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特開2024-59064シリコン量子ドット前駆体、シリコン量子ドット、及びシリコン量子ドットを用いたLED装置、並びに、シリコン量子ドット前駆体の製造方法、シリコン量子ドットの製造方法、及びシリコン量子ドットを用いたLED装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059064
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】シリコン量子ドット前駆体、シリコン量子ドット、及びシリコン量子ドットを用いたLED装置、並びに、シリコン量子ドット前駆体の製造方法、シリコン量子ドットの製造方法、及びシリコン量子ドットを用いたLED装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/021 20060101AFI20240422BHJP
   H01L 33/26 20100101ALI20240422BHJP
   C09K 11/59 20060101ALI20240422BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
C01B33/021
H01L33/26
C09K11/59 ZNM
C09K11/08 G
C09K11/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077374
(22)【出願日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2022166510
(32)【優先日】2022-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 健一
(72)【発明者】
【氏名】植田 朋乃可
【テーマコード(参考)】
4G072
4H001
5F241
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072BB05
4G072BB11
4G072BB13
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH09
4G072JJ11
4G072LL15
4G072MM01
4G072MM02
4G072MM31
4G072MM35
4G072RR05
4G072RR12
4G072UU30
4H001CA02
4H001CC13
4H001CF01
4H001XA08
4H001XA14
5F241AA03
5F241CA46
5F241FF06
5F241FF11
(57)【要約】
【課題】発光効率の高いSiQDを得る。
【解決手段】シリコン量子ドットの前駆体は、Si-O-Si構造がカゴ状に結合されたカゴ構造と、カゴ構造とは別にSi-O-Si構造が広がったネットワーク構造と、を有し、前記水素シルセスキオキサンポリマーの総分子量に対する前記カゴ構造の総分子量の比率が0.65以上である。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素シルセスキオキサンポリマーからなるシリコン量子ドットの前駆体であって、
Si-O-Si構造がカゴ状に結合されたカゴ構造と、
前記カゴ構造とは別にSi-O-Si構造が広がったネットワーク構造と、を有し、
前記水素シルセスキオキサンポリマーの総分子量に対する前記カゴ構造の総分子量の比率が0.65以上であることを特徴するシリコン量子ドットの前駆体。
【請求項2】
請求項1に記載のシリコン量子ドット前駆体において、
FT-IR分析により得られた前記前駆体の赤外吸収スペクトルにおいて、Si-O-Si構造に由来するバンドの面積強度のうち、前記ネットワーク構造に由来するバンドの面積強度に対する前記カゴ構造に由来する面積強度の比率が1.8以上であることを特徴するシリコン量子ドットの前駆体。
【請求項3】
請求項1に記載のシリコン量子ドット前駆体において、
FT-IR分析により得られた赤外吸収スペクトルにおいて、Si-O-Si構造に由来するバンドの面積強度に対するSi-H構造に由来するバンドの面積強度の比率が0.15以上であることを特徴するシリコン量子ドットの前駆体。
【請求項4】
請求項1に記載のシリコン量子ドット前駆体において、
FT-IR分析により得られた赤外吸収スペクトルにおいて、Si-O-Si構造に由来するバンドの面積強度とSi-H構造に由来するバンドの面積強度との合算値に対するSi-H構造に由来するバンドの面積強度の比率が0.42以上であることを特徴するシリコン量子ドットの前駆体。
【請求項5】
請求項1に記載のシリコン量子ドット前駆体において、
炭素の含有量が0.5%未満であることを特徴するシリコン量子ドットの前駆体。
【請求項6】
水素及び炭化水素により被覆されたシリコン量子ドットであって、
水素の被覆率が70%以下でありかつ炭化水素の被覆率が10%以上でありかつ被覆率の合計が100%以下である特徴とするシリコン量子ドット。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1つに記載のシリコン量子ドット前駆体から得られるシリコン量子ドット、又は請求項6に記載のシリコン量子ドットを発光素子として含むLED装置。
【請求項8】
シリコン量子ドット前駆体の製造方法であって、
トリクロロシランと溶媒とを混合して混合液を生成する混合工程と、
前記混合液中のトリクロロシランと水とを反応させて前記シリコン量子ドット前駆体としての水素シルセスキオキサンポリマーを生成する高分子合成工程と、を含み、
前記溶媒は、0℃付近で凝固せずかつトリクロロシラン及び水の両方と混ざりかつトリクロロシラン及び水の両方と反応しない有機溶媒であることを特徴とするシリコン量子ドット前駆体の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のシリコン量子ドット前駆体の製造方法において、
前記溶媒は、1,2-ジメトキシエタン、アセトン、アセトニトリル、及びテトラヒドロフランから選択される1種類以上の有機溶媒であることを特徴とするシリコン量子ドット前駆体の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のシリコン量子ドット前駆体の製造方法において、
前記高分子合成工程は、遮光した状態で実行される工程であることを特徴とするシリコン量子ドット前駆体の製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載のシリコン量子ドット前駆体の製造方法において、
前記溶媒は、水の極性指数を1としたときの前記有機溶媒の極性指数をPAとし、前記有機溶媒の体積をVAとし、前記高分子合成工程で投入される水の体積をVWとしたときに、
(PA×VA+1×VW)/(VA+VW)<0.6
となるように調整された有機溶媒であることを特徴とするシリコン量子ドット前駆体の製造方法。
【請求項12】
請求項6~11のいずれか1つに記載のシリコン量子ドット前駆体の製造方法により得られた前記水素シルセスキオキサンポリマーからシリコン量子ドットを製造するシリコン量子ドットの製造方法であって、
前記水素シルセスキオキサンポリマーを熱分解してシリコン量子ドットを含むSi/SiOマトリックスを得る熱分解工程と、
前記熱分解工程で生成されたSi/SiOマトリックスを、フッ化水素及び塩酸の混合液でエッチングして、前記シリコン量子ドットを得るエッチング工程と、
前記エッチング工程で得られた前記シリコン量子ドットを炭化水素で表面修飾する表面修飾工程と、を含み、
前記表面修飾工程は、
前記シリコン量子ドットに炭化水素の溶媒を加えて溶液を作製する溶液作製工程と、
前記溶液作製工程で得られた前記シリコン量子ドットの溶液とハロゲン原子を含むラジカル開始剤とを一緒に攪拌する攪拌工程と、
を含むことを特徴とするシリコン量子ドットの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載のシリコン量子ドットの製造方法で製造されたシリコン量子ドットを用いたLED装置の製造方法であって、
酸化亜鉛ナノ粒子の膜を形成する第1製膜工程と、
前記酸化亜鉛ナノ粒子の膜の上に前記シリコン量子ドットの膜を形成する第2製膜工程と、
前記シリコン量子ドットの膜の上にCBP(4、4’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル)を蒸着する第1蒸着工程と、
前記CBP層の上にMoOを蒸着する第2蒸着工程と、を含み、
前記第2蒸着工程は、0.05nm/s~0.2nm/sの蒸着速度で、MoOを約2.0~4.5nm蒸着させる工程であることを特徴とするLED装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、シリコン量子ドット前駆体、シリコン量子ドット、及びシリコン量子ドットを用いたLED装置、並びに、シリコン量子ドット前駆体の製造方法、シリコン量子ドット、及びシリコン量子ドットを用いたLED装置の製造方法に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、毒性がなく、豊富に存在する元素であるケイ素(シリコン)を用いたシリコン量子ドット(SiQD:Silicon Quantum Dot)が開発されている。シリコン量子ドットは、ディスプレイ、照明、医薬バイオマーカーなどにおいて、発光材として用いられている。また、太陽電池の材料としても用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、CH0.5で表されるメトキシ基を有する水素シルセスキオキサン(HSQ:Hydrogen Silsesquioxane)ポリマーを前駆体として、SiQDを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-48615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、SiQDの発光効率の指標である発光量子収率が10~12%程度であり、発光効率が低いものしか得られていない。
【0006】
これを改善するために、本願発明者らが鋭意研究したところ、HSQポリマーを製造する際の溶媒の種類や量により、HSQポリマーの構造が変化して、該HSQポリマーを元に製造されるSiQDの発光量子収率が変化することが分かった。特に、HSQポリマーの構造を調整することにより、発光量子収率を向上させることができることが分かった。
【0007】
ここに開示された技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするとこは、発光効率の高いSiQDを得ることにある。
【0008】
また、ここに開示された技術の他の目的は、発光効率の高いSiQDを用いたLED装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術では、水素シルセスキオキサンポリマーからなるシリコン量子ドットの前駆体を対象として、Si-O-Si構造がカゴ状に結合されたカゴ構造と、前記カゴ構造とは別にSi-O-Si構造が広がったネットワーク構造と、を有し、前記水素シルセスキオキサンポリマーの総分子量に対する前記カゴ構造の総分子量の比率が0.65以上である、という構成とした。
【0010】
本願発明者らが、水素シルセスキオキサンポリマー(HSQポリマー)からなるシリコン量子ドット(SiQD)の前駆体の構造を解析して、シリコン量子ドットの発光効率との関係について鋭意研究したところ、HSQポリマーのカゴ構造の総分子量の、HSQポリマーの総分子量に占める比率が大きい方が、SiQDの発光効率の指標である発光量子収率が高い値を示すことが分かった。よって、前記の構造のHSQポリマーにより、発光効率の高いSiQDをより効率的に得ることができる。
【0011】
前記シリコン量子ドットの前駆体において、FT-IR分析により得られた前記前駆体の赤外吸収スペクトルにおいて、Si-O-Si構造に由来するバンドの面積強度のうち、前記ネットワーク構造に由来するバンドの面積強度に対する前記カゴ構造に由来する面積強度の比率が1.8以上である、という構成であると好ましい。
【0012】
本願発明者らが、HSQポリマーの構造をより詳細に研究したところ、HSQポリマーのネットワーク構造とカゴ構造との比率と、SiQDの発光効率との間に相関があることが分かった。特に、ネットワーク構造に由来するバンドの面積強度に対するカゴ構造に由来する面積強度の比率が1.8以上であれば、発光量子収率が高い値を示すことが分かった。よって、前記の構造のHSQポリマーにより、発光効率の高いSiQDを得ることができる。
【0013】
前記シリコン量子ドットの前駆体において、FT-IR分析により得られた赤外吸収スペクトルにおいて、Si-O-Si構造に由来するバンドの面積強度に対するSi-H構造に由来するバンドの面積強度の比率が0.15以上である、という構成でもよい。
【0014】
特に、前記シリコン量子ドットの前駆体において、FT-IR分析により得られた赤外吸収スペクトルにおいて、Si-O-Si構造に由来するバンドの面積強度とSi-H構造に由来するバンドの面積強度との合算値に対するSi-H構造に由来するバンドの面積強度の比率が0.42以上であると好ましい。
【0015】
すなわち、ネットワーク構造の分子量が小さくかつカゴ構造の数が多いということは、Si-H構造が多い、Si-O-Si構造が少ない、又はその両方であることを意味する。本願発明者らが、HSQポリマーの構造と、SiQDの発光効率との関係について研究したところ、Si-O-Si構造に由来するバンドの面積強度に対するSi-H構造に由来するバンドの面積強度の比率が大きいときの方が、該比率が少ないときと比較して、発光量子収率の高いSiQDが得られることが分かった。また、HSQポリマーにおけるSi-H構造の比率が大きいときの方が、Si-H構造の比率が小さいときと比較して、発光量子収率の高いSiQDが得られることが分かった。よって、前記の構造のHSQポリマーにより、発光効率の高いSiQDをより効率的に得ることができる。
【0016】
前記シリコン量子ドットの前駆体において、炭素の含有量が0.5%未満である、という構成でもよい。
【0017】
すなわち、シリコン量子ドットの前駆体における炭素の含有量が多いときには、該前駆体からSiQDを作製した際に、SiQDのコア部分に炭素が混入してしまう。炭素が混入してしまうと、該炭素が励起子のトラップ準位を形成してしまい、発光効率が低下してしまう。このため、前記の構造のHSQポリマーにより、発光効率の高いSiQDをより効率的に得ることができる。
【0018】
ここに開示された技術の他の態様は、水素及び炭化水素により被覆されたシリコン量子ドットを対象として、水素の被覆率が70%以下でありかつ炭化水素の被覆率が10%以上でありかつ被覆率の合計が100%以下である、という構成とした。
【0019】
本願発明者らが、発光量子収率の高いSiQDについて鋭意研究したところ、SiQDと結合している水素が少ないほど発光量子収率が高くなる一方、SiQDと結合している炭化水素の割合が多いほど発光量子収率が高くなる傾向にあることが分かった。特に、水素の被覆率が70%以下でありかつ炭化水素の被覆率が10%以上であれば、SiQDの発光量子収率が特に高い値を示すことが分かった。よって、前記の構造により、発光効率の高いSiQDを得ることができる。
【0020】
ここに開示された技術の他の態様は、前記シリコン量子ドット前駆体から得られるシリコン量子ドット、又は前記シリコン量子ドットを発光素子として含むLED装置である。
【0021】
このように、前記シリコン量子ドット前駆体から得られるシリコン量子ドット、又は前記シリコン量子ドットを用いることで、高効率なLEDを安価に製造することが可能となる。
【0022】
ここに開示された技術の他の態様は、シリコン量子ドット前駆体の製造方法を対象として、トリクロロシランと溶媒とを混合して混合液を生成する混合工程と、前記混合液中のトリクロロシランと水とを反応させて前記シリコン量子ドット前駆体としての水素シルセスキオキサンポリマーを生成する高分子合成工程と、を含み、前記溶媒は、0℃付近で凝固せずかつトリクロロシラン及び水の両方と混ざりかつトリクロロシラン及び水の両方と反応しない有機溶媒である、という構成とした。
【0023】
特に、前記シリコン量子ドット前駆体の製造方法において、前記溶媒は、1,2-ジメトキシエタン、アセトン、アセトニトリル、及びテトラヒドロフランから選択される1種類以上の有機溶媒である、という構成とした。
【0024】
本願発明者らが、HSQポリマーの製造方法と、SiQDの発光効率との関係について鋭意研究したところ、メタノールのようなトリクロロシランと反応する溶媒を用いてHSQポリマーを製造するよりも、トリクロロシランと反応しない溶媒を用いてHSQポリマーを製造した方が、得られたHSQポリマーから得られるSiQDの発光量子収率が高くなることが分かった。したがって、前記の製造方法により、発光効率の高いSiQDを得ることができる。
【0025】
また、前記シリコン量子ドット前駆体の製造方法において、前記溶媒は、水の極性指数を1としたときの前記有機溶媒の極性指数をPAとし、前記有機溶媒の体積をVAとし、前記高分子合成工程で投入される水の体積をVWとしたときに、
(PA×VA+1×VW)/(VA+VW)<0.6
となるように調整された有機溶媒であると、好ましい。
【0026】
本願発明者らが、HSQポリマーの製造方法と、SiQDの発光効率との関係についてさらに鋭意研究したところ、トリクロロシランを溶解させる溶媒の極性指数が、発光効率の高いSiQDを得られるHSQポリマーの製造に関わっていることが分かった。特に、極性指数の低い溶媒を用いてHSQポリマーを製造した方が、得られたHSQポリマーから得られるSiQDの発光量子収率が高くなることが分かった。したがって、前記の製造方法により、発光効率の高いSiQDを得ることができる。
【0027】
前記シリコン量子ドット前駆体の製造方法において、前記高分子合成工程は、遮光した状態で実行される工程である、という構成でもよい。
【0028】
すなわち、原料であるトリクロロシランは光によって分解されるおそれがある。このため、高分子合成工程を遮光状態で行えば、トリクロロシランと水との反応を適切に進めることができる。
【0029】
ここに開示された技術の他の態様は、前記シリコン量子ドット前駆体の製造方法により得られた前記水素シルセスキオキサンポリマーからシリコン量子ドットを製造するシリコン量子ドットの製造方法を対象として、前記水素シルセスキオキサンポリマーを熱分解する熱分解工程と、前記熱分解工程で生成されたシリコン量子ドットを、フッ化水素及び塩酸の混合液でエッチングするエッチング工程と、前記エッチング工程でエッチングされた前記シリコン量子ドットを炭化水素で表面修飾する表面修飾工程と、を含み、前記表面修飾工程は、前記シリコン量子ドットに炭化水素の溶媒を加えて溶液を作製する溶液作製工程と、前記溶液作製工程で得られた前記シリコン量子ドットの溶液とハロゲン原子を含むラジカル開始剤とを一緒に攪拌する攪拌工程と、を含む、という構成とした。
【0030】
本願発明者らが、SiQDの製造方法を鋭意研究したところ、表面修飾の際にハロゲン原子を含むラジカル開始剤を用いると、オージェ過程が抑制されて、得られるSiQDの発光量子収率が高くなることが分かった。よって、前記の製造方法により、発光効率の高いSiQDを得ることができる。
【0031】
ここに開示された技術の他の態様は、前記シリコン量子ドットの製造方法により得られたシリコン量子ドットからLED装置を製造する製造方法を対象として、酸化亜鉛ナノ粒子の膜を形成する第1製膜工程と、前記酸化亜鉛ナノ粒子の膜の上に前記シリコン量子ドットの膜を形成する第2製膜工程と、前記シリコン量子ドットの膜の上にCBP(4、4’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル)を蒸着する第1蒸着工程と、前記CBP層の上にMoOを蒸着する第2蒸着工程と、を含み、前記第2蒸着工程は、0.05nm/s~0.2nm/sの蒸着速度で、MoOを約2.0~4.5nm蒸着させる工程である、という構成とした。
【0032】
本願発明者らが、SiQDを用いたLED装置の製造方法を鋭意研究したところ、MoOの厚みにより外部量子効率が変化することが分かった。また、適切な厚みのMoOを蒸着するには、蒸着速度を適切に調整する必要があることが分かった。よって、前記の製造方法により、発光効率の高いLED装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、発光効率の高いSiQDを得ることができる。また、発光効率の高いLED装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、例示的な実施形態に係る水素シルセスキオキサンポリマーの製造方法のフローチャートである。
図2図2は、水素シルセスキオキサンポリマーの合成に係る化学反応を示す図であり、(a)は、トリクロロシランと水との反応を示し、(b)は、(a)に続く脱水縮合反応を示す。
図3図3は、シリコン量子ドットの製造方法のフローチャートである。
図4図4は、HSQポリマーの分子構造の模式図である。
図5図5は、HSQポリマーのFT-IR吸収スペクトルの一例を示すグラフである。
図6A図6Aは、特定有機溶媒を用いて作製したHSQポリマーのFT-IR吸収スペクトルのうち、Si-O-Si構造由来のバンドを拡大したグラフであり、(a)はシリーズ1のHSQポリマーであり、(b)はシリーズ2のHSQポリマーであり、(c)はシリーズ3のHSQポリマーであり、(d)は、シリーズ4のHSQポリマーである。
図6B図6Bは、メタノールを用いて作製したHSQポリマーのFT-IR吸収スペクトルのうち、Si-O-Si構造由来のバンドを拡大したグラフであり、(a)はシリーズ5のHSQポリマーであり、(b)はシリーズ6のHSQポリマーであり、(c)はシリーズ7のHSQポリマーである。
図7図7は、HSQポリマーのFT-IR吸収スペクトルにおけるネットワーク構造由来のバンドの面積強度に対するカゴ構造由来のバンドの面積強度の比率と、該HSQポリマーから生成したシリコン量子ドットの発光量子収率との関係を示すグラフである。
図8図8は、HSQポリマーの総分子量と、該HSQポリマーから生成したシリコン量子ドットの発光量子収率との関係を示すグラフである。
図9図9は、HSQポリマーのカゴ構造の数と、該HSQポリマーから生成したシリコン量子ドットの発光量子収率との関係を示すグラフである。
図10図10は、HSQポリマーのネットワーク構造の分子量と、該HSQポリマーから生成したシリコン量子ドットの発光量子収率との関係を示すグラフである。
図11図11は、HSQポリマーの総分子量に対するHSQポリマーのネットワーク構造の分子量の比率と、該HSQポリマーから生成したシリコン量子ドットの発光量子収率との関係を示すグラフである。
図12図12は、HSQポリマーの総分子量に対するHSQポリマーのカゴ構造の総分子量の比率と、該HSQポリマーから生成したシリコン量子ドットの発光量子収率との関係を示すグラフである。
図13図13は、HSQポリマーのFT-IR吸収スペクトルにおけるSi-O-Si構造由来のバンドの面積強度に対するSi-H構造由来のバンドの面積強度の比率と、該HSQポリマーから生成したシリコン量子ドットの発光量子収率との関係を示すグラフである。
図14図14は、HSQポリマーのFT-IR吸収スペクトルにおけるSi-O-Si構造由来のバンドの面積強度とSi-H構造由来のバンドの面積強度との合算値に対するSi-H構造由来のバンドの面積強度の比率と、該HSQポリマーから生成したシリコン量子ドットの発光量子収率との関係を示すグラフである。
図15図15は、HSQポリマーのX線回折の結果を示す図であって、(a)はシリーズ2のHSQポリマーであり、(b)はシリーズ4のHSQポリマーである。
図16図16は、HSQポリマーの総分子量に対するHSQポリマーのカゴ構造の総分子量の比率と、該HSQポリマーから生成したシリコン量子ドットの結晶性との関係を示すグラフである。
図17図17は、溶媒の極性指数と該溶媒を用いて作製したHSQポリマーから生成したシリコン量子ドットの発光量子収率との関係を示すグラフである。
図18図18は、溶媒の極性指数と該溶媒を用いて作製したHSQポリマーの総分子量に対するHSQポリマーのカゴ構造の総分子量の比率との関係を示すグラフである。
図19図19は、シリコン量子ドットにおける出発材料と発光量子収率との関係及び、出発材料とHSQポリマーに含まれる炭素の重量比を示すグラフである。
図20図20は、シリコン量子ドットにおける表面修飾の方法と発光量子収率との関係を示すグラフである。
図21図21は、シリコン量子ドットにおける水素の被覆率と発光量子収率との関係を示すグラフである。
図22図22は、シリコン量子ドットにおける炭化水素の被覆率と発光量子収率との関係を示すグラフである。
図23図23は、シリコン量子ドットを用いた順構造のLED装置の製造方法を示すフローチャートである。
図24図24は、シリコン量子ドットを用いた逆構造のLED装置の製造方法を示すフローチャートである。
図25図25は、逆構造LED装置の層構造を示す模式図である。
図26図26は、逆構造LED装置におけるMoOの膜厚と外部量子効率の最大値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0036】
本実施の形態では、トリクロロシラン(HSiCl)と水とを反応させてシリコン量子ドットの前駆体である水素シルセスキオキサンポリマー(以下、HSQポリマーという)を製造し、製造したHSQポリマーを用いてシリコン量子ドット(以下、Silicon Quantum Dotを省略してSiQDという)を製造する。
【0037】
〈HSQポリマーの製造方法〉
まず、HSQポリマーの製造方法について、図1のフローチャートを参照しながら説明する。
【0038】
(ステップS11)
ステップS11では、溶媒としての有機溶媒を用意する。具体的には、氷/水浴に浸したフラスコに有機溶媒を加え、有機溶媒の温度が2℃になるまで、マグネティックスターラーを用いて700rpmで撹拌する。有機溶媒としては、0℃付近で凝固せずかつトリクロロシラン及び水の両方と混ざり(両方を溶かし)かつトリクロロシラン及び水の両方と反応しない、酸素や窒素のヘテロ原子を含む特定有機溶媒が好ましく、例えば、1,2-ジメトキシエタン、アセトン、アセトニトリル、及びテトラヒドロフラン等から選択できる。また、特定有機溶媒は、1種類のみでもよいし、2種類以上のものを混合したものでもよい。
【0039】
(ステップS12)
次に、ステップS12では、前記ステップS11で定量及び温度調整した特定有機溶媒とトリクロロシランとを混合させる。具体的には、特定有機溶媒を攪拌したままの状態で、4.5mLのトリクロロシランを滴下して該特定有機溶媒に加える。トリクロロシランを全て特定有機溶媒に加えた後、各混合液を、マグネティックスターラーを用いてそれぞれ700rpmで10分間撹拌する。
【0040】
トリクロロシランの滴下速度は、トリクロロシランと特定有機溶媒とが均一に混合されるように設定すればよく、例えば1~2滴/秒が好ましい。
【0041】
特定有機溶媒中にトリクロロシランを攪拌させるときには、水平方向のみでなく上下方向にも攪拌させることが好ましい。特定有機溶媒中にトリクロロシランを均一に分散させることで、反応が均一に進み易くなる。尚、マグネティックスターラーを用いる場合、回転速度は700rpmに限定されないが、少なくとも混合液の上部にまで渦が到達する程度の回転数であることが好ましい。
【0042】
(ステップS13)
次に、ステップS13では、前記ステップS12で得られた混合液と水(HO)とを混合して反応させることによりHSQポリマーを合成する。本実施形態では、前記混合液の入ったフラスコに、それぞれ18mL(1mol)の蒸留水を投入する。
【0043】
次に、蒸留水を投入した混合液を2時間撹拌して脱水縮合反応させ、シリコン量子ドットの前駆体であるHSQポリマーを合成する。このとき、トリクロロシランが分解しないように、アルミホイルでフラスコを覆うなどして遮光した状態で混合液を攪拌させて脱水縮合反応を進行させる。また、温度を保った状態で、混合液を攪拌させて脱水縮合反応を進行させる。
【0044】
尚、投入される蒸留水の量は、混合液の量に基づいて決定されるものであり、混合液と水との混合比率が後述する例と同様であれば、各液体の重さ、体積等は特に限定されない。特に、投入される蒸留水の量は、後述するように混合液の極性指数が適切に調整される量であればよい。また、遮光は、必須ではなく、遮光を行わずにHSQポリマーを合成してもよい。一方で、フラスコ内にほこりが入らないように、少なくともフラスコの開口部についてはアルミホイル等で覆うことが好ましい。
【0045】
図2(a)及び図2(b)は、ステップS3においてHSQポリマーが合成される反応を示す。まず、図2(a)に示すように、トリクロロシランと水とが反応して、トリクロロシランの塩素がヒドロキシ基と置換される。次に、図2(b)に示すように塩素が全てヒドロキシ基に置換されたHSi(OH)同士のSi-OH基が重縮合反応を起こす。これにより、Si-O-Si構造によりSi同士が互いに架橋されて、分子量が大きなHSQポリマーが生成される。
【0046】
(ステップS14)
次に、ステップS14において、前記ステップS13で合成されたHSQポリマーを乾燥させる。具体的には、前記ステップS13により、フラスコ中に沈殿物として生成されたHSQポリマーを、真空濾過で取り出して、前記ステップS11で作製した特定有機溶媒ですすいだ後、80℃の空気中で5時間乾燥させる。その後、乾燥させたHSQポリマーを、真空乾燥機に移して更に2時間乾燥させる。
【0047】
以上により、SiQDを製造するためのHSQポリマーが製造される。尚、特定有機溶媒の体積や極性によって、HSQポリマーの構造に違いが生じる。各HSQポリマーの構造及び特性の詳細については、後述する。
【0048】
〈SiQDの製造方法〉
次に、前述した製造方法により製造されたHSQポリマーからSiQDを製造する方法について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。
【0049】
(ステップS21)
まず、ステップS21において、前記ステップS14で乾燥させたHSQポリマーを焼成してSi/SiOマトリックスを生成する。具体的には、乾燥後のHSQポリマーを石英ボートに載せて電気環状炉にセットして、流動ガス中で焼成させる。温度のプロファイルとしては、室温から1100℃まで2時間30分かけて一定の割合で昇温させて、1100℃を1時間キープした後、1100℃から常温(例えば20℃)付近まで2時間30分かけて一定の割合で降温させるプロファイルを用いる。流動ガスは、アルゴン(Ar)95%、水素(H)5%の混合ガスであり、流量は0.2L/minである。
【0050】
HSQポリマーを焼成すると次のような反応により、SiとSiOが生成される。
4HSiO1.5 → SiH+3SiO → Si+3SiO+2H
これにより、Siナノ粒子がSiOに囲まれた状態のSi/SiOマトリックスが得られる。本実施形態では、前述のようにして得られたHSQポリマーを熱分解することで、Si/SiOマトリックスが生成される。なお、流動ガスは、不活性ガスであればよく、アルゴンの他、窒素(N)であってもよい。
【0051】
尚、上記の焼成条件は一例であり、例えば焼成の温度は、900℃~1300℃、好ましくは1000℃~1200℃、より好ましくは1100℃である。また、流動ガスの構成比率の範囲は、アルゴン(Ar):水素(H)=99:1~95:5、好ましくは95:5である。また、流動ガスの流量の範囲は、50~500mL/min、好ましくは200mL/minである。
【0052】
(ステップS22)
次に、ステップS22において、前記ステップS21で得られたSi/SiOマトリックスを化学エッチングする。
【0053】
具体的には、Si/SiOマトリックスを、乳鉢と乳棒を用いて粉砕した後、粉砕したSi/SiOマトリックスを300mg測り取って、フッ素樹脂製のビーカーに投入する。このとき、該ビーカーには、予めスターラーバーを投入している。次に、該ビーカーに、フッ化水素酸(HF:48%(w/w)、シグマアルドリッチ社)13mLと塩酸(HCl:25%(w/w)、シグマアルドリッチ社)2mLとを混合した酸混合物を投入する。次いで、ビーカーをアルミホイル等で包んでビーカー内に光が入らないように遮光する。次に、マグネティックスターラーを用いて、遮光したままSi/SiOマトリックスとともに400rpmで6時間攪拌させる。このとき、温度は15℃~22℃、特に18℃であると好ましい。前記のように攪拌させることで、水素が末端のシリコン量子ドット(SiQD)である水素化物SiQD(H-SiQD)が生成される。尚、Si/SiOマトリックスを粉砕する際に用いる粉砕機は乳鉢及び乳棒に限らず、ビースミル装置などを用いてもよい。また、粉砕の際にエタノールなどの液体を加えてもよい。
【0054】
(ステップS23)
次いで、ステップS23において、前記ステップS22で生成されたH-SiQDを回収する。
【0055】
まず、前記ステップS22における6時間の攪拌が完了した後、攪拌を継続させたままビーカーにトルエンを40mL加えて、トルエン層に分散したH-SiQDを、パスツールピペットを用いて遠沈管に移す。次に、遠沈管を、7℃の雰囲気下において9000rpmで30分間遠心分離する。遠心分離後、遠沈管から上澄みの溶媒を取り除いて、遠沈管にトルエンとモレキュラーシーブとを加えて5分間混ぜる。その後、混ぜて得られた溶液を別の遠沈管に移して、該別の遠沈管を、7℃の雰囲気下において9000rpmで30分間遠心分離する。そして、遠心分離後、遠沈管から上澄みの溶媒を取り除いて、H-SiQDを回収する。尚、トルエンとモレキュラーシーブとを加えて混ぜる時間は、5分間以上が好ましく、厳密に5分間である必要はない。
【0056】
(ステップS24)
次に、ステップS24において、回収したH-SiQDを炭化水素で表面修飾する。
【0057】
まず、前記ステップS23で回収したH-SiQDに1-デセンを10mL加えて、超音波洗浄機を用いて分散させる。次に、フラスコに五塩化リンなどのハロゲン原子を含むラジカル開始剤を50mg~250mg、好ましくは70mg~150mg、より好ましくは70mg加えるとともに、H-SiQDを分散させた1-デセンを加える。次いで、常温、好ましくは20℃~30℃、特に好ましくは28℃の恒温槽の中で、H-SiQD、1-デセン、及び五塩化リンの混合液を800rpmで2時間攪拌する。これにより、H-SiQDと1-デセンとの間でヒドロシリル化が生じ、1-デセンを用いて表面修飾されたシリコン量子ドット(d-SiQD)が生成される。このときラジカル開始剤の作用により、シリコンと結合された水素が炭化水素と置換されやすくなる。表面修飾に用いる溶媒は、表面修飾に用いる多重結合を有する1-デセンを溶媒として直接用いる以外に、それらを分散させた溶媒(例えば,メシチレンやトルエン)であってもよい。
【0058】
尚、従来は、SiQDを表面修飾する際に、前述の溶液からトルエンを除去した後、1-ドデセンを10mL加え、190℃の不活性ガス(窒素N又はアルゴンAr)雰囲気下で11時間環流することで、H-SiQDと1-ドデセンとの間でヒドロシリル化を生じさせて、ドデセン不動態化シリコン量子ドットを生成していた。この熱処理による表面修飾と、本実施形態のようにラジカル開始剤を用いて常温(ここでは28℃)で表面修飾する場合との効果の違いについては後述する。
【0059】
(ステップS25)
そして、ステップS25において、表面修飾後のd-SiQDを精製する。
【0060】
まず、2時間の攪拌が完了したフラスコにメタノールを15mL加えて15分攪拌させる。次に、攪拌後の溶液を遠沈管に移し、該遠沈管にエタノールを15mL加える。次いで、遠心分離機を用いて25000Gで20分間遠心分離を行う。次に、(i)遠沈管から上澄みの溶媒を取り除いた後、トルエンを1mL加えて、d-SiQDをトルエン中に分散させる。次いで、(ii)エタノールとメタノールを1:1で混合させた混合液を40mL加えて、遠心分離機を用いて25000Gで20分間遠心分離を行う。この(i)及び(ii)を3回繰り返す。これにより、炭化水素で終端されたd-SiQDは有機溶媒であるトルエンに分散される一方、未反応のラジカル開始剤由来の不純物はエタノールとメタノールとの混合液に溶解されて除去される。その後、d-SiQDが残るように遠沈管から上澄み溶媒を取り除く。そして、遠沈管にトルエンを2mL加えて、d-SiQDを分散させる。そして、溶液をバイアルに移して、30分間減圧蒸発させることで溶媒を除去した後、0.45μmのフィルターを通過させる。これにより、五塩化リンやメタノール等の不純物が取り除かれたd-SiQDを得ることができる。
【0061】
以上のようにして、本実施の形態に係る製造方法によれば、トリクロロシランと前記特定有機溶媒とを混合することにより、簡素な工程で、SiQDの前駆体であるHSQポリマーと、HSQポリマーを用いたSiQDとを生成することができる。
【0062】
〈HSQポリマーの構造とSiQDの特性〉
以下、前記の製造方法により生成したHSQポリマーの構造とd-SiQDの特性について説明する。
【0063】
本実施形態では、特定有機溶媒の溶媒が同じで量が異なるシリーズを3つと、溶媒が異なるシリーズを1つ用意した。表1に示すように、シリーズ1は特定有機溶媒の量が20mLであり、シリーズ2は特定有機溶媒の量が40mLであり、シリーズ3は、特定有機溶媒の量が80mLである。特定有機溶媒としては、1,2-ジメトキシエタン(以下、別名の1つを採用してグリムという)を用いた。また、シリーズ4は、特定有機溶媒としてアセトンを用いたものであり、特定有機溶媒の量は80mLとした。また、比較のために、前記ステップS11で用意する溶媒としてメタノールを用いたものについても作製した。メタノールを用いた場合については、表2に示すように、溶媒の量が20mL、40mL、及び80mLの3つのシリーズ(シリーズ5~7)を作製した。メタノールは、特定有機溶媒とは異なり、トリクロロシランと反応する有機溶媒である。HSQポリマーからd-SiQDを製造する方法は、グリムを用いて製造したHSQポリマーも、メタノールを用いて製造したHSQポリマーも、前記ステップS21~前記ステップS25の方法を採用して、同じ条件とした。特に、ラジカル開始剤としては五塩化リンを採用した。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
図4は、HSQポリマーの模式図である。HSQポリマーは、Si-O-Si構造がカゴ状に結合されたカゴ構造と、カゴ構造とは別にSi-O-Si構造が広がったネットワーク構造とがある。また、カゴ構造及びネットワーク構造共に、一部のシリコンには水素が結合していて、Si-H構造となっている。
【0067】
図5は、HSQポリマーに対して、フーリエ変換赤外分光(以下、Fourier transform infrared spectrometerを省略してFT-IRという)光度計(日本分光社製)により拡散反射測定を行って得られる赤外吸収スペクトルの一例である。図5に示すように、赤外吸収スペクトルのうち、2120cm-1~2380cm-1の波数範囲のバンドは、Si-H構造由来のバンド(以下、Hバンドという)であり、970cm-1~1300cm-1の波数範囲のバンドは、Si-O-Si構造由来のバンド(以下、Oバンドということがある)である。Si-O-Si構造由来のバンドのうち、高波数側のバンドはカゴ構造由来のバンド(以下、ケージバンドという)であり、低波数側のバンドはネットワーク構造由来のバンド(以下、ネットワークバンドという)である。
【0068】
図6A及び図6Bは、作製したHSQポリマーに対してFT-IR分析を行って得られた赤外吸収スペクトルのうちSi-O-Si構造由来のバンドを拡大したものである。図6Aは、グリムを用いて作製したHSQポリマーのFT-IR吸収スペクトルであり、(a)はシリーズ1のHSQポリマーであり、(b)はシリーズ2のHSQポリマーであり、(c)はシリーズ3のHSQポリマーである。(d)はシリーズ4のHSQポリマーである。図6Bは、メタノールを用いて作製したHSQポリマーのFT-IR吸収スペクトルであり、(a)はシリーズ5のHSQポリマーであり、(b)はシリーズ6のHSQポリマーであり、(c)はシリーズ7のHSQポリマーである。各グラフの下図は、各Si-O-Si構造由来のバンドをそれぞれ2つのガウス関数に分解してフィッティングを行ったものである。
【0069】
図6A及び図6Bに示すように、溶媒としてグリムを採用した場合には、ネットワークバンドの面積強度が比較的小さくなっている一方で、溶媒としてメタノールを採用した場合には、ネットワークバンドの面積強度が比較的大きくなっていることが分かる。また、溶媒としてアセトンを採用した場合には、ネットワークバンドの面積強度が比較的大きいものの、溶媒としてメタノールを採用した場合と比較すると、ネットワークバンドの面積強度が比較的小さいことが分かる。また、図6A及び図6Bに示すように、溶媒としてグリムやアセトンを採用した場合には、溶媒としてメタノールを採用した場合と比較して、カゴ構造の面積強度が大きいことが分かる。これは、メタノールは、トリクロロシランと反応して、メトキシ基を有するHSiCl(CHO)3-nを生成する一方で、グリムはトリクロロシランとは反応しないことが影響していると考えられる。
【0070】
この図6A及び図6Bから、溶媒として用いる有機溶媒の種類、特にトリクロロシランと反応する有機溶媒であるか否か、並びにその有機溶媒の量によりSi-O-Si構造におけるネットワーク構造とカゴ構造とを制御することができることが分かる。
【0071】
図7は、FT-IR分析を行って得られた赤外吸収スペクトルにおいて、ネットワークバンドの面積強度に対するケージバンドの面積強度の比と、発光量子収率との関係を示す。図7中の四角の点がメタノールを溶媒とした場合を示し、図7中の丸点がグリムを溶媒とした場合を示し、図7中の三角の点がアセトンを溶媒とした場合を示している。
【0072】
発光量子収率は、絶対PL量子収率装置(浜松ホトニクス社製)により、吸収された光子数に対する、発光で放出された光子数強の比を求めて算出した。このとき、d-SiQD自身の再吸収の影響については補正した。
【0073】
図7に示すように、ネットワークバンドの面積強度に対するケージバンドの面積強度の比率が高いほど、発光量子収率が高くなる傾向にあることが分かる。FT-IR分析において、ネットワークバンドの面積強度とケージバンドの面積強度との比は、ネットワーク構造の分子量とカゴ構造の分子量との比とみなすことができる。言い換えると、ネットワーク構造の分子量とカゴ構造の数とのバランスを表していると言える。つまり、この図7に示す結果から、高い発光量子収率のd-SiQDを得るための、HSQポリマーの構造として、HSQポリマーのネットワーク構造の分子量とカゴ構造の数とのバランスは、重要な要素の1つであることが分かる。より具体的には、ネットワークバンドの面積強度に対するケージバンドの面積強度の比率が1.8以上であれば、50%以上の発光量子収率のd-SiQDを得やすくなると言える。本実施形態では、ネットワークバンドの面積強度に対するケージバンドの面積強度の比率が2.8程度のときに、発光量子収率が80%程度のd-SiQDを得ることができた。
【0074】
表1及び表2には、実際に、各HSQポリマーについて、HSQポリマーのネットワーク構造の分子量とカゴ構造の個数とを算出した結果を示している。HSQポリマーのネットワーク構造の分子量とカゴ構造の個数とは、示差屈折率測定の結果、静的散乱測定の結果、及びFT-IR分析により得られたスペクトルを組み合わせて算出した。具体的には、まず、クロロホルム溶媒を用いてHSQポリマーを溶解させる。次に、該溶解液を用いて示差屈折率測定及び静的散乱測定の測定結果をもとにデバイプロット法によりHSQポリマーの総分子量を算出する。次に、FT-IR分析の結果からネットワークバンドとケージバンドとの面積強度の比を算出する。このネットワークバンドとケージバンドとの面積強度の比は、ネットワーク構造の分子量とカゴ構造の分子量との比とみなすことができる。そして、HSQポリマーの総分子量と、ネットワークバンドとケージバンドとの面積強度の比とから、ネットワーク構造の分子量とカゴ構造の分子量のそれぞれを算出した。カゴ構造の数は、前述のようにして算出したカゴ構造の分子量をカゴ構造1つあたりの分子量で除することで算出した。カゴ構造は、水素原子8個、シリコン原子8個、酸素原子12個で構成されるとみなせるため、カゴ構造1つあたりの分子量は約424となる。
【0075】
図8は、得られた各HSQポリマーの総分子量をそれぞれ算出して、各HSQポリマーから得られた各d-SiQDの発光量子収率とそれぞれ比較した結果を示す。図8中の四角の点がメタノールを溶媒とした場合を示し、図8中の丸点がグリムを溶媒とした場合を示し、図8中の三角の点がアセトンを溶媒とした場合を示している。
【0076】
図8を参照すると、メタノールを用いた場合よりも、グリムやアセトンを用いた場合の方が、発光量子収率が高いことが分かる。一方で、発光量子収率とHSQポリマーの総分子量との関係に注目すると、発光量子収率はHSQポリマーの総分子量には特に依存していないことが分かる。
【0077】
図9は、得られた各HSQポリマーのカゴ構造の数をそれぞれ算出して、各HSQポリマーから得られた各d-SiQDの発光量子収率とそれぞれ比較した結果を示す。図9中の四角の点がメタノールを溶媒とした場合を示し、図9中の丸点がグリムを溶媒とした場合を示し、図9中の三角の点がアセトンを溶媒とした場合を示している。
【0078】
図9を参照すると、プロットの分布がHSQポリマーの総分子量のプロットの分布と類似しており、発光量子収率はHSQポリマーのカゴ構造の数自体には特に依存していないことが分かる。
【0079】
図10は、得られた各HSQポリマーのネットワーク構造の分子量をそれぞれ算出して、各HSQポリマーから得られた各d-SiQDの発光量子収率(QY)とそれぞれ比較した結果を示す。図10中の四角の点がメタノールを溶媒とした場合を示し、図10中の丸点がグリムを溶媒とした場合を示し、図10中の三角の点がアセトンを溶媒とした場合を示している。
【0080】
図10を参照すると、プロットの分布がHSQポリマーの総分子量のプロットとは、異なった分布となっていることが分かる。また、ネットワーク構造の分子量と発光量子収率との関係に注目すると、ネットワーク構造の分子量が小さい方が、発光量子収率が高い傾向にあることが分かる。特に、ネットワーク構造の分子量がおよそ6000未満になると発光量子収率が50%を超え、最大で80%近くに達することが分かる。
【0081】
図11は、HSQポリマーの総分子量に対するネットワーク構造の分子量の比率(以下、単にネットワーク比率という)と、発光量子収率との関係を示す。本実施形態では、前述したように、HSQポリマーの総分子量と、FT-IR分析の結果から算出されるネットワークバンドとケージバンドとの面積強度比とから、ネットワーク構造の分子量とカゴ構造の分子量のそれぞれを算出しているため、HSQポリマーの総分子量に対するネットワーク構造の分子量の比は、Oバンド全体の面積強度に対するネットワークバンドの面積強度の比と同義である。実際には、Si-H構造があるため、HSQポリマーの総分子量に対するネットワーク構造の分子量の比と、Oバンド全体の面積強度に対するネットワークバンドの面積強度の比とは、厳密には一致しないが、HSQポリマーの総分子量における水素の分子量が占める割合は小さいため、Oバンド全体の面積強度に対するネットワークバンドの面積強度の比を、HSQポリマーの総分子量に対するネットワーク構造の分子量の比とみなしても特に問題ない。
【0082】
図11を参照すると、ネットワーク比率が小さいほど発光量子収率が高い傾向にあることが分かる。特に、ネットワーク比率がおよそ0.35未満になると発光量子収率が50%を超え、ネットワーク比率がおよそ0.26になると80%近くに達することが分かる。
【0083】
また、図12は、HSQポリマーの総分子量に対するカゴ構造の総分子量の比率(以下、単にカゴ比率という)と、発光量子収率との関係を示す。カゴ構造の総分子量は、HSQポリマーの総分子量からネットワーク構造の分子量を引いた値に相当するので、カゴ比率と発光量子収率との関係は、図11に示す関係と逆の傾向になる。図12を参照すると、グラフが図11のグラフとは逆の傾向になっており、カゴ比率が大きいほど発光量子収率が高い傾向にあることが分かる。特に、カゴ比率がおよそ0.65以上になると発光量子収率が50%を超え、カゴ比率がおよそ0.74になると80%近くに達することが分かる。
【0084】
以上のことから、高い発光量子収率のd-SiQDを得やすくするためのHSQポリマーの構造は、ネットワーク比率が小さいものであると言える。特に、ネットワーク比率が0.35未満であると好ましい。これは、HSQポリマーにおいて、不規則なネットワーク構造の割合が相対的に減り、規則的な構造のカゴ構造の割合が相対的に増えることが、SiQDの質に影響を与えるためと考えられる。尚、この関係は、カゴ構造に焦点を当てて、カゴ比率が大きいほど、特に、当該比率が0.65以上であると、高い発光量子収率のd-SiQDが得やすくなる、と言い換えてもよい。
【0085】
ここで、図13に、FT-IR分析の赤外吸収スペクトルにおける、Oバンドの面積強度に対するHバンドの面積強度の比率と、発光量子収率との関係を示す。このグラフは、前述したメタノールを溶媒として製造された各HSQポリマー及びグリムを溶媒として製造された各HSQポリマーの測定結果を含むとともに、グリム以外の特定有機溶媒を用いて作製されたHSQポリマーから取得した測定結果も含んでいる。これら他のHSQポリマーについても、当該HSQポリマーからd-SiQDを製造する方法は、前記ステップS21~前記ステップS25の方法を採用して、同じ条件とした。特に、ラジカル開始剤としては五塩化リンを採用した。
【0086】
図13に示すように、HSQポリマーのOバンドに対するHバンドの比率が高いほど、該HSQポリマーを得られるd-SiQDの発光量子収率が高いことが分かる。特に、Oバンドに対するHバンドの比率がおよそ0.15以上になると発光量子収率が50%を超え、当該比率が0.20以上になると60%を超えることが分かる。
【0087】
Oバンドに対するHバンドの比率が高いということは、Si-H構造が多い又はSi-O-Si構造が少ないことを意味する。Si-H構造は、主にカゴ構造に含まれる一方、Si-O-Si構造は、ネットワーク構造とカゴ構造との両方に含まれているが、カゴ構造よりもネットワーク構造が主である。つまり、カゴ比率が増えて、ネットワーク比率が減るほど、Oバンドに対するHバンドの比率が大きくなるといえる。これは、前述した、ネットワーク比率が小さいもの若しくはカゴ比率が高いものほど発光量子収率が高いという結果とも対応している。
【0088】
図14には、FT-IR分析の赤外吸収スペクトルにおける、Hバンドの面積及びOバンドの面積強度の合算値に対するHバンドの面積強度の比率と、発光量子収率との関係を示す。このグラフは、図13に示すHSQポリマーの測定結果を含む。
【0089】
図14に示すように、HSQポリマーのHバンドの比率が高いほど、該HSQポリマーを得られるd-SiQDの発光量子収率が高いことが分かる。特に、Hバンドの比率がおよそ0.42以上になると発光量子収率が50%を超え、当該比率が0.50以上になると60%を超えることが分かる。
【0090】
前述したように、Si-H構造は、主にカゴ構造に含まれる。つまり、カゴ比率が大きいほど、Hバンドの比率が大きくなるといえる。これは、前述した、ネットワーク比率が小さいもの若しくはカゴ比率が高いものほど発光量子収率が高いという結果とも対応している。
【0091】
〈結晶性と発光量子収率〉
図15は、HSQポリマーのX線回折の結果である。図15(a)と図15(b)とを比較すると、図15(a)の方が、図15(b)と比較して、ピークの形状が鋭いことが分かる。これは、溶媒としてグリムを用いたHSQポリマーの方が、溶媒としてアセトンを用いたHSQポリマーと比較して、結晶性が高いことを意味している。HSQポリマーにおいて、ネットワーク構造はアモルファスであるため、X線回折におけるピークはカゴ構造に依存していると言える。つまり、溶媒としてグリムを用いたHSQポリマーの方が、溶媒としてアセトンを用いたHSQポリマーと比較して、カゴ比率が高いことが結晶性の違いとして出現したと考えられる。
【0092】
図16は、カゴ比率と、該HSQポリマーから生成したd-SiQDの結晶性との関係を示す。各点の〇の大きさは発光量子収率を表しており、径が大きいほど発光量子収率が高い。白丸のプロットの対象としているHSQポリマーは、溶媒としてグリムを採用した前述のシリーズ1~3で作製されたものであり、黒丸のプロットの対象としているHSQポリマーは、溶媒としてアセトンを採用した前述のシリーズ4で作製されたものである。d-SiQDはこれらのHSQポリマーからそれぞれ作製されたものである。
【0093】
d-SiQDの結晶性は、ラマンスペクトルから算出した。具体的には、ラマンスペクトルをアモルファス成分と結晶成分とに分離して、ラマンスペクトルの面積強度における結晶成分の割合を算出して、該割合の値を、結晶性を示す数値とした。結晶成分は、例えば、Siウェハのラマンスペクトルを参考にして算出した。
【0094】
図16に示すように、HSQポリマーのカゴ比率が高いほど、結晶性が高くなることが分かる。また、結晶性が高いほど発光量子収率も高くなっていることが分かる。また、溶媒としてグリムを採用したものの方が、溶媒としてアセトンを採用したものと比較して結晶性が高いことが分かる。
【0095】
この結果と図15に示す結果とを対比すると、HSQポリマーの時点で結晶性が高いものほど、該HSQポリマーから作製されたd-SiQDの結晶性が高くなると考えられる。前述したように、HSQポリマーの結晶性はカゴ比率に依存していると考えられる。このことから、HSQポリマーのカゴ比率が高いほど(若しくはネットワーク比率が低いほど)、HSQポリマーの結晶性が高くなる。HSQポリマーの結晶性が高ければ、当該HSQポリマーから作製されたSiQDの結晶性が高くなる。その結果、発光量子収率が高くなったといえる。
【0096】
〈溶媒の極性指数とSiQDの特性〉
図17は、トリクロロシランを溶解させた溶媒の極性指数と、該溶媒を用いて作製したHSQポリマーから生成したシリコン量子ドットの発光量子収率とを比較したグラフである。ここでいう溶媒とは、特定有機溶媒を18mLの水で希釈したものである。また、ここでいう極性指数は、水の極性指数を1としたときの極性指数の比である。
【0097】
水の極性指数を1としたときの特定有機溶媒の極性指数は、以下の表のようになっている。
【0098】
【表3】
【0099】
本実施形態では、前述したように、シリーズ毎に特定溶媒の量が異なるため、溶媒自体の極性指数は、特定溶媒の極性指数と水の極性指数との加重平均で算出される。例えば、シリーズ1(20mLのグリムを用いた溶媒)の極性指数は、以下の様になる。
(0.231×20+1.000×18)/(20+18)=0.595
【0100】
図17に示すように、極性指数が低い溶媒で作製されたHSQポリマーから得られたd-SiQDの方が、極性指数が高い溶媒で作製されたHSQポリマーから得られたd-SiQDよりも、発光量子収率が高い傾向にあることが分かる。これは、グリムやアセトンで作製されたHSQポリマーから得られたd-SiQDの方が、メタノールで作製されたHSQポリマーから得られたd-SiQDよりも、発光量子収率が高いという結果とも一致する。特に、極性指数がおよそ0.6未満になると発光量子収率が50%を超えることが分かる。
【0101】
図18は、トリクロロシランを溶解させた溶媒の極性指数と、該溶媒を用いて作製したHSQポリマーのカゴ比率との関係を示す。図18に示すように、溶媒の極性が低い方が、当該比率が高いことが分かる。つまり、溶媒の極性が低いと、カゴ比率が高い若しくはネットワーク比率が低いHSQポリマーが製造される。このようなHSQポリマーを用いることで、前述したように、製造されるd-SiQDの結晶性が高くなり、その結果、得られたd-SiQDの発光量子収率が高くなったといえる。
【0102】
このことから、トリクロロシランを溶解させる溶媒は、水の極性指数を1としたときの有機溶媒の極性指数をPAとし、有機溶媒の体積をVAとし、水の体積をVWとしたときに、
(PA×VA+1×VW)/(VA+VW)<0.6
の式を満たすように調整された有機溶媒が好ましいといえる。
【0103】
〈出発材料の極性指数とSiQDの特性〉
次に、出発材料と該出発材料から作製されたd-SiQDの特性との関係について説明する。
【0104】
本実施形態では、出発材料と該出発材料から作製されたd-SiQDの特性との比較を行うために、シリーズ1~7に加えて、更に出発材料が異なるシリーズを2つ用意した。表4に示すように、シリーズ8は、出発材料としてトリメトキシシランを用いており、シリーズ9は、出発材料としてトリエトキシシランを用いている。特定有機溶媒は、シリーズ8,9共にグリムを用いている。特定有機溶媒の量が20mLである。HSQポリマーの製造方法は前記ステップS11~前記ステップS14の方法において、トリクロロシランを、トリメトキシシラン及びトリエトキシシランに置き換えた方法を採用した。作製された各HSQポリマーからd-SiQDを製造する方法は、トリメトキシシランを用いて製造したHSQポリマーも、トリエトキシシランを用いて製造したHSQポリマーも、前記ステップS21~前記ステップS25の方法を採用して、同じ条件とした。特に、ラジカル開始剤としては五塩化リンを採用した。
【0105】
【表4】
【0106】
図19は、得られたHSQポリマーから製造されたd-SiQDの発光量子収率と、得られたHSQポリマーに含まれていた炭素の割合をそれぞれ示す。比較として、前記シリーズ2及び前記シリーズ6の結果をそれぞれ示している。
【0107】
図19を参照すると、トリメトキシシラン及びトリエトキシシランを出発材料とした場合には、トリクロロシランを出発材料とした場合と比較して、得られたd-SiQDの発光量子収率が低いことが分かる。これとは対照的に、得られたHSQポリマーにおける炭素の割合は、トリメトキシシラン及びトリエトキシシランを出発材料とした場合の方が、トリクロロシランを出発材料とした場合と比較して高いことが分かる。この結果から、HSQポリマーに含まれる炭素の割合が低いときの方が、炭素の割合が高いときと比較して発光量子収率の高いd-SiQDを得やすくなると言える。これは、HSQポリマーに含まれる炭素の割合が多いときには、d-SiQDを作製したときに、該d-SiQDのコア部分のシリコンに炭素が結合してしまったり、炭素が単独で含まれてしまったりするためと考えられる。d-SiQDのコア部分に炭素が含まれてしまうと、該炭素が励起子のトラップ準位を形成してしまい、発光量子収率が低下するためである。
【0108】
シリーズ8,9は、特定溶媒(ここではグリム)の量がシリーズ2,6と比較して少ないにも拘わらず、得られたHSQポリマーに含まれる炭素の割合がシリーズ2,6よりも多かった。このことから、トリメトキシシランやトリエトキシシランのようなアルコキシシランは、出発材料に炭素が含まれているため、HSQポリマーに炭素が含まれたと考えられる。
【0109】
メタノールを用いた場合については、メタノールはトリクロロシランと反応することが原因である。すなわち、メタノールは、トリクロロシランと反応してメトキシ基(-OCH)を形成する。このメトキシ基由来の炭素は、メトキシ基ごとHSQポリマーに取り込まれる。このため、メタノールを用いたときには、グリムを用いたときよりも炭素の含有量が多くなる。
【0110】
この点からして、発光効率の高いSiQDを得るためのHSQポリマーの製造方法としては、トリクロロシランを出発材料としかつトリクロロシランと反応しない溶媒を用いることが有用であるといえる。また、HSQポリマー中に含まれる炭素の割合が0.5%未満であると、発光効率の高いSiQDを得ることができるといえる。
【0111】
〈SiQDの表面修飾とSiQDの特性〉
図20は、SiQDを表面修飾の方法と、それにより得られたd-SiQDの発光量子収率とを比較したグラフである。具体的には、図20の左の3つの棒グラフは熱処理により表面修飾を行った場合であり、図20の右側の3つの棒グラフは五塩化リンにより表面修飾を行った場合である。HSQポリマーの製造方法は同じ条件であり、溶媒としてはメタノールを用いた。つまり、HSQポリマーの条件は揃っており、ここで示す発光量子収率の違いは、SiQDを表面修飾の方法に依存していると言える。図中の20mL、40mL、及び80mLは、メタノールの量を示している。
【0112】
図20に示すように、表面修飾を熱処理により行ったときには発光量子収率が10%前後である一方、表面修飾を五塩化リンにより行ったときには、発光量子収率が約40%~50%となっていることが分かる。つまり、五塩化リンを用いて表面修飾を行った方が、熱処理により表面修飾を行った場合と比較して、発光効率がかなり向上すると言える。
【0113】
図21は、d-SiQDの水素の被覆率(シリコンと水素とが直接結合したものの割合)と発光量子収率との関係を示し、図22は、d-SiQDの炭化水素(デシル基)の被覆率(シリコンと炭化水素とが結合したものの割合)と発光量子収率との関係を示す。水素の被覆率及び炭化水素の被覆率はFT-IR分析により算出した。ここに示すd-SiQDは、溶媒として40mLのグリムを用いて作製したHSQポリマーを、前記ステップS21~前記ステップS25の方法により製造したものである。つまり、HSQポリマーの条件は揃っており、ここで示す発光量子収率の違いは水素及び炭化水素の被覆率に依存していると言える。尚、ラジカル開始剤としては五塩化リンを採用した。
【0114】
図21に示すように、シリコンに対する水素の被覆率が低いほど発光量子収率が高くなる傾向にあり、水素の被覆率が70%以下の場合には、発光量子収率が50%を超えるd-SiQDになり易いことが分かる。一方で、図22に示すように、シリコンに対する炭化水素の被覆率が高いほど発光量子収率が高くなる傾向にあり、炭化水素の被覆率が10%以上の場合には、発光量子収率が50%を超えるd-SiQDになり易いことが分かる。これは、炭化水素の被覆率が上昇すると,表面に物理的な応力・歪が生じるとともに、シリコンと炭素との電気的相互作用によるバンド構造の変化が起こるため、発光しやすくなると考えられる。尚、d-SiQDの表面に炭化水素が結合したとしても、トラップ準位を形成しないため、前述のように、d-SiQDのコアに炭素が含まれているときとは異なり、発光量子収率が低下することはない。
【0115】
水素の被覆率と炭化水素の被覆率を合計しても100%にならない場合があるが、これは、シリコンにダングリングボンドが生じていたり、シリコンにラジカル開始剤由来の塩素が1~3%程度結合していたり、シリコンに酸素が結合していたりするためである。
【0116】
この図21及び図22の結果から、水素の被覆率が70%以下でありかつ炭化水素の被覆率が10%以上でありかつ被覆率の合計が100%以下であると、発光量子収率が高いd-SiQDになると言える。
【0117】
〈まとめ〉
以上説明したように、HSQポリマーの総分子量に対するカゴ構造の総分子量の比率が0.65以上であるHSQポリマーでからSiQDを製造すれば、発光効率の高いSiQDを得やすくなる。
【0118】
特に、FT-IR分析により得られた赤外吸収スペクトルにおいて、Si-O-Si構造に由来するバンドの面積強度のうち、ネットワーク構造に由来するバンドの面積強度に対するカゴ構造に由来する面積強度の比率が1.8以上であれば、当該HSQポリマーからは、発光効率の高いSiQDを得ることができる。
【0119】
また、HSQポリマーをFT-IR分析して得られた赤外吸収スペクトルにおいて、Si-O-Si構造に由来するバンドの面積強度に対するSi-H構造に由来するバンドの面積強度の比率が0.15以上である場合にも、当該HSQポリマーからは、発光効率の高いSiQDを特に得やすくなる。
【0120】
また、HSQポリマーに含まれる炭素の割合が0.5%未満であると、当該HSQポリマーからは、発光効率の高いSiQDを特に得やすくなる。
【0121】
また、SiQDを炭化水素により表面修飾した場合には、水素の被覆率が70%以下でありかつ炭化水素の被覆率が10%以上でありかつ被覆率の合計が100%以下であれば、発光効率が高くなる。
【0122】
また、トリクロロシランと溶媒とを混合して混合液を生成する混合工程と、混合液中のトリクロロシランと水とを反応させてHSQポリマーを生成する高分子合成工程と、を含む製造方法によりHSQポリマーを製造する際に、溶媒を、0℃付近で凝固せずかつトリクロロシラン及び水の両方と混ざりかつトリクロロシラン及び水の両方と反応しない有機溶媒にすると、前述したような発光効率が高いSiQDが得られる構造を有するHSQポリマーを得ることができる。
【0123】
特に、溶媒として、1,2-ジメトキシエタン(前述のグリム)、アセトン、アセトニトリル、及びテトラヒドロフランから選択される1種類以上の有機溶媒を用いると、前述のような構造を有するHSQポリマーを得ることができる。特に、本願発明者らの研究では、溶媒としては、1,2-ジメトキシエタンが好適である。
【0124】
特に、溶媒として、水の極性指数を1としたときの有機溶媒の極性指数をPAとし、有機溶媒の体積をVAとし、HSQポリマーを合成する際に投入される水の体積をVWとしたときに、
(PA×VA+1×VW)/(VA+VW)<0.6
となるように、種類及び量を調整した有機溶媒を用いると、前述のような構造を有するHSQポリマーを得ることができる。
【0125】
また、高分子合成工程を、遮光した状態で実行すれば、トリクロロシランの分解を抑制することができ、HSQポリマーを適切にかつ効率的に得ることができる。
【0126】
また、HSQポリマーを熱分解してシリコン量子ドットを含むSi/SiOマトリックスを得る熱分解工程と、熱分解工程で生成されたSi/SiOマトリックスを、フッ化水素及び塩酸の混合液でエッチングして、SiQDを得るエッチング工程と、エッチン工程で得られたSiQDを炭化水素で表面修飾する表面修飾工程と、を含む製造方法によりHSQポリマーからSiQDを製造する際に、表面修飾工程が、SiQDに炭化水素の溶媒を加えて溶液を作製する溶液作製工程と、溶液作製工程で得られたSiQDの溶液とハロゲン原子を含むラジカル開始剤とを一緒に攪拌する攪拌工程と、を含んでいれば、シリコンと結合された水素が炭化水素と置換されやすくなって、得られるSiQDの発光効率が高くなる。
【0127】
〈SiQDを用いたLED装置の製造方法〉
次に前述したSiQDを用いたLED装置の製造方法の一例を図23及び図24を参照しながら説明する。ここでは、順構造のLED装置の製造方法と逆構造のLED装置の製造方法とのそれぞれについて説明する。
【0128】
〈順構造のLED装置〉
(ステップS31)
ステップS31では、基板となるITO(Indium Tin Oxide)ガラス(以下、ガラス基板という)を洗浄する。具体的には、ビーカーにFPD(フラットパネルディプレイ)基板洗浄剤を2mLと蒸留水を100mL加えて希釈洗浄剤を作製し、該希釈洗浄剤にガラス基板を浸す。次に、40℃に設定した超音波洗浄機に、ガラス基板ごとビーカーをセットして、20分間洗浄する。次いで、洗浄したガラス基板を蒸留水で洗う。
【0129】
次に、ガラス基板の一方の面(裏面)の水分をキムワイプ(日本製紙クレシア製)に吸収させる一方、ガラス基板の他方の面(表面)の水分を、スピンコーターを用いて除去する。スピンコーターは、500rpmの回転数で3秒間作動させた後、3000rpmの回転数で30秒間作動させる。
【0130】
その後、ガラス基板をUV-ozone洗浄機を用いて、ITOガラス表面に存在する有機汚染物質を除去する。
【0131】
(ステップS32)
次に、ステップS32では、ガラス基板の表面にPEDOT:PSS(3,4-ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンサルフォネイト)を製膜する。具体的には、ガラス基板の表面に200μLのPEDOT:PSS溶液を、スピンコーターを用いて広げる。スピンコーターは、500rpmの回転数で3秒間作動させた後、3000rpmの回転数で30秒間作動させる。
【0132】
PEDOT:PSS溶液のスピンコートが完了した後、150℃に加熱したホットプレートでガラス基板を15分加熱してアニーリングを行う。アニーリングの後、ガラス基板を15分間冷却する。
【0133】
(ステップS33)
次に、ステップS33では、PEDOT:PSS層の上にPoly-TPD(ポリトリフェニルアミン誘導体)を製膜する。具体的には、PEDOT:PSS層の上に100μLのPoly-TPD溶液を、スピンコーターを用いて広げる。スピンコーターは、500rpmの回転数で1秒間作動させた後、3000rpmの回転数で30秒間作動させる。
【0134】
Poly-TPD溶液のスピンコートが完了した後、180℃に加熱したホットプレートでガラス基板を1時間加熱してアニーリングを行う。アニーリングの後、ガラス基板を15分間冷却する。
【0135】
(ステップS34)
次に、ステップS34では、Poly-TPD層の上にd-SiQDを製膜する。具体的には、まず、d-SiQDをトルエンに溶かしたSiQDトルエン溶液(濃度10mg/mL)を作製する。次に、100μLのSiQDトルエン溶液をPoly-TPD層の上に、スピンコーターを用いて広げる。スピンコーターは、2000rpmの回転数で30秒間作動させる。
【0136】
SiQDトルエン溶液のスピンコートが完了した後、70℃に加熱したホットプレートでガラス基板を30分加熱してアニーリングを行う。アニーリングの後、ガラス基板を15分間冷却する。
【0137】
(ステップS35)
次に、ステップS35では、d-SiQD層の上にZnONPs(酸化亜鉛ナノ粒子)を製膜する。具体的には、100μLのZnONPs溶液をd-SiQD層の上に、スピンコーターを用いて広げる。スピンコーターは、2000rpmの回転数で30秒間作動させる。
【0138】
ZnONPs溶液のスピンコートが完了した後、100℃に加熱したホットプレートでガラス基板を15分加熱してアニーリングを行う。アニーリングの後、ガラス基板を15分間冷却する。
【0139】
(ステップS36)
次に、ステップS36では、ZnONPs層の上に電極としてアルミニウムを蒸着する。具体的には、まず、2.0×10-2Paの真空度にした蒸着機にZnONPsを製膜したガラス基板をセットする。次に、蒸着速度が0.3nm/s~0.4nm/sになるように調整して、アルミニウムを約100nm蒸着させる。
【0140】
以上により、d-SiQDを用いた順構造のLED装置が製造される。製造した順構造LED装置からは、赤色乃至橙色発光が得られた。
【0141】
〈逆構造のLED装置〉
(ステップS41)
ステップS41では、基板となるITOガラス(以下、ガラス基板という)を洗浄する。具体的な洗浄方法は、前述したステップS31と同じであるため省略する。
【0142】
(ステップS42)
次に、ステップS32では、ガラス基板の表面にZnONPsを製膜する。具体的には、ガラス基板の表面に100μLのZnONPs溶液を、スピンコーターを用いて広げる。スピンコーターは、2000rpmの回転数で30秒間作動させる。
【0143】
ZnONPs溶液のスピンコートが完了した後、100℃に加熱したホットプレートでガラス基板を15分加熱してアニーリングを行う。アニーリングの後、ガラス基板を15分間冷却する。
【0144】
(ステップS43)
次に、ステップS43では、ZnONPs層の上にd-SiQDを製膜する。具体的には、まず、d-SiQDをトルエンに溶かしたSiQDトルエン溶液(濃度7.5mg/mL)を作製する。次に、100μLのSiQDトルエン溶液をZnONPs層の上に、スピンコーターを用いて広げる。スピンコーターは、2000rpmの回転数で30秒間作動させる。
【0145】
SiQDトルエン溶液のスピンコートが完了した後、70℃に加熱したホットプレートでガラス基板を30分加熱してアニーリングを行う。アニーリングの後、ガラス基板を30分間冷却する。
【0146】
(ステップS44)
次に、ステップS34では、d-SiQD層の上にCBP(4、4’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル)を蒸着する。具体的には、まず、2.0×10-2Paの真空度にした蒸着機にd-SiQDを製膜したガラス基板をセットする。次に、CBPの加熱温度を、蒸着開始の温度から285℃まで徐々に(およそ3℃/s)上昇させて、CBPを約40nm蒸着させる。
【0147】
(ステップS45)
次に、ステップS34では、CBP層の上にMoOを蒸着する。具体的には、まず、2.0×10-2Paの真空度にした蒸着機にCBPを蒸着させたガラス基板をセットする。次に、蒸着速度が0.05nm/s~0.2nm/sになるように調整して、MoOを約2.0~4.5nm蒸着させる。詳しくは、蒸着の際に流す電流について、まず10分程度10Aの電流を流した後、2~3分かけて15Aまで電流を上昇させるようにした。
【0148】
(ステップS46)
次に、ステップS46では、MoO層の上に電極としてアルミニウムを蒸着する。具体的な蒸着方法は前述のステップS36と同じであるため省略する。
【0149】
以上により、d-SiQDを用いた逆構造LED装置が製造される。
【0150】
このように、本実施形態に係るd-SiQDを用いた順構造LEDも逆構造LEDも、1000℃を超えるような高温処理を行うことなく、製造することができる。したがって、本実施形態に係るd-SiQDを用いることで高効率なLEDを、安価にかつ容易に製造することができる。尚、順構造LED及び逆構造LEDのいずれも、電極として用いる金属は、アルミニウムに限定されず、白金や金を用いてもよい。
【0151】
図25は、逆構造LED装置の層構造を模式的に示す。逆構造LED装置では、MoO層側からホールが注入される。製造した逆構造LED装置からは、赤色乃至橙色の発光が得られた。
【0152】
図26は、MoO層の膜厚と外部量子効率の最大値との関係を示す。MoO層の膜厚以外の条件は全て同じであり、d-SiQDの製造条件も同じである。外部量子効率は、LED装置に流す電子の個数と放射される光子の個数との比率であり、外部量子効率が高いほど、発光効率が高い。
【0153】
図26に示すように、外部量子効率は、MoO層の厚さが2.0~4.0nmの間にピークを有するような変化を示した。この結果から、MoO層の厚さを2.0~4.5nmにすると高い発光効率の逆構造LED装置を得ることができることがわかった。
【0154】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0155】
例えば、前述の実施形態では、SiQDの表面修飾を行う際に、ラジカル開始剤として、五塩化リンを用いていた。これに限らず、SiQDのオージェ過程を抑制することができるラジカル開始剤、具体的には、フッ素や臭素などのハロゲン原子を含むラジカル開始剤であればよい。
【0156】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。
本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0157】
ここに開示された技術は、ディスプレイ、照明、太陽電池、医薬バイオマーカー等に用いるシリコン量子ドットの製造に好適である。
【符号の説明】
【0158】
S12 混合工程
S13 高分子合成工程
S21 熱分解工程
S22 エッチング工程
S23 表面修飾工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26