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特開2024-58970多孔質体の不純物除去装置及び多孔質体の不純物除去方法
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  • 特開-多孔質体の不純物除去装置及び多孔質体の不純物除去方法 図1
  • 特開-多孔質体の不純物除去装置及び多孔質体の不純物除去方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058970
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】多孔質体の不純物除去装置及び多孔質体の不純物除去方法
(51)【国際特許分類】
   F27B 17/00 20060101AFI20240422BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20240422BHJP
   F27D 11/02 20060101ALN20240422BHJP
【FI】
F27B17/00 C
F27D17/00 104G
F27D11/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166421
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100213436
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 直俊
(72)【発明者】
【氏名】上村 隆裕
【テーマコード(参考)】
4K056
4K063
【Fターム(参考)】
4K056AA09
4K056AA12
4K056AA14
4K056AA16
4K056BA06
4K056BB05
4K056BB06
4K056CA10
4K056CA14
4K063AA19
(57)【要約】
【課題】多孔質体を撹拌せずに多孔質体から不純物を均一に除去する不純物除去装置及び不純物除去方法を提供する。
【解決手段】不純物除去装置100は、多孔質体9を収納する筒状容器10を有する収容部1と、多孔質体9を加熱するヒータ2と、を備え、筒状容器10は、鉛直方向に軸心Gを沿わせて配置され、その下端から上端へ空気の通流が可能であり、ヒータ2は、筒状容器10の径方向外側に配置されている
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質体を収納する筒状容器を有する収容部と、
前記多孔質体を加熱するヒータと、を備え、
前記筒状容器は、
鉛直方向に軸心を沿わせて配置され、
その下端から上端へ空気の通流が可能であり、
前記ヒータは、前記筒状容器の径方向外側に配置されている多孔質体の不純物除去装置。
【請求項2】
前記ヒータは、
前記筒状容器の下端側に寄せて配置された下部側ヒータと、
前記下部側ヒータよりも前記筒状容器の上端側に寄せて配置された上部側ヒータと、を有し、
前記上部側ヒータの温度は、前記下部側ヒータの温度よりも高い請求項1に記載の多孔質体の不純物除去装置。
【請求項3】
前記収容部は、前記筒状容器の端部に配置されたフィルタを有し、
前記筒状容器と前記フィルタとで区画された収容空間に前記多孔質体が収容される請求項1に記載の多孔質体の不純物除去装置。
【請求項4】
前記フィルタは、前記筒状容器の端部に螺合接続されており、前記筒状容器の軸方向における位置が可変であり、
前記フィルタの前記軸方向における位置の変更により、前記収容空間の容量が可変とされている請求項3に記載の多孔質体の不純物除去装置。
【請求項5】
前記フィルタは、
前記筒状容器の下端部に配置された下端フィルタと、
前記筒状容器の上端部に配置された上端フィルタと、を有し、
前記収容部は、上下を反転可能である請求項3に記載の多孔質体の不純物除去装置。
【請求項6】
前記ヒータは、
前記筒状容器の下端側に寄せて配置された下部側ヒータと、
前記下部側ヒータよりも前記筒状容器の上端側に寄せて配置された上部側ヒータと、を有し、
前記収容部は、
前記筒状容器の下端部に配置された下端フィルタと、
前記筒状容器の上端部に配置された上端フィルタと、を有し、
前記上部側ヒータの温度は、前記下部側ヒータの温度よりも高く、
前記収容部は、上下を反転可能である請求項1に記載の多孔質体の不純物除去装置。
【請求項7】
前記筒状容器を上下に反転させる回転支持部を更に備えた請求項1から6の何れか一項に記載の多孔質体の不純物除去装置。
【請求項8】
多孔質体を筒状容器に収容し、当該筒状容器の軸心を鉛直方向に沿わせて配置する収容工程と、
前記多孔質体を加熱する加熱工程と、を含み、
前記加熱工程では、
前記多孔質体の加熱によって、前記多孔質体の不純物を気化させ、
前記多孔質体の加熱によって、当該筒状容器の下端から流入して上端から流出する上昇流を前記筒状容器内の空気に生じさせ、気化した前記不純物を、前記上昇流によって前記筒状容器から排出する多孔質体の不純物除去方法。
【請求項9】
前記加熱工程では、前記筒状容器内における下部側の前記多孔質体よりも上部側の前記多孔質体をより高い温度で加熱する請求項8に記載の多孔質体の不純物除去方法。
【請求項10】
前記筒状容器の下端から流入する流入空気をフィルタで浄化する浄化工程を更に含む請求項8に記載の多孔質体の不純物除去方法。
【請求項11】
前記筒状容器の下端から流入する流入空気をフィルタで浄化する浄化工程を更に含み、
前記浄化工程は、
前記流入空気を第一フィルタで浄化する第一浄化工程と、
前記流入空気を第二フィルタで浄化する第二浄化工程と、を含み、
前記第二浄化工程は、前記第一浄化工程後に行われ、
前記第二浄化工程では、前記筒状容器の上端から流出する流出空気で前記第一フィルタを再生する請求項8に記載の多孔質体の不純物除去方法。
【請求項12】
前記筒状容器の下端から流入する流入空気を第一フィルタで浄化する第一浄化工程と、
前記流入空気を第二フィルタで浄化する第二浄化工程と、を更に含み、
前記加熱工程では、前記筒状容器内における下部側の前記多孔質体よりも上部側の前記多孔質体をより高い温度で加熱し、
前記第二浄化工程は、前記第一浄化工程後に行われ、
前記第二浄化工程では、前記筒状容器の上端から流出する流出空気で前記第一フィルタを再生する請求項8に記載の多孔質体の不純物除去方法。
【請求項13】
前記筒状容器を上下に反転させる反転工程を更に含む請求項8から12の何れか一項に記載の多孔質体の不純物除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質体の不純物除去装置及び多孔質体の不純物除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカゲルやゼオライトなどのような多孔質体は、気体や液体中の吸着剤として用いられる場合がある。これら多孔質体を吸着材として用いる用途としては、気体や液体からの不純物の除去や、気体や液体中の特定成分のサンプリングや分析などが挙げられる。
【0003】
樹脂や油分(以下、油分等と称する)を含む成分と基材となる成分とを混ぜてペレット化したものを粉末状又は粒子状に加工して原料粒子群とし、更に、この原料粒子群から樹脂や油分を除去することで、粉末状の多孔質体を製造する製造方法がある。この原料粒子群では、油分等と基材とで形成された粒子中において、油分等が存在する部分が細孔となる。この製造方法では、原料粒子群の粒子中に形成された細孔から油分等を除去することで、多孔質体を製造することができる。また、細孔のある基材を使用して特定の形状の多孔質体を製造する際は、成型時に、基材表面の細孔に樹脂や油分等の不純物がつまってしまうことがあるため、これら不純物の除去が必要である。無機材料だけで多孔質体を製造する際も、製造ラインの設備や環境大気に油分等の有機物が含まれていると、この有機物が基材表面の細孔に吸着する場合があり、出荷前に有機物の除去が必要である。油分等の除去方法としては、超臨界流体による抽出(例えば、特許文献1参照)や、加熱処理による分解気化(例えば、特許文献2参照)が利用される。油分等を分解気化させる場合、搬送ガスには不活性ガスが用いられる場合がある。
【0004】
特許文献1には、焼結体の製造方法などが開示されている。この焼結体の製造方法は、少なくとも導体材料の粉末もしくはセラミック材料の粉末と、有機物との混合物を成形して多孔質体を得る工程と、上記多孔質体を超臨界状態もしくは亜臨界状態の流動体(以下、超臨界流体と記載する)と接触させて、上記多孔質体中の有機物を抽出及び除去する工程と、この工程の後に、孔質体を高温で焼結し、多孔質焼結体を得る工程とを含む。
【0005】
特許文献2には、多孔質体の製造方法及び多孔質体が開示されている。この多孔質体の製造方法は、エラストマーに、微細繊維を混合し、かつ剪断力によって分散させて複合エラストマーを得る工程と、複合エラストマーを熱処理し、複合エラストマー中に含まれるエラストマーを分解気化させて微細繊維の網目構造体を得る工程と、不活性ガス雰囲気の炉内で、溶融した金属材料を微細繊維の網目構造体の間に浸透させた後、固化させて微細繊維を含む複合材料を得る工程と、複合材料を熱処理し、複合材料中の微細繊維を燃焼させて除去し、多孔質体を得る工程と、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-234775号公報
【特許文献2】特開2014-9391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
たとえば特許文献1、2に記載されるような従来の製造方法では、超臨界流体や不活性ガス(以下、単に流体と称する)の流れの向きが一方向になっており、不純物の除去が均一に行えず、不純物の浄化状態にムラが生じる場合があった。例えば、低沸点の不純物と高沸点の不純物と残留量について、流体の供給側と排出側とで除去の状態に差が生じる場合があった。
【0008】
多孔質体の用途の一例として、上述のごとく、サンプリング用の吸着剤用途が挙げられる。例えば多孔質体を容器等に充填して油分不純物のサンプリングに用いる場合、バックグラウンド処理として、多孔質体を加熱処理してあらかじめ吸着している油分等の不純物を取り除き、多孔質体を浄化する前処理を行う場合がある。この前処理の際、容器等に充填した多孔質体の浄化状態にムラが生じると、安定したサンプリングを行えない場合があるため問題となる。また、サンプリングにおけるバックグラウンドが安定しない場合があるため問題となる。例えば前処理時の加熱処理の温度を上げると、特定の炭素数の油分の除去速度は速くなる。しかし、油分の炭素数によって移動速度が異なるため、容器等に充填した多孔質体の浄化状態にムラが生じてしまう場合がる。そのため、多孔質体から不純物を均一に除去する装置や方法が望まれる。
【0009】
多孔質体の浄化状態を均一にするため、加熱処理中に多孔質体を撹拌する場合もある。この場合、多孔質体を撹拌する撹拌機が必要であり、前処理や前処理を行う装置が複雑になる場合がある。また、前処理や前処理を行う装置が高価になる場合がある。また、加熱処理中に撹拌することで、多孔質体が割れたり摩滅したりする場合がある。そのため、多孔質体を撹拌せずに多孔質体から不純物を均一に除去する装置や方法が望まれる。
【0010】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、多孔質体を撹拌せずに多孔質体から不純物を均一に除去する不純物除去装置及び不純物除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る多孔質体の不純物除去装置は、
多孔質体を収納する筒状容器を有する収容部と、
前記多孔質体を加熱するヒータと、を備え、
前記筒状容器は、
鉛直方向に軸心を沿わせて配置され、
その下端から上端へ空気の通流が可能であり、
前記ヒータは、前記筒状容器の径方向外側に配置されている。
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る多孔質体の不純物除去方法は、
多孔質体を筒状容器に収容し、当該筒状容器の軸心を鉛直方向に沿わせて配置する収容工程と、
前記多孔質体を加熱する加熱工程と、を含み、
前記加熱工程では、
前記多孔質体の加熱によって、前記多孔質体の不純物を気化させ、
前記多孔質体の加熱によって、当該筒状容器の下端から流入して上端から流出する上昇流を前記筒状容器内の空気に生じさせ、気化した前記不純物を、前記上昇流によって前記筒状容器から排出する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、多孔質体を撹拌せずに多孔質体から不純物を均一に除去する不純物除去装置及び不純物除去方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】不純物除去装置の構成を説明する図である。
図2】不純物除去装置を反転させた場合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面に基づいて、本発明の実施形態に係る多孔質体の不純物除去装置及び多孔質体の不純物除去方法について説明する。
【0016】
図1には、本実施形態に係る不純物除去装置100(以下、除去装置100と称する)の構造を説明する概念図を示している。除去装置100は、例えば無機質で形成された多孔質体9から不純物を除去するための、多孔質体9の不純物除去方法(以下、除去方法と称する)を実現するものである。
【0017】
まず、除去装置100の概要と、これによる除去方法の概要とを説明する。
【0018】
除去装置100は、多孔質体9を収納する筒状容器10を有する収容部1と、多孔質体9を加熱するヒータ2と、を備えている。筒状容器10は、鉛直方向に軸心G(すなわち、筒の軸方向)を沿わせて配置され、その筒の下端から上端へ空気の通流が可能である。ヒータ2は、筒状容器10の径方向外側に配置されている。除去装置100は、多孔質体9から不純物を除去する不純物除去方法を実現することができる。
【0019】
本実施形態に係る除去方法では、多孔質体9を筒状容器10に収容し、筒状容器10の軸心Gを鉛直方向に沿わせて配置する収容工程と、多孔質体9を加熱する加熱工程と、を含む。加熱工程では、多孔質体9の加熱によって、多孔質体9の不純物を気化させる。また、加熱工程では、多孔質体9の加熱によって、筒状容器10の下端から流入して上端から流出する上昇流を筒状容器10内の空気に生じさせ、気化した不純物を、この上昇流によって筒状容器10から排出する。
【0020】
除去装置100及びこれにより実現される除去方法では、多孔質体9を撹拌せずに多孔質体9から不純物を均一に除去することができる。
【0021】
以下、除去装置100及びこれによる除去方法について詳述する。
【0022】
本実施形態に係る除去装置100は、上述の筒状容器10を有する収容部1と、ヒータ2とに加えて、更に、筒状容器10を上下に反転させる回転支持部8を備えている。
【0023】
収容部1は、上述の多孔質体9を収納する筒状容器10と、筒状容器10の端部に配置されたフィルタ3とを有する。
【0024】
筒状容器10は、多孔質体9を収納する収容空間を形成する容器である。筒状容器10は、後述するように、ヒータ2で加熱される。筒状容器10は、例えば、ハステロイやセラミクス等の耐熱性のある素材で形成されるとよい。
【0025】
筒状容器10は、例えば円筒状に形成されてよい。本実施形態では、筒状容器10は、概ね円筒状の形状であって、筒の軸方向(図1に示す状態では、鉛直方向と同じ)における両方の端部がやや窄む形状とされている場合を例示している。
【0026】
筒状容器10は、鉛直方向における下端(以下では、単に下端と称する)の開口からの気体の流入と、鉛直方向における上端(以下では、単に上端と称する)の開口からの気体の流出とを許容している。すなわち、筒状容器10は、筒の内部空間の気体の通流を許容している。以下では、筒状容器10における、筒の内部空間のことを、単に筒状容器10の内部と称する場合がある。本実施形態では、筒状容器10の内部の一部が上述の収容空間である。
【0027】
筒状容器10は、鉛直方向における端部(下端又は上端、本実施形態では、下端及び上端)の開口に、後述するフィルタ3を設置するためのねじ部13が形成されている。ねじ部13は、一例として、筒状容器10の筒の内壁部(開口の内周面部)に形成された雌ねじ(内ねじ)であってよい。本実施形態において、ねじ部13は、筒状容器10の両方の端部に一つずつ形成されている。本実施形態では、筒状容器10とフィルタ3,3とで区画された収容空間に多孔質体9が収容される。
【0028】
フィルタ3は、筒状容器10内と外部との間における空気の流入と流出とを許容し、筒状容器10内に流入する空気から不純物を取り除くことができるものであればよい。フィルタ3で取り除く不純物は、例えば、水分である。フィルタ3は、例えば、容器中にゼオライトを充填したものや、焼結金属などを所定の形状に形成したものであってよい。フィルタ3は、これら素材を使用し、円柱状又は円盤状に形成してよい。本実施形態では、フィルタ3は、厚みのある円盤状(背の低い円柱状)に形成されており、円盤の外周面に、筒状容器10のねじ部13と螺合するねじ部3aが雄ねじとして形成されている。
【0029】
上述のごとく、本実施形態では、筒状容器10の両方の端部に一つずつフィルタ3を設置する。図1に示す状態において、筒状容器10における、下端部に取り付けられたフィルタ3(下端フィルタの一例、以下、第一フィルタ31と称する場合がある)は、外部から筒状容器10の内部への空気の流入を許容する。下端部に取り付けられたフィルタ3は、筒状容器10の内部へ流入する流入空気から不純物を取り除く。同じく図1に示す状態において、筒状容器10における、上端部に取り付けられたフィルタ3(上端フィルタの一例、以下、第二フィルタ32と称する場合がある)は、筒状容器10の内部から外部への空気の流出を許容する。
【0030】
上述のごとく、フィルタ3は、筒状容器10と螺合接続される。そのため、フィルタ3の筒状容器10に対するねじ込みの深さの調節により、筒状容器10の端部における、筒状容器10の軸方向におけるフィルタ3の位置は可変である。したがって、本実施形態では、このようなフィルタ3の軸方向における位置調節、すなわち位置の変更により収容空間の容量が可変とされている。具体的には、フィルタ3の筒状容器10に対するねじ込みの深さを深くすれば、収容空間の容量を小さくすることができる。逆に、フィルタ3の筒状容器10に対するねじ込みの深さを浅くすれば、収容空間の容量を大きくすることができる。このように、フィルタ3の軸方向における位置調節によって、筒状容器10内における、多孔質体を収容する収容空間の容量を調節することができる。
【0031】
ヒータ2は、筒状容器10の筒の径方向外側に配置され、筒状容器10を介して筒状容器10の内部の多孔質体9と、筒状容器10の内部の空気とを加熱する加熱装置である。ヒータ2は、例えば赤外線を放出する電気ヒータ(例えば、セラミックヒータ)や蒸気ヒータ、もしくは、火炎を熱源としたものなどを用いてよい。ヒータ2は、筒状容器10の外周面に沿うように形成された筒状のものであってよい。また、ヒータ2は、筒状容器10の外周面に沿って配列された板状のユニットの集合体であってもよい。
【0032】
本実施形態においてヒータ2は、図1に示す状態において筒状容器10の下端側に寄せて配置された第一ヒータ21(下部側ヒータの一例)と、第一ヒータ21よりも筒状容器10の上端側に寄せて配置された第二ヒータ22(上部側ヒータの一例)と、を有する。本実施形態では、第一ヒータ21及び第二ヒータ22は、それぞれ、筒状容器10の外周面に沿うように形成された筒状のものである。
【0033】
本実施形態においで、第一ヒータ21と第二ヒータ22とはそれぞれ独立して温度制御が可能である。
【0034】
上部側に寄せて配置された第二ヒータ22の温度は、第一ヒータ21の温度よりも高い温度に制御することができる。なお、第二ヒータ22の温度を第一ヒータ21の温度よりも高い温度に制御することができる、とは、単に、第二ヒータ22の温度を第一ヒータ21の温度よりも高い温度となるように使用することを意味している。すなわち、第二ヒータ22の温度を第一ヒータ21の温度よりも高い温度となるように調整して使用(すなわち、制御)できればよく、例えば、第二ヒータ22の熱量の最大出力が第一ヒータ21の熱量の最大出力よりも大きい場合などに限られない。本実施形態では、第一ヒータ21の温度を第二ヒータ22の温度よりも高い温度となるように調整して使用することもできるようになっている。
【0035】
ヒータ2は、筒状容器10におけるヒータ2に隣接する部分又は筒状容器10に隣接するヒータ2の容器の壁部を200℃以上700℃以下に昇温可能な程度の出力を有するものを用いるとよい。
【0036】
本実施形態において、ヒータ2は、筒状容器10の外周部(筒の径方向外側の壁部)に固定されている。
【0037】
回転支持部8は、筒状容器10を上下に反転させるための回転機構である。回転支持部8は、例えば、筒状容器10の軸方向における中央部分を筒状容器10が上下に反転可能となるように軸支する軸支機構であってもよいし、筒状容器10を把持や保持するアームと、そのアームを回転させる回転軸機構とを有して、筒状容器10を上下に反転可能なものなどであってもよい。
【0038】
図1では、回転支持部8が、筒状容器10及びヒータ2から、筒状容器10の径方向外側に向けて延出する軸部18,18を軸支する軸受部80,80を有する軸支機構である場合を例示している。軸部18は、筒状容器10の軸方向における中央部に配置されている。軸部18は、筒状容器10と同様にハステロイやセラミックスなどの耐熱素材を使用したものが好ましい。
【0039】
筒状容器10及びヒータ2は、軸受部80で軸支され、必要時には上下に反転可能とされている。具体的には、図1に示す状態から、図2に示す状態のように、筒状容器10の上下端が逆転する状態に反転可能とされている。なお、図2は、筒状容器10及びヒータ2を上下に反転させた状態を示している。図2に示す状態では、第一ヒータ21が上端側に位置し、第二ヒータ22が下端側に位置している。また、第一フィルタ31が上端側に位置し、第二フィルタ32が下端側に位置している。
【0040】
本実施形態では、図1に示すように、軸受部80は、固定台81に設置されている。固定台81から軸部18までには一定の距離があり、軸受部80及び固定台81は外気によって冷却される。そのため、軸受部80の温度は筒状容器10よりも低くなる。したがって、軸受部80は、炭素鋼やSUS304等の一般的な素材で形成してもよい。
【0041】
本実施形態において、多孔質体9は、活性アルミナやゼオライトのような、無機質で形成されたものである。
【0042】
除去装置100では、除去方法における以下の工程を実現することができる。なお、本実施形態に係る除去方法は、上述の加熱工程と収容工程とに加えて、更に、筒状容器10の下端から流入する流入空気をフィルタで浄化する浄化工程を更に含み得る。
【0043】
多孔質体9から不純物を除去するにあたり、多孔質体9を収容部1の筒状容器10に収容し、筒状容器10の軸心Gを鉛直方向に沿わせて配置する収容工程が行われる。この際、あらかじめ筒状容器10の一方の端部にフィルタ3を螺合接続しておき、収容部1を、フィルタ3と筒状容器10との有底筒状の容器状として多孔質体9の収容空間を形成しておくとよい。この収容空間内に多孔質体9を投入した後、筒状容器10の他方の端部に別のフィルタ3を螺合接続してよい。必要に応じてフィルタ3,3のねじ込みの位置調整を行い、収容空間の容量を調節して所望の容量の多孔質体9を筒状容器10に収容できるように調節してよい。
【0044】
その後、ヒータ2を用い、多孔質体9を加熱する加熱工程を行う。加熱工程では、多孔質体9の加熱によって、多孔質体9の不純物を気化させる。多孔質体9の加熱は、ヒータ2で加熱された筒状容器10を介して行ってよい。なお、この場合の不純物とは、主として、炭化水素である。
【0045】
加熱工程では、多孔質体9及び筒状容器10の加熱によって、筒状容器10の下端から流入して上端から流出する上昇流が筒状容器10内の空気に生じる。これにより、気化した不純物が、上昇流によって筒状容器10から排出される。
【0046】
加熱工程では、筒状容器10内における下部側の多孔質体9よりも上部側の多孔質体9をより高い温度で加熱するとよい。本実施形態では、筒状容器10の下部側よりも上部側をより高い温度で加熱するとよい。筒状容器10の加熱は、上述のごとくヒータ2で行う。筒状容器10内における下部側の多孔質体9よりも上部側の多孔質体9をより高い温度で加熱すること、本実施形態では、筒状容器10の下部側よりも上部側をより高い温度で加熱することで、筒状容器10の下端側の空気よりもより多くの不純物を含んだ上端側の空気を、下端側の空気よりも高い温度に加熱することができる。これにより、筒状容器10の上端部における不純物の蓄積を抑制することができる。
【0047】
ヒータ2のうち、筒状容器10の上端側に寄せて配置されたヒータ2(図1では、第二ヒータ22)は、筒状容器10におけるヒータ2に隣接する部分又は筒状容器10に隣接するヒータ2の容器の壁部を300℃以上700℃以下に昇温することが好ましい。筒状容器10の上端側に寄せて配置されたヒータ2は、筒状容器10におけるヒータ2に隣接する部分又は筒状容器10に隣接するヒータ2の容器の壁部を、400℃以上600℃以下に昇温することがより好ましく、450℃以上550℃以下に昇温することが更に好ましい。
【0048】
筒状容器10の下端側に寄せて配置されたヒータ2(図1では、第一ヒータ21)は、筒状容器10におけるヒータ2に隣接する部分又は筒状容器10に隣接するヒータ2の容器の壁部を200℃以上400℃以下に昇温することが好ましい。筒状容器10の下端側に寄せて配置されたヒータ2は、筒状容器10におけるヒータ2に隣接する部分又は筒状容器10に隣接するヒータ2の容器の壁部を、250℃以上350℃以下に昇温することがより好ましい。
【0049】
上述のごとく筒状容器10の端部にはフィルタ3が設置されている。本実施形態に係る除去方法では、筒状容器10の加熱によって生じる上昇流と筒状容器10の下端部に設置されたフィルタ3とによって筒状容器10の内部へ流入する流入空気から不純物を取り除く浄化工程が実現される。
【0050】
除去装置100では、筒状容器10の両方の端部にフィルタ3が取り付けられている。また、筒状容器10は、回転支持部8により上下に反転する反転工程を実現可能とされている。そのため、浄化工程では、第一フィルタ31が筒状容器10の下端側に位置している状態において、流入空気を第一フィルタ31で浄化する第一浄化工程と、第二フィルタ32が筒状容器10の下端側に位置している状態において、流入空気を第二フィルタ32で浄化する第二浄化工程と、を実現可能である。第一フィルタ31が筒状容器10の下端側に位置している状態と、第二フィルタ32が筒状容器10の下端側に位置している状態とは、上述の反転工程により切り替えることができる。
【0051】
例えば、第二浄化工程を第一浄化工程後に行う場合、第二工程においては、第一工程で流入空気の不純物を吸着などして汚染された第一フィルタ31を、筒状容器10内で生じた上昇流の流出空気である排気が通過することになる。すなわち、第二浄化工程を第一浄化工程後に行う場合、第二浄化工程では、第一工程で汚染された第一フィルタ31が、高温の排気によって浄化(再生)される。同様に、第一浄化工程を第二浄化工程後に行う場合、第二工程で汚染された第二フィルタ32が、高温の排気によって浄化(再生)される。
【実施例0052】
以下では、上述の除去装置及び除去方法を用いて多孔質体から不純物としての油分(炭化水素)を除去する場合の実施例を説明する。以下では、筒状容器が円柱状であって、上端部及び下端部にフィルタを設置可能であり、筒状容器の上端部側と下端部側とに別個の温度を設定できるヒータが設けられている除去装置を用いる場合を例示して説明する。
【0053】
(実施例1)
不純物を除去する対象物である多孔質体として、100gの活性アルミナ(水澤化学製、ネオビードGB。型式は、GB13。)を用意した。この多孔質体としての活性アルミナ100g中の残留油分は5mgである。この多孔質体としての活性アルミナ100g中の残留油分は、炭素数が10から30の炭化水素4mgと炭素数40から100の炭化水素1mgとを含む。
【0054】
多孔質体から不純物を除去するにあたり、まず、多孔質体100gを断面が円形の筒状容器(内径は40mm、高さは200mm)に収容し、筒状容器の軸心を鉛直方向に沿わせて固定台上に載置した。多孔質体を筒状容器に収容する際、あらかじめ筒状容器の下端部にフィルタ(ゼオライトをフィルタ容器に充填したもの、以下、第一のフィルタと称する)を螺合接続して収容空間を形成し、この収容空間内に多孔質体を投入した。そして、筒状容器の他方の上端部に別のフィルタ(下端部に用いたフィルタと同じ)を螺合接続して収容空間から多孔質体が漏れ出ないようにした。また、筒状容器を傾けたり反転したりしても多孔質体の充填層が静止した状態を保つように、上端部及び下端部のフィルタのねじ込みの位置の調整を行って、収容空間が多孔質体で満たされるようにした。
【0055】
その後、ヒータで筒状容器を2時間加熱処理した。この際、上端部側のヒータは、筒状容器に隣接するヒータの容器の壁部が500℃になるように、下端部側のヒータは、同様にヒータの壁部が300℃になるように設定した。以下では、筒状容器に隣接するヒータの容器の壁部の温度を、単にヒータの温度、と称する。ヒータで筒状容器を加熱している間、筒状容器中では上昇流が生じ、下端部のフィルタを経由して筒状容器中に空気が流入し、上端部のフィルタを介して筒状容器中から高温の空気が流出していた。
【0056】
2時間の加熱処理後、筒状容器を反転(180℃回転)させた。これにより、上端部側及び下端側のヒータの配置と上端部及び下端部のフィルタの配置とが逆転した。また、筒状容器中の多孔質体の充填層も反転した。
【0057】
筒状容器の反転後、反転前と同様にヒータの温度を設定した。すなわち、上端部側に移動したヒータは、筒状容器におけるヒータに隣接する部分が500℃になるように、下端部側に移動したヒータは、同様に300℃になるように設定して2時間加熱処理した。ヒータで筒状容器を加熱している間、反転前と同様に、筒状容器中では上昇流が生じ、下端部に移動したフィルタを経由して筒状容器中に空気が流入し、上端部のフィルタを介して筒状容器中から高温の空気が流出していた。
【0058】
加熱終了後、筒状容器及び多孔質体が冷却してから多孔質体を回収した。以下では、回収した多孔質体を、処理後の多孔質体と称する場合がある。多孔質体の回収の際、筒状容器に収容した時点で筒状容器の下層部分(下端部側の層)であったもの(50g)と、筒状容器の上層部分(上端部側の層)であったもの(50g)とは分けて回収した。以下では、筒状容器に収容した時点で筒状容器の下層部分(下端部側の層)であった部分の処理後の多孔質体を下部側の多孔質体、筒状容器の上層部分(上端部側の層)であった部分の処理後の多孔質体を上部側の多孔質体と称する場合がある。
【0059】
(実施例2)
実施例2は、筒状容器を反転させずに2時間のみ加熱処理した点で実施例1とは異なり、その他は実施例1と同じとした。
【0060】
(実施例3)
実施例3は、上端部側のヒータの温度と下端部側のヒータの温度とを同じ300℃に設定した点で実施例2とは異なり、その他は実施例2と同じとした。
【0061】
(比較例1)
比較例1は、空気に換えて窒素ガスのみが筒状容器内を通流可能とし、また、上端部側のヒータの温度と下端部側のヒータの温度とを同じ500℃に設定し、反転させることなく6時間筒状容器を加熱処理した点で実施例1とは異なり、その他は実施例1と同じとした。なお、窒素ガスの筒状容器内の通流量は1L/minとした。
【0062】
(比較例2)
比較例1は、空気に換えて超臨界状態(7.5MPa、35℃)とした二酸化炭素の流体(超臨界流体)のみを筒状容器内に通流させ、ヒータで加熱せず、また反転させることなく、6時間超臨界流体の通流を継続した点で実施例1とは異なり、その他は実施例1と同じとした。なお、超臨界状態の筒状容器内の通流量は1L/minとした。
【0063】
(実施例4)
実施例4では、不純物を除去する対象物である多孔質体の種類を変更した。実施例4は、多孔質体として、活性アルミナに代えてゼオライトの一種であるモレキュラーシーブ(信和化工製 Molecular Sieve 5A)を用いた点で実施例1とは異なり、その他は実施例1と同じである。この多孔質体としてのゼオライト100g中の残留油分は8mgである。この多孔質体としてのゼオライト100g中の残留油分は、炭素数が10から30の炭化水素6mgと炭素数40から100の炭化水素2mgとを含む。
【0064】
(実施例5)
実施例5は、フィルタに代えて吸着効果の無いステンレス製の金網(平織、目開き0.5mm)を用いた点で実施例1とは異なり、その他は実施例1と同じである。
【0065】
各実施例及び比較例の多孔質体は、回収後、ハロゲン系溶媒で多孔質体の残留油分を抽出し、赤外分光分析法により、炭素数が10から30の炭化水素の残留量と、炭素数40から100の炭化水素の残留量とを定量した。なお、炭素数が10から30の炭化水素は、沸点が174℃から450℃のものとして、炭素数40から100の炭化水素は、沸点522℃から721℃のものとして定量した。表1には、各実施例及び比較例の条件の概要と、炭化水素の残留量の定量値(100gあたりの換算値)とを示している。炭化水素の残留量の定量値は、上部側の多孔質体の結果(表1中、「上部側」)と下部側の多孔質体の結果(表1中、「上部側」)とを示している。
【0066】
【表1】
【0067】
まず、各実施例及び比較例について、炭素数が10から30の炭化水素の残留量についてみると、以下のようである。表1に示すように、実施例1では、上部側の多孔質体も下部側の多孔質体も、炭素数が10から30の炭化水素の残留量は、0.1mg未満であった。これに対し、実施例2では、下部側の多孔質体における炭素数が10から30の炭化水素の残留量は0.1mg未満となったが、上部側の多孔質体は、0.1mg検出され、炭化水素の除去状態にムラが生じていた。実施例2において、下部側の多孔質体における炭化水素の残留量が減少傾向にあるのは、下部側は、常に新しい空気と接触するためであると考えられる。また、実施例1のごとく、筒状容器を反転することで空気の通流方向を反転させて、炭化水素の除去状態を均一にすることができることがわかった。
【0068】
実施例3のように、300℃程度の低い温度で、筒状容器を反転させることなく加熱処理した多孔質体では、上部側の多孔質体で0.6mg、下部側の多孔質体で0.2mgの炭素数が10から30の炭化水素が定量された。多孔質体から炭化水素を十分に除去するためには、加熱温度が不足していたものと考えられる。
【0069】
比較例1の窒素を用いた場合では、実施例2と同様に下部側の方が常に新しいガスと接触するため、下部側の多孔質体から定量された炭素数が10から30の炭化水素の残留量は0.1mg未満となっていた。そして、やはり実施例2と同様に、上部側の多孔質体から定量された炭素数が10から30の炭化水素の残留量は0.2mgであり、炭化水素の除去状態にムラが生じていた。
【0070】
比較例2の超臨界状態の二酸化炭素を用いた場合では、上部側の多孔質体及び下部側の多孔質体のそれぞれに、炭素数が10から30の炭化水素が多量に定量されていた。すなわち、比較例2の場合では、十分に炭化水素を除去できていないことがわかった。
【0071】
次に、各実施例及び比較例について、炭素数が40から100の炭化水素の残留量についてみると、以下のようであった。実施例1では、上部側の多孔質体及び下部側の多孔質体のそれぞれについて、炭素数が40から100の炭化水素の残留量が0.5mg以下であり、均一に炭化水素が除去されていることがわかる。
【0072】
実施例2,3及び比較例1,2では、上部側の多孔質体の炭化水素の残留量が多くなり、炭化水素の除去状態にムラが生じていた。これは、上部側の多孔質体の炭化水素の除去と共に下部側の多孔質体の炭化水素が上部側に移動して、加熱終了時点で上部側の多孔質体に吸着などして残留したと考えられる。しかし、実施例2,3は、比較例1,2と比べて、上部側の多孔質体の炭化水素の残留量と下部側の多孔質体の炭化水素の残留量との差は小さく、実施例2,3は、比較例1,2と比べて、均一に炭化水素が除去されていることがわかる。
【0073】
さて、実施例1から3では、加熱処理後の多孔質体について、多孔質体の割れや摩滅は目視で確認されなかった。すなわち、実施例1から3では、多孔質体を撹拌せずに多孔質体から不純物を均一に除去することができた。また、実施例1から3は比較例1と比べると、実施例1から3では、不活性ガスを使用することなく、不活性ガスを使用した場合よりも不純物を均一に除去することができたといえる。特に実施例2と比較例1との比較では、同じ温度での加熱であっても、実施例2は活性ガスを使用した場合よりも不純物を均一に除去することができることを示している。
【0074】
なお、実施例1から3では、筒状容器の出口側の壁面などに不純物の付着や蓄積が生じていなかった。すなわち、筒状容器は、洗浄等のメンテナンスを行わなくても次バッチに供することができる状態(連続して使用できる状態)であった。
【0075】
また、実施例1で用いた第一フィルタ31にも、不純物の付着や蓄積が生じておらず、表2に示すように、実施例1での使用前後で重量の増減はなかった。すなわち、実施例1の工程の終了時点において、再生されていた。
【0076】
【表2】
【0077】
実施例4は、多孔質体が活性アルミナ以外であった場合でも本実施形態に係る効果を奏することを確認するために行ったものである。実施例4は、実施例1と同様に、上部側及び下部側の多孔質体において炭化水素は均一に除去されていた。この結果より、活性アルミナ以外の多孔質体についても炭化水素を均一に除去できることがわかった。
【0078】
実施例5は、フィルタの効果を確認するために行ったものである。実施例1と同様に、上部側及び下部側の多孔質体において炭化水素は均一に除去されていたが、炭素数が10から30の炭化水素の残留量は、フィルタを用いた実施例1の場合よりも多かった。この結果より、フィルタを用いなくても炭化水素は均一に除去できるが、炭化水素(特に、炭素数が10から30の炭化水素)を除去する能力は低下することがわかった。炭化水素を除去する能力は低下した原因は、実施例1などで用いたフィルタでは除去可能であり、金網では除去できない空気中の水分の影響によるものであると考えらえる。
【0079】
以上のようにして、本実施形態に係る多孔質体の不純物除去装置及び多孔質体の不純物除去方法では、多孔質体を撹拌せずに多孔質体から不純物を均一に除去することができる。
【0080】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、筒状容器10の筒の内壁部に形成されたねじ部13が雌ねじであり、フィルタ3の外周面に形成されたねじ部3aが雄ねじである場合を例示して説明したが、雌ねじ及び雄ねじの関係は逆であってもよい。
【0081】
(2)上記実施形態では、筒状容器10が円筒状に形成されている場合を例示して説明したが、筒状容器10は筒状であれば足り、円筒状である場合に限られない。
【0082】
(3)上記実施形態では、フィルタ3が筒状容器10の端部に螺合接続されて場合を例示して説明したが、フィルタ3の筒状容器10への設置は螺合接続に限定されるものではない。例えば嵌め込みで設置してもよいし、別途用意したねじを用いたねじ止めなどでもよい。
【0083】
(4)上記実施形態では、筒状容器10の端部における、筒状容器10の軸方向におけるフィルタ3の位置が可変である場合を説明したが、筒状容器10の軸方向におけるフィルタ3の位置が可変であることは必須ではない。
【0084】
(5)上記実施形態では、筒状容器10の両方の端部に一つずつフィルタ3を設置する場合を例示して説明したが、筒状容器10の端部にフィルタ3を取り付ける場合、少なくとも筒状容器10の下端部にフィルタ3を設置すれば筒状容器10の内部へ流入する流入空気から不純物を取り除く効果を奏することができる。
【0085】
(6)上記実施形態では、ヒータ2が、図1に示す状態において筒状容器10の下端側に寄せて配置された第一ヒータ21と、第一ヒータ21よりも筒状容器10の上端側に寄せて配置された第二ヒータ22と、の二つのヒータを有する場合を説明した。しかし、ヒータ2は、二つのヒータを有数場合に限られない。ヒータ2は、3つ以上のヒータを有してもよい。例えばヒータ2が、鉛直方向における第一ヒータ21と第二ヒータ22との間に、第一ヒータ21と第二ヒータ22とは独立して温度制御が可能とされた第三のヒータを有してもよい。
【0086】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、多孔質体の不純物除去装置及び多孔質体の不純物除去方法に適用できる。
【符号の説明】
【0088】
1 :収容部
10 :筒状容器
100 :除去装置(不純物除去装置)
13 :ねじ部
18 :軸部
2 :ヒータ
21 :第一ヒータ
22 :第二ヒータ
3 :フィルタ
31 :第一フィルタ
32 :第二フィルタ
3a :ねじ部
8 :回転支持部
80 :軸受部
81 :固定台
9 :多孔質体
G :軸心
図1
図2