(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058195
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165406
(22)【出願日】2022-10-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】森川 桂一
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB02
2G051CA04
2G051CB01
2G051CD01
2G051DA08
2G051EB01
(57)【要約】
【課題】本発明は回転する被検査台の径方向に延びる撮像素子列を用いて取得した画像によっても、回転する被検査台上の検出位置による撮像サイズの変動分を補正して、対象物の実際のサイズに基づいて検査の良否判定を行うことができる検査装置を提供する。
【解決手段】本発明は、回転する被検査台上の画像を前記被検査台の径方向に延びる撮像素子列を用いて取得する画像取得部と、前記画像に撮像された対象物の検出位置および撮像サイズを検出する対象物検出部と、前記対象物の前記検出位置に基づき分解能を決定する分解能決定部と、前記被検査台の回転により生じる前記撮像サイズの変動分を前記分解能に基づき補正し、前記対象物の真正サイズとする撮像サイズ補正部と、前記真正サイズにより、検査における良否を判定する良否判定部と、を備える検査装置に関する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する被検査台上の画像を前記被検査台の径方向に延びる撮像素子列を用いて取得する画像取得部と、
前記画像に撮像された対象物の検出位置および撮像サイズを検出する対象物検出部と、
前記対象物の前記検出位置に基づき分解能を決定する分解能決定部と、
前記被検査台の回転により生じる前記撮像サイズの変動分を前記分解能に基づき補正し、前記対象物の真正サイズとする撮像サイズ補正部と、
前記真正サイズにより、検査における良否を判定する良否判定部と、を備える検査装置。
【請求項2】
前記分解能決定部は、前記被検査台の円周方向の画素ラインごとに画素毎分解能を算出し、
前記撮像サイズ補正部は、前記画素毎分解能により前記撮像サイズを補正し、前記画素ラインごとに補正された補正後撮像サイズの和を前記対象物の前記真正サイズとする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記分解能決定部は、前記被検査台の回転中心に対する前記対象物の重心座標を求めるとともに、前記重心座標に基づき前記対象物ごとの代表となる代表分解能を決定し、
前記撮像サイズ補正部は、前記代表分解能により前記対象物の前記撮像サイズを補正する請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記分解能決定部は、前記撮像サイズの前記変動分を含む前記対象物の前記画像上の外郭形状に基づき前記対象物の前記重心座標を幾何学的に求めるライブラリデータを用いて前記重心座標を求める請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記画像取得部は、ラインカメラにより前記画像を取得する請求項1または3に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転する被検査台上を撮像して被検査物を検査する検査装置として、被検査台全体を一つのカメラで一度に撮像する検査装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、被検査台の上方に治具等を有する装置では、被検査台全体を一つのカメラで撮像した場合、撮像範囲に死角が生じてしまう。このため、被検査台の径方向に延びる撮像素子列を用いて回転する被検査台を撮像することで被検査台全体の画像を撮像する検査装置等を使用できる。
【0005】
一方、被検査台の径方向に延びる撮像素子列を用いた検査装置では、撮像された画像に基づく対象物のサイズにより検査の良否を判定しようとした場合、対象物のサイズを正確に把握しにくいという問題があった。これは、被検査台上の検査物が配置された位置が、内周側であるか、外周側であるかにより、撮像された画像において検出されるサイズが、実物の大きさから解離する場合があったためである。
【0006】
そこで本発明は、回転する被検査台の径方向に延びる撮像素子列を用いて取得した画像によっても、回転する被検査台上の検出位置による撮像サイズの変動分を補正し、対象物の正確な大きさに基づく良否判定ができる検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、回転する被検査台上の画像を前記被検査台の径方向に延びる撮像素子列を用いて取得する画像取得部と、
前記画像に撮像された対象物の検出位置および撮像サイズを検出する対象物検出部と、
前記対象物の前記検出位置に基づき分解能を決定する分解能決定部と、
前記被検査台の回転により生じる前記撮像サイズの変動分を前記分解能に基づき補正し、前記対象物の真正サイズとする撮像サイズ補正部と、
前記真正サイズにより、検査における良否を判定する良否判定部と、を備える検査装置である。
【0008】
本発明の第2の態様は、前記分解能決定部は、前記被検査台の円周方向の画素ラインごとに画素毎分解能を算出し、
前記撮像サイズ補正部は、前記画素毎分解能により前記撮像サイズを補正し、画素ラインごとに補正された補正後撮像サイズの和を前記対象物の前記真正サイズとする第1の態様に記載の検査装置である。
【0009】
本発明の第3の態様は、前記分解能決定部は、前記被検査台の回転中心に対する前記対象物の重心座標を求めるとともに、前記重心座標に基づき前記対象物ごとの代表となる代表分解能を決定し、
前記撮像サイズ補正部は、前記代表分解能により前記対象物の前記撮像サイズを補正する第1の態様に記載の検査装置である。
【0010】
本発明の第4の態様は、前記分解能決定部は、前記撮像サイズの変動分を含む前記対象物の画像上の外郭形状に基づき前記対象物の重心座標を幾何学的に求めるライブラリデータを用いて前記重心座標を求める第3の態様に記載の検査装置である。
【0011】
本発明の第5の態様は、前記画像取得部は、ラインカメラにより前記画像を取得する第1の態様から第4の態様のいずれかに記載の検査装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回転する被検査台の径方向に延びる撮像素子列を用いて取得した画像により、回転する被検査台上の検出位置による撮像サイズの変動分を補正し、良否判定する検査を行える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の一態様における対象物の撮像の例示である。
【
図2】本開示の一態様における機能部の構成の例である。
【
図3】本開示の一態様における検査装置の概略図である。
【
図4】本開示の一態様における検査方法の手順の例である。
【
図5】第一実施形態における分解能の決定の例である。
【
図6】第二実施形態における分解能の決定の例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<発明者の知見>
被検査台110の径方向に延びる撮像素子列を用いた検査装置10では、撮像された画像中で検出された対象物Pのサイズが、対象物Pの実物の大きさから解離することがある。その理由は、回転する被検査台上における対象物Pの存在位置により、撮像素子列が捉える対象物Pの移動速度に差が生じるためである。この点について、
図1の模式図にて、実物の大きさが同じ3つの対象物P(P1、P2、P3)が、それぞれ回転中心Rcから距離の異なる被検査台110上の位置に存在する場合を例に説明する。回転半径の内周側に存在するP1、中心付近に存在するP2、外周側に存在するP3では、(1)円周方向の移動距離(周速)の相違により、(2)撮像素子列の撮像時間当たりの対象物Pの移動量が互いに異なるものとなり、(3)画像中で検出される対象物Pの撮像サイズが実物の大きさから変動することがある。
【0015】
具体的には、まず(1)対象物P1、P2、P3は、回転中心Rcを軸に回転する被検査台上における周速(回転の接線方向の速度、単位時間における円周上の移動距離)が相互に異なる。周速は、(回転体の)直径と回転数により定まり(周速=π×直径×回転数)、直径が大きいほど周速が大きくなる。このため、内周側に位置するP1はP2よりも周速が小さい(単位時間における円周方向の移動量が少ない)。一方、外周側に位置するP3はP2よりも周速が大きい(円周方向の移動量が多い)。この周速の違いにより、(2)カメラ120がP1、P2、P3を捉えて撮像する撮像時間当たりの対象物Pの移動量が、それぞれ異なるものとなる。具体的には、P1はP2よりも周速が小さい分、撮影開始から対象物全体を撮像し終わるまでの移動量が長くなる。一方、P3はP2よりも周速が大きいため、対象物Pはカメラ120の撮像終了までの移動量は短くなる。
【0016】
この結果、(3)カメラ120により撮像された撮像画像130において、P1、P2、P3の画像中のサイズは相互に異なるものとなる。内周側に位置するP1は、移動量がP2よりも長い分、撮像画像130中では大きなサイズとして観察される。一方、外周側に位置するP3は、P2よりも移動量が短い分、撮像画像130中では小さなサイズとして観察される。なお、
図1の撮像画像130において、Wはカメラ120の視野範囲の幅方向を、Hは被検査台110上を一周回転させる間に撮像された画像における円周方向を表す。
【0017】
以上のように、被検査台110の径方向に延びる撮像素子列を用いた検査装置10では、撮像画像中における対象物Pのサイズが、実物の大きさとは異なるものに変動する場合があった。このようなサイズ変動により、被検査台上の対象物Pの実物の大きさに応じて検査良否を判断したい検査においては、即時に実物の大きさを知ることが難しいことがあり、迅速な検査が行えない問題があった。
【0018】
このような知見に基づき、本発明者等は、被検査台110の径方向に延びる撮像素子列を用いた検査装置10であっても、対象物Pの実物の大きさに基づく良否判定が行える検査装置10について鋭意検討し、上記課題を解決する本発明の検査装置10を完成するに至った。
【0019】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
<第一実施形態>
本開示の一態様として第一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
(1)検査目的および対象物
本実施形態における検査装置10は、回転する被検査台110上に配置された被検査物の検査に用いることができる。被検査物の種類や検査内容は特に限定されない。例えば、被検査台110が研磨面であり、回転して研磨された被検査物の損壊有無を検査するために用いることができる。この場合、被研磨物(被検査物)を研磨後に被検査台110から取り除いた上で、被検査台110上の残存物を対象物Pとして撮像する。そして、所定の大きさ以上である対象物Pの存在有無により、被検査物の研磨による損壊状況を検査する。本発明の検査装置10は、上記検査のように、対象物Pの実物の大きさに基づいて検査を行いたい場合に好適に用いられる。
【0022】
(2)検査装置の構成
図2のように、検査装置10は、画像取得部100と、画像取得部100に接続した情報処理装置200とを備えるものとしてよい。情報処理装置200は、対象物検出部210、分解能決定部220、撮像サイズ補正部230、良否判定部240を備えるものとしてよい。なお、検査装置10は、これら以外の構成要素を備えていてもよい。
【0023】
画像取得部100は、回転する被検査台110の径方向(半径方向)に延びる撮像素子列を用いて画像を取得するように構成される。例えば、
図3のように、カメラ120が、径方向であるX-Y方向に延びた撮像素子列を有するように配置された構成としてよい。カメラ120としては、適宜の種類のものを適用してよく、目的とする検査に応じて必要な解像度の画像を撮像できればよい。カメラ120としては、ラインカメラを用いてもよい。
【0024】
被検査台110の形状は特に限定されない。例えば、
図3に示されるようなリング状の他、円板状等の任意の形状としてよい。画像取得部100は、被検査台110上の撮像範囲に対して光を照射する1つまたは複数の照明を備えてもよい。照明の発光手段は特に限定されず、例えば蛍光灯、有機または無機エレクトロルミネッセンス(EL)、発光ダイオード等を使用できる。
【0025】
対象物検出部210は、撮像した画像中の対象物Pの検出位置および撮像サイズを検出するように構成されたものである。対象物検出部210は、例えば、情報処理装置200に画像処理の機能を備えて構成してもよい。対象物Pは、検査装置10が対象とする検査内容に応じて任意に設定してよい。本実施形態のように、被検査物が損壊し本来の大きさよりも所定以上に小さくなった被検査物を対象物Pとしてもよい。
【0026】
分解能決定部220は、対象物Pの検出位置に基づき分解能を決定するように構成されたものである。分解能は、画素分解能とも呼ばれ、撮像素子一画素あたりの視野の大きさにより決定される(分解能(mm/画素)=撮像画像の視野サイズ(mm)/撮像素子の画素数(画素))。本実施形態において、分解能は、被検査台110の内外周で生じる対象物Pのサイズ変動を補正するために用いられる。上述の通り、サイズ変動は、回転する被検査台110上の内周側と外周側で、対象物Pの撮像時間が異なることにより生じる実物の大きさからの解離である。本実施形態は径方向X-Yに延びる撮像素子列で対象物Pを撮像するため、サイズ変動の度合いはX-Y方向に延びる画素ラインごとに定まる。以上のことから、円周方向の画素ラインを基準として、対象物Pの検出位置に応じた画素ラインごとの分解能を決定するものとしている。
【0027】
撮像サイズ補正部230は、撮像サイズの変動分を補正し、真正サイズとするように構成されたものである。本実施形態の撮像サイズ補正部230は、分解能決定部220により決定された画素毎分解能RIに基づき、画素ラインごとに撮像サイズの変動分を補正する。
【0028】
良否判定部240は、真正サイズにより検査における良否を判定するように構成されたものである。検査における良否は、対象とする検査の内容に応じて任意に設定できる。例えば、本実施形態のように、真正サイズが所定以上である対象物Pが存在した場合、検査不良と判断するものとしてよい。
【0029】
以上で説明した情報処理装置200は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のハードウエア資源を組み合わせて構成してよい。また、情報処理装置200は、予めインストールされている所定プログラム(ソフトウエア)の実行により、そのソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されるものとしてよい。以上により、情報処理装置200は、対象物検出部210、分解能決定部220、撮像サイズ補正部230、および、良否判定部240における処理動作を制御するように構成できる。
【0030】
(3)検査方法の手順
本実施形態の検査装置10を用いた検査方法の手順は、
図4を参照しつつ以下のように説明される。
【0031】
本態様の検査方法では、
被検査台の径方向に延びる画像素子列を用いて画像を取得する工程(工程A)と、
画像に撮像された対象物の検出位置および撮像サイズを検出する工程(工程B)と、
対象物の検出位置に基づき分解能を決定する工程(工程C)と、
被検査台の回転により生じる撮像サイズの変動分を分解能に基づき補正する工程(工程D)と、
真正サイズにより検査における良否を判定する工程(工程E)と、を行う。
【0032】
画像を取得する工程(工程A)
工程Aでは、回転する被検査台110上の画像を被検査台110の径方向に延びる撮像素子列を用いて取得する。被検査台110が一周回転する間の撮像をすることで、被検査台110全体を撮像範囲とした画像を取得できる。画像を取得する際の被検査台110上は、目的とする検査内容に応じた状態として画像を取得してよい。本実施形態のように、被検査台110上で研磨された被検査物を取り除いた後、被検査台110上に残った対象物Pを撮像するものとしてもよい。
【0033】
工程Aでは、二値化した画像において対象物Pを検出して画像処理しやすくなるように、画像取得することが好ましい。例えば、撮像素子列による撮像範囲内を、照明により均一な明るさとなるように維持することが好ましい。また、事前に対象物Pの色彩が判明している場合には、二値化した際に対象物Pと識別しやすい表面色の被検査台110を採用することも好ましい。
【0034】
対象物を検出する工程(工程B)
工程Bでは、対象物検出部210が、工程Aで取得した画像において、撮像された対象物Pの検出位置および撮像サイズを検出する。検出の際、工程Aで得た画像に対して二値化を行い、対象物Pがある部分とそれ以外の部分とを識別可能にした上で、対象物Pがある部分の位置および撮像サイズを検出することが好ましい。検出位置および撮像サイズは、対象物Pごとに検出することが好ましい。検出位置は、後述する分解能決定部220に利用可能な任意の形式で出力するものとしてよい。例えば、検出位置は、被検査台110の回転中心Rcに対する相対位置により座標として出力してよい。撮像サイズは画像における対象物Pの大きさであり、例えば面積や画素の数として出力してよい。また、対象物Pの形状が球形等の対称形である場合、面積に代えて直径等の長さをサイズとして代替しても構わない。
【0035】
分解能を決定する工程(工程C)
工程Cは、工程Bで出力された対象物Pの検出位置に基づいて分解能を決定する工程である。本実施形態では、円周方向の画素ラインごとに画素毎分解能R
Iを決定する。具体的には、工程Cでは
図5のように、分解能決定部220が、撮像画像130より検出した対象物Pに関して、画素ライン(I
1~I
6)ごとの分解能である画素毎分解能R
Iを決定する。画素毎分解能R
Iは、画像取得部100の撮像手段に応じて、任意の手法により決定してよい。例えば、画素毎分解能R
Iは、下記式に基づいて決定できる。
【数1】
【0036】
撮像サイズを補正する工程(工程D)
工程Dでは、撮像サイズ補正部230が、工程Cで決定した分解能(画素毎分解能RI)に基づいて、被検査台110の回転により生じる撮像サイズの変動分を補正し、対象物Pの真正サイズとする。本実施形態では、画素ライン(I1~I6)ごとの画素数NI(N1~N6)と、工程Cで決定した画素毎分解能RIを乗じた値(NI×RI)から、画素ラインごとに撮像サイズを補正する。ここで、複数の画素によって構成される対象物Pの撮像された画像内には複数の画素ラインが含まれ、画素ラインごとに異なる割合で撮像サイズの変動が生じる。そこで本実施形態では、撮像サイズとして画素数NIを基にして、画素ラインごとに区切ってサイズ変動分の補正を行うものとしている。
【0037】
上記により各画素ラインについて撮像サイズを補正した後、対象物Pの全ての画素ライン(I1~I6)について補正後の撮像サイズの和をとり、真正サイズとする。画素数NIは、工程Bで検出した撮像サイズに基づき、適宜の方法で算定してよい。
【0038】
検査の良否を判定する工程(工程E)
工程Eでは、工程Dで得られた真正サイズにより検査の良否判定を行う。例えば、真正サイズが対象物Pの許容サイズとして予め定めたサイズよりも大きい場合に異常あり、小さい場合に異常なしとする良否判定としてよい。
【0039】
(4)効果
第一実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
【0040】
(a)検査装置10によれば、被検査台110の径方向に延びる撮像素子列を用いた場合にも、撮像サイズにおける実際のサイズ(真正サイズ)からの変動を補正できる。このため、真正サイズに基づいた検査の良否判定を迅速に行える。
【0041】
(b)本実施形態では、被検査台110の径方向に延びる撮像素子列を備えるため、被検査台上にカメラ120以外の治具等を任意に配置できる。検査装置10では、被検査台110を一周回転しながら撮像することで治具等による死角を生じることなく、被検査台110上の全体を撮像できる。
【0042】
(c)本実施形態では、画素ラインごとに画素毎分解能RIを決定し、画素ラインごとに撮像サイズを補正する。このように比較的簡便な手順の繰り返しにより真正サイズを得ることができる。
【0043】
(d)画像取得部100におけるカメラ120としてラインカメラを用いた場合、撮像範囲の照明による照射量を均一に保ちやすい。このため、対象物検出部210における対象物Pの検出の際、画像処理による対象物Pの検出位置や撮像サイズの検出を正確に行いやすい。
【0044】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態について、主として第一実施形態との相違点について説明する。
【0045】
(1)検査装置10の構成
検査装置10の構成は、第一実施形態と同様に、画像取得部100、対象物検出部210、分解能決定部220、撮像サイズ補正部230、良否判定部240を備える構成とする。このうち、分解能決定部220および撮像サイズ補正部230について、分解能の決定および撮像サイズの補正の具体的な手順は以下説明のとおりに行うものとしつつ、構成については第一実施形態と同様としてよい。
【0046】
(2)検査方法の手順
第二実施形態は、以下説明するように、工程Cおよび工程Dにおいて、重心座標Gcに基づく対象物Pごとの代表となる代表分解能RGを用いて対象物Pの撮像サイズを補正する点で、第一実施形態と異なる手順を採用している。なお、工程Aにおける被検査台110上の画像の取得、および、工程Bにおける対象物Pの検出位置および撮像サイズの検出については、第一実施形態と同様の手順で行ってよい。
【0047】
対象物Pは画素ラインごとに異なる分解能で撮像されるため、撮像サイズを補正するには、画素ライン毎の補正が必要になる。しかしながら、画素ライン毎に撮像サイズを補正する方法では、処理負荷が大きくなりやすい。このため検査目的によっては、更に短時間で処理可能な方法が求められる場合がある。このような背景の下、本実施形態は、重心座標Gcに基づく代表分解能RGを用いて撮像サイズを補正する方法を採用している。
【0048】
ここで、複数の画素ライン毎に異なる分解能を、重心座標Gcに基づいて代表分解能RGとして代表させることについて説明する。上述の通り、分解能は画素ライン毎に異なるところ、画素ライン毎の分解能は、回転中心Rcに基づく半径(中心間距離)と線形の関係(比例関係)にある。このため、隣り合った画素ラインの分解能を比較すると、内周側と外周側の画素ラインでは、分解能が単調増加または単調減少し、互いに逆に単調変化する関係となる。このことから、所定の画素ラインに対して、当該画素ラインよりも内周側と外周側に位置する対象物Pの撮像サイズ(画素数、面積)が同じ場合、当該画素ラインの分解能に基づいて対象物P全体の撮像サイズを補正できる。この場合、所定の画素ラインに対する内周側と外周側に存在する複数の画素ラインの分解能の違いを相殺できるからである。所定の画素ラインは、対象物Pの重心が位置する画素ラインとなる。
【0049】
以上のことから、重心座標Gcに基づく代表分解能RGを用いて撮像サイズを補正する方法により、真正サイズを適切に求めつつ、補正の際の処理負荷を軽減できる。以下、代表分解能RGを用いて撮像サイズを補正する方法に関する、工程Cおよび工程Dについて詳述する。
【0050】
分解能を決定する工程(工程C)
本実施形態の工程Cでは、
図6のように、被検査台110の回転中心Rcに対する対象物Pの重心座標Gcを求め、重心座標Gcに基づき対象物Pごとの代表となる代表分解能R
Gを決定する。代表分解能R
Gを用いることで、工程Dの画像サイズ補正において、代表値に基づき一括して画像サイズを補正できる。ここで、重心座標Gcは公知の方法で適宜決定してよい。例えば、対象物Pの画像上の外郭形状に基づいて幾何学的に求めるライブラリデータを用いて求めることができる。
【0051】
画像サイズを補正する工程(工程D)
工程Dでは、工程Cで決定した代表分解能RGにより撮像サイズを補正する。具体的には、対象物Pの全画素数NAと、代表分解能RGを乗じた値(NA×RG)を真正サイズとする。本実施形態では、画素ラインごとに異なる分解能が総括された代表値を用いることにより、工程Dにおける撮像サイズの補正を、一度に行うことができる。
【0052】
(3)効果
第二実施形態によれば、第一実施形態において得られる効果の他に、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
【0053】
(a)重心座標Gcに基づき対象物Pごとの代表となる代表分解能RGを決定することにより、撮像サイズの補正を一度に行うことができる。特に重心座標Gcの決定を、上記したようなライブラリデータを用いて求めた場合、対象物Pについて重心座標Gcの決定を効率的に決定することができ、検査を短時間で行うことが可能になる。
【0054】
(b)特に被検査台110の径方向(X-Y方向)において幅の広い対象物Pが多く検出される検査においては、本実施形態における検査時間の短縮効果が大きいものとなる。画素ラインごとに画素毎分解能RIを決定する方法では、対象物Pの幅の広いほど撮像サイズの補正回数が多くなることに比べ、本実施形態では代表分解能RGを決定することにより一度で撮像サイズを補正できるためである。
【0055】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態を具体的に説明した。但し、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0056】
検査装置10の検査対象とする対象物Pについて、特定サイズ以上の対象物Pのみを検出対象とし、特定サイズ以下である(例えば、ごく微細すぎる)対象物Pは検査対象としない検査方法としてもよい。また、対象物検出部210、分解能決定部220、撮像サイズ補正部230、良否判定部240を、情報処理装置200に構成した例について説明したが、各部は検査装置10内に有していればよい。
【0057】
上記実施形態では、被検査台110上の被検査物を取り除いた後の被検査台上に残った対象物Pを撮像する場合について説明したが、これに限られない。例えば、被検査台110上に被検査物が存在する状態で画像取得した場合、被検査物に対する異物の混入有無等を検査できる。この場合、被検査物が対象物Pと同質の物となる。ただし、被検査物と対象物Pは必ずしも同質の物である必要はなく、被検査物と対象物Pの材質等は相違してもよい。また、被検査物と対象物Pの材質が同じで、サイズのみ異なるものであってもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 検査装置
100 画像取得部
110 被検査台
120 カメラ
200 情報処理装置
210 対象物検出部
220 分解能決定部
230 撮像サイズ補正部
240 良否判定部