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特開2024-58922画像形成装置、画像形成方法、及び、画像形成プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058922
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成方法、及び、画像形成プログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240422BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20240422BHJP
   B65H 19/18 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J29/38 301
B65H19/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166338
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【弁理士】
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】安藤 浩
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
3F064
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB36
2C056EB37
2C056EC07
2C056EC12
2C056EC33
2C056EC35
2C056HA12
2C056HA27
2C061AQ05
2C061AS06
2C061HH01
2C061HJ01
2C061HK11
2C061HV21
2C061HV44
3F064AA01
3F064BB07
3F064BB33
3F064FA04
(57)【要約】
【課題】画像形成において、ヘッドと記録媒体が衝突するのを防ぐ。
【解決手段】ヘッドを有し、前記ヘッドに基づき記録媒体に対して画像形成を行う画像形成装置が、前記記録媒体に対して光を投射して前記光の反射光を受光する光センサを用いて、前記記録媒体の垂直方向における移動である上下変動、及び、前記垂直方向における前記記録媒体までの距離を検出する検出部と、前記検出部による検出結果に基づき、前記記録媒体と前記ヘッドが衝突する可能性がある領域である第1領域を設定する第1領域設定部と、前記第1領域において前記記録媒体と前記ヘッドが衝突しないように、前記ヘッドを退避させる制御部とを備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドを有し、前記ヘッドに基づき記録媒体に対して画像形成を行う画像形成装置であって、
前記記録媒体に対して光を投射して前記光の反射光を受光する光センサを用いて、前記記録媒体の垂直方向における移動である上下変動、及び、前記垂直方向における前記記録媒体までの距離を検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に基づき、前記記録媒体と前記ヘッドが衝突する可能性がある領域である第1領域を設定する第1領域設定部と、
前記第1領域において前記記録媒体と前記ヘッドが衝突しないように、前記ヘッドを退避させる制御部と
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記第1領域設定部は、
前記距離に基づいて、前記記録媒体のスプライスを検出した箇所を前記第1領域に含むように設定する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記検出部による検出結果に基づき、
前記第1領域より広い領域であり、かつ、前記ヘッドを退避させる領域である第2領域を設定する第2領域設定部を更に備え、
前記制御部は、
前記第2領域では、前記ヘッドを退避させるように制御する
請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記検出部による検出結果に基づき、
前記第2領域より広い領域であり、かつ、前記ヘッドによる画像形成を禁止させる第3領域を設定する第3領域設定部を更に備え、
前記制御部は、
前記第3領域では、前記ヘッドによる画像形成を禁止するように制御する
請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記検出部は、
前記光を投射する複数の光センサを有し、
前記光センサのうち、第1光センサは、
前記記録媒体の第1面に前記光を投射して前記第1光センサから前記第1面までの第1距離を計測し、
前記光センサのうち、第2光センサは、
前記記録媒体の第2面に前記光を投射して前記第2光センサから前記第2面までの第2距離を計測し、
前記第1距離、及び、前記第2距離の計測結果に基づき、前記第1領域となる領域を特定する
請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記記録媒体は、
連帳の用紙であり、
前記ヘッドは、
液体を前記記録媒体に吐出して画像形成を行い、
前記第1領域設定部は、
前記第1光センサから前記第2光センサまでのセンサ間距離から、前記第1距離、及び、前記第2距離を減算して算出する前記記録媒体の厚み量、及び、前記記録媒体の上下変動の移動量の合計値が、前記記録媒体と前記ヘッドの間隔、及び、1枚あたりの前記記録媒体の厚み量の合算値を超えるか否かで前記第1領域を設定し、
前記制御部は、
前記記録媒体を搬送する搬送方向に対して直交する直交方向において前記記録媒体があるより外側の領域に前記ヘッドを移動、又は、前記記録媒体の面に対し、垂直となる垂直方向において画像形成を行う位置より前記ヘッドを上昇させて、前記ヘッドを退避させる
請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記検出部による検出結果に基づき、
前記記録媒体と前記ヘッドの間隔が一定距離となるように制御する
請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項8】
ヘッドを有し、前記ヘッドに基づき記録媒体に対して画像形成を行う画像形成装置が行う画像形成方法であって、
前記記録媒体に対して光を投射して前記光の反射光を受光する光センサを用いて、前記記録媒体の垂直方向における移動である上下変動、及び、前記垂直方向における前記記録媒体までの距離を検出する検出手順と、
前記検出手順による検出結果に基づき、前記記録媒体と前記ヘッドが衝突する可能性がある領域である第1領域を設定する第1領域設定手順と、
前記第1領域において前記記録媒体と前記ヘッドが衝突しないように、前記ヘッドを退避させる制御手順と
を含む画像形成方法。
【請求項9】
請求項8に記載の画像形成方法を画像形成装置に実行させるためのプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成方法、及び、画像形成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるインクジェット方式で画像形成を行う画像形成装置が知られている。そして、画像形成に、ロール紙を用い、ロール紙を切断工程によって所定の長さに切断して、画像形成を行う。さらに、インクジェット方式用のヘッド(以下単に「ヘッド」という。)がロール紙に接触して、破損するのを防ぐ技術が知られている。
【0003】
具体的には、まず、検出部は、ロール紙において「繋ぎ目」となる部分(以下「スプライス」(splice)という。)を検出する。次に、スプライスの検出結果に基づき、スプライス、及び、スプライスの前後一定領域を画像形成不可とする領域に設定する。そして、制御部は、画像形成不可とする領域を除いた領域に画像形成を行うように制御する。このようにして、ヘッドと記録媒体が衝突して、ヘッドが破損するのを防ぐ(例えば、特許文献1等である)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、連帳の記録媒体に含まれるスプライスや、連帳の記録媒体の画像形成面とヘッドとの距離が変動する、いわゆる「ばたつき」があると、ヘッドと記録媒体が接触する課題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、画像形成において、ヘッドと記録媒体が衝突するのを防ぐのを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、画像形成装置は、ヘッドを有し、前記ヘッドに基づき記録媒体に対して画像形成を行う画像形成装置であって、
前記記録媒体に対して光を投射して前記光の反射光を受光する光センサを用いて、前記記録媒体の垂直方向における移動である上下変動、及び、前記垂直方向における前記記録媒体までの距離を検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に基づき、前記記録媒体と前記ヘッドが衝突する可能性がある領域である第1領域を設定する第1領域設定部と、
前記第1領域において前記記録媒体と前記ヘッドが衝突しないように、前記ヘッドを退避させる制御部と
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、画像形成において、ヘッドと記録媒体が衝突するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】画像形成装置の例を示す図である。
図2】ハードウェア構成例を示す図である。
図3】センサ構成例を示す図である。
図4】第1領域、第2領域、及び、第3領域の設定例を示す図である。
図5】全体処理例を示す図である。
図6】機能構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付する図面を参照し、具体例を説明する。なお、実施形態は、以下に説明する具体例に限られない。
【0010】
[画像形成装置の構成例]
図1は、画像形成装置の例を示す図である。以下、図1に示す画像形成装置1を例にして本発明の実施形態を説明する。したがって、画像形成装置1は、入力される画像データに基づき、インクを用紙Wに吐出して、用紙W上に画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置である。
【0011】
以下、用紙Wを搬送する方向を「搬送方向」及び「Y軸方向」とする。そして、Y軸方向に対して直交する方向であって用紙Wの幅方向に相当する方向を「直交方向」及び「X軸方向」とする。さらに、用紙Wの面(画像形成面を含む面)に対し、垂直となる方向であって、搬送方向及びY軸方向と、直交方向及びX軸方向と直交する方向を「垂直方向」及び「Z軸方向」とする。
【0012】
用紙Wは、例えば、給紙装置から、給紙ローラ120、及び、排紙ローラ121によってY軸方向に搬送される。また、Y軸方向に、第1搬送ローラ101、第2搬送ローラ102、及び、第3搬送ローラ103等のように、搬送装置が配置される。また、用紙Wは、複数の記録媒体を搬送方向に繋ぎ合わせたものである。
【0013】
具体的には、第1搬送ローラ101は、モータと連結し、モータの駆動に基づき、回転する。そして、第2搬送ローラ102、及び、第3搬送ローラ103は、搬送と従動する従動ローラである。
【0014】
画像形成装置1は、エンコーダを備え、用紙Wの搬送量を計測する。例えば、エンコーダは、第1搬送ローラ101と印字装置104の間等に設置する。エンコーダの設置箇所は、印字装置104と排紙ローラの間等でもよい。
【0015】
印字装置104は、用紙Wが搬送されると、画像データに基づき、ヘッドからインクを吐出して画像形成を行う。具体的には、印字装置104は、白色(W)、黄色(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及び、黒色(K)のインクをインクジェットヘッドアレイのヘッドからインクを吐出して画像形成を行う。なお、印字装置104は、単色、又は、上記以外の組み合わせとなる色で画像形成を行ってもよい。
【0016】
画像形成装置1は、乾燥装置106等の後処理装置を備えてもよい。具体的には、乾燥装置106は、印字装置104がインクを塗布した後、用紙Wを乾燥させる処理を行う。なお、後処理装置は、乾燥以外の処理を行う装置でもよい。
【0017】
次に、画像形成装置1は、第1排紙ローラ108、及び、第2排紙ローラ109によって用紙Wを排紙する。そして、排紙された用紙Wは、排紙ローラ121が巻き取る。
【0018】
用紙Wの搬送は、搬送装置107が制御する。例えば、搬送装置107は、各ローラを回転させるアクチュエータを制御して、搬送量、又は、搬送速度を制御する。
【0019】
画像形成装置1は、吐出制御装置111を備える。吐出制御装置111は、ヘッドが各色のインクを吐出するタイミングを制御する。
【0020】
画像形成装置1は、駆動装置112を備える。駆動装置112は、印字装置104を垂直方向に移動させるためのアクチュエータ、及び、制御装置を含む。なお、駆動装置112は、印字装置104を移動させる上記以外の自由度を更に備えてもよい。
【0021】
図2は、ハードウェア構成例を示す図である。具体的には、画像形成装置1は、Central Processing Unit(以下「CPU201」という。)、記憶装置202、入力装置203、出力装置204、及び、インタフェース205を備える。また、各ハードウェア資源は、バス(bus)を介して相互に電気的に接続される。
【0022】
CPU201は、演算装置、及び、制御装置の例である。したがって、CPU201は、プログラム等に基づき、画像形成装置1において実現可能な各処理を実行する。
【0023】
記憶装置202は、メモリ等である。したがって、記憶装置202は、CPU201が用いるデータ等を記憶する。また、記憶装置202は、ハードディスク等の補助記憶装置を有してもよい。
【0024】
入力装置203は、ユーザによる操作を入力する装置である。
【0025】
出力装置204は、ユーザに対して処理結果等を出力する装置である。
【0026】
インタフェース205は、外部装置と有線、又は、無線でデータを送受信する。
【0027】
以上のようなハードウェア資源を用いて、画像形成装置1は、プログラムに基づき、演算装置、制御装置、及び、記憶装置等を協働させて処理を実行する。
【0028】
なお、ハードウェア構成は図示する構成に限られない。例えば、ハードウェア構成は、更に演算装置、制御装置、記憶装置、入力装置、出力装置、又は、補助装置を備える構成でもよい。
【0029】
[センサの構成例]
画像形成装置1は、上下変動、及び、垂直方向における用紙Wの距離(用紙Wの距離は、垂直方向における用紙Wの面の位置を示す値である。以下、光センサが2つの構成において、光センサの発光、及び、受光する面を原点とした第1距離L1、及び、第2距離L2を例に説明する。)を検出するセンサ(以下「センサ110」という。)を備える。例えば、センサ110は、給紙ローラ120より下流、かつ、第1搬送ローラ101、及び、第2搬送ローラ102より上流となる箇所等に設置する。ただし、センサ110は、これ以外の箇所、又は、複数箇所に設置されてもよい。例えば、センサ110は、以下のような構成である。
【0030】
図3は、センサ構成例を示す図である。以下、用紙Wの一方の面を「第1面」という。そして、第1面とは異なる面を「第2面」という。したがって、第1面が「A面」(「おもて面」ともいう。)であれば、第2面は「B面」(「裏面」ともいう。)となる。
【0031】
センサ110は、第1面、及び、第2面の両面を計測する構成が望ましい。具体的には、センサ110は、第1面側、及び、第2面側の各々に光センサを有する構成である。このような両面にセンサがあると、上下変動とスプライス20の違いが精度良く検出できる。以下、第1面に光を投射する光センサを「第1光センサ11」という。また、第1光センサ11が計測する距離(第1光センサ11から第1面までの距離である。)を「第1距離L1」という。同様に、第2面に光を投射する光センサを「第2光センサ12」という。また、第2光センサ12が計測する距離(第2光センサ12から第2面までの距離である。)を「第2距離L2」という。
【0032】
第1光センサ11、及び、第2光センサ12は、レーザ方式、又は、LED方式である。そして、第1光センサ11、及び、第2光センサ12は、投射した光が用紙の面で反射した反射光を受光して距離を検出する。ただし、超音波センサ等が更にあってもよい。
【0033】
以下、スプライス20において、上に位置する用紙を「第1用紙W1」という。一方で、スプライス20において、下に位置する用紙を「第2用紙W2」という。例えば、第1用紙W1と第2用紙W2は、両面テープで接着する。なお、接着剤等で接着してもよい。したがって、第1用紙W1、第2用紙W2、及び、両面テープが重なる箇所がスプライス20となる。
【0034】
第1光センサ11、及び、第2光センサ12は、第1距離L1、及び、第2距離L2に基づき、「記録媒体の厚み量」、及び、「バタツキ量」(記録媒体の上下変動の移動量である。)を算出する。
【0035】
「記録媒体の厚み量」、及び、「バタツキ量」の合計を「合計D」とする。そして、第1光センサ11から第2光センサ12までの距離を「センサ間距離L12」とする。センサ間距離L12は、第1光センサ11、及び、第2光センサ12の設置位置で定まる値である。
【0036】
合計Dは、下記(1)式で算出できる。
【0037】
合計D = センサ間距離L12 ‐ 第1距離L1 ‐ 第2距離L2 (1)
【0038】
次に、下記(2)式において「1枚あたりの記録媒体の厚み量Dw」を用紙Wの仕様で事前に定めるとする。また、ヘッドと記録媒体の間隔を「間隔Dgap」とする。そして、上記(1)式で算出する「合計D」と、「間隔Dgap」及び「1枚あたりの記録媒体の厚み量Dw」の合算値を比較する。下記(2)式に置いて、「合計D」(下記(2)式の左辺である。)が、「間隔Dgap」及び「1枚あたりの記録媒体の厚み量Dw」の合算値(下記(2)式の右辺である。)を超える場合、すなわち、下記(2)式に示す不等号の関係が成立する場合には、画像形成装置1は、「記録媒体とヘッドが衝突する可能性がある」と判断する。
【0039】
合計D > 間隔Dgap + 1枚あたりの記録媒体の厚み量Dw (2)
【0040】
なお、上記(2)式には、安全余裕が設定されてもよい。したがって、上記(2)式には、安全余裕となる値が追加されてもよい。
【0041】
間隔Dgapには、例えば、0.5ミリメートル乃至1.5ミリメートルの値が設定される。ただし、間隔Dgapは、仕様として事前に任意の値が設定できる。
【0042】
センサの種類を光センサにすると、超音波センサ等と比較して、精度良く距離が計測できる。そして、このような高精度な検出結果が得られると、用紙Wの厚みと上下変動が区別できる。したがって、スプライス20が判断できる。
【0043】
上記のような検出結果に基づき、以下のように領域が設定される。
【0044】
[第1領域、第2領域、及び、第3領域の設定例]
図4は、第1領域、第2領域、及び、第3領域の設定例を示す図である。センサ110による検出結果に基づいて、まず、用紙Wとヘッドが衝突する可能性がある領域(以下「第1領域21」という。)を設定する。
【0045】
第1領域21は、例えば、スプライス20を含む部分に相当する領域である。図3が示すように、スプライス20を含む部分(スプライス20の箇所)は、他の部分(箇所)よりも用紙Wの厚みが厚くなる。そのため、用紙WをY方向に搬送しているときにスプライス20を含む部分がヘッドに衝突することが懸念される。特に、厚みが異なる用紙Wを繋ぐ場合には、搬送方向に対し用紙Wの厚み量が変動しやすく、用紙Wがヘッドに衝突しやすい。したがって、第1領域21を設定し、用紙Wがヘッドに衝突するのを回避するようにヘッドを移動させる制御を行うと、画像形成において、ヘッドと記録媒体が衝突するのを防ぐことができる。
【0046】
また、画像形成装置1は、第1領域21とは別に、第2領域22を更に設定するのが望ましい。用紙Wがヘッドに衝突する可能性がある部分は、用紙Wにおけるスプライス20以外にもある。例えば、スプライス20を挟んで搬送方向の前後の一定の領域は、用紙Wの上下変動が生じやすい部分となるので、これらの部分においても用紙Wがヘッドに衝突することが懸念される。そこで、第1領域21を挟んで、用紙Wの搬送方向における前後に位置する所定の範囲を第2領域22として設定する。
【0047】
第2領域22は、ヘッドを用紙Wの上部から退避させる領域である。上下変動が大きくなる、すなわち、バタツキが激しい箇所では、「合計D」の値が大きくなるため、上記(2)式の関係が成立しやすくなる。
【0048】
このように、上記(2)式の関係が成立する領域を第2領域22に設定する。次に、第2領域22では、ヘッドが用紙Wに衝突する可能性がある。ゆえに、第2領域22に対しても、第1領域21と同様に、ヘッドが退避するのが望ましい。したがって、画像形成装置1は、ヘッドを用紙Wが衝突しない位置へ退避させるように制御する。具体的には、画像形成装置1は、ヘッドを下記のように移動させる。
【0049】
X軸方向にヘッドを移動させて退避させる場合には、画像形成装置1は、X軸方向において用紙Wがある領域より外側の領域にヘッドを移動させる。
【0050】
Z軸方向にヘッドを移動させて退避させる場合には、画像形成装置1は、画像形成を行う位置よりヘッドを上昇させる。すなわち、画像形成装置1は、用紙Wからヘッドが離れるようにZ軸方向に移動させる。
【0051】
なお、ヘッドを退避させる位置は、事前に設定する。
【0052】
第1領域21と比較すると、用紙Wの上下変動も考慮するため、第2領域22は、第1領域21より、搬送方向に長くなるように領域が設定される。ヘッドは、スプライス20による厚みの変動に加えて、上下変動でも用紙Wに衝突する可能性がある。ゆえに、スプライス20、及び、上下変動による用紙Wの垂直方向における位置の変動の両方が考慮された第2領域22が設定された上で、ヘッドを退避するように制御すると、画像形成装置1は、ヘッドが用紙Wに衝突するのを防ぎ、ヘッドが用紙Wに衝突するのをより少なくできる。
【0053】
さらに、画像形成装置1は、第3領域23を設定するのが望ましい。第3領域23は、ヘッドによる画像形成を禁止する領域である。また、第3領域23の判断は、下記(3)式で判断する。
【0054】
合計D > 禁止間隔Dpgap + 1枚あたりの記録媒体の厚み量Dw (3)
【0055】
上記(3)式は、上記(2)式と比較すると、「間隔Dgap」が「禁止間隔Dpgap」となる点が異なる。「禁止間隔Dpgap」は、事前に設定する値である。「禁止間隔Dpgap」は、「間隔Dgap」よりも小さい値である。例えば、「間隔Dgap」が0.5ミリメートル乃至1.5ミリメートルの値が設定される場合には、「禁止間隔Dpgap」には、0.5ミリメートル乃至1.0ミリメートルの値が設定される。したがって、上記(3)式は、上記(2)式よりも関係が成立しやすいため、第3領域23の方が第2領域より広く設定される。
【0056】
また、第3領域23は、第2領域22の搬送方向における前後に設定する。なお、第3領域23は、上下変動の移動量に応じて設定されてもよい。具体的には、搬送ローラを設置する等によって、「バタツキ」を少なくできる構成とし、上下変動の移動量が小さい場合には、第3領域23は、搬送方向に短く(領域面積が狭く)なるように設定されてもよい。したがって、第1領域21、第2領域22、及び、第3領域23は、図示する面積比でなく、検出結果のうち、上下変動の移動量に応じて、比率又は面積を変更してもよい。このようにすると、上下変動が少なくなるように搬送ローラが多く設置されている等の構成では、画像形成禁止領域が狭くなり、画像形成が可能な領域を広くできる。
【0057】
第3領域23は、厚みの変動、又は、上下変動が生じている領域であるため、第3領域23に対して、インクを吐出すると、インクの着弾位置が狙った位置からずれてしまう場合がある。そこで、画像形成装置1は、着弾位置のずれが生じやすい第3領域23ではヘッドによる画像形成を禁止するように制御する。このように制御すると、着弾位置のずれによる品質不良を防ぐことができる。
【0058】
各領域が設定されると、画像形成装置1は、搬送量、及び、搬送速度に基づき、設定された各領域に対して、ヘッドが各領域に到達する時間が分かるため、ヘッドの退避、又は、画像形成の禁止といった制御ができる。
【0059】
さらに、画像形成装置1は、用紙Wの厚み量を検出し、ヘッドを垂直方向において移動させて、ヘッドと用紙Wの間隔が一定距離となるように制御するのが望ましい。具体的には、画像形成装置1は、用紙Wの厚み量を検出し、厚み量が増大、すなわち、厚い用紙Wになったと検出した場合には、ヘッドを用紙Wから遠ざけるように上昇させるように制御する。一方で、画像形成装置1は、用紙Wの厚み量を検出し、厚み量が減少、すなわち、薄い用紙Wになったと検出した場合には、ヘッドを用紙Wに近づけるように下降させるように制御する。
【0060】
このように、ヘッドと用紙Wの間隔が安定して一定距離であると、ヘッドからインクが吐出して用紙Wに着弾するまでの距離が一定距離となる。そして、ヘッドからインクが吐出して用紙Wに着弾するまでの距離が一定距離であると、インクの着弾する位置がずれるのを防ぎ、画質低下を防ぐことができる。なお、一定距離の値は、事前に設定する。
【0061】
[全体処理例]
図5は、全体処理例を示す図である。
【0062】
ステップS0501では、画像形成装置1は、上下変動、及び、距離を検出する。
【0063】
ステップS0502では、画像形成装置1は、ステップS0501による検出結果に基づき、各領域を設定する。以下、第1領域、第2領域、及び、第3領域を設定する場合を例に説明する。
【0064】
ステップS0503では、画像形成装置1は、ヘッドの位置が第1領域、又は、第2領域であるか否かを判断する。なお、ヘッドを退避させる制御、及び、処理時間等を考慮して、ヘッドの位置が第1領域、又は、第2領域に達する一定時間前のタイミングで第1領域、又は、第2領域が実行されてもよい。
【0065】
次に、第1領域、又は、第2領域であると判断すると(ステップS0503でYES)、画像形成装置1は、ステップS0504に進む。一方で、第1領域、及び、第2領域のどちらでもないと判断すると(ステップS0503でNO)、画像形成装置1は、ステップS0504に進む。
【0066】
ステップS0504では、画像形成装置1は、ヘッドを退避させる制御を行う。
【0067】
ステップS0505では、画像形成装置1は、ヘッドの位置が第3領域であるか否かを判断する。
【0068】
次に、第3領域であると判断すると(ステップS0505でYES)、画像形成装置1は、ステップS0506に進む。一方で、第3領域でないと判断すると(ステップS0505でNO)、画像形成装置1は、ステップS0507に進む。
【0069】
ステップS0506では、画像形成装置1は、画像形成を禁止する制御を行う。例えば、第3領域には、ヘッドがインクの吐出を行わないようにする。なお、画像形成を禁止させるのに、ヘッドを退避させる制御を行ってもよい。
【0070】
ステップS0507では、画像形成装置1は、ヘッドによって画像形成を行う。具体的には、事前に入力する画像データに基づき、指定された画像を記録媒体上に形成するように、ヘッドからのインクの吐出を制御する。例えば、ヘッドを退避させた場合には、画像形成装置1は、退避した位置から画像形成を行う位置までヘッドを移動させ、吐出のタイミングを決定する。
【0071】
[機能構成例]
図6は、機能構成例を示す図である。具体的には、画像形成装置1は、検出部300、第1領域設定部301、及び、制御部304を備える機能構成である。また、画像形成装置1は、第2領域設定部302、及び、第3領域設定部303を更に備える機能構成であるのが望ましい。
【0072】
検出部300は、用紙Wに対して光を投射して、反射光を受光した結果に基づき、上下変動、及び、距離を検出する検出手順を行う。例えば、検出部300は、センサ110等で実現する。
【0073】
第1領域設定部301は、検出部300による検出結果に基づき、第1領域を設定する第1領域設定手順を行う。例えば、第1領域設定部301は、CPU201等で実現する。
【0074】
第2領域設定部302は、検出部300による検出結果に基づき、第2領域を設定する第2領域設定手順を行う。例えば、第2領域設定部302は、CPU201等で実現する。
【0075】
第3領域設定部303は、検出部300による検出結果に基づき、第3領域を設定する第3領域設定手順を行う。例えば、第3領域設定部303は、CPU201等で実現する。
【0076】
制御部304は、第1領域、第2領域、及び、第3領域に基づき、ヘッドを退避させる、又は、画像形成を禁止する制御手順を行う。例えば、制御部304は、CPU201等で実現する。
【0077】
以上のような構成であると、画像形成装置1は、検出部300による検出結果が得られる。このような検出結果に基づき、図5に示すように、第1領域乃至第3領域を判断する処理が実行できる。この判断の結果、制御部304は、領域の種類を判断した結果によって、第1領域といったヘッドと記録媒体が衝突する可能性がある領域において、ヘッドと記録媒体が衝突するのを防ぐため、ヘッドを退避させる制御ができる。ゆえに、画像形成装置1は、画像形成において、ヘッドと記録媒体が衝突するのを防ぐことができる。同様に、第2領域でも画像形成装置1は、画像形成において、ヘッドと記録媒体が衝突するのを防ぐことができる。ヘッドと記録媒体が衝突すると、吐出不良、ヘッドの故障、又は、ダウン時間の発生等の不具合が生じる。このような不具合による画質低下、ヘッドのコスト、又は、作業時間の無駄を少なくできる。
【0078】
また、以上のような構成であると、画像形成装置1は、記録媒体の厚みを検出するセンサ、スプライス20を検出するセンサ、及び、上下変動を検出するセンサを共通化させることができる。
【0079】
さらに、記録媒体の厚みを精度良く検出できると、記録媒体の厚みを検出した検出結果を用いることで、記録媒体の厚みを設定する作業時間を削減できる。
【0080】
ほかにも、以上のような構成であると、画像形成装置1は、第1領域、第2領域、及び、第3領域を精度良く検出して各領域を小さく設定できる。そのため、損紙を少なくできる。
【0081】
さらに、画像形成装置1は、第3領域といった画質低下が生じる領域では画像形成を禁止することで、画質低下が起きるのを防いで画質向上を図ることができる。
【0082】
[その他の実施形態]
記録媒体は、例えば、用紙(「普通紙」等ともいう。)である。ただし、記録媒体は、用紙以外のコート紙、ラベル紙等の他、オーバヘッドプロジェクタシート、フィルム、又は、可撓性を持つ薄板等でもよい。すなわち、記録媒体の素材は、インク滴が付着可能、一時的に付着可能、付着して固着、又は、付着して浸透する材質等であればよい。具体的には、記録媒体は、用紙、フィルム、若しくは、布等の被記録媒体、電子基板、圧電素子(「圧電部材」等ともいう。)等の電子部品、粉体層(「粉末層」等ともいう。)、臓器モデル、又は、検査用セル等である。また、3次元的な物体が形成されてもよい。このように、記録媒体の材質は、液体が付着可能であって、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、又は、これらの組み合わせ等であればよい。また、液体は、上記の用途に応じて、インク以外の種類である、記録液、定着処理液、又は、樹脂等が含まれてもよい。
【0083】
連帳の用紙は、いわゆるロール紙である。ロール紙は、搬送方向の上流側で給紙ローラが用紙を挟み(ニップ)、かつ、搬送方向の下流側で排紙ローラが用紙を挟む状態で搬送する記録媒体である。
【0084】
上記の画像形成方法は、例えば、コンピュータに処理を実行させて実現させる。なお、本発明に係る画像形成方法は、上記に示す以外の処理が含まれてもよい。また、画像形成方法は、一部の処理を外部装置による処理又は操作等で実行される方法を含む。
【0085】
上記の画像形成方法は、上記に例示する処理、又は、上記に示す処理と等価な処理を実行するプログラム(ファームウェア、及び、プログラムに準ずるものを含む。以下単に「プログラム」という。)で実現されてもよい。
【0086】
すなわち、上記の画像形成方法は、コンピュータに対して指令を行って所定の結果が得られるように、プログラミング言語等で記載されたプログラム等で実現されてもよい。なお、プログラムは、処理の一部をIC(集積回路、Integrated Circuit)等のハードウェア等で実行する構成であってもよい。
【0087】
プログラムは、コンピュータが有する演算装置、制御装置、及び、記憶装置等を協働させて上記に示す処理等をコンピュータに実行させる。すなわち、プログラムは、主記憶装置等にロードされて、演算装置に命令を発して演算を行わせてコンピュータを動作させる。
【0088】
また、プログラムは、コンピュータが読み込み可能な記録媒体、又は、ネットワーク等の電気通信回線を介して提供されてもよい。
【0089】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
【0090】
<1>ヘッドを有し、前記ヘッドに基づき記録媒体に対して画像形成を行う画像形成装置であって、
前記記録媒体に対して光を投射して前記光の反射光を受光する光センサを用いて、前記記録媒体の垂直方向における移動である上下変動、及び、前記垂直方向における前記記録媒体までの距離を検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に基づき、前記記録媒体と前記ヘッドが衝突する可能性がある領域である第1領域を設定する第1領域設定部と、
前記第1領域において前記記録媒体と前記ヘッドが衝突しないように、前記ヘッドを退避させる制御部と
を備える画像形成装置である。
【0091】
<2>前記第1領域設定部は、
前記距離に基づいて、前記記録媒体のスプライスを検出した箇所を前記第1領域に含むように設定する
上記<1>に記載の画像形成装置である。
【0092】
<3>前記検出部による検出結果に基づき、
前記第1領域より広い領域であり、かつ、前記ヘッドを退避させる領域である第2領域を設定する第2領域設定部を更に備え、
前記制御部は、
前記第2領域では、前記ヘッドを退避させるように制御する
上記<1>又は上記<2>に記載の画像形成装置である。
【0093】
<4>前記検出部による検出結果に基づき、
前記第2領域より広い領域であり、かつ、前記ヘッドによる画像形成を禁止させる第3領域を設定する第3領域設定部を更に備え、
前記制御部は、
前記第3領域では、前記ヘッドによる画像形成を禁止するように制御する
上記<3>に記載の画像形成装置である。
【0094】
<5>前記検出部は、
前記光を投射する複数の光センサを有し、
前記光センサのうち、第1光センサは、
前記記録媒体の第1面に前記光を投射して前記第1光センサから前記第1面までの第1距離を計測し、
前記光センサのうち、第2光センサは、
前記記録媒体の第2面に前記光を投射して前記第2光センサから前記第2面までの第2距離を計測し、
前記第1距離、及び、前記第2距離の計測結果に基づき、前記第1領域となる領域を特定する
上記<1>乃至<4>のいずれか1つに記載の画像形成装置である。
【0095】
<6>前記記録媒体は、
連帳の用紙であり、
前記ヘッドは、
液体を前記記録媒体に吐出して画像形成を行い、
前記第1領域設定部は、
前記第1光センサから前記第2光センサまでのセンサ間距離から、前記第1距離、及び、前記第2距離を減算して算出する前記記録媒体の厚み量、及び、前記記録媒体の上下変動の移動量の合計値が、前記記録媒体と前記ヘッドの間隔、及び、1枚あたりの前記記録媒体の厚み量の合算値を超えるか否かで前記第1領域を設定し、
前記制御部は、
前記記録媒体を搬送する搬送方向に対して直交する直交方向において前記記録媒体があるより外側の領域に前記ヘッドを移動、又は、前記記録媒体の面に対し、垂直となる垂直方向において画像形成を行う位置より前記ヘッドを上昇させて、前記ヘッドを退避させる
上記<5>に記載の画像形成装置である。
【0096】
<7>前記制御部は、
前記検出部による検出結果に基づき、
前記記録媒体と前記ヘッドの間隔が一定距離となるように制御する
上記<1>乃至<6>のいずれか1つに記載の画像形成装置である。
【0097】
なお、本発明は、上記に例示する各実施形態に限定されない。したがって、本発明は、技術的な要旨を逸脱しない範囲で、構成要素の追加、又は、変形が可能である。ゆえに、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項のすべてが本発明の対象となる。なお、上記に例示する実施形態は、実施において好適な具体例である。そして、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現で可能であって、このような変形例は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0098】
1 :画像形成装置
11 :第1光センサ
12 :第2光センサ
20 :スプライス
21 :第1領域
22 :第2領域
23 :第3領域
110 :センサ
300 :検出部
301 :第1領域設定部
302 :第2領域設定部
303 :第3領域設定部
304 :制御部
L1 :第1距離
L12 :センサ間距離
L2 :第2距離
W :用紙
W1 :第1用紙
W2 :第2用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0099】
【特許文献1】特開2002-46260号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6