(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058607
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】リチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20240418BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20240418BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240418BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240418BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240418BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240418BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240418BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240418BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/587
H01M4/38 Z
H01M4/48
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172007
(22)【出願日】2023-10-03
(31)【優先権主張番号】10-2022-0131830
(32)【優先日】2022-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】楊 叡知
(72)【発明者】
【氏名】崔 ▲ヒョン▼奉
(72)【発明者】
【氏名】金 善大
(72)【発明者】
【氏名】朴 相禹
(72)【発明者】
【氏名】金 多▲ヒョン▼
(72)【発明者】
【氏名】朴 弘烈
(72)【発明者】
【氏名】金 相勳
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ07
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ18
5H050AA13
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA02
5H050DA03
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA18
(57)【要約】
【課題】コバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物を含む層状型正極活物質の使用と共に前記正極活物質を含む正極を効果的に保護することができる電解液を組み合わせて高電圧および高温条件で遷移金属溶出を減少させることによって正極構造崩壊を抑制し、これによって電池の高電圧特性および高温特性が改善されたリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】実施形態によるリチウム二次電池は、非水性有機溶媒、リチウム塩、および添加剤を含む電解液;正極活物質を含む正極;および負極活物質を含む負極を含み、前記非水性有機溶媒はエチレンカーボネートを5重量%未満で含み、前記添加剤は化学式1で表される化合物を含み、前記正極活物質は化学式2で表される。前記化学式1および化学式2は明細書に定義した通りである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水性有機溶媒、リチウム塩、および添加剤を含む電解液;
正極活物質を含む正極;および
負極活物質を含む負極を含み、
前記非水性有機溶媒はエチレンカーボネートを5重量%未満で含み、
前記添加剤は下記化学式1で表される化合物を含み、
前記正極活物質は下記化学式2で表されるものである、リチウム二次電池:
【化1】
上記化学式1中、
R
1~R
4はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロ環基であり;
[化学式2]
Li
aNi
xMn
1-x-yA
yO
2±bX
c
上記化学式2中、
0.9≦a≦1.2、0≦b≦0.1、0≦c≦0.1、0.5≦x≦0.95、および0≦y<0.3であり、
AはB、Na、Mg、Al、TiおよびSiからなる群より選択される一つ以上の元素であり、
XはS、F、PおよびClより選択される一つ以上の元素である。
【請求項2】
前記非水性有機溶媒は鎖状カーボネートのみから構成されるものである、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記鎖状カーボネートは下記化学式3で表される、請求項2に記載のリチウム二次電池:
【化2】
上記化学式3中、
R
5およびR
6はそれぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基である。
【請求項4】
前記非水性有機溶媒は、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、およびエチルメチルカーボネート(EMC)のうちの少なくとも2種である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記非水性有機溶媒は、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DMC)を0:100~50:50の重量比で含むものである、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
前記化学式1のR1~R4のうちの少なくとも一つは、電子求引基で置換されるか非置換の炭素数1~20のアルキル基、電子求引基で置換されるか非置換の炭素数6~20のアリール基または電子求引基で置換されるか非置換の炭素数2~30のヘテロ環基である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
前記電子求引基は、ハロゲン、イソシアネート基(-NCO)、イソチオシアネート基(-NCS)、シアネート基(-OCN)、チオシアネート基(-SCN)、シアノ基(-CN)、イソシアノ基(-NC)、-N=C=N-基、-N=S=N-基 、ニトロ基(NO2)、トリフルオロメタン(CF3)基、ペンタフルオロエタン(C2F5)基、トリフルオロメタンスルホニル(SO2CF3)基、ペンタフルオロエタンスルホニル(SO2C2F5)基、トリフルオロメタンスルホネート(SO3CF3)基、ペンタフルオロエタンスルホネート(SO3C2F5)基、ペンタフルオロフェニル(C6F5)基、アセチル(COCH3)基、エチルケトン(COC2H5)基、プロピルケトン(COC3H7)基、ブチルケトン(COC4H9)基、ペンチルケトン(COC5H11)基、ヘキシルケトン(COC6H13)基、エタノエート(CO2CH3)基、プロパノエート(CO2C2H5)基、ブタノエート(CO2C3H7)基、ペンタノエート(CO2C4H9)基、ヘキサノエート(CO2C5H11)基から選択される少なくとも一つである、請求項6に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
前記化学式1のR2およびR3のうちの少なくとも一つは水素である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項9】
前記化学式1のR2およびR3はそれぞれ水素である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項10】
前記化学式1で表される化合物は下記グループ1に羅列された化合物から選択される一つである、請求項1に記載のリチウム二次電池:
【化3】
。
【請求項11】
前記化学式1で表される化合物は、リチウム二次電池用電解液の全体100重量部に対して0.01~5.0重量部で含まれるものである、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項12】
前記電解液は、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、アジポニトリル(AN)、コハク酸ニトリル(SN)、1,3,6-ヘキサントリシアニド(HTCN)、プロペンスルトン(PST)、プロパンスルトン(PS)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)、リチウムジフルオロホスフェート(LiPO2F2)、および2-フルオロビフェニル(2-FBP)のうちの少なくとも1種のその他の添加剤をさらに含む、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項13】
前記化学式2のxは0.8≦x≦0.95である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項14】
前記正極活物質は、LiNi0.75Mn0.25O2、LiNi0.80Mn0.20O2、LiNi0.85Mn0.15O2、LiNi0.90Mn0.10O2またはLiNi0.95Mn0.05O2およびこれらの固溶体を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項15】
前記負極活物質は、黒鉛およびSi複合体のうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項16】
前記リチウム二次電池は、充電上限電圧が4.35V以上である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載はリチウム二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は再充電が可能であり、従来鉛蓄電池、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池などと比較して単位重量当りエネルギー密度が3倍以上高くて高速充電が可能であるため、ノートパソコンや携帯電話機、電動工具、電気自転車用に商品化されており、追加的なエネルギー密度向上のための研究開発が活発に行われている。
【0003】
特に、IT機器が次第に高性能化されるにつれて高容量の電池が要求されている状況であり、電圧領域の拡張を通じて高容量化を実現することによってエネルギー密度を高めることができるが、高電圧領域では電解液が酸化して正極性能を劣化させるという問題点がある。
【0004】
特に、正極活物質としてコバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物は正極活物質組成中にコバルトを含まず、ニッケル、マンガンなどが主成分として構成された正極活物質であって、これを含む正極は経済的であり高いエネルギー密度を実現することができて次世代正極活物質として脚光を浴びている。
【0005】
しかし、コバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物を含む正極は高電圧環境で使用時、正極構造崩壊によって遷移金属溶出が起こり、これによるセル内部ガス発生および容量減少などの問題を引き起こすことがある。このような遷移金属溶出現象は高温環境で深化する傾向があり、溶出された遷移金属は負極表面に析出されて副反応を誘発することがあって電池の抵抗増加、電池の寿命および出力特性低下の原因になる。
【0006】
これにより、コバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物を含む正極使用時、高電圧および高温条件でも適用可能な電解液が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一実施形態は、コバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物を含む層状型正極活物質の使用と共に前記正極活物質を含む正極を効果的に保護することができる電解液を組み合わせて高電圧および高温条件で遷移金属溶出を減少させることによって正極構造崩壊を抑制し、これによって電池の高電圧特性および高温特性が改善されたリチウム二次電池を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、非水性有機溶媒、リチウム塩、および添加剤を含む電解液;正極活物質を含む正極;および負極活物質を含む負極を含み、
前記非水性有機溶媒はエチレンカーボネートを5重量%未満で含み、
前記添加剤は下記化学式1で表される化合物を含み、
前記正極活物質は下記化学式2で表される、リチウム二次電池を提供する。
【0009】
【0010】
上記化学式1中、
R1~R4はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロ環基であり;
[化学式2]
LiaNixMn1-x-yAyO2±bXc
上記化学式2中、
0.9≦a≦1.2、0≦b≦0.1、0≦c≦0.1、0.5≦x≦0.95、および0≦y<0.3であり、
AはB、Na、Mg、Al、TiおよびSiからなる群より選択される一つ以上の元素であり、
XはS、F、PおよびClより選択される一つ以上の元素である。
【0011】
前記非水性有機溶媒は、鎖状カーボネートのみから構成されるものであってもよい。
前記鎖状カーボネートは、下記化学式3で表すことができる。
【0012】
【0013】
上記化学式3中、
R5およびR6はそれぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基である。
【0014】
前記非水性有機溶媒は、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、およびエチルメチルカーボネート(EMC)のうちの少なくとも2種であってもよい。
【0015】
前記非水性有機溶媒は、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DMC)を0:100~50:50の重量比で含むことができる。
【0016】
前記化学式1のR1~R4のうちの少なくとも一つは、電子求引基で置換されるか非置換の炭素数1~20のアルキル基、電子求引基で置換されるか非置換の炭素数6~20のアリール基または電子求引基で置換されるか非置換の炭素数2~30のヘテロ環基であってもよい。
【0017】
前記電子求引基は、ハロゲン、イソシアネート基(-NCO)、イソチオシアネート基(-NCS)、シアネート基(-OCN)、チオシアネート基(-SCN)、シアノ基(-CN)、イソシアノ基(-NC)、-N=C=N-基、-N=S=N-基 、ニトロ基(NO2)、トリフルオロメタン(CF3)基、ペンタフルオロエタン(C2F5)基、トリフルオロメタンスルホニル(SO2CF3)基、ペンタフルオロエタンスルホニル(SO2C2F5)基、トリフルオロメタンスルホネート(SO3CF3)基、ペンタフルオロエタンスルホネート(SO3C2F5)基、ペンタフルオロフェニル(C6F5)基、アセチル(COCH3)基、エチルケトン(COC2H5)基、プロピルケトン(COC3H7)基、ブチルケトン(COC4H9)基、ペンチルケトン(COC5H11)基、ヘキシルケトン(COC6H13)基、エタノエート(CO2CH3)基、プロパノエート(CO2C2H5)基、ブタノエート(CO2C3H7)基、ペンタノエート(CO2C4H9)基、ヘキサノエート(CO2C5H11)基から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0018】
前記化学式1のR2およびR3のうちの少なくとも一つは水素であってもよい。
前記化学式1のR2およびR3はそれぞれ水素であってもよい。
前記化学式1で表される化合物は、下記グループ1に羅列された化合物から選択することができる。
【0019】
【0020】
前記化学式1で表される化合物は、リチウム二次電池用電解液の全体100重量部に対して0.01~5.0重量部で含まれてもよい。
【0021】
前記電解液は、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、アジポニトリル(AN)、コハク酸ニトリル(SN)、1,3,6-ヘキサントリシアニド(HTCN)、プロペンスルトン(PST)、プロパンスルトン(PS)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)、リチウムジフルオロホスフェート(LiPO2F2)、および2-フルオロビフェニル(2-FBP)のうちの少なくとも1種のその他の添加剤をさらに含むことができる。
【0022】
前記化学式2のxは、0.8≦x≦0.95であってもよい。
前記正極活物質は、LiNi0.75Mn0.25O2、LiNi0.80Mn0.20O2、LiNi0.85Mn0.15O2、LiNi0.90Mn0.10O2またはLiNi0.95Mn0.05O2およびこれらの固溶体を含むことができる。
前記負極活物質は、黒鉛およびSi複合体のうちの少なくとも1種を含むことができる。
前記リチウム二次電池は、充電上限電圧が4.35V以上であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
一実施形態は、コバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物を含む層状型正極活物質を含む正極を効果的に保護することができる電解液を組み合わせ使用して高温高電圧環境でも正極の相転移安全性を確保することができ、電解液の分解および電極との副反応を抑制してガス発生低減と同時に電池内部抵抗増加を抑制することによって電池安定性および寿命特性が向上したリチウム二次電池を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態によるリチウム二次電池を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池について添付された図面を参照して詳しく説明する。但し、これは例示として提示されるものであって、これによって本発明が制限されず、本発明は後述の請求項の範疇によってのみ定義されるだけである。
【0026】
本明細書で“置換”とは、別途の定義がない限り、置換基または化合物中の少なくとも一つの水素が重水素、ハロゲン基、ヒドロキシル基、アミノ基、炭素数1~30のアミン基、ニトロ基、炭素数1~40のシリル基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~10のアルキルシリル基、炭素数6~30のアリールシリル基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数3~30のヘテロシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数2~30のヘテロアリール基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~10のフルオロアルキル基、炭素数1~10のトリ フルオロアルキル基 、イソシアネート基(-NCO)、イソチオシアネート基(-NCS)、シアネート基(-OCN)、チオシアネート基(-SCN)、シアノ基(-CN)、イソシアノ基(-NC)、またはこれらの組み合わせで置換されたことを意味する。
【0027】
本発明の一例で、“置換”は、置換基または化合物中の少なくとも一つの水素が重水素、ハロゲン基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~10のアルキルシリル基、炭素数6~30のアリールシリル基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数3~30のヘテロシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数2~30のヘテロアリール基、炭素数1~10のフルオロアルキル基またはシアノ基で置換されたことを意味する。また、本発明の具体的な一例で、“置換”は、置換基または化合物中の少なくとも一つの水素が重水素、ハロゲン基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、 炭素数1~10のトリ フルオロアルキル基、炭素数1~10のフルオロアルキル基またはシアノ基で置換されたことを意味する。また、本発明の具体的な一例で、“置換”は、置換基または化合物中の少なくとも一つの水素が重水素、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数1~5のトリ フルオロアルキル基、炭素数1~5のフルオロアルキル基またはシアノ基で置換されたことを意味する。また、本発明の具体的な一例で、“置換”は、置換基または化合物中の少なくとも一つの水素が重水素、シアノ基、ハロゲン基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、トリフルオロメチル基またはナフチル基で置換されたことを意味する。
【0028】
リチウム二次電池は使用する分離膜と電解液の種類によってリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、およびリチウムポリマー電池などに分類することができ、形態によって円筒型、角型、コイン型、パウチ型などに分類することができ、サイズによってバルクタイプと薄膜タイプに分けることができる。これら電池の構造と製造方法はこの分野に広く知られているので、詳細な説明は省略する。
【0029】
ここではリチウム二次電池の一例として円筒形リチウム二次電池を例示的に説明する。
図1は、一実施形態によるリチウム二次電池の構造を概略的に示したものである。
図1を参照すれば、一実施形態によるリチウム二次電池100は、正極114、正極114と対向して位置する負極112、正極114と負極112の間に配置されているセパレータ113、および正極114、負極112およびセパレータ113を含浸する電解液(図示せず)を含む電池セルと、前記電池セルが入っている電池容器120および前記電池容器120を密封する封入部材140を含む。
【0030】
以下、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池100のより詳細な構成について説明する。
【0031】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池は、電解液、正極、および負極を含む。
前記電解液は非水性有機溶媒、リチウム塩、および添加剤を含み、前記非水性有機溶媒はエチレンカーボネートを5重量%未満で含み、前記添加剤は下記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0032】
【化4】
上記化学式1中、
R
1~R
4はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロ環基である。
【0033】
前記正極は下記化学式2で表されるリチウムニッケルマンガン系酸化物を含む正極活物質を含むことができる。
化学式2で表されるリチウムニッケルマンガン系酸化物はコバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物であり層状型正極活物質であってもよく、コバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物を含む正極活物質の場合、高電圧条件で構造的な不安定性が強くて溶媒分解および遷移金属、特にNiの溶出現象が発生する。
【0034】
このような遷移金属溶出現象によって劣化および短絡が発生して電池の寿命容量が低下し抵抗急増現象が発生するようになる。
【0035】
しかし、前述の電解液を共に使用する場合には、電池の寿命容量の低下および抵抗急増現象を緩和することができる。
【0036】
特に、エチレンカーボネートが5重量%未満で含まれる電解液内で前述の正極活物質を使用することによって高電圧および高温条件で遷移金属溶出を効果的に減少させることができ、これにより正極構造崩壊を抑制することによって電池の高電圧特性および高温特性が改善できる。
【0037】
前記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質役割を果たす。
【0038】
前記非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、または非プロトン性溶媒を使用することができる。
【0039】
前記カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などを使用することができる。前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、t-ブチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、デカノリド(decanolide)、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などを使用することができる。前記エーテル系溶媒としてはジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどを使用することができる。また、前記ケトン系溶媒としてはシクロヘキサノンなどを使用することができる。また、前記アルコール系溶媒としてはエチルアルコール、イソプロピルアルコールなどを使用することができ、前記非プロトン性溶媒としてはR-CN(Rは炭素数2~20の直鎖状、分枝状、または環構造の炭化水素基であり、二重結合、芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類、スルホラン(sulfolane)類などを使用することができる。
前記非水性有機溶媒は単独でまたは一つ以上混合して使用することができ、一つ以上混合して使用する場合の混合比率は目的とする電池性能によって適切に調節することができ、これは当該分野に従事する者には広く理解されるはずである。
【0040】
一例として、前記非水性有機溶媒は、エチレンカーボネートを5重量%未満で含むことができる。
【0041】
エチレンカーボネートの含量が前述の範囲を5重量%以上含まれる場合には高電圧駆動時にNiの活性度が増加してNiの酸化数が4価から2価に還元される傾向が強くなり、酸化安定性の低いエチレンカーボネートは酸化分解されて結果的にNiが溶出されて負極に析出される結果が示される。
【0042】
具体的な一例として、前記非水性有機溶媒は鎖状(chain)カーボネートのみから構成されてもよい。この場合、高温保存時に抵抗増加率が顕著に緩和されることによって優れた高温保存特性を実現することができる。
【0043】
本明細書で鎖状カーボネートのみから構成されるという意味は、環状カーボネートなどと混合されず鎖状カーボネートの範疇に属する有機溶媒を単独または組み合わせて含むことを意味する。
一実施形態で前記鎖状カーボネートは下記化学式3で表すことができる。
【0044】
【0045】
上記化学式3中、
R5およびR6はそれぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基である。
【0046】
一例として、前記化学式3のR5およびR6はそれぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であってもよく、例えば前記R5およびR6はそれぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数1~5のアルキル基であってもよい。
【0047】
一実施形態で、前記化学式3のR5およびR6はそれぞれ独立して置換もしくは非置換のメチル基、置換もしくは非置換のエチル基、置換もしくは非置換のn-プロピル基、置換もしくは非置換のn-ブチル基、置換もしくは非置換のn-ペンチル基、置換もしくは非置換のiso-ブチル基、置換もしくは非置換のneo-ペンチル基であってもよい。
【0048】
例えば、具体的な一実施形態による非水性有機溶媒は、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、およびエチルメチルカーボネート(EMC)のうちの少なくとも2種であってもよい。
【0049】
最も具体的な一実施形態による非水性有機溶媒は、ジメチルカーボネート(DMC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)の混合溶媒であってもよい。
前記非水性有機溶媒は、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DMC)を0:100~50:50の重量比で含むことができる。
前記非水性有機溶媒は、ジメチルカーボネート(DMC)を50重量%を超過して含むことが電池特性改善側面からさらに有利であり得る。
【0050】
例えば、前記非水性有機溶媒は、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DMC)を0:100~40:60、0:100~30:70、10:90~40:60、または10:90~30:70の重量比で含むことができる。
【0051】
前記非水性有機溶媒は、前記カーボネート系溶媒に芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含んでもよい。この時、前記カーボネート系溶媒と芳香族炭化水素系溶媒は1:1~30:1の体積比で混合することができる。
【0052】
前記芳香族炭化水素系溶媒としては、下記化学式4の芳香族炭化水素系化合物を使用することができる。
【0053】
【0054】
上記化学式4中、R11~R16は互いに同一であるか異なり、水素、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロアルキル基、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである。
【0055】
前記芳香族炭化水素系溶媒の具体的な例としては、ベンゼン、フルオロベンゼン、1,2-ジフルオロベンゼン、1,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジフルオロベンゼン、1,2,3-トリフルオロベンゼン、1,2,4-トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、ヨードベンゼン、1,2-ジヨードベンゼン、1,3-ジヨードベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1,2,3-トリヨードベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、2,3-ジフルオロトルエン、2,4-ジフルオロトルエン、2,5-ジフルオロトルエン、2,3,4-トリフルオロトルエン、2,3,5-トリフルオロトルエン、クロロトルエン、2,3-ジクロロトルエン、2,4-ジクロロトルエン、2,5-ジクロロトルエン、2,3,4-トリクロロトルエン、2,3,5-トリクロロトルエン、ヨードトルエン、2,3-ジヨードトルエン、2,4-ジヨードトルエン、2,5-ジヨードトルエン、2,3,4-トリヨードトルエン、2,3,5-トリヨードトルエン、キシレン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである。
【0056】
前記リチウム塩は、非水性有機溶媒に溶解されて、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極の間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。このようなリチウム塩の代表的な例としては、LiPF6、LiBF4、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(lithium difluoro(oxalate)borate:LiDFOB)、LiPO2F2、LiSbF6、LiAsF6、Li(FSO2)2N(リチウムビスフルオロスルホニルイミド;lithium bis(fluorosulfonyl)imide;LiFSI)、LiC4F9SO3、LiClO4、LiAlO2、LiAlCl4、 LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)(ここで、xおよびyは1~20の整数である)、LiCl、LiI、およびLiB(C2O4)2(リチウムビス(オキサラト)ボレート(lithium bis(oxalato) borate;LiBOB)からなる群より選択される一つまたは二つ以上が挙げられる。
【0057】
リチウム塩の濃度は0.1M~2.0M範囲内で使用することがよい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれれば、電解質が適切な伝導度および粘度を有するので優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動可能である。
【0058】
前記化学式1のR1~R4のうちの少なくとも一つは、電子求引基で置換されるか非置換の炭素数1~20のアルキル基、電子求引基で置換されるか非置換の炭素数6~20のアリール基、または電子求引基で置換されるか非置換の炭素数2~30のヘテロ環基であってもよい。
【0059】
前記電子求引基は、ハロゲン、イソシアネート基(-NCO)、イソチオシアネート基(-NCS)、シアネート基(-OCN)、チオシアネート基(-SCN)、シアノ基(-CN)、イソシアノ基(-NC)、-N=C=N-基、-N=S=N-基 、ニトロ基(NO2)、トリフルオロメタン(CF3)基、ペンタフルオロエタン(C2F5)基、トリフルオロメタンスルホニル(SO2CF3)基、ペンタフルオロエタンスルホニル(SO2C2F5)基、トリフルオロメタンスルホネート(SO3CF3)基、ペンタフルオロエタンスルホネート(SO3C2F5)基、ペンタフルオロフェニル(C6F5)基、アセチル(COCH3)基、エチルケトン(COC2H5)基、プロピルケトン(COC3H7)基、ブチルケトン(COC4H9)基、ペンチルケトン(COC5H11)基、ヘキシルケトン(COC6H13)基、エタノエート(CO2CH3)基、プロパノエート(CO2C2H5)基、ブタノエート(CO2C3H7)基、ペンタノエート(CO2C4H9)基、ヘキサノエート(CO2C5H11)基から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0060】
前記化学式1のR2およびR3のうちの少なくとも一つは水素であってもよい。
前記化学式1のR2およびR3はそれぞれ水素であってもよい。
【0061】
前記化学式1で表される化合物は、下記グループ1に羅列された化合物から選択することができる。
【0062】
【0063】
前記添加剤は、リチウム二次電池用電解液の全体100重量部に対して0.01~5.0重量部で含まれてもよい。
一例として、前記添加剤は、リチウム二次電池用電解液の全体100重量部に対して0.01~3.0重量部で含まれてもよい。
例えば、前記添加剤は、リチウム二次電池用電解液の全体100重量部に対して0.1~3.0重量部、0.3~3.0重量部、0.5~3.0重量部、または0.5~2.0重量部で含まれてもよい。
【0064】
添加剤の含量範囲が前記のような場合、高温での抵抗増加を防止して寿命特性および出力特性が改善されたリチウム二次電池を実現することができる。
一方、前記電解液は、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、アジポニトリル(AN)、コハク酸ニトリル(SN)、1,3,6-ヘキサントリシアニド(HTCN)、プロペンスルトン(PST)、プロパンスルトン(PS)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)、リチウムジフルオロホスフェート(LiPO2F2)、および2-フルオロビフェニル(2-FBP)のうちの少なくとも1種のその他の添加剤を追加的に含むことができる。
【0065】
前記その他の添加剤をさらに含むことによって寿命がさらに向上するか高温保存時に正極と負極から発生するガスを効果的に制御することができる。
【0066】
前記その他の添加剤は前記リチウム二次電池用電解液の全体100重量部に対して0.2~20重量部の含量で含まれてもよく、具体的に0.2~15重量部、例えば0.2~10重量部で含まれてもよい。
その他の添加剤の含量が前記のような場合、被膜抵抗増加を最小化して電池性能向上に寄与できる。
【0067】
前記正極は正極集電体およびこの正極集電体の上に形成される正極活物質層を含み、前記正極活物質層は正極活物質を含む。
【0068】
前記正極活物質は、下記化学式2で表されるコバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物を含むことができる。
[化学式2]
LiaNixMn1-x-yAyO2±bXc
上記化学式2中、
0.9≦a≦1.2、0≦b≦0.1、0≦c≦0.1、0.5≦x≦0.95、および0≦y<0.3であり、
AはB、Na、Mg、Al、TiおよびSiからなる群より選択される一つ以上の元素であり、
XはS、F、PおよびClより選択される一つ以上の元素である。
もちろん、前記リチウム複合酸化物の表面にコーティング層を有するものも使用することができ、または前記リチウム複合酸化物とコーティング層を有する化合物を混合して使用することもできる。このコーティング層は、コーティング元素のオキシド、コーティング元素のヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、およびコーティング元素のヒドロキシカーボネートからなる群より選択される少なくとも一つのコーティング元素化合物を含むことができる。これらコーティング層を成す化合物は、非晶質または結晶質であってもよい。前記コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはこれらの混合物を使用することができる。コーティング層形成工程は前記化合物にこのような元素を使用して正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えば、スプレーコーティング、浸漬法など)でコーティングすることができればいかなるコーティング方法を使用してもよく、これについては当該分野に従事する者によく理解できる内容であるので詳しい説明は省略する。
【0069】
一例として、前記化学式2のxは0.8≦x≦0.95であってもよい。
例えば、前記正極活物質は、LiNi0.75Mn0.25O2、LiNi0.80Mn0.20O2、LiNi0.85Mn0.15O2、LiNi0.90Mn0.10O2またはLiNi0.95Mn0.05O2、およびこれらの固溶体を含むことができる。
【0070】
前記正極活物質の含量は、正極活物質層全体重量に対して90重量%~98重量%であってもよい。
本発明の一実施形態において、前記正極活物質層はバインダーを含むことができる。この時、前記バインダーの含量は、正極活物質層全体重量に対して1重量%~5重量%であってもよい。
【0071】
前記バインダーは正極活物質粒子を互いによく付着させ、また正極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たし、その代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロリド、カルボキシル化されたポリビニルクロリド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリレーテッドスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0072】
前記正極集電体としてはAlを使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0073】
前記負極は、負極集電体およびこの負極集電体の上に形成される負極活物質を含む負極活物質層を含む。
【0074】
前記負極活物質は、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質または遷移金属酸化物を含む。
【0075】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質としては、リチウム二次電池で一般に使用される炭素系負極活物質はいずれのものでも使用することができ、その代表的な例としては結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらを共に使用することができる。前記結晶質炭素の例としては無定形、板状、鱗片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としてはソフトカーボン(soft carbon)またはハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0076】
前記リチウム金属の合金としては、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlおよびSnからなる群より選択される金属の合金を使用することができる。
【0077】
前記リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質としては、Si、Si-C複合体、 SiOx(0<x<2)、Si-Q合金(前記Qはアルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、Siを除いた14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素)、Sn、SnO2、Sn-R11(前記R11はアルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、Snを除いた14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素)などが挙げられ、またこれらのうちの少なくとも一つとSiO2を混合して使用することもできる。
【0078】
前記元素QおよびR11としてはMg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Tl、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0079】
前記遷移金属酸化物としては、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物、またはリチウムチタニウム酸化物などが挙げられる。
【0080】
具体的な一実施形態で、前記負極活物質は、黒鉛およびSi複合体のうちの少なくとも1種を含むことができる。
前記Si複合体はSi系粒子を含むコアおよび非晶質炭素コーティング層を含み、例えば前記Si系粒子はシリコン粒子、Si-C複合体、SiOx(0<x≦2)およびSi合金のうちの1種以上を含むことができる。
一例として、前記Si系粒子を含むコアの中心部に空隙を含み、前記中心部の半径は前記Si複合体の半径の30%~50%に該当し、前記Si複合体の平均粒径は5μm~20μmであり、前記Si系粒子の平均粒径は10nm~200nmであってもよい。
【0081】
本明細書で、平均粒径は、累積分布曲線(cumulative size-distribution curve)で体積比として50%での粒子大きさ(D50)であってもよい。
前記Si系粒子の平均粒径が前記範囲に含まれる場合、充放電時に発生する体積膨張を抑制することができ、充放電時粒子破砕による伝導性経路(conductive path)の断絶を防止することができる。
【0082】
前記Si系粒子を含むコアは非晶質炭素を追加的に含み、この時、前記中心部は非晶質炭素を含まず、非晶質炭素はSi複合体の表面部にのみ存在することになる。
この時、表面部とは、中心部の最表面からSi複合体の最表面までの領域を意味する。
また、Si系粒子はSi複合体に全体的に実質的に均一に含まれるものであって、即ち、中心部と表面部に実質的に均一な濃度で存在することになる。
【0083】
前記非晶質炭素は、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスまたはこれらの組み合わせであってもよい。
例えば、前記Si-C複合体はシリコン粒子、そして結晶質炭素を含むことができる。
【0084】
前記シリコン粒子は、前記Si-C複合体の全体重量に対して1~60重量%で含まれてもよく、例えば3~60重量%で含まれてもよい。
【0085】
前記結晶質炭素は例えば黒鉛であってもよく、具体的には天然黒鉛、人造黒鉛、またはこれらの組み合わせであってもよい。
前記結晶質炭素の平均粒径は5μm~30μmであってもよい。
【0086】
前記負極活物質が黒鉛およびSi複合体を共に含む場合、前記黒鉛およびSi複合体は混合物の形態で含まれてもよく、この場合、前記黒鉛およびSi複合体は99:1~50:50の重量比で含まれてもよい。
さらに具体的には、前記黒鉛およびSi複合体は97:3~80:20、95:5~80:20の重量比で含まれてもよい。
【0087】
前記非晶質炭素前駆体としては、石炭系ピッチ、メソフェーズピッチ、石油系ピッチ、石炭系オイル、石油系重質油またはフェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂などの高分子樹脂を使用することができる。
【0088】
前記負極活物質層で、負極活物質の含量は負極活物質層全体重量に対して95重量%~99重量%であってもよい。
【0089】
本発明の一実施形態において、前記負極活物質層はバインダーを含み、選択的に導電材をさらに含んでもよい。前記負極活物質層で、バインダーの含量は負極活物質層全体重量に対して1重量%~5重量%であってもよい。また導電材をさらに含む場合には負極活物質を90重量%~98重量%、バインダーを1重量%~5重量%、導電材を1重量%~5重量%使用することができる。
【0090】
前記バインダーは負極活物質粒子を互いによく付着させ、また負極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たす。前記バインダーとしては非水溶性バインダー、水溶性バインダーまたはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0091】
前記非水溶性バインダーとしては、ポリビニルクロリド、カルボキシル化されたポリビニルクロリド、ポリビニルフルオライド、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリイミドまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0092】
前記水溶性バインダーとしては、ゴム系バインダーまたは高分子樹脂バインダーが挙げられる。前記ゴム系バインダーはスチレンブタジエンゴム、アクリレーテッドスチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、およびこれらの組み合わせから選択されるものであってもよい。前記高分子樹脂バインダーは、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンプロピレン共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、およびこれらの組み合わせから選択されるものであってもよい。
【0093】
前記負極バインダーとして水溶性バインダーを使用する場合、粘性を付与することができるセルロース系列化合物を増粘剤としてさらに含むことができる。このセルロース系列化合物としてはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはこれらのアルカリ金属塩などを1種以上混合して使用することができる。前記アルカリ金属としてはNa、KまたはLiを使用することができる。このような増粘剤使用含量は負極活物質100重量部に対して0.1重量部~3重量部であってもよい。
【0094】
前記導電材は電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず電子伝導性材料であればいずれのものでも使用可能であり、その例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0095】
前記負極集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0096】
リチウム二次電池の種類によって正極と負極の間にセパレータが存在することもある。このようなセパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオライドまたはこれらの2層以上の多層膜を使用することができ、ポリエチレン/ポリプロピレンの2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層セパレータなどのような混合多層膜を使用することができるのはもちろんである。
【0097】
前記リチウム二次電池は、充電上限電圧が4.35V以上であってもよい。例えば、充電上限電圧は4.35V~4.55Vであってもよい。
【0098】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の一実施例に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるのではない。
【実施例0099】
リチウム二次電池の製作
実施例1
正極活物質としてLiNi0.75Mn0.23Al0.02O2、バインダーとしてポリビニリデンフルオライド、および導電材としてアセチレンブラックをそれぞれ96:3:1の重量比で混合して、N-メチルピロリドンに分散させて正極活物質スラリーを製造した。
前記正極活物質スラリーを15μm厚さのアルミ箔の上にコーティングし、100℃で乾燥した後、圧延(press)して正極を製造した。
【0100】
負極活物質として人造黒鉛とSi複合体が93:7の重量比で混合された混合物を使用し、負極活物質とスチレンブタジエンゴムバインダーおよびカルボキシメチルセルロースをそれぞれ98:1:1の重量比で混合して、蒸留水に分散させて負極活物質スラリーを製造した。
【0101】
前記Si-C複合体は、人造黒鉛およびシリコン粒子を含むコアおよび前記コアの表面に石炭系ピッチがコーティングされたものを使用した。
前記負極活物質スラリーを10μm厚さの銅箔の上にコーティングし、100℃で乾燥した後、圧延(press)して負極を製造した。
前記製造された正極および負極と厚さ10μmのポリエチレン材質のセパレータを組み立てて電極組立体を製造し、電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。
【0102】
電解液組成は下記の通りである。
(電解液組成)
リチウム塩:LiPF
6 1.5M
非水性有機溶媒:エチルメチルカーボネート:ジメチルカーボネート(EMC:DMC=20:80の重量比)
添加剤:下記化学式1-1で表される化合物0.25重量部/フルオロエチレンカーボネート(FEC:fluoroethylene carbonate)10重量部/コハク酸ニトリル(SN:succinonitrile)0.5重量部
【化8】
(但し、前記電解液組成で、“重量部”は添加剤を除いた電解液全体(リチウム塩+非水性有機溶媒)100重量に対する添加剤の相対的な重量を意味する。)
【0103】
実施例2
前記電解液組成中、化学式1-1で表される化合物を0.5重量部に変更して添加したことを除いては前記実施例1と同様な方法でリチウム二次電池を製造した。
【0104】
実施例3
前記電解液組成中、非水性有機溶媒としてジメチルカーボネート(DMC)を単独で使用したことを除いては前記実施例1と同様な方法でリチウム二次電池を製造した。
【0105】
実施例4
前記電解液組成中、化学式1-1で表される化合物を0.5重量部に変更して添加および非水性有機溶媒としてジメチルカーボネート(DMC)を単独で使用したことを除いては前記実施例1と同様な方法でリチウム二次電池を製造した。
【0106】
実施例5
前記電解液組成中、化学式1-1の化合物の代わりに下記化学式1-2で表される化合物を0.5重量部使用したことを除いては前記実施例1と同様な方法でリチウム二次電池を製造した。
【化9】
【0107】
実施例6
前記電解液組成中、化学式1-1の化合物の代わりに下記化学式1-3で表される化合物を0.5重量部使用したことを除いては前記実施例1と同様な方法でリチウム二次電池を製造した。
【化10】
【0108】
比較例1
前記電解液組成中、化学式1-1で表される化合物を添加しないことを除いては前記実施例1と同様な方法でリチウム二次電池を製造した。
【0109】
比較例2
前記電解液組成中、非水性有機溶媒としてエチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート:ジメチルカーボネート(EC:EMC:DMC=20:10:70の重量比)を使用したことを除いては前記実施例1と同様な方法でリチウム二次電池を製造した。
【0110】
評価1:常温充放電サイクル特性評価
実施例1~6、および比較例1~2によるリチウム二次電池を次のような条件で充放電後、サイクル特性を評価し、その結果を表1に示した。
25℃、0.33C充電(CC/CV、4.45V、0.025C Cut-off)/1.0C放電(CC、2.5V Cut-off)条件で200サイクル充放電進行後容量維持率、および直流内部抵抗(DC-IR:Direct current internal resistance)の変化を測定した。
【0111】
DC-IRはSOC 50Cの電流を30秒間印加して放電しながら変化された電圧に基づいて下記式1および式2によって計算してその結果を下記表2に示した。
[式1]
容量維持率=(200サイクル後容量/1サイクル後容量)*100
[式2]
直流内部抵抗変化={(200サイクル後DC-IR)/(1サイクル後DC-IR)}*100
【0112】
【0113】
表1を参照すれば、本発明による添加剤使用時、常温寿命特性が改善されるのを確認することができる。
【0114】
評価2:高温(45℃)寿命特性評価
実施例1~6および比較例1~2で製作されたリチウム二次電池を45℃、0.33C充電(CC/CV、4.45V、0.025C Cut-off)/1.0C放電(CC、2.5V Cut-off)条件で200サイクル充放電進行後容量維持率、および直流内部抵抗(DC-IR:Direct current internal resistance)の変化を測定した。
【0115】
DC-IRはSOC 50Cの電流を30秒間印加して放電しながら変化された電圧に基づいて前記式1および式2によって計算してその結果を下記表2に示した。
【0116】
【0117】
表2を参照すれば、本発明による添加剤使用時、高温寿命の特性が改善されるのを確認することができる。
【0118】
評価3:高温保存特性評価(容量維持率/容量回復率/DC-IR)
実施例1~6、および比較例1~2によって製作されたリチウム二次電池に対して0.33Cで1回充放電を実施して充放電容量を測定した(高温保存前)。
また、実施例1~6、および比較例1~2によって製作されたリチウム二次電池をSOC100%(電池全体充電容量を100%にした時、100%充電容量になるように充電した状態)に充電を実施した後、60℃で30日間保存した後、0.33Cで3.0Vまで定電流条件で放電して初期放電容量を測定した。
【0119】
再び0.33Cで4.3Vまで定電流にする条件および0.02Cを終了電流にした定電圧条件で再充電し、0.33Cで3.0Vまで定電流条件で放電して2回の放電容量を測定した。前記初期放電容量に対する一番目の放電容量比を容量維持率(retention capacity)、二番目の放電容量を容量回復率(recovery capacity)と示した。
【0120】
実施例1~6および比較例1~2によって製作されたリチウム二次電池に対して△V/△I(電圧の変化/電流の変化)値で初期直流抵抗(DCIR)を測定した後、電池内部の最大エネルギー状態を満充電状態(SOC100%)とし、この状態で高温(60℃)にて30日間保管した後、直流抵抗を測定して、DCIR増加率(%)を下記式3によって計算して、その結果を下記表3に示した。
[式3]
DC-IR増加率=(30日後DCIR/初期DCIR)*100
【0121】
【0122】
上記表3を参照すれば、実施例1~6によるリチウム二次電池は比較例1~2と比較して高温保存時容量維持率と容量回復率が改善され抵抗変化率が抑制されることが分かる。
【0123】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるのではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明および添付した図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属するのは当然である。