(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058754
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】極端紫外光生成装置及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240422BHJP
H05G 2/00 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
G03F7/20 503
H05G2/00 K
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166045
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】植野 能史
(72)【発明者】
【氏名】北阪 翔伍
(72)【発明者】
【氏名】西村 祐一
【テーマコード(参考)】
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H197GA05
2H197GA24
2H197HA03
4C092AA06
4C092AA15
4C092AB12
4C092AC09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ドロップレットターゲットDLにおける照射位置のずれを抑制する。
【解決手段】極端紫外光生成装置は、ターゲット供給部と、ターゲット通過検出装置と、遅延回路と、レーザ装置と、ターゲット画像撮像装置と、プロセッサとを備え、プロセッサは、隣り合うドロップレットターゲットの間隔が不規則となるように加振素子を制御し、異なる時刻に撮像された複数の画像データを積算して積算画像データを生成し、積算画像データのなかで最も強調されたドロップレットターゲットの積算画像データにおける位置を特定し、最も強調されたドロップレットターゲットの位置から第2検出位置までの距離に基づいて遅延時間を設定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット物質を貯蔵するタンクと、前記タンク内の圧力を調節する圧力調節器と、前記タンクから前記ターゲット物質を吐出するノズルと、前記ノズルから吐出される前記ターゲット物質に振動を与えて前記ターゲット物質のドロップレットターゲットを発生させる加振素子とを含むターゲット供給部と、
前記ターゲット供給部からチャンバの内部に供給される前記ドロップレットターゲットの第1検出位置での通過を検出し、検出の度に通過タイミング信号を出力するターゲット通過検出装置と、
前記通過タイミング信号が入力され、前記通過タイミング信号の入力時から所定の遅延時間遅延させたタイミングで発光トリガ信号及び撮像トリガ信号を出力する遅延回路と、
前記発光トリガ信号が入力する度に、前記第1検出位置よりも前記ドロップレットターゲットの進行方向の下流側の第2検出位置にて前記ドロップレットターゲットに光を照射して極端紫外光を生成するレーザ装置と、
前記撮像トリガ信号が入力する度に、前記第2検出位置を含む領域内に位置する前記ドロップレットターゲットを撮像し、前記領域及び前記領域に位置する前記ドロップレットターゲットの画像データを生成するターゲット画像撮像装置と、
プロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、隣り合う前記ドロップレットターゲットの間隔が不規則となるように前記加振素子を制御し、異なる時刻に撮像された複数の前記画像データを積算して積算画像データを生成し、前記積算画像データのなかで最も強調された前記ドロップレットターゲットの前記積算画像データにおける位置を特定し、最も強調された前記ドロップレットターゲットの前記位置から前記第2検出位置までの距離に基づいて前記遅延時間を設定する
極端紫外光生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記プロセッサは、前記加振素子の振動数をゼロに制御する。
【請求項3】
請求項1に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記プロセッサは、前記ターゲット画像撮像装置が前記画像データを生成する度に、前記加振素子の振動数を異なる振動数に変更する。
【請求項4】
請求項1に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記プロセッサは、前記ドロップレットターゲットの速度に基づいて前記遅延時間の変更時間Δt1を設定して前記遅延時間を設定する。
【請求項5】
請求項4に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記プロセッサは、前記ドロップレットターゲットの速度を、前記加振素子の周波数と前記ターゲット画像撮像装置によって予め撮像された前記画像データから得られた隣り合う結合ドロップレットターゲットの間隔とから算出し、
前記結合ドロップレットターゲットは、隣り合う前記ドロップレットターゲットの間隔が一定であるドロップレットターゲットである。
【請求項6】
請求項4に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記プロセッサは、前記遅延時間を設定後に前記第2検出位置から前記領域内の前記ドロップレットターゲットまでの距離が閾値よりも大きい場合、前記遅延時間の再変更時間Δt2を前記変更時間Δt1未満に設定して前記遅延時間を再設定する。
【請求項7】
請求項1に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記プロセッサは、前記遅延時間を設定後、前記加振素子の振動数を制御し、隣り合う前記ドロップレットターゲットの間隔を一定にする。
【請求項8】
請求項1に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記プロセッサは、前記積算画像データのうちの非同期ドロップレットターゲットが位置する領域とのコントラストが最も大きい領域を設定し、前記コントラストが最も大きい領域の位置を最も強調された前記ドロップレットターゲットの前記位置として特定し、
前記非同期ドロップレットターゲットは、前記ターゲット画像撮像装置の撮像タイミングに非同期で隣り合う前記ドロップレットターゲットの間隔が不規則なドロップレットターゲットである。
【請求項9】
ターゲット物質を貯蔵するタンクと、前記タンク内の圧力を調節する圧力調節器と、前記タンクから前記ターゲット物質を吐出するノズルと、前記ノズルから吐出される前記ターゲット物質に振動を与えて前記ターゲット物質のドロップレットターゲットを発生させる加振素子とを含むターゲット供給部と、
前記ターゲット供給部からチャンバの内部に供給される前記ドロップレットターゲットの第1検出位置での通過を検出し、検出の度に通過タイミング信号を出力するターゲット通過検出装置と、
前記通過タイミング信号が入力され、前記通過タイミング信号の入力時から所定の遅延時間遅延させたタイミングで発光トリガ信号及び撮像トリガ信号を出力する遅延回路と、
前記発光トリガ信号が入力する度に、前記第1検出位置よりも前記ドロップレットターゲットの進行方向の下流側の第2検出位置にて前記ドロップレットターゲットに光を照射して極端紫外光を生成するレーザ装置と、
前記撮像トリガ信号が入力する度に、前記第2検出位置を含む領域内に位置する前記ドロップレットターゲットを撮像し、前記領域及び前記領域に位置する前記ドロップレットターゲットの画像データを生成するターゲット画像撮像装置と、
プロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、隣り合う前記ドロップレットターゲットの間隔が不規則となるように前記加振素子を制御し、異なる時刻に撮像された複数の前記画像データを積算して積算画像データを生成し、前記積算画像データのなかで最も強調された前記ドロップレットターゲットの前記積算画像データにおける位置を特定し、最も強調された前記ドロップレットターゲットの前記位置から前記第2検出位置までの距離に基づいて前記遅延時間を設定する極端紫外光生成装置によって生成される前記極端紫外光を露光装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記極端紫外光を露光する
ことを含む電子デバイスの製造方法。
【請求項10】
ターゲット物質を貯蔵するタンクと、前記タンク内の圧力を調節する圧力調節器と、前記タンクから前記ターゲット物質を吐出するノズルと、前記ノズルから吐出される前記ターゲット物質に振動を与えて前記ターゲット物質のドロップレットターゲットを発生させる加振素子とを含むターゲット供給部と、
前記ターゲット供給部からチャンバの内部に供給される前記ドロップレットターゲットの第1検出位置での通過を検出し、検出の度に通過タイミング信号を出力するターゲット通過検出装置と、
前記通過タイミング信号が入力され、前記通過タイミング信号の入力時から所定の遅延時間遅延させたタイミングで発光トリガ信号及び撮像トリガ信号を出力する遅延回路と、
前記発光トリガ信号が入力する度に、前記第1検出位置よりも前記ドロップレットターゲットの進行方向の下流側の第2検出位置にて前記ドロップレットターゲットに光を照射して極端紫外光を生成するレーザ装置と、
前記撮像トリガ信号が入力する度に、前記第2検出位置を含む領域内に位置する前記ドロップレットターゲットを撮像し、前記領域及び前記領域に位置する前記ドロップレットターゲットの画像データを生成するターゲット画像撮像装置と、
プロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、隣り合う前記ドロップレットターゲットの間隔が不規則となるように前記加振素子を制御し、異なる時刻に撮像された複数の前記画像データを積算して積算画像データを生成し、前記積算画像データのなかで最も強調された前記ドロップレットターゲットの前記積算画像データにおける位置を特定し、最も強調された前記ドロップレットターゲットの前記位置から前記第2検出位置までの距離に基づいて前記遅延時間を設定する極端紫外光生成装置によって生成される前記極端紫外光をマスクに照射して前記マスクの欠陥を検査し、
前記検査の結果を用いてマスクを選定し、
前記選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写する
ことを含む電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、極端紫外光生成装置及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、10nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、波長約13nmの極端紫外(EUV:Extreme UltraViolet)光を生成するための装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた半導体露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLaser Produced Plasma(LPP)式の装置の開発が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第9949354号明細書
【特許文献2】米国特許第10141186号明細書
【概要】
【0005】
本開示の一態様による極端紫外光生成装置は、ターゲット物質を貯蔵するタンクと、タンク内の圧力を調節する圧力調節器と、タンクからターゲット物質を吐出するノズルと、ノズルから吐出されるターゲット物質に振動を与えてターゲット物質のドロップレットターゲットを発生させる加振素子とを含むターゲット供給部と、ターゲット供給部からチャンバの内部に供給されるドロップレットターゲットの第1検出位置での通過を検出し、検出の度に通過タイミング信号を出力するターゲット通過検出装置と、通過タイミング信号が入力され、通過タイミング信号の入力時から所定の遅延時間遅延させたタイミングで発光トリガ信号及び撮像トリガ信号を出力する遅延回路と、発光トリガ信号が入力する度に、第1検出位置よりもドロップレットターゲットの進行方向の下流側の第2検出位置にてドロップレットターゲットに光を照射して極端紫外光を生成するレーザ装置と、撮像トリガ信号が入力する度に、第2検出位置を含む領域内に位置するドロップレットターゲットを撮像し、領域及び領域に位置するドロップレットターゲットの画像データを生成するターゲット画像撮像装置と、プロセッサと、を備え、プロセッサは、隣り合うドロップレットターゲットの間隔が不規則となるように加振素子を制御し、異なる時刻に撮像された複数の画像データを積算して積算画像データを生成し、積算画像データのなかで最も強調されたドロップレットターゲットの積算画像データにおける位置を特定し、最も強調されたドロップレットターゲットの位置から第2検出位置までの距離に基づいて遅延時間を設定してもよい。
【0006】
また、本開示の一態様による電子デバイスの製造方法は、ターゲット物質を貯蔵するタンクと、タンク内の圧力を調節する圧力調節器と、タンクからターゲット物質を吐出するノズルと、ノズルから吐出されるターゲット物質に振動を与えてターゲット物質のドロップレットターゲットを発生させる加振素子とを含むターゲット供給部と、ターゲット供給部からチャンバの内部に供給されるドロップレットターゲットの第1検出位置での通過を検出し、検出の度に通過タイミング信号を出力するターゲット通過検出装置と、通過タイミング信号が入力され、通過タイミング信号の入力時から所定の遅延時間遅延させたタイミングで発光トリガ信号及び撮像トリガ信号を出力する遅延回路と、発光トリガ信号が入力する度に、第1検出位置よりもドロップレットターゲットの進行方向の下流側の第2検出位置にてドロップレットターゲットに光を照射して極端紫外光を生成するレーザ装置と、撮像トリガ信号が入力する度に、第2検出位置を含む領域内に位置するドロップレットターゲットを撮像し、領域及び領域に位置するドロップレットターゲットの画像データを生成するターゲット画像撮像装置と、プロセッサと、を備え、プロセッサは、隣り合うドロップレットターゲットの間隔が不規則となるように加振素子を制御し、異なる時刻に撮像された複数の画像データを積算して積算画像データを生成し、積算画像データのなかで最も強調されたドロップレットターゲットの積算画像データにおける位置を特定し、最も強調されたドロップレットターゲットの位置から第2検出位置までの距離に基づいて遅延時間を設定する極端紫外光生成装置によって生成される極端紫外光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上に極端紫外光を露光することを含んでもよい。
【0007】
また、本開示の他の一態様による電子デバイスの製造方法は、ターゲット物質を貯蔵するタンクと、タンク内の圧力を調節する圧力調節器と、タンクからターゲット物質を吐出するノズルと、ノズルから吐出されるターゲット物質に振動を与えてターゲット物質のドロップレットターゲットを発生させる加振素子とを含むターゲット供給部と、ターゲット供給部からチャンバの内部に供給されるドロップレットターゲットの第1検出位置での通過を検出し、検出の度に通過タイミング信号を出力するターゲット通過検出装置と、通過タイミング信号が入力され、通過タイミング信号の入力時から所定の遅延時間遅延させたタイミングで発光トリガ信号及び撮像トリガ信号を出力する遅延回路と、発光トリガ信号が入力する度に、第1検出位置よりもドロップレットターゲットの進行方向の下流側の第2検出位置にてドロップレットターゲットに光を照射して極端紫外光を生成するレーザ装置と、撮像トリガ信号が入力する度に、第2検出位置を含む領域内に位置するドロップレットターゲットを撮像し、領域及び領域に位置するドロップレットターゲットの画像データを生成するターゲット画像撮像装置と、プロセッサと、を備え、プロセッサは、隣り合うドロップレットターゲットの間隔が不規則となるように加振素子を制御し、異なる時刻に撮像された複数の画像データを積算して積算画像データを生成し、積算画像データのなかで最も強調されたドロップレットターゲットの積算画像データにおける位置を特定し、最も強調されたドロップレットターゲットの位置から第2検出位置までの距離に基づいて遅延時間を設定する極端紫外光生成装置によって生成される極端紫外光をマスクに照射してマスクの欠陥を検査し、検査の結果を用いてマスクを選定し、選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写することを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は、電子デバイスの製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、極端紫外光生成装置に接続された検査装置の概略構成例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、比較例の極端紫外光生成装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、比較例の極端紫外光生成装置のターゲット通過検出装置及びターゲット画像撮像装置を説明する図である。
【
図5】
図5は、比較例のプロセッサの制御フローチャートの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す制御フローチャートのタイミングチャートを示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態1のプロセッサの制御フローチャートの一部を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態1の制御フローチャートの残りの一部を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態1の遅延時間の設定処理における制御フローチャートの一部である。
【
図10】
図10は、実施形態1の遅延時間の設定処理における制御フローチャートの残りの一部である。
【
図11】
図11は、生成された3つの画像データを示す図である。
【
図13】
図13は、遅延時間の微調整処理における制御フローチャートである。
【
図14】
図14は、実施形態2のプロセッサの制御フローチャートの一部を示す図である。
【
図15】
図15は、撮像回数と印加電圧周波数との関係を示す図である。
【
図16】
図16は、実施形態2の遅延時間の設定処理における制御フローチャートの一部である。
【実施形態】
【0009】
1.概要
2.電子デバイスの製造装置の説明
3.比較例の極端紫外光生成装置の説明
3.1 構成
3.2 動作
3.3 課題
4.実施形態1の極端紫外光生成装置の説明
4.1 構成
4.2 動作
4.3 作用・効果
5.実施形態2の極端紫外光生成装置の説明
5.1 構成
5.2 動作
5.3 作用・効果
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
1.概要
本開示の実施形態は、極端紫外(EUV)と呼ばれる波長の光を生成する極端紫外光生成装置、及び電子デバイスの製造装置に関するものである。なお、以下では、極端紫外光をEUV光という場合がある。
【0012】
2.電子デバイスの製造装置の説明
図1は、電子デバイス製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
図1に示す電子デバイス製造装置は、EUV光生成装置100及び露光装置200を含む。露光装置200は、反射光学系である複数のミラー211,212を含むマスク照射部210と、マスク照射部210の反射光学系とは別の反射光学系である複数のミラー221,222を含むワークピース照射部220とを含む。マスク照射部210は、EUV光生成装置100から入射したEUV光101によって、ミラー211,212を介してマスクテーブルMTのマスクパターンを照明する。ワークピース照射部220は、マスクテーブルMTによって反射されたEUV光101を、ミラー221,222を介してワークピーステーブルWT上に配置された不図示のワークピース上に結像させる。ワークピースはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。露光装置200は、マスクテーブルMTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、マスクパターンを反映したEUV光101をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにデバイスパターンを転写することで半導体デバイスを製造することができる。
【0013】
図2は、EUV光生成装置100に接続された検査装置300の全体の概略構成例を示す模式図である。検査装置300は、反射光学系である複数のミラー311,313,315を含む照明光学系310と、照明光学系310の反射光学系とは別の反射光学系である複数のミラー321,323、及び検出器325を含む検出光学系320とを含む。照明光学系310は、EUV光生成装置100から入射したEUV光101をミラー311,313,315で反射して、マスクステージ331に配置されているマスク333を照射する。マスク333は、パターンが形成される前のマスクブランクスを含む。検出光学系320は、マスク333からのパターンを反映したEUV光101をミラー321,323で反射して検出器325の受光面に結像させる。EUV光101を受光した検出器325は、マスク333の画像を取得する。検出器325は、例えばTDI(Time Delay Integration)カメラである。以上のような工程によって取得したマスク333の画像により、マスク333の欠陥を検査し、検査の結果を用いて、電子デバイスの製造に適するマスクを選定する。そして、選定したマスクに形成されたパターンを、露光装置200を用いて感光基板上に露光転写することで電子デバイスを製造することができる。
【0014】
3.比較例の極端紫外光生成装置の説明
3.1 構成
比較例のEUV光生成装置100について説明する。なお、本開示の比較例とは、出願人のみによって知られていると出願人が認識している形態であって、出願人が自認している公知例ではない。また、以下では、
図1に示すように外部装置としての露光装置200に向けてEUV光101を出射するEUV光生成装置100を用いて説明する。なお、
図2に示すように外部装置としての検査装置300に向けてEUV光101を出射するEUV光生成装置100についても、同様の作用・効果を得ることができる。
【0015】
図3は、本例のEUV光生成装置100の全体の概略構成例を示す模式図である。
図3に示すように、EUV光生成装置100は、チャンバ10、レーザ装置LD、レーザ光デリバリ光学系30、プロセッサ121、及び遅延回路122を主な構成として含む。
【0016】
チャンバ10は、密閉可能な容器である。チャンバ10は、低圧雰囲気の内部空間を囲う内壁10bを含む。また、チャンバ10はサブチャンバ15を含む。サブチャンバ15には、サブチャンバ15の壁を貫通するようにターゲット供給部40が取り付けられている。ターゲット供給部40は、タンク41、ノズル42、及び圧力調節器43を含み、ドロップレットターゲットDLをチャンバ10の内部空間に供給する。ドロップレットターゲットDLは、ドロップレットやターゲットと省略して呼ばれる場合がある。
【0017】
タンク41は、その内部にドロップレットターゲットDLとなるターゲット物質を貯蔵する。ターゲット物質は、スズを含む。タンク41の内部は、タンク41内の圧力を一定に調節する圧力調節器43と連通している。タンク41には、ヒータ44及び温度センサ45が取り付けられている。ヒータ44は、ヒータ電源46から供給される電流により、タンク41を加熱する。この加熱により、タンク41内のターゲット物質は溶融する。温度センサ45は、タンク41を介してタンク41内のターゲット物質の温度を測定する。圧力調節器43、温度センサ45、及びヒータ電源46は、プロセッサ121に電気的に接続されている。
【0018】
ノズル42は、タンク41に取り付けられ、ターゲット物質を吐出する。ノズル42には、加振素子であるピエゾ素子47が取り付けられている。ピエゾ素子47は、ピエゾ電源48に電気的に接続されており、ピエゾ電源48から印加される電圧で駆動される。ピエゾ電源48は、プロセッサ121に電気的に接続されている。ピエゾ素子47は、ノズル42から吐出されるターゲット物質に振動を与えてターゲット物質のドロップレットターゲットDLを発生させる。
【0019】
チャンバ10は、ターゲット回収部14を含む。ターゲット回収部14は、チャンバ10の内壁10bに取り付けられる箱体であり、チャンバ10の内壁10bに設けられる開口10aを介してチャンバ10の内部空間に連通している。開口10aはノズル42の直下に設けられ、ターゲット回収部14は、開口10aを通過してターゲット回収部14に到達する不要なドロップレットターゲットDLを回収するドレインタンクである。
【0020】
チャンバ10の内壁10bには、少なくとも1つの貫通孔が設けられている。この貫通孔はウィンドウ12によって塞がれており、ウィンドウ12をレーザ装置LDから出射されるパルス状のレーザ光90が透過する。
【0021】
また、チャンバ10の内部空間には、レーザ集光光学系13が配置されている。レーザ集光光学系13は、レーザ光集光ミラー13A及び高反射ミラー13Bを含む。レーザ光集光ミラー13Aは、ウィンドウ12を透過するレーザ光90を反射して集光する。高反射ミラー13Bは、レーザ光集光ミラー13Aが集光するレーザ光90を反射する。レーザ光集光ミラー13A及び高反射ミラー13Bの位置は、レーザ光マニュピレータ13Cにより、チャンバ10の内部空間でのレーザ光90の集光位置がプロセッサ121から指定された位置になるように調節される。当該集光位置はノズル42の直下に位置するように調節されており、レーザ光90が当該集光位置においてターゲット物質を照射すると、照射によってプラズマが生成されると共に、プラズマからEUV光101が生成される。プラズマが生成される領域をプラズマ生成領域ARと呼ぶことがある。
【0022】
チャンバ10の内部空間には、例えば、回転楕円面形状の反射面75aを含むEUV光集光ミラー75が配置される。反射面75aは、プラズマ生成領域ARにおいてプラズマから放射されるEUV光101を反射する。反射面75aは、第1焦点及び第2焦点を有する。反射面75aは、例えば、第1焦点がプラズマ生成領域ARに位置し、第2焦点が中間集光点IFに位置するように配置されてもよい。
図3では、第1焦点及び第2焦点を通る直線が焦点直線Laとして示されている。焦点直線Laは、反射面75aの中心軸方向に沿っている。
【0023】
また、EUV光生成装置100は、チャンバ10の内部空間及び露光装置200の内部空間を連通させる接続部19を含む。接続部19の内部には、アパーチャが形成された壁が配置されている。この壁は、アパーチャが第2焦点に位置するように配置されることが好ましい。接続部19はEUV光生成装置100におけるEUV光101の出射口であり、EUV光101は接続部19から出射されて露光装置200に入射する。
【0024】
また、EUV光生成装置100は、圧力センサ26を含む。圧力センサ26は、チャンバ10に取り付けられ、プロセッサ121に電気的に接続されている。圧力センサ26は、チャンバ10の内部空間の圧力を計測し、この圧力を示す信号をプロセッサ121に出力する。
【0025】
本開示のプロセッサ121は、制御プログラムが記憶された記憶装置と、当該制御プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)とを含む処理装置である。プロセッサ121は、本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされ、EUV光生成装置100全体を制御する。プロセッサ121には、圧力センサ26で計測されたチャンバ10の内部空間の圧力に係る信号や、露光装置200からバースト動作を指示するバースト信号等が入力される。プロセッサ121は、上記各種信号を処理し、例えば、ドロップレットターゲットDLが吐出されるタイミング、ドロップレットターゲットDLの吐出方向等を制御してもよい。また、プロセッサ121は、レーザ装置LDの出射タイミング、レーザ光90の進行方向や集光位置等を制御してもよい。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて後述のように他の制御が追加されてもよい。
【0026】
本例のプロセッサ121は、レーザ装置LDに、遅延回路122を介して電気的に接続されている。遅延回路122は、後述するターゲット通過検出装置からプロセッサ121を経由して通過タイミング信号を入力される。遅延回路122は、通過タイミング信号の入力時から所定の遅延時間だけ遅延させたタイミングで、レーザ装置LDに発光トリガ信号を出力する。
【0027】
レーザ装置LDは、発光トリガ信号が入力すると、レーザ光90を出射する。このようなレーザ装置LDは、バースト動作する光源であるマスターオシレータを含む。マスターオシレータは、バーストオンでパルス状のレーザ光90を出射する。マスターオシレータは、例えば、ヘリウムや窒素等が炭酸ガス中に混合される気体を放電によって励起することで、レーザ光90を出射するレーザ装置である。或いは、マスターオシレータは、量子カスケードレーザ装置でもよい。また、マスターオシレータは、Qスイッチ方式により、パルス状のレーザ光90を出射してもよい。また、マスターオシレータは、光スイッチや偏光子等を含んでもよい。なお、バースト動作とは、バーストオン時に連続するパルス状のレーザ光90を所定の繰り返し周波数で出射し、バーストオフ時にレーザ光90の出射を抑制する動作である。
【0028】
レーザ装置LDから出射するレーザ光90の進行方向は、レーザ光デリバリ光学系30によって調節される。レーザ光デリバリ光学系30は、レーザ光90の進行方向を調節する複数のミラー31,32を含む。ミラー31,32の少なくとも1つの位置は、不図示のアクチュエータで調節される。ミラー31,32の少なくとも1つの位置が調節されることで、レーザ光90がウィンドウ12から適切にチャンバ10の内部空間に伝搬し得る。
【0029】
チャンバ10には、エッチングガスをチャンバ10の内部空間に供給する中心側ガス供給部81が配置されている。上記のように、ターゲット物質はスズを含むため、エッチングガスは、例えば水素ガス濃度が100%と見做せる水素含有ガスである。或いは、エッチングガスは、例えば水素ガス濃度が3%程度のバランスガスでもよい。バランスガスには、窒素(N2)ガスやアルゴン(Ar)ガスが含まれている。ところで、ドロップレットターゲットDLを構成するターゲット物質がプラズマ生成領域ARでレーザ光90を照射されてプラズマ化すると、スズの微粒子及びスズの荷電粒子が生じる。これら微粒子及び荷電粒子を構成するスズは、チャンバ10の内部空間に供給されたエッチングガスに含まれる水素と反応する。スズが水素と反応すると、常温で気体のスタンナン(SnH4)になる。
【0030】
中心側ガス供給部81は、円錐台の側面状の形状をしており、EUV光集光ミラー75の中央部に形成された貫通孔75cを挿通している。中心側ガス供給部81は、コーンと呼ばれる場合がある。また、中心側ガス供給部81は、ノズルである中心側ガス供給口81aを含む。中心側ガス供給口81aは、反射面75aにおける焦点直線La上に設けられる。中心側ガス供給口81aは、反射面75aの中心側からプラズマ生成領域ARに向かってエッチングガスを供給する。なお、エッチングガスは、焦点直線Laに沿って反射面75aの中心側から反射面75aから離れる方向に沿って、中心側ガス供給口81aから供給されることが好ましい。中心側ガス供給口81aは、中心側ガス供給部81の不図示の配管を介してタンクである不図示のガス供給装置に接続されており、ガス供給装置からエッチングガスが供給される。ガス供給装置は、プロセッサ121によって駆動を制御される。不図示の配管には、バルブである不図示の供給ガス流量調節部が配置されてもよい。
【0031】
中心側ガス供給口81aは、エッチングガスをチャンバ10の内部空間に供給するガス供給口であると共に、レーザ光90がチャンバ10の内部空間に出射する出射口でもある。レーザ光90は、ウィンドウ12と中心側ガス供給口81aとを通過してチャンバ10の内部空間に向かって進行する。
【0032】
チャンバ10の内壁10bには、排気口10Eが設けられている。焦点直線La上には露光装置200が配置されるため、排気口10Eは、焦点直線Laの側方における内壁10bに設けられている。排気口10Eの中心軸に沿う方向は、例えば、焦点直線Laに直交している。また、排気口10Eは、焦点直線Laに垂直な方向から見る場合において、プラズマ生成領域ARを基準として反射面75aとは反対側に設けられている。排気口10Eは、チャンバ10の内部空間のガスを排気する。排気口10Eは排気管10Pに接続されており、排気管10Pは排気ポンプ60に接続されている。
【0033】
上記のようにターゲット物質がプラズマ生成領域ARにおいてプラズマ化する際、排ガスとしての残留ガスがチャンバ10の内部空間に生成される。残留ガスは、ターゲット物質のプラズマ化により生じたスズの微粒子及び荷電粒子と、それらがエッチングガスと反応したスタンナンと、未反応のエッチングガスとを含む。なお、荷電粒子の一部はチャンバ10の内部空間で中性化するが、この中性化した荷電粒子も残留ガスに含まれる。残留ガスは、排気口10Eと排気管10Pとを介して排気ポンプ60に吸引される。
【0034】
図4は、本例のEUV光生成装置100のチャンバ10に設けられるターゲット通過検出装置及びターゲット画像撮像装置を説明する図である。
図4では、
図3に示したEUV光集光ミラー75等の一部の部材の図示を省略している。以下では、単に、ターゲット通過検出装置を検出装置400、ターゲット画像撮像装置を撮像装置500と呼ぶ場合がある。
【0035】
検出装置400は、撮像装置500よりもドロップレットターゲットDLの進行方向の上流側に配置される。検出装置400はドロップレットターゲットDLの通過を検出し、撮像装置500はドロップレットターゲットDLを撮像する。
【0036】
検出装置400は、照明部410と検出部420とを含む。照明部410は、ドロップレットターゲットDLの軌道を基準として検出部420の反対側に配置される。照明部410及び検出部420が並ぶ方向は、当該軌道と直交しているが、当該軌道と非直交でもよい。照明部410及び検出部420はチャンバ10の外側にて内壁10bに取り付けられ、照明部410は内壁10bに設けられるウィンドウ731aと同軸上に配置され、検出部420は内壁10bに設けられるウィンドウ731bと同軸上に配置される。
【0037】
照明部410は、容器411と、容器411に収容される光源413及び照明光学系415とを含む。光源413は、プロセッサ121に電気的に接続されており、光源413から出射される光92の出射のタイミングを制御される。光源413は、例えば、単色のレーザ光を出射する光源でもよいし、複数の波長を含む光を出射するランプでもよい。照明光学系415は、集光レンズを含み、光92をウィンドウ731aを介してドロップレットターゲットDLの軌道上に集光する。
【0038】
検出部420は、容器421と、容器421に収容される受光光学系423及び光センサ425とを含む。受光光学系423は、光92を照明されたドロップレットターゲットDLの像を光センサ425上に転写するレンズを含む。光センサ425は、例えば、フォトダイオード等である。ドロップレットターゲットDLが光92を遮ると、光センサ425にて受光される光92の光量が変動する。光センサ425は、この変動に基づいて、ドロップレットターゲットDLの通過を知らせる通過タイミング信号を生成してプロセッサ121に出力する。以下において、検出装置400によるドロップレットターゲットDLの検出位置を第1検出位置P1と呼ぶ場合がある。第1検出位置P1は、検出装置400の照明部410及び検出部420の間に位置し、ドロップレットターゲットDLの軌道上における照明部410からの光92の集光位置である。
【0039】
撮像装置500は、照明部510と撮像部520とを含む。照明部510は、ドロップレットターゲットDLの軌道を基準として撮像部520の反対側に配置される。照明部510及び撮像部520が並ぶ方向は、当該軌道と直交しているが、当該軌道と非直交でもよい。照明部510及び撮像部520はチャンバ10の外側にて内壁10bに取り付けられ、照明部510は内壁10bに設けられるウィンドウ731cと同軸上に配置され、撮像部520は内壁10bに設けられるウィンドウ731dと同軸上に配置される。
【0040】
照明部510は、容器511と、容器511に収容される光源513及び照明光学系515とを含む。光源513は、プロセッサ121に電気的に接続されており、光源513からプラズマ生成領域ARにおけるドロップレットターゲットDLに出射される光94の出射のタイミングを制御される。光源513は、例えば、複数の波長を含む光を出射するフラッシュランプである。照明光学系515は、コリメートレンズを含む。
【0041】
撮像部520は、容器521と、容器521に収容される結像光学系523、シャッタ525、及び撮像本体部527とを含む。結像光学系523は、第1レンズ及び第2レンズを含む。シャッタ525は、遅延回路122に電気的に接続されている。撮像本体部527は、例えばCCD(Charge-Coupled Device)等であり、プロセッサ121及び遅延回路122に電気的に接続されている。プロセッサ121は、検出装置400から通過タイミング信号を入力されると、遅延回路122を介してシャッタ525及び撮像本体部527のそれぞれに撮像トリガ信号を通過タイミング信号の入力から所定の遅延時間遅らせて出力する。以下では、シャッタ525に対する撮像トリガ信号をシャッタトリガ信号と呼び、撮像本体部527に対する撮像トリガ信号を撮像トリガ信号と呼ぶ場合がある。シャッタ525は、遅延回路122からシャッタトリガ信号を入力されると極めて短い時間開き、その後に閉じる。撮像本体部527は、遅延回路122から撮像トリガ信号を入力されて、シャッタ525が開いている間に光94を受光する。そして、撮像本体部527は、ドロップレットターゲットDLを撮像して画像データを生成し、当該画像データを電気信号としてプロセッサ121に出力する。以下において、撮像装置500によるドロップレットターゲットDLの検出位置を第2検出位置P2と呼ぶ場合がある。第2検出位置P2は、第1検出位置P1よりもドロップレットターゲットDLの進行方向の下流側、かつプラズマ生成領域AR内、かつドロップレットターゲットDLの軌道上における照明部510からの光94の照明領域に位置する。
【0042】
以下では、ドロップレットターゲットDLの軌道に沿う方向をY方向、照明部410及び検出部420が並ぶ方向でありY方向に直交する方向をX方向、Y方向及びX方向に直交する方向をZ方向として説明することがある。なお、X方向は、照明部510及び撮像部520が並ぶ方向でもある。
【0043】
3.2 動作
次に、比較例のプロセッサ121の動作について説明する。
図5は、比較例のプロセッサ121の制御フローチャートの一例を示す図である。この制御フローは、ステップSP11~ステップSP16を含む。
図5に示す開始の状態では、プロセッサ121には、露光装置200の露光プロセッサからターゲット供給部40の駆動指示信号が入力されている。また、開始の状態では、プロセッサ121は、照明部410から光92を出射させ、照明部510から光94を出射させている。
【0044】
(ステップSP11)
本ステップでは、プロセッサ121は、タンク41内のターゲット物質を融点以上の所定温度に加熱及び維持するために、ヒータ電源46からヒータ44に電流を供給させ、ヒータ44を昇温させる。このとき、プロセッサ121は、温度センサ45からの出力に基づいて、ヒータ電源46からヒータ44へ供給される電流の値を調節し、ターゲット物質の温度を所定温度に制御する。なお、所定温度は、ターゲット物質がスズである場合、スズの融点231℃以上の温度であり、例えば240℃以上290℃以下である。こうしてドロップレットターゲットDLを吐出する準備が完了する。
【0045】
準備が完了すると、プロセッサ121は、ノズル42のノズル孔から溶融したターゲット物質が所定の速度で吐出するように、圧力調節器43によって、不図示のガス供給源から不活性ガスをタンク41内に供給し、タンク41内の圧力を調節する。この圧力下で、ターゲット物質は、ノズル42のノズル孔からチャンバ10中に吐出する。ノズル孔から吐出するターゲット物質は、ジェットの形態をとってもよい。このとき、プロセッサ121は、ドロップレットターゲットDLを生成するために、ピエゾ電源48からピエゾ素子47に所定波形の電圧を印加する。ピエゾ電源48は、電圧値の波形が例えば正弦波状、矩形波状、或いはのこぎり波状となるように、電圧を印加する。これにより、ピエゾ素子47は、所定の周波数で振動する。ピエゾ素子47の振動は、ノズル42を経由してノズル42のノズル孔から吐出するターゲット物質へと伝搬し得る。ターゲット物質は、この振動により所定周期で分断され、液滴のドロップレットターゲットDLとなり、隣り合うドロップレットターゲットDLの間隔が概ね一定となる。以下では、隣り合うドロップレットターゲットDLの間隔が概ね一定のドロップレットターゲットDLを、結合ドロップレットターゲットDLと呼ぶ場合がある。ドロップレットターゲットDLの直径は、概ね20μm以下である。プロセッサ121は、ドロップレットターゲットDLを吐出させると、制御フローをステップSP12に進める。なお、本例の以下の各ステップにおけるドロップレットターゲットDLは、全て結合ドロップレットターゲットDLである。
【0046】
ステップSP12に先立ち、ターゲット供給部40から吐出されたドロップレットターゲットDLは、ターゲット回収部14に進行する。この進行過程において、ドロップレットターゲットDLは、検出装置400によるドロップレットターゲットDLの第1検出位置P1、及び撮像装置500によるドロップレットターゲットDLの第2検出位置P2つまりプラズマ生成領域ARを通過する。
【0047】
ドロップレットターゲットDLが第1検出位置P1を通過する際、ドロップレットターゲットDLは検出装置400の光源413からの光92を遮る。これにより、検出装置400の光センサ425にて受光される光量が変動する。光センサ425は、この変動に基づいて、ドロップレットターゲットDLの通過を知らせる通過タイミング信号を生成してプロセッサ121に出力する。なお、ドロップレットターゲットDLが光92を遮る度に、光センサ425は通過タイミング信号を出力する。
【0048】
プロセッサ121は、入力された複数の通過タイミング信号にマスク処理を施し、入力された複数の通過タイミング信号のうちの所定の時間間隔の通過タイミング信号のみを認識する。認識された通過タイミング信号の数は、複数であるが、プロセッサ121に入力された通過タイミング信号の数よりも少ない。この認識された通過タイミング信号に対応するドロップレットターゲットDLは、撮像装置500の撮像対象及びレーザ装置LDのレーザ光90の照射対象となる。つまり、全てのドロップレットターゲットDLが撮像対象及び照射対象になるのではなく、全てのドロップレットターゲットDLのうちの概ね所定周期のドロップレットターゲットDLが撮像対象及び照射対象になる。そして、プロセッサ121は、マスク処理後に認識された通過タイミング信号のそれぞれに対して、撮像トリガ信号及び発光トリガ信号の起点となる信号であるトリガ信号を遅延回路122に入力する。このトリガ信号は、プロセッサ121を介して遅延回路122に入力する通過タイミング信号とも理解できる。遅延回路122は、トリガ信号が入力する度に、トリガ信号の入力時から所定の遅延時間遅延させたタイミングで、撮像トリガ信号をシャッタ525及び撮像本体部527に、発光トリガ信号をレーザ装置LDに出力する。従って、プロセッサ121は、マスク処理後に認識された通過タイミング信号の入力時から所定の遅延時間遅らせて、遅延回路122を介して撮像トリガ信号及び発光トリガ信号を出力すると理解できる。
【0049】
撮像トリガ信号が入力されると、シャッタ525が開き、撮像本体部527は、シャッタ525が開いている間において、第2検出位置P2を含む所定の撮像領域内に位置するドロップレットターゲットDLを撮像する。そして、撮像本体部527は、撮像領域及び撮像領域に位置するドロップレットターゲットDLの画像データを生成する。
【0050】
なお、撮像トリガ信号は、マスク処理後に認識された複数の通過タイミング信号のそれぞれに応じて個別に出力される。撮像装置500は、撮像トリガ信号が入力する度に、第2検出位置P2を含む撮像領域内に位置するドロップレットターゲットDLを撮像し、撮像領域及び撮像領域に位置するドロップレットターゲットDLの画像データを生成する。撮像本体部527は、それぞれの画像データを電気信号としてプロセッサ121に出力する。撮像本体部527が撮像トリガ信号によって駆動することで、撮像装置500は、検出装置400によって第1検出位置P1の通過を検出されると共にプロセッサ121のマスク処理によって測定対象となったドロップレットターゲットDLを撮像することができる。
【0051】
(ステップSP12)
本ステップでは、プロセッサ121は、ピエゾ素子47の周波数と、隣り合うドロップレットターゲットDLの間隔とから、ドロップレットターゲットDLの速度を算出する。隣り合うドロップレットターゲットDLの間隔は、撮像本体部527によって撮像されたドロップレットターゲットDLの画像データからプロセッサ121によって測定される。そして、プロセッサ121は、ノズル42のノズル孔から溶融したターゲット物質が目標となる速度で吐出すると共に、ドロップレットターゲットDLが当該速度でプラズマ生成領域ARに到達するように、圧力調節器43によってタンク41内の圧力を調節する。つまり、本ステップでは、プロセッサ121は、結合ドロップレットターゲットDLの速度を制御する。これにより、ドロップレットターゲットDLは、ノズル42からプラズマ生成領域ARに、所定の速度及び所定の周波数で供給される。プロセッサ121は、タンク41内の圧力を調節すると、制御フローをステップSP13に進める。
【0052】
(ステップSP13)
本ステップでは、プロセッサ121は、ステップSP12において算出したドロップレットターゲットDLの速度と、第1検出位置P1から第2検出位置P2までの距離とに基づいて遅延時間を算出し、算出した遅延時間を遅延回路122に設定する。距離は、予め設計された設計距離である。プロセッサ121は、遅延時間を固定値として遅延回路122に設定すると、制御フローをステップSP14に進める。
【0053】
(ステップSP14)
本ステップでは、プロセッサ121は、発光トリガ信号を、マスク処理後に認識された通過タイミング信号のそれぞれに応じて個別に遅延回路122を介して出力する。そして、発光トリガ信号は、レーザ装置LDにステップSP13において遅延回路122に設定された遅延時間遅れて入力する。レーザ装置LDは、発光トリガ信号が入力する度に、レーザ光90を出力し、第2検出位置P2にてドロップレットターゲットDLにレーザ光90を照射する。レーザ光90は、レーザ光デリバリ光学系30及びレーザ集光光学系13を通じて第2検出位置P2においてドロップレットターゲットDLを照射する。このドロップレットターゲットDLは、マスク処理によって認識された通過タイミング信号に対応するドロップレットターゲットDLである。なお、プロセッサ121は、レーザ光90がプラズマ生成領域ARに集光するように、レーザ集光光学系13のレーザ光マニュピレータ13Cを制御する。
【0054】
また、本ステップでは、プロセッサ121は、上記のように、撮像トリガ信号を、マスク処理後に認識された複数の通過タイミング信号のそれぞれに応じて個別に遅延回路122を介して出力する。これにより撮像装置500は、検出装置400によって第1検出位置P1の通過を検出されると共にプロセッサ121のマスク処理によって測定対象となったドロップレットターゲットDLを第2検出位置P2にて撮像することができる。
【0055】
プロセッサ121は、発光トリガ信号及び撮像トリガ信号を出力すると、制御フローをステップSP15に進める。
【0056】
(ステップSP15)
本ステップでは、レーザ光90がプラズマ生成領域ARでドロップレットターゲットDLに照射されると、当該照射によりプラズマが生成され、当該プラズマからEUV光101を含む光が生成される。プラズマ生成領域ARで発生したEUV光101を含む光のうち、EUV光101は、EUV光集光ミラー75によって中間集光点IFで集光された後、接続部19から露光装置200に入射する。
【0057】
(ステップSP16)
本ステップでは、プロセッサ121は、露光装置200から停止信号を入力されなければ制御フローをステップSP14に戻してEUV光101の生成を継続し、停止信号が入力されれば制御フローを終了する。
【0058】
図6は、
図5に示す制御フローチャートのタイミングチャートを示す図である。
図6(A)は、ステップSP11に対応する図であり、通過タイミング信号の生成のタイミングチャートを示す図である。上記したように、第1検出位置P1を通過するドロップレットターゲットDLのそれぞれに対して通過タイミング信号が生成される。通過タイミング信号の間隔は、一定である。
図6(A)の縦軸は、通過タイミング信号の生成のON、OFFを示す。
図6(A)の黒塗りの部分はマスク処理後に認識される通過タイミング信号であり、それ以外の部分はマスク処理によって認識されない通過タイミング信号である。
【0059】
図6(B)は、ステップSP11に対応する図であり、トリガ信号の生成のタイミングチャートを示す図である。トリガ信号は、マスク処理後に認識された通過タイミング信号と時間間隔T1とに基づいて生成され、上記したように発光トリガ信号及び撮像トリガ信号の起点となる信号である。
図6(B)の縦軸は、トリガ信号の生成のON、OFFを示す。
図6(B)では、時間間隔T1は通過タイミング信号に同期して生成するトリガ信号の遅延時間を示し、時間間隔dtはトリガ信号の時間間隔、つまりマスク処理によって認識される通過タイミング信号に対応する結合ドロップレットターゲットDLの時間間隔を示している。
【0060】
図6(C)は、ステップSP14に対応する図であり、レーザ装置LDが第2検出位置P2に到達したドロップレットターゲットDLにレーザ光90を照射する際の発光トリガ信号のタイミングチャートを示す図である。
図6(C)では、レーザ装置LDへのトリガ信号の入力からドロップレットターゲットDLへのレーザ光90の照射までの時間間隔をT2及びT3で示している。すなわち、レーザ光90は、時間間隔T2の後、レーザ装置LDから固定値であるT3で示す時間をかけてプラズマ生成領域ARに進行し、ドロップレットターゲットDLを照射する。なお、時間間隔T2は、遅延時間T1の後の時間間隔であり、レーザ光90がドロップレットターゲットDLに照射されるよう固定値であるT3の長さに応じて算出された長さに設定される。
図6(C)の縦軸は、発光トリガ信号のON、OFFを示す。
【0061】
図6(D)は、ステップSP14に対応する図であり、撮像装置500が第2検出位置P2に到達したドロップレットターゲットDLを撮像する際の撮像トリガ信号のタイミングチャートを示す図である。
図6(D)の縦軸は、撮像トリガ信号のON、OFFを示す。
図6(D)では、撮像装置500へのトリガ信号の入力から光94による撮像までの時間間隔をT4及びT5で示している。すなわち、光94は、時間間隔T4の後、光源513から固定値であるT5で示す時間をかけて撮像本体部527に到達する。なお、時間間隔T4は、遅延時間T1の後の時間間隔であり、ドロップレットターゲットDLが所望のタイミングで撮像されるよう固定値であるT5の長さに応じて算出した長さに設定される。
【0062】
3.3 課題
比較例のEUV光生成装置100では、ステップSP13で説明したように、遅延時間は、ドロップレットターゲットDLの速度と、第1検出位置P1から第2検出位置P2までの距離とに基づいて算出される。この距離は、検出装置400及び撮像装置500がチャンバ10に設置された後に実際に測定された測定距離であることが好ましいが、設置後に測定することが容易ではないため、予め設計された設計距離が用いられている。つまり、遅延時間は、ドロップレットターゲットDLの速度と、第1検出位置P1から第2検出位置P2までの設計距離とに基づいて算出される。ところで、EUV光生成装置100の組立の際に検出装置400及び撮像装置500がチャンバ10にて予め設定された設置位置からずれてしまうことがあるため、第1検出位置P1から第2検出位置P2までの距離は設計距離に対して誤差が生じることがある。この場合、遅延時間が正確に算出されない場合がある。これにより、レーザ光90が予め想定されたドロップレットターゲットDLとは別のドロップレットターゲットDLを照射してしまうことがある。さらにドロップレットターゲットDLの速度は微小変動するため、レーザ光90を想定されたドロップレットターゲットDLに照射したとしても、当該ドロップレットターゲットDLにおける照射位置がずれることがある。これにより、露光装置200や検査装置300から要求される性能を満たすEUV光101が出射されず、EUV光生成装置100の信頼性が低下するという懸念が生じる。
【0063】
そこで、以下の実施形態では、信頼性の低下が抑制され得るEUV光生成装置100が例示される。
【0064】
4.実施形態1の極端紫外光生成装置の説明
次に、実施形態1のEUV光生成装置100について説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0065】
4.1 構成
本実施形態のEUV光生成装置100の構成は、比較例のEUV光生成装置100の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0066】
4.2 動作
次に、本実施形態のプロセッサ121の動作について説明する。
図7は、本実施形態のプロセッサ121の制御フローチャートの一部を示す図である。
図8は、当該制御フローチャートの残りの一部を示す図である。本実施形態の制御フローチャートは、ステップSP21~ステップSP34を含む。
【0067】
図7に示す開始の状態では、プロセッサ121には、露光装置200の露光プロセッサからターゲット供給部40の駆動指示信号が入力されている。また、開始の状態では、プロセッサ121は、照明部410から光92を出射させ、照明部510から光94を出射させている。開始の状態では、プロセッサ121は、比較例と同様に、タンク41内のターゲット物質を溶融させるといった、ドロップレットターゲットDLを吐出する準備を完了させている。
【0068】
(ステップSP21)
本ステップからステップSP24は、EUV光生成装置100が本稼働する前の準備ステップである。本ステップでは、プロセッサ121は、パラメータを記憶装置から読み込む。本実施形態のパラメータは、ピエゾ素子47の目標印加電圧Vpz、ピエゾ素子47の目標印加電圧周波数Fpz、設計遅延時間td0、後述する非結合ドロップレットターゲットDLの撮像回数nに対する目標数n_target、閾値d_limit、及び撮像本体部527の撮像領域における観測領域の幅Lを含む。
【0069】
目標印加電圧Vpzは、当該電圧を印加されたピエゾ素子47の振動によって結合ドロップレットターゲットDLが吐出される電圧である。設計遅延時間td0は、第1検出位置P1から第2検出位置P2までの設計距離と結合ドロップレットターゲットDLの設計速度とから算出される時間である。結合ドロップレットターゲットDLの設計速度は、ノズル42のノズル孔と、ターゲット供給部40への背圧、つまり圧力調節器43によって調節されるタンク41内の圧力とによって予め算出されている。目標数n_targetは、2以上であり、後述する遅延時間tdの調整処理であるステップSP24にて用いられる。閾値d_limit及び観測領域の幅Lは、後述する遅延時間tdの微調整処理であるステップSP30にて用いられる。閾値d_limitは、第2検出位置P2から結合ドロップレットターゲットDLまでの距離の閾値である。観測領域は第2検出位置P2を含み、観測領域の幅Lは、ドロップレットターゲットDLの軌道に沿うY方向における長さであり、1つの結合ドロップレットターゲットDLが観測領域内の第2検出位置P2周辺に存在する大きさに設定される。プロセッサ121は、各種のパラメータを読み込むと、制御フローをステップSP22に進める。
【0070】
(ステップSP22)
本ステップでは、ステップSP11と同様に、プロセッサ121は、圧力調節器43によってタンク41内の圧力を調節し、タンク41内のターゲット物質をノズル42のノズル孔からチャンバ10中に吐出させる。このとき、プロセッサ121は、比較例と異なり、ピエゾ電源48からピエゾ素子47に目標印加電圧Vpz及び目標印加電圧周波数Fpzを印加して、ピエゾ素子47を振動させる。従って、本ステップでは、プロセッサ121は、ピエゾ素子47を駆動させて結合ドロップレットターゲットDLを生成して吐出させる。つまり、隣り合うドロップレットターゲットDLの間隔は、概ね一定となる。プロセッサ121は、結合ドロップレットターゲットDLとしてのドロップレットターゲットDLを吐出させると、制御フローをステップSP23に進める。
【0071】
ステップSP23に先立ち、ドロップレットターゲットDLが第1検出位置P1を通過すると、比較例と同様に、検出装置400は、通過タイミング信号を電気信号としてプロセッサ121に出力する。検出装置400は、第1検出位置P1を通過するドロップレットターゲットDLのそれぞれに対して通過タイミング信号を出力する。プロセッサ121は、入力された複数の通過タイミング信号にマスク処理を施し、所定の通過タイミング信号のみを認識する。また、プロセッサ121は、遅延回路122を介してシャッタ525及び撮像本体部527のそれぞれに撮像トリガ信号を、マスク処理後に認識された通過タイミング信号の入力から設計遅延時間td0と時間間隔T4との和の時間遅らせて出力する。これにより、さらに時間間隔T5の後にシャッタ525は開き、撮像本体部527は第2検出位置P2を含む撮像領域内に位置するドロップレットターゲットDLを撮像する。そして、撮像本体部527は、撮像領域及び撮像領域に位置するドロップレットターゲットDLの画像データを生成する。撮像本体部527は、生成した当該画像データを電気信号としてプロセッサ121に出力する。またプロセッサ121は、撮像トリガ信号を、マスク処理後に認識された複数の通過タイミング信号のそれぞれに応じて個別に出力する。これにより、撮像本体部527は、撮像トリガ信号が入力する度に、撮像し、画像データを生成及び出力する。
【0072】
(ステップSP23)
本ステップでは、ステップSP12と同様に、プロセッサ121は、ピエゾ素子47の周波数である目標印加電圧周波数Fpzと結合ドロップレットターゲットDLの間隔とから結合ドロップレットターゲットDLの速度DLvを算出し、結合ドロップレットターゲットDLの速度DLvを制御する。そして、プロセッサ121は、制御フローをステップSP24に進める。
【0073】
(ステップSP24)
本ステップでは、プロセッサ121は、後述する遅延時間tdの設定処理に移行する。遅延時間tdの設定処理では、比較例で説明した遅延時間T1に相当する遅延時間tdが設定され、遅延時間tdの設定処理が終了すると、プロセッサ121は、制御フローを
図8に示すステップSP25に進める。
【0074】
次に、
図8を用いて、ステップSP25~ステップSP34を説明する。ステップSP25以降のステップは、EUV光生成装置100が本稼働するステップである。
【0075】
(ステップSP25)
本ステップでは、ステップSP22と同様に、プロセッサ121は、ピエゾ素子47に目標印加電圧Vpz及び目標印加電圧周波数Fpzを印加させ、結合ドロップレットターゲットDLとしてのドロップレットターゲットDLを生成して吐出させる。プロセッサ121は、ドロップレットターゲットDLを吐出させると、制御フローをステップSP26に進める。
【0076】
なお、ドロップレットターゲットDLが第1検出位置P1を通過すると、比較例と同様に、検出装置400は、通過タイミング信号をプロセッサ121に出力する。検出装置400は、第1検出位置P1を通過するドロップレットターゲットDLのそれぞれに対して通過タイミング信号を出力する。プロセッサ121は、入力された複数の通過タイミング信号にマスク処理を施し、所定の通過タイミング信号のみを認識する。また、プロセッサ121は、遅延回路122を介してシャッタ525及び撮像本体部527のそれぞれに撮像トリガ信号を、マスク処理後に認識された通過タイミング信号の入力から遅延時間tdと時間間隔T4との和の時間遅らせて出力する。撮像本体部527は、撮像トリガ信号が入力する度に、さらに時間間隔T5の後に撮像し、画像データを生成及び出力する。
【0077】
(ステップSP26)
本ステップでは、ステップSP23と同様に、プロセッサ121は、ピエゾ素子47の周波数である目標印加電圧周波数FpzとドロップレットターゲットDLの間隔とからドロップレットターゲットDLの速度DLvを算出し、結合ドロップレットターゲットDLの速度DLvを制御する。そして、プロセッサ121は、制御フローをステップSP27に進める。
【0078】
(ステップSP27)
本ステップでは、プロセッサ121は、発光トリガ信号を、遅延回路122を介してレーザ装置LDに出力する。発光トリガ信号は、ステップSP24において設定された遅延時間tdによって、通過タイミング信号がプロセッサ121に入力されてから遅延時間tdと時間間隔T2との和の時間遅れてレーザ装置LDに入力する。レーザ装置LDは、発光トリガ信号を入力されると、さらに時間間隔T3の後にレーザ光90を出力する。レーザ光90は、レーザ光デリバリ光学系30及びレーザ集光光学系13を通じてプラズマ生成領域ARにおいてドロップレットターゲットDLを照射する。
【0079】
また、本ステップでは、プロセッサ121は、検出装置400からの通過タイミング信号を入力されると、遅延回路122を介してシャッタ525及び撮像本体部527のそれぞれに撮像トリガ信号を通過タイミング信号の入力から遅延時間tdと時間間隔T4との和の時間遅らせて出力する。これにより、さらに時間間隔T5の後に撮像装置500は、検出装置400によって第1検出位置P1の通過を検出されると共にプロセッサ121のマスク処理によって測定対象となった結合ドロップレットターゲットDLを撮像することができる。
【0080】
プロセッサ121は、発光トリガ信号及び撮像トリガ信号を出力すると、制御フローをステップSP28に進める。
【0081】
(ステップSP28)
本ステップでは、ステップSP15と同様に、レーザ光90がプラズマ生成領域ARでドロップレットターゲットDLに照射されると、EUV光101を含む光が放射される。EUV光101は、EUV光集光ミラー75によって中間集光点IFで集光された後、接続部19から露光装置200に入射する。
【0082】
ステップSP29~ステップSP34は、EUV光生成装置100が露光装置200からのEUV出力信号に基づいて本稼働するステップである。
【0083】
(ステップSP29)
本ステップでは、プロセッサ121は、EUV光101を連続して生成する場合、露光装置200から停止信号が入力されていない場合、或いは遅延時間tdが所定値から逸脱していない場合には、EUV光101の生成を継続するために、制御フローをステップSP30に進める。また、プロセッサ121は、露光装置200から停止信号が入力されていれば、EUV光101の生成を停止するために、制御フローをステップSP31に進める。また、プロセッサ121は、EUV光101の性能の未達等によりEUV光101を生成しない場合や、遅延時間tdが所定値から逸脱していた場合にも、露光装置200にEUV光101の生成を停止する必要があるか否かを判断させるために、制御フローをステップSP31に進める。
【0084】
(ステップSP30)
本ステップでは、プロセッサ121は、後述する遅延時間tdの微調整処理を行い、制御フローをステップSP27に戻す。
【0085】
(ステップSP31)
本ステップでは、プロセッサ121は、エラー信号を露光装置200に出力しない場合には制御フローをステップSP30に進め、エラー信号を露光装置200に出力する場合には制御フローをステップSP32に進める。プロセッサ121は、遅延時間tdが露光装置200が許容できる値の場合はエラー信号は出力せず、露光装置200から停止信号が入力されている場合や、遅延時間tdが露光装置200が許容できない値の場合には、エラー信号を出力する。
【0086】
(ステップSP32)
本ステップでは、プロセッサ121は、エラー信号の出力後、露光装置200からメンテナンス信号が入力されなければ待機し、メンテナンス信号が入力されれば制御フローをステップSP33に進める。
【0087】
(ステップSP33)
本ステップでは、プロセッサ121はEUV光生成装置100を停止させ、EUV光生成装置100のメンテナンスが行われる。EUV光生成装置100のメンテナンスが終わると、制御フローはステップSP34に進む。
【0088】
(ステップSP34)
本ステップでは、プロセッサ121は、EUV光生成装置100を再起動し、制御フローをステップSP22に戻す。
【0089】
次に、
図9及び
図10を用いて、ステップSP24の本実施形態の遅延時間tdの設定処理について説明する。
図9は、ステップSP24の本実施形態の遅延時間tdの設定処理におけるプロセッサ121の制御フローチャートの一部である。
図10は、当該制御フローチャートの残りの一部である。本実施形態の制御フローチャートは、ステップSP51~ステップSP64を含む。
【0090】
はじめに、
図9を用いて、ステップSP51~ステップSP57を説明する。ステップSP51~ステップSP57は、EUV光生成装置100が本稼働する前の準備ステップである。遅延時間tdの設定処理においては、比較例と異なりドロップレットターゲットDLとして非結合ドロップレットターゲットDLを用いる。非結合ドロップレットターゲットDLは、隣り合うドロップレットターゲットDLの間隔が不規則なドロップレットターゲットDLである。
【0091】
(ステップSP51)
本ステップでは、プロセッサ121は、非結合ドロップレットターゲットDLが発生するように、ピエゾ素子47に印加する電圧を制御する。本実施形態では、プロセッサ121は、ピエゾ素子47に印加する電圧をステップSP22で説明した目標印加電圧Vpzから0Vに変更する。これにより、ピエゾ素子47が停止して振動しないため、ピエゾ素子47の振動数がゼロに制御される。この状態で、ドロップレットターゲットDLが吐出されると、隣り合うドロップレットターゲットDLの間隔は、ステップSP22で説明した概ね一定の間隔から不規則な間隔に変更される。従って、ドロップレットターゲットDLは、非結合ドロップレットターゲットDLとして吐出される。なお、タンク41内の圧力が圧力調節器43によって調節されているため、吐出する非結合ドロップレットターゲットDLの速度は概ね一定である。プロセッサ121は、非結合ドロップレットターゲットDLであるドロップレットターゲットDLを吐出させると、制御フローをステップSP52に進める。
【0092】
(ステップSP52)
本ステップでは、プロセッサ121は、遅延時間tdを設計遅延時間td0に設定する。本ステップの設計遅延時間td0は、ステップSP21における設計遅延時間td0ではなく、第1検出位置P1から第2検出位置P2までの設計距離とステップSP23で算出されたドロップレットターゲットDLの速度DLvとから算出される。プロセッサ121は、遅延時間tdを設計遅延時間td0に設定すると、制御フローをステップSP53に進める。
【0093】
ステップSP53に先立ち、非結合ドロップレットターゲットDLが第1検出位置P1を通過すると、比較例と同様に、検出装置400は、通過タイミング信号をプロセッサ121に出力する。検出装置400は、第1検出位置P1を通過する非結合ドロップレットターゲットDLのそれぞれに対して通過タイミング信号を出力する。プロセッサ121は、入力された複数の通過タイミング信号にマスク処理を施し、所定の通過タイミング信号のみを認識する。プロセッサ121は、遅延回路122を介してシャッタ525及び撮像本体部527のそれぞれに撮像トリガ信号を、マスク処理後に認識された通過タイミング信号の入力から遅延時間tdと時間間隔T4との和の時間遅らせて出力する。
【0094】
(ステップSP53)
本ステップでは、プロセッサ121は、撮像トリガ信号を、マスク処理後に認識された複数の通過タイミング信号のそれぞれに応じて個別に出力する。撮像本体部527に最初の撮像トリガ信号が入力すると、撮像本体部527は撮像を開始する。また、撮像本体部527には複数の撮像トリガ信号が入力し、撮像本体部527は、撮像トリガ信号が入力する度に、撮像する。このため、互いに異なる時刻に撮像された複数の画像データが生成される。この画像データには、第2検出位置P2を含む撮像領域内に位置する非結合ドロップレットターゲットDLが写っている。撮像本体部527に最初の撮像トリガ信号が入力し、撮像本体部527が最初に撮像して最初の画像データを生成すると、制御フローをステップSP54に進める。
【0095】
(ステップSP54)
本ステップでは、プロセッサ121は、上記のように最初の画像データを生成すると、非結合ドロップレットターゲットDLの撮像回数nを1に設定し、撮像回数nをカウントし始め、制御フローをステップSP55に進める。
【0096】
(ステップSP55)
本ステップでは、プロセッサ121は、撮像回数nがステップSP21にて説明した目標数n_targetに到達していなければ、制御フローをステップSP56に進める。また、プロセッサ121は、撮像回数nが目標数n_targetに到達したならば、制御フローを
図10に示すステップSP58に進める。目標数n_targetは、2以上である。
【0097】
(ステップSP56)
本ステップでは、プロセッサ121は、ステップSP53にて撮像本体部527によって生成された画像データ、つまり第2検出位置P2を含む撮像領域内に非結合ドロップレットターゲットDLがある画像データをプロセッサ121の記憶装置に保存する。プロセッサ121は、保存する画像データを撮像回数nの画像データとして保存する。つまり、撮像回数が1回目であれば、プロセッサ121は、画像データを撮像回数が1回目の画像データとして保存し、現在の撮像回数nが2以上である場合は、プロセッサ121は、次々と生成される画像データを撮像回数nの画像データとしてプロセッサ121の記憶装置に保存する。以下では、保存された画像データを画像データDnと呼ぶ場合がある。プロセッサ121は、画像データDnを保存すると、制御フローをステップSP57に進める。
【0098】
(ステップSP57)
本ステップでは、プロセッサ121は、撮像回数nに1を加算して、制御フローをステップSP55に戻す。
【0099】
ステップSP53からステップSP57において、撮像本体部527は、撮像トリガ信号が入力する度に撮像し、複数の画像データDnが生成される。画像データが生成される度に、生成された画像データDnがプロセッサ121の記憶装置に保存され、撮像回数nが1加算される。そして、撮像回数nが目標数n_targetに到達するまで、プロセッサ121は、画像データDnを保存する。つまり、撮像回数nが目標数n_targetに到達するまで、撮像が繰り返され、複数の画像データDnがプロセッサ121の記憶装置に保存される。画像データDnの数は、目標数n_targetに等しい。そして、撮像回数nが目標数n_targetに到達すると、制御フローは、ステップSP58に進む。
【0100】
次に、
図10を用いて、ステップSP58~ステップSP64を説明する。ステップSP58~ステップSP64は、EUV光生成装置100が本稼働する前の準備ステップである。
【0101】
(ステップSP58)
本ステップでは、プロセッサ121は、非結合ドロップレットターゲットDLの生成及び撮像装置500を制御して非結合ドロップレットターゲットDLの撮像を停止する。非結合ドロップレットターゲットDLの生成の停止において、プロセッサ121は、ステップSP22と同様に、圧力調節器43によってタンク41内の圧力を調節し、ノズル42のノズル孔からチャンバ10中への結合ドロップレットターゲットDLを吐出させる。また、本ステップでは、プロセッサ121は、撮像回数nのカウントを停止する。プロセッサ121は、生成、撮像、及びカウントを停止すると、制御フローをステップSP59に進める。
【0102】
(ステップSP59)
本ステップでは、プロセッサ121は、プロセッサ121の記憶装置に保存されているn個の画像データDnを積算して積算画像データDΣを生成する。上記したように、遅延時間tdの設定処理では、ステップSP53からステップSP57において、目標数n_targetと同数の画像データDnが生成される。以下にて、画像データDnの数が3である場合を例にして、積算画像データDΣの生成について説明する。
【0103】
図11は、3つの画像データD1,D2,D3を示す図である。画像データD1,D2,D3は、互いに異なる時刻に撮像された画像データである。画像データD1,D2,D3において、第2検出位置P2から最も遠い順に、非結合ドロップレットターゲットDL1a~DL1c,DL2a~DL2c,DL3a~DL3cを示している。
【0104】
3つの画像データD1,D2,D3を比較すると、それぞれの画像データD1,D2,D3には、位置偏差のばらつきが小さく位置が概ねフィックスされた非結合ドロップレットターゲットDL1a,DL2a,DL3aと、位置偏差のばらつきが大きく位置がランダムな非結合ドロップレットターゲットDL1b,DL1c,DL2b,DL2c,DL3b,DL3cとが混在する。非結合ドロップレットターゲットDL1a,DL2a,DL3aは、マスク処理によって認識される通過タイミング信号に対応し、撮像装置500の撮像タイミングに同期する非結合ドロップレットターゲットDLである。これに対して、非結合ドロップレットターゲットDL1b,DL1c,DL2b,DL2c,DL3b,DL3cは、撮像装置500の撮像タイミングに非同期である非結合ドロップレットターゲットDLである。以下では、非結合ドロップレットターゲットDL1a,DL2a,DL3aを同期ドロップレットターゲットDL1a,DL2a,DL3aと呼び、非結合ドロップレットターゲットDL1b,DL1c,DL2b,DL2c,DL3b,DL3cを非同期ドロップレットターゲットDL1b,DL1c,DL2b,DL2c,DL3b,DL3cと呼ぶ場合がある。
【0105】
本ステップにおける複数の画像データD1,D2,D3の積算では、プロセッサ121は、画像データD1のあるピクセルの輝度値と、このピクセルに対応する画像データD2,D3のそれぞれのピクセルの輝度値とを足し合わせる。また、プロセッサ121は、この足し合わせを、ピクセル毎に行う。つまり、積算では、プロセッサ121は画像データD1,D2,D3のそれぞれのピクセルの輝度値を足し合わせており、積算画像データDΣは、画像データD1,D2,D3のそれぞれのピクセルの輝度値を足し合わせた画像データである。従って、積算画像データDΣとは、それぞれの画像データD1,D2,D3が重ね合わさった1つの画像データである。なお、積算では、プロセッサ121は画像データD1,D2,D3のそれぞれのピクセルの輝度値を足し合わせたうえで、それぞれのピクセルの輝度値に平均化処理を行って積算画像データDΣを生成してもよい。
【0106】
図12は、積算画像データDΣを示す図である。
図12では、見易さのために積算画像データDΣを
図11に示す画像データD1,D2,D3よりも大きく示している。積算画像データDΣでは、同期ドロップレットターゲットDL1a,DL2a,DL3aは、上記したように位置偏差のばらつきが小さいため、互いに重なる傾向にある。これに対して、非同期ドロップレットターゲットDL1b,DL1c,DL2b,DL2c,DL3b,DL3cは、上記したように位置偏差のばらつきが大きいため、互いに重ならない傾向にある。
図12では、同期ドロップレットターゲットDL1a,DL2aのうちの同期ドロップレットターゲットDL3aに重なる部分を破線で示している。
【0107】
このように、プロセッサ121は、積算画像データDΣを生成すると、制御フローをステップSP60に進める。
【0108】
(ステップSP60)
本ステップでは、プロセッサ121は、積算画像データDΣにおいて非同期ドロップレットターゲットDL1b,DL1c,DL2b,DL2c,DL3b,DL3cが位置する領域A2との明暗の差であるコントラストが最も大きい領域を領域A1として設定する。
【0109】
図12に示す積算画像データDΣにおいて、領域A2は、領域A1以外の領域であり、積算画像データDΣの背景となる領域である。領域A1は、同期ドロップレットターゲットDL1a,DL2a,DL3aが重なる領域である。
図12では、見易さのために領域A1を同期ドロップレットターゲットDL1a,DL2a,DL3aよりも大きく示している。領域A1は、領域A1と領域A2とのコントラストによって、領域A2に比べて積算画像データDΣにおいて人間の視覚的に強調されて目立ち易くなる。領域A1は、領域A2とのコントラストが最も大きいため、領域A2に比べて積算画像データDΣにおいて人間の視覚的に最も強調されて目立ち易くなる。
【0110】
画像データD1,D2,D3において、例えば、非結合ドロップレットターゲットDLが人間の視覚的に暗く写り、非結合ドロップレットターゲットDL以外の領域が非結合ドロップレットターゲットDLに比べて人間の視覚的に明るく写る場合、積算画像データDΣでは、領域A1は、領域A2に比べて人間の視覚的に暗く写る。領域A1は、画像データDnの数が多いほど、領域A1において互いに重なる同期ドロップレットターゲットDLの数が増えるため、暗く写る。上記とは逆に、例えば、非結合ドロップレットターゲットDLが人間の視覚的に明るく写り、非結合ドロップレットターゲットDL以外の領域が非結合ドロップレットターゲットDLに比べて人間の視覚的に暗く写る場合、積算画像データDΣでは、領域A1は、領域A2に比べて人間の視覚的に明るく写る。領域A1は、画像データDnの数が多いほど、領域A1において互いに重なる同期ドロップレットターゲットDLの数が増えるため、明るく写る。上記のように領域A1は、領域A2に比べて、暗く写るまたは明るく写るため、積算画像データDΣにおいて人間の視覚的に強調されて目立ち易くなる。
図12では、領域A1が目立つ様子を実線で示している。
【0111】
なお、積算画像データDΣにおいて、非同期ドロップレットターゲットDL1b,DL1c,DL2b,DL2c,DL3b,DL3cは、領域A2に溶け込み、領域A2に比べてコントラストが小さくなる。具体的には、画像データD2,D3において非同期ドロップレットターゲットDL1bに対応する領域は、積算画像データDΣにおける領域A2である。このため、積算画像データDΣにおける領域A2が領域A1に比べて人間の視覚的に明るく写る場合、積算画像データDΣにおける非同期ドロップレットターゲットDL1bは、画像データD2,D3における非同期ドロップレットターゲットDL1bに対応する領域によって明るくなる。上記とは逆に、積算画像データDΣにおける領域A2が領域A1に比べて人間の視覚的に暗く写る場合、積算画像データDΣにおける非同期ドロップレットターゲットDL1bは、画像データD2,D3における非同期ドロップレットターゲットDL1bに対応する領域によって明るくならない。上記において、非同期ドロップレットターゲットDL1bを用いて説明したが、他の非同期ドロップレットターゲットDL1c,DL2b,DL2c,DL3b,DL3cについても同様である。従って、非同期ドロップレットターゲットDL1b,DL1c,DL2b,DL2c,DL3b,DL3cは、領域A2に溶け込み、積算画像データDΣにおいて人間の視覚的に強調されず目立ち難くなる。
図12では、非同期ドロップレットターゲットDL1b,DL1c,DL2b,DL2c,DL3b,DL3cが目立たない様子を破線で示している。
【0112】
なお、本ステップにおける同期ドロップレットターゲットDL及び非同期ドロップレットターゲットDLの数は、特に限定されない。このため、それぞれの画像データD1,D2,D3において複数の同期ドロップレットターゲットDLが存在する場合、プロセッサ121は、第2検出位置P2に最も近い同期ドロップレットターゲットDLを用いて領域A1を設定すればよい。
【0113】
プロセッサ121は、領域A1を設定すると、制御フローをステップSP61に進める。
【0114】
(ステップSP61)
本ステップでは、プロセッサ121は、領域A1のY方向における中心位置P3を特定する。上記したように領域A1では同期ドロップレットターゲットDL1a,DL2a,DL3aが重なる。このため、領域A1は、同期ドロップレットターゲットDL1a,DL2a,DL3aからなり、積算画像データDΣのなかで最も強調された同期ドロップレットターゲットとみなせる。従って、中心位置P3は、互いに重なる同期ドロップレットターゲットDL1a,DL2a,DL3aのY方向における中心位置、つまり積算画像データDΣのなかで最も強調された同期ドロップレットターゲットのY方向における中心位置でもある。このように本ステップでは、プロセッサ121は、積算画像データDΣのなかで最も強調された同期ドロップレットターゲットDL1a,DL2a,DL3aからなる同期ドロップレットターゲットDLの積算画像データDΣにおける位置を特定する。つまり、プロセッサ121は、領域A1の位置を最も強調された同期ドロップレットターゲットの位置として特定する。本ステップでは、プロセッサ121は、中心位置P3を特定すると、制御フローをステップSP62に進める。
【0115】
(ステップSP62)
本ステップでは、プロセッサ121は、積算画像データDΣにおいて中心位置P3から第2検出位置P2までの距離Dを算出する。第2検出位置P2の座標は、積算画像データDΣで指定されている。プロセッサ121は、距離Dを算出すると、制御フローをステップSP63に進める。
【0116】
(ステップSP63)
本ステップでは、プロセッサ121は、遅延時間tdの変更時間Δt1を算出する。変更時間Δt1は、ステップSP62で算出された距離DをステップSP23で算出された結合ドロップレットターゲットDLの速度DLvで除した値である。プロセッサ121は、変更時間Δt1を算出すると、制御フローをステップSP64に進める。
【0117】
(ステップSP64)
本ステップでは、プロセッサ121は、ステップSP52にて設定した設計遅延時間td0にステップSP63で算出された変更時間Δt1を加算した値を遅延時間tdとして設定する。つまり、プロセッサ121は、ステップSP63で説明した結合ドロップレットターゲットDLの速度DLvに基づいて遅延時間の変更時間Δt1を設定して遅延時間tdを設定する。プロセッサ121は、遅延時間tdを設定すると、遅延時間tdの調整処理を終了し、制御フローをステップSP25に進める。この遅延時間tdは、比較例で説明した遅延時間T1に相当する。ステップSP25では、プロセッサ121は、遅延時間tdを設定後、ピエゾ素子47の振動数を制御し、隣り合うドロップレットターゲットDLの間隔を一定にする。
【0118】
次に、
図13を用いて、ステップSP30の遅延時間tdの微調整処理について説明する。
図13は、遅延時間tdの微調整処理におけるプロセッサ121の制御フローチャートである。本実施形態の制御フローチャートは、ステップSP81~ステップSP85を含む。ステップSP24の遅延時間tdの設定処理において遅延時間tdが設定された後においても、ドロップレットターゲットDLの速度の微小変動により、ドロップレットターゲットDLの進行方向においてドロップレットターゲットDLの位置がすれる場合がある。このずれを補正するために、遅延時間tdを本フローチャートでずれに応じて微調整する。
【0119】
(ステップSP81)
本ステップでは、プロセッサ121は、ステップSP21で説明した観測領域を用いて、ステップSP25で撮像された画像データから第2検出位置P2から観測領域内の結合ドロップレットターゲットDLまでの距離dを算出する。観測領域の幅Lは、ステップSP21で説明したように、1つの結合ドロップレットターゲットDLが観測領域内の第2検出位置P2周辺に存在する大きさに設定されており、距離dよりも長い。第2検出位置P2の座標は、画像データ内で指定されている。プロセッサ121は、距離dを算出すると、制御フローをステップSP82に進める。
【0120】
(ステップSP82)
本ステップでは、プロセッサ121は、距離dの絶対値がステップSP21で説明した閾値d_limit以下であれば、遅延時間tdの微調整処理を終了し、制御フローをステップSP27に戻す。また、プロセッサ121は、距離dの絶対値が閾値d_limitよりも大きければ、制御フローをステップSP83に進める。
【0121】
(ステップSP83)
本ステップでは、プロセッサ121は、結合ドロップレットターゲットDLが第2検出位置P2よりも結合ドロップレットターゲットDLの進行方向下流側に位置している場合、制御フローをステップSP84に進める。また、プロセッサ121は、結合ドロップレットターゲットDLが第2検出位置P2よりも結合ドロップレットターゲットDLの進行方向上流側に位置している場合、制御フローをステップSP85に進める。
【0122】
(ステップSP84)
本ステップでは、プロセッサ121は、遅延時間tdから遅延時間tdの再変更時間Δt2を減算した値を遅延時間tdとして設定し、遅延時間tdの微調整処理を終了し、制御フローをステップSP27に戻す。再変更時間Δt2は、変更時間Δt1よりも短い時間である。
【0123】
(ステップSP85)
本ステップでは、プロセッサ121は、遅延時間tdに遅延時間tdの再変更時間Δt2を加算した値を遅延時間tdとして設定し、遅延時間tdの微調整処理を終了し、制御フローをステップSP27に戻す。
【0124】
ステップSP84,SP85において、プロセッサ121は、遅延時間tdの再変更時間Δt2を、変更時間Δt1未満に設定する。従って、プロセッサ121は、ステップSP24の遅延時間tdの設定処理にて遅延時間tdを設定した後、ステップSP82において第2検出位置P2から撮像領域内の結合ドロップレットターゲットDLまでの距離の絶対値が閾値d_limitよりも大きい場合、変更時間Δt1未満の遅延時間tdの再変更時間Δt2を基に遅延時間tdを再設定する。
【0125】
4.3 作用・効果
本実施形態のプロセッサ121は、複数の画像データD1,D2,D3を積算して積算画像データDΣを生成し、積算画像データDΣのなかで最も強調されたドロップレットターゲットDLの積算画像データDΣにおける位置を特定し、最も強調されたドロップレットターゲットDLの位置から第2検出位置P2までの距離Dに基づいて遅延時間tdを設定する。プロセッサ121が遅延時間tdを設定すると、遅延回路122はマスク処理後に認識される通過タイミング信号のそれぞれに対して遅延時間td遅延させたタイミングで発光トリガ信号を出力する。これにより、予め想定された結合ドロップレットターゲットDL、つまりマスク処理によって認識された通過タイミング信号に対応する結合ドロップレットターゲットDLにレーザ光90を照射し得、当該ドロップレットターゲットDLにおける照射位置のずれが抑制され得る。従って、検出装置400及び撮像装置500がチャンバ10にて予め設定された設置位置からずれても、予め想定されたドロップレットターゲットDLとは別のドロップレットターゲットDLへのレーザ光90の照射が抑制され得、予め想定された結合ドロップレットターゲットDLにおける照射位置のずれが抑制され得る。また、ドロップレットターゲットDLの速度が微小変動しても、予め想定された結合ドロップレットターゲットDLにおける照射位置のずれが抑制され得る。従って、露光装置200や検査装置300から要求される性能を満たすレーザ光90が出射され得、EUV光生成装置100の信頼性の低下が抑制され得る。また、プロセッサ121は、積算画像データDΣから遅延時間tdを設定する。この構成によれば、検出装置400及び撮像装置500がチャンバ10に設置された後に第1検出位置P1から第2検出位置P2までの距離を実際に測定して遅延時間tdを設定する場合に比べて、遅延時間tdを短時間に設定し得る。また、この構成によれば、検出装置400及び撮像装置500がチャンバ10に設置された後に第1検出位置P1から第2検出位置P2までの距離の測定を不要にし得る。また、この構成によれば、検出装置400及び撮像装置500がチャンバ10にて予め設定された設置位置からずれていても、遅延時間tdのための検出装置400及び撮像装置500の設置位置の調整を不要にし得る。
【0126】
また、プロセッサ121は、ステップSP51において加振素子であるピエゾ素子47の振動数をゼロに制御する。この構成によれば、ピエゾ素子47が振動しないため、隣り合うドロップレットターゲットDLの間隔が不規則な非結合ドロップレットターゲットDLを生成し得る。
【0127】
また、プロセッサ121は、ステップSP24の遅延時間tdの設定処理にて遅延時間tdを設定した後に、ステップSP82において第2検出位置P2から撮像領域内の結合ドロップレットターゲットDLまでの距離dが閾値d_limitよりも大きい場合、変更時間Δt1未満の遅延時間の再変更時間Δt2を基に遅延時間tdを再設定する。この構成では、遅延時間tdを変更した後にドロップレットターゲットDLが第2検出位置P2からずれていても、遅延時間tdは再変更される。これにより、レーザ光90が検出装置400によって検出されたドロップレットターゲットDLとは別のドロップレットターゲットDLを照射してしまうことがさらに抑制され得る。
【0128】
5.実施形態2の極端紫外光生成装置の説明
次に、実施形態2のEUV光生成装置100について説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0129】
5.1 構成
本実施形態のEUV光生成装置100の構成は、比較例及び実施形態1のEUV光生成装置100の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0130】
5.2 動作
次に、本実施形態のプロセッサ121の動作について説明する。
図14は、本実施形態のプロセッサ121の制御フローチャートの一部を示す図である。本実施形態の制御フローチャートは、ステップSP21の代わりにステップSP91を含む点で実施形態1の制御フローチャートと異なる。ステップSP91は、EUV光生成装置100が本稼働する前の準備ステップである。
【0131】
実施形態1のEUV光生成装置100は、ピエゾ素子47に印加する電圧を0Vに変更して非結合ドロップレットターゲットDLを生成する。これに対して、本実施形態のEUV光生成装置100は、撮像装置500の撮像本体部527が画像データを生成する度に、ピエゾ素子47の印加電圧周波数を異なる印加電圧周波数に変更してドロップレットターゲットDLを生成する。隣り合うドロップレットターゲットDLの間隔は、ピエゾ素子47の振動数に依存するため、ピエゾ素子47の電圧の周波数を不規則に制御することにより、振動数が不規則に制御され、疑似的に間隔が不規則な結合ドロップレットターゲットDLを発生させる。
【0132】
(ステップSP91)
本ステップでは、プロセッサ121は、パラメータを記憶装置から読み込む。本実施形態のパラメータは、実施形態1のパラメータ及び撮像回数nのそれぞれに対するピエゾ素子47の印加電圧周波数fnpzを含む。
図15は、撮像回数nと印加電圧周波数fnpzとの関係を示す図である。nは、2以上である。それぞれの印加電圧周波数fnpzは、互いに異なる値であればよい。このため、撮像回数nが増加すると、印加電圧周波数fnpzは、上昇してもよいし、下降してもよいし、所定の倍数で増減してもよいし、ランダムの値に変化してもよい。印加電圧周波数f1pzは、目標印加電圧周波数Fpzであってもよい。それぞれの印加電圧周波数fnpzでは、結合ドロップレットターゲットDLが生成される。プロセッサ121は、各種のパラメータを読み込むと、制御フローをステップSP22に進める。本実施形態のステップSP22以降の動作は、実施形態1のステップSP22以降の動作と同じであるため、説明を省略する。
【0133】
また、本実施形態では、遅延時間tdの設定処理が実施形態1とは異なる。
図16は、本実施形態の遅延時間tdの設定処理におけるプロセッサ121の制御フローチャートの一部である。本実施形態の制御フローチャートでは、ステップSP51が省略され、ステップSP101がステップSP57とステップSP55との間に設けられる点で実施形態1の制御フローチャートと異なる。
【0134】
(ステップSP101)
本ステップでは、プロセッサ121は、ピエゾ素子47の印加電圧周波数を、現在の撮像回数nに対する印加電圧周波数fnpzに変更し、制御フローをステップSP55に戻す。ステップSP53からステップSP57及びステップSP101において、撮像本体部527が画像データを生成する度に、プロセッサ121は、ピエゾ素子47の印加電圧周波数fnpzを変更してドロップレットターゲットDLを生成する。そして、撮像回数nが目標数n_targetに到達するまで、撮像及び印加電圧周波数fnpzの変更が繰り返される。
【0135】
5.3 作用・効果
本実施形態のEUV光生成装置100では、プロセッサ121は、ステップSP101において、撮像装置500が画像データを生成する度に、ピエゾ素子47の振動数を異なる振動数に変更する。隣り合うドロップレットターゲットDLの間隔は、ピエゾ素子47の振動数に依存する。このため、この構成によれば、ピエゾ素子47が駆動しても、隣り合うドロップレットターゲットDLの間隔が不規則な結合ドロップレットターゲットDLを生成し得る。
【0136】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。従って、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。たとえば、「含む」、「有する」、「備える」、「具備する」などの用語は、「記載されたもの以外の構成要素の存在を除外しない」と解釈されるべきである。また、修飾語「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきであり、さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。