(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005884
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】電力制御システム
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20240110BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H02J1/00 306K
H02J7/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106317
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】520307713
【氏名又は名称】関西電力送配電株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 和孝
(72)【発明者】
【氏名】湧谷 栄之
(72)【発明者】
【氏名】松浦 康雄
(72)【発明者】
【氏名】國保 友佑
(72)【発明者】
【氏名】舟木 剛
【テーマコード(参考)】
5G165
5G503
【Fターム(参考)】
5G165DA01
5G165EA02
5G165EA03
5G165EA04
5G165EA10
5G165HA02
5G165HA03
5G165HA07
5G165HA09
5G165JA09
5G503AA06
5G503AA07
5G503BA02
5G503BB01
5G503DA04
5G503GB03
(57)【要約】
【課題】直流配電を低コストで導入可能であり、かつ、直流配電でのオフグリッド運用が容易な電力制御システムを提供することを目的の1つとする。
【解決手段】一実施形態に係る電力制御システムは、負荷機器Lと、充放電機器Bと、発電機器Gとのうちの少なくとも2つの機器と、少なくとも2つの機器の間を相互に接続して直流電力を伝送する配線Wとを備える。負荷機器Lは、負荷用変換器LCを介して配線Wに接続され、負荷用変換器LCは、配線Wの電圧が負荷用電圧範囲の範囲外にあるときに、負荷機器Lへの出力を抑制または停止するように制御する。充放電機器Bは、充放電用変換器BCを介して配線Wに接続され、充放電用変換器BCは、配線Wの電圧が充電用電圧範囲の範囲内にあるときに、充電電流または放電電流が所望の電流となるように制御する。発電機器Gは、発電用変換器GCを介して配線Wに接続され、発電用変換器GCは、配線Wの電圧が発電用電圧範囲の範囲外にあるときに、配線Wへの出力を抑制または停止するように制御する。
【選択図】
図2D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力の需給を制御する電力制御システムであって、
前記電力制御システムは、
電力を消費する負荷機器と、
充放電可能である充放電機器と、
電力を生成する発電機器と
のうちの少なくとも2つの機器と、
前記少なくとも2つの機器の間を相互に接続して直流電力を伝送する配線と
を備え、
前記電力制御システムが前記負荷機器を備える場合、前記負荷機器は、負荷用変換器を介して前記配線に接続され、
前記負荷用変換器には、負荷用電圧範囲が設定され、
前記負荷用変換器は、前記配線の電圧を検知し、前記配線の電圧が前記負荷用電圧範囲の範囲外にあるときに、前記負荷機器に供給する電流を減少させるか、または前記負荷機器への出力を停止するように制御する制御機能を有し、
前記電力制御システムが前記充放電機器を備える場合、前記充放電機器は、充放電用変換器を介して前記配線に接続され、
前記充放電用変換器には、充電用電圧範囲および放電用電圧範囲を含む充放電用電圧範囲が設定され、
前記充放電用変換器は、前記配線の電圧を検知し、前記配線の電圧が前記充電用電圧範囲の範囲内にあるときに、前記配線の電圧の上昇と共に、充電電流を増加させ、前記配線の電圧が前記放電用電圧範囲の範囲内にあるときに、前記配線の電圧の降下と共に、放電電流を増加させるように制御する制御機能を有し、
前記電力制御システムが前記発電機器を備える場合、前記発電機器は、発電用変換器を介して前記配線に接続され、
前記発電用変換器には、発電用電圧範囲が設定され、
前記発電用変換器は、前記配線の電圧を検知し、前記配線の電圧が前記発電用電圧範囲の範囲外にあるときに、前記配線に供給する電流を減少させるか、または前記配線への出力を停止するように制御する制御機能を有する、
電力制御システム。
【請求項2】
前記電力制御システムは、少なくとも前記充放電機器を備え、
前記充放電用変換器は、前記充放電機器の定格容量が大きいほど、前記配線の電圧の上昇分に対する前記充電電流の増加分、または前記配線の電圧の降下分に対する前記放電電流の増加分を大きくする、
請求項1記載の電力制御システム。
【請求項3】
前記電力制御システムは、少なくとも前記充放電機器を備え、
前記充放電用変換器は、前記充電電流I
B
+が、下記式1を満たし、前記放電電流I
B
-が、下記式2を満たすように、前記充放電機器の充放電を制御する、
請求項2記載の電力制御システム。
(式1および式2において、V
dcは、前記配線の電圧であり、V
B0は、前記充電用電圧範囲と前記放電用電圧範囲が切り替わる、前記配線の閾値電圧であり、ΔV
Bは、前記最大電圧と前記最小電圧の差分電圧であり、Qは、前記充放電機器の定格容量であり、0≦n≦2である。
式1および式2において、前記充電電流I
B
+は正の電流として示され、前記放電電流I
B
-は負の電流として示される。)
【請求項4】
前記電力制御システムは、少なくとも前記充放電機器を備え、
前記充放電用変換器は、前記充放電機器の充電率が大きいほど、前記充電用電圧範囲と前記放電用電圧範囲が切り替わる、前記配線の閾値電圧を大きくする、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電力制御システム。
【請求項5】
前記電力制御システムは、少なくとも前記負荷機器を備え、
前記負荷用変換器は、前記配線の電圧が前記負荷用電圧範囲の範囲外にあるときに、前記負荷機器に供給する電流を直線的に減少させる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電力制御システム。
【請求項6】
前記電力制御システムは、少なくとも前記発電機器を備え、
前記発電用変換器は、前記配線の電圧が前記発電用電圧範囲の範囲外にあるときに、前記配線に供給する電流を直線的に減少させる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電力制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーの普及が進んでおり、これに伴い、再生可能エネルギーとの親和性の高い直流配電が注目されている。直流配電において、直流電力系統と連系する需要家は、たとえば、電力を消費する負荷機器、再生可能エネルギーから電力を生成する発電機器、および発電機器が生成した電力や上位系統から供給される電力を充放電する充放電機器などの機器を有している。これらの機器は、配線に直接接続されず、DC-DCコンバータやDC-ACインバータなどの変換器を介して、配線にそれぞれ接続されている(特許文献1および2参照)。
【0003】
一般的に、直流配電では、直流電力系統の電圧を維持するために、交流の系統電源や充放電機器を電圧源として設定している。需要家において、発電機器、充放電機器、および負荷機器に接続される変換器は、所定の商用電力(たとえば、100Vの交流電力)が負荷機器に供給されるように、直流電力系統全体で集中制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-146314号公報
【特許文献2】特表2021-509002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような集中制御方式では、直流配電の導入にあたって、変換器を集中制御するための通信網や制御システムを設ける必要がある。また、災害時などであっても直流電力系統の電圧を維持するために、大掛かりな電圧源を設ける必要がある。さらに、需要家や電気機器が増減する際に、その増減に応じて、通信網や制御システムを再構築する必要がある。そのため、直流配電の導入がコスト高となってしまう。
【0006】
また、上述のような集中制御方式では、需要家を直流電力系統から解列させて、オフグリッド運用する際に、制御システムを切り替える必要がある。また、オフグリッド運用に際しては、電圧源と各機器との位置関係に応じて電圧が異なるため、各機器の変換器において、制御システムを変更する必要がある。そのため、オフグリッド運用に手間が掛かってしまう。
【0007】
本発明は、直流配電を低コストで導入可能であり、かつ、直流配電でのオフグリッド運用が容易な電力制御システムを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る電力制御システムは、電力の需給を制御する電力制御システムであって、前記電力制御システムは、電力を消費する負荷機器と、充放電可能である充放電機器と、電力を生成する発電機器とのうちの少なくとも2つの機器と、前記少なくとも2つの機器の間を相互に接続して直流電力を伝送する配線とを備える。前記電力制御システムが前記負荷機器を備える場合、前記負荷機器は、負荷用変換器を介して前記配線に接続され、前記負荷用変換器には、負荷用電圧範囲が設定され、前記負荷用変換器は、前記配線の電圧を検知し、前記配線の電圧が前記負荷用電圧範囲の範囲外にあるときに、前記負荷機器に供給する電流を減少させるか、または前記負荷機器への出力を停止するように制御する制御機能を有する。前記電力制御システムが前記充放電機器を備える場合、前記充放電機器は、充放電用変換器を介して前記配線に接続され、前記充放電用変換器には、充電用電圧範囲および放電用電圧範囲を含む充放電用電圧範囲が設定され、前記充放電用変換器は、前記配線の電圧を検知し、前記配線の電圧が前記充電用電圧範囲の範囲内にあるときに、前記配線の電圧の上昇と共に、充電電流を増加させ、前記配線の電圧が前記放電用電圧範囲の範囲内にあるときに、前記配線の電圧の降下と共に、放電電流を増加させるように制御する制御機能を有する。前記電力制御システムが前記発電機器を備える場合、前記発電機器は、発電用変換器を介して前記配線に接続され、前記発電用変換器には、発電用電圧範囲が設定され、前記発電用変換器は、前記配線の電圧を検知し、前記配線の電圧が前記発電用電圧範囲の範囲外にあるときに、前記配線に供給する電流を減少させるか、または前記配線への出力を停止するように制御する制御機能を有する。
【0009】
前記電力制御システムは、少なくとも前記充放電機器を備える場合に、前記充放電用変換器は、前記充放電機器の定格容量が大きいほど、前記配線の電圧の上昇分に対する前記充電電流の増加分、または前記配線の電圧の降下分に対する前記放電電流の増加分を大きくしてもよい。
【0010】
前記電力制御システムは、少なくとも前記充放電機器を備える場合に、前記充放電用変換器は、前記充電電流I
B
+が、下記式1を満たし、前記放電電流I
B
-が、下記式2を満たすように、前記充放電機器の充放電を制御してもよい。
(式1および式2において、V
dcは、前記配線の電圧であり、V
B0は、前記充電用電圧範囲と前記放電用電圧範囲が切り替わる、前記配線の閾値電圧であり、ΔV
Bは、前記最大電圧と前記最小電圧の差分電圧であり、Qは、前記充放電機器の定格容量であり、0≦n≦2である。式1および式2において、前記充電電流I
B
+は正の電流として示され、前記放電電流I
B
-は負の電流として示される。)
【0011】
前記電力制御システムは、少なくとも前記充放電機器を備える場合に、前記充放電用変換器は、前記充放電機器の充電率が大きいほど、前記充電用電圧範囲と前記放電用電圧範囲が切り替わる、前記配線の閾値電圧を大きくしてもよい。
【0012】
前記電力制御システムは、少なくとも前記負荷機器を備える場合に、前記負荷用変換器は、前記配線の電圧が前記負荷用電圧範囲の範囲外にあるときに、前記負荷機器に供給する電流を直線的に減少させてもよい。
【0013】
前記電力制御システムは、少なくとも前記発電機器を備える場合に、前記発電用変換器は、前記配線の電圧が前記発電用電圧範囲の範囲外にあるときに、前記配線に供給する電流を直線的に減少させてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態によれば、直流配電を低コストで導入可能であり、かつ、直流配電でのオフグリッド運用が容易な電力制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電力制御システムの一例を概念的に示すブロック図である。
【
図2A】本発明の一実施形態に係る電力制御システムの構成単位の一例(その1)を概念的に示すブロック図である。
【
図2B】本発明の一実施形態に係る電力制御システムの構成単位の一例(その2)を概念的に示すブロック図である。
【
図2C】本発明の一実施形態に係る電力制御システムの構成単位の一例(その3)を概念的に示すブロック図である。
【
図2D】本発明の一実施形態に係る電力制御システムの構成単位の一例(その4)を概念的に示すブロック図である。
【
図3A】本発明の一実施形態に係る電力制御システムの構成単位の一例(その5)を概念的に示すブロック図である。
【
図3B】本発明の一実施形態に係る電力制御システムの構成単位の一例(その6)を概念的に示すブロック図である。
【
図3C】本発明の一実施形態に係る電力制御システムの構成単位の一例(その7)を概念的に示すブロック図である。
【
図3D】本発明の一実施形態に係る電力制御システムの構成単位の一例(その8)を概念的に示すブロック図である。
【
図4A】本発明の一実施形態に係る電力制御システムに任意で含まれる構成単位の一例(その1)を概念的に示すブロック図である。
【
図4B】本発明の一実施形態に係る電力制御システムに任意で含まれる構成単位の一例(その2)を概念的に示すブロック図である。
【
図4C】本発明の一実施形態に係る電力制御システムに任意で含まれる構成単位の一例(その3)を概念的に示すブロック図である。
【
図4D】本発明の一実施形態に係る電力制御システムに任意で含まれる構成単位の一例(その4)を概念的に示すブロック図である。
【
図4E】本発明の一実施形態に係る電力制御システムに任意で含まれる構成単位の一例(その5)を概念的に示すブロック図である。
【
図4F】本発明の一実施形態に係る電力制御システムに任意で含まれる構成単位の一例(その6)を概念的に示すブロック図である。
【
図5A】負荷用変換器によって制御された負荷機器の負荷特性(電流電圧特性)の一例(その1)を示すグラフである。
【
図5B】負荷用変換器によって制御された負荷機器の負荷特性(電力電圧特性)の一例(その1)を示すグラフである。
【
図6A】負荷用変換器によって制御された負荷機器の負荷特性(電流電圧特性)の一例(その2)を示すグラフである。
【
図6B】負荷用変換器によって制御された負荷機器の負荷特性(電力電圧特性)の一例(その2)を示すグラフである。
【
図7A】充放電用変換器によって制御された充放電機器の充放電特性(電流電圧特性)の一例を示すグラフである。
【
図7B】充放電用変換器によって制御された充放電機器の充放電特性(電流電圧特性)の参考例を示すグラフである。
【
図8】充放電用変換器によって、充放電機器に応じて、配線の電圧の上昇分/降下分に対する充放電電流の増加分を変化させた様子を示すグラフである。
【
図9】複数の充放電機器を含む電力制御システムにおいて、充放電用変換器によって制御された各充放電機器の充放電特性(電流電圧特性)の一例を示すグラフ(その1)であり、(a)は、定格容量の大きい充放電機器に対応し、(b)は、定格容量の小さい充放電機器に対応する。
【
図10】複数の充放電機器を含む電力制御システムにおいて、充放電用変換器によって制御された各充放電機器の充放電特性(電流電圧特性)の一例を示すグラフ(その2)であり、(a)は、定格容量の大きい充放電機器に対応し、(b)は、定格容量の小さい充放電機器に対応する。
【
図11】充放電用変換器によって、充放電を切り替える閾値電圧を変化させた様子を示すグラフである。
【
図12A】発電用変換器によって制御された発電機器の発電特性(電流電圧特性)の一例(その1)を示すグラフである。
【
図12B】発電用変換器によって制御された発電機器の発電特性(電力電圧特性)の一例(その1)を示すグラフである。
【
図13A】発電用変換器によって制御された発電機器の発電特性(電流電圧特性)の一例(その2)を示すグラフである。
【
図13B】発電用変換器によって制御された発電機器の発電特性(電力電圧特性)の一例(その2)を示すグラフである。
【
図14】本発明の一実施形態に係る電力制御システムによる電力の需給の制御の具体例1を示すグラフ(その1)であり、(a)は、負荷機器の負荷特性(電流電圧特性)を示し、(b)は、発電機器の発電特性(電流電圧特性)を示し、(c)は、充放電機器の発電特性(電流電圧特性)を示している。
【
図15】本発明の一実施形態に係る電力制御システムによる電力の需給の制御の具体例1を示すグラフ(その2)であり、(a)は、負荷機器の負荷特性(電流電圧特性)を示し、(b)は、発電機器の発電特性(電流電圧特性)を示し、(c)は、充放電機器の発電特性(電流電圧特性)を示している。
【
図16】本発明の一実施形態に係る電力制御システムによる電力の需給の制御の具体例1を示すグラフ(その3)であり、(a)は、負荷機器の負荷特性(電流電圧特性)を示し、(b)は、発電機器の発電特性(電流電圧特性)を示し、(c)は、充放電機器の発電特性(電流電圧特性)を示している。
【
図17】本発明の一実施形態の具体例2および具体例3に係る電力制御システムを概念的に示すブロック図である。
【
図18】本発明の一実施形態に係る電力制御システムによる電力の需給の制御の具体例2を示すグラフであり、(a)は、ある時点の状態を示し、(b)は、(a)の時点から所定の時間を経過した後の状態を示し、(c)は、(b)の時点から所定の時間を経過した後の状態を示している。
【
図19】本発明の一実施形態に係る電力制御システムによる電力の需給の制御の具体例3を示すグラフであり、(a)は、ある時点の状態を示し、(b)は、(a)の時点から所定の時間を経過した後の状態を示し、(c)は、(b)の時点から所定の時間を経過した後の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の電力制御システムを具体的な実施形態として説明する。なお、以下に示される実施形態は、あくまで例示であり、本発明の電力制御システムは、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
[本発明の一実施形態に係る電力制御システム]
図1は、本発明の一実施形態に係る電力制御システムの一例を示している。
図2A~
図2D、
図3A~
図3D、および
図4A~
図4Fは、電力システムの構成単位の例を示している。なお、
図1において、二点鎖線で囲まれる構成単位C1~C4、CS1~CS6は、
図2A~
図2Dおよび
図4A~
図4Dに示される符号C1~C4、CS1~CS6の構成単位に対応する。
【0018】
図1に示される電力制御システム1は、直流電力の需給を制御する電力制御システムである。電力制御システム1の用途は、直流電力の需給を制御可能であれば、特に限定されることはない。たとえば、電力制御システム1は、所定の地域内に設けられる充放電機器や発電機器からの出力である直流電力を交流電力に変換せずに使用する電力系統(いわゆる直流グリッド)において、当該地域内の機器に対する直流電力の需給を制御する。しかし、本発明に係る電力制御システムは、その上位の電力系統として交流電力系統が存在し、当該交流電力系統からの交流電力を直流電力に変換し、所定の地域内において、変換した直流電力の需給を制御してもよい。また、本発明に係る電力制御システムは、その上位の電力系統として直流電力系統が存在し、当該直流電力系統から直流電力が供給され、所定の地域内において、供給された直流電力の需給を制御してもよい。
図1の例において、電力制御システム1の構成単位C1~C4、CS1~CS6は、たとえば、1つの需要家や1つの建屋に対応しており、電力制御システム1は、複数の需要家や建屋のそれぞれが備える機器に対する直流電力の需給を制御している。しかし、電力制御システムは、1つの需要家や1つの建屋のみ(換言すれば、1つの構成単位のみ)を制御してもよい。
図1に示される電力制御システム1において、構成単位C1~C4、CS1~CS6および開閉装置Sは、配線Wによって相互に接続されている。しかし、電力制御システムにおいて、構成単位は、開閉装置を介さずに、相互に接続されていてもよい。なお、本明細書において、「相互」は、2つの物(AおよびB)の間の関係のみならず、3つ以上の物(A、B、C、・・・)の間の関係についても指すものとする。たとえば、「A、B、およびCが相互に接続されている」は、「AおよびBが相互に接続されている」、かつ、「BおよびCが相互に接続されている」、かつ、「AおよびCが相互に接続されている」を指すものとする。
【0019】
電力制御システム1は、
図1(符号C1~C4に対応する
図2A~
図2Dも参照)に示されるように、構成単位として、電力を消費する負荷機器Lと、充放電可能である充放電機器Bと、電力を生成する発電機器Gとのうちの少なくとも2つの機器と、少なくとも2つの機器の間を相互に接続して直流電力を伝送する配線Wと備えている。負荷機器Lは、負荷用変換器LCを介して配線Wに接続されており、充放電機器Bは、充放電用変換器BCを介して配線Wに接続されており、発電機器Gは、発電用変換器GCを介して配線Wに接続されている。負荷用変換器LC、充放電用変換器BC、および発電用変換器GCはそれぞれ、独立して、配線Wから負荷機器Lへの出力、充放電機器Bの充放電、および発電機器Gから配線Wへの出力を制御する。
図2Aの例では、構成単位C1は、負荷機器Lと、充放電機器Bと、負荷機器Lに接続される負荷用変換器LCと、充放電機器Bに接続される充放電用変換器BCと、負荷用変換器LCおよび充放電用変換器BCを介して、負荷機器Lと充放電機器Bとを相互に接続する配線Wとを備えている。
図2Bの例では、構成単位C2は、負荷機器Lと、発電機器Gと、負荷機器Lと接続される負荷用変換器LCと、発電機器Gと接続される発電用変換器GCと、負荷用変換器LCおよび発電用変換器GCを介して、負荷機器Lと発電機器Gとの間を相互に接続する配線Wとを備えている。
図2Cの例では、構成単位C3は、充放電機器Bと、発電機器Gと、充放電機器Bと接続される充放電用変換器BCと、発電機器Gと接続される発電用変換器GCと、充放電用変換器BCおよび発電用変換器GCを介して、充放電機器Bと発電機器Gとの間を相互に接続する配線Wとを備えている。
図2Dの例では、構成単位C4は、負荷機器Lと、充放電機器Bと、発電機器Gと、負荷機器Lと接続される負荷用変換器LCと、充放電機器Bと接続される充放電用変換器BCと、発電機器Gと接続される発電用変換器GCと、負荷用変換器LC、充放電用変換器BC、および発電用変換器GCを介して、負荷機器L、充放電機器B、および発電機器Gの間を相互に接続する配線Wとを備えている。
【0020】
電力制御システム1は、
図1(符号C5~C8に対応する
図3A~
図3Dも参照)に示されるように、構成単位として、負荷機器L、充放電機器B、および発電機器G以外に、機器間を接続する回路を開閉する開閉装置Sなどの、その他の機器をさらに備えていてもよい。
図3Aの例では、構成単位C5は、
図2Aの構成に加えて、開閉装置Sを備え、負荷機器L、充放電機器B、および開閉装置Sは、配線Wで相互に接続されている。
図3Bの例では、構成単位C6は、
図2Bの構成に加えて、開閉装置Sを備え、負荷機器L、発電機器G、および開閉装置Sは、配線Wで相互に接続されている。
図3Cの例では、構成単位C7は、
図2Cの構成に加えて、開閉装置Sを備え、充放電機器B、発電機器G、および開閉装置Sは、配線Wで相互に接続されている。
図3Dの例では、構成単位C8は、
図2Dの構成に加えて、開閉装置Sを備え、充放電機器B、発電機器G、負荷機器L、および開閉装置Sは、配線Wで相互に接続されている。
【0021】
なお、
図2A~
図2Dおよび
図3A~
図3Dに示される電力制御システム1の構成単位C1~C8は、あくまで例示であり、電力制御システム1の構成は、負荷機器L、充放電機器B、および発電機器Gのうちの少なくとも2つの機器を含む構成単位を備えていれば、特に限定されることはない。特に図示しないが、電力制御システムの構成単位は、たとえば、負荷機器、充放電機器、および発電機器のうちの1つ以上の機器を複数備えていてもよい。
【0022】
電力制御システム1は、
図1(符号CS1~CS4に対応する
図4A~
図4Dも参照)に示されるように、複数の構成単位を備える場合、負荷機器L、充放電機器B、および発電機器Gのうちの少なくとも2つの機器を含む構成単位(
図1では、構成単位C1~C4)以外の構成単位(
図1では、構成単位CS1~CS4)を備えていてもよい。そのような任意の構成単位として、
図4A~
図4Fに示されるように、負荷機器L、充放電機器B、および発電機器Gのうちの1種類の機器のみを1つ以上含む構成単位(
図4A~
図4Cでは、1種類の機器のみを2つ含む構成単位CS1~CS3が示されており、
図4D~
図4Fでは、1種類の機器のみを3つ含む構成単位CS4~CS6が示されている)が例示される。なお、
図4A~
図4Fでは、電力制御システム1に任意で含まれる構成単位CS1~CS6は、負荷機器L、充放電機器B、および発電機器Gのうちの1種類の機器のみを2つ以上含んでいるが、任意の構成単位は、1種類の機器のみを1つのみ含んでいてもよい。なお、任意の構成単位CS1~CS6において、負荷用変換器LC、充放電用変換器BC、および発電用変換器GCは、必ずしも設けられなくてもよい。また、任意の構成単位CS1~CS6は、
図3A~
図3Dに示される構成単位C5~C8と同様に、開閉装置Sなどの、その他の機器をさらに備えていてもよい。
【0023】
以下では、
図1に示される電力制御システム1の構成単位C1~C4、CS1~CS6に含まれる機器について説明する(構成単位C1~C4、CS1~CS6に対応する
図2A~
図2D、
図4A~
図4Dも参照)。
【0024】
負荷機器Lは、電力を消費するものであれば、特に限定されることはない。負荷機器Lとして、たとえば、エアコンディショナー、冷蔵庫、照明機器、パーソナルコンピュータ、ディスプレイなどの家庭用電気機器、オートロック、防犯カメラなどのセキュリティ装置などが例示される。負荷機器Lは、交流電力で動作する交流負荷機器であっても、直流電力で動作する直流負荷機器であってもよい。また、負荷機器Lは、一定の電圧で電力を消費する定電圧負荷機器であってもよく、一定の電流で電力を消費する定電流負荷機器であってもよく、一定の電力を消費する定電力負荷機器であってもよい。
【0025】
負荷用変換器LCは、配線Wから供給される直流電力を負荷機器Lに供給する交流電力または直流電力に変換する。負荷用変換器LCは、配線Wから供給される直流電力を所望の交流電力または直流電力に変換可能であれば、特に限定されることはない。負荷用変換器LCが配線Wからの直流電力を所望の交流電力に変換する場合、負荷用変換器LCとして、任意のDC-ACインバータを採用することができる。負荷用変換器LCが配線Wからの直流電力を所望の直流電力に変換する場合、負荷用変換器LCとして、任意のDC-DCコンバータを採用することができる。なお、ここに言う、「DC-ACインバータ」は、配線Wからの直流電力を最終的に所望の交流電力に変換することができればよく、「DC-DCコンバータ」は、配線Wからの直流電力を最終的に所望の直流電力に変換することができればよい。たとえば、「DC-DCコンバータ」の場合、配線Wからの直流電力を一度、交流電力に変換し、変換した交流電力を再度、直流電力に変換するものであってもよい。本実施形態では、負荷用変換器LCは、配線Wからの直流電力を所定の定電圧の交流電力または直流電力に変換して負荷機器Lに供給する。たとえば、負荷用変換器LCは、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read-Only Memory)とを備えている。本実施形態では、負荷用変換器LCのROMは、本実施形態に係る電力制御システム用の負荷用制御プログラムを格納している。そして、CPUがROMに格納されている負荷用制御プログラムを実行することで、負荷用変換器LCが、後述する制御機能を有するように構成されている。
【0026】
負荷用変換器LCには、負荷用電圧範囲V
Lが設定されている(
図5Aおよび
図5Bなど参照)。負荷用電圧範囲V
Lは、たとえば、負荷機器Lの正常運転時の電力消費に応じた電圧範囲に設定されている。負荷用変換器LCは、配線Wの電圧を検知する検知機能と、上述の負荷用制御プログラムを実行することで、負荷機器Lへの出力を制御する制御機能とを有している。なお、本明細書において、負荷用変換器LCによって制御された負荷機器Lの電気特性を単に「負荷特性」と称することもある。
【0027】
図5Aおよび
図5Bは、負荷用変換器LCによる負荷機器Lに対する電力制御の一例を示している。
図5Aにおいて、縦軸は、配線Wの電圧V
dcを示しており、横軸は、負荷機器Lに供給する電流I
Lを示している。また、
図5Bにおいて、縦軸は、配線Wの電圧V
dcを示しており、横軸は、負荷機器Lの消費電力P
Lを示している。なお、
図5Aおよび
図5Bでは、負荷機器Lは、正常運転時に、定電力で電力を消費する定電力負荷機器であることを想定している。
【0028】
配線Wの電圧V
dcが負荷用電圧範囲V
Lの範囲内にあるときには、負荷用変換器LCは、負荷機器Lが要求する電力を出力する。換言すれば、負荷用変換器LCは、負荷機器Lへの出力制御を行わない。この場合、負荷機器Lに供給する電流I
Lは、以下の式で表される。
I
L=P
L/V
dc
図5Aおよび
図5Bの例では、負荷機器Lが定電力負荷機器であるため、
図5Bに示されるように、配線Wの電圧V
dcが負荷用電圧範囲V
Lの範囲内にあるときには、負荷機器Lの消費電力P
Lは一定となる。
【0029】
配線Wの電圧V
dcが負荷用電圧範囲V
Lの範囲から逸脱したときには、負荷用変換器LCは、負荷機器Lへの出力を上述の制御機能によって制御する。負荷用変換器LCによる負荷機器Lへの出力制御は、負荷機器Lの消費電力P
Lを低下させる制御であれば、特に限定されることはない。
図5Aおよび
図5Bの例では、配線Wの電圧V
dcが負荷用電圧範囲V
Lを上回ったときに、負荷用変換器LCは、負荷機器Lへの出力を停止するように制御している(特に、
図5B参照)。この場合、負荷機器Lへの出力停止によって、過電圧による負荷機器Lへの負荷が排除されるので、負荷機器Lの故障が抑制される。しかし、配線の電圧が負荷用電圧範囲を上回ったときに、負荷用変換器は、負荷機器への出力を直ちに停止するのではなく、負荷機器に供給する電流を徐々に減少させるように、負荷機器への出力を制御してもよい。この場合にも、負荷機器への出力抑制によって、過電圧による負荷機器への負荷が低減されるので、負荷機器の過電圧による故障が抑制される。また、
図5Aおよび
図5Bの例では、配線Wの電圧V
dcが負荷用電圧範囲V
Lを下回ったときに、負荷用変換器LCは、負荷機器Lに供給する電流I
Lを減少させるように、負荷機器Lへの出力を制御している(特に、
図5A参照)。この場合、配線Wの電圧V
dcが負荷用電圧範囲V
Lを下回ったときに、負荷用変換器LCからの出力が抑制された状態で、負荷機器Lを動作させつつ、配線Wの電圧V
dcを負荷用電圧範囲V
Lの範囲内に回復させることができる。より具体的には、
図5Aおよび
図5Bの例では、配線Wの電圧V
dcが負荷用電圧範囲V
Lを下回ったときに、負荷用変換器LCは、負荷機器Lに供給する電流I
Lを直線的に減少させるように、負荷機器Lへの出力を制御している(特に、
図5A参照)。この場合、負荷機器Lに供給する電流I
Lは、以下の式で表される。
I
L=αV
dc+β (α、β:定数)
また、この場合、負荷機器Lの消費電力P
Lは、以下の式で表され、
図5Bのグラフにおいて、二次関数を示す。
P
L=V
dcI
L=αV
dc
2+βV
dc
しかし、負荷用変換器は、一次関数以外の任意の関数に基づいて、負荷機器に供給する電流を減少させるように、負荷機器Lへの出力を制御してもよい。また、
図6Aおよび
図6Bに示されるように、負荷用変換器LCは、配線Wの電圧V
dcが負荷用電圧範囲V
Lを下回ったときに、負荷機器Lへの出力を停止するように制御してもよい。この場合、負荷機器Lへの出力の停止によって、配線Wの電圧V
dcを負荷用電圧範囲V
Lの範囲内に早期に回復させることができる。
【0030】
なお、負荷用変換器LCの制御特性は、接続される負荷機器Lの種類などに応じて、変更されてもよい。たとえば、意図せずに動作停止となったときに、支障が大きい負荷機器L(たとえば、照明機器など。以下では、このような負荷機器は「高重要度の負荷機器」と称される)に接続されている負荷用変換器LCの制御特性と、支障が小さい負荷機器L(たとえば、空調機器など。以下では、このような負荷機器は「低重要度の負荷機器」と称される)に接続されている負荷用変換器LCの制御特性とは、好適には、互いに異なっている。たとえば、高重要度の負荷機器Lに対する制御特性は、
図5Aおよび
図5Bに示されるように設定され、低重要度の負荷機器Lに対する制御特性は、
図6Aおよび
図6Bに示されるように設定される。これにより、配線Wの電圧V
dcが負荷用電圧範囲V
Lを下回った場合に、負荷用変換器LCからの出力が抑制された状態で、高重要度の負荷機器Lを動作させつつ、低重要度の負荷機器Lへの出力を停止させて、配線Wの電圧V
dcを負荷用電圧範囲V
Lの範囲内に早期に回復させる。このようにすれば、配線Wの電圧V
dcの低下に伴う支障を最小限に抑制することができる。負荷機器Lへの出力抑制時の動作は、たとえば、負荷機器Lが照明機器である場合、照明機器の調光によって実現可能であり、負荷機器Lが空調機器である場合、圧縮機の出力調整によって実現可能である。
【0031】
充放電機器Bは、配線Wからの電力を充電可能であり、かつ、配線Wに電力を放電可能に構成されている。充放電機器Bは、充放電可能であれば、特に限定されることはない。充放電機器Bとして、たとえば、リチウムイオン蓄電池などを含む定置式蓄電池、および電気自動車などの移動式蓄電池が例示される。以下では、特に断らない限り、充電は正、放電は負として示される。
【0032】
充放電用変換器BCは、配線Wの直流電力を充放電機器Bへの充電電力PG
+に変換し、充放電機器Bからの放電電力PG
-を配線Wに供給する直流電力に変換する(本明細書において、充電電力PG
+および放電電力PG
-を併せて充放電電力PGと称することもある)。充放電用変換器BCとして、任意のDC-DCコンバータを採用することができる。なお、ここに言う「DC-DCコンバータ」は、配線Wまたは充放電機器Bからの直流電力を最終的に所望の直流電力に変換することができればよく、たとえば、配線Wまたは充放電機器Bからの直流電力を一度、交流電力に変換し、変換した交流電力を再度、直流電力に変換するものであってもよい。本実施形態では、充放電用変換器BCは、配線Wからの直流電力を所定の定電圧の直流電力に変換して充放電機器Bに供給し、充放電機器Bからの直流電力を所定の定電圧の直流電力に変換して配線Wに供給する。たとえば、充放電用変換器BCは、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read-Only Memory)とを備えている。本実施形態では、充放電用変換器BCのROMは、本実施形態に係る電力制御システム用の充放電用制御プログラムを格納している。そして、CPUがROMに格納されている充放電用制御プログラムを実行することで、充放電用変換器BCが、後述する制御機能を有するように構成されている。
【0033】
充放電用変換器BCには、充放電用電圧範囲V
B(充電用電圧範囲V
B
+および放電用電圧範囲V
B
-)が設定されている(
図7Aなど参照)。充放電用電圧範囲V
Bは、たとえば、充放電機器Bの正常運転時の充放電に応じた電圧範囲に設定されている。充放電用変換器BCは、配線Wの電圧V
dcを検知する検知機能と、上述の充電用制御プログラムを実行することで、充放電機器Bの充放電を制御する制御機能とを有している。なお、本明細書において、充放電用変換器BCによって制御された充放電機器Bの電気特性を単に「充放電特性」と称することもある。
【0034】
図7Aは、充放電用変換器BCによる充放電機器Bに対する電力制御の一例を示しており、
図7Bは、その参考例を示している。
図7Aおよび
図7Bにおいて、縦軸は、配線Wの電圧V
dcを示しており、横軸は、充放電機器Bから放電される電流I
B
-(放電電流。
図7Aおよび
図7Bの左側の領域に対応)、または充放電機器Bに充電される電流I
B
+(充電電流。
図7Aおよび
図7Bの右側の領域に対応)を示している(本明細書において、放電電流I
B
-および充電電流I
B
+を併せて充放電電流I
Bと称することもある)。
【0035】
たとえば、
図1(
図1中の符号C1~C4、CS1~CS6に対応する
図2A~
図2Dおよび
図4A~
図4Dも参照)に示される電力制御システム1のように、電力制御システム1が充放電機器Bを複数備え、充放電用変換器BCが
図7Bに示される電力制御を行う場合を考える。この場合、充放電機器Bの充放電のための配線Wの電圧値は、一定である。そのため、配線Wの電圧V
dcが変動する場合、複数の充放電機器Bのうち、充放電のための配線Wの電圧値が配線Wの電圧V
dcに近い値に設定された充放電機器Bに、充放電が集中する。したがって、充放電用変換器BCによって、複数の充放電機器Bの間で、充放電機器Bの充放電を自律的に分担することができなくなる。これに対して、本実施形態では、
図7Aに示されるように、配線Wの電圧V
dcが充電用電圧範囲V
B
+の範囲内にあるときに、充放電用変換器BCは、配線Wの電圧V
dcの上昇と共に、充電電流I
B
+を増加させ、配線Wの電圧V
dcが放電用電圧範囲V
B
-の範囲内にあるときに、配線Wの電圧V
dcの降下と共に、放電電流I
B
-を増加させる。このように、配線Wの電圧V
dcに応じて充放電を切り替えて、充電電流I
B
+および放電電流I
B
-を変化させるように、充放電用変換器BCが充放電機器Bの充放電を制御すれば、特定の充放電機器Bに充放電が集中することが抑制される。これにより、充放電用変換器BCによって充放電機器Bの充放電を自律的に分担させることができる。
【0036】
充放電用変換器BCによる充放電機器Bの充放電の制御は、充電用電圧範囲V
B
+の範囲内において、配線Wの電圧V
dcの上昇と共に充電電流I
B
+を増加させ、放電用電圧範囲V
B
-の範囲内において、配線Wの電圧V
dcの降下と共に、放電電流I
B
-を増加させれば、特に限定されることはない。
図7Aの例では、充放電用変換器BCは、充電用電圧範囲V
B
+の範囲内において、配線Wの電圧V
dcの上昇と共に充電電流I
B
+を直線的に増加させ、放電用電圧範囲V
B
-の範囲内において、配線Wの電圧V
dcの降下と共に、放電電流I
B
-を直線的に増加させるように、充放電機器Bの充放電を制御している。しかし、充放電用変換器は、充電用電圧範囲の範囲内において、一次関数以外の任意の関数に基づいて、配線の電圧の上昇と共に、充電電流を増加させてもよく、放電用電圧範囲の範囲内において、一次関数以外の任意の関数に基づいて、配線の電圧の降下と共に、放電電流を増加させてもよい。
【0037】
充放電用変換器BCは、
図8に示されるように、充放電機器Bの充電率(State of Charge:SOC)や定格容量Qに応じて、配線Wの電圧V
dcの上昇分に対する充電電流I
B
+の増加分、または配線Wの電圧V
dcの降下分に対する放電電流I
B
-の増加分を変化させてもよい。たとえば、
図9(a)および
図9(b)に示されるように、充放電用変換器BCは、充放電機器Bの定格容量Qが大きいほど、配線Wの電圧V
dcの上昇分に対する充電電流I
B
+の増加分、または配線Wの電圧V
dcの降下分に対する放電電流I
B
-の増加分を大きくする。この場合、定格容量Qの大きい充放電機器B(
図9(a)参照)では、配線Wの電圧V
dcの変化に対して、充放電電流I
Bの変化を大きくし、定格容量Qの小さい充放電機器B(
図9(b)参照)では、配線Wの電圧V
dcの変化に対して、充放電電流I
Bの変化を小さくする。これにより、定格容量Qの小さい充放電機器Bに対する充放電の負荷が低減される。たとえば、充放電電力P
Gを配線Wの電圧V
dcに対してn乗で増加させるように、充放電用変換器BCが充放電機器Bの充放電電流I
Bを制御すれば、充放電機器Bへの負荷がより低減される。
この場合、充電電力P
B
+は、
放電電力P
B
-は、
と表すことができる。なお、充電電力P
B
+および放電電力P
B
-を表す式において、kは、比例定数である。
このとき、充電電流I
B
+は、
放電電流I
B
-は、
と表すことができる。
上記式中の比例乗数kを求めるために、以下のように、充電電流I
B
+が0となる配線Wの電圧V
dcであるV
B0(充電用電圧範囲V
G
+と放電用電圧範囲V
G
-が切り替わる配線Wの電圧V
dc(充放電機器Bの充放電が切り替わる配線Wの電圧V
dcであり、以下では、「閾値電圧」称される)を仮定する。
ここで、V
BHは、充放電用電圧範囲V
B(充電用電圧範囲V
B
+)の最大電圧であり、V
BLは、充放電電用電圧範囲V
B(放電用電圧範囲V
B
-)の最小電圧である。
充放電機器Bの定格容量Qは、充放電機器Bの充放電時の最大電圧(充電用電圧範囲V
B
+の最大電圧)V
BHから、以下のように表すことができる。
ここで、ΔV
Bは、充放電用電圧範囲V
Bの最大電圧V
BHと最小電圧V
BLとの差分電圧である。この定格容量Qを表す上記式から、比例定数k(=k'2
n)は、以下のように求められる。
求められた比例定数kを充電電流I
B
+および放電電流I
B
-を表す上記式にそれぞれ代入すると、
充電電流I
B
+は、
放電電流I
B
-は、
と表すことができる。
たとえば、nは、0≦n≦2となるように設定され、n≧1の場合、配線Wの電圧V
dcの降下による充放電機器Bへの負荷が減少するので、配線Wの電圧V
dcの降下を抑制することができる。特に、n=1の場合、充放電機器Bの充電容量Qに応じて、各充放電機器Bに充放電電流I
Bを効果的に分担させることができる。
【0038】
電力制御システム1が複数の充放電機器Bを含む場合に、
図10(a)および
図10(b)に示されるように、各充放電機器Bに接続される充放電用変換器BCのうち、一部の充放電用変換器BC(
図10(b)参照)は、配線Wの電圧V
dcが充放電用電圧範囲V
Bの上限電圧(充電用電圧範囲V
B
+の上限値)を上回ったときに、充電電流I
B
+が一定となるように、充放電機器Bの充電を制御してもよい。また、各充放電機器Bに接続される充放電用変換器BCのうち、一部の充放電用変換器BC(
図10(b)参照)は、配線Wの電圧V
dcが充放電用電圧範囲V
Bの下限電圧(放電用電圧範囲V
B
-の下限値)を下回ったときに、放電電流I
B
-が一定となるように、充放電機器Bの放電を制御してもよい。この場合、特定の充放電機器B(特に、定格容量Qの小さい充放電機器B)への過剰な充電電流I
B
+や、特定の充放電機器Bからの過剰な放電電流I
B
-を抑制することができる。本実施形態では、上述のように、配線Wから充放電機器Bへの充電および充放電機器Bから配線Wへの放電は、充放電用変換器BCによって定電圧でなされる。そのため、
図10(b)に示される制御を行う場合、配線Wの電圧V
dcが充放電用電圧範囲V
Bの上限電圧を上回ったときには、定電圧定電流での充電によって、充電電力は一定となり、配線Wの電圧V
dcが充放電用電圧範囲V
Bの下限電圧を下回ったときには、定電圧定電流での放電によって、放電電力は一定となる。
【0039】
充放電を切り替える閾値電圧V
B0(充電用電圧範囲V
B
+と放電用電圧範囲V
B
-が切り替わる配線Wの電圧)は、充放電機器Bの充電率SOC(電力制御システム1が複数の充放電機器Bを含む場合、複数の充放電機器Bの平均の充電率SOC)を制御するために、負荷機器Lの負荷特性および発電機器Gの発電特性に応じて、変更されてもよい。電力制御システム1が複数の充放電機器Bを含む場合、充放電機器Bに接続される充放電用変換器BCはそれぞれ、閾値電圧V
B0が互いに同じ電圧となるように、充放電機器Bの充放電を制御することが好ましい。この場合、意図せずに、ある充放電機器Bから放電された放電電流I
B
-が別の充放電機器Bへの充電電流I
B
+となることが抑制されるので、不要な充放電の繰り返しによる電力損失も抑制される。なお、充放電用変換器BCは、
図11に示されるように、各充放電機器Bの充電率SOCに応じて、閾値電圧V
B0を変化させてもよい。たとえば、充放電機器Bの充電率SOCが所定値を上回ったときに、充放電用変換器BCは、閾値電圧V
B0がより高くなるように、充放電機器Bの充放電特性を変更してもよい(
図11の例では、充放電特性を全体的に高電圧側にシフトさせている)。また、充放電機器Bの充電率SOCが所定値を下回ったときに、充放電用変換器BCは、閾値電圧V
B0がより低くなるように、充放電機器Bの充放電特性を変更してもよい(
図11の例では、充放電特性を全体的に低電圧側にシフトさせている)。この場合、充電率SOCが高い充放電機器Bは、過充電を抑制するように、放電しやすくなり、充電率SOCが低い充放電機器Bは、過放電を抑制するように、充電しやすくなる。電力制御システム1が複数の充放電機器Bを含む場合には、充放電機器Bに接続される充放電用変換器BCはそれぞれ、上述のように、閾値電圧V
B0が互いに同じ電圧となるように、各充放電機器Bの充放電特性を同時に変更することが好ましい。
【0040】
発電機器Gは、自然界から供給される再生可能エネルギーを電力に変換するように構成されている。発電機器Gは、再生可能エネルギーを電力に変換可能であれば、特に限定されることはない。発電機器Gとして、たとえば、風車およびタービンなどから構成される風力発電機器や、太陽光パネルなどから構成される太陽光発電機器、熱交換器およびタービンなどから構成される地熱発電機器が例示される。
【0041】
発電用変換器GCは、発電機器Gによって生成される出力電力を配線Wに供給する直流電力に変換する。発電用変換器GCとして、任意のDC-DCコンバータを採用することができる。なお、ここに言う「DC-DCコンバータ」は、発電機器Gの出力電力を最終的に所望の直流電力に変換することができればよく、たとえば、発電機器Gの出力電力を一度、交流電力に変換し、変換した交流電力を再度、直流電力に変換するものであってもよい。具体的には、発電用変換器GCは、発電機器Gの出力電力を所定の定電圧の直流電力に変換して配線Wに供給する。たとえば、発電用変換器GCは、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read-Only Memory)とを備えている。本実施形態では、発電用変換器GCのROMは、本実施形態に係る電力制御システム用の発電用制御プログラムを格納している。そして、CPUがROMに格納されている発電用制御プログラムを実行することで、発電用変換器GCが、後述する制御機能を有するように構成されている。
【0042】
発電用変換器GCには、発電用電圧範囲V
Gが設定されている(
図12Aおよび
図12Bなど参照)。発電用電圧範囲V
Gは、たとえば、発電機器Gの正常運転時の出力に応じた電圧範囲に設定されている。発電用変換器GCは、配線Wの電圧V
dcを検知する検知機能と、上述の発電用制御プログラムを実行することで、配線Wへの出力を制御する制御機能とを有している。なお、本明細書において、発電用変換器GCによって制御された発電機器Gの電気特性を単に「充放電特性」と称することもある。
【0043】
図12Aおよび
図12Bは、本実施形態における発電用変換器GCによる発電機器Gに対する電力制御の一例を示している。
図12Aにおいて、縦軸は、配線Wの電圧V
dcを示しており、横軸は、発電機器Gから配線Wへの出力電流I
Gを示している。また、
図12Bにおいて、縦軸は、配線Wの電圧V
dcを示しており、横軸は、発電機器Gから配線Wへの出力電力P
Gを示している。なお、
図5Aおよび
図5Bでは、発電機器Gは、たとえば発電用変換器GCが有する最大電力点追従制御(Maximum power point tracking:MPPT)機能によって、正常運転時に、発電用変換器GCを介して配線Wに定電力で出力することを想定している。
【0044】
配線Wの電圧V
dcが発電用電圧範囲V
Gの範囲内にあるときには、発電用変換器GCは、定電力の出力電力P
Gを出力する。すなわち、配線Wへの出力電流I
Gは、以下の式で表される。
I
G=P
G/V
dc
図12Aおよび
図12Bの例では、発電機器Gが発電用変換器GCを介して配線Wに定電力で出力するため、
図12Bに示されるように、発電機器Gの出力電力P
Gは一定となる。
【0045】
配線Wの電圧V
dcが発電用電圧範囲V
Gの範囲から逸脱したときには、発電用変換器GCは、配線Wへの出力を上述の制御機能によって制御する。発電用変換器GCによる配線Wへの出力制御は、配線Wへの出力電力P
Gを低下させる制御であれば、特に限定されることはない。配線Wの電圧V
dcが発電用電圧範囲V
Gを下回ったときには、電力制御システム1(
図1参照)内の機器や配線Wなどに何らかの不具合が生じていることが考えられる。このような場合に、発電機器Gからの出力を継続していると、配線Wに電流が流れ続けることになり、不具合の復旧作業の妨げとなることがある。そのため、
図12Aおよび
図12Bの例では、配線Wの電圧V
dcが発電用電圧範囲V
Gを下回ったときには、このような事態を回避するために、発電用変換器GCは、配線Wへの出力を停止するように制御している(特に、
図12B参照)。しかし、配線Wの電圧V
dcが発電用電圧範囲V
Gを下回ったときに、発電用変換器GCは、配線Wへの出力を直ちに停止するのではなく、配線Wへの出力電流I
Gを徐々に減少させるように、配線Wへの出力を制御してもよい。また、
図12Aおよび
図12Bの例では、配線Wの電圧V
dcが発電用電圧範囲V
Gを上回ったときに、発電用変換器GCは、配線Wへの出力電流I
Gを減少させるように、配線Wへの出力を制御している(特に、
図12A参照)。この場合、配線Wへの出力抑制によって、配線Wが過電圧状態となることを抑制することができる。より具体的には、配線Wの電圧V
dcが発電用電圧範囲V
Gを上回ったときに、発電用変換器GCは、配線Wへの出力電流I
Gを直線的に減少させるように、配線Wへの出力を制御している(特に、
図12A参照)。この場合、配線Wへの出力電流I
Gは、以下の式で表される。
I
G=γV
dc+δ (γ、δ:定数)
また、この場合、配線Wへの出力電力P
Gは、以下の式で表され、
図12Bのグラフにおいて、二次関数を示す。
P
G=V
dcI
G=γV
dc
2+δV
dc
しかし、発電用変換器GCは、配線Wの電圧V
dcが発電用電圧範囲V
Gを上回ったときに、一次関数以外の任意の関数に基づいて、配線Wへの出力電流I
Gを減少させるように、配線Wへの出力を制御してもよい。また、
図13Aおよび
図13Bに示されるように、発電用変換器GCは、配線Wの電圧V
dcが発電用電圧範囲V
Gを上回ったときに、配線Wへの出力を停止するように制御してもよい。この場合、配線Wへの出力停止によって、配線Wが過電圧状態となることをさらに抑制することができる。
【0046】
なお、発電用変換器GCの制御特性は、接続される発電機器Gの種類などに応じて、変更されてもよい。
【0047】
配線Wは、直流電力を伝送可能であれば、特に限定されることはない。配線Wとして、任意の配線ケーブルが例示される。
【0048】
開閉装置Sは、直流電力系統に連系したオングリッド状態と、直流電力系統から解列したオフグリッド状態とを切り替える。具体的には、開閉装置Sは、直流電力を伝送する配線Wへの接続と接続の解除を切り替える。開閉装置Sは、配線Wの電圧Vdcを検知し、配線Wの電圧Vdcが所定値以上または所定値以下の場合に、電力制御システム1内に不具合が生じていると見做して、直流電力系統から解列したオフグリッド状態に自動的に切り替えてもよい。開閉装置Sとして、たとえば、遮断器、断路器、負荷開閉器、接地開閉器などが例示される。
【0049】
このように構成される電力制御システム1において、上位の電力系統が存在し、電力制御システム1の機器群が当該電力系統と連系運転している場合には、負荷機器Lの電力消費および発電機器Gの電力供給から生じる直流電力の過不足は、上位の電力系統によって解消される。そのため、充放電機器Bの充放電特性が任意に設定されていても、電力制御システム1の機器の運転に支障は生じない。一方、上位の電力系統が存在せずに、電力制御システム1の機器群が単独運転している場合(
図1参照)や、電力制御システム1が上位の電力系統と解列している場合には、負荷機器Lの電力消費および発電機器Gの電力供給から生じる直流電力の過不足は、電力制御システム1内の充放電機器Bによって解消する必要がある。本実施形態では、配線Wの電圧V
dcに応じて、充放電用変換器BCが充放電機器Bの充放電電流I
Bを制御すると共に、負荷用変換器LCが負荷機器Lへの出力を制御し、発電用変換器GCが発電機器Gから配線Wへの出力を制御するので、電力制御システム1は、配線Wの直流電力を自律的に制御することができる。以下では、電力制御システム1による直流電力の需給の具体例1を説明する。ここでは、
図2Dに示される構成単位C4での直流電力の需給を例として説明する。
【0050】
[具体例1]
図14~
図16は、
図2Dに示される構成単位C4による電力の需給の制御の具体例を示している。負荷機器Lの電力消費および発電機器Gの出力を充放電機器Bの充放電によって補完可能である場合、
図14(a)~
図14(c)に示されるように、負荷機器L、発電機器G、および充放電機器Bがそれぞれ、負荷用電圧範囲V
L、発電用電圧範囲V
G、および充放電用電圧範囲V
Bの範囲内で動作するように、配線Wの電圧V
dcが定まる。配線Wに供給される電力が不足すると、充放電用変換器BCは、電力不足を解消するように、充放電機器Bの放電電流I
B
-を増加させる。しかし、それでも電力が不足すると、
図15(a)~
図15(c)に示されるように、配線Wの電圧V
dcは降下する。配線Wの電圧V
dcが充放電用電圧範囲V
Bの下限電圧(放電用電圧範囲V
B
-の下限値)を下回ると、
図15(c)に示されるように、充放電用変換器BCは、充放電機器Bの放電電流I
B
-を一定にする。これに対して、発電用変換器GCは、
図15(b)に示されるように、発電用電圧範囲V
Gの範囲内において、MPPT機能による定電力によって、発電機器Gから配線Wへの出力を継続し、負荷用変換器LCは、
図15(a)に示されるように、配線Wの電圧V
dcが負荷用電圧範囲V
Lを下回ると、負荷機器Lに供給する電流I
Lを減少させるように、負荷機器Lへの出力を制御する。これらの発電機器Gからの出力継続および負荷機器Lへの出力制御によって、配線Wの電圧V
dcを上昇させる。これとは逆に、配線Wに供給される電力が過剰になると、充放電用変換器BCは、電力過剰を解消するように、充放電機器Bの充電電流I
B
+を増加させる。しかし、それでも電力が過剰であると、
図16(a)~
図16(c)に示されるように、配線Wの電圧V
dcは上昇する。充放電用電圧範囲V
Bの上限電圧(充電用電圧範囲V
B
+の上限値)を上回ると、
図16(c)に示されるように、充放電用変換器BCは、充放電機器Bの充電電流I
B
+を一定にする。これに対して、配線Wの電圧V
dcが発電用電圧範囲V
Gを上回ると、発電用変換器GCは、
図16(b)に示されるように、配線Wへの出力電流I
Gを減少させるように、配線Wへの出力を制御し、負荷用変換器LCは、
図16(a)に示されるように、負荷用電圧範囲V
Lの範囲内において、負荷機器Lが要求する電力を負荷機器Lに出力する。これらの発電機器Gの出力制御および負荷機器Lへの出力継続によって、配線Wの電圧V
dcを降下させる。
【0051】
このように、具体例1は、充放電機器B、負荷機器L、および発電機器Gに対する充放電用変換器BC、負荷用変換器LC、および充放電用変換器BCの自律的な制御によって、構成単位C4内での電力の需給を容易に制御可能であることを示している。
【0052】
次に、より大規模な電力制御システムにおける直流電力の需給の制御について、
図17に示される電力制御システム10を例として、以下の具体例2および具体例3で説明する。なお、
図17に示される電力制御システム10を構成する負荷機器L1、L2、負荷用変換器LC1、LC2、発電機器G1、発電用変換器GC1、充放電機器B1~B3、充放電用変換器BC1~BC3、および配線Wの構成はそれぞれ、上述の負荷機器L、負荷用変換器LC、発電機器G、発電用変換器GC、充放電機器B、充放電用変換器BC、および配線Wの構成と同様である。
【0053】
[具体例2]
図18(a)~
図18(c)は、
図17に示される電力制御システム10による電力の需給の制御の具体例を示している。
図18(a)では、充放電機器B1~B3は、配線Wへの放電によって充電率が低下している(
図18(a)の実線参照)。充放電用変換器BC1~BC3は、充電率が各充放電機器B1~B3に設定される所定値を下回ると、閾値電圧V
B01~V
B03が低くなるように、充放電特性をシフト(
図18(a)の実線から一点鎖線にシフト)させる。その結果、充放電機器B1~B3は、放電状態から充電状態に切り替わる(
図18(a)の一点鎖線参照)。負荷用変換器LC1、LC2は、配線Wの電圧V
dcが負荷用変換器LC1、LC2の負荷用電圧範囲V
L1、V
L2の範囲内にあるため、負荷機器L1、L2を正常運転させるために、負荷機器L1、L2が要求する電力を供給する。発電用変換器GC1は、配線Wの電圧V
dcが発電用電圧範囲V
G1の範囲内にあるため、正常運転の際の出力(
図18(a)では、定電力)で出力する。
【0054】
その後、
図18(b)に示されるように、配線Wの電圧V
dcは、充放電機器B1~B3への充電により降下し始める(
図18(b)の実線から一点鎖線にシフト)。その結果、負荷用変換器LC1、LC2は、配線Wの電圧V
dcが負荷用変換器LC1、LC2の負荷用電圧範囲V
L1、V
L2の範囲を下回るので、負荷機器L1、L2に供給する電流I
L1、I
L2を減少させるように、負荷機器L1、L2への出力を抑制する。負荷用変換器LC2は、配線Wの電圧V
dcが電流I
L2の減少による負荷機器L2への出力抑制の範囲を下回るので、負荷用変換器LC2への出力を停止する。発電用変換器GC1は、配線Wの電圧V
dcが未だ発電用電圧範囲V
G1の範囲内にあるため、正常運転の際の出力を維持する。
【0055】
その後、
図18(c)に示されるように、配線Wの電圧V
dcは、負荷機器L1、L2への出力抑制によって上昇し始める(
図18(c)の実線から一点鎖線にシフト)。その結果、充放電用変換器BC1~BC3は、配線Wの電圧V
dcが充放電の閾値電圧V
B01~V
B03を上回るので、充放電機器B1~B3を充電させる。負荷用変換器LC1、LC2は、配線Wの電圧V
dcが負荷用変換器LC1、LC2の負荷用電圧範囲V
L1、V
L2の範囲内に戻るので、負荷機器L1、L2を正常運転させるために、負荷機器L1、L2が要求する電力を供給する。発電用変換器GC1は、配線Wの電圧V
dcが未だ発電用電圧範囲V
G1の範囲内にあるため、正常運転の際の出力を維持する。これにより、電力制御システム10の機器は全て、正常運転に移行する。
【0056】
このように、具体例2では、充放電機器B1~B3の充電率の低下によって、配線Wの電圧Vdcが降下している。このような場合においても、電力制御システム10は、上述のように、充放電用変換器BC1~BC3、負荷用変換器LC1、LC2、および発電用変換器GC1がそれぞれ充放電機器B1~B3、負荷機器L1、L2、および発電機器G1を自律的に制御することによって、電力の需給を制御することができる。
【0057】
[具体例3]
図19(a)~
図19(c)は、
図17に示される電力制御システム10による電力の需給の制御の他の具体例を示している。
図19(a)では、充放電機器B1~B3は、放電状態にあるので、配線Wの電圧V
dcは上昇(
図19(a)の実線から一点鎖線にシフト)する。負荷用変換器LC2は、配線Wの電圧V
dcが負荷用電圧範囲V
L2の範囲内にあるため、負荷機器L2が要求する電力を供給するが、負荷用変換器LC1は、配線Wの電圧V
dcが負荷用電圧範囲V
L1の範囲を上回るので、負荷機器L1への出力を停止する。発電用変換器GC1は、配線Wの電圧V
dcが発電用電圧範囲V
G1の範囲を上回るので、配線Wへの出力電流I
G1を減少させるように、配線Wへの出力を抑制する。
【0058】
その後、
図19(b)に示されるように、負荷機器L1への出力停止によって、充放電用変換器BC1~BC3から配線Wへの放電が過剰となる。充放電用変換器BC1~BC3は、充電率が各充放電機器B1~B3に設定される所定値を下回ると、閾値電圧V
B01~V
B03が低くなるように、充放電特性をシフト(
図19(b)の実線から一点鎖線にシフト)させる。その結果、充放電機器B1~B3は、放電状態から充電状態に切り替わる(
図19(b)の一点鎖線参照)。
【0059】
その後、
図19(c)に示されるように、配線Wの電圧V
dcは、充放電機器B1~B3への充電によって降下し始める(
図19(c)の実線から一点鎖線にシフト)。その結果、充放電用変換器BC1~BC3は、配線Wの電圧V
dcが充放電の閾値電圧V
B01~V
B03を下回るので、充放電機器B1~B3を放電させる。負荷用変換器LC1、LC2は、配線Wの電圧V
dcが負荷用変換器LC1、LC2の負荷用電圧範囲V
L1、V
L2の範囲内に戻るので、負荷機器L1、L2を正常運転させるために、負荷機器L1、L2が要求する電力を供給する。発電用変換器GC1は、配線Wの電圧V
dcが発電用電圧範囲V
G1の範囲内に戻るので、正常運転の際の出力(
図19(c)では、定電力)で出力する。これにより、電力制御システム10の機器は全て、正常運転に移行する。
【0060】
このように、具体例3では、充放電用変換器BC1~BC3から配線Wへの放電によって、配線Wの電圧Vdcは上昇している。このような場合においても、電力制御システム10は、上述のように、充放電用変換器BC1~BC3、負荷用変換器LC1、LC2、および発電用変換器GC1がそれぞれ充放電機器B1~B3、負荷機器L1、L2、および発電機器G1を自律的に制御することによって、電力の需給を制御することができる。
【0061】
以上に説明されたように、本実施形態に係る電力制御システム1では、負荷用変換器LCは、配線Wの電圧Vdcが負荷用電圧範囲VLの範囲外にあるときに、負荷機器Lに供給する電流を減少させるか、または負荷機器Lへの出力を停止するように制御する制御機能を有しており、充放電用変換器BCは、配線Wの電圧Vdcが充電用電圧範囲VB
+の範囲内にあるときに、配線Wの電圧Vdcの上昇と共に、充放電機器Bの充電電流IB
+を増加させ、配線Wの電圧Vdcが放電用電圧範囲VB
-の範囲内にあるときに、配線Wの電圧Vdcの降下と共に、充放電機器Bの放電電流IB
-を増加させるように制御する制御機能を有しており、発電用変換器GCは、配線Wの電圧Vdcが発電用電圧範囲VGの範囲外にあるときに、発電機器Gから配線Wへの出力電流IGを減少させるか、または発電機器Gから配線Wへの出力を停止するように制御する制御機能を有している。
【0062】
本実施形態に係る電力制御システム1によれば、負荷用変換器LC、充放電用変換器BC、および発電用変換器GCが、それぞれ独立して、負荷機器Lへの出力、充放電機器Bの充放電、および発電機器Gから配線Wへの出力を制御するので、負荷用変換器LC、充放電用変換器BC、および発電用変換器GCを集中制御する必要がない。そのため、集中制御のための通信網や制御システムの導入が不要となるので、直流配電を低コストで導入することができる。また、配線Wの電圧Vdcに応じて、負荷機器Lへの出力、充放電機器Bの充放電、および発電機器Gからの出力を制御するので、配線Wの電圧Vdcを一定に保つための大掛かりな電圧源を必ずしも必要としない。そのため、直流配電をさらに低コストで導入することができる。さらに、需要家や需要家内の機器が増減する際には、通信網や制御システムを再構築することなく、機器と接続される負荷用変換器LC、充放電用変換器BC、および発電用変換器GCなどに対して所定の制御プログラムを導入するだけで、電力制御システム1内の直流電力の需給を制御するので、直流配電をよりさらに低コストで導入することができる。
【0063】
また、本実施形態に係る電力制御システム1によれば、負荷用変換器LC、充放電用変換器BC、および発電用変換器GCがそれぞれ、独立して、負荷機器Lへの出力、充放電機器Bの充放電、および発電機器Gから配線Wへの出力を制御するので、オフグリッド運用する際に、制御システムを切り替える必要がない。また、各機器の電圧が異なっても、各機器における配線Wの電圧Vdcに応じて、負荷用変換器LC、充放電用変換器BC、および発電用変換器GCがそれぞれ、独立して、負荷機器Lへの出力、充放電機器Bの充放電、および発電機器Gから配線Wへの出力を制御するので、オフグリッド運用の際に制御システムの変更などの必要がなくなり、オフグリッド運用に手間が掛からない。このように、本実施形態に係る電力制御システム1では、直流配電でのオフグリッド運用が容易となる。
【0064】
充放電用変換器BCが、充放電機器Bの定格容量Qが大きいほど、配線Wの電圧Vdcの上昇分に対する充電電流IB
+の増加分、または配線Wの電圧Vdcの降下分に対する放電電流IB
-の増加分を大きくすると、定格容量Qの小さい充放電機器Bに対する充放電の負荷が低減される。
【0065】
電力制御システム1が、少なくとも充放電機器Bを備え、充放電用変換器BCは、充電電流I
B
+が、下記式1を満たし、放電電流I
B
-が、下記式2を満たすように、充放電機器Bの充放電を制御すると、配線Wの電圧V
dcの降下を効果的に抑制することができる。
式1および式2において、V
dcは、配線の電圧であり、V
B0は、充電用電圧範囲と放電用電圧範囲が切り替わる、配線の閾値電圧であり、ΔV
Bは、最大電圧と最小電圧の差分電圧であり、Qは、充放電機器の定格容量であり、0≦n≦2である。また、式1および式2において、充電電流I
B
+は正の電流として示され、放電電流I
B
-は負の電流として示されている。
【0066】
充放電用変換器BCが、充放電機器Bの充電率SOCが大きいほど、閾値電圧VB0を大きくすると、充放電機器Bは、充電率SOCが高い場合には、過充電を抑制するように、充放電機器Bを放電させやすくなり、充電率SOCが低い場合には、過放電を抑制するように、充放電機器Bを充電させやすくなる。
【0067】
負荷用変換器LCが、配線Wの電圧Vdcが負荷用電圧範囲VLの範囲外にあるときに、負荷機器Lに供給する電流ILを減少させると、配線Wの電圧Vdcが負荷用電圧範囲VLを下回ったときでも、出力が抑制された状態で、高重要度の負荷機器Lを動作させつつ、配線Wへの出力抑制によって、配線Wの電圧Vdcを負荷用電圧範囲VLの範囲内に回復させることができる。
【0068】
発電用変換器GCが、配線Wの電圧Vdcが発電用電圧範囲VGの範囲外にあるときに、発電機器Gから配線Wへの出力電流IGを減少させると、配線Wの電圧Vdcが負荷用電圧範囲VL発電用電圧範囲VGを上回ったときでも、配線Wへの出力抑制によって、配線Wが過電圧状態となることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0069】
1、10 電力制御システム
B、B1~B3 充放電機器
BC、BC1~BC3 充放電用変換器
C1~C8、CS1~CS6 構成単位
G、G1 発電機器
GC、GC1 発電用変換器
IB 充放電電流
IB
+ 充電電流
IB
- 放電電流
IG、IG1 発電機器から配線への出力電流
IL、IL1、IL2 負荷機器を流れる電流
L、L1、L2 負荷機器
LC、LC1、LC2 負荷用変換器
PG 発電機器の出力電力
PL 負荷機器の消費電力
S 開閉装置
VB 充放電用電圧範囲
VB+ 充電用電圧範囲
VB- 放電用電圧範囲
VB0、VB01~VB03 閾値電圧
Vdc 電圧
VG、VG1 発電用電圧範囲
VL、VL1、VL2 負荷用電圧範囲
W 配線