(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058263
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】樹脂組成物、ペレット、および、成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20240418BHJP
C08K 5/101 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K5/101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165518
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】濱口 龍樹
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CG01W
4J002CG01X
4J002CG01Y
4J002EH036
4J002FD026
4J002GC00
4J002GG00
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】 耐擦傷性に優れた樹脂組成物、ならびに、樹脂組成物を用いたペレット、および、成形品の提供。
【解決手段】 ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、ライスワックスを0.5~3.0質量部含み、ポリカーボネート樹脂が式(1)で表される構成単位を全構成単位の5モル%以上の割合で含む、樹脂組成物。式(1)中、R
1はメチル基を表し、R
2は水素原子またはメチル基を表す。
式(1)
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、ライスワックスを0.5~3.0質量部含み、
前記ポリカーボネート樹脂が式(1)で表される構成単位を全構成単位の5モル%以上の割合で含む、樹脂組成物。
式(1)
【化1】
(式(1)中、R
1はメチル基を表し、R
2は水素原子またはメチル基を表し、X
1は下記のいずれかの式を表し、
【化2】
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
【請求項2】
ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、式(F)で表されるモノエステルであって、総炭素数が46~60である化合物を0.5~3.0質量部含み、
前記ポリカーボネート樹脂が式(1)で表される構成単位を全構成単位の5モル%以上の割合で含む、樹脂組成物。
式(1)
【化3】
(式(1)中、R
1はメチル基を表し、R
2は水素原子またはメチル基を表し、X
1は下記のいずれかの式を表し、
【化4】
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
式(F)
【化5】
(式(F)中、Raは、炭素数15~33の脂肪族基を表し、Rbは、炭素数22~34の脂肪族基を表す。)
【請求項3】
前記ポリカーボネート樹脂が、さらに、式(2)で表される構成単位を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
式(2)
【化6】
(式(2)中、X
2は下記のいずれかの式を表し、
【化7】
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
【請求項4】
前記ポリカーボネート樹脂が、全構成単位中、式(1)で表される構成単位を10~90モル%と、式(2)で表される構成単位90~10モル%を含む(ただし、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位の合計が100モル%を超えることは無い)、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリカーボネート樹脂が、式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂のマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂を含む、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、着色剤を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1または2に記載の樹脂組成物のペレット。
【請求項8】
請求項1または2に記載の樹脂組成物から成形された成形品。
【請求項9】
請求項7に記載のペレットから成形された成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、ペレット、および、成形品に関する。特に、ポリカーボネート樹脂を主要成分とする樹脂組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、機械的強度、電気的特性、透明性などに優れ、エンジニアリングプラスチックとして、電気電子機器分野、自動車分野等の様々な分野において幅広く利用されている。近年、これらの分野においては、成形加工品の薄肉化、低コスト化、小型化、軽量化が進展し、成形素材のさらなる性能向上が要求され、いくつかの提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ビスフェノールC由来の構造単位を含むポリカーボネート樹脂を含むポリカーボネート樹脂に対して、ベヘニルベヘネート等の脂肪酸エステルを配合した樹脂組成物が開示されている。同文献には、前記樹脂組成物から形成された成形品が耐擦傷性等に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から、ビスフェノールC由来の構造単位を含むポリカーボネート樹脂は、鉛筆硬度が高い傾向にあることが知られている。ここで、ビスフェノールC由来の構造単位を含むポリカーボネート樹脂から形成された成形品上に塗装等の処理を施さずに製品として使用する場合がある。上記特許文献1に記載の樹脂組成物は、耐擦傷性に優れた樹脂組成物であるが、このような塗装等の処理をしない成形品に用いるためには、さらなる耐擦傷性が求められる場合もある。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、さらに耐擦傷性に優れた樹脂組成物、ならびに、前記樹脂組成物を用いたペレット、および、成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題のもと、本発明者が鋭意検討を行った結果、ライスワックス等を用いることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、ライスワックスを0.5~3.0質量部含み、
前記ポリカーボネート樹脂が式(1)で表される構成単位を全構成単位の5モル%以上の割合で含む、樹脂組成物。
式(1)
【化1】
(式(1)中、R
1はメチル基を表し、R
2は水素原子またはメチル基を表し、X
1は下記のいずれかの式を表し、
【化2】
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
<2>ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、式(F)で表されるモノエステルであって、総炭素数が46~60である化合物を0.5~3.0質量部含み、
前記ポリカーボネート樹脂が式(1)で表される構成単位を全構成単位の5モル%以上の割合で含む、樹脂組成物。
式(1)
【化3】
(式(1)中、R
1はメチル基を表し、R
2は水素原子またはメチル基を表し、X
1は下記のいずれかの式を表し、
【化4】
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
式(F)
【化5】
(式(F)中、Raは、炭素数15~33の脂肪族基を表し、Rbは、炭素数22~34の脂肪族基を表す。)
<3>前記ポリカーボネート樹脂が、さらに、式(2)で表される構成単位を含む、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
式(2)
【化6】
(式(2)中、X
2は下記のいずれかの式を表し、
【化7】
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
<4>前記ポリカーボネート樹脂が、全構成単位中、式(1)で表される構成単位を10~90モル%と、式(2)で表される構成単位90~10モル%を含む(ただし、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位の合計が100モル%を超えることは無い)、<3>に記載の樹脂組成物。
<5>前記ポリカーボネート樹脂が、式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂のマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂を含む、<3>に記載の樹脂組成物。
<6>さらに、着色剤を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7><1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物のペレット。
<8><1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から成形された成形品。
<9><7>に記載のペレットから成形された成形品。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、耐擦傷性に優れた樹脂組成物、ならびに、前記樹脂組成物を用いたペレット、および、成形品を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2022年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0009】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、ライスワックスを0.5~3.0質量部含み、ポリカーボネート樹脂が式(1)で表される構成単位を全構成単位の5モル%以上の割合で含むことを特徴とする。
式(1)
【化8】
(式(1)中、R
1はメチル基を表し、R
2は水素原子またはメチル基を表し、X
1は下記のいずれかの式を表し、
【化9】
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
または、本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、式(F)で表されるモノエステルであって、総炭素数が46~60である化合物を0.5~3.0質量部含み、前記ポリカーボネート樹脂が式(1)で表される構成単位を全構成単位の5モル%以上の割合で含むことを特徴とする。
式(F)
【化10】
(式(F)中、Raは、炭素数15~33の脂肪族基を表し、Rbは、炭素数22~34の脂肪族基を表す。)
このような構成とすることにより、耐擦傷性に優れた樹脂組成物が得られる。
【0010】
<ポリカーボネート樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、式(1)で表される構成単位を全構成単位の5モル%以上の割合で含む。式(1)で表される構成単位を含むことにより、耐擦傷性に優れた成形品が得られる。
式(1)
【化11】
(式(1)中、R
1はメチル基を表し、R
2は水素原子またはメチル基を表し、X
1は下記のいずれかの式を表し、
【化12】
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
【0011】
式(1)で表される構成単位において、R
2は水素原子であることが好ましい。
式(1)中、X
1が、
【化13】
である場合、R
3およびR
4は、少なくとも一方がメチル基であることが好ましく、両方がメチル基であることがより好ましい。
また、X
1が、
【化14】
の場合、Zは、上記式(1)中の2個のフェニル基と結合する炭素Cと結合して、炭素数6~12の2価の脂環式炭化水素基を形成するが、2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シキロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基、アダマンチリデン基、シクロドデシリデン基等のシクロアルキリデン基が挙げられる。ZがCと結合して形成される置換基を有する脂環式炭化水素としては、上述した脂環式炭化水素基のメチル置換体、エチル置換体などが挙げられる。置換されたものとしては、これらのメチル置換基、エチル置換基を有するもの等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基、シキロヘキシリデン基のメチル置換体(好ましくは3,3,5-トリメチル置換体)、シクロドデシリデン基が好ましい。
【0012】
式(1)中、X
1は下記構造が好ましい。
【化15】
【0013】
上記式(1)で表される構成単位の好ましい具体例としては、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわち、ビスフェノールCから構成される構成単位(カーボネート構成単位)である。
【0014】
本実施形態において、ポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0015】
本実施形態において、式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂は、さらに、式(2)で表される構成単位を含んでいてもよい。ここで、式(2)で表される構成単位を含むとは、本実施形態の樹脂組成物に含まれるポリカーボネート樹脂が、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂であることの他、式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂と式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂のブレンド物等であってもよい趣旨である。式(2)で表される構成単位を含むことにより、得られる成形品の耐熱性がより向上する傾向にある。
式(2)
【化16】
式(2)中、X
2は下記のいずれかの式を表し、
【化17】
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。
【0016】
式(2)中、X
2が、
【化18】
である場合、R
3およびR
4は、少なくとも一方がメチル基であることが好ましく、両方がメチル基であることがより好ましい。
またX
2が、
【化19】
の場合、Zは、上記式(2)中の2個のフェニル基と結合する炭素Cと結合して、炭素数6~12の2価の脂環式炭化水素基を形成するが、2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シキロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基、アダマンチリデン基、シクロドデシリデン基等のシクロアルキリデン基が挙げられる。置換されたものとしては、これらのメチル置換基、エチル置換基を有するもの等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基、シキロヘキシリデン基のメチル置換体(好ましくは3,3,5-トリメチル置換体)、シクロドデシリデン基が好ましい。
式(2)中、X
2は下記構造が好ましい。
【化20】
【0017】
本実施形態では、ポリカーボネート樹脂は、式(2)で表される構成単位を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0018】
本実施形態において、ポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位以外の他の構成単位を含んでいてもよい。他の構成単位としては、以下に示すジヒドロキシ化合物由来の構成単位が例示される。
【0019】
ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルエチル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルプロピル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルエチル)フェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルプロピル)フェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルエチル)フェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルプロピル)フェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、4,4'-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、4,4'-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4'-ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4'-ジヒドロキシビフェニル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-6-メチル-3-tert-ブチルフェニル)ブタン。
【0020】
また、他の構成単位の一実施形態として、国際公開第2017/099226号の段落0008に記載の式(2)で表される構成単位、国際公開第2017/099226号の段落0043~0052の記載、特開2011-046769号公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0021】
また、本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂において、式(1)で表される構成単位の割合は、全構成単位中、5モル%以上であり、10モル%以上であることが好ましく、12モル%以上であることがより好ましく、14モル%以上であることがさらに好ましく、用途等に応じて、35モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、75モル%以上、80モル%以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、成形品の表面硬度を高くすることができる傾向にある。また、本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂において、式(1)で表される構成単位の割合は、全構成単位中、100モル%であってもよく、90モル%以下であることが好ましく、用途等に応じて、88モル%以下、86モル%以下、65モル%以下、60モル%以下、50モル%以下、30モル%以下、25モル%以下、20モル%以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、得られる成形品の耐衝撃性がより向上する傾向にあるとともに、成形品の耐熱性も向上する傾向にある。さらに、上記上限値以下とすることにより、耐候性も向上する傾向にある。
【0022】
また、本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂において、式(2)で表される構成単位の割合は、全構成単位中、10モル%以上であることが好ましく、12モル%以上であることがより好ましく、14モル%以上であることがさらに好ましく、用途等に応じて、35モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、75モル%以上、80モル%以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の耐衝撃性がより向上する傾向にあるとともに、成形品の耐熱性も向上する傾向にある。さらに、上記下限値以上とすることにより、耐候性も向上する傾向にある。また、本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂において、式(2)で表される構成単位の割合は、全構成単位中、95モル%以下であり、90モル%以下であることが好ましく、用途等に応じて、88モル%以下、86モル%以下、65モル%以下、60モル%以下、50モル%以下、30モル%以下、25モル%以下、20モル%以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、成形品の表面硬度を高くすることができる傾向にある。
ただし、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位の合計が100モル%を超えることは無い。
【0023】
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂における、上記式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位の合計は、末端基を除く全構成単位の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、99質量%以上を占めることがさらに好ましい。前記合計の上限としては、100質量%以下である。
【0024】
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂は、以下の形態が好ましい。
(A1)式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂
(A2)式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂と、式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂のブレンド物
(A3)式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂
(A4)式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂と、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂のブレンド物
(A5)式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂と、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂のブレンド物
(A6)式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂と、式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂と、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂のブレンド物
(A7)上記(A1)~(A6)において、ポリカーボネート樹脂またはそのブレンド物を構成するポリカーボネート樹脂が式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位以外の他の構成単位を含むポリカーボネート樹脂
(A8)上記(A1)~(A7)のポリカーボネート樹脂またはブレンド物と、他の構成単位とからなるポリカーボネート樹脂とのブレンド物
【0025】
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、下限値が5,000以上であることが好ましく、8,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることがさらに好ましく、12,000以上であることが一層好ましい。また、Mvの上限値は、32,000以下であることが好ましく、30,000以下であることがより好ましく、29,000以下であることがさらに好ましく、27,000以下であることが一層好ましい。
粘度平均分子量を上記下限値以上とすることにより、成形性が向上し、かつ、機械的強度の高い成形品が得られる。また、上記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の流動性が向上し、薄肉の成形品なども効率的に製造することができる。
樹脂組成物が2種以上のポリカーボネート樹脂を含む場合は、各ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量に質量分率をかけた値の合計とする。
特に、式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、20,000~30,000であることが好ましく、20,000~28,000であることがより好ましい。また、式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、12,000~28,000であることが好ましく、18,000~27,000であることがより好ましい。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度(η)(単位:dL/g)を求め、以下のSchnellの粘度式から算出する。
η=1.23×10-4Mv0.83
【0026】
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されないが、例えば、特開2014-065901号公報の段落0027~0043および実施例の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0027】
さらに、ポリカーボネート樹脂(特に、式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂)は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)であってもよい。前記の使用済みの製品としては、例えば、光学ディスク等の光記録媒体;導光板;自動車窓ガラス、自動車ヘッドランプレンズ、風防等の車両透明部材;水ボトル等の容器;メガネレンズ;防音壁、ガラス窓、波板等の建築部材などが挙げられる。また、製品の不適合品、端材、スプルー、ランナー等から得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。
ただし、マテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂は、樹脂組成物に含まれるポリカーボネート樹脂のうち、80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であってもよい。前記マテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂の含有量の下限値は、樹脂組成物に含まれるポリカーボネート樹脂のうち、0質量%であってもよいが、環境負荷の観点から、10質量%以上であることが好ましい。
【0028】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリカーボネート樹脂の含有量は、樹脂組成物100質量%中、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが一層好ましく、95質量%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の耐熱性がより傾向にある。また、本実施形態の樹脂組成物におけるポリカーボネート樹脂の含有量は、樹脂組成物100質量%中、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましく、97質量%以下であってもよい。
【0029】
<ライスワックス等>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、ライスワックス、および/または、式(F)で表されるモノエステルであって、総炭素数が46~60である化合物を0.5~3.0質量部含む。
式(F)
【化21】
(式(F)中、Raは、炭素数15~33の脂肪族基を表し、Rbは、炭素数22~34の脂肪族基を表す。)
本明細書においては、ライスワックスと、式(F)で表されるモノエステルであって、総炭素数が46~60である化合物を併せて、「ライスワックス等」ということがある。
このようなライスワックス等を用いることにより、耐擦傷性により優れた成形品が得られる。
【0030】
ライスワックスは、ライスブランワックスとも言われ、米ぬかから抽出したワックスを主成分としている。ライスワックスは、脂肪酸モノエステルが主成分であり、より具体的には、後述する式(F)で表されるモノエステルであって、総炭素数が46~60である化合物の混合物が主成分である。ライスワックスの、通常90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上が式(F)で表されるモノエステルであって、総炭素数が46~60である化合物から構成される。
式(F)
【化22】
(式(F)中、Raは、炭素数15~33の脂肪族基を表し、Rbは、炭素数22~34の脂肪族基を表す。)
【化23】
【0031】
上記式(F)における脂肪族基は、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で、その脂肪族鎖中に二重結合や分岐構造が含まれていてもよい。
【0032】
本実施形態の樹脂組成物におけるライスワックス等の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.5質量部以上であり、0.8質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましく、1.2質量部以上であることがさらに好ましく、1.5質量部以上であることが一層好ましく、1.8質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の耐擦傷性が向上する傾向にある。また、前記ライスワックス等の含有量の上限値は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、3.0質量部以下であり、2.8質量部以下であることが好ましく、2.5質量部以下であることがより好ましく、2.2質量部以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、ペレットの押出製造時にベントポートから溶融樹脂が排出される、所謂ベントアップが生じにくい。
本実施形態の樹脂組成物は、ライスワックス等を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0033】
<安定剤>
本実施形態の樹脂組成物は安定剤を含んでいてもよい。
安定剤としては、熱安定剤や酸化防止剤が挙げられる。
熱安定剤としては、リン系安定剤が好ましく用いられる。
リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜リン酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
【0034】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系安定剤が好ましく用いられる。
ヒンダードフェノール系安定剤の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフェート、3,3',3'',5,5',5''-ヘキサ-tert-ブチル-a,a',a''-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0035】
このようなヒンダードフェノール系安定剤としては、具体的には、例えば、BASF社製「Irganox(登録商標。以下同じ)1010」、「Irganox1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」等が挙げられる。
【0036】
本実施形態の樹脂組成物における安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。安定剤の含有量を前記範囲とすることにより、安定剤の添加効果がより効果的に発揮される。
本実施形態の樹脂組成物は、安定剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0037】
<着色剤>
本実施形態の樹脂組成物は、着色剤を含むことが好ましい。着色剤を含むことにより、得られる成形品に意匠性を持たせることができる。
着色剤は、顔料であってもよいし、染料であってもよいが、顔料が好ましい。
また、着色剤は、有彩色着色剤であっても、無彩色着色剤であってもよく、無彩色着色剤であることが好ましい。
【0038】
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青などの珪酸塩系顔料;酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛-鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅-クロム系ブラック、銅-鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青などのフェロシアン系顔料などが挙げられる。
【0039】
有機顔料および/または有機染料としては、例えば、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料;ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染顔料;メチン系染顔料、ピラゾロン系染顔料、チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの縮合多環染顔料;アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料などが挙げられる。
【0040】
本実施形態においては、着色剤が黒色顔料を含むことが好ましく、カーボンブラックを含むことがより好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、黒色顔料を配合することにより、黒色度を高めることができる。
【0041】
本実施形態の樹脂組成物における着色剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.01質量部以上であり、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、また、通常5.0質量部以下、好ましくは3.0質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下である。着色剤の含有量を前記範囲とすることにより、着色剤の添加効果がより効果的に発揮される。
本実施形態の樹脂組成物は、着色剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0042】
<その他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂およびライスワックス等、ならびに、上記添加剤に加え、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記以外の他成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、他の熱可塑性樹脂や各種樹脂添加剤などが挙げられる。
樹脂添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、衝撃改良剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。これらの詳細は、特開2014-065901号公報の段落0059~0080の記載、特開2018-165017号公報の段落0069~0093の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
特に、紫外線吸収剤としては、特開2016-216534号公報の段落0059~0062の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
特に、帯電防止剤としては、特開2016-216534号公報の段落0063~0067の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
特に、難燃剤としては、特開2016-216534号公報の段落0068~0075の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0043】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂およびライスワックス等、ならびに、必要に応じ配合される樹脂添加剤(例えば、安定剤、着色剤)の合計が100質量%となるように調整される。
【0044】
<樹脂組成物の物性>
本実施形態の樹脂組成物は、耐擦傷性に優れていることが好ましい。特に、樹脂組成物を成形した成形品の耐擦傷性試験後のΔGross60°の値が、5.5以下であることが好ましく、5.3以下であることがより好ましく、5.0以下であることがさらに好ましく、3.5以下であることが一層好ましく、3.2以下であることがより一層好ましい。下限値は、0が理想であるが、0.1以上が実際的である。
耐擦傷性試験後のΔGross60°は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0045】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂、ライスワックス等、および、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240~320℃の範囲である。
【0046】
<成形品>
本実施形態の樹脂組成物の一形態はペレットである。
また、上述した樹脂組成物ないしペレットは、各種の成形法で成形して成形品とされる。すなわち、本実施形態の成形品は、本実施形態の樹脂組成物ないしペレットから成形される。
成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム状、ロッド状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状のもの等が挙げられる。中でも、パネル状のものが好ましく、厚さは例えば、1mm~5mm程度である。
【0047】
成形品を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコ-ティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。特に、本実施形態の樹脂組成物は、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法で得られる成形品に適している。しかしながら、本実施形態の樹脂組成物がこれらで得られた成形品に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0048】
本実施形態の成形品は、電気電子機器、OA機器、携帯情報端末、機械部品、家電製品、車輌部品、各種容器、照明機器、文房具、事務用品等の部品等に好適に用いられる。これらの中でも、特に、電気電子機器、OA機器、情報端末機器および家電製品の筐体、照明機器および車輌部品(特に、車輌内装部品)に用いられ、中でも車輌内装部品が好適である。
【実施例0049】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0050】
1.原料
以下の表1に記載の原料を用いた。
【表1】
【0051】
<製造例1:ポリカーボネート樹脂A-2の製造>
ビスフェノールC(BPC)26.14モル(6.75kg)と、ジフェニルカーボネート26.79モル(5.74kg)を、撹拌機および留出凝縮装置付きのアルミ(SUS)製反応器(内容積10リットル)内に入れ、反応器内を窒素ガスで置換後、窒素ガス雰囲気下で220℃まで30分間かけて昇温した。
次いで、反応器内の反応液を撹拌し、溶融状態下の反応液にエステル交換反応触媒として炭酸セシウム(Cs2CO3)を、BPC1モルに対し1.5×10-6モルとなるように加え、窒素ガス雰囲気下、220℃で30分、反応液を撹拌醸成した。次に、同温度下で反応器内の圧力を40分かけて100Torrに減圧し、さらに、100分間反応させ、フェノールを留出させた。
次に、反応器内の温度を60分かけて284℃まで上げるとともに3Torrまで減圧し、留出理論量のほぼ全量に相当するフェノールを留出させた。次に、同温度下で反応器内の圧力を1Torr未満に保ち、さらに60分間反応を続け、重縮合反応を終了させた。このとき、撹拌機の撹拌回転数は38回転/分であり、反応終了直前の反応液温度は289℃、撹拌動力は1.00kWであった。
次に、溶融状態のままの反応液を二軸押出機に送入し、炭酸セシウムに対して4倍モル量のp-トルエンスルホン酸ブチルを二軸押出機の第1供給口から供給し、反応液と混練し、その後、反応液を二軸押出機のダイを通してストランド状に押し出し、カッターで切断してポリカーボネート樹脂A-2のペレットを得た。
【0052】
2.実施例1~4、比較例1~5
<樹脂組成物ペレットの製造>
上記表1に記載した各成分を、以下の表2に記載した割合(各成分は質量部である)で配合し、タンブラーにて20分混合した後、二軸押出機(芝浦機械株式会社製「TEM-26SX」)を用いて、シリンダー温度260℃、吐出25kg/hで溶融混練し、ストランドカットにより樹脂組成物(ペレット)を得た。
【0053】
<試験片の製造>
上記で得られたペレットを100℃で5時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、射
出成形機(ファナック株式会社製「α-2000i-150B」)を用いて、シリンダー温度270℃、金型温度70℃にて、面積が150×100mm、厚みが2mmである平板状試験片を得た。
【0054】
<擦傷性試験後のΔGross60°>
上記の方法で得られた試験片の中央部において、光沢計(日本電色工業社製、「VG7000」)によりJIS Z 8741に基づき60度鏡面光沢(Gross60°)を測定した。その試験片に対し平面摩耗試験機 (大栄科学精機製作所製 「PA-300A」)を用いて、摩擦子として45R摩擦子 (大栄製作所製)、摩擦布としてガーゼ (川本産業製 医療ガーゼタイプI)、荷重500g、速度40回/min、500往復の条件により摩耗試験を行った。摩耗試験後の傷跡の60度鏡面光沢を測定し、摩耗前後の60度鏡面光沢の差分ΔGross60°を算出した。
ΔGross60°の値が低いほど、耐擦傷性に優れている。
【0055】
<押出性>
上記樹脂組成物ペレットの製造において、押出中のベントポートを観察し、ベントアップの有無を確認し、以下の通り評価した。
A:ベントアップしなかった。
B:ベントアップした。
【0056】
【0057】
上記結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物から形成された成形品は、耐擦傷性に優れていた(実施例1~4)。
これに対し、ライスワックスの含有量が本発明で規定する下限値を下回る場合(比較例1)、耐擦傷性が劣っていた。また、ライスワックスの含有量が本発明で規定する上限値を上回る場合(比較例2)、押出性が劣っていた。
また、ライスワックスに代えて、脂肪酸エステルを配合した場合(比較例3、比較例4)、耐擦傷性が十分とは言えなかった。
ポリカーボネート樹脂が、式(1)で表される構成単位を含まない場合(比較例5)、耐擦傷性も劣っていた。