(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058247
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】絶縁フィルム、モーター及び、モーターの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 17/56 20060101AFI20240418BHJP
H01B 3/30 20060101ALI20240418BHJP
H01B 3/52 20060101ALI20240418BHJP
H01B 3/42 20060101ALI20240418BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20240418BHJP
H02K 3/30 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
H01B17/56 A
H01B3/30 C
H01B3/30 Q
H01B3/52 A
H01B3/42 H
H01B3/30 D
B32B27/12
H02K3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165487
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和也
(72)【発明者】
【氏名】大崎 桂史
【テーマコード(参考)】
4F100
5G305
5G333
5H604
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AK42B
4F100AK46A
4F100AK49B
4F100AK54B
4F100AK56B
4F100AK57B
4F100AL01B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100DG01A
4F100GB41
4F100JG04
4F100JK04
4F100JK05
5G305AA02
5G305AA20
5G305AB01
5G305AB15
5G305AB17
5G305AB18
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5G305AB40
5G305BA18
5G305BA23
5G305BA25
5G305BA26
5G305CA02
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5G305CA21
5G305CA23
5G305CA35
5G305CA51
5G305CA60
5G333AA03
5G333AB05
5G333CB03
5G333DA03
5H604BB01
5H604BB08
5H604CC01
5H604CC05
5H604DA17
5H604DA19
5H604DA21
5H604PB02
5H604PB03
(57)【要約】
【課題】厚さが薄いにもかかわらず、耐屈曲性、圧縮強さ等の機械特性が従来と同等である絶縁フィルムを提供する。
【解決手段】樹脂層の片面側のみにポリアミド繊維からなる基材を有する、絶縁フィルムとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層の片面側のみにポリアミド繊維からなる基材を有する、絶縁フィルム。
【請求項2】
前記樹脂が、ポリエーテルイミド、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリエチレンナフタレートからなる群から選択される少なくとも一つを含む、請求項1に記載の絶縁フィルム。
【請求項3】
厚みが10μm以上200μm以下である、請求項1に記載の絶縁フィルム。
【請求項4】
前記ポリアミド繊維を最表面に有する、請求項1に記載の絶縁フィルム。
【請求項5】
前記樹脂層を最表面に有する、請求項1に記載の絶縁フィルム。
【請求項6】
MIT耐折試験(JIS P8115:2001)における、屈曲回数が3000回以上である、請求項1に記載の絶縁フィルム。
【請求項7】
圧縮強さが100N以上である、請求項1に記載の絶縁フィルム。
【請求項8】
ウェッジ紙である、請求項1~7のいずれか1項に記載の絶縁フィルム。
【請求項9】
スロット紙である、請求項1~7のいずれか1項に記載の絶縁フィルム。
【請求項10】
相間絶縁紙である、請求項1~7のいずれか1項に記載の絶縁フィルム。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の絶縁フィルムを備えたモーター。
【請求項12】
請求項4に記載の絶縁フィルムを、前記ポリアミド繊維をコイルに接するように備えたモーター。
【請求項13】
請求項4に記載の絶縁フィルムを、前記ポリアミド繊維をコイルに接するように挿入する、モーターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄肉化されたモーター用の絶縁フィルムに関し、特に、相間絶縁紙、ウェッジ紙又はスロット紙として好適に使用することができるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
家電機器、産業機器等の駆動力となるモーターには、従来、ステータコア内のスロットにおいてコアと巻線コイルとの間に介装される絶縁フィルムとして、相間絶縁紙、スロット紙及びスロット溝の開口を内側から閉塞するウェッジ紙が備えられている。これらの絶縁フィルムは、通常、ステータコアの端面の開口部からスロット内に挿入されることで組み込まれる。
【0003】
このような絶縁フィルムとして、耐熱性、電気絶縁性、機械的強度、表面の滑り性等に優れていることからポリエチレンナフタレートやポリエチレンテレフタレート等からなるポリエステルフィルムの両面にアラミド紙等と称される芳香族ポリアミド紙を積層した絶縁紙が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、モーターの性能がますます向上してきており、特に、小型で高効率なものが求められている。モーターの高効率化のために、絶縁フィルムを薄肉化し巻線コイルの占積率を大きくする方法が採用される場合があり、それに伴い、相間絶縁紙、ウェッジ紙やスロット紙といった絶縁フィルムにも薄肉化が求められている。
【0006】
本発明は、このような状況下でなされたものであり、厚さが薄いにもかかわらず、耐屈曲性、圧縮強さ等の機械特性が従来と同等である絶縁フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、樹脂層の片面側のみにポリアミド繊維を積層することにより、前記課題を解決し得る絶縁フィルムが得られることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、以下の態様を有する。
[1] 樹脂層の片面側のみにポリアミド繊維からなる基材を有する、絶縁フィルム。
[2] 前記樹脂が、ポリエーテルイミド、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリエチレンナフタレートからなる群から選択される少なくとも一つを含む、[1]に記載の絶縁フィルム。
[3] 厚みが10μm以上200μm以下である、[1]又は[2]に記載の絶縁フィルム。
[4] 前記ポリアミド繊維を最表面に有する、[1]~[3]のいずれかに記載の絶縁フィルム。
[5] 前記樹脂層を最表面に有する、[1]~[4]のいずれかに記載の絶縁フィルム。
[6] MIT耐折試験(JIS P8115:2001)における、屈曲回数が3000回以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の絶縁フィルム。
[7] 圧縮強さが100N以上である、[1]~[6]のいずれかに記載の絶縁フィルム。
[8] ウェッジ紙である、[1]~[7]のいずれかに記載の絶縁フィルム。
[9] スロット紙である、[1]~[7]のいずれかに記載の絶縁フィルム。
[10] 相間絶縁紙である、[1]~[7]のいずれかに記載の絶縁フィルム。
[11] [1]~[7]のいずれかに記載の絶縁フィルムを備えたモーター。
[12] [4]~[7]のいずれかに記載の絶縁フィルムを、前記ポリアミド繊維をコイルに接するように備えたモーター。
[13] [4]~[7]のいずれかに記載の絶縁フィルムを、前記ポリアミド繊維をコイルに接するように挿入する、モーターの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のモーター用フィルムは、厚さが薄く、厚さと、耐屈曲性、圧縮強さ等の機械特性とのバランスに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の一例について説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本発明において、「フィルム」とは、「シート」と区別するものではなく、これを包含する意味である。
【0012】
本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特に断らない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものとする。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特に断らない限り、「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特に断らない限り、「好ましくはYより小さい」の意を包含するものとする。
さらに、「X及び/又はY(X,Yは任意の構成)」とは、X及びYの少なくとも一方を意味するものであって、Xのみ、Yのみ、X及びY、の3通りを意味するものである。
【0013】
本発明において「主成分」とは、対象物中の最も多い成分をさし、好ましくは対象物中の50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%であり、特に好ましくは80質量%以上であり、最も好ましくは90質量%以上である。
【0014】
<絶縁フィルム>
本発明の実施形態の一例に係る絶縁フィルム(以下、「本フィルム」と称する)は、樹脂層の片面側のみにポリアミド繊維からなる基材を有するものである。
以下、本フィルムについて説明する。
【0015】
〔ポリアミド繊維〕
本フィルムの基材となる前記ポリアミド繊維としては、耐熱性と強度のバランスの観点から芳香族ポリアミドからなる繊維であることが好ましい。その中でも全芳香族ポリアミド繊維を含む全芳香族ポリアミド紙が好ましく、全芳香族ポリアミド繊維を用いて湿式抄紙法により作製された全芳香族ポリアミド紙がさらに好ましい。
【0016】
前記全芳香族ポリアミド繊維としては、例えば、アミド基以外がベンゼン環で構成された、フェニレンジアミンとフタル酸との縮合重合物(全芳香族ポリアミド)を繊維化し、繊維化した全芳香族ポリアミド繊維を主成分として形成されたものが挙げられる。
【0017】
また、前記ポリアミド繊維には、本発明の効果を損なわない範囲において他の成分を含んでいてもよい。前記他の成分としては、例えばポリフェニレンスルフィド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリエステル繊維、アリレート繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリエチレンナフタレート繊維等の有機繊維、又は、ガラス繊維、ロックウール、アスベスト、ボロン繊維、アルミナ繊維等の無機繊維が挙げられる。
【0018】
前記ポリアミド繊維は、力学的特性に優れ、本フィルムの製造工程におけるハンドリングが良好であるという点で、坪量が5g/m2以上であることが好ましい。坪量が5g/m2以上であることにより、力学的強度の不足が抑制され本フィルムの製造中に破断しにくい傾向がある。
【0019】
前記ポリアミド繊維の動摩擦係数は、0.5以下であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましく、0.2以下であることが特に好ましい。ポリアミド繊維の表面の動摩擦係数が前記数値以下であることにより、挿入性に優れる傾向がある。なお、本発明において、前記動摩擦係数は、JIS K7125:1999に準拠することにより測定することができる。
【0020】
前記ポリアミド繊維の厚みは、薄い方が好ましく、25~200μmであることが好ましく、30~100μmであることがより好ましく、40~70μmであることが特に好ましい。なお、ポリアミド繊維の厚みは、例えばマイクロメータ等での複数箇所(例えば、10箇所)における測定結果を算術平均値した平均値として求めることができる。
【0021】
前記芳香族ポリアミド繊維の市販品としては、例えばデュポン社製の「ノーメックス」等が挙げられる。
【0022】
〔樹脂層〕
本フィルムに用いる樹脂層の樹脂材料としては特に限定されないが、例えば、モーターの小型化や高効率化に伴い、100℃以上での耐熱性やオイル等の冷媒による耐薬品性を有したエンジニアリングプラスチックが好ましく、スーパーエンジニアリングプラスチックであることがさらに好ましい。また、押出機等の製造設備汚染や腐食、分解ガス発生量低減の点から、フッ素樹脂を樹脂中の5質量%以上含まないことが好ましく、3質量%以上含まないことがより好ましく、1質量%以上含まないことがさらに好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。
【0023】
具体的な樹脂としては、例えばポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルイミドスルホン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリメチルペンテン、液晶ポリマー等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができるが、1つの層としては単独で、もしくは主成分として用いることが好ましい。
なかでも、樹脂としては、ポリエーテルイミド、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリエチレンナフタレートからなる群から選択される少なくとも一つを含むことが好ましい。以下、好ましいこれらの樹脂について説明する。
【0024】
[ポリエーテルイミド]
前記ポリエーテルイミドとしては、特に限定はないが、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するものが好ましく挙げられる。
【0025】
【0026】
(一般式(1)において、Y1~Y6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を表し、Ar7~Ar9は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数6~24のアリーレン基を表し、X1は、直接結合、あるいは、-O-、-SO2-、-S-、-C(=O)-、又は二価の脂肪族炭化水素基のいずれかを表す。)
【0027】
前記一般式(1)において、Ar7~Ar9のアリーレン基は互いに異なるものであってもよいが、同一であることが好ましい。Ar7~Ar9のアリーレン基としては、具体的にはフェニレン基、ビフェニレン基等が挙げられ、これらのうちフェニレン基が好ましい。
Ar7~Ar9のアリーレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素原子数1~20のアルキル基やメトキシ基、エトキシ基等の炭素原子数1~20のアルコキシ基等が挙げられる。Ar7~Ar9が置換基を有する場合、その置換基の数には特に制限はない。
【0028】
なかでも、機械特性、熱安定性、溶融成形性の観点から、ポリエーテルイミドに含まれる前記一般式(1)で表される繰り返し単位は、下記構造式(2)で表される繰り返し単位(b-1)、又は、下記構造式(3)で表される繰り返し単位(b-2)を有することがより好ましい。
【0029】
【0030】
【0031】
一般的に、ポリエーテルイミドは、結合様式の違い、すなわち、メタ結合とパラ結合の違いによって構造が分類され、それぞれ機械特性や耐熱性が異なる。
【0032】
ポリエーテルイミドの前記式(1)~(3)の繰り返し単位の合計数〔前記式(1)~(3)のn:重合度〕は、10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。一方、上限については1000以下であることが好ましく、700以下であることがより好ましく、500以下であることがさらに好ましい。ポリエーテルイミドの前記式(1)~(3)の繰り返し単位の合計数(重合度)がかかる範囲であれば、本フィルムは耐熱性に優れやすくなる上、溶融時の粘度が高すぎないため溶融成形性にも優れる傾向となる。
【0033】
ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されるポリエーテルイミドの数平均分子量は、15000以上であることが好ましく、20000以上であることがより好ましく、22000以上であることがさらに好ましく、24000以上であることが特に好ましい。一方、50000以下であることが好ましく、45000以下であることがより好ましく、40000以下であることがさらに好ましく、38000以下であることが特に好ましい。ポリエーテルイミドの数平均分子量がかかる範囲であれば、本フィルムは耐薬品性、耐熱性、耐衝撃性に優れやすくなる上、溶融時の粘度が高すぎないため溶融成形性にも優れる傾向となる。
【0034】
ポリエーテルイミドのガラス転移温度は、140℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることがさらに好ましく、200℃以上であることが特に好ましい。一方、300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましく、260℃以下であることがさらに好ましい。ポリエーテルイミドのガラス転移温度がかかる範囲であれば、本フィルムは耐熱性に優れやすくなる上、溶融時の粘度が高すぎないため、溶融成形性にも優れる傾向となる。
【0035】
ポリエーテルイミドは、公知の製法により製造することができる。また、市販品を用いることもできる。市販品の例としては、サビック社製「Ultem」シリーズが挙げられる。
【0036】
[ポリアリールエーテルケトン]
前記ポリアリールエーテルケトンは、1つ以上のアリール基、1つ以上のエーテル基及び1つ以上のケトン基を含むモノマー単位を含有する単独重合体又は共重合体である。
【0037】
ポリアリールエーテルケトンの分子量分布は4以上であることが好ましく、4.1以上であることがより好ましく、4.2以上であることがさらに好ましく、4.5以上であることが特に好ましく、4.7以上であることがとりわけ好ましく、5以上であることが最も好ましい。分子量分布が広いということは、分子量分布が狭い場合と比べて低分子量成分の割合が多いことを意味する。低分子量成分は分子鎖の絡み合いが小さく運動性が高いため、結晶化の際に分子鎖が折り畳まれやすく結晶化速度が大きくなる。分子量分布が広いと、結晶化の際に低分子量成分が先に結晶化し、その結晶が結晶核剤として作用するため、樹脂全体として結晶融解温度や結晶化度、結晶化速度が向上すると考えられる。分子量分布が前記下限値以上であれば、低分子量成分を充分な量含むため、結晶化度や結晶化速度を高めることができ、ひいては、剛性、生産性が向上する傾向がある。
【0038】
一方、ポリアリールエーテルケトンの分子量分布は8以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、6.5以下であることがさらに好ましく、6以下であることがよりさらに好ましく、5.7以下であることが特に好ましく、5.5以下であることがとりわけ好ましく、5.3以下であることが最も好ましい。分子量分布が前記上限値以下であれば、高分子量成分と低分子量成分の割合が多すぎないため、結晶化度と流動性、機械特性のバランスに優れる傾向がある。
【0039】
ポリアリールエーテルケトンの重量平均分子量は88000以上であることが好ましく、90000以上であることがより好ましく、93000以上であることがさらに好ましく、95000以上であることが特に好ましく、98000以上であることが最も好ましい。ポリアリールエーテルケトンの重量平均分子量が前記下限値以上であれば、耐久性、耐衝撃性等の機械特性に優れる傾向となる。一方、質量平均分子量は150000以下であることが好ましく、140000以下であることがより好ましく、135000以下であることがさらに好ましく、130000以下であることがよりさらに好ましく、125000以下であることが特に好ましく、120000以下であることがとりわけ好ましく、115000以下であることが最も好ましい。前記ポリアリールエーテルケトンの重量平均分子量が前記上限値以下であれば、結晶化度や結晶化速度、溶融成形時の流動性に優れる傾向となる。
【0040】
具体的なポリアリールエーテルケトンとしては、例えばポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリアリールエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリアリールエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリアリールエーテルエーテルケトンケトン等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。なかでもポリーテルエーテルケトンが好ましい。
以下、好ましいポリアリールエーテルケトンであるポリエーテルエーテルケトンについて説明する。
【0041】
(ポリエーテルエーテルケトン)
ポリエーテルエーテルケトンは、少なくとも2つのエーテル基とケトン基とを構造単位として有する樹脂であればよいが、熱安定性、溶融成形性、剛性、耐薬品性、耐衝撃性、耐久性に優れることから、好ましくは下記一般式(4)で表される繰り返し単位を有するものである。
【0042】
【0043】
(前記一般式(4)において、Ar1~Ar3は、それぞれ独立に、炭素原子数6~24のアリーレン基を表し、また、それぞれ置換基を有していてもよい)
【0044】
前記一般式(4)において、Ar1~Ar3のアリーレン基は互いに異なるものであってもよいが、同一であることが好ましい。前記Ar1~Ar3のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基等が挙げられる。なかでもフェニレン基が好ましく、p-フェニレン基であることがより好ましい。
【0045】
前記Ar1~Ar3のアリーレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素原子数1~20のアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基等の炭素原子数1~20のアルコキシ基等が挙げられる。なお、Ar1~Ar3が置換基を有する場合、その置換基の数には特に制限はない。
【0046】
なかでも、下記構造式(5)で表される繰り返し単位(a-1)を有するポリエーテルケトンが、熱安定性、溶融成形性、剛性、耐薬品性、耐衝撃性、耐久性の観点から好ましい。繰り返し単位(a-1)は、2つのエーテル基及び1つのケトン基を有している。
【0047】
【0048】
前記式(4)、(5)で表されるポリエーテルエーテルケトンの繰り返し単位の合計数〔前記式(4)、(5)のn:重合度〕については、10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。一方、500以下であることが好ましく、300以下であることがより好ましく、100以下であることが特に好ましい。前記ポリエーテルエーテルケトンの繰り返し単位の合計数(重合度)がかかる範囲であれば、本フィルムは耐薬品性、耐熱性、耐衝撃性に優れやすくなる上、溶融時の粘度が高すぎないため溶融成形性にも優れる傾向となる。
【0049】
ポリエーテルエーテルケトンの数平均分子量は、10000以上であることが好ましく、12000以上であることがより好ましく、14000以上であることがさらに好ましく、16000以上であることが特に好ましい。一方、35000以下であることが好ましく、32000以下であることがより好ましく、30000以下であることがさらに好ましく、28000以下であることが特に好ましい。ポリエーテルエーテルケトンの数平均分子量がかかる範囲であれば、本フィルムは耐薬品性、耐熱性、耐衝撃性に優れやすくなる上、溶融時の粘度が高すぎないため溶融成形性にも優れる傾向となる。
【0050】
なお、ポリエーテルエーテルケトンの数平均分子量は、ポリエーテルエーテルケトンの非晶状態のフィルムをペンタフルオロフェノールに例えば100℃で60分間加熱溶解し、放冷後、常温(23℃)のクロロホルムを加えた試料溶液について、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定することができる。溶離液としては、ペンタフルオロフェノール/クロロホルム=1/2(質量比)を用い、カラム温度40℃、標準ポリスチレン換算で数平均分子量を求めることができる。
【0051】
ポリエーテルエーテルケトンの結晶融解熱量は、20J/g以上であることが好ましく、25J/g以上であることがより好ましく、30J/g以上であることがさらに好ましく、35J/g以上であることが特に好ましい。一方、60J/g以下であることが好ましく、55J/g以下であることがより好ましく、50J/g以下であることがさらに好ましい。ポリエーテルエーテルケトンの結晶融解熱量がかかる範囲であれば、本フィルムは耐熱性に優れやすくなる上、溶融成形時に与える熱エネルギーが小さくて済むので、溶融成形性にも優れる傾向となる。
【0052】
ポリエーテルエーテルケトンの結晶融解温度は、300℃以上であることが好ましく、320℃以上であることがより好ましく、330℃以上であることがさらに好ましく、335℃以上であることが特に好ましく、340℃以上であることが最も好ましい。一方、上限については、400℃以下であることが好ましく、380℃以下であることがより好ましく、360℃以下であることがさらに好ましい。ポリエーテルエーテルケトンの結晶融解温度がかかる範囲であれば、本フィルムは耐熱性に優れやすくなる上、溶融時の粘度が高すぎないため溶融成形性にも優れる傾向となる。
【0053】
ポリエーテルエーテルケトンのガラス転移温度は、120℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることがさらに好ましい。一方、200℃以下であることが好ましく、190℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがさらに好ましい。ポリエーテルエーテルケトンのガラス転移温度がかかる範囲であれば、本フィルムは耐熱性に優れやすくなる上、溶融時の粘度が高すぎないため溶融成形性にも優れる傾向となる。
【0054】
なお、本発明における結晶融解熱量は、JIS K7122:2012に準じて、示差走査熱量計(例えばパーキンエルマー社製 Pyris1 DSC)を用いて、温度範囲25~400℃、加熱速度10℃/分で昇温させ、検出されたDSC曲線の融解ピークの面積から求めることができる。
また、本発明における結晶融解温度は、JIS K7121:2012に準じて、示差走査熱量計(例えばパーキンエルマー社製 Pyris1 DSC)を用いて、温度範囲25~400℃、加熱速度10℃/分で昇温させ、検出されたDSC曲線の融解ピークのピークトップ温度から求めることができる。
本発明におけるガラス転移温度は、JIS K7121:2012に準じて、示差走査熱量計(例えばパーキンエルマー社製 Pyris1 DSC)を用いて、温度範囲25~400℃、加熱速度10℃/分で昇温させ、検出されたDSC曲線から求めることができる。
【0055】
ポリエーテルエーテルケトンは、公知の製法により製造することができ、さらに、市販品を用いることもできる。市販品の例としては、例えば、ビクトレックス社製「VICTREX PEEK」シリーズ、ソルベイ社製「KetaSpire」シリーズ、ダイセル・エボニック社製「VESTAKEEP」シリーズ等が挙げられる。
【0056】
[ポリフェニレンサルファイド]
前記ポリフェニレンサルファイドとは、下記構造式(6)で示される繰り返し単位を有する重合体である。
【0057】
【0058】
前記ポリフェニレンサルファイドは、上記構造式(6)で示される繰り返し単位を70モル%以上、特に90モル%以上含む重合体であることが耐熱性の点で好ましい。またポリフェニレンサルファイドは、その繰り返し単位の30モル%未満で、下記の構造を有する繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0059】
【0060】
ポリフェニレンサルファイドは、公知の製法により製造することができる。また、市販品を用いることもできる。市販品のフィルムの例としては、東レ社製「トレリナ」シリーズが挙げられる。
【0061】
[ポリイミド]
ポリイミドとしては、イミド構造の繰り返し単位を有するものであれば特に制限されない。
ポリイミドは通常、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを原料として用い、ポリアミック酸溶液をイミド化することにより得ることができる。
【0062】
前記テトラカルボン酸二無水物としては、例えば鎖状脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの化合物は、単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0063】
鎖状脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばエチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、meso-ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0064】
前記脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば3,3',4,4'-ビスシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-11,2-ジカルボン酸無水物、トリシクロ[6.4.0.0(2,7)]ドデカン-1,8:2,7-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、1,1'-ビシクロヘキサン-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0065】
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物、4,4-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4-(m-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、2,2',6,6'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4',5,5'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4'-(ヘキサフルオロトリメチレン)-ジフタル酸二無水物、4,4'-(オクタフルオロテトラメチレン)-ジフタル酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸無水物、1,2,5,6-ナフタレンジカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンジカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンジカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0066】
前記ジアミン化合物としては、芳香族ジアミン化合物、鎖状脂肪族ジアミン化合物、脂環式ジアミン化合物等が挙げられる。これらの化合物は、単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0067】
前記芳香族ジアミン化合物としては、例えば1,4-フェニレンジアミン、1,2-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、4,4'-(ビフェニル-2,5-ジイルビスオキシ)ビスアニリン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ネオペンタン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルビフェニル、4,4'-ジアミノ-2,2'-ジメチルビフェニル、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジヒドロキシビフェニル、ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェニル)メタン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、N-(4-アミノフェノキシ)-4-アミノベンズアミン、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル、ビストリフルオロメチルベンジジン、ビス(3-アミノフェニル)スルホン、ノルボルナンジアミン、4,4'-ジアミノ-2-(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル、5-トリフルオロメチル-1,3-ベンゼンジアミン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4'-ジアミノ-2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2-ビス[4-{4-アミノ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ}フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2-トリフルオロメチル-p-フェニレンジアミン、2,2-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4'-(9-フルオレニリデン)ジアニリン、2,7-ジアミノフルオレン、1,5-ジアミノナフタレン、及び3,7-ジアミノ-2,8-ジメチルジベンゾチオフェン-5,5-ジオキシド等が挙げられる。
【0068】
前記鎖状脂肪族ジアミン化合物としては、例えば、1,2-エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,5-ジアミノペンタン、1,10-ジアミノデカン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、2,3-ジアミノ-2,3-ブタンジアミン、及び2-メチル-1,5-ジアミノペンタン等が挙げられる。
【0069】
前記脂環式ジアミン化合物としては、例えば、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、及び4,4'-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)等が挙げられる。
【0070】
ポリイミドは、公知の製法により製造することができる。また、市販品を用いることもできる。市販品のフィルムの例としては、帝人社製「テオネックス」シリーズが挙げられる。
【0071】
[ポリエチレンナフタレート]
前記ポリエチレンナフタレートは、ジカルボン酸成分として2,6-ナフタレンジカルボン酸と、ジオール成分としてエチレングリコールとを重縮合させて得られるポリエステルである。
【0072】
前記ポリエチレンナフタレートは、ジカルボン酸成分として2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分としてエチレングリコールのみからなるホモポリエチレンナフタレートであってもよく、また、2,6-ナフタレンジカルボン酸、エチレングリコールと他の共重合成分からなる共重合ポリエチレンナフタレートであってもよい。
さらに、ホモポリエチレンナフタレートと共重合ポリエチレンナフタレートとをブレンドしてもよい。
【0073】
前記他の共重合成分としては、2,6-ナフタレンジカルボン酸以外のジカルボン酸、エチレングリコール以外のジオール成分が挙げられる。
【0074】
前記2,6-ナフタレンジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4'-ジフェニルジカルボン酸、3,3'-ジフェニルジカルボン酸、4,4'-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸;p-オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。なかでも成形性の観点からイソフタル酸、2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸が好ましい。
【0075】
前記エチレングリコール以外のジオール成分としては、例えば1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキノン、スピログリコール、2,2,4,4,-テトラメチルシクロブタン-1,3-ジオール、イソソルバイド、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ダイマージオール、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF若しくはビスフェノールSなどのビスフェノール化合物若しくはその誘導体又はそれらのエチレンオキサイド付加物)等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。なかでも1,4-シクロヘキサンジメタノール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ダイマージオール、ビスフェノール類が好ましい。
特にフィルム強度の保持の観点から、ビスフェノール類を用いることが好ましい。
また、ビスフェノール類としてはビスフェノールA-エチレンオキサイド付加物を用いることが好ましい。
【0076】
前記共重合ポリエチレンナフタレートとしては、ジカルボン酸成分として2,6-ナフタレンジカルボン酸単位を含み、ジオール成分としてエチレングリコール単位と、ビスフェノールA-エチレンオキサイド付加物単位とを含むことが好ましい。
【0077】
前記共重合ポリエチレンナフタレートは、ジカルボン酸成分中に2,6-ナフタレンジカルボン酸単位を好ましくは90モル%以上、より好ましくは92モル%以上、さらに好ましくは94モル%以上、特に好ましくは96モル%以上、とりわけ好ましくは98モル%以上含有し、ジカルボン酸成分の全て(100モル%)が2,6-ナフタレンジカルボン酸であってもよい。
ジカルボン酸成分中の2,6-ナフタレンジカルボン酸単位の含有量を上記数値範囲内とすることにより、共重合ポリエステルのガラス転移温度及び結晶融解温度が向上し、ひいては耐熱性が向上する傾向がある。
【0078】
前記共重合ポリエチレンナフタレートは、ジオール成分中にエチレングリコールを好ましくは30モル%以上96モル%以下、より好ましくは40モル%以上95.8モル%以下、さらに好ましくは50モル%以上95.6モル%以下、特に好ましくは60モル%以上95.4モル%以下、とりわけ好ましくは70モル%以上95.2モル%以下含有する。
ジオール成分中のエチレングリコールの含有量を上記数値範囲内とすることにより、共重合ポリエチレンナフタレートの結晶性が保持され、耐熱性が向上する傾向がある。
【0079】
前記共重合ポリエチレンナフタレートは、ジオール成分中に他の共重合成分を好ましくは4モル%以上70モル%以下、より好ましくは4.2モル%以上60モル%以下、さらに好ましくは4.4モル%以上50モル%以下、特に好ましくは4.6モル%以上40モル%以下、とりわけ好ましくは4.8モル%以上30モル%以下含有する。
ジオール成分中のその他の共重合成分の含有量を上記数値範囲内とすることにより、共重合ポリエチレンナフタレートのガラス転移温度及び結晶融解温度が向上し、耐熱性が向上する傾向がある。
また、結晶性を制御することができるため、結晶化速度を遅くし、フィルムの押出成形性、延伸加工性が向上する傾向がある。
また、当該含有量が70モル%以下であると、融点が高くなりすぎることがないため、成形温度を高く設定する必要がなく、熱分解しにくい傾向がある。
【0080】
ポリエチレンナフタレートは、公知の製法により製造することができる。また、市販品を用いることもできる。市販品のフィルムの例としては、東レ・デュポン社製「カプトン」シリーズが挙げられる。
【0081】
本フィルムに用いる樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、染料等の各種添加剤が含まれていてもよい。但し、シリカ等の無機粒子は耐折回数の点から、本フィルム中の1質量%以上含まないことが好ましく、0.5質量%以上含まないことがより好ましく、0.1質量%以上含まないことがさらに好ましく、実質的に含有しないことが好ましい。
【0082】
本フィルムに用いる樹脂層の製造方法は特に限定されないが、例えば樹脂の構成材料を、溶融混練した後、押出成形し、冷却することにより樹脂層(フィルム)を製造することができる。前記溶融混練には、例えば単軸又は二軸押出機等の公知の混練機を用いることができ、押出成形には、例えばTダイ等の金型を用いた押出成形により行うことができる。
また、前記樹脂層(フィルム)は、無延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよいが、二次加工性の観点から、無延伸フィルムが好ましい。なお、前記無延伸フィルムとは、シートの配向を制御する目的で、積極的に延伸しないフィルムであり、Tダイ法でキャストロールにより引き取る際に配向したフィルムも含まれる。
【0083】
前記樹脂層は、単層であっても複層であってもよい。また、前記樹脂層が、複層の場合、一つの層に、例えばポリエーテルエーテルケトンが用いられ、他の層に、例えばポリエーテルイミドが用いられる等して異なる樹脂が積層されて形成された2層構造の樹脂フィルムや、あるいは、3層以上の積層構造を有する樹脂層等も本フィルムの樹脂層として用いることができる。なかでも本発明においては、薄膜化の点から、樹脂層が単層であることが好ましい。
【0084】
樹脂層の動摩擦係数は、0.45以下であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましく、0.35以下であることが特に好ましい。樹脂層の動摩擦係数が前記数値以下であることにより、挿入性に優れる傾向がある。
【0085】
樹脂層の動摩擦係数を0.45以下とする方法としては、樹脂層の材質、樹脂層の成形方法などにより適宜調整可能である。また樹脂層に対して、シリコーン樹脂などの特定の樹脂や無機粒子を混合することで動摩擦係数を小さくできる。また、表面形状を適宜調整することでも動摩擦係数を調整でき、例えば、エンボス加工による表面処理、樹脂層(フィルム)にコロナ放電等の表面処理を行う方法が挙げられる。
【0086】
前記樹脂層の厚みは、通常10~300μmであり、好ましくは30~200μmであり、特に好ましくは50~150μm、殊に好ましくは70~125μmである。
【0087】
[接着剤層又は粘着剤層]
本フィルムは、ポリアミド繊維からなる基材の片面側のみに樹脂層を有する少なくとも2層フィルムであるが、前記基材と樹脂層とを積層させるために接着剤又は粘着剤を用いることが好ましい。
【0088】
前記接着剤又は粘着剤としては、絶縁フィルム用の接着剤又は粘着剤として公知である接着剤又は粘着剤、例えばアクリル系、ゴム系、シリコーン系、ウレタン系の接着剤又は粘着剤等が挙げられる。前記接着剤又は粘着剤は、用いる基材と樹脂層の種類により適宜選択されるが、本発明においては、アクリル系の接着剤又は粘着剤が好ましい。
【0089】
前記接着剤又は粘着剤を用いる場合、接着剤又は粘着剤からなる層(接着層又は粘着層)の厚みは、通常1~50μmであり、好ましくは5~40μmであり、特に好ましくは10~35μmである。
【0090】
<本フィルムの製造方法>
本フィルムは、例えば基材及び/又は樹脂層に接着剤又は粘着剤を塗工し、基材と樹脂層とを貼り合わせて積層させることにより得ることができる。ただし、本フィルムの製造方法は、この方法に限定するものではない。
【0091】
前記接着剤又は粘着剤の塗工方法としては、例えば、リバースグラビアコート方式、ダイレクトグラビアコート方式、ロールコート方式、ダイコート方式、バーコート方式、及びカーテンコート方式などを挙げることができる。
【0092】
このようにして得られる本フィルムは、前述のとおり、樹脂層の片面側のみにポリアミド繊維からなる基材を有するものであるが、前記基材の他方の片面に樹脂層以外の層を有していてもよく、また、前記樹脂フィルムの他方の片面に、さらに樹脂フィルムやポリアミド繊維以外の基材を有していてもよい。
【0093】
なかでも本フィルムは、ポリアミド繊維を最表面に有することが好ましい。また、本フィルムは、樹脂層を最表面に有することも好ましい。すなわち、本フィルムの好ましい層構成としては、一方の最表面にポリアミド繊維を有し、他方の最表面に樹脂層を有する2種2層構成である(ただし、本フィルムが接着剤層、粘着剤層を有していても、接着剤層、粘着剤層は層構成には含めない)。
【0094】
本フィルムは、JIS P8115:2001(MIT耐折試験)に準拠して測定した、樹脂層(フィルム)の押出方向(MD)における屈曲回数が3000回以上であることが好ましく、5000回以上であることがより好ましく、7000回以上であることが特に好ましい。屈曲回数が前記範囲であれば、繰り返し変形した場合でも破れにくい、強靭なフィルムとなりやすい傾向がある。
【0095】
また、本フィルムは、JIS P8115:2001(MIT耐折試験)に準拠して測定した、樹脂層(フィルム)の押出方向に直交する方向(TD)における屈曲回数が1000回以上であることが好ましく、2000回以上であることがより好ましく、3000回以上であることが特に好ましい。屈曲回数が前記範囲であれば、繰り返し変形した場合でも破れにくい、強靭なフィルムとなりやすい傾向がある。
【0096】
本フィルムは、樹脂層(フィルム)の押出方向(MD)における圧縮強さが100N以上であることが好ましく、110N以上であることがより好ましく、120N以上であることが特に好ましい。一方、圧縮強さは、1000N以下であることが好ましく、700N以下であることがより好ましく、500N以下であることが特に好ましい。圧縮強さが前記範囲であれば、モーターコア等への挿入時の座屈や破断を防止することができ、ひいてはモーターコア等への挿入性に優れる傾向となる。
【0097】
また、本フィルムは、樹脂層(フィルム)の押出方向に直交する方向(TD)における圧縮強さが100N以上であることが好ましく、110N以上であることがより好ましく、120N以上であることが特に好ましい。一方、圧縮強さは、1000N以下であることが好ましく、700N以下であることがより好ましく、500N以下であることが特に好ましい。圧縮強さが前記範囲であれば、モーターコア等への挿入時の座屈や破断を防止することができ、ひいてはモーターコア等への挿入性に優れる傾向となる。
【0098】
前記圧縮強さは、下記の手順に従い測定される。
本フィルムを、測定する方向に幅12.7mm、測定する方向と直交する方向に長さ157mmの帯状に打ち抜き、これを長さ方向に丸め、試験片とする。
次に、円筒形の凹部をもつブロック(外枠)〔内径49.8mm、深さ6.35mm〕と、取り外しのできるディスク(内枠)〔外径49.3mm〕とからなる試験片支持具を準備し、前記ブロックに前記ディスクを取り付けることによって形成される円形の溝に試験片を挟み試験片を支持する。この際、前記試験片支持具の溝に配置した端部が重なった場合は余尺分を切り取る。
前記試験片を支持する試験片支持具を、精密万能試験機オートグラフ AGS-X(島津製作所社製)に配置した後、試験片が圧潰するまで試験機を運転し、圧潰したときの最大圧縮力を計測し圧縮強さとする。
【0099】
本フィルムの厚みは10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましく、80μm以上であることが特に好ましい。一方、200μm以下であることが好ましく、190μm以下であることがより好ましく、185μm以下であることがさらに好ましく、180μm以下であることがより特に好ましい。厚みが前記下限値以上であれば、本フィルムは充分な絶縁性と剛性を有しており、使用時の電流漏れと挿入時の座屈を防止しやすい傾向となる。また、厚みが前記上限値以下であれば、モーターコア等に挿入するコイル密度を上げることができ、ひいてはモーター効率を高く維持できる傾向となる。
【0100】
<用途・使用態様>
本フィルムは、溶剤に対する耐クラック性、耐熱性、耐衝撃性、摺動性に優れるため、家電製品やオーディオ機器、IT機器、通信機器、OA機器、医療機器、ヘルスケア機器、業務用機器、産業機器、自動車・鉄道・船舶等の輸送機器等向けのモーター用絶縁フィルムとして好適に使用できる。特に、本フィルムは、モーター用の相間絶縁紙、スロット紙、ウェッジ紙として好適に使用できる。
【0101】
最表面がポリアミド繊維である本フィルムをモーター用絶縁フィルムとして用いる場合、本フィルムのポリアミド繊維側をコイルに接するように挿入してモーターを製造することが、挿入性の点から好ましい。このようにして、本フィルムのポリアミド繊維がコイルに接するモーターが得られる。
そして、本フィルムを備えたモーターは、本フィルムは厚さが薄いためコイルの占積率を高くすることができ、モーターの小型化及び高出力化に寄与することができる。
【実施例0102】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0103】
実施例に先立って、下記の材料を準備した。また、ポリアミド繊維と樹脂フィルムの動摩擦係数を、下記に従い測定した。
【0104】
[動摩擦係数]
JIS K7125:1999にて、試験速度100mm/min、ウェイト200g、静摩擦区間5mm、動摩擦区間60mmステンレス(SUS430)との動摩擦係数を測定した。
測定条件は以下の通りである。
・装置:プラスチックフィルムすべり試験機(インテスコ社製)
・滑り片:全質量200g(接触面積が一辺63mmの正方形)
・接触面積:40cm2
・温度:23℃±2℃
・相対湿度:50%±10%
【0105】
〔ポリアミド繊維〕
・ノーメックス T410(デュポン社製、厚み50μm、動摩擦係数0.134)
【0106】
〔樹脂〕
[ポリエーテルイミド(PEI)]
・Ultem 1000-1000(サビック社製、前記構造式(2)で表される(b-1)の繰り返し単位を有する樹脂、重合度n=57、数平均分子量=34000、ガラス転移温度=217℃)
[ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)]
・VESTAKEEP 3300G(ダイセル・エボニック社製、前記構造式(5)で表される(a-1)の繰り返し単位を有する樹脂、重合度n=59、数平均分子量=17000、結晶融解温度=343℃、結晶融解熱量=41J/g、ガラス転移温度=143℃)
[ポリフェニレンサルファイド(PPS)]
以下のポリフェニレンサルファイドのフィルムを使用した。
・トレリナ(東レ社製、厚み100μm、動摩擦係数0.373)
[ポリイミド(PI)]
以下のポリイミドのフィルムを使用した。
・テオネックス(帝人社製、厚み100μm、動摩擦係数0.406)
[ポリエチレンナフタレート(PEN)]
以下のポリエチレンナフタレートのフィルムを使用した。
・カプトン(東レ・デュポン社製、厚み50μmおよび100μm、動摩擦係数0.378)
〔粘着剤〕
・アクリル系の粘着剤
【0107】
<実施例1>
前記PEIを、Φ40mm単軸押出機を使用し、380℃で溶融させた。その後、厚みが100μmとなるようにTダイ(口金温度380℃)から押出し、樹脂層(フィルム)を得た。フィルム表面は、算術平均粗さ(Ra)が1.05μmのキャストロールにキャスティングすることによって粗面化した。その動摩擦係数は0.305であった。
次にポリアミド繊維の片面に、粘着剤をバーコート方式により厚みが25μmとなるように塗工し、前記樹脂層(フィルム)と貼り合わせることにより厚み175μmの絶縁フィルムを得た。得られた絶縁フィルムの動摩擦係数は、樹脂層の最表面が0.305、ポリアミド繊維側の最表面が0.134であった。
【0108】
<実施例2>
前記PEEKを、Φ40mm単軸押出機を使用し、380℃で溶融させた。その後、厚みが100μmとなるようにTダイ(口金温度380℃)から押出し、樹脂層(フィルム)を得た。フィルム表面は、算術平均粗さ(Ra)が1.05μmのキャストロールにキャスティングすることによって粗面化した。その動摩擦係数は0.257であった。
次にポリアミド繊維の片面に、粘着剤をバーコート方式により厚みが25μmとなるように塗工し、前記樹脂層(フィルム)と貼り合わせることにより厚み175μmの絶縁フィルムを得た。得られた絶縁フィルムの動摩擦係数は、樹脂層の最表面が0.257、ポリアミド繊維側の最表面が0.134であった。
【0109】
<実施例3>
ポリアミド繊維の片面に、粘着剤をバーコート方式により厚みが25μmとなるように塗工し、前記PPSからなる厚み100μmのフィルムと貼り合わせることにより厚さ175μmの絶縁フィルムを得た。得られた絶縁フィルムの動摩擦係数は、樹脂層の最表面が0.373、ポリアミド繊維側の最表面が0.134であった。
【0110】
<実施例4>
ポリアミド繊維の片面に、粘着剤をバーコート方式により厚みが25μmとなるように塗工し、前記PIからなる厚み100μmのフィルムと貼り合わせることにより厚さ175μmの絶縁フィルムを得た。得られた絶縁フィルムの動摩擦係数は、樹脂層の最表面が0.406、ポリアミド繊維側の最表面が0.134であった。
【0111】
<実施例5>
ポリアミド繊維の片面に、粘着剤をバーコート方式により厚みが25μmとなるように塗工し、前記PENからなる厚み100μmのフィルムと貼り合わせることにより厚さ175μmの絶縁フィルムを得た。得られた絶縁フィルムの動摩擦係数は、樹脂層の最表面が0.378、ポリアミド繊維側の最表面が0.134であった。
【0112】
<比較例1>
ポリアミド繊維の片面に、粘着剤をバーコート方式により厚みが30μmとなるように塗工し、前記PENからなる厚み50μmのフィルムと貼り合わせた。その後、前記PENからなる厚み50μmのフィルムの片面に粘着剤をバーコート方式により厚さが30μmとなるように塗工し、別のポリアミド繊維と貼り合わせることにより厚さ210μmの絶縁フィルムを得た。得られた絶縁フィルムの動摩擦係数は、0.378であった。
【0113】
上述の方法で得られた実施例及び、比較例の絶縁フィルムについて、下記に記載の圧縮強さ、耐折回数の評価を行った。なお、樹脂フィルムのTダイからフィルム状の成形品が押し出されてくる方向を樹脂層(フィルム)の「長手(MD)」とし、フィルム面内でこれに直交する方向を樹脂層(フィルム)の「短手(TD)」とした。
得られた評価結果を後記の表1に示す。
【0114】
(1)圧縮強さ
各絶縁フィルムから、幅12.7mm(長手)、長さ157mm(短手)の帯状に打ち抜き刃を用いて打ち抜き、これを長さ方向に丸め、長手方向(MD)の試験片とした。
また、各絶縁フィルムから、幅12.7mm(短手)、長さ157mm(長手)の帯状に打ち抜き刃を用いて打ち抜き、これを長さ方向に丸め、短手方向(TD)の試験片とした。
次に、円筒形の凹部をもつブロック(外枠)〔内径49.8mm、深さ6.35mm〕と、取り外しのできるディスク(内枠)〔外径49.3mm〕とからなる試験片支持具を準備し、前記ブロックに前記ディスクを取り付けることによって形成された円形の溝に試験片を挟み試験片を支持した。この際、前記試験片支持具の溝に配置した端部が重なった場合は余尺分を切り取った。
前記試験片を支持する試験片支持具を、精密万能試験機オートグラフ AGS-X(島津製作所社製)に配置した後、試験片が圧潰するまで試験機を運転し、圧潰したときの最大圧縮力を計測し圧縮強さとした。
【0115】
(2)耐折回数
各絶縁フィルムについて、JIS P8115:2001に準拠して、MIT折曲疲労試験機(東洋精機社製)を用い、フィルムの長手方向(MD)及び短手(TD)について耐折回数を測定した。
【0116】
【0117】
前記の結果から、本発明の絶縁フィルムは、厚みが薄いにもかかわらず、従来の両面にポリアミド繊維を有する比較例1の絶縁フィルムと同等の圧縮強さ、同等以上の耐折強度を有し、厚みと機械特性とのバランスに優れるものであった。
本発明の絶縁フィルムは厚さと機械特性とのバランスに優れるため、家電製品やオーディオ機器、IT機器、通信機器、OA機器、医療機器、ヘルスケア機器、業務用機器、産業機器、自動車・鉄道・船舶等の輸送機器等向けのモーターに広く用いることができる。