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特開2024-58261配線形成用部材、半導体装置の製造方法、及び硬化性樹脂フィルム
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  • 特開-配線形成用部材、半導体装置の製造方法、及び硬化性樹脂フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058261
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】配線形成用部材、半導体装置の製造方法、及び硬化性樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/03 20060101AFI20240418BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240418BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20240418BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240418BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
H05K1/03 610H
C08L63/00 A
C08L33/04
C08L63/00 B
B32B15/08 J
H01L23/12 501P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165514
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】小川 紗瑛子
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 省吾
(72)【発明者】
【氏名】松原 弘明
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AB01D
4F100AB12E
4F100AB17B
4F100AB17D
4F100AG00A
4F100AK25C
4F100AK33C
4F100AK53C
4F100AL09C
4F100AN02C
4F100AT00A
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100EH66B
4F100EH66D
4F100EH66E
4F100GB43
4F100JJ03
4J002BG02X
4J002CC03Y
4J002CD00W
4J002CD05W
4J002CD06W
4J002CD07W
4J002FD010
4J002FD070
4J002FD150
4J002GF00
4J002GQ01
(57)【要約】
【課題】配線層(再配線層)を形成する際の樹脂層内で発泡を抑制することが可能な配線形成用部材を提供すること。
【解決手段】配線形成用部材10が提供される。配線形成用部材10は、支持部材1と、第1の金属層3aと、樹脂層5と、第2の金属層3bとをこの順に備える。樹脂層5は、硬化性樹脂組成物又はその硬化物を含有する。硬化性樹脂組成物は、アクリルゴムと、エポキシ樹脂とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材と、第1の金属層と、樹脂層と、第2の金属層とをこの順に備え、
前記樹脂層が、硬化性樹脂組成物又はその硬化物を含有し、
前記硬化性樹脂組成物が、アクリルゴムと、エポキシ樹脂とを含む、
配線形成用部材。
【請求項2】
前記硬化性樹脂組成物が、フェノール樹脂をさらに含む、
請求項1に記載の配線形成用部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の配線形成用部材を準備する工程と、
前記第2の金属層を加工して配線層を形成する工程と、
前記配線層上に半導体部材を配置し、配線層付き半導体部材を備える積層体を作製する工程と、
前記積層体の前記第1の金属層に対して前記支持部材側から少なくとも赤外光を含む光を照射して、前記支持部材と前記配線層付き半導体部材とを分離する工程と、
を備える、
半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の配線形成用部材を準備する工程と、
前記第2の金属層上に配線層を形成する工程と、
前記配線層上に半導体部材を配置し、配線層付き半導体部材を備える積層体を作製する工程と、
前記積層体の前記第1の金属層に対して前記支持部材側から少なくとも赤外光を含む光を照射して、前記支持部材と前記配線層付き半導体部材とを分離する工程と、
を備える、
半導体装置の製造方法。
【請求項5】
配線層付き半導体部材の製造プロセスに用いられる硬化性樹脂フィルムであって、
前記硬化性樹脂フィルムが、アクリルゴムと、エポキシ樹脂とを含む、
硬化性樹脂フィルム。
【請求項6】
フェノール樹脂をさらに含む、
請求項5に記載の硬化性樹脂フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線形成用部材、半導体装置の製造方法、及び硬化性樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
高密度実装可能な先端パッケージの1つとして、FO-WLP(Fan-Out Wafer Level Packaging)が知られている。FO-WLPは、チップ上に形成された微細な再配線層(RDL:Redistribution Layer)が、チップの外形より外側に拡張されて形成されている構造のパッケージである。FO-WLPの組み立て工程は、2つに大別することができる。1つは、チップをはじめに搭載してから再配線層を形成する方法であり、Chip First法と呼ばれる。もう1つは、再配線層をはじめに形成してからチップを搭載する方法であり、RDL-First(Redistribution Layer-First)法と呼ばれる。
【0003】
近年、RDL-First法によるパッケージ(配線層付き半導体部材)の製造プロセスに好適に使用される配線形成用部材の開発が進められている。このような製造プロセスにおいては、支持部材上の最表面にある金属層を加工して配線層(再配線層)を形成し、又は、金属層上に配線層(再配線層)を設け、必要に応じて、半導体チップを搭載してパッケージ(配線層付き半導体部材)を作製した後に、支持部材と配線層付き半導体部材とを分離する。例えば、特許文献1には、キャリア(支持部材)と、ニッケル合金層と、炭素層と、極薄銅層とを備えるキャリア付銅箔(配線形成用部材)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-114070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、支持部材と、第1の金属層と、樹脂層と、第2の金属層とをこの順に備える新規な配線形成用部材の開発を進めている。ところで、本発明者らの検討によると、このような配線形成用部材においては、配線層(再配線層)を形成する(例えば、絶縁層形成時の加熱する)際に、樹脂層内でアウトガス等に起因する発泡が発生し、樹脂層で膨れが生じる場合があることが見出された。樹脂層で膨れが生じると、半導体部材の配置等の後工程が実施できない等の不具合が生じるおそれがある。
【0006】
そこで、本開示は、配線層(再配線層)を形成する際の樹脂層内の発泡を抑制することが可能な配線形成用部材を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、[1]、[2]に記載の配線形成用部材、[3]、[4]に記載の半導体装置の製造方法、及び[5]、[6]に記載の硬化性樹脂フィルムを提供する。
[1]支持部材と、第1の金属層と、樹脂層と、第2の金属層とをこの順に備え、前記樹脂層が、硬化性樹脂組成物又はその硬化物を含有し、前記硬化性樹脂組成物が、アクリルゴムと、エポキシ樹脂とを含む、配線形成用部材。
[2]前記硬化性樹脂組成物が、前記エポキシ樹脂の硬化剤をさらに含み、前記硬化剤が、フェノール樹脂である、[1]に記載の配線形成用部材。
[3][1]又は[2]に記載の配線形成用部材を準備する工程と、前記第2の金属層を加工して配線層を形成する工程と、前記配線層上に半導体部材を配置し、配線層付き半導体部材を備える積層体を作製する工程と、前記積層体の前記第1の金属層に対して前記支持部材側から少なくとも赤外光を含む光を照射して、前記支持部材と前記配線層付き半導体部材とを分離する工程とを備える、半導体装置の製造方法。
[4][1]又は[2]に記載の配線形成用部材を準備する工程と、前記第2の金属層上に配線層を形成する工程と、前記配線層上に半導体部材を配置し、配線層付き半導体部材を備える積層体を作製する工程と、前記積層体の前記第1の金属層に対して前記支持部材側から少なくとも赤外光を含む光を照射して、前記支持部材と前記配線層付き半導体部材とを分離する工程とを備える、半導体装置の製造方法。
[5]配線層付き半導体部材の製造プロセスに用いられる硬化性樹脂フィルムであって、前記硬化性樹脂フィルムが、アクリルゴムと、エポキシ樹脂とを含む、硬化性樹脂フィルム。
[6]フェノール樹脂をさらに含む、[5]に記載の硬化性樹脂フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、配線層(再配線層)を形成する際の樹脂層内の発泡を抑制することが可能な配線形成用部材が提供される。また、本開示によれば、このような配線形成用部材を用いた半導体装置の製造方法が提供される。さらに、本開示によれば、配線層付き半導体部材の製造プロセスに用いられる硬化性樹脂フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、配線形成用部材の一実施形態を示す模式断面図である。
図2図2は、半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図であり、図2(a)、(b)、及び(c)は、各工程を示す模式断面図である。
図3図3は、半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図であり、図3(a)、(b)、(c)、及び(d)は、各工程を示す模式断面図である。
図4図4は、半導体装置の製造方法の他の実施形態を説明するための模式断面図であり、図4(a)、(b)、及び(c)は、各工程を示す模式断面図である。
図5図5は、半導体装置の製造方法の他の実施形態を説明するための模式断面図であり、図5(a)、(b)、(c)、(d)、及び(e)は、各工程を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を適宜参照しながら、本開示の実施形態について説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。各図における構成要素の大きさは概念的なものであり、構成要素間の大きさの相対的な関係は各図に示されたものに限定されない。
【0011】
本開示における数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0013】
本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステル又はそれに対応するメタクリル酸エステルを意味する。(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリル共重合体等の他の類似表現についても同様である。
【0014】
本明細書中、以下で例示する材料は、特に断らない限り、条件に該当する範囲で、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。各成分の含有量は、各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、当該複数の物質の合計量を意味する。
【0015】
[配線形成用部材]
図1は、配線形成用部材の一実施形態を示す模式断面図である。図1に示される配線形成用部材10は、支持部材1と、第1の金属層3aと、樹脂層5と、第2の金属層3bとをこの順に備える。
【0016】
支持部材1は、高い透過率を有し、配線形成時に受ける負荷に耐え得る板状体である。支持部材1としては、例えば、無機ガラス基板、透明樹脂基板等が挙げられる。
【0017】
支持部材1の厚さは、例えば、0.1~2.0mmであってよい。支持部材1の厚さが0.1mm以上であると、ハンドリングが容易となる傾向にある。支持部材1の厚さが2.0mm以下であると、材料費を抑制することができる傾向にある。
【0018】
第1の金属層3aは、赤外光を含む光を吸収して熱を発生する層である。第1の金属層3aを構成する金属は、赤外光を含む光を吸収して熱を発生する金属であれば特に制限されない。このような金属としては、例えば、クロム、銅、チタン、銀、白金、金等の金属、ニッケル-クロム、ステンレス鋼、銅-亜鉛等の合金、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛、酸化ニオブ等の金属酸化物などが挙げられる。これらの中でも、第1の金属層3aを構成する金属は、クロム、チタン、銅、アルミニウム、銀、金、又は白金であってよい。
【0019】
第1の金属層3aは、複数の金属層から構成されていてもよい。このような第1の金属層3aとしては、例えば、金属層(1)と金属層(2)とを支持部材1からこの順に含む層等が挙げられる。金属層(1)を構成する金属は、支持部材との密着性、成膜性、熱伝導性、低熱容量等の観点から、チタンであってよい。金属層(2)を構成する金属は、高膨張係数、高熱伝導等の観点から、銅、アルミニウム、銀、金、又は白金であってよく、銅又はアルミニウムであってもよい。
【0020】
第1の金属層3aは、金属箔を用いて形成される金属層、又は、真空蒸着、スパッタリング等の物理気相成長(PVD)によって形成される金属層であってよい。第1の金属層3aは、支持部材との密着性の観点から、PVDによって形成される金属層であることが好ましい。
【0021】
第1の金属層3aの厚さは、軽剥離性の観点から、1~5000nm(0.001~5μm)又は50~3000nm(0.05~3μm)であってよい。第1の金属層3aが金属層(1)と金属層(2)とから構成される層である場合、金属層(1)の厚さは、1~1000nm(0.001~1μm)、5~500nm(0.005~0.5μm)、又は10~100nm(0.01~0.1μm)であってよく、金属層(2)の厚さは、1~5000nm(0.001~5μm)、10~500nm(0.01~0.5μm)、又は50~300nm(0.05~0.3μm)であってよい。
【0022】
樹脂層5は、硬化性樹脂組成物又はその硬化物を含有する。硬化性樹脂組成物は、熱又は光によって硬化する硬化性樹脂組成物であり得る。すなわち、樹脂層5は、少なくとも一部が硬化し、半硬化(Bステージ)状態を経て、その後に加熱処理によって硬化(Cステージ)状態となり得るものであってよい。
【0023】
Bステージとは、ある種の熱硬化性樹脂の反応において、材料がある種の液体に接触する場合には膨潤しかつ加熱する場合には軟化するが、しかし完全には溶解又は溶融しない中間段階を意味し、Cステージとは、ある種の熱硬化性樹脂の反応において、その材料が事実上不溶不融となる最終段階を意味する。
【0024】
硬化性樹脂組成物は、アクリルゴム(以下、「(A)成分」という場合がある。)と、エポキシ樹脂(以下、「(B)成分」という場合がある。)とを含む。硬化性樹脂組成物が(A)成分と、(B)成分とを含むことにより、配線層(再配線層)を形成する際の樹脂層内の発泡を抑制することが可能となる。このような効果を奏する理由は、必ずしも定かではないが、アクリルゴムはそれ自体での耐熱性が比較的高く、エポキシ樹脂は自己重合により高い耐熱性を発現することから、硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、アウトガスの原因となる成分が減少すると推察され、これにより、硬化後の硬化性樹脂組成物を高温に曝した場合において、アウトガスの発生が抑制されると考えられる。
【0025】
硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂の硬化剤として、フェノール樹脂(以下、「(C)成分」という場合がある。)をさらに含んでいてもよい。硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤(以下、「(D)成分」という場合がある。)、無機フィラー(以下、「(E)成分」という場合がある。)、その他の成分等をさらに含んでいてもよい。
【0026】
(A)成分:アクリルゴム
(A)成分は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を主成分として含有するものであってよい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量は、(A)成分を構成する構成単位全量を基準として、例えば、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってよい。
【0027】
(A)成分は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位として、エポキシ基(グリシジル基)、アルコール性又はフェノール性水酸基、カルボキシル基等の架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を含んでいてもよい。架橋性官能基は、例えば、エポキシ基(グリシジル基)であってよい。架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、グリシジル(メタ)アクリレートであってよい。架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、(A)成分を構成する構成単位全量を基準として、例えば、0.1~10質量%、0.5~15質量%、又は1~10質量%であってよい。
【0028】
(A)成分は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位に加えて、アクリルニトリルに由来する構成単位をさらに含有するものであってよい。他方、(A)成分は、アクリルニトリルに由来する構成単位を含有しないものであってもよい。
【0029】
(A)成分のガラス転移温度(Tg)は、-50~50℃、-40~20℃、又は、-30~0℃であってよい。(A)成分のTgが50℃以下であると、硬化性樹脂組成物から硬化性樹脂フィルムを形成したときに、柔軟性をより充分に確保でき、貼付性の低下をより充分に抑制できる傾向がある。(A)成分のTgが-50℃以上であると、硬化性樹脂組成物から硬化性樹脂フィルムを形成したときに、柔軟性が高くなり過ぎることによる取扱性及び剥離性の低下をより充分に抑制できる傾向がある。
【0030】
なお、(A)成分のTgは、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される(A)成分の中間点ガラス転移温度を意味する。中間点ガラス転移温度は、例えば、昇温速度10℃/分、測定温度-80~80℃の条件で熱量変化を測定し、JIS K 7121:1987に準拠した方法によって算出することができる。
【0031】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、10万~120万、20万~100万、又は30万~80万であってよい。(A)成分のMwが10万以上であると、硬化性樹脂組成物の耐熱性を確保し易くなる傾向がある。(A)成分のMwが120万以下であると、硬化性樹脂組成物から硬化性樹脂フィルムを形成したときに、貼付性の低下を抑制できる傾向がある。
【0032】
なお、(A)成分のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値を意味する。
【0033】
(A)成分の含有量は、硬化性樹脂組成物全量を基準として、40~90質量%であってよい。(A)成分の含有量は、硬化性樹脂組成物全量を基準として、45質量%以上、50質量%以上、又は55質量%以上であってもよく、80質量%以下、70質量%以下、又は65質量%以下であってもよい。(A)成分の含有量が、硬化性樹脂組成物全量を基準として、40質量%以上であると、硬化性樹脂組成物から硬化性樹脂フィルムを形成したときに、被着体へのラミネート性により優れる傾向がある。(A)成分の含有量が、硬化性樹脂組成物全量を基準として、90質量%以下であると、耐熱性がより充分に確保され、被着体からの剥離性により優れる傾向がある。
【0034】
(B)成分:エポキシ樹脂
(B)成分は、分子内にエポキシ基を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、多官能フェノール類又は多環芳香族類のジグリシジルエーテル化合物などが挙げられる。これらの中でも、(B)成分は、耐熱性及び耐候性の観点から、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、及びトリフェノールメタン型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0035】
(B)成分のエポキシ当量は、特に制限されないが、90~350g/eq又は110~320g/eqであってよい。(B)成分のエポキシ当量がこのような範囲にあると、硬化性樹脂フィルムのバルク強度を維持しつつ、流動性を確保することができる傾向がある。
【0036】
(C)成分:フェノール樹脂
(C)成分は、分子内にフェノール性水酸基を有するものであれば特に限定されない。フェノール樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;アリル化ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールF、アリル化ナフタレンジオール、フェノールノボラック、フェノール等のフェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂などが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、(C)成分は、フェノールノボラック型フェノール樹脂を含んでいてもよい。
【0037】
(C)成分の水酸基当量は、70~300g/eq又は90~250g/eqであってよい。(C)成分の水酸基当量が70g/eq以上であると、硬化性樹脂フィルムの貯蔵弾性率がより向上する傾向がある。(C)成分の水酸基当量が300g/eq以下であると、樹脂層内の発泡をより抑制できる傾向がある。
【0038】
(B)成分のエポキシ当量と(C)成分の水酸基当量との比((B)成分のエポキシ当量/(C)成分の水酸基当量)は、硬化性の観点から、0.30/0.70~0.70/0.30、0.35/0.65~0.65/0.35、0.40/0.60~0.60/0.40、又は0.45/0.55~0.55/0.45であってよい。当該当量比が0.30/0.70以上であると、より充分な硬化性が得られる傾向がある。当該当量比が0.70/0.30以下であると、粘度が高くなり過ぎることを防ぐことができ、より充分な流動性を得ることができる傾向がある。
【0039】
(B)成分及び(C)成分の合計の含有量は、(A)成分の全量100質量部に対して、10~70質量部、15~60質量部、又は20~55質量部であってよい。(B)成分及び(C)成分の合計の含有量が、(A)成分の全量100質量部に対して、10質量部以上であると、架橋によって貯蔵弾性率がより向上する傾向がある。(B)成分及び(C)成分の合計の含有量が、(A)成分の全量100質量部に対して、70質量部以下であると、フィルム取扱性を維持できる傾向がある。
【0040】
(D)成分:硬化促進剤
(D)成分としては、例えば、イミダゾール誘導体、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾール-テトラフェニルボレート、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7-テトラフェニルボレート等が挙げられる。
【0041】
(D)成分の含有量は、(B)成分及び(C)成分の全量100質量部に対して、0.01~5質量部であってよい。(D)成分の含有量がこのような範囲にあると、硬化性が向上し、耐熱性がより優れる傾向がある。
【0042】
(E)成分:無機フィラー
(E)成分としては、例えば、銀粉、金粉、銅粉等の金属フィラー;シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、セラミック等の非金属フィラーなどが挙げられる。金属フィラーは、樹脂層にチキソ性等を付与する目的で添加され得る。非金属フィラーは、樹脂層に耐熱性、剥離性、低熱膨張性、低吸湿性等を付与する目的で添加され得る。(E)成分は、非金属フィラーであってよく、例えば、シリカであってよい。(E)成分は、溶剤との分散性の観点から、その表面が表面処理剤で処理された粒子であってもよい。表面処理剤は、例えば、シランカップリング剤であってよい。
【0043】
(E)成分の平均粒径は、流動性の観点から、0.01μm(10nm)以上、0.02μm(20nm)以上、又は0.03μm(30nm)以上であってよく、1.0μm(1000nm)以下、0.5μm(500nm)以下、又は0.2μm(200nm)以下であってよい。(E)成分は、平均粒径の異なる2種以上の(C)成分を組み合わせてもよい。ここで、平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって求められる粒度分布における積算頻度50%の粒径を意味する。なお、(E)成分の平均粒径は、(E)成分が含有される硬化性樹脂フィルムを用いることによっても求めることができる。この場合、接着フィルムを加熱して樹脂成分を分解することによって得られる残渣を溶媒に分散して分散液を作製し、これにレーザー回折・散乱法を適用して得られる粒度分布から、(E)成分の平均粒径を求めることができる。
【0044】
(E)成分の含有量は、(A)成分の全量100質量部に対して、5~300質量部、10~100質量部、又は20~50質量部であってよい。無機フィラーの含有量がこのような範囲内にあると、耐熱性をより向上させることができる傾向がある。また、無機フィラーの含有量がこのような範囲内にあると、軽剥離性にも寄与する可能性がある。
【0045】
硬化性樹脂組成物は、有機フィラー、増感剤、酸化防止剤、離型剤等のその他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0046】
有機フィラーとしては、例えば、カーボン、ゴム系フィラー、シリコーン系微粒子、ポリアミド微粒子、ポリイミド微粒子等が挙げられる。有機フィラーの含有量は、(A)成分の全量100質量部に対して、1~100質量部であってよい。
【0047】
増感剤としては、例えば、アントラセン、フェナントレン、クリセン、ベンゾピレン、フルオランテン、ルブレン、ピレン、キサントン、インダンスレン、チオキサンテン-9-オン、2-イソプロピル-9H-チオキサンテン-9-オン、4-イソプロピル-9H-チオキサンテン-9-オン、1-クロロ-4‐プロポキシチオキサントン等が挙げられる。増感剤の含有量は、(A)成分の全量100質量部に対して、0.1~20質量部であってよい。増感剤の含有量がこのような範囲内あると、硬化性樹脂組成物の特性及び薄膜性への影響が少ない傾向ある。
【0048】
酸化防止剤としては、例えば、ベンゾキノン、ハイドロキノン等のキノン誘導体、4-メトキシフェノール、4-t-ブチルカテコール等のフェノール誘導体(ヒンダードフェノール誘導体)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル等のアミノキシル誘導体、テトラメチルピペリジルメタクリレート等のヒンダードアミン誘導体などが挙げられる。酸化防止剤の含有量は、(A)成分の全量100質量部に対して、0.1~20質量部であってよい。酸化防止剤の含有量がこのような範囲内にあると、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の分解を抑制し、汚染を防ぐことができる傾向ある。
【0049】
硬化性樹脂組成物の硬化物は、硬化性樹脂組成物を熱硬化(又は光硬化)させることによって得ることができる。熱硬化の条件は、例えば、200℃以下又は100~180℃で、1~180分又は10~120分であってよい。
【0050】
硬化性樹脂組成物を170℃で1時間加熱することによって得られる硬化物について、230℃で1時間等温保持したときの重合減少率は、1質量%以下であってよい。当該重合減少率が1質量%以下であると、配線層(再配線層)を形成する際の樹脂層内の発泡を抑制することが可能となる。当該重合減少率は、0.9質量%以下、0.8質量%以下、又は0.7質量%以下であってもよい。
【0051】
当該重量減少率は、以下の手順で測定することができる。まず、硬化性樹脂組成物から厚さ30μmの硬化性樹脂フィルムを作製し、これを80℃で8枚ラミネートすることにより、厚さ240μmの積層フィルムを作製する。次いで、積層フィルムを170℃で1時間加熱し、加熱後の積層フィルムから測定用サンプルとして10mg切り出す。示差熱熱重量計を用いて、測定用サンプルを30℃~230℃まで50分かけて昇温し、その後、230℃で1時間等温保持し、測定用サンプルの重量減少量を求めることによって、当該重量減少率を算出することができる。
【0052】
硬化性樹脂組成物及びその硬化物は、樹脂層5の主成分であり得る。硬化性樹脂組成物及びその硬化物の合計の含有量は、樹脂層5の全量を基準として、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は100質量%であってよい。樹脂層5は、硬化性樹脂組成物及びその硬化物からなるものであってよい。
【0053】
樹脂層5の厚さは、応力緩和の観点から、例えば、200μm以下であってよい。樹脂層5の厚さは、1~150μm又は10~100μmであってもよい。
【0054】
第2の金属層3bは、加工されて配線層となる層又はめっき等の下地となる層である。第2の金属層3bを構成する金属は、銅又はチタンであってよく、銅であってもよい。
【0055】
第2の金属層3bは、金属箔を用いて形成される金属層、又は、真空蒸着、スパッタリング等の物理気相成長(PVD)によって形成される金属層であってよい。金属箔は、銅箔又はチタン箔であってよく、銅箔であってもよい。
【0056】
第2の金属層3bが金属箔から形成される金属層である場合、第2の金属層3bの厚さは、取扱性の観点から、1~40μm、3~35μm、又は5~30μmであってよい。第2の金属層3bがPVDによって形成される金属層である場合、第2の金属層3bの厚さは、取扱性の観点から、1~5000nm(0.001~5μm)又は50~3000nm(0.05~3μm)であってよい。
【0057】
図1に示される配線形成用部材10の製造方法は、所定の構成を有する部材を得ることができるのであれば特に制限されない。配線形成用部材10は、例えば、支持部材1上に第1の金属層3aを設ける工程(工程1A)と、第1の金属層3a上に樹脂層5を設ける工程(工程1B)と、樹脂層5上に第2の金属層3bを設ける工程(工程1C)とを備える方法によって得ることができる。
【0058】
(工程1A)
第1の金属層3aは、支持部材1上に、真空蒸着、スパッタリング等の物理気相成長(PVD)を実施することによって設けることができる。第1の金属層3aは、支持部材1上に、電解めっき又は無電解めっきを実施することによっても設けることができる。物理気相成長によれば、支持部材1が大きな面積を有していても、支持部材1の表面を覆う第1の金属層3aを効率的に形成することができる。
【0059】
(工程1B)
第1の金属層3a上に樹脂層5を設ける方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、硬化性樹脂組成物の各成分を、溶剤中で撹拌、混錬等を行うことによって、溶解又は分散させ、硬化性樹脂組成物を含有する樹脂ワニスを調製する。次いで、離型処理を施した支持フィルム上に、樹脂ワニスをナイフコーター、ロールコーター、アプリケーター、コンマコーター、ダイコーター等を用いて塗工した後、加熱によって溶剤を揮発させて、支持フィルム上に、硬化性樹脂フィルムを形成する。このとき、樹脂ワニスの塗工量を調整することによって、硬化性樹脂フィルム(樹脂層5)の厚さを調整することができる。硬化性樹脂フィルムの厚さは、上記の樹脂層5の厚さと同様であってよい。次いで、第1の金属層3a上に、得られた硬化性樹脂フィルム(樹脂層5)をラミネーター等で貼り付けることによって、樹脂層5を設けることができる。
【0060】
樹脂ワニスで使用される溶剤は、各成分を均一に溶解又は分散し得る特性を有するものであれば特に制限されない。このような溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、p-シメン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;メチルシクロヘキサンなどの環状アルカン;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミドなどが挙げられる。ワニス中の固形成分濃度は、ワニスの全質量を基準として、10~80質量%であってよい。
【0061】
樹脂ワニスを調製する際の撹拌又は混錬は、例えば、撹拌機、らいかい機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル、ホモディスパー等を用いて行うことができる。
【0062】
支持フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスルホン、液晶ポリマのフィルム等が挙げられる。支持フィルムの厚さは、例えば、1~250μmであってよい。
【0063】
支持フィルムへ塗工した樹脂ワニスから溶剤を揮発させる際の加熱条件は、使用する溶剤の種類等に合わせて適宜設定することができる。加熱条件は、例えば、40~160℃で0.1~30分であってよい。
【0064】
第1の金属層3aに硬化性樹脂フィルム(樹脂層5)を貼り付ける方法としては、例えば、加熱プレス、ロールラミネート、真空ラミネート等の方法が挙げられる。ラミネートは、例えば、20~120℃の温度条件下で行うことができる。
【0065】
第1の金属層3a上に樹脂層5を設ける方法の他の例としては、例えば、樹脂ワニスを第1の金属層3a上に直接塗工し、溶剤を加熱によって揮発させて、樹脂層5を形成する方法が挙げられる。
【0066】
(工程1C)
第2の金属層3bは、樹脂層5上に金属箔を配置することによって形成することができる。第2の金属層3bは、樹脂層5上に真空蒸着、スパッタリング等の物理気相成長(PVD)を実施することによっても形成することができる。
【0067】
樹脂層5上に金属箔を用いて第2の金属層3bを形成する場合、樹脂層5は、Bステージ状態であることが好ましい。また、樹脂層5は、第2の金属層3bを加工する前に、硬化性樹脂組成物を硬化させ、硬化性樹脂組成物の硬化物を多く含み得るCステージ状態とすることが好ましい。
【0068】
樹脂層5上にPVDを実施することによって第2の金属層3bを形成する場合、樹脂層5は、Bステージ状態であっても、硬化性樹脂組成物の硬化物を多く含み得るCステージ状態であってもよいが、低分子成分の揮発を抑制する観点から、Cステージ状態であることが好ましい。樹脂層5中の硬化性樹脂組成物を熱硬化(又は光硬化)させる条件は、上記と同様であってよい。
【0069】
配線形成用部材10は、例えば、支持部材1と第1の金属層3aとを含む積層体Aを作製する工程(工程1D)と、樹脂層5と第2の金属層3bとを含む積層体Bを作製する工程(工程1E)と、積層体Aの第1の金属層3aに積層体Bの樹脂層5を貼り付ける工程(工程1F)とを備える方法によっても得ることができる。
【0070】
(工程1D)
積層体Aは、工程1Aと同様にして、支持部材1上に第1の金属層3aを形成することによって得ることができる。
【0071】
(工程1E)
積層体Bは、工程1Bと同様にして、支持フィルム上に硬化性樹脂フィルム(樹脂層5)を形成し、工程1Cと同様にして、樹脂層5上に、第2の金属層3bを形成することによって得ることができる。
【0072】
(工程1F)
配線形成用部材10は、積層体Aの第1の金属層3aに積層体Bの樹脂層5を貼り付けることによって得ることができる。積層体Aの第1の金属層3aに積層体Bの樹脂層5を貼り付ける方法は、上記の第1の金属層3aに硬化性樹脂フィルムを貼り付ける方法と同様であってよい。
【0073】
このようにして、配線形成用部材10を得ることができる。配線形成用部材10において、樹脂層5は、硬化性樹脂組成物の硬化物を含有することが好ましい。すなわち、樹脂層5は、Cステージ状態にあることが好ましい。
【0074】
このような配線形成用部材10によれば、RDL-First法によるパッケージ(配線層付き半導体部材)の製造プロセスに好適に使用することが可能である。
【0075】
[半導体装置の製造方法]
図2及び図3は、半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。半導体装置の製造方法の一実施形態は、上記の配線形成用部材10を準備する工程(工程1A、図2(a)参照)と、第2の金属層3bを加工して配線層11を形成する工程(工程2B、図2(b)参照)と、配線層11上に半導体部材15を配置し、配線層付き半導体部材30を備える積層体40を作製する工程(工程2C、図2(c)参照)と、積層体40の第1の金属層3aに対して支持部材1側から少なくとも赤外光を含む光Aを照射して、支持部材1と配線層付き半導体部材30とを分離する工程(工程2D、図3(a)、(b)参照)とを備える。
【0076】
(工程2A)
本工程では、上記の配線形成用部材10を準備する。
【0077】
(工程2B)
本工程では、第2の金属層3bを加工して配線層11を形成する。第2の金属層3bを加工して配線層11を形成する方法としては、例えば、サブトラクティブ法(エッチング法)等が挙げられる。
【0078】
サブトラクティブ法は、金属層上に、所望のパターン形状に対応した形状のエッチングレジスト層を形成し、その後の現像処理によって、レジストの除去された部分の金属層を薬液で溶解して除去することによって、所望の回路を有する配線層を形成する方法である。第2の金属層3bを加工して配線層11を形成する方法としてサブトラクティブ法を適用する場合、従来公知のレジスト、薬液等を使用することができる。また、サブトラクティブ法を適用する場合、第2の金属層3bは、金属箔を用いて形成される金属層であってよい。
【0079】
(工程2C)
本工程では、配線層11上に半導体部材15を配置し、配線層付き半導体部材30を備える積層体40を作製する。半導体部材15としては、例えば、半導体ウェハ、半導体ウェハを分割して得られる半導体チップ等が挙げられる。配線層11上に配置される半導体部材15の数は、1個であってもよく、複数であってもよい。半導体部材15の厚さは、半導体装置の小型化、薄型化に加えて、搬送時、加工工程等の際の割れ抑制の観点から、1~1000μm、10~500μm、又は20~200μmであってよい。
【0080】
半導体部材15を配線層11上に配置する場合、半導体部材15が配置される面における配線層11が形成されていない部分には、絶縁層13が形成されていてもよい。
【0081】
絶縁層13は、当該分野で使用される従来公知の熱硬化性樹脂材料を、例えば、スピンコーター等を用いて塗工し、熱硬化せることによって形成することができる。熱硬化の条件は、例えば、200~350℃で、0.5~5時間であってよい。
【0082】
半導体部材15は、配線層11上に配置した後に所望の加工が実施されてもよい。半導体部材の加工は、例えば、半導体ウェハ又は半導体チップの薄化、半導体部材の分割(ダイシング)、貫通電極の形成、エッチング処理、めっきリフロー処理、スパッタリング処理、又はこれらの組み合わせを含むことができる。加工された半導体部材は、封止層で封止されていてもよい。封止層は、半導体部材(半導体装置)の製造のために通常用いられる封止材を用いて形成することができる。封止層を形成した後、封止層及び配線層を、半導体部材を1個ずつ含む複数の部分に分割してもよい。
【0083】
(工程2D)
本工程では、積層体40の第1の金属層3aに対して支持部材1側から少なくとも赤外光を含む光Aを照射して、支持部材1と配線層付き半導体部材30とを分離する。光Aの照射によって、第1の金属層3aが光を吸収して熱を瞬間的に発生する。発生した熱によって、樹脂層5の溶融、支持部材1と配線層付き半導体部材30との間に生じる熱応力等が発生し得る。これらの現象が主な原因となって、例えば、界面剥離(例えば、第1の金属層3aと樹脂層5との界面における界面剥離)、凝集剥離(例えば、樹脂層5における凝集剥離)などが発生して、支持部材1と配線層付き半導体部材30とを分離し得る。支持部材1と配線層付き半導体部材30とを分離するために、光Aの照射とともに、配線層付き半導体部材30に対して応力をわずかに加えてもよい。
【0084】
光Aは、少なくとも赤外光を含む。赤外光の波長は、通常、700nm~1mmである。
【0085】
光Aは、コヒーレント光であってよい。コヒーレント光は、可干渉性が高い、指向性が高い、単色性が高いといった性質を有する電磁波である。コヒーレント光は、同一波長で同位相の光が互いに強め合って合成されるため、強度が高い傾向を有する。レーザー光は、一般にコヒーレント光である。レーザー光は、YAGレーザー、ファイバレーザー、半導体レーザー、ヘリウムーネオンレーザー、アルゴンレーザー、エキシマレーザー等が挙げられる。レーザー光の波長は、1300nm以下であってもよい。波長が1300nm以下であることにより、支持部材1の光吸収が抑制され、かつ、第1の金属層3aの光吸収が高くなるため、より低い光照射エネルギーではく離することが可能である。コヒーレント光は、パルス光であってもよい。
【0086】
光Aは、インコヒーレント光であってよい。インコヒーレント光は、コヒーレントでない光であり、干渉縞が発生しない、可干渉性が低い、指向性が低いといった性質を有する電磁波である。インコヒーレント光は、光路長が長くなるほど、減衰する傾向を有する。太陽光、蛍光灯の光等の光は、インコヒーレント光である。インコヒーレント光は、レーザー光を除く光ということもできる。インコヒーレント光の照射面積は、一般にコヒーレント光(すなわち、レーザー光)よりも圧倒的に広いため、照射回数を少なくすることが可能である。例えば、1回の照射により、複数の配線層付き半導体部材30の分離を生じさせ得る。インコヒーレント光は、パルス光であってもよい。
【0087】
光の光源は、特に制限されないが、キセノンランプであってよい。キセノンランプは、キセノンガスを封入した発光管での印加・放電による発光を利用したランプである。キセノンランプは、電離及び励起を繰り返しながら放電するため、紫外光領域から赤外光領域までの連続波長を安定的に有する。キセノンランプは、メタルハライドランプ等のランプと比較して始動に要する時間が短いため、工程に係る時間を大幅に短縮することができる。また、発光には、高電圧を印加する必要があるため、高熱が瞬間的に生じるが、冷却時間が短く、連続的な作業が可能な点でも、キセノンランプは有利である。
【0088】
配線層付き半導体部材30の配線層11上には、樹脂層5の全部又は一部が残渣として付着することがある。付着した残さは、図3(c)に示されるように除去される。付着した残さは、例えば、ピールにより剥離されてもよいし、溶剤で洗浄することにより除去されてもよい。溶剤としては、エタノール、メタノール、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン等が挙げられる。付着した残さの除去のために、配線層付き半導体部材30を溶剤に浸漬させてもよいし、超音波洗浄を行ってもよい。また、付着した残さの除去のために、必要に応じて、100℃以下程度の低温で配線層付き半導体部材30を加熱してもよい。
【0089】
このようにして、配線層付き半導体部材30(半導体装置50)を得ることができる。配線層付き半導体部材30には、例えば、図3(d)に示されるように、配線層付き半導体部材30の配線層11上にはんだボール17が設けられていてもよい。
【0090】
図4及び図5は、半導体装置の製造方法の他の実施形態を説明するための模式断面図である。半導体装置の製造方法の他の実施形態は、上記の配線形成用部材10を準備する工程(工程3A、図4(a)参照)と、第2の金属層3b上に配線層12を形成する工程(工程3B、図4(b)参照)と、配線層12上に半導体部材15を配置し、配線層付き半導体部材60を備える積層体70を作製する工程(工程3C、図4(c)参照)と、積層体70の第1の金属層3aに対して支持部材1側から少なくとも赤外光を含む光Aを照射して、支持部材1と配線層付き半導体部材60とを分離する工程(工程3D、図5(a)、(b)参照)とを備える。
【0091】
(工程3A)
本工程では、上記の配線形成用部材10を準備する。
【0092】
(工程3B)
本工程では、第2の金属層3b上に配線層12を形成する。第2の金属層3b上に配線層12を形成する方法としては、例えば、セミアディティブ法等が挙げられる。
【0093】
セミアディティブ法は、金属層上に所望のパターンに対応した形状のめっきレジスト層を形成し、次いで、電解めっき法によって配線層を形成した後、レジスト層を除去することによって、所望の回路を有する配線層を形成する方法である。不要な金属層は、薬液等を用いてもよいし、配線層付き半導体部材を作製した後に除去してもよい。第2の金属層3b上に配線層12を形成する方法としてセミアディティブ法を適用する場合、従来公知のレジスト、薬液等を使用することができる。また、セミアディティブ法を適用する場合、第2の金属層3bは、PVDによって形成される金属層であってよい。
【0094】
(工程3C)
本工程では、配線層12上に半導体部材15を配置し、配線層付き半導体部材60を備える積層体70を作製する。本工程は、工程2Cと同様であることから、重複する説明を省略する。
【0095】
(工程3D)
本工程では、積層体70の第1の金属層3aに対して支持部材1側から少なくとも赤外光を含む光Aを照射して、支持部材1と配線層付き半導体部材60とを分離する。本工程は、工程2Dと同様であることから、重複する説明を省略する。
【0096】
配線層付き半導体部材60の配線層12上には、第2の金属層3bが付着することがある。第2の金属層3bは、図5(d)に示されるように除去される。第2の金属層3bは、例えば、薬液;プラズマ等によるエッチングなどにより除去されてもよい。
【0097】
このようにして、配線層付き半導体部材60(半導体装置80)を得ることができる。配線層付き半導体部材60には、例えば、図5(e)に示されるように、配線層付き半導体部材60の配線層12上にはんだボール17が設けられていてもよい。
【0098】
[硬化性樹脂フィルム]
硬化性樹脂フィルムは、配線層付き半導体部材の製造プロセスに用いられるものであり、特に、RDL-First法による配線層付き半導体部材の製造プロセスに用いられるものであってよい。硬化性樹脂フィルムの各成分は、上記の硬化性樹脂組成物の各成分と同様である。硬化性樹脂フィルムの製造方法は、上記の工程1Bの支持フィルム上に、硬化性樹脂フィルムを形成する方法と同様である。したがって、ここでは、重複する説明を省略する。
【実施例0099】
以下、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0100】
(製造例1)
[アクリルゴムP-1の合成]
撹拌機、温度計、窒素置換装置(窒素流入管)、及び水分受容器付きの還流冷却器を備えた500mLのセパラブルフラスコ内に、脱イオン水200g、アクリル酸ブチル70g、メタクリル酸メチル9.5g、グリシジルメタクリレート10g、2-ヒドロキシエチルメタクリレート10g、スチレン0.5g、1.8質量%ポリビニルアルコール水溶液2.04g、ラウリルパーオキサイド0.41g、及びn-オクチルメルカプタン0.07gを配合した。続いて、60分間Nガスを吹き込んで系内の空気を除去した後、系内温度を65℃に昇温して3時間撹拌し、さらに90℃に昇温して2時間撹拌して、重合を完結させた。得られた透明のビーズをろ過により分離し、脱イオン水で洗浄した後、真空乾燥機で50℃、6時間乾燥させ、アクリルゴムP-1を得た。アクリルゴムP-1をGPCで測定したところ、アクリルゴムP-1のMwはポリスチレン換算で50万であった。また、アクリルゴムP-1のTgは-28℃であった。
【0101】
なお、アクリルゴムP-1のMwの測定は、GPC(東ソー株式会社製、SD-8022/DP-8020/RI-8020)を用い、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、カラムとして昭和電工マテリアルズ株式会社製GelpackGL-A150-S/GL-A160-Sを使用して行った。
【0102】
また、アクリルゴムP-1のTgは、示差走査熱量測定(DSC)(株式会社リガク製、DSC8230)を用いて、昇温速度10℃/分、測定温度-80~80℃の条件で熱量変化を測定し、JIS K 7121:1987に準拠した方法によって中間点ガラス転移温度を算出し、算出した中間点ガラス転移温度をアクリルゴムP-1のTgとした。
【0103】
(実施例1~6及び比較例1、2)
[硬化性樹脂フィルムの作製]
<原材料の準備>
以下の原材料を準備した。
(A)成分:アクリルゴム
A-1:製造例1のアクリルゴムP-1
(B)成分:エポキシ樹脂
B-1:N-500P-10(商品名、DIC株式会社製、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量:203g/eq、25℃で固形)
B-2:EXA830-CRP(商品名、DIC株式会社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量:155~163g/eq、25℃で液状)
B-3:CG-500(商品名、大阪ガスケミカル株式会社製、フルオレン型エポキシ樹脂、エポキシ当量:310g/eq、25℃で固形)
B-4:1032H60(商品名、三菱化学株式会社製、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、エポキシ当量:163~175g/eq、25℃で固形)
(C)成分:フェノール樹脂
C-1:PSM-4326(商品名、群栄化学株式会社製、フェノールノボラック樹脂、水酸基当量:105g/eq、25℃で固形)
(D)成分:硬化促進剤
D-1:2PZ-CN(商品名、四国化成工業株式会社製、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール)
(E)成分:無機フィラー
E-1:YA-050C-HHG(商品名、アドマテックス株式会社製、ビニルシランで表面処理されたシリカ、平均粒径:0.05μm(50nm))
【0104】
<樹脂ワニスの調製及び硬化性樹脂フィルムの作製>>
表1に示す組成比(単位:質量部)にて各成分を配合し、さらにシクロヘキサノンを加え、各成分が均一になるまで撹拌して、樹脂ワニスを調製した。調製したワニスを100メッシュのフィルターでろ過し、真空脱泡を行い、真空脱泡後の樹脂ワニスを、支持フィルムである、厚さ38μmの離型処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布した。次いで、塗布したワニスを、90℃で5分間、続いて140℃で5分間の2段階で加熱乾燥することにより、支持フィルム上に、実施例1~6及び比較例1、2の厚さ30μmの硬化性樹脂フィルム(樹脂層)を作製した。硬化性樹脂フィルム(樹脂層)においては、支持フィルムとは反対側の表面に、支持フィルムと同様のPETフィルムを保護フィルムとして配置した。
【0105】
[硬化性樹脂フィルムの評価]
(硬化後の硬化性樹脂フィルムの重量減少率)
得られた硬化性樹脂フィルムを用いて、硬化後の硬化性樹脂フィルムの重量減少率を求めた。厚さ30μmの硬化性樹脂フィルムを80℃で8枚ラミネートすることにより、厚さ240μmの積層フィルムを作製した。次いで、積層フィルムを170℃で1時間加熱し、加熱後の積層フィルムから測定用サンプルとして10mg切り出した。示差熱熱重量計(セイコーインスツル株式会社製、TG/DTA220)を用いて、測定用サンプルを30℃~230℃まで50分かけて昇温し、その後、230℃で1時間等温保持し、測定用サンプルの重量減少量を求め、測定用サンプルの測定前の質量に対する重量減少率を算出した。結果を表1に示す。
【0106】
(絶縁層形成後の樹脂層の観察)
・第1の金属層の作製
支持部材として、12インチのガラス(FL-960、AGC株式会社製)を準備した。準備したガラス上に、チタンを厚さ50nmとなるようにスパッタリングして金属層(1)を形成し、続いて、銅を厚さ200nmとなるようにスパッタリングして金属層(2)を形成し、二層の金属層から構成される第1の金属層を作製した。
【0107】
・樹脂層の作製
得られた硬化性樹脂フィルムにおいて、保護フィルムを剥離し、ラミネーター(大成ラミネーター株式会社製、ファーストラミネーターVA-400III)を用いて、ラミネート温度80℃、ラミネート速度0.5m/s、ラミネート圧力0.2MPaの条件で、第1の金属層上に硬化性樹脂フィルムを貼り付け、樹脂層を作製した。続いて、支持フィルムを剥離し、恒温器(エスペック株式会社製、パーフェクトオーブン)内で、170℃で1時間加熱し、硬化性樹脂フィルム(硬化性樹脂組成物)の硬化物を含有する樹脂層を形成した。
【0108】
・第2の金属層の作製
硬化性樹脂フィルム(硬化性樹脂組成物)の硬化物を含有する樹脂層上に、スパッタ装置(株式会社アルバック製、SIV-500)を用いて、銅を厚さ200nmとなるようにスパッタリングして第2の金属層を作製した。
【0109】
・配線層の作製
(a)ドライフィルムのラミネート
第2の金属層上に、真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ株式会社製、真空ラミネーターCV300)を用いて、感光性ドライフィルム(昭和電工マテリアルズ株式会社製、RY-5110UT)を貼り付けた。ラミネート条件は、真空度:3.0hPa、真空引き時間:30秒、真空加圧力:0.5MPa、加圧時間:60秒、上/下温度:90℃/40℃、冷却時間:20秒、及び上/下張力:100N/100Nとした。
【0110】
(b)めっきレジスト層の作製
露光装置(株式会社サーマプレシジョン製、i線ステッパSc6k)を用いて、レクチル(フォトマスク、HCCT-FOP03V2-03)を介して、感光性ドライフィルムを露光した。露光条件は、露光量:210mJ/cm、AF:-8.5umとした。次いで、現像機(株式会社サーマプレシジョン製、PLP対応平置き現像機YC-S600)を用いて、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を使用して30℃、25秒の条件で現像した。現像後、スピン洗浄機(株式会社ジャパンクリエイト社製、枚葉式スピン洗浄機SCP-S300)を用いて、露光後の感光性ドライフィルムの残部に対してスピン洗浄を行い、めっきレジスト層を作製した。
【0111】
(c)配線層の作製
プラズマ処理装置(ノードソン株式会社製、プラズマアッシャAP-1000)を用いて、作製しためっきレジスト層に対して、Oプラズマ処理を行った。処理条件は、RF出力:500W、ベース圧力:150mTorr(20Pa)、プロセス圧力:200mTorr(27Pa)、圧力範囲:200mTorr(27Pa)、Oガス流量:100sccm(mL/分)、及び処理時間:60秒とした。続いて、めっきレジスト層を酸洗浄し、めっき装置を用いて、電解めっき法によってめっき層を作製した。電解めっきの条件は、電流値:2.45A、電圧:2.3~2.4V、及びめっき時間:22分とした。次いで、作製しためっき層に対して、上記と同様にして、スピン洗浄及びOプラズマ処理を行い、剥離液(三菱ガスケミカル社製、R100-S+R101)を用いて、めっきレジスト層を剥離した。さらに、めっき層に対して、上記と同様にして、スピン洗浄及びOプラズマ処理を行うことによって、配線層を作製した。
【0112】
・絶縁層の形成
スピンコーター(ミカサ株式会社製、MA-A500)を用いて、熱硬化性樹脂材料(昭和電工マテリアルズ株式会社製、AR-5100)を配線層と配線層との間に塗布(充填)し、絶縁層を形成した。絶縁層をホットプレート上で4分加熱してプリベークを行った。続いて、支持部材と、第1の金属層と、樹脂層と、第2の金属層と、配線層及び絶縁層とを備える積層体を、クリーンオーブン(株式会社ジェイテクトサーモシステム製、CLH21CD(V)-S)を用いて、窒素雰囲気下、230℃で2時間加熱し、観察用サンプルを作製した。
【0113】
・絶縁層形成後の樹脂層の観察
作製した観察用サンプルにおいて、絶縁層から樹脂層を観察し、樹脂層内の発泡の有無を観察した。評価は、樹脂層内の発泡が観測されなかった場合を「A」、樹脂層内の発泡がわずかに観測された場合を「B」、樹脂層内の発泡が多く観測された場合を「C」とした。結果を表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
表1に示すとおり、アクリルゴムとエポキシ樹脂とを含む実施例の硬化性樹脂フィルムにおいては、樹脂層内の発泡が観測されなかったのに対して、所定の成分を含まない比較例の硬化性樹脂フィルムにおいては、樹脂層内の発泡が観測された。また、樹脂層内の発泡は、硬化後の硬化性樹脂フィルムの重量減少率が小さいほど、抑制される傾向があることが判明した。これらの結果から、本開示の配線形成用部材は、配線層(再配線層)を形成する際の樹脂層内の発泡を抑制することが可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0116】
1…支持部材、3a…第1の金属層、3b…第2の金属層、5…樹脂層、10…配線形成用部材、11,12…配線層、13…絶縁層、15…半導体部材、17…はんだボール、30,60…配線層付き半導体部材、40,70…積層体、50,80…半導体装置。
図1
図2
図3
図4
図5