(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058437
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】ディスプレイ用ガラス
(51)【国際特許分類】
C03B 33/02 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
C03B33/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165791
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 渉
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 俊範
(72)【発明者】
【氏名】清水 将伍
【テーマコード(参考)】
4G015
【Fターム(参考)】
4G015FA01
4G015FA04
4G015FB02
4G015FC01
4G015FC14
(57)【要約】
【課題】製造ラインを汚染することなく、またガラス板に対して識別コードを別途付与せずとも、個体の識別が可能なディスプレイ用ガラスの提供を目的とする。
【解決手段】平面視において矩形状であり、相互に対向する第1の主面及び第2の主面と、前記第1の主面及び前記第2の主面を接続する4つの端面とを有するディスプレイ用ガラスであって、前記端面のうち少なくとも1面におけるリブマークの厚さのばらつきが、標準偏差をσとしたときに、3σで1μm以上10μm未満であるディスプレイ用ガラスである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視において矩形状であり、相互に対向する第1の主面及び第2の主面と、前記第1の主面及び前記第2の主面を接続する4つの端面とを有するディスプレイ用ガラスであって、
前記端面のうち少なくとも1面におけるリブマークの厚さのばらつきが、標準偏差をσとしたときに、3σで1μm以上10μm未満であるディスプレイ用ガラス。
【請求項2】
前記3σは、前記端面の幅方向の両端部、及び前記端面を幅方向に(K-1)等分する(K-2)箇所で測定したリブマークの厚さに基づいて算出する、請求項1に記載のディスプレイ用ガラス。Kは3以上の自然数を表す。
【請求項3】
前記Kは100である、請求項2に記載のディスプレイ用ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ用ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
FPD(Flat Panel Display)用ガラス板、特に液晶用ガラスに用いられるガラス板の製造方法として、特許文献1に記載されたフロート法と称される製法が知られている。このフロート法は、溶融錫浴内の錫上に溶融ガラスを流し込み、溶融ガラスを錫上で広げてガラスリボンをつくり、最終的に所定の板厚に成形する製法である。溶融錫浴で成形されたガラスリボンは、溶融錫浴の下流側に設置された徐冷部に引き出され、所定の温度まで冷却された後、ローラコンベア等の搬送手段により切断装置に連続搬送されて所望サイズのガラス板に切断される。ここで、切断後の各ガラス板は、品種、品質等の管理のために識別可能であることが求められる。
特許文献2には、切断工程後のガラス板に対して、耐熱性材料を用いて識別コードを付与し、ガラス板を識別する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-277131号公報
【特許文献2】特開2009-132572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載の方法は、ガラス板の製造プロセス中に識別コードを付与する工程を要する。しかしながら、生産性の観点からは当該工程を経ずとも、切断後の各ガラス板が、識別可能であることが望ましい。さらに、識別コードとして用いられる耐熱性材料に起因する製造ラインの汚染によって、ディスプレイ用ガラスの品質の劣化が懸念される。
【0005】
本発明は、上述の状況に鑑みてなされたものであって、製造ラインを汚染することなく、またガラス板に対して識別コードを別途付与せずとも、個体の識別が可能なディスプレイ用ガラスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態(以降、単に「一実施形態」とも称する。)に係るディスプレイ用ガラスは、平面視において矩形状であり、相互に対向する第1の主面及び第2の主面と、前記第1の主面および前記第2の主面を接続する4つの端面とを有し、前記端面のうち少なくとも1面におけるリブマークの厚さのばらつきが、標準偏差をσとしたときに、3σで1μm以上10μm未満であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、製造ラインを汚染することなく、またガラス板に対して識別コードを別途付与せずとも、個体の識別が可能なディスプレイ用ガラスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態に係るディスプレイ用ガラスの平面図である。
【
図2】
図2は本発明の一実施形態に係るディスプレイ用ガラスの端面を示す図である。
【
図3】
図3は端面のリブマークの画像から、識別に用いるデータセットを取得する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施できる。
【0010】
(ディスプレイ用ガラス)
図1は本発明の一実施形態に係るディスプレイ用ガラスの平面図である。ディスプレイ用ガラス100は平面視で矩形状であり、第1の主面111及び当該第1の主面111に対向する第2の主面112と、第1の主面及び第2の主面を接続する4つの端面121を有している。
【0011】
図2は本発明の一実施形態に係るディスプレイ用ガラス100の端面121を示す図である。一実施形態に係るディスプレイ用ガラス100の少なくとも一つの端面121には、
図2に示すように、リブマーク122が形成されている。詳細は後述するが、リブマークとは、切断後のガラス板の端面に形成される模様のことである。従って、リブマーク122が形成されている端面121は、ディスプレイ用ガラス100の切断面に相当する。
【0012】
ここで、ディスプレイ用ガラス100は、例えば液晶パネルに組み込まれる前の中間製品としてのガラス板に相当し、いわゆる素板と呼ばれる製造物である。中間製品であるディスプレイ用ガラス100は、その後の生産工程における品種、品質等の管理のために識別可能であることが求められる。
【0013】
上述の課題に対して、従来は耐熱性材料を用いた識別コードを、ガラス板に別途付与する方法が知られていた。しかしながら、生産性の観点や製造ラインの汚染を抑制する観点からは、識別コードを別途付与せずとも、ディスプレイ用ガラス100が識別可能であることが望ましい。このような状況に鑑みて、本発明者が鋭意検討したところ、ディスプレイ用ガラス100の4つの端面121のうち、少なくとも1面におけるリブマークの厚さのばらつきが、標準偏差をσとしたときに、3σで1μm以上10μm未満であれば、リブマークの形状に基づいて、ディスプレイ用ガラス100の識別が可能となることを見出した。
【0014】
なお、ディスプレイ用ガラス100の端面を研削または研磨することにより、リブマークは消失し得るが、リブマークが消失するまでの間はリブマークの形状に基づいてディスプレイ用ガラス100の識別が可能である。以下、詳細を説明する。
【0015】
ガラス板を切断する方法として、スクライブホイールによってガラス板表面に切線を形成し、当該切線を中心に曲げる方法が知られている。リブマーク122は、ガラス板表面に切線を形成する際に、スクライブホイールがガラス板表面に押圧されることによって切線の直下に形成される。
【0016】
リブマーク122の形状は、ガラス板表面に切線を形成する際の、スクライブホイールの刃先角度、スクライブホイールへの荷重、移動速度、スクライブホイールとガラス板との接触角度、ガラスリボンのうねり、ガラスリボンの表面圧縮応力の状態などの複合的な要因によって決定される。通常、当業者であれば端面強度の低下や、切断後のハマ欠けやカレットの発生などを防止するため、均一なリブマークの厚さが形成されるように努めるところ、本発明者はあえてリブマークの厚さにばらつきを生じさせることで、リブマークの形状に基づいてディスプレイ用ガラスの識別が可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0017】
具体的には次のような方法で、リブマーク122の形状に基づいて、ディスプレイ用ガラス100の識別を行うことができる。
【0018】
まず、ディスプレイ用ガラス100の、端面121におけるリブマークの形状を、カメラで撮影し、画像データを取得する。前記カメラとしては、マシンビジョンカメラが使用できる。前記マシンビジョンカメラに使われる撮像素子は特に限定されないが、感度が高く画素が多いCCDイメージセンサであることが好ましい。
【0019】
なお、前記カメラの一視野に端面121全体におけるリブマークの形状がおさまらない場合、前記カメラとディスプレイ用ガラスとを相対的に移動させ、一定間隔毎に端面121の一部を撮影し、得られた複数の画像データを合成して一の画像データとすればよい。
【0020】
ここで、端面121におけるリブマークの形状とは、
図2において、斜線領域の外形輪郭線に相当する。画像データからリブマークの形状を特定する方法は任意であるが、例えば、取得した画像データの輝度のコントラストに基づいて特定できる。また、得られた画像データを二値化処理した後に、二値化処理後の画像データの輝度のコントラストに基づいてリブマークの形状を特定してもよい。
【0021】
次に、特定したリブマークの形状に基づいて、端面121の幅方向の両端部123、及び端面121を幅方向に(N-1)等分する(N-2)箇所で、リブマークの厚さDを測定する。すなわち、
図3に示すように、等間隔Xで合計N箇所のリブマークの厚さ(D1、D2、D3、D4、・・・、DN-2、DN-1、DN)を測定することとなる。この場合、端面121の幅方向の長さをWとすると、Xは当然、Wを(N-1)で除した値となる。ここで、Nは3以上の自然数である。
【0022】
これにより、測定箇所と、当該測定箇所におけるリブマークの厚さDとの組み合わせからなるN個のデータの集合(以下、「データセット」ともいう)が得られる。当該データセットはコンピュータ等の記憶手段に記憶される。
【0023】
ディスプレイ用ガラス100の識別は、取得されたデータセットに基づいて行われる。具体的には、一のデータセットと他のデータセットとを比較し、それぞれのデータセットを構成するN個のデータが全て一致する場合には同一のディスプレイ用ガラスであると判断し、それぞれのデータセットを構成するデータに1つでも不一致が存在する場合には、同一のディスプレイ用ガラスでないと判断する。
【0024】
測定箇所の総数Nが少ないほど識別に要する処理時間を短縮できるため、Nは50以下が好ましく、25以下がより好ましく、10以下がさらに好ましい。
【0025】
以上の方法により、端面121のリブマークの形状に基づいて、各ディスプレイ用ガラス100を識別できる。しかしながら、上述の方法で識別を行う場合、異なるディスプレイ用ガラスであるにも関わらず、それぞれのデータセットを構成するデータが完全に一致した際には、同一のディスプレイ用ガラスであると誤判断される懸念がある。
【0026】
そこで、本発明者は実験によって、端面121のリブマーク122の厚さのばらつきをあえて生じさせ、リブマークの厚さDのばらつきが、標準偏差をσとしたときに、3σで1μm以上であれば、このような誤判断を抑制でき、精度よくディスプレイ用ガラス100を識別できることを見出した。
【0027】
なお、識別精度をさらに向上する観点から、3σは1.5μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、2.5μm以上がさらに好ましい。
【0028】
3σは、例えば次のような方法で測定することができる。前記端面の幅方向の両端部、及び前記端面を幅方向に(K-1)等分する(K-2)箇所で、リブマークの厚さDを測定する。すなわち、
図4に示すように等間隔X’で合計K箇所のリブマークの厚さ(D1、D2、D3、D4、・・・、DK-2、DK-1、DK)が測定されることとなる。その後、K箇所のリブマークの厚さDの測定結果に基づいて、リブマークの厚さDの標準偏差(σ)を算出した後に、3σを算出する。ここで、Kは3以上の自然数である。
【0029】
このとき、リブマークの厚さDの測定箇所の総数Kは任意であるが、リブマークの厚さのばらつきの正確度を向上させる観点から、100点以上が好ましく、200点以上がより好ましく、300点以上がさらに好ましい。
【0030】
ディスプレイ用ガラス100が、3σで1μm以上のリブマークの厚さDのばらつきを有することによって、識別可能となることを見出した。詳細な経緯を以下に説明する。
【0031】
最初に、上述の誤判断が生じる要因について述べる。誤判断は、異なるディスプレイ用ガラス同士で、リブマークの厚さDの平均値が一致もしくは、略一致するような場合において、発生し得る。ここで、リブマークの厚さDの平均値とは、上述のK箇所におけるリブマークの厚さDの測定結果に基づいて算出されたものとする。
【0032】
リブマークの厚さDの平均値は、スクライブホイールの荷重の影響を受けて決定されるため、異なる荷重によって切線が形成されたディスプレイ用ガラス同士であれば、誤判断のリスクは極めて低い。
【0033】
しかしながら、一般的に生産性を向上する観点やガラス切断面の品質の観点から、スクライブホイールの荷重は、製造工程において一定とされている。このため、リブマークの厚さDの平均値が一致、もしくは、略一致したディスプレイ用ガラスは、製造工程において生じ得る。このとき、上述の方法によって識別を実施すると、誤判断が発生する可能性がある。
【0034】
従って、リブマークの厚さDの平均値が一致、もしくは、略一致したディスプレイ用ガラス同士であっても、個々の測定箇所でリブマークの厚さDを測定し、その結果によって十分に識別が可能となるような、リブマークの厚さDに関する特徴を見出す必要があった。
【0035】
以上を鑑みると、リブマークの厚さDが、平均値から十分なばらつきを有していれば、上述の方法に基づいて識別を実施した際に、データセットを構成するN個のデータが全て一致する可能性を低減できると考えられる。
【0036】
そこで、本発明者は実験によって、ディスプレイ用ガラス100が、3σで1μm以上のリブマークの厚さDのばらつきを有することによって、異なるディスプレイ用ガラス同士で、リブマークの厚さDの平均値が一致、もしくは、略一致する場合においても、十分に識別が可能であることを見出した。このとき、識別に用いるリブマークの厚さDの測定箇所の総数Nは、上述の好ましい数以下であっても十分に識別をすることが可能である。
【0037】
一方で、3σが1μm未満である場合は、リブマークの厚さDが、端面全体にわたって平均値に近い値となるため、異なるディスプレイ用ガラス同士で、リブマークの厚さDの平均値が一致、もしくは、略一致する場合においては、データセットを構成するデータが一致しする可能性が高くなり、十分な精度で識別を実施できないことが分かった。
【0038】
また、ディスプレイ用ガラスの端面強度の低下を抑制する観点から、3σは10μm未満であり、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2.5μm以下がさらに好ましい。3σが10μm以上の場合、十分な端面強度を得ることができない。
【0039】
ディスプレイ用ガラス100の厚さは、0.3mm~0.7mmの範囲であることが好ましい。厚さがこのような範囲にあることにより、薄型の液晶パネルを容易に製造することができる。
【0040】
ディスプレイ用ガラス100のサイズは、450mm×1450mm以上であることが好ましく、1850mm×1500mm以上であることがより好ましく、2250mm×1950mm以上であることがさらに好ましく、2500mm×2200mm以上であることがさらにより好ましく、3400mm×2800mm以上であることが特に好ましい。
【0041】
(ディスプレイ用ガラスの製造方法)
次に、ディスプレイ用ガラス100の製造方法の一実施形態を説明する。ディスプレイ用ガラス100を製造する場合、ガラス原料を加熱して溶融ガラスを得る熔解工程、溶融ガラスから泡を除く清澄工程、溶融ガラスを板状にして、一定の厚みと幅を有するガラスリボンを得る成形工程、ガラスリボンを室温状態まで徐冷する徐冷工程、ガラスリボンを所望の寸法に切断する切断工程を経て得ることができる。
【0042】
溶解工程は、目標とするディスプレイ用ガラス100の組成となるように原料を調整し、原料を溶解炉に連続的に投入し、加熱することによって溶融ガラスを得る。
【0043】
次の清澄工程は、上記溶解工程で得られた溶融ガラスから泡を除く工程である。清澄工程としては、減圧による脱泡法を適用してもよく、原料の溶解温度より高温とすることで脱泡してもよい。
【0044】
次の成形工程は、上記清澄工程で泡を除いた溶融ガラスを板状にしてガラスリボンを得る工程である。成形工程としては、溶融ガラスをスズ等の溶融金属上に流して板状にしてガラスリボンを得るフロート法、溶融ガラスを樋状の部材から下方に流下させるオーバーフローダウンドロー法(フュージョン法)、スリッ卜から流下させるスリッ卜ダウンドロー法等、公知のガラスを板状に成形する方法を適用することができる。
【0045】
次の徐冷工程は、上記成形工程で得られたガラスリボンを室温状態まで制御された冷却条件にて冷却する工程である。
【0046】
次の切断工程は、ガラスリボンを所望の寸法に切断する工程である。具体的には、スクライブホイールを、ガラスリボン表面に荷重をかけながら移動させて切線を形成し、当該切線に曲げ応力を加えることによって切断する。
【0047】
スクライブホイールの設定荷重は、任意であるが、500~1200gfの範囲にあることが好ましい。上述の範囲において、ガラスリボンの厚さに応じて、適宜設定することができる。
【0048】
切線形成時のスクライブホイールの移動速度は、任意であるが、25mm/sec~1500mm/secの範囲にあることが好ましい。リブマークの厚さのばらつき(3σ)は、スクライブホイールの移動速度が遅いほど減少し、移動速度が速いほど増加する。上述の範囲において、所望のリブマークの厚さのばらつきに応じて、適宜設定することができる。
【0049】
スクライブホイールとガラス板の接触角度は90度±2度以内であることが好ましい。角度が90度に近いほど、リブマークの厚さのばらつきは小さくなる傾向にある。そのため、リブマークの厚さのばらつきを大きくしたい場合、角度を90度から1度以上ずらすことが好ましい。
【実施例0050】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0051】
スクライブホイールの移動速度が25mm/sec~1500mm/sec、スクライブホイールの設定荷重が800gf、スクライブホイールとガラス板の接触角度が90度±2度以内の条件で製造された、複数枚の3400mm×3000mmのディスプレイ用ガラスにおいて、リブマークが形成された端面のうち長辺側の1面について、端面のリブマークの画像データを取得した。各ディスプレイ用ガラスにおいて、取得した画像の輝度のコントラストに基づいてリブマークの形状を特定し、端面の幅方向の両端部及び、前記端面を幅方向に99等分する98箇所においてリブマークの厚さDを測定し、合計100個のデータに基づいて、リブマークの厚さDのばらつき(3σ)を算出した。
【0052】
次に、算出した3σに基づいて、各ディスプレイ用ガラスを、以下の(A)~(E)の5つの階級に分類した。各階級に含まれるディスプレイ用ガラスは、それぞれ50個とした。
【0053】
(A)3σが0μm以上1μm未満
(B)3σが1μm以上5μm未満
(C)3σが5μm以上10μm未満
(D)3σが10μm以上15μm未満
(E)3σが15μm以上
【0054】
その後、各ディスプレイ用ガラスにおいて、特定したリブマークの形状に基づいて、面の幅方向の両端部及び、前記端面を幅方向に49等分する48箇所においてリブマークの厚さDを測定し、合計50個のデータの集合であるデータセットを取得した。
【0055】
[識別試験]
一のデータセットと他のデータセットとを比較し、データセットを構成する50個のデータが完全一致するデータセットの組が存在するか否かを試験した。完全一致するデータセットが1組以上存在した場合、識別試験は×とし、完全一致と判断されたデータセットが1組もない場合、識別試験は〇とした。
【0056】
表1の識別試験において、横軸が(A)であり、縦軸が(A)であるセルは、階級(A)に属する一のデータセットと、同じく階級(A)に属する他のデータセットを比較し、完全一致するデータセットの組が存在したか否かを調べた結果を意味する。横軸が(A)であり、縦軸が(B)であるセルは、階級(A)に属する一のデータセットと、階級(B)に属する他のデータセットとを比較したときに完全一致するデータセットの組があったか否かを調べた結果を意味する。そのため、当然、横軸が(A)であり縦軸が(B)であるセルの評価結果と、横軸が(B)であり縦軸が(A)であるセルの評価結果は同じになる。
【0057】
結果として、表1に示す通り、階級(A)の中で、完全一致するデータセットが1組以上あったが、階級(B)~(E)においては、同一階級の中での比較及び、別階級との比較においても、完全一致するデータセットは1組も無かった。
【0058】
[端面強度試験]
階級(A)において、無作為に10枚のディスプレイ用ガラスを抽出し、JIS R1601:2008に準拠した4点曲げ試験によって端面強度試験を実施し、平均値を算出した。試験の結果、端面強度の平均値が100MPa以上の場合には端面強度は〇とし、100MPa未満の場合には端面強度は×とした。階級(B)~(E)についても同様に行った。結果として、(D)及び(E)は×であり、(A)~(C)は〇であった。
【0059】
【0060】
以上より、階級(A)は、端面強度は良好であったものの、識別試験の結果は×であることが分かる。階級(B)及び階級(C)は識別試験、端面強度ともに良好な結果であることが分かる。階級(D)及び階級(E)は識別試験の結果は〇であったものの、端面強度は低下していることが分かる。