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特開2024-58895光ファイバケーブル振動伝達特性測定装置及び光ファイバケーブル振動伝達特性測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058895
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】光ファイバケーブル振動伝達特性測定装置及び光ファイバケーブル振動伝達特性測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20240422BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20240422BHJP
   G01H 9/00 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
G01M11/00 S
G01H17/00 D
G01H9/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166297
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】中村 篤志
(72)【発明者】
【氏名】古敷谷 優介
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 哲也
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BC02
2G064BC12
2G064BC32
2G064CC02
2G064CC17
2G064DD23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光ファイバケーブルの外部から与える振動による加速度の振幅と、光ファイバケーブルに含まれる光ファイバを伝搬する光の位相変化の大きさとの関係を把握する。
【解決手段】本開示の光ファイバケーブル振動伝達特性測定装置は、光を送出する光源からの光を分岐して、光ファイバケーブルに含まれる第1の光ファイバの一端及び前記光ファイバケーブルに含まれない第2の光ファイバの一端に入力し、前記第1の光ファイバの他端及び前記第2の光ファイバの他端からの光を結合して受光器で受光するマッハツェンダ型干渉計と、前記光ファイバケーブルに振動を印加する振動発生器と、前記振動発生器の印加する振動によって前記光ファイバケーブルに発生する加速度を計測する加速度計測器と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を送出する光源からの光を分岐して、光ファイバケーブルに含まれる第1の光ファイバの一端及び前記光ファイバケーブルに含まれない第2の光ファイバの一端に入力し、前記第1の光ファイバの他端及び前記第2の光ファイバの他端からの光を結合して受光器で干渉信号として受光するマッハツェンダ型干渉計と、
前記光ファイバケーブルに振動を印加する振動発生器と、
前記振動発生器の印加する振動によって前記光ファイバケーブルに発生する加速度を計測する加速度計測器と、
を備える光ファイバケーブル振動伝達特性測定装置。
【請求項2】
前記加速度計測器の測定した振動による前記光ファイバケーブルの加速度と前記受光器で受光した干渉信号とを用いて、前記光ファイバケーブルの加速度の振幅に対する前記第1の光ファイバを伝搬する光の位相変化の大きさの関係を表す振動伝達特性を計算する伝達特性測定計をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバケーブル振動伝達特性測定装置。
【請求項3】
前記マッハツェンダ型干渉計は、
前記光源と、
前記光源からの光を2つに分岐する第1の光合分岐カプラと、
前記第1の光合分岐カプラから分岐された光の一方を通過又は遮断させる第1の光スイッチと、
前記光ファイバケーブルに含まれ、前記第1の光スイッチからの光を伝搬させる前記第1の光ファイバと、
前記第1の光合分岐カプラから分岐された光の他方を通過又は遮断させる第2の光スイッチと、
前記光ファイバケーブルに含まれず、前記第2の光スイッチからの光を伝搬させる前記第2の光ファイバと、
前記第1の光ファイバからの光及び前記第2の光ファイバからの光を結合する第2の光合分岐カプラと、
前記第2の光合分岐カプラからの光を受光して電気信号に変換する受光器と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバケーブル振動伝達特性測定装置。
【請求項4】
前記伝達特性測定計は、
前記受光器からの電気信号の直流成分を遮断し、バイパス機能付きの第1の直流遮断フィルタと、
前記加速度計測器からの出力の直流成分を遮断する第2の直流遮断フィルタと、
前記第1の直流遮断フィルタからの信号をAD変換する第1のAD変換器と、
前記第2の直流遮断フィルタからの信号をAD変換する第2のAD変換器と、
前記第1のAD変換器からの信号及び前記第2のAD変換器からの信号を用いて前記振動伝達特性を計算する解析部と、
前記解析部の指示によって指定する周波数の余弦波を発生し、前記振動発生器に振動を発生させる波形発生器と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の光ファイバケーブル振動伝達特性測定装置。
【請求項5】
前記伝達特性測定計は、計算した光ファイバケーブルの振動伝達特性を利用して、前記受光器の受光した干渉信号から前記光ファイバケーブルに印加された振動による加速度の振幅を計算することを特徴とする請求項2に記載の光ファイバケーブル振動伝達特性測定装置。
【請求項6】
コンピュータに、
光を送出する光源からの光を分岐して、光ファイバケーブルに含まれる第1の光ファイバの一端及び前記光ファイバケーブルに含まれない第2の光ファイバの一端に入力し、前記第1の光ファイバの他端及び前記第2の光ファイバの他端からの光を結合して受光器で受光するマッハツェンダ型干渉計の前記第1の光ファイバのみを通過してきた光を前記受光器で受光した第1の受光電力及び前記第2の光ファイバのみを通過してきた光を前記受光器で受光した第2の受光電力を取得する受光電力取得工程と、
前記光ファイバケーブルに振動を印加する振動発生工程と、
前記振動発生工程の振動で発生した前記光ファイバケーブルの表面の加速度を計測し、前記マッハツェンダ型干渉計の前記第1の光ファイバを通過してきた光及び前記第2の光ファイバを通過してきた光を結合して前記受光器で受光した干渉信号を計測する加速度・干渉計測工程と、
前記受光電力取得工程で取得した第1の受光電力及び第2の受光電力と前記加速度・干渉計測工程で取得した加速度及び干渉信号とから、振動による光ファイバケーブルの加速度の振幅に対する前記第1の光ファイバを伝搬する光の位相変化の大きさの関係を表す振動伝達特性を計算する振動伝達特性計算工程と、
を実行させる光ファイバケーブル振動伝達特性測定方法。
【請求項7】
コンピュータに請求項6に記載の光ファイバケーブル振動伝達特性測定方法を実行させるためのプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マッハツェンダ型干渉計を用いた光ファイバ振動伝達特性測定技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまでの光ファイバ振動センサとしては、圧電アクチュエータを用いた光ファイバストレッチャーを利用して、直接的に光ファイバを伸縮させて位相変化を発生させる光ファイバ振動センサによる観測方法が提案されている(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Qizhen Sun, Deming Liu, Jian Wang, Hairong Liu, “Distributed fiber-optic vibration sensor using a ring Mach-Zehnder interferometer,”Optics Communications, Vol. 281,Issue 6, 2008
【非特許文献2】I. D. Luch, P. Boffi, M. Ferrario, G. Rizzelli, R. Gaudino and M. Martinelli, “Vibration Sensing for Deployed Metropolitan Fiber Infrastructure,” in Journal of Lightwave Technology, vol. 39, no. 4, pp. 1204-1211, 15 Feb.15, 2021
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光ファイバケーブル外部に与えられる振動と光ファイバケーブル内部の光ファイバに与えられる振動には光ファイバケーブルの種別により、その構造に起因した違いが発生すると考えられる。しかしながら、非特許文献1や非特許文献2では光ファイバストレッチャーを利用して、光ファイバに直接的に振動を付加した場合の計測方法について述べているだけである。よって、実際に敷設された光ファイバケーブルを用いて振動を観測した場合、本来発生している光ファイバケーブル外部の振動を正しく計測できるかどうかが明らかでないという問題があった。
【0005】
本開示は、上記事情に着目してなされたもので、光ファイバケーブルの外部から与える振動による加速度の振幅と、光ファイバケーブルに含まれる光ファイバを伝搬する光の位相変化の大きさとの関係を把握することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示では,マッハツェンダ型干渉計により得られる干渉信号が第一種ベッセル関数で級数展開できることに着目し、光ファイバケーブルの外部から与える振動による加速度の振幅と2本の光ファイバを伝搬する光による干渉信号との関係を表す非線形方程式を見出した。
【0007】
そこで、マッハツェンダ型干渉計から得られる干渉信号をフーリエ変換することで、光ファイバケーブルの外部から与えた振動周波数とその2倍の振動周波数の振幅値を求める。これら2つの振幅値を含む非線形方程式を数値的に解くことで、光ファイバケーブルの外部から与えられる振動による加速度の振幅と光ファイバケーブルに含まれる光ファイバを伝搬する光の位相変化の大きさの関係を表す振動伝達特性を求める。
【0008】
具体的には、本開示は、
光を送出する光源からの光を分岐して、光ファイバケーブルに含まれる第1の光ファイバの一端及び前記光ファイバケーブルに含まれない第2の光ファイバの一端に入力し、前記第1の光ファイバの他端及び前記第2の光ファイバの他端からの光を結合して受光器で干渉信号として受光するマッハツェンダ型干渉計と、
前記光ファイバケーブルに振動を印加する振動発生器と、
前記振動発生器の印加する振動によって前記光ファイバケーブルに発生する加速度を計測する加速度計測器と、
を備える光ファイバケーブル振動伝達特性測定装置
である。
【0009】
本開示の光ファイバケーブル振動伝達特性測定装置は、
前記加速度計測器の測定した振動による前記光ファイバケーブルの加速度と前記受光器で受光した干渉信号とを用いて、前記光ファイバケーブルの加速度の振幅に対する前記第1の光ファイバを伝搬する光の位相変化の大きさの関係を表す振動伝達特性を計算する伝達特性測定計をさらに備えること
を特徴とする。
【0010】
具体的には、本開示の前記マッハツェンダ型干渉計は、
前記光源と、
前記光源からの光を2つに分岐する第1の光合分岐カプラと、
前記第1の光合分岐カプラから分岐された光の一方を通過又は遮断させる第1の光スイッチと、
前記光ファイバケーブルに含まれ、前記第1の光スイッチからの光を伝搬させる前記第1の光ファイバと、
前記第1の光合分岐カプラから分岐された光の他方を通過又は遮断させる第2の光スイッチと、
前記光ファイバケーブルに含まれず、前記第2の光スイッチからの光を伝搬させる前記第2の光ファイバと、
前記第1の光ファイバからの光及び前記第2の光ファイバからの光を結合する第2の光合分岐カプラと、
前記第2の光合分岐カプラからの光を受光して電気信号に変換する受光器と、
を備えること
を特徴とする。
【0011】
具体的には、本開示の前記伝達特性測定計は、
前記受光器からの電気信号の直流成分を遮断し、バイパス機能付きの第1の直流遮断フィルタと、
前記加速度計測器からの出力の直流成分を遮断する第2の直流遮断フィルタと、
前記第1の直流遮断フィルタからの信号をAD変換する第1のAD変換器と、
前記第2の直流遮断フィルタからの信号をAD変換する第2のAD変換器と、
前記第1のAD変換器からの信号及び前記第2のAD変換器からの信号を用いて前記振動伝達特性を計算する解析部と、
前記解析部の指示によって指定する周波数の余弦波を発生し、前記振動発生器に振動を発生させる波形発生器と、
を備えること
を特徴とする。
【0012】
具体的には、本開示の前記伝達特性測定計は、計算した光ファイバケーブルの振動伝達特性を利用して、前記受光器の受光した干渉信号から前記光ファイバケーブルに印加された振動による加速度の振幅を計算すること
を特徴とする。
【0013】
具体的には、本開示は、
コンピュータに、
光を送出する光源からの光を分岐して、光ファイバケーブルに含まれる第1のファイバの一端及び前記光ファイバケーブルに含まれない第2の光ファイバの一端に入力し、前記第1の光ファイバの他端及び前記第2の光ファイバの他端からの光を結合して受光器で受光するマッハツェンダ型干渉計の前記第1の光ファイバのみを通過してきた光を前記受光器で受光した第1の受光電力及び前記第2の光ファイバのみを通過してきた光を前記受光器で受光した第2の受光電力を取得する受光電力取得工程と、
前記光ファイバケーブルに振動を印加する振動発生工程と、
前記振動発生工程の振動で発生した前記光ファイバケーブルの表面の加速度の振幅を計測し、前記マッハツェンダ型干渉計の前記第1の光ファイバを通過してきた光及び前記第2の光ファイバを通過してきた光を結合して前記受光器で受光した干渉信号を計測する加速度・干渉計測工程と、
前記受光電力取得工程で取得した第1の受光電力及び第2の受光電力と前記加速度・干渉計測工程で取得した加速度及び干渉信号とから、振動による光ファイバケーブルの加速度の振幅に対する前記第1の光ファイバを伝搬する光の位相変化の大きさの関係を表す振動伝達特性を計算する振動伝達特性計算工程と、
を実行させる光ファイバケーブル振動伝達特性測定方法
である。
【0014】
具体的には、本開示は、
コンピュータに、
上記記載の光ファイバケーブル振動伝達特性測定方法を実行させるためのプログラム
である。
【0015】
なお、上記各開示の発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、光ファイバケーブルの外部から与える振動による加速度の振幅に対する光ファイバケーブルに含まれる光ファイバを伝搬する光の位相変化の大きさの関係を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の光ファイバケーブル振動伝達特性測定装置の構成の一例を示す図である。
図2】本開示の光ファイバケーブル振動伝達特性測定方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0019】
本開示の光ファイバケーブル振動伝達特性測定装置の構成の一例を図1に示す。図1において、10は光ファイバケーブル、11は第1の光ファイバ、12は第2の光ファイバ、100は光源、101は第1の光スイッチ、102は第2の光スイッチ、200は受光器、300は第1の光合分岐カプラ、301は第2の光合分岐カプラ、400は振動発生器、500は加速度計測器、600は第1の直流遮断フィルタ、601は第1の直流遮断フィルタ、700は第1のAD変換器、701は第2のAD変換器、800は波形発生器、900は解析部である。
【0020】
本開示の光ファイバケーブル振動伝達特性測定装置は、レーザ光を送出する光源100からの光を分岐して、光ファイバケーブル10に含まれる第1の光ファイバ11の一端及び光ファイバケーブル10に含まれない第2の光ファイバ12の一端に入力し、第1の光ファイバ11の他端及び第2の光ファイバ12の他端からの光を結合して受光器200で受光するマッハツェンダ型干渉計と、光ファイバケーブル10に振動を印加する振動発生器400と、振動発生器400の印加する振動によって光ファイバケーブル10に発生する加速度を計測する加速度計測器500と、を備える。
【0021】
本開示のマッハツェンダ型干渉計は、レーザ光を送出する光源100と、光源100からの光を2つに分岐する第1の光合分岐カプラ300と、第1の光合分岐カプラ300から分岐された光の一方を通過又は遮断させる第1の光スイッチ101と、光ファイバケーブル10に含まれ、第1の光スイッチ101からの光を伝搬させる第1の光ファイバ11と、第1の光合分岐カプラ300から分岐された光の他方を通過又は遮断させる第2の光スイッチ102と、光ファイバケーブル10に含まれず、第2の光スイッチ102からの光を伝搬させる第2の光ファイバ12と、第1の光ファイバ11からの光及び第2の光ファイバ12からの光を結合する第2の光合分岐カプラ301と、第2の光合分岐カプラ301からの光を受光して電気信号に変換する受光器200と、を備える。
【0022】
本開示の光ファイバケーブル振動伝達特性測定装置は、加速度計測器500の測定した振動による光ファイバケーブル10の加速度と受光器200で受光した干渉信号とを用いて、光ファイバケーブル10の加速度の振幅に対する第1の光ファイバ11を伝搬する光の位相変化の大きさの関係を表す振動伝達特性を計算する伝達特性測定計をさらに備えてもよい。
【0023】
本開示の伝達特性測定計は、受光器200からの電気信号の直流成分を遮断し、バイパス機能付きの第1の直流遮断フィルタ600と、加速度計測器500からの出力の直流成分を遮断する第2の直流遮断フィルタ601と、第1の直流遮断フィルタ600からの信号をAD変換する第1のAD変換器700と、第2の直流遮断フィルタ601からの信号をAD変換する第2のAD変換器701と、第1のAD変換器700からの信号及び第2のAD変換器701からの信号を用いて加速度計測器500の測定する光ファイバケーブル10の加速度の振幅に対する第1の光ファイバ11を伝搬中の光の位相変化の大きさとの関係を表す振動伝達特性を計算する解析部900と、解析部900の指示によって指定する周波数の余弦波を発生し、振動発生器に振動を発生させる波形発生器800と、を備える。
【0024】
本開示の光ファイバケーブル振動伝達特性測定装置の動作を説明する。本開示のマッハツェンダ型干渉計において、光源100からの光は、第1の光合分岐カプラ300により2つに分岐される。分岐された光は測定対象である光ファイバケーブル10の内部の第1の光ファイバ11の一端及び光ファイバケーブル10の外部の第2の光ファイバ12の一端に入射する。第1の光ファイバ11の他端及び第2の光ファイバ12の他端からの光は第2の光合分岐カプラ301で結合される。第2の光合分岐カプラ301で発生した干渉波は受光器200で受光される。
【0025】
マッハツェンダ型干渉計における第1の光ファイバ11および第2の光ファイバ12における電界をそれぞれ
【数1】
【数2】
とすると、受光器200で観測される干渉波E(t)は
【数3】
となる。ただし、ωは第1の光ファイバ11及び第2の光ファイバ12を伝搬する光の角周波数、φ及びφは位相である。
【0026】
このとき受光器200の出力する干渉信号I(t)は
【数4】
となる。ただし、Kは受光器200の光入力と電気出力の間の光-電気変換係数である。ここで、第1の直流遮断フィルタ600のバイパス機能を有効にし、第1の直流遮断フィルタ600をバイパスするように設定した上で、第1の光スイッチ101及び第2の光スイッチ102の通過又は遮断をそれぞれ操作することで、第1の光ファイバ11のみを通過した時の第1の受光電力I及び第2の光ファイバ12のみを通過した時の第2の受光電力Iが次式で得られる。
【数5】
【数6】
【0027】
解析部900の指示によって波形発生器800は指定する周波数の余弦波を発生する。振動発生器400は指定された周波数と所定の大きさの振幅の余弦波の振動を測定対象である光ファイバケーブル10に印加する。光ファイバケーブル10に振動が印加されると、これに応じた加速度が光ファイバケーブル10に発生することになる。光ファイバケーブル10の表面に発生する
【数6-1】
の加速度によって、第1の光ファイバ11を伝搬する光の位相が変化し、次式の干渉信号を得るとする。
【数7】
ただし、
【数7-1】
【数7-2】
である。
【0028】
式(7)を第一種ベッセル関数Jn(*)により級数展開すると次式を得る。
【数8】
第1の直流遮断フィルタ600のバイパス機能を無効にして、第1の直流遮断フィルタ600を通過させ直流成分を除去すると、干渉信号は
【数9】
となる。
【0029】
ここで、干渉信号から抽出される2つの角周波数
【数9-1】
【数9-2】
の各成分をそれぞれ
【数9-3】
【数9-4】
とすると、
【数10】
【数11】
を得る。
【0030】
式(10)および式(11)の振幅値をそれぞれ
【数11-1】
【数11-2】
とすると、
【数12】
【数13】
となる。
【0031】
ここで、
【数13-1】
となる。式(5)、式(6)、式(12)、式(13)及び式(13-1)より、
【数14】
を得る。よって,第1種ベッセル関数を含む非線形方程式
【数14-1】

【数15】
と置き、ニュートン法もしくはセカント法等を用いて数値的に
【数15-1】
を満たす
【数15-2】
を求めることが可能となる。
【0032】
これは、光ファイバケーブル10の表面に加速度の振幅が
【数15-3】
である振動を与えた時に
【数15-4】
ラジアンの位相変化を起こすことを意味する。光ファイバケーブル10に与える角周波数
【数15-5】
を変化させることで、求めたい光ファイバケーブルの振動伝達特性が以下のように得られる。
【数16】
式(16)は、光ファイバケーブル10の表面に付与された振動による加速度の振幅に対する第1の光ファイバ11を伝搬する光の位相変化の大きさを示す。
【0033】
本開示の光ファイバケーブル振動伝達特性測定方法の一例を図2に示す。受光電力取得工程1001では、まず、図1に示すマッハツェンダ型干渉計において、第2の光スイッチ102により第2の光ファイバ12への光源100からの光の入射を遮断し、第1の光ファイバ11のみに光源100からの光が入射されるようにする。次に第1の直流遮断フィルタ600のバイパス機能を有効にして、受光器200からの第1の受光電力Iを第1のAD変換器700により量子化し、解析部900のメモリに格納する。
【0034】
受光電力取得工程1001では、さらに、図1に示すマッハツェンダ型干渉計において、第1の光スイッチ101により第1の光ファイバ1への光源100からの光の入射を遮断し、第2の光ファイバ12のみに光源100からの光が入射されるようにする。次に第1の直流遮断フィルタ600のバイパス機能を有効にして、受光器200からの第2の受光電力Iを第1のAD変換器700により量子化し解析部900のメモリに格納する。
【0035】
振動発生工程1002では、まず、図1に示すマッハツェンダ型干渉計において、第1の光スイッチ101及び第2の光スイッチ102を操作し、光源100からの光が第1の光ファイバ11及び第2の光ファイバ12に入射されるようにする。次に測定したい振動範囲の最低周波数fminから最高周波数fmaxの余弦波を波形発生器800に設定し、振動発生器400により光ファイバケーブル10に振動を与える。
【0036】
加速度・干渉計測工程1003では、図1に示すマッハツェンダ型干渉計において、振動発生工程1002で印加された振動による光ファイバケーブル10の表面における加速度a(t)を加速度計測器500で測定し、直流成分を除去する第2の直流遮断フィルタ601を通過後のa’(t)を第2のAD変換器701により量子化して解析部900のメモリに格納する。メモリに格納したN点のデータを
【数17】
とする。xに離散フーリエ変換を行い、得られたデータを
【数18】
とする。ただし、Xakは周波数
【数18-1】
における複素振幅、fは第2のAD変換器701におけるサンプリング周波数である。波形発生器800に設定した振動周波数に対応したXakより、光ファイバケーブル10の表面に与えられた加速度の振幅Aが次のように得られる。
【数19】
【0037】
加速度・干渉計測工程1003では、さらに、図1に示すマッハツェンダ型干渉計において、第1の直流遮断フィルタ600のバイアス機能を無効にして、第1の直流遮断フィルタ600を通過後の干渉信号I’(t)を第1のAD変換器700で量子化し、解析部900のメモリに格納する。メモリに格納したN点のデータを
【数20】
とする。xに離散フーリエ変換を行い、得られたデータを
【数21】
とする。ただし、XIkは周波数
【数21-1】
における複素振幅である。波形発生器800に設定した振動周波数および2倍の振動周波数に対応した干渉信号の複素振幅をXIj及びXIkとすると、式(10)および式(11)の振幅値はそれぞれ次式で得られる。
【数22】
【数23】
【0038】
振動伝達特性計算工程1004では上記の各工程で得た値を用いることにより、式(15)は次式で得られる。
【数24】
【0039】
数値解法により非線形方程式
【数24-1】
を解くことで振動による第1の光ファイバ11を伝搬する光の位相変化の大きさVを求める。これにより、周波数
【数24-2】
における光ファイバケーブル10の表面の加速度の振幅Aと第1の光ファイバ11を伝搬する光の位相変化の大きさVの関係を表す振動伝達係数cが以下のように得られる。
【数25】
【0040】
受光電力取得工程1001と振動発生工程1002及び加速度・干渉計測工程1003とはどちらを先に実行してもよく、受光電力取得工程1001と振動発生工程1002及び加速度・干渉計測工程1003は、振動伝達特性計算工程1004の前に実行すれば足りる。
【0041】
振動発生工程1002及び加速度・干渉計測工程1003において振動周波数を変化させながら上記工程を繰り返すことにより最終的に最低周波数fminから最高周波数fmaxまでの振動周波数に対して式(16)で示した光ファイバケーブルの振動伝達特性を求めることができる。
【0042】
一つの振動周波数ごとに、振動発生工程1002、加速度・干渉計測工程1003及び振動伝達特性計算工程1004を繰り返して実行してもよく、複数の振動周波数でまとめて振動発生工程1002及び加速度・干渉計測工程1003を繰り返し実行してから振動伝達特性計算工程1004を実行してもよい。
【0043】
式(25)が得られれば、逆に、振動伝達特性を利用して、受光器で受光した干渉信号から光ファイバケーブルに印加された振動による加速度の振幅を計算することもできる。
【0044】
以上説明したように、本開示によればマッハツェンダ型干渉計より得られる干渉信号が第一種ベッセル関数で級数展開できることに着目し、光ファイバケーブルに印加された振動による加速度の振幅と干渉信号との関係を表す非線形方程式を導出している。この非線形方程式を数値的に解くことで、光ファイバケーブルに印加された振動による加速度が光ファイバケーブル内部の光ファイバを伝搬する光の位相にどのような変化を与えるのかを把握することが可能となった。これにより、マッハツェンダ型干渉計より得られた干渉信号から光ファイバケーブルに印加された加速度の振幅を推定することを可能とした。
【0045】
本発明の解析部900はコンピュータとプログラムによっても実現できる。コンピュータに実行させるプログラムを記録媒体に記録することも、通信ネットワークを通して提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本開示は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
10:光ファイバケーブル
11:第1の光ファイバ
12:第2の光ファイバ
100:光源
101:第1の光スイッチ
102:第2の光スイッチ
200:受光器
300:第1の光合分岐カプラ
301:第2の光合分岐カプラ
400:振動発生器
500:加速度計測器
600:第1の直流遮断フィルタ
601:第2の直流遮断フィルタ
700:第1のAD変換器
701:第2のAD変換器
800:波形発生器
900:解析部
1001:受光電力取得工程
1002:振動発生工程
1003:加速度・干渉計測工程
1004:振動伝達特性計算工程
図1
図2