2ゲージ30がピンゲージ10に対する平行移動に抵抗する力が高まり、第2ゲージ30とピンゲージ10との位置関係が固定される。反対に、第2ロック50を緩めると、ピンゲージ10の側面が第2ロック50の軸部の先端から離れて、第2ゲージ30とピンゲージ10との位置関係の固定が解除されて、第2ゲージ30がピンゲージ10に対して平行移動自在になる。
【0032】
このように、ピンゲージ10と第1ゲージ20及び第2ゲージ30とは、第1ロック40及び第2ロック50により、位置関係の固定と固定解除とを切替できるので、第1エッジ22が基準軸Pから第1基準距離L1離れた位置となるように第1ゲージ20を精度よく位置決めでき、第2エッジ32が基準軸Pから第2基準距離L2離れた位置となるように第2ゲージ30を精度よく位置決めできる。よって、のど厚Tを精度良く演算できる。
【0033】
なお、第1ゲージ20及び第2ゲージ30は、円形状の外周縁(第1エッジ22及び第2エッジ32)を有する円盤状であってよい。この場合、外周縁を、第1母材A及び第2母材Bに対して点で接して当てることができる。よって、入隅角度2θが隅肉溶接Wの延在方向に沿って変化する場合であっても、隅肉溶接Wの延在方向に沿う任意の位置におけるのど厚Tを測定できる。
【0034】
このように、のど厚測定器100は、ピンゲージ10と第1ゲージ20とを位置決め自在に締結する第1ロック40と、ピンゲージ10と第2ゲージ30とを位置決め自在に締結する第2ロック50と、を備えていてよい。これにより、ピンゲージ10を隅肉溶接Wに当てて、第1ゲージ20及び第2ゲージ30を、それぞれ、第1母材A及び第2母材Bに当てた状態で、ピンゲージ10と第1ゲージ20及び第2ゲージとの位置関係を維持して固定できる。よって、ピンゲージ10と第1ゲージ20及び第2ゲージとの位置関係が維持された状態で、のど厚測定器100を隅肉溶接Wから離しても、第1測定距離H1及び第2測定距離H2測定しやすくできる。
【0035】
(のど厚測定方法)
次に、上述したのど厚測定器100を用いたのど厚測定方法を説明する。
図1に示すように、まず、第1ゲージ20及び第2ゲージ30にピンゲージを通した状態で、第1ロック40及び第2ロック50をそれぞれ第1ゲージ20及び第2ゲージ30に対して緩めた状態で螺合した状態にして、のど厚測定器100を組み立てる。
この際、入隅角度2θの大きさに応じて適切な長さの第1ゲージ20及び第2ゲージ30を選択し、選択された第1ゲージ20及び第2ゲージ30をピンゲージ10に組み込む。例えば、入隅角度2θが70度程度である場合、15ミリの長さの第1ゲージ20と、30ミリの長さの第2ゲージ30を選択する。
【0036】
(1)セット工程
ピンゲージ10の先端を第1母材Aと第2母材Bとの間に形成された隅肉溶接Wの表面Wsに当てる。第1エッジ22,22を第1母材A及び第2母材Bに当てる。第2エッジ32,32を第1母材A及び第2母材Bに当てる(セット工程)。
そして、のど厚測定器100における、第1母材Aに接する一方の第1エッジ22と第2母材Bに接する他方の第1エッジ22までを結ぶ線分を、隅肉溶接Wの延在方向に対して垂直な面に沿わせるように、姿勢を調節する。
ここで、第1ロック40及び第2ロック50を締めることにより、第1ゲージ20及び第2ゲージ30をピンゲージ10に固定する。
【0037】
(2)測定工程
次に、第1測定距離H1及び第2測定距離H2を測定する(測定工程)。
ここで、第1測定距離H1及び第2測定距離H2の測定は、肉眼で直接行われてよく、ノギスで測定されてもよい。
【0038】
測定工程は、カメラで撮像された画像に基づいて行われてもよい。測定工程は、基準軸Pの垂直方向からのど厚測定器100を撮像した画像を取得し、画像から第1測定距離H1及び第2測定距離H2を演算することを含んでよい。これにより、第1測定距離H1及び第2測定距離H2を、肉眼に頼ることなく機械的に測定できる。
【0039】
(3)演算工程
第1基準距離L1、第2基準距離L2、第1測定距離H1及び第2測定距離H2に基づいて、隅肉溶接Wののど厚Tを演算する(演算工程)。
具体的には、のど厚Tと入隅角度2θと第1測定距離H1と第1基準距離L1と第2基準距離L2とに関わる幾何学的な関係がtanθ=L1/(T+H1)=(L2-L1)/H2で表されることから、のど厚T=L1/(L2-L1)*H2-H1の演算式が導かれる。そこで、この演算式中のL1及びL2に規定の数値を代入して、H1及びH2に測定値を代入して、のど厚Tを求める。このようにして、のど厚Tを測定できる。
【0040】
以上、図面を参照して実施形態について説明したが、本発明は上述のものに限られない。実施形態として挙げられた複数の特徴を、自由に組み合わせてもよい。
【0041】
本実施形態に係るのど厚測定器100は、直線状の基準軸Pに沿って延びるピンゲージ10と、基準軸Pに垂直な第1基準面21の面上に、基準軸Pから第1基準距離L1で等しく離れる一対の第1エッジ22,22を有する第1ゲージ20と、第1基準面21から離間して第1基準面21と平行な第2基準面31の面上に、基準軸Pから第2基準距離L2で等しく離れる一対の第2エッジ32,32を有する第2ゲージ30と、を備えている。第1ゲージ20及び第2ゲージ30は、ピンゲージ10に対して基準軸Pに沿って平行移動自在に支持される。これにより、入隅角度2θが直角である場合に限ることなく、入隅角度2θに依存することなくのど厚Tを測定できる。すなわち、入隅角度2θが直角でない入隅に形成された隅肉溶接Wにおけるのど厚Tを測定できる。
【0042】
本実施形態に係るのど厚測定器100を用いたのど厚測定方法は、ピンゲージ10の先端を第1母材Aと第2母材Bとの間に形成された隅肉溶接Wの表面Wsに当て、第1エッジ22,22を第1母材A及び第2母材Bに当て、第2エッジ32を第1母材A及び第2母材Bに当てるセット工程と、第1測定距離H1及び第2測定距離H2を測定する測定工程と、第1基準距離L1、第2基準距離L2、第1測定距離H1及び第2測定距離H2に基づいて、隅肉溶接Wののど厚Tを演算する演算工程と、を含む。これにより、入隅角度2θが直角である場合に限ることなく、入隅角度2θに依存することなくのど厚Tを測定できる。すなわち、入隅角度2θが直角でない入隅に形成された隅肉溶接Wにおけるのど厚Tを測定できる。
【符号の説明】
【0043】
2θ 入隅角度
10 ピンゲージ
11 先端部
20 第1ゲージ
21 第1基準面
22 第1エッジ
24 第1ロック孔
25 第1ガイド孔
30 第2ゲージ
31 第2基準面
32 第2エッジ
34 第2ロック孔
35 第2ガイド孔
40 第1ロック
50 第2ロック
100 厚測定器
A 第1母材
As (第1母材の)表面
B 第2母材
Bs (第2母材の)表面
C 入隅
H1 第1測定距離
H2 第2測定距離
L1 第1基準距離
L2 第2基準距離
P 基準軸
T のど厚
W 隅肉溶接
Ws (隅肉溶接の)表面
Z 交点
図1
図2
図3