(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058554
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】ゲノム編集方法およびゲノム編集用組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20240418BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240418BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079630
(22)【出願日】2023-05-12
(62)【分割の表示】P 2022165722の分割
【原出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】503354480
【氏名又は名称】株式会社インプランタイノベーションズ
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】寺川 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】矢野 翼
(72)【発明者】
【氏名】光田 展隆
(72)【発明者】
【氏名】中村 彰良
(72)【発明者】
【氏名】菅野 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】牧野 洋一
(57)【要約】 (修正有)
【課題】真核細胞ゲノム内の新規プロトスペーサー隣接モチーフ配列を用いたゲノム編集の方法を提供する。
【解決手段】真核細胞のゲノム内の標的DNA配列を部位特異的に改変するための方法であって、前記真核細胞中に、(1)塩基配列5’-NNACNN-3’(ここで「N」は各々、アデニン、シトシン、チミン、およびグアニンから独立して選択される任意の1塩基を意味する)を含むプロトスペーサー隣接モチーフ配列を認識するCasタンパク質、または、該Casタンパク質をコードする核酸、および、(2)ゲノム内の前記標的DNA配列にハイブリダイズし前記Casタンパク質と複合体を形成し、該複合体の標的DNA配列への配列特異的結合を指向することが可能なガイドRNA、または、該ガイドRNAをコードする核酸を導入することにより、前記真核細胞のゲノムを標的DNA配列において改変することを含む方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真核細胞のゲノム内の標的DNA配列を部位特異的に改変するための方法であって、
前記真核細胞中に、
(1)配列番号1に記載の塩基配列5’-NNACNN-3’(ここで「N」は各々、アデニン、シトシン、チミン、およびグアニンから独立して選択される任意の1塩基を意味する。)を含むPAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)配列を認識するCasタンパク質、または、当該Casタンパク質をコードする核酸、および、
(2)ゲノム内の前記標的DNA配列にハイブリダイズし得ると共に、前記Casタンパク質と複合体を形成し、前記複合体の前記標的DNA配列への配列特異的結合を指向することが可能なガイドRNA、または、当該ガイドRNAをコードする核酸
を導入することにより、前記真核細胞のゲノムを前記標的DNA配列において改変することを含む方法。
【請求項2】
前記Casタンパク質が、アビシコッカス(Abyssicoccus)属菌、好ましくはアビシコッカス・アルバス(Abyssicoccus albus)に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Casタンパク質が、核局在化シグナル(NLS)を含む、請求項1または2に記載の方法
【請求項4】
前記Casタンパク質が、配列番号4に記載のアミノ酸配列と80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は92%以上、又は95%以上、又は96%以上、又は97%以上、又は98%以上、又は99%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記Casタンパク質が、エンドヌクレアーゼ活性を有する、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記PAM配列が、配列番号2に記載の塩基配列5’-NNACGN-3’または配列番号3に記載の塩基配列5’-NNACAN-3’を含む、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ガイドRNAが、1本鎖ガイドRNA(sgRNA)であると共に、crRNAおよびtracrRNAを含む、請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記crRNAが、標的DNA相補鎖と二本鎖を形成することが可能な15~30ヌクレオチド長のスペーサー配列を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記crRNAが、12~36ヌクレオチド長のステムループを含む、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記真核細胞が、動物細胞、植物細胞、又は微生物細胞である、請求項1~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記Casタンパク質をコードする核酸のヌクレオチド配列が、動物細胞、植物細胞、又は微生物細胞における発現のためにコドン最適化されている、請求項1~10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一項に記載の方法に使用するためのゲノム編集用組成物であって、前記のCasタンパク質、または、当該Casタンパク質をコードする核酸を含む組成物。
【請求項13】
前記のガイドRNA、または、当該ガイドRNAをコードする核酸を更に含む、請求項12に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子工学の分野に関し、さらに詳細にはゲノム編集の分野に関する。より具体的に、本発明は、真核細胞のゲノム内の標的DNA配列を部位特異的に改変するための新たなゲノム編集方法および当該方法に用いられるゲノム編集用組成物等のゲノム編集手段に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲノム編集技術として、部位特異的DNA修飾タンパク質を利用することが知られている。中でも近年では、CRISPR/Cas(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats-CRISPR associated proteins)システムをゲノム編集に応用する技術が盛んに開発され、利用されている。CRISPR/CasシステムにはI型、II型、およびIII型があるが、ゲノム編集で最も多く用いられているのはII型である。II型CRISPR/Casシステムでは、RNA誘導型ヌクレアーゼ(RNA-guided nuclease:RGN)RGNとして、Cas9と呼ばれるヌクレアーゼを用いる。Cas9は様々な真核細胞(例えば魚、植物、ヒト等)のゲノムを操作するのに使用されてきた(非特許文献1)。Cas9は、一般的にはガイドRNAとの複合体として用いられる。Cas9とガイドRNAとの複合体を細胞内に導入することにより、様々な動植物において標的遺伝子を変異させることができる。Cas9は、CRISPR RNA(crRNA)およびトランス活性化crRNA(tracrRNA)と呼ばれる2つのRNAと複合体を形成することにより、活性を有するエンドヌクレアーゼとして機能し、侵入したファージまたはプラスミド中の外来遺伝因子を切断する。このように、CRISPR/Casシステムは、標的DNA配列と相同な配列を有する短いsgRNAを合成するだけで利用可能である上に、特にII型CRISPR/Casシステムでは、単一のタンパク質であるCas9を用いてゲノム編集が可能であるという利点がある。
【0003】
Cas9は、DNA中のPAM(プロトスペーサー隣接モチーフ:protospacer adjacent motif)配列を認識し、その上流で二本鎖DNAを平滑末端になるように切断する。Cas9が認識するPAM配列の長さや塩基配列は、Cas9が由来する細菌種によってさまざまである。例えば、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のCas9(略称SpyCas9)は、5’-NGG-3’という3つの塩基をPAM配列として認識するため、グアニンが2つ並んだ配列の上流を切断できる(特許文献1)(なお、別途明記しない限り、本明細書における塩基配列中の「N」は任意の塩基を表す。)。また、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)は2種類のCas9を有し、それぞれ5’-NGGNG-3’又は5’-NNAGAA-3’という5~6塩基の配列をPAM配列として認識する(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/093661号
【特許文献2】特表2015-510778号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Charpentier and Doudna, Nature, 2013, 495:50-51
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、CRISPR/Casシステムは優れたゲノム編集手段ではあるが、その汎用性を高めるために、認識可能なPAM配列の多様化が求められている。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、その目的は、真核細胞ゲノム内の新たなPAM配列を認識して当該ゲノムを部位特異的に改変することが可能な、新たなゲノム編集手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前述の課題解決のために鋭意検討を行なった結果、5’-NNACNN-3’を含む新たなPAM配列を認識するCasタンパク質を見出し、斯かるCasタンパク質をガイドRNAと共に、標的DNA配列をゲノム内に含む真核細胞内で発現させることで、新たな標的DNA配列に基づく真核細胞ゲノムの部位特異的な改変が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下を包含する。
[項1]真核細胞のゲノム内の標的DNA配列を部位特異的に改変するための方法であって、
前記真核細胞中に、
(1)配列番号1に記載の塩基配列5’-NNACNN-3’(ここで「N」は各々、アデニン、シトシン、チミン、およびグアニンから独立して選択される任意の1塩基を意味する。)を含むPAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)配列を認識するCasタンパク質、または、当該Casタンパク質をコードする核酸、および、
(2)ゲノム内の前記標的DNA配列にハイブリダイズし得ると共に、前記Casタンパク質と複合体を形成し、前記複合体の前記標的DNA配列への配列特異的結合を指向することが可能なガイドRNA、または、当該ガイドRNAをコードする核酸
を導入することにより、前記真核細胞のゲノムを前記標的DNA配列において改変することを含む方法。
[項2]前記Casタンパク質が、アビシコッカス(Abyssicoccus)属菌、好ましくはアビシコッカス・アルバス(Abyssicoccus albus)に由来する、項1に記載の方法。
[項3]前記Casタンパク質が、核局在化シグナル(NLS)を含む、項1または2に記載の方法
[項4]前記Casタンパク質が、配列番号4に記載のアミノ酸配列と80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は92%以上、又は95%以上、又は96%以上、又は97%以上、又は98%以上、又は99%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を含む、項1~3の何れか一項に記載の方法。
[項5]前記Casタンパク質が、エンドヌクレアーゼ活性を有する、項1~4の何れか一項に記載の方法。
[項6]前記PAM配列が、配列番号2に記載の塩基配列5’-NNACGN-3’または配列番号3に記載の塩基配列5’-NNACAN-3’を含む、項1~5の何れか一項に記載の方法。
[項7]前記ガイドRNAが、1本鎖ガイドRNA(sgRNA)であると共に、crRNAおよびtracrRNAを含む、項1~6の何れか一項に記載の方法。
[項8]前記crRNAが、標的DNA相補鎖と二本鎖を形成することが可能な15~30ヌクレオチド長のスペーサー配列を含む、項7に記載の方法。
[項9]前記crRNAが、12~36ヌクレオチド長のステムループを含む、項7又は8に記載の方法。
[項10]前記真核細胞が、動物細胞、植物細胞、又は微生物細胞である、項1~9の何れか一項に記載の方法。
[項11]前記Casタンパク質をコードする核酸のヌクレオチド配列が、動物細胞、植物細胞、又は微生物細胞における発現のためにコドン最適化されている、項1~10の何れか一項に記載の方法。
[項12]項1~11の何れか一項に記載の方法に使用するためのゲノム編集用組成物であって、前記のCasタンパク質、または、当該Casタンパク質をコードする核酸を含む組成物。
[項13]前記のガイドRNA、または、当該ガイドRNAをコードする核酸を更に含む、項12に記載の組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明のゲノム編集方法によれば、5’-NNACNN-3’を含む新たなPAM配列を認識するCasタンパク質を用いることにより、新たな標的DNA配列に基づく真核細胞ゲノムの部位特異的な改変が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施例1におけるAalCas9タンパク質生産用ベクターの構成を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施例2及び実施例3におけるsgRNAの塩基配列(配列番号23)及び構成を示す図である。
【
図3】
図3は、実施例2におけるPAMドメインの解析結果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、実施例3におけるインビトロDNA切断アッセイによる反応産物の電気泳動結果の例を示す写真である。左の写真は、反応溶液を25℃で60分間インキュベートした場合の結果を、右の写真は、反応溶液を37℃で60分間インキュベートした場合の結果をそれぞれ示している。
【
図5】
図5A及びBは、実施例3におけるインビトロDNA切断アッセイによるAalCas9活性の経時変化を示すグラフである。
図5Aのグラフは、反応溶液を25℃でインキュベートした場合の結果を、
図5Bのグラフは、反応溶液を37℃でインキュベートした場合の結果をそれぞれ示す。
【
図6】
図6A及びBは、実施例4におけるAalCas9によるシロイヌナズナプロトプラスト細胞のゲノムDNA編集結果を示す図である。
図6Aは、標的DNA毎の編集率を、
図6Bは、次世代シーケンサーによる変異DNAをそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体的な実施の形態に即して詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
【0013】
なお、本発明において引用される特許文献(特許出願公開公報および特許公報等)並びに非特許文献は、その全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれるものとする。
【0014】
また、本発明において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味を有する。
【0015】
また、以下に説明するタンパク質または遺伝子のうち、公知のタンパク質または遺伝子の各配列に関する情報は、NCBI(国立バイオテクノロジー情報センター)のGenBankなどのよく知られたデータベースにおいて見出すことができる。
【0016】
また、別途記載する場合を除き、本明細書において、塩基配列中の「A」はアデニン、「G」はグアニン、「C」はシトシン、「T」はチミンをそれぞれ意味し、「N」は、アデニン、シトシン、チミン、およびグアニンからなる群から選択された任意の1塩基を意味する。
【0017】
・ゲノム編集方法:
本発明の一側面は、真核細胞のゲノム内の標的DNA配列を部位特異的に改変するためのゲノム編集方法(以下適宜「本発明のゲノム編集方法」又は「本発明の方法」と略称する。)に関する。本方法は、真核細胞中に、
(1)特定のPAM配列を認識するCasタンパク質、または、当該Casタンパク質をコードする核酸、および、
(2)ガイドRNA、または、当該ガイドRNAをコードする核酸
を導入することにより、前記真核細胞のゲノムを前記標的DNA配列において改変することを含むことを主な特徴とする。
【0018】
・細胞:
本明細書において、細胞は、原核細胞または真核細胞のいずれの細胞であってもよく、特に限定されないが、好ましくは真核細胞が使用される。原核細胞の例としては、細菌、古細菌が挙げられる。真核細胞の例としては、微生物細胞、植物細胞、動物細胞が挙げられる。微生物細胞としては、酵母、真菌、原生動物等の各種微生物に由来する細胞が挙げられる。植物細胞としては、種子植物、シダ・コケ類、藻類等の各種植物に由来する細胞が挙げられる。動物細胞としては、脊椎動物(哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類等)、節足動物(昆虫等)、軟体動物等の各種動物に由来する細胞が挙げられる。特に哺乳動物細胞の具体例としては、CHO細胞、HeLa細胞、HEK293細胞、COS-1細胞等が挙げられる。細胞の態様も特に制限されず、生体内(インビボ)細胞、培養細胞(インビトロ)、初代培養細胞(インビトロおよびエクスビボ)、移植細胞等の何れの態様であってもよい。斯かる各種の細胞は、当該技術分野において一般的に使用される。
【0019】
・ゲノム編集:
本明細書において「ゲノム編集」とは、部位特異的DNA修飾タンパク質等を用いて、各種細胞内のゲノム上の標的部位に所望の改変を導入することにより、ゲノムを編集する技術を意味する。ここで「改変」の例としては、限定されるものではないが、ゲノム上の特定の遺伝子を切断して遺伝子を破壊すること、ゲノム上の標的部位のDNA断片を挿入又は置換すること、点変異を高効率に導入して遺伝子機能を改変すること等が挙げられる。ここで「標的部位」とは、ゲノム編集の対象となる真核細胞のゲノム内の所定の部位を意味する。ここで「切断」とは、ヌクレオチド分子の共有結合性の主鎖の切断を指す。
【0020】
ゲノム編集の標的部位は、後述する部位特異的DNA修飾タンパク質の種類に応じて適切に選択することが可能である。例えば、部位特異的DNA修飾タンパク質としてCasタンパク質の一種であるCas9を使用する場合、ゲノム編集の標的部位としては、PAM配列およびその5’側に隣接する所定塩基長(例えば20塩基程度)の配列からなるDNA鎖(標的鎖)とその相補DNA鎖(非標的鎖)からなる、ゲノムDNA上の部位とすることが好ましい。
【0021】
ゲノム編集の対象となるゲノム上の標的部位は特に限定されないが、例としては、真核細胞ゲノム上の遺伝子であって、その改変や破壊等が望まれる遺伝子の一部又は全部、或いはその遺伝子と重複又は隣接する領域等が挙げられる。
【0022】
ゲノム編集の対象となる遺伝子の具体例としては、1次代謝(アミノ酸等)関連遺伝子、2次代謝(フラボノイド、ポリフェノール等)関連遺伝子、糖代謝関連遺伝子、脂質代謝関連遺伝子、有用物質(医薬、酵素、色素、芳香成分等)生産関連遺伝子、収量性(数、大きさ等)、開花関連遺伝子、耐病虫性関連遺伝子、環境ストレス(低温、高温、乾燥、塩、光障害、紫外線)耐性関連遺伝子等が挙げられる。
【0023】
・Casタンパク質:
本明細書において「Casタンパク質」とは、細菌および古細菌において侵入外来核酸に対する獲得耐性を提供する適応免疫系を構成するCasタンパク質ファミリーに属するタンパク質であり、PAM配列を認識して、その上流又は下流で二本鎖DNAを切断する標的特異的エンドヌクレアーゼである。Casタンパク質は、RNA誘導型ヌクレアーゼ(RNA-guided nuclease:RGN)であり、ガイドRNA(gRNA)と共にCRISPR/Casシステムを構成する。該CRISPR/Casシステムを標的細胞内に導入又は構築することにより、ガイドRNAがゲノム内の標的部位に結合し、該結合部位に呼び込まれたCasタンパク質によって標的部位のDNAを切断することができる。
【0024】
本発明に使用されるCasタンパク質は、5’-NNACNN-3’(配列番号1)を含む特定のPAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)配列を認識することを特徴とする。中でも、5’-NNACGN-3’(配列番号2)または5’-NNACAN-3’(配列番号3)を含む特定のPAM配列を認識することが好ましい。
【0025】
本発明に使用されるCasタンパク質は、上記の特定のPAM配列を認識できるものであれば、その種類は限定されるものではなく、任意の種類のCasタンパク質を使用可能であるが、中でもCas9であることが好ましい。
【0026】
本発明に使用されるCasタンパク質は、天然タンパク質であってもよいが、組換えタンパク質であってもよい。
【0027】
本発明に使用されるCasタンパク質の起源(由来)は、限定されるものではないが、アビシコッカス(Abyssicoccus)属の細菌に由来するCasタンパク質が好ましく、中でもアビシコッカス・アルバス(Abyssicoccus albus)に由来するCas9であるAalCas9が好ましい。野生型AalCas9のアミノ酸配列を配列番号4に示す。
【0028】
本発明にAalCas9を使用する場合、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有する野生型AalCas9であってもよいが、その活性(例えば後述のエンドヌクレアーゼ活性)を損なわない限りにおいて、配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して1又は2以上の変異を有する、変異型AalCas9であってもよい。具体的に、斯かる変異型AalCas9は、配列番号4に記載の野生型AalCas9のアミノ酸配列に対して、1又は2以上のアミノ酸が置換、欠失、付加、又は挿入されたアミノ酸配列を有すると共に、AalCas9タンパク質と同等又はそれ以上の活性(例えば後述のエンドヌクレアーゼ活性)を有するタンパク質であることが好ましい。中でも、斯かる変異型のAalCas9タンパク質は、その親となる配列番号4に記載の野生型AalCas9のアミノ酸配列と、例えば80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は92%以上、又は95%以上、又は96%以上、又は97%以上、又は98%以上、又は99%以上の配列相同性(好ましくは配列同一性)を有するアミノ酸配列を有することが好ましい。
【0029】
ここで、2つのアミノ酸配列の「相同性」(similarity)とは、両アミノ酸配列をアラインメントした際に各対応箇所に同一のアミノ酸残基又は類似の(すなわち、物理化学的性質が類似する)アミノ酸残基が現れる比率であり、2つのアミノ酸配列の「同一性」(identity)とは、両アミノ酸配列をアラインメントした際に各対応箇所に同一のアミノ酸残基が現れる比率である。なお、2つのアミノ酸配列の「相同性」及び「同一性」は、例えばBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)プログラム(Altschul et al., J. Mol. Biol., (1990), 215(3):403-10)等を用いて求めることが可能である。
【0030】
本発明に使用されるCasタンパク質をコードする核酸は、上記Casタンパク質のアミノ酸配列に対応する塩基配列を有し、真核細胞内で上記Casタンパク質を発現することが可能な核酸であれば、制限されるものではない。斯かる核酸は、所望のCasタンパク質のアミノ酸配列情報を基に、適宜作成することが可能である。なお、当該核酸は化学合成等により作製してもよい。
【0031】
本発明に用いられるCasタンパク質をコードする核酸としては、配列番号4の野生型AalCas9をコードする核酸、及び、配列番号4の野生型AalCas9のアミノ酸配列に対して、例えば80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は95%以上、又は96%以上、又は97%以上、又は98%以上、又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸が挙げられる。例として、アビシコッカス・アルバス(Abyssicoccus albus)において配列番号4の野生型AalCas9をコードする野生型AalCas9遺伝子の塩基配列を配列番号5に示す。
【0032】
本発明に用いられるCasタンパク質をコードする核酸は、当該核酸を導入する真核細胞の翻訳系に合わせてコドンが最適化されたものであってもよい。例として、野生型AalCas9遺伝子の塩基配列を大腸菌に合わせてコドン最適化した塩基配列を配列番号6に、ヒトに合わせてコドン最適化した塩基配列を配列番号7に、シロイヌナズナに合わせてコドン最適化した塩基配列を配列番号8にそれぞれ示す。
【0033】
本発明に用いられるCasタンパク質をコードする核酸としては、上記の各種の塩基配列、例えば配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号8に記載の塩基配列に対して、例えば80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は95%以上、又は96%以上、又は97%以上、又は98%以上、又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列を含む核酸も挙げることができる。
【0034】
本発明に用いられるCasタンパク質をコードする核酸は、前記タンパク質または核酸を真核細胞において核輸送によって核中に輸送するための核局在化シグナル(NLS)配列を含むことができる。当該NLSは、Casタンパク質をコードする核酸の5’末端側または3’末端側の何れか一方のみに付加されていてもよく、あるいは5’末端側および3’末端側の両方に付加されてもよい。
【0035】
本発明に用いられるCasタンパク質をコードする核酸は、プロモーターやターミネーター等の調節配列と作用可能に連結された発現カセットの状態で、ベクターに組み込まれていてもよい。
【0036】
・エンドヌクレアーゼ活性:
本発明に用いられるCasタンパク質は、エンドヌクレアーゼ活性を有することが好ましい。本明細書において、「エンドヌクレアーゼ」とは、ヌクレオチド鎖の途中を切断する酵素を意味する。よって、本発明に用いられるエンドヌクレアーゼ活性を有するCas9タンパク質は、ガイドRNAにより誘導され、標的となるDNA鎖の途中を切断する酵素活性を有することが好ましい。
【0037】
本発明に用いられるCasタンパク質は、限定されるものではないが、例えば10℃から80℃の範囲の温度で、好ましくは20℃から50℃の範囲の温度で、さらに好ましくは25℃から40℃の範囲の温度で、標的DNAの切断または改変活性を有する。
【0038】
・PAM配列:
本発明に用いられるCasタンパク質は、特定のPAM配列を認識する。本明細書において、「PAM配列」(プロトスペーサー隣接モチーフ配列)とは、標的二本鎖ポリヌクレオチド中に存在し、Cas9タンパク質により認識可能な配列である。Casタンパク質が認識可能なPAM配列の長さや塩基配列は、Casタンパク質の種類によって異なる。
【0039】
前述のように、本発明に使用されるCasタンパク質は、5’-NNACNN-3’(配列番号1)を含む特定のPAM配列を認識する。中でも、5’-NNACGN-3’(配列番号2)または5’-NNACAN-3’(配列番号3)を含む特定のPAM配列を認識することが好ましい。
【0040】
・ガイドRNA:
ガイドRNAは、Casタンパク質等の部位特異的DNA修飾タンパク質をゲノム上の標的核酸の標的部位に誘導(ガイド)する機能を有するRNAである。部位特異的DNA修飾タンパク質は、通常は斯かるガイドRNAと結合して、リボ核タンパク質又はリボヌクレオタンパク質(RNP)を形成する。ここで、ガイドRNAがゲノム上の標的部位をターゲティングし、Casタンパク質等の部位特異的DNA修飾タンパク質がゲノム上の標的部位のDNAを開裂することで、ゲノム上の標的部位のDNA配列を変更又は改変することができる。
【0041】
ガイドRNAの構造は、通常は部位特異的DNA修飾タンパク質の種類に応じて選択される。例えば、部位特異的DNA修飾タンパク質としてCasタンパク質を使用する場合、ガイドRNAは通常、CRISPR/Casシステムの活性に関与するcrRNA(CRISPR RNA)配列と、ゲノム上の標的部位に結合するtracrRNA(trans-activating crRNA)配列とを含む。この場合、ガイドRNAは、crRNA配列とtracrRNA配列を含む一本鎖RNA(sgRNA)であってもよいし、crRNA配列を含むRNAとtracrRNA配列を含むRNAとが相補的に結合してなるRNA複合体であってもよい。
【0042】
crRNA配列は、リピート配列およびスペーサー配列を含む。スペーサー配列は、標的DNA配列の相補鎖または実質的な相補鎖(標的配列に対して完全に一致していないが、標的配列に結合できる配列)と2本鎖を形成できる配列である。crRNA配列は、斯かるスペーサー配列を含むことによって、CRISPR/Casシステムの標的認識を行うことができる。スペーサー配列の長さは、限定されるものではないが、例えば15~30ヌクレオチド長、18~25ヌクレオチド長、19~23ヌクレオチド長、20~22ヌクレオチド長、特に20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチドであることが好ましい。crRNA配列の長さは制限されないが、例えば12~36塩基長程度のステムループを含む配列とすることができる。
【0043】
tracrRNA配列は、高繰り返し領域と、その後に続く1つまたは2つ以上(好ましくは2つ以上)のヘアピン構造とを含み、複数のステムループを形成可能な配列である。tracrRNA配列の長さは制限されないが、例えば50~100塩基長程度の配列とすることができる。
【0044】
本発明に用いられるガイドRNAの構成は、ゲノム内の前記標的DNA配列にハイブリダイズし得ると共に、前記Casタンパク質と複合体を形成し、前記複合体の前記標的DNA配列への配列特異的結合を指向することが可能であれば、特に制限されない。本発明に使用されるCasタンパク質及びそれが認識するPAM配列、並びに改変の対象となる真核細胞のゲノム内の標的DNA配列等に応じて、適切に設計すればよい。斯かるガイドRNAの設計については、これまで多くの知見が存在しており(一例を挙げれば、国際公開第2013/142578号、同第2013/176772号、及び同2014/093595号等)、当業者であればこれらの知見を適宜参酌しながら、本発明に任意の変更を加えて実施することが可能である。
【0045】
ガイドRNAをコードするDNA等の核酸を用いる場合、その構成も特に制限されない。本発明に使用されるガイドRNAの配列及び構成、並びに改変の対象となる真核細胞の種類等に応じて、適切なDNAを設計すればよい。特にcrRNA配列及びtracrRNA配列を含むガイドRNAをコードするDNAを用いる場合、crRNA配列をコードするDNAとtracrRNA配列をコードするDNAとを独立した分子として用意してもよく、crRNA配列及びtracrRNA配列の両方をコードする一体のDNA分子を用いてもよい。
【0046】
なお、ガイドRNAをコードするDNA等の核酸は、Casタンパク質をコードする核酸とは独立した分子であってもよく、Casタンパク質をコードする核酸と一体の分子となっていてもよい。また、ガイドRNAをコードする核酸が単独で、或いはCasタンパク質をコードする核酸と共に、プロモーターやターミネーター等の調節配列と作用可能に連結された発現カセットの状態で、ベクターに組み込まれてもいてもよい。
【0047】
・標的DNA配列:
一般に、CRISPR/Casシステムにおける部位特異的改変の対象となる標的DNA配列は制限されず、二本鎖DNA配列、一本鎖RNA配列、または一本鎖DNA配列のいずれであってよい。但し、本発明では、真核細胞のゲノム内の二本鎖DNA配列が標的配列となる。中でも通常は、ゲノム内のDNA配列のうち、Casタンパク質が認識するPAM配列の近傍に位置するDNA配列が、標的DNA配列として選択される。
【0048】
・ゲノム編集の手順:
本発明の方法は、部位特異的改変の対象となる標的DNA配列をゲノム内に含む真核細胞中に、前記のCasタンパク質またはそれをコードする核酸と、前記のガイドRNAまたはそれをコードする核酸とを導入することにより実施される。これにより、ガイドRNAが真核細胞ゲノム内の標的DNA部位に結合し、該結合部位に呼び込まれたCasタンパク質によって当該真核細胞のゲノムを標的DNA部位で切断し、当該ゲノムを部位特異的に改変することが可能となる。
【0049】
前記のCasタンパク質またはそれをコードする核酸と、前記のガイドRNAまたはそれをコードする核酸とを、真核細胞内に導入する手法は特に制限されない。例としては、これらに限定されるものではないが、エレクトロポレーション、リポソーム、ウイルスベクター、ナノ粒子、ウイスカー結晶、PTD(タンパク質転移ドメイン)融合タンパク質を使用した手法、パーティクルガン法、アグロバクテリウム法等、当該技術分野において既知の様々な方法が挙げられる。
【0050】
前記のCasタンパク質またはそれをコードする核酸と、前記のガイドRNAまたはそれをコードする核酸とを細胞に導入した際、当該細胞を細胞増殖に適した条件下で培養すればよい。当該培養条件は、細胞が由来する生物種に適した培養条件であればよく、例えば、当業者が既知の細胞培養技術に基づいて決定することができる。
【0051】
・その他:
以上、本発明のゲノム編集方法について説明したが、斯かるゲノム編集方法に使用される各種のゲノム編集手段、例えば前記のCasタンパク質またはそれをコードする核酸や、前記のガイドRNAまたはそれをコードする核酸も、本発明に含まれるものとする。
【0052】
また、本発明の一側面によれば、本発明のゲノム編集方法に使用するためのゲノム編集用組成物及びゲノム編集用キットも提供される。ゲノム編集用組成物は、少なくとも前記のCasタンパク質またはそれをコードする核酸を含むと共に、任意により更に前記のガイドRNAまたはそれをコードする核酸を含む組成物である。ゲノム編集用キットは、少なくとも前記のCasタンパク質またはそれをコードする核酸を含む容器と、その使用方法を記載した指示書を含むと共に、任意により更に前記のガイドRNAまたはそれをコードする核酸を含む容器を含むキットである。斯かるCasタンパク質またはそれをコードする核酸や、ガイドRNAまたはそれをコードする核酸の詳細は、上述したとおりである。
【0053】
なお、CRISPR/Casシステムを用いたゲノム編集については、これまで多くの知見が存在しており(一例を挙げれば、国際公開第2013/142578号、同第2013/176772号、及び同2014/093595号等)、当業者であればこれらの知見を適宜参酌しながら、本発明に任意の変更を加えて実施することが可能である。なお、前述したように、これらの特許文献はその全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれるものとする。
【実施例0054】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。なお、上述のように「N」は、アデニン、シトシン、チミン、およびグアニンからなる群から選択された任意の1塩基を意味する。
【0055】
[実施例1]アビシコッカス・アルバス由来Cas9タンパク質の作製:
【0056】
(1)アビシコッカス・アルバス由来Cas9遺伝子の調製:
配列番号4に記載のアビシコッカス・アルバス(Abyssicoccus albus)由来のアミノ酸配列の情報を基に、当該Casタンパク質をコードする配列番号5に記載のDNA配列を人工合成した。当該DNA配列はNCBI(国立バイオテクノロジー情報センター)のGenBankなどのよく知られたデータベースにおいて見出すことができる。また、斯かるアビシコッカス・アルバス由来Cas9遺伝子を、大腸菌コドンについて最適化したDNA配列(配列番号6)、ヒトコドンについて最適化したDNA配列(配列番号7)、及び、シロイヌナズナについて最適化したDNA配列(配列番号8)も、それぞれ合成した。塩基配列の決定にはサンガー法又は次世代シーケンス法を用いた。なお、AalCas9タンパク質は、SpyCas9(1368アミノ酸)などの他のCas9オルソログと比べて、比較的小さな(1059アミノ酸)であった。
【0057】
(2)大腸菌発現用ベクターの構築
以下に詳述する手順により、配列番号6のAalCas9遺伝子に、公知のN末端核移行シグナル配列、C末端核移行シグナル配列、およびHis-tagを付加し、pETベクターに組み込んだAalCas9生産用ベクターを構築した。当該ベクターの構成を
図1に模式的に示す。
【0058】
まず、下記のプライマー1(配列番号9)およびプライマー2(配列番号10)を用い、pET26bベクターを鋳型として、PCR反応によりリニアDNAの増幅を行った。
【0059】
・プライマー1(配列番号9):
5’-TCCTCCAGAGACTTTCCGCTTCTTCTTTGGGGCTTTATGATTCATATGTATATCTCCTTCTTAAAG-3’
・プライマー2(配列番号10):
5’-TCTGGCGGCTCAAAAAGAACCGCCGACGGCAGCGAATTCGAGCCCAAGAAGAAGAGGAAAGTCCTCGAGCACCACCAC-3’
【0060】
別途、大腸菌用にコドン最適化したAalCas9遺伝子(配列番号6)の5’末端および3’末端に対して、それぞれ以下のオリゴヌクレオチドA(N末端核移行シグナル配列、配列番号11)およびオリゴヌクレオチドB(C末端核移行シグナル配列、配列番号12)を付加したDNA断片を調製した。
【0061】
・オリゴヌクレオチドA(N末端核移行シグナル配列、配列番号11):
5’-CGGAAAGTCTCTGGAGGA-3’
・オリゴヌクレオチドB(C末端核移行シグナル配列、配列番号12):
5’-GCGCTAAGAACGAGCGCG-3’
【0062】
上記得られた大腸菌コドン最適化AalCas9遺伝子を含むDNA断片を、先に得られたpETベクターのPCR増幅産物と混合し、NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mixを用いてDNA断片を環状プラスミド化した。
【0063】
得られた環状プラスミドを用いて大腸菌DH5aを形質転換し、50μg/mLカナマイシンを含むLB寒天プレート上で培養することにより形質転換体を選択した。数個のコロニーをピックアップし、その中から目的の環状プラスミド(pET-AalCas9)をAalCas9生産用ベクターとして作製した。
【0064】
(3)AalCas9の調製:
得られたプラスミドベクターpET-AalCas9を、常法により大腸菌ROSETTA2(DE3)pLYSS株に導入した。得られた組換株を50μg/mLカナマイシンを含むLB培地で培養し、OD値0.8になるまで培養した時点で、発現誘導剤としてイソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(Isopropyl β-D-1-thiogalactopyranoside;IPTG)(終濃度0.25mM)を添加し、20℃で20時間培養した。培養後、当該大腸菌を遠心分離(8,000g、10分間)により回収した。回収した菌体を緩衝液A(50mM Tris-HCl、pH8.0、500mM NaCl、5mM MgCl2)で懸濁し、超音波破砕した。遠心分離(12,000g、30分間)により上清を回収し、緩衝液Aで平衡化したNi-アフィニティカラム、次にHeparinアフィニティカラムを用いて精製した後、緩衝液B(20mM Tris-HCl、pH7.5、300mM NaCl、1mM MgCl2、10% グリセロール)で平衡化したゲルろ過カラムにより精製した。精製したタンパク質は遠心式限外ろ過フィルターユニット(メルクミリポア)を用いて濃縮することにより、AalCas9を取得した。このようにして得られたAalCas9は-80℃で保存した。
【0065】
[実施例2]PAM配列の同定:
【0066】
(1)プラスミドライブラリーの作製:
AalCas9遺伝子のPAM配列を同定するために、以下の手順でプラスミドライブラリーを作製した。
【0067】
まず、市販のpUC18を制限酵素BamH1とEcoR1で切断した断片に、公知のイネ由来PDS(phytoene desaturase)遺伝子配列の一部(5’-GTTGGTCTTTGCTCCTGCAG-3’)を含む5’末端をリン酸化した以下のオリゴヌクレオチドC(配列番号13)およびオリゴヌクレオチドD(配列番号14)をアニーリングした2本鎖DNAフラグメントを混合し、Ligation mix(TAKARA社製)を用いてライゲーションした。
【0068】
・オリゴヌクレオチドC(配列番号13):
5’-pGATCGTTGGTCTTTGCTCCTGCAGAGG-3’
・オリゴヌクレオチドD(配列番号14):
5’-pAATTCCTCTGCAGGAGCAAAGACCAAC-3’
【0069】
得られたライゲーション溶液を用いて、常法により大腸菌DH5αを形質転換し、100μg/mLアンピシリンを含むLB寒天プレート上で選抜後、目的の組み換えプラスミドを有するクローンからプラスミドを精製した(pUC18-OsPDS)。
【0070】
精製したpUC18-OsPDSを鋳型とし、以下のプライマー3(配列番号15)およびプライマー4(配列番号16)を用いて第1のPCR反応を実施し、増幅されたDNA断片を含む第1のPCR増幅産物を取得した。
【0071】
・プライマー3(配列番号15)
5’-ACATCTGACGCTGCCGACGACAAGCTTGGCACTGGCCGTCG-3’
・プライマー4(配列番号16)
5’-CCGGAAGCATAAAGTGTAAAGC-3’
【0072】
また、同じく精製したpUC18-OsPDSを鋳型とし、NGS解析に用いるアダプター配列を含む以下のプライマー5(配列番号17)およびプライマー6(配列番号18)を用いて第2のPCR反応を実施し、増幅されたDNA断片を含む第2のPCR増幅産物を取得した。
【0073】
・プライマー5(配列番号17)
5’-CTTGTCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAGCATGCCTGCAGGTCGACTCGAGAGG-3’
・プライマー6(配列番号18)
5’-ACACTTTATGCTTCCGGGTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAGCTCGTATGTTGTGTGGAATTG-3’
【0074】
得られた第1および第2のPCR増幅産物を混合し、NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mixを用いて、DNA断片を環状プラスミド化した。環状化したプラスミドで大腸菌DH5αを形質転換し、100μg/mLアンピシリンを含むLB寒天プレート上で選抜後、目的の組み換えプラスミドを有するクローンからプラスミドを精製した(pUC18-NGS-OsPDS)。
【0075】
得られたプラスミドpUC18-NGS-OsPDSに、以下のオリゴヌクレオチドE(配列番号19)およびオリゴヌクレオチドF(配列番号20)を混合後、逆転写酵素ReverTra Ace(TOYOBO)を用いて2本鎖DNAフラグメントを調製した。なお、オリゴヌクレオチドFには、7つの塩基Nからなるランダム配列が含まれている。
【0076】
・オリゴヌクレオチドE(配列番号19):
5’-GGTCTTTGCTCCTGCAG-3’
・オリゴヌクレオチドF(配列番号20):
5’-AGCTATGACCATGATTACGAATTCNNNNNNNCTGCAGGAGCAAAGACC-3’
【0077】
精製したpUC18-NGS-OsPDSを鋳型とし、以下のプライマー7(配列番号21)およびプライマー8(配列番号22)を用いてPCR反応を実施し、増幅されたDNA断片を含むPCR増幅産物を取得した。
【0078】
・プライマー7(配列番号21):
5’-CTGCAGGAGCAAAGACC-3’
・プライマー8(配列番号22):
5’-GTAATCATGGTCATAGCTGTTTCC-3’
【0079】
得られたDNA断片を含むPCR増幅産物と、調製したランダム配列を含む2本鎖DNAフラグメントとを混合し、NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mixにより、DNA断片を環状プラスミド化した。
【0080】
得られた環状化プラスミドで大腸菌DH5αを形質転換し、100μg/mLアンピシリンを含むLB寒天プレート上で選抜後、目的の組み換えプラスミドを有する約10万コロニーをまとめて培養し、NucleoBond EXtra Midi Plus(日本ジェネティクス)を用いて、プラスミドライブラリーpUC18-NGS-OsPDS-7Nシリーズを作製した。
【0081】
(2)プラスミドライブラリー切断用のRNPの調製:
プラスミドライブラリーpUC18-NGS-OsPDS-7N切断用のAalCas9のsgRNA(配列番号23)を、Guide-it
TM sgRNA In Vitro Transcription Kit(タカラバイオ社製)を用いて試験管内転写により調製した。AalCas9 sgRNAの構成を
図2に、塩基配列を配列番号23に示す。なお、配列番号23では、5’末端側のポリNは省略して示している。このAalCas9 sgRNAを用いて、2.5μM AalCas9、12.5μM sgRNAとなるように、RNase-freeのCas9バッファー(20mM HEPES-Na、pH7.5、100mM NaCl、5mM MgCl
2、0.1mM EDTA)で希釈し、25℃で20分間放置して、複合体を形成させ、第1のRNP溶液を調製した。
【0082】
・AalCas9 sgRNA(配列番号23)
5’-GUUUUAGUACUCUGCGAAAUUUAGUGAAAACUAGAUUUCGCAGAAUCUAUUAAAACAAGGCUUUAUGCCGUAUUUAACUCCAUCCUAUGGGUGGGGUAUUUUUU-3’
【0083】
(3)NGS解析を用いたPAM配列の同定:
上記(2)で調製した第1のRNP溶液に、濃度20nMとなるようにプラスミドライブラリーとCas9バッファーを加え、30℃で2時間酵素反応させた。反応溶液に、濃度60mMとなるようにEDTAを加え、60℃で5分間インキュベート後、アガロース電気泳動にて、未切断のプラスミドを精製した。
【0084】
精製した未切断プラスミドを鋳型として、以下のプライマー9(配列番号24)およびプライマー10(配列番号25)を用いてPCR反応を実施し、ランダム配列を含む約370bpの2本鎖DNAフラグメントを含むPCR増幅産物を取得した。
【0085】
・プライマー9(配列番号24)
5’-GCGATCGGTGCGGGCCTCTTCGCTATTACGC-3’
・プライマー10(配列番号25)
5’-ATTAGGCACCCCAGGCTTTACACTTTATG-3’
【0086】
前記の2本鎖DNAフラグメントを含むPCR増幅産物を、濃度200nMとなるようにCas9バッファーで希釈し、上記(2)の第1のRNP溶液を加え、37℃で30分間酵素反応させた。反応溶液は上記と同様にアガロース電気泳動し、未切断の2本鎖DNAフラグメントを精製した。精製した2本鎖DNAフラグメントは次世代シーケンサ(NGS)によるDNA配列解析のサンプルとして使用した。
【0087】
精製した2本鎖DNAフラグメントおよびRNP未処理のプラスミドライブラリーは、Hiseq(Illmina社)によるNGS解析を行い、ランダム領域に含まれる配列を検出した。精製した2本鎖DNAフラグメントのランダム領域に含まれる配列とRNP未処理のプラスミドライブラリーに含まれる配列を比較し、精製した2本鎖DNAフラグメントで検出頻度が1/10に低下した配列に共通する配列を抽出することで、AalCas9のPAM配列をNNACGNと特定した(
図3)。
【0088】
[実施例3]インビトロでのDNA切断活性測定:
【0089】
(1)基質DNAの調製:
実施例2で作成したpUC18-NGS-OsPDS-7Nを鋳型に、AalCas9のPAM配列を含む以下のプライマー11(配列番号26)とプライマー12(配列番号27)からなるプライマーセット、又は、公知のSpyCas9のPAM配列を含む以下のプライマー13(配列番号28)とプライマー12(配列番号27)からなるプライマーセットを用いてPCR反応を実施し、各々約120bpのDNA断片を含むPCR増幅産物を調製した。調製したDNA断片はFastGene Gel/PCR エクストラクションキット(日本ジェネティクス)を用いて精製し、DNA切断活性測定の基質として用いた。
【0090】
<AalCas9用>
・プライマー11(配列番号26)
5’-CGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGCTATGACCATGATTACGAATTCTGCGTTACTGCAGGAGC-3’
・プライマー12(配列番号27)
5’-GCGATCGGTGCGGGCCTCTTCGCTATTACGC-3’
【0091】
<SpyCas9用>
・プライマー13(配列番号28)
5’-CGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGCTATGACCATGATTACGAATTCTTTCCCACTGCAGGAGC-3’
・プライマー12(配列番号27)
5’-GCGATCGGTGCGGGCCTCTTCGCTATTACGC-3’
【0092】
(2)インビトロDNA切断活性測定用のRNPの調製:
インビトロDNA切断活性用のAalCas9のsgRNA(配列番号23)を、Guide-itTM sgRNA In Vitro Transcription Kit(タカラバイオ社製)を用いて試験管内転写により調製した。このAalCas9 sgRNAを用いて、2μM AalCas9、2μM sgRNAとなるように、RNase-freeのCas9バッファー(20mM HEPES-Na、pH7.5、100mM NaCl、5mM MgCl2、0.1mM EDTA)で希釈し、25℃で20分間放置して、複合体を形成させ、第2のRNP溶液を調製した。
【0093】
(3)インビトロDNA切断活性測定:
上記(2)の第2のRNP溶液に、濃度1μM RNP、10nM 基質DNAとなるように、基質DNAとCas9バッファーを加えた。反応溶液は25℃および37℃でインキュベートし、5分後、10分後、15分後、30分後に反応溶液の一部を回収し、濃度が50mMとなるようにEDTAを加え、65℃で5分間インキュベートすることで反応を停止させた。回収した反応液は、MultiNA(島津)を用いて未切断DNAと切断DNAを定量し、DNA切断活性を測定した。
【0094】
図4は、インビトロDNA切断アッセイによる反応産物の電気泳動結果の例を示す写真である。左の写真は、反応溶液を25℃で60分間インキュベートした場合の結果を、右の写真は、反応溶液を37℃で60分間インキュベートした場合の結果をそれぞれ示している。
図5A及びBは、インビトロDNA切断アッセイによるAalCas9活性の経時変化を示すグラフである。
図5Aのグラフは、反応溶液を25℃でインキュベートした場合の結果を、
図5Bのグラフは、反応溶液を37℃でインキュベートした場合の結果をそれぞれ示す。これらの結果によれば、AalCas9は、37℃では15分後には80%以上の基質DNAを切断し、25℃では30分後には約50%の基質DNAを切断することが明らかになった。
【0095】
[実施例4]植物細胞におけるAalCas9による変異導入:
【0096】
(1)シロイヌナズナプロトプラストのゲノム編集実験用のRNP調製:
下記の公知のシロイヌナズナ由来PDS3遺伝子上のPAM配列ACGNを含むsgRNA(配列番号29)を、Guide-itTM sgRNA In Vitro Transcription Kit(タカラバイオ社製)を用いて試験管内転写により調製した。このsgRNAを用いて、10μM AalCas9、20μM sgRNAとなるようにRNase-freeのCas9バッファー(20mM HEPES-Na、pH7.5、100mM NaCl、5mM MgCl2、0.1mM EDTA)で希釈し、25℃で20分間放置して、複合体を形成させ、第3のRNP溶液を調製した。なお、配列番号29では、5’末端側のポリNは省略して示している。
【0097】
・PDS3 sgRNA(配列番号29)
5’-GUAGCGAGUAAUCGUGAAGUAGAGAAACAGGGUUUUAGUACUCUGCGAAAUUUAGUGAAAACUAGAUUUCGCAGAAUCUAUUAAAACAAGGCUUUAUGCCGUAUUUAACUCCAUCCUAUGGGUGGGGUAUUUUUU-3’
【0098】
また、同様の手順にて、下記の公知の配列を有するSpyCas9のsgRNA(配列番号30)も調製し、AalCas9と同様にRNP複合体を形成させ、第4のRNP溶液を調製した。なお、配列番号30では、5’末端側のポリNは省略して示している。
【0099】
・SpyCas9 sgRNA(配列番号30)
5’-GGACUUUUGCCAGCCAUGGUGUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUUUU-3’
【0100】
(2)シロイヌナズナプロトプラストの調製:
30日間生育させたシロイヌナズナの葉より表皮を剥ぎとり葉肉細胞を露出させた後、その葉を1.0%セルラーゼ-オノズカR-10(ヤクルト社製)、0.25% マセロザイムR-10(ヤクルト社製)、10mM メルカプトエタノール、400mMマンニトール、20mM KCl、10mM CaCl2、20mM MES(pH5.7)溶液に浸し、22℃、50rpmで振とうしながら、1時間インキュベートし、プロトプラストを遊離させた。プロトプラストは孔径70μmのナイロンフィルターで濾した後、50mL容チューブに集め、100×g、10分間遠心しプロトプラストを回収した後、上清を捨て、150mM NaCl、125mM CaCl2、5mM KCl、2mM MES(pH5.7)緩衝液(W5緩衝液)で再懸濁した。再懸濁したプロトプラストは100×g、5分間遠心後、同緩衝液で再度懸濁した。この緩衝液による洗浄を2度繰り返した後、4℃で10分間インキュベートした。インキュベート後のプロトプラストは、100×g、5分間遠心後、400mMマンニトール、15mM MgCl2、4mM MES(pH5.7)緩衝液で再懸濁した。その後、100×g、5分間遠心することでプロトプラストを回収した後、2.0~3.0×105細胞/mLになるよう同緩衝液で細胞濃度を調製し、形質転換用プロトプラスト懸濁液を得た。
【0101】
(3)シロイヌナズナプロトプラストへのRNP導入:
上記(2)で得られたプロトプラスト懸濁液35μLと前記第3又は第4のRNP溶液各10μLを混合後、40%(w/v)PEG4000、200mM マンニトール、100mM CaCl2溶液を45μLずつ、それぞれ96穴プレート(ヌンク社製、丸底)に入れ、900rpm、15秒間振とうし、溶液を混合した。混合液は10分間室温で静置した。静置後の混合液にW5緩衝液200μLを勢いよく加えることでプロトプラストを懸濁させた後、100×g、5分間遠心し、プロトプラスト細胞をプレート底に集め、上清200μLを捨てることで、プロトプラスト懸濁液を洗浄した。この作業を計4回行った後、各ウェルをパラフィルムでシールし、22℃で18時間静置し、ゲノムDNAへの変異導入を行った。
【0102】
(4)ゲノムDNAのNGS解析:
上記(3)のRNP導入後、22℃で18時間静置したプロトプラスト懸濁液を200μL容チューブに回収し、ゲノム抽出バッファー(200mM Tris-HCl、pH7.5、250mM NaCl、25mM EDTA、0.5%SDS)と混合後、95℃で10分間インキュベートした後、氷上で5分間静置した。熱処理後のプロトプラスト懸濁液からイソプロパノール沈殿によりゲノムDNAを回収した。回収したゲノムDNAは滅菌水で懸濁し、AalCas9については以下のプライマー14(配列番号31)およびプライマー15(配列番号32)からなるプライマーセット、SpyCas9については以下のプライマー16(配列番号33)およびプライマー17(配列番号34)からなるプライマーセットを用いてPCR反応を実施し、約300bpのDNA断片を増幅した。得られた約300bpのDNA断片について、iSeq100システム(Illmina社)により次世代シーケンス解析を行い、ゲノム編集の有無を検出した。
【0103】
<AalCas9用>
・プライマー14(配列番号31)
5’-TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAGGGAAAAGAATCATATGGTCATCAATTCG-3’
・プライマー15(配列番号32)
5’-GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAGCGGACTTGAATTAAAGGGGCTATAGTAG-3’
【0104】
<SpyCas9用>
・プライマー16(配列番号33)
5’-TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAGGCAAATAATTAAAGTTGTTGCTGTTGG-3’
・プライマー17(配列番号34)
5’-GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAGTAGCCTACTTGCCTGCTTTTC-3’
【0105】
図6A及びBは、AalCas9によるシロイヌナズナプロトプラスト細胞のゲノムDNA編集結果を示す図である。
図6Aは、標的DNA毎の編集率を、
図6Bは、次世代シーケンサーによる変異DNAをそれぞれ示している。
【0106】
これらの結果によれば、AalCas9によるシロイヌナズナ細胞のゲノムDNA編集によれば、標的遺伝子においてヌクレオチドの短~長領域での欠失及び挿入が検出された。AalCas9による細胞当たりの変異率は25.6%であり、SpyCas9の場合よりも優れていた。