(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058285
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】純水製造装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/32 20230101AFI20240418BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20240418BHJP
【FI】
C02F1/32
C02F1/42 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165553
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】港 康晴
【テーマコード(参考)】
4D025
4D037
【Fターム(参考)】
4D025AA04
4D025AB05
4D025AB34
4D025BB04
4D025BB08
4D025DA01
4D025DA04
4D025DA05
4D037AA03
4D037BA18
4D037BB01
4D037BB02
4D037CA03
4D037CA15
(57)【要約】
【課題】 紫外線酸化装置を備えた使用水量などに追従して処理水量が変動しても過酸化水素の発生を抑制可能な純水製造装置を提供する。
【解決手段】 一次純水装置3は、紫外線酸化装置13の後段に流量計41を有するとともに、この流量計41の検出値に基づいて紫外線酸化装置13の紫外線の照射量を制御可能な制御手段を有する。紫外線酸化装置13としては、複数の紫外線ランプのブロックから構成されていて、制御手段により点灯するブロック数を制御するとともに各ブロックの紫外線ランプの照度を調光することにより、紫外線酸化装置13における紫外線の照射量を制御可能なものを用いる。そして、紫外線酸化装置13の後段で流量計41により処理水量を測定し、あらかじめ設定した基準とする流量に対する処理水量の増減に応じて、紫外線酸化装置13における紫外線の照射量を増減するように制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理水量が設定値に対して5流量%以上増減する被処理水中のTOC成分を処理する紫外線酸化装置を備えた純水製造装置であって、
前記紫外線酸化装置の後段又は前段にH2O2の濃度に直接あるいは間接的に関連する指標を検知する検知手段を有し、この検知手段の検出値に基づいて紫外線酸化装置における紫外線の照射量を制御する制御手段を備えた、純水製造装置。
【請求項2】
前記検知手段が流量計であり、前記制御手段は前記流量計の流量の検出値の増減に伴い紫外線の照射量を増減するように制御する、請求項1に記載の純水製造装置。
【請求項3】
前記検知手段が紫外線酸化装置の後段に設けられたH2O2計または溶存水素計であり、前記制御手段は前記H2O2計または溶存水素計の検出値の増減に伴い紫外線の照射量を増減するように制御する、請求項1に記載の純水製造装置。
【請求項4】
前記純水製造装置が紫外線酸化装置の後段にイオン交換装置を有し、前記検知手段が前記イオン交換装置の後段に設けられた溶存酸素計であり、前記制御手段は前記溶存酸素計の検出値の増減に伴い紫外線の照射量を増減するように制御する、請求項1に記載の純水製造装置。
【請求項5】
前記紫外線酸化装置への単位流量当たりの電力投入量が0.01~0.3kWh/m3であり、前記紫外線酸化装置の照度の最大値を100%として30~100%の範囲でコントロール可能である、請求項1に記載の純水製造装置。
【請求項6】
前記紫外線酸化装置の前段にTOC測定手段と流量計とを備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の純水製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線酸化装置を備えた純水製造装置に関し、特に使用水量などに追従して流量が変動する紫外線酸化装置を備えた純水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体等の電子産業分野で用いられている超純水は、前処理装置、一次純水装置及び一次純水を処理する二次純水装置(サブシステム)で構成される超純水製造装置で原水を処理することにより製造されている。
【0003】
一般に超純水製造装置1は、
図1に示すように前処理装置2、一次純水装置3、及び二次純水装置(サブシステム)4といった3段の装置で構成されている。このような超純水製造装置1の前処理装置2では、原水Wの濾過、凝集沈殿、精密濾過膜などによる前処理が施され、主に懸濁物質が除去される。
【0004】
一次純水装置3は、例えば、前処理水W0のタンク11と、逆浸透膜装置12と、紫外線(UV)酸化装置13と、再生型イオン交換装置(混床式又は4床5塔式など)14と、膜式脱気装置15とを有する、なお、16は予熱器である。ここで前処理水W0中の電解質、微粒子、生菌等の大半の除去を行うとともに有機物を分解する。
【0005】
サブシステム4は、例えば、前述した一次純水装置3で製造された一次純水W1を貯留するサブタンク21と、このサブタンク21に貯留された一次純水W1を送給するポンプ22と、この一次純水W1を処理する紫外線酸化装置24と、白金族金属触媒樹脂塔25と、膜式脱気装置26と、逆浸透膜装置27と、非再生型混床式イオン交換装置28と、膜濾過装置としての限外濾過(UF)膜29とで構成されている、なお、23は熱交換器である。このサブシステム4では、紫外線酸化装置24で一次純水W1中に含まれる微量の有機物(TOC成分)を紫外線により酸化分解し、この紫外線の照射により生じた過酸化水素を白金族金属触媒樹脂塔25で分解し、その後段の膜式脱気装置26で混入しているDO(溶存酸素)などの溶存ガスを除去する。続いて逆浸透膜装置27及び非再生型イオン交換装置28で処理することで、残留した炭酸イオン、有機酸類、アニオン性物質、さらには金属イオンやカチオン性物質を除去する。そして、限外濾過(UF)膜29で微粒子を除去して超純水(二次純水)W2とし、これを送給管30からユースポイント5に供給して、未使用の超純水は返送管31からサブタンク21に還流する。
【0006】
上述したような超純水製造装置1において、紫外線酸化装置13は185nmの波長を発生して下記式(1)によりTOCの分解を行うことを主目的としているが、紫外線の照射により過酸化水素(H2O2)が生成することが知られている。
【0007】
【0008】
ここで生成された過酸化水素は、後段の設備、特にイオン交換装置(再生型イオン交換装置14、非再生型イオン交換装置、あるいは電気脱イオン装置など)に流入すると、分解されてDO(溶存酸素)が発生する。あるいは、過酸化水素がイオン交換樹脂を分解してTOCを生じることもある。純水製造装置では、DO<1μg/Lレベルの保証が必要なことが多い。そこで、イオン交換装置14の後段あるいは前段に膜式脱気装置15を設けてDOを除去したり、膜式脱気装置15の前段にさらに白金族金属触媒樹脂塔を設けて、過酸化水素自体を完全に酸素に分解したりしている。
【0009】
ところで、
図1に示すように従来の超純水製造装置1では、ユースポイント(POU)5の使用量の最大値の超純水水W2を製造して、余剰水を循環利用しているが、近年純水製造装置の省エネルギー化の取り組みが推進されており、その一環として従来循環していた余剰水をユースポイント(POU)5での要求水量に応じて必要な分だけ送水することで、純水製造装置の中で電力使用量の大きな送水ポンプ、特に逆浸透膜(RO)の供給ポンプの運転エネルギーを削減する技術が検討されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ユースポイント5の使用水量に追従して、純水製造装置(一次純水装置3)の造水量を増減させる運転を行った場合、例えば造水量が減少するとUV酸化装置による紫外線が過照射(給水のTOC負荷に対して紫外線酸化装置のUVランプの照射エネルギーが過多)となり、過酸化水素の発生量が増加する。そうすると紫外線酸化装置13の後段でイオン交換装置の出口のDOが上昇することになる。
【0011】
例えば、紫外線酸化装置13とイオン交換装置14とからなる一次純水装置3における流量変動による影響の一例を
図8に概略的に示す。
図8は、被処理水Wxを紫外線酸化装置13とイオン交換装置14とからなる一次純水装置3で処理してDO<5μg/Lの保証値の処理水Wzを得る場合であり、定常流量(100m
3/L)時と比較して低流量(50m
3/L)時では、紫外線酸化装置13で処理後の処理水WyのH
2O
2が40μg/Lと高くなり、想定していた物質収支が変化するので、イオン交換装置14の出口の処理水WzのDOが≧5μg/Lとなるおそれが生じる。すなわち、DOの保証値を満たさなくおそれがある、という問題点がある。
【0012】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、使用水量などに追従して処理水量が変動しても過酸化水素の発生を抑制可能な紫外線酸化装置を備えた純水製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的に鑑み、本発明は、処理水量が設定値に対して5流量%以上増減する被処理水中のTOC成分を処理する紫外線酸化装置を備えた純水製造装置であって、前記紫外線酸化装置の後段又は前段にH2O2の濃度に直接あるいは間接的に関連する指標を検知する検知手段を有し、この検知手段の検出値に基づいて紫外線酸化装置における紫外線の照射量を制御する制御手段を備えた、純水製造装置を提供する(発明1)。
【0014】
かかる発明(発明1)によれば、一般的にUV酸化装置におけるH2O2の発生量は、単位水量に対する紫外線ランプの照射エネルギー量に相関性があることが知られている。したがって、処理水量が減少した際に増加するH2O2の発生量を低減するためには、紫外線ランプの照射エネルギーを低減する必要がある。具体的には、純水製造装置の処理水量が5%以上減少すると、紫外線照射量がTOCに対して過剰となり、H2O2の濃度が増大する。そこで、紫外線酸化装置の後段でH2O2の濃度を検出し、この検出値に基づいて紫外線酸化装置における紫外線の+照射量を制御することで、処理水量が変動しても過酸化水素の発生を抑制することができる。
【0015】
上記発明(発明1)においては、前記検知手段が流量計であり、前記制御手段は前記流量計の流量の検出値の増減に伴い紫外線の照射量を増減するように制御する、ことが好ましい(発明2)。
【0016】
かかる発明(発明2)によれば、流量計の検出値は、紫外線処理装置の処理水量であるので、同じ紫外線照射量であれば、処理水量が減少するとH2O2の濃度は増加するので、処理水量の増減に応じて、紫外線の照射量が増減するように紫外線処理装置を制御することで、処理水量が変動しても過酸化水素の発生を抑制することができる。
【0017】
また、上記発明(発明1)においては、前記検知手段が紫外線酸化装置の後段に設けられたH2O2計または溶存水素計であり、前記制御手段は前記H2O2計または溶存水素計の検出値の増減に伴い紫外線の照射量を増減するように制御することが好ましい(発明3)。
【0018】
かかる発明(発明3)によれば、過酸化水素が増加すると、これに伴い水素が発生する。そこで、H2O2計の計測値、あるいは溶存水素計の検出値の増減に応じて、紫外線照射量も増減するように紫外線処理装置を制御することで、処理水量が変動しても過酸化水素の発生を抑制することができる。
【0019】
上記発明(発明1)においては、前記純水製造装置が紫外線酸化装置の後段にイオン交換装置を有し、前記検知手段が前記イオン交換装置の後段に設けられた溶存酸素計であり、前記制御手段は前記溶存酸素計の検出値の増減に伴い紫外線の照射量を増減するように制御することが好ましい(発明4)。
【0020】
かかる発明(発明4)によれば、H2O2がイオン交換装置を通過するとH2Oとなるとともに酸素が発生し、これに伴い溶存酸素(DO)が増加する。そこで、純水製造装置が紫外線酸化装置の後段にイオン交換装置を有する場合には、このイオン交換装置の後段に溶存酸素濃度を検出し、この溶存酸素の検出値の増減に応じて、紫外線照射量も増減するように紫外線処理装置を制御することで、処理水量が変動しても過酸化水素の発生を抑制することができる。
【0021】
上記発明(発明1)においては、前記紫外線酸化装置への単位流量当たりの電力投入量が0.01~0.3kWh/m3であり、前記紫外線酸化装置の照度の最大値を100%として30~100%の範囲でコントロール可能であることが好ましい(発明5)。
【0022】
かかる発明(発明5)によれば、照度のコントロール幅が大きい紫外線酸化装置を用いることにより、処理水量が大幅に変動する場合であってもこれに追従して紫外線酸化装置の照度を調整して過酸化水素の発生を抑制することができる。
【0023】
上記発明(発明1~5)においては、前記紫外線酸化装置の前段にTOC測定手段と流量計とを備えていてもよい(発明6)。
【0024】
上記発明(発明6)によれば、紫外線酸化装置の処理水の流量と処理水のTOC濃度とに応じて、紫外線酸化装置の紫外線の照射量をあらかじめ設定することにより、紫外線の照射量の調整量を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の紫外線酸化装置を備えた純水製造装置によれば、純水製造装置の処理水量が5%以上変動、特に5%以上減少すると、紫外線照射量がTOCに対して過剰となり、H2O2の濃度が増大するので、紫外線酸化装置の後段でH2O2の濃度を検出し、この検出値に基づいて紫外線酸化装置における紫外線の照射量を制御することができるので、処理水量が変動しても過酸化水素の発生を抑制することができる。これにより、純水製造装置での純水の造水量を大幅に変動させることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の純水装置を適用可能な超純水製造装置を示すフロー図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係る純水製造装置を概略的に示すフロー図である。
【
図3】本発明の第二の実施形態に係る純水製造装置を概略的に示すフロー図である。
【
図4】本発明の第三の実施形態に係る純水製造装置を概略的に示すフロー図である。
【
図5】本発明の第四の実施形態に係る純水製造装置を概略的に示すフロー図である。
【
図6】前記実施形態の純水製造装置における水量変動に伴うDOの変動を示す概略図である。
【
図7】紫外線酸化装置とH
2O
2の生成量との関係を示すグラフである。
【
図8】従来の純水製造装置における水量変動に伴うDOの変動を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の純水製造装置について添付図面を参照して説明する。本発明の純水製造装置は、紫外線酸化装置13の制御に特徴を有するものであり、全体構成としては、前述した
図1に示す超純水製造装置1などに適用可能であるので、以下の各実施形態においては、純水製造装置(一次純水製造装置3)の関連する構成のみを示し、その他は省略する。
【0028】
〔第一の実施形態〕
(純水製造装置)
図2は、本発明の第一の実施形態による純水製造装置を概略的に示している。本実施形態においては、紫外線酸化装置13の後段に流量計41を有するとともに、この流量計41の検出値に基づいて紫外線酸化装置13の紫外線の照射量を制御可能な制御手段(図示せず)を有する。
【0029】
本実施形態において、紫外線酸化装置13としては、複数本の紫外線ランプを1ブロックとした複数の紫外線ランプのブロックから構成されていて、制御手段により点灯するブロック数を制御するとともに各ブロックの紫外線ランプの照度を調光することにより、紫外線酸化装置13における紫外線の照射量を広い範囲で制御可能なものが好ましい。このような紫外線酸化装置13は、単位流量当たりの電力投入量が0.01~0.3kWh/m3であり、紫外線酸化装置の照度のコントロールが最大値を100%として30~100%の範囲で可能であるものが、好ましい。具体的には、1本又は2本以上の紫外線ランプからなる紫外線ランプのブロックを5ブロック集合させて装置を構成し、各ブロックの紫外線ランプの照度を30~100%の範囲で調光可能なものとすれば、点灯ブロック数は1~5ブロックであるので、紫外線の照射量の最大値に対して、6~100%の範囲で紫外線酸化装置13における紫外線照射量を調整可能な紫外線酸化装置13とすることができる。上述したような紫外線酸化装置13としては、紫外線ランプの照度と点灯ブロック数の両方を調整可能なものとして、日本フォトサイエンス社製「JPW」、「JPH」、「ZK-UV」を用いることができる。また、紫外線ランプの照度調整機能のみを有するものとして、千代田工販社製「COX」、「WOX」、「NWOX」が挙げられるが、紫外線の照射量の調整レンジが広いことから、紫外線ランプの照度と点灯ブロック数の両方を調整可能なものが好ましく、特にTOC分解性能が高い点で日本フォトサイエンス社製「JPW」、「ZK-UV」が好ましい。
【0030】
(紫外線酸化装置の制御方法)
このような純水装置において、紫外線酸化装置13の後段で流量計41により処理水量を測定し、あらかじめ設定した基準とする処理水量に対して増加したら紫外線酸化装置13における紫外線の照射量を増加し、減少したら紫外線の照射量を減少するようにフィードバック制御する。この紫外線の照射量の制御は、基準とする流量における標準的な紫外線の照射量と、処理水量の増加に伴う未分解のTOCの増加量と、処理水量の減少に伴うH2O2の発生量との関係をあらかじめ計測しておき、これらに応じて行えばよい。
【0031】
なお、本実施形態においては、流量計41は、紫外線酸化装置13の後段に設けたが、入り口側に設けてフィードフォワード制御としてもよい。さらに、前記紫外線酸化装置13の前段にTOC測定手段を設け、紫外線酸化装置13の処理水量とTOC測定手段の測定値とにより、紫外線酸化装置13の初期紫外線照射量を設定するようにしてもよい。
【0032】
〔第二の実施形態〕
(純水製造装置)
図3は、本発明の第二の実施形態による純水製造装置を概略的に示している。本実施形態においては、紫外線酸化装置13の後段にH
2O
2計42を有するとともに、このH
2O
2計42の検出値に基づいて紫外線酸化装置13の紫外線の照射量を制御可能な制御手段(図示せず)を有する。
【0033】
(紫外線酸化装置の制御方法)
このような純水装置において、紫外線酸化装置13の後段でH
2O
2計42により処理水のH
2O
2濃度を測定し、H
2O
2濃度が増加するか、あるいは増加する傾向を示したら紫外線の照射量が過剰であると判断し、紫外線酸化装置13における紫外線の照射量を減少させる。一方、H
2O
2濃度が所定のレベル以下となったら、紫外線酸化装置13における紫外線の照射量を減少させるように制御することが好ましい。これは、H
2O
2濃度があまり低いとTOCの残存が懸念されるばかりか、特に
図1に示すような超純水製造装置1においては、一次純水装置3の紫外線酸化装置13でTOCの濃度を低くしすぎると、サブシステム4の紫外線酸化装置24でTOCに対して紫外線が過剰照射となりサブシステム4においてH
2O
2を生じやすくなるからである。
【0034】
〔第三の実施形態〕
(純水製造装置)
図4は、本発明の第三の実施形態による純水製造装置を概略的に示している。本実施形態においては、紫外線酸化装置13の後段に溶存水素(DH)計43を有するとともに、このDH計43の検出値に基づいて紫外線酸化装置13の紫外線の照射量を制御可能な制御手段(図示せず)を有する。これは、H
2O
2が発生すると、下記式(2)
2H
2O → H
2O
2+H
2 ・・・(2)
により、水素(H
2)が発生し、溶存水素(DH)も増加するからである。
【0035】
(紫外線酸化装置の制御方法)
このような純水装置において、紫外線酸化装置13の後段でDH計43により処理水の溶存水素濃度を測定し、溶存水素濃度が増加するか、あるいは増加する傾向を示したら紫外線の照射量が過剰であると判断し、紫外線酸化装置13における紫外線の照射量を減少させる。一方、溶存水素濃度が所定のレベル以下となったら、紫外線酸化装置13における紫外線の照射量を減少させるように制御することが好ましい。これは、溶存水素濃度があまり低いとTOCの残存が懸念されるばかりか、特に
図1に示すような超純水製造装置1においては、一次純水装置3の紫外線酸化装置13でTOCの濃度を低くしすぎると、サブシステム4の紫外線酸化装置24でTOCに対して紫外線が過剰照射となりサブシステム4においてH
2O
2を生じやすくなるからである。
【0036】
〔第四の実施形態〕
(純水製造装置)
図5は、本発明の第四の実施形態による純水製造装置を概略的に示している。本実施形態においては、紫外線酸化装置13の後段に設けられたイオン交換装置14の後段に溶存酸素(DO)計44を有するとともに、このDO計44の検出値に基づいて紫外線酸化装置13の紫外線の照射量を制御可能な制御手段(図示せず)を有する。これは、H
2O
2が発生すると、イオン交換装置14において、下記式(3)
2H
2O
2 → 2H
2O+O
2 ・・・(3)
により、酸素が発し、溶存酸素(DO)が増加するからである。
【0037】
(紫外線酸化装置の制御方法)
このような純水装置において、イオン交換装置14の後段でDO計44により処理水の溶存酸素濃度を測定し、溶存酸素濃度が増加する、もしくは増加する傾向を示したら紫外線の照射量が過剰であると判断し、紫外線酸化装置13における紫外線の照射量を減少させる。一方、溶存酸素濃度が所定のレベル以下となったら、紫外線酸化装置13における紫外線の照射量を減少させるように制御することが好ましい。
【0038】
上述した第一の実施形態~第四の実施形態のように紫外線酸化装置13の制御を行った場合の流量変動の影響の一例を
図6に概略的に示す。この
図6は、前述した
図8と同様に紫外線酸化装置13とイオン交換装置14とで被処理水Wxを処理してDO<5μg/LのDO<5μg/Lの保証値の処理水Wzを得る場合であり、低流量(50m
3/h)時に紫外線酸化装置13の紫外線照射量を調整することにより、紫外線酸化装置13で処理後の処理水WyのH
2O
2を20μg/Lと低く維持することができ、物質収支の変動の影響が少ないので、イオン交換装置14の出口の処理水WzのDOが<5μg/Lとなり、DOの保証値を満たすようになる。なお、低流量時には、イオン交換装置14においてSVが低下するのでDOは上昇するが、DOは<5μg/Lを維持できる。
【0039】
以上、本発明について、前記各実施形態に基づき説明してきたが、本発明は前記実施形態に限らず種々の変形実施が可能である。例えば、第四の実施形態において、イオン交換装置14に過酸化水素が流入すると、イオン交換樹脂が分解してTOCが生じるので、イオン交換装置14の後段にTOC計を設けて、このイオン交換装置14のTOC計の検出値に基づいて紫外線酸化装置13の紫外線の照射量を制御してもよい。また、
図1に示すような超純水製造装置1においては、サブシステム4の紫外線酸化装置24を同様に制御してもよく、さらには一次純水装置3の紫外線酸化装置13の紫外線の照射量と、サブシステム4の紫外線酸化装置24の照射量とを、連携して制御するようにしてもよい。
【実施例0040】
以下、具体的実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
【0041】
〔紫外線酸化装置の制御による過酸化水素の生成量の確認試験〕
(実施例1~3)
超純水(抵抗率:18.1MΩ・cm以上、TOC:<1μg/L、H2O2:<5μg/L、DO:<5μg/L、DH:<0.01μg/L)を用意し、この超純水に、TOC成分をそれぞれ10μg/L、20μg/L、50μg/Lをそれぞれ添加して試験用給水(それぞれ実施例1~3)とした。
【0042】
紫外線酸化装置として、日本フォトサイエンス社製「JPW」を用意した。この紫外線酸化装置は、紫外線ランプの点灯ブロック数が5ブロックで点灯ブロック数を調整可能となっており、各ブロックの紫外線ランプの照度を30~100%に調整可能な性能を備えている。
【0043】
この試験用給水を所定の流量で紫外線酸化装置に供給して、紫外線照射量を調節してTOCの分解処理を行い、処理後の過酸化水素の発生量をそれぞれ測定した。結果を
図7に示す。この際、紫外線照射量の調節は、点灯ブロック数を1,3,5ブロック(ランプ点灯割合20%、60%,100%)にそれぞれ変更するとともに、照度の調光率を30,50,70,100%にそれぞれ変更して両者の組み合わせにより行った。
【0044】
図7から明らかなとおり、実施例1~3では、紫外線の照射量を変動させることにより、過酸化水素(H
2O
2)の生成量が比例で変化している。そして、この紫外線の照射量を調整することにより、過酸化水素(H
2O
2)の生成量を約10μg/L以下に抑制することができることがわかる。
前記純水製造装置が紫外線酸化装置の後段にイオン交換装置を有し、前記検知手段が前記イオン交換装置の後段に設けられた溶存酸素計であり、前記制御手段は前記溶存酸素計が検出した溶存酸素濃度が増加するか、あるいは増加する傾向を示したら前記紫外線の照射量が過剰であると判断し、前記紫外線の照射量を減少させるように制御する、請求項1に記載の純水製造装置。