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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059076
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】熱硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/02 20060101AFI20240422BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20240422BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20240422BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240422BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20240422BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20240422BHJP
   C08G 18/64 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
C08L79/02
G02B1/04
G02B3/00
C08L63/00 A
C08K5/29
C08G59/50
C08G18/64 015
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023140517
(22)【出願日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2022166473
(32)【優先日】2022-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】安田 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】磯部 信吾
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
4J036
【Fターム(参考)】
4J002CD13X
4J002CM01W
4J002CM02W
4J002ER006
4J002FD146
4J002FD14X
4J002GP00
4J002GP01
4J002HA05
4J034BA03
4J034DB03
4J034DC17
4J034DC23
4J034DN03
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HD15
4J034RA13
4J036AA01
4J036AB16
4J036DC45
4J036FB14
4J036FB15
4J036JA15
4J036KA01
(57)【要約】
【課題】高屈折率であり耐溶剤性に優れる硬化物を与える熱硬化性組成物と、当該熱硬化性組成物を用いる硬化物の製造方法と、前述の熱硬化性組成物の硬化物と、前述の硬化物からなるフィルムと、前述の硬化物からなるマイクロレンズと、当該マイクロレンズを備える光学素子と、当該マイクロレンズを備える光学素子とを提供すること。
【解決手段】tert-ブトキシカルボニルオキシ基、tert-ブトキシカルボニルアミノ基、又は酸解離性基により保護されたカルボキシ基を有する芳香族基が、特定の連結基を介してトリアジン環に結合した構造を有する、特定の構造の構成単位を含むポリマーと、2以上の架橋性基を含む特定の構造の架橋性化合物とを含む熱硬化性組成物を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアジン環含有ポリマー(A)と、架橋性化合物(B)と、有機溶媒(S)とを含む熱硬化性組成物であって、
前記トリアジン環含有ポリマーが、下記式(A1):
【化1】
(式(A1)中、Ar、及びArは、芳香族基含有基であり、Ra1は、tert-ブトキシカルボニルオキシ基、tert-ブトキシカルボニルアミノ基、又は酸解離性基により保護されたカルボキシ基であり、X、及びXは、それぞれ独立に、-NRa2-、-O-、又は-S-であり、Ra2は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基であり、Xは、Arとしての前記芳香族基含有基中の芳香環に結合し、Xは、Arとしての前記芳香族基含有基中の芳香環に結合する。)
で表される構成単位を含み、
前記架橋性化合物(B)が、2以上の架橋性基と、トリアジン環、置換基を有してもよいフルオレン環、又は置換基を有してもよいビナフタレン環とを含む芳香族化合物(Bi)であるか、2以上の架橋性基を含む含硫黄化合物(Bii)であるか、2以上のイソシアネート基を含むイソシアネート化合物(Biii)であり、
前記含硫黄化合物(Bii)は、前記芳香族化合物(Bi)に該当しない化合物であり、
前記イソシアネート化合物(Biii)は、前記芳香族化合物(Bi)、及び前記含硫黄化合物(Bii)に該当しない化合物であり、
前記Ra1が、前記酸解離性基により保護されたカルボキシ基である場合、前記熱硬化性組成物が、さらに熱酸発生剤(C)を含む、熱硬化性組成物。
【請求項2】
a1が、tert-ブトキシカルボニルオキシ基である、請求項1に記載の熱硬化性組成物。
【請求項3】
前記架橋性基が、エポキシ基、エピスルフィド基、又はイソシアネート基である、請求項1、又は2に記載の熱硬化性組成物。
【請求項4】
前記有機溶媒(S)が、ケトン系溶媒、又は含窒素極性有機溶媒である、請求項1、又は2に記載の熱硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1、又は2に記載の熱硬化組成物を、成形することと、
成形された前記熱硬化性組成物を加熱して硬化させることと、を含む硬化物の製造方法。
【請求項6】
前記熱硬化性組成物が、前記熱硬化性組成物を基板上に塗布することにより膜状に成形される、請求項5に記載の硬化物の製造方法。
【請求項7】
請求項1、又は2に記載の熱硬化性組成物の硬化物。
【請求項8】
波長550nmの光線の屈折率が1.72以上である、請求項7に記載の硬化物。
【請求項9】
請求項7に記載の硬化物からなる硬化膜。
【請求項10】
請求項7に記載の硬化物からなるマイクロレンズ。
【請求項11】
請求項10に記載のマイクロレンズを備える光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造の構成単位を含むトリアジン環含有ポリマーを含む熱硬化性組成物と、当該熱硬化性組成物を用いる硬化物の製造方法と、前述の熱硬化性組成物の硬化物と、前述の硬化物からなるフィルムと、前述の硬化物からなるマイクロレンズと、当該マイクロレンズを備える光学素子とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラ、ビデオカメラ等には、固体撮像素子が用いられている。この固体撮像素子には、CCD(charge-coupled device)イメージセンサや、CMOS(complementary metal-oxide semiconductor)イメージセンサが用いられている。イメージセンサには集光率の向上を目的とした微細な集光レンズ(以下、マイクロレンズと呼ぶ)が設けられている。
【0003】
近年、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサが、さらに高精細化されている。このため、マイクロレンズの小径化が進んでいる。マイクロレンズの径が小さくても、イメージセンサが備えるフォトダイオードに高効率で集光するためには、マイクロレンズの材料の高屈折率化が必要である。
例えば、種々の形態に成形可能な高屈折材料としては、トリアジン環を含む線状ポリマーが知られている(特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-162829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の線状ポリマーを用いることで、高屈折率のマイクロレンズを成形し得る。
しかし、マイクロレンズを備える素子は、当該素子を備えるデバイスを作製する際に、有機溶媒等の薬液にさらされることが多い。
このため、マイクロレンズ等の材料には優れた耐溶剤性も求められる。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、高屈折率であり耐溶剤性に優れる硬化物を与える熱硬化性組成物と、当該熱硬化性組成物を用いる硬化物の製造方法と、前述の熱硬化性組成物の硬化物と、前述の硬化物からなるフィルムと、前述の硬化物からなるマイクロレンズと、当該マイクロレンズを備える光学素子と、当該マイクロレンズを備える光学素子とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、tert-ブトキシカルボニルオキシ基、tert-ブトキシカルボニルアミノ基、又は酸解離性基により保護されたカルボキシ基を有する芳香族基が、特定の連結基を介してトリアジン環に結合した構造を有する、特定の構造の構成単位を含むポリマーと、2以上の架橋性基を含む特定の構造の架橋性化合物とを含む熱硬化性組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。具体的には本発明は以下のものを提供する。
【0008】
本発明の第1の態様は、トリアジン環含有ポリマー(A)と、架橋性化合物(B)と、有機溶媒(S)とを含む熱硬化性組成物であって、
トリアジン環含有ポリマーが、下記式(A1):
【化1】
(式(A1)中、Ar、及びArは、芳香族基含有基であり、Ra1は、tert-ブトキシカルボニルオキシ基、tert-ブトキシカルボニルアミノ基、又は酸解離性基により保護されたカルボキシ基であり、X、及びXは、それぞれ独立に、-NRa2-、-O-、又は-S-であり、Ra2は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基であり、Xは、Arとしての芳香族基含有基中の芳香環に結合し、Xは、Arとしての芳香族基含有基中の芳香環に結合する。)
で表される構成単位を含み、
架橋性化合物(B)が、2以上の架橋性基と、トリアジン環、置換基を有してもよいフルオレン環、又は置換基を有してもよいビナフタレン環とを含む芳香族化合物(Bi)であるか、2以上の架橋性基を含む含硫黄化合物(Bii)であるか、2以上のイソシアネート基を含むイソシアネート化合物(Biii)であり、
含硫黄化合物(Bii)は、芳香族化合物(Bi)に該当しない化合物であり、
イソシアネート化合物(Biii)は、芳香族化合物(Bi)、及び含硫黄化合物(Bii)に該当しない化合物であり、
a1が、前記酸解離性基により保護されたカルボキシ基である場合、前記熱硬化性組成物が、さらに熱酸発生剤(C)を含む、熱硬化性組成物である。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様にかかる熱硬化組成物を、成形することと、
成形された熱硬化性組成物を加熱して硬化させることと、を含む硬化物の製造方法である。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1の態様にかかる熱硬化性組成物の硬化物である。
【0011】
本発明の第4の態様は、第1の態様にかかる硬化物からなるフィルムである。
【0012】
本発明の第5の態様は、第1の態様にかかる硬化物からなるマイクロレンズである。
【0013】
本発明の第6の態様は、第5の態様にかかるマイクロレンズを備える光学素子である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高屈折率であり耐溶剤性に優れる硬化物を与える熱硬化性組成物と、当該熱硬化性組成物を用いる硬化物の製造方法と、前述の熱硬化性組成物の硬化物と、前述の硬化物からなるフィルムと、前述の硬化物からなるマイクロレンズと、当該マイクロレンズを備える光学素子と、当該マイクロレンズを備える光学素子とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪熱硬化性組成物≫
熱硬化性組成物は、トリアジン環含有ポリマー(A)と、架橋性化合物(B)と、有機溶媒(S)とを含む。
トリアジン環含有ポリマーは、下記式(A1):
【化2】
(式(A1)中、Ar、及びArは、芳香族基含有基であり、Ra1は、tert-ブトキシカルボニルオキシ基、tert-ブトキシカルボニルアミノ基、又は酸解離性基により保護されたカルボキシ基であり、X、及びXは、それぞれ独立に、-NRa2-、-O-、又は-S-であり、Ra2は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基であり、Xは、Arとしての芳香族基含有基中の芳香環に結合し、Xは、Arとしての芳香族基含有基中の芳香環に結合する。)
で表される構成単位を含む。
架橋性化合物(B)は、2以上の架橋性基と、トリアジン環、置換基を有してもよいフルオレン環、又は置換基を有してもよいビナフタレン環とを含む芳香族化合物(Bi)であるか、2以上の架橋性基を含む含硫黄化合物(Bii)であるか、2以上のイソシアネート基を含むイソシアネート化合物(Biii)である。
含硫黄化合物(Bii)は、芳香族化合物(Bi)に該当しない化合物である。
イソシアネート化合物(Biii)は、芳香族化合物(Bi)、及び含硫黄化合物(Bii)に該当しない化合物である。
a1が、酸解離性基により保護されたカルボキシ基である場合、熱硬化性組成物が、さらに熱酸発生剤(C)を含む。
【0016】
以下、熱硬化性組成物が含み得る、必須、又は任意の成分について説明する。
【0017】
<トリアジン環含有ポリマー(A)>
トリアジン環含有ポリマーは(A)、下記式(A1):
【化3】
(式(A1)中、Ar、及びArは、芳香族基含有基であり、Ra1は、tert-ブトキシカルボニルオキシ基、tert-ブトキシカルボニルアミノ基、又は酸解離性基により保護されたカルボキシ基であり、X、及びXは、それぞれ独立に、-NRa2-、-O-、又は-S-であり、Ra2は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基であり、Xは、Arとしての芳香族基含有基中の芳香環に結合し、Xは、Arとしての芳香族基含有基中の芳香環に結合する。)
で表される構成単位を含む。
式(A1)で表される構成単位を含むトリアジン環含有ポリマー(A)は高屈折率を示す。
以下トリアジン環含有ポリマー(A)について、「ポリマー(A)」とも記す。
【0018】
ポリマー(A)は、tert-ブトキシカルボニルオキシ基、tert-ブトキシカルボニルアミノ基、又は酸解離性基により保護されたカルボキシ基を有する。酸解離性基は、酸の作用により保護されたカルボキシ基から解離し、カルボキシ基を再生させ得る基である。
かかるポリマーは、例えば、含窒素極性有機溶媒やケトン系溶媒等の種々の有機溶媒に対して可溶である。
しかし、tert-ブトキシカルボニルオキシ基、tert-ブトキシカルボニルアミノ基、又は酸解離性基により保護されたカルボキシ基が脱保護されることにより、上記のポリマー(A)は有機溶媒に対して難溶化する。ポリマー(A)に由来する、脱保護により生成したフェノール性水酸基、アミノ基、又はカルボキシ基を有するポリマー(A’)は、フェノール性水酸基、アミノ基、又はカルボキシ基と反応し得る架橋性化合物(B)により架橋されることで、有機溶媒に対してさらに難溶化する。
【0019】
このため、上記のポリマー(A)は溶液としての加工が容易である。他方で、前述のポリマー(A)、及び有機溶媒(S)を含む液状の熱硬化性組成物を用いて、tert-ブトキシカルボニルオキシ基、tert-ブトキシカルボニルアミノ基、又は酸解離性基により保護されたカルボキシ基が脱保護される条件で製造された硬化物は、有機溶媒に対して難溶である。
【0020】
ポリマー(A)は、式(A1)で表される構成単位とともに、式(A1)で表される構成単位以外の他の構成単位を含んでいてもよい。
以下、式(A1)で表される構成単位を、「単位(A1)」とも記す。式(A1)で表される構成単位以外の他の構成単位を、「単位(A2)」とも記す。
ポリマー(A)における単位(A1)の量は、所望する効果が損なわれない範囲で特に限定されない。ポリマー(A)における単位(A1)の量は、ポリマー(A)の質量に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%が最も好ましい。
【0021】
<単位(A1)>
式(A1)中、Ar、及びArは、芳香族基含有基である。芳香族基含有基は、芳香族基のみからなる基であってもよく、芳香族基とともに非芳香族基を有してもよい。
芳香族基含有基は、1つの芳香族基のみを含んでいてもよく、2以上の芳香族基を含んでいてもよい。芳香族基含有基に含まれる芳香族基は、芳香族炭化水素基であってもよく、芳香族複素環基であってもよい。芳香族基含有基に含まれる芳香族基は、芳香族炭化水素基であるのが好ましい。
【0022】
芳香族基含有基に含まれる芳香族基は、単環式基であっても、多環式基であってもよい。多環式基は、縮合環式基であってもよく、単環式基、及び多環式基から選択される1以上の環が単結合で連結された基であってもよい。縮合環式基は、芳香族基が縮合した基であってもよく、芳香族基と脂肪族環式基とが縮合した基であってもよい。
【0023】
芳香族基含有基に含まれる、芳香族単環の数は、所望する効果が損なわれない範囲で特に限定されない。なお、芳香族基含有基が、芳香族縮合環基である場合、芳香族縮合環を構成する単環の数を、芳香族基含有基に含まれる芳香族単環の数とする。具体的には、芳香族基含有基がナフタレンジイル基である場合、芳香族基含有基に含まれる芳香族単環の数を2とする。
芳香族基含有基に含まれる、芳香族単環の数は、1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。
【0024】
芳香族基含有基の好適な例としては、以下の式(a-1)~式(a-11)で表される基が挙げられる。
【化4】
【0025】
式(a-1)~式(a-11)において、Ra01は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、スルホン酸基、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、及び炭素原子数1以上10以下のアルコキシ基からなる群より選択される基である。
a1、及びWa2は、それぞれ独立に、単結合、-CRa02a03-で表される基、カルボニル基、-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NRa04-で表される基である。
a02、及びRa03は、水素原子、又は炭素原子数1以上10以下のアルキル基である。-CRa02a03-で表される基において、Ra02、及びRa03は、互いに結合して環を形成してもよい。
a04は、水素原子、又は炭素原子数1以上10以下のアルキル基である。
a1、及びXa2は、それぞれ独立に、単結合、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基、-Ya1-Ph-Ya2-で表される基である。
Phは、1以上4以下の置換基を有してもよいフェニレン基である。フェニレン基が有してもよい置換基は、ハロゲン原子、スルホン酸基、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、及び炭素原子数1以上10以下のアルコキシ基からなる群より選択される基である。
a1、及びYa2は、それぞれ独立に、単結合、又は炭素原子数1以上10以下のアルキレン基である。
n1は、0以上4以下の整数である。
n2、及びn3は、それぞれ独立に0以上3以下の整数である。
n4は、0以上2以下の整数である。
n5は、0以上3以下の整数である。
n6、及びn7は、それぞれ独立に0以上3以下の整数である。
n8は、0以上3以下の整数である。
n9は、0以上5以下の整数である。
n10、及びn11は、それぞれ独立に0以上3以下の整数である。
n12は、0以上3以下の整数である。
n13は、0以上4以下の整数である。
n14、n15、及びn16は、それぞれ独立に0以上4以下の整数である。
n17は、0以上3以下の整数である。
n18は、0以上4以下の整数である。
n19は、0以上5以下の整数である。
n20、及びn21は、0以上4以下の整数である。
n22、及びn23は、0以上4以下の整数である。
【0026】
a01としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。これらの中では、フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子が好ましい。
【0027】
a01としての炭素原子数1以上10以下のアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。Ra01としての炭素原子数1以上10以下のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチル-n-ヘキシル基、n-ノニル基、及びn-デシル基が挙げられる。
【0028】
a01としての炭素原子数1以上10以下のアルコキシ基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。Ra01としての炭素原子数1以上10以下のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチル-n-ヘキシルオキシ基、n-ノニルオキシ基、及びn-デシルオキシ基が挙げられる。
【0029】
a1、及びWa2は、それぞれ独立に、単結合、-CRa02a03-で表される基、カルボニル基、-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NRa04-で表される基である。
a1、及びWa2が、-CRa02a03-で表される基である場合、Ra02、及びRa03は、水素原子、又は炭素原子数1以上10以下のアルキル基である。
a02、及びRa03としての炭素原子数1以上10以下のアルキル基は、Ra01としての炭素原子数1以上10以下のアルキル基と同様である。
a02、及びRa03は、互いに結合して環を形成してもよい。
a1、及びWa2が、-NRa04-で表される基である場合、Ra04は、水素原子、又は炭素原子数1以上10以下のアルキル基である。
a04としての炭素原子数1以上10以下のアルキル基は、Ra01としての炭素原子数1以上10以下のアルキル基と同様である。
【0030】
a1、及びXa2は、それぞれ独立に、単結合、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基、-Ya1-Ph-Ya2-で表される基である。
a1、及びXa2としての炭素原子数1以上10以下のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基(エチレン基)、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、及びデカン-1,10-イル基が挙げられる。
a1、及びXa2が-Ya1-Ph-Ya2-で表される基である場合、Phは、1以上4以下の置換基を有してもよいフェニレン基である。フェニレン基が有してもよい置換基は、ハロゲン原子、スルホン酸基、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、及び炭素原子数1以上10以下のアルコキシ基からなる群より選択される基である。
フェニレン基が有してもよい置換基としての炭素原子数1以上10以下のアルキル基、及び炭素原子数1以上10以下のアルコキシ基は、Ra01としての炭素原子数1以上10以下のアルキル基、及び炭素原子数1以上10以下のアルコキシ基と同様である。
a1、及びYa2は、それぞれ独立に、単結合、又は炭素原子数1以上10以下のアルキレン基である。
a1、及びYa2としての炭素原子数1以上10以下のアルキレン基は、Xa1、及びXa2としての炭素原子数1以上10以下のアルキレン基と同様である。
【0031】
式(a-1)~式(a-11)で表される基の具体例としては、以下の基が挙げられる。
【化5】
【0032】
【化6】
【0033】
上記の基の中では、以下の基が好ましい。
【化7】
【0034】
式(A1)において、Ra1は、tert-ブトキシカルボニルオキシ基、tert-ブトキシカルボニルアミノ基、又は酸解離性基により保護されたカルボキシ基である。
tert-ブトキシカルボニルオキシ基、及びtert-ブトキシカルボニルアミノ基、は、加熱のみによって脱保護され、フェノール性水酸基、又はアミノ基を生成し得る。他方、酸解離性基により保護されたカルボキシ基の加熱のみによる脱保護は困難である。酸解離性基により保護されたカルボキシ基を加熱により脱保護させるためには、例えば、後述する熱酸発生剤(C)の共存下に、保護されたカルボキシ基を加熱するのが有利である。この場合、加熱により熱酸発生剤(C)が発生させる酸の作用で、酸解離性基により保護されたカルボキシ基が容易に脱保護される。
上記の通り、加熱のみによって容易に脱保護される点で、Ra1としては、tert-ブトキシカルボニルオキシ基、及びtert-ブトキシカルボニルアミノ基が好ましい。
【0035】
酸解離性基としては、有機合成や、フォトレジスト等の技術分野において周知であって、カルボキシ基を保護し得る基であれば特に限定されない。酸解離性基の好適な例としては、アセタール保護基、及び第三級炭素原子含有基が挙げられる。
【0036】
アセタール保護基としては、-CHRA1-O-RA2で表される基が好ましい。
A1は、水素原子、又はアルキル基である。RA2は、アルキル基である。RA1、及びRA2は、互いに結合して環を形成してもよい。
A1、及びRA2としてのアルキル基の炭素原子数は、1以上6以下が好ましく、1以上4以下がより好ましい。RA1、及びRA2としてのアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、直鎖状が好ましい。
A1、及びRA2としてのアルキル基の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、及びn-ブチル基が挙げられる。
【0037】
-CHRA1-O-RA2で表される基の具体例としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、n-プロピルオキシメチル基、n-ブチルオキシメチル基、1-メトキシエチル基、1-エトキシメチル基、1-n-プロピルオキシエチル基、1-n-ブチルオキシエチル基、テトラヒドロピラン-2-イル基、及びテトラヒドロフラン-2-イル基が挙げられる。
【0038】
第三級炭素原子含有基としては、-C(RA3)(RA4)(RA5)で表される基が好ましい。
A3、RA4、及びRA5は、それぞれ独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のフッ素化アルキル基、又は炭素原子数5以上20以下の脂肪族環式基である。
A3、RA4、及びRA5としてのアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、及びn-ヘキシル基等が挙げられる。
A3、RA4、及びRA5としてのフッ素化アルキル基は、上記アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換された基である。
A3、RA4、及びRA5としての脂肪族環式基の具体例としては、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が挙げられる。特に、シクロヘキサン、アダマンタンから1個の水素原子を除いた基(さらに置換基を有していてもよい)が好ましい。
【0039】
-C(RA3)(RA4)(RA5)で表される基の具体例としては、以下の基が挙げられる。
【化8】
【0040】
式(A1)において、X、及びXは、それぞれ独立に、-NRa2-、-O-、又は-S-である。Ra2は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。
【0041】
a2としてのアルキル基の炭素原子数は特に限定されない。Ra2としてのアルキル基の炭素原子数は、1以上6以下が好ましく、1以上4以下がより好ましい。Ra2としてのアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、直鎖状が好ましい。
a2としてのアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、及びn-ヘキシル基が挙げられる。
a2としてのアルキル基が有してもよい置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、メルカプト基、及びシアノ基が挙げられる。
【0042】
a2としての芳香族炭化水素基の炭素原子数は特に限定されない。Ra2としてのアルキル基の炭素原子数は、6以上12以下が好ましい。
a2としての芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、ナフタレン-1-イル基、ナフタレン-2-イル基、4-フェニルフェニル基、3-フェニルフェニル基、及び2-フェニルフェニル基が挙げられる。
a2としての芳香族炭化水素基が有してもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、メルカプト基、及びシアノ基が挙げられる。
【0043】
式(A1)中のXは、Arとしての芳香族基含有基中の芳香環に結合する。式(A1)中のXは、Arとしての芳香族基含有基中の芳香環に結合する。
【0044】
単位(A1)の好ましい具体例としては、以下の構成単位が挙げられる。以下の構成単位における、トリアジン環に結合するアミノ基を、-O-、又は-S-に変えた構成単位もまた好ましい。
以下の構成単位における、tert-ブトキシカルボニル基を、メトキシメチル基、エトキシメチル基、n-プロピルオキシメチル基、n-ブチルオキシメチル基、1-メトキシエチル基、1-エトキシメチル基、1-n-プロピルオキシエチル基、1-n-ブチルオキシエチル基、テトラヒドロピラン-2-イル基、又はテトラヒドロフラン-2-イル基に変えた構成単位もまた好ましい。
以下の構成単位における、tert-ブトキシカルボニルオキシ基を、tert-ブトキシカルボニルアミノ基、又は前述の酸解離性基で保護されたカルボキシ基に変えた構成単位もまた好ましい。
【化9】
【0045】
【化10】
【0046】
【化11】
【0047】
【化12】
【0048】
<単位(A2)>
前述の通り、ポリマー(A)は、式(A1)で表される構成単位以外の他の構成単位である単位(A2)を含んでいてもよい。
単位(A2)の構造は、所望する効果が損なわれない範囲で特に限定されない。
【0049】
ポリマー(A)は、後述するように、ジハロトリアジン化合物と、芳香族ジアミン化合物、芳香族ジオール、又は芳香族ジチオールとを重合させて製造される。
このため、単位(A2)としては、下記式(A2)で表される構成単位が好ましい。
【化13】
【0050】
式(A2)中、X、X、及びArは、式(A1)におけるこれらと同様である。式(A2)中、Arは、置換基を有していてもよい芳香族基である。Arとしての芳香族基は、芳香族炭化水素基であっても、芳香族複素環基であってもよい。Arとしての芳香族基としては、芳香族炭化水素基が好ましい。
Arとしての芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、ナフタレン-1-イル基、ナフタレン-2-イル基、4-フェニルフェニル基、3-フェニルフェニル基、及び2-フェニルフェニル基が挙げられる。
Arとしての芳香族炭化水素基が有してもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、及びシアノ基が挙げられる。
【0051】
ポリマー(A)は、後述する式(A3)で表されるトリアジン化合物と、下記式(A5-1)で表される芳香族ジアミン化合物、下記式(A5-2)で表される芳香族ジオール、又は下記式(A5-3)で表される芳香族ジチオールとを反応させることにより得られる。
この場合、ポリマー(A)が、両末端にハロゲン原子を有する分子、一方の末端にハロゲン原子を有し、他方の末端にアミノ基、水酸基、又はメルカプト基を有する分子、及び両末端にアミノ基、水酸基、又はメルカプト基を有する分子との混合物であることが多い。
ポリマー(A)が後述する式(A3)で表されるトリアジン化合物に由来するハロゲン末端を有する場合、当該ハロゲン末端が、アミノ基を1つ有するアミン化合物により封鎖されるのも好ましい。このような、アミン化合物で封鎖された末端を有するポリマー(A)は、ポリマー(A)における、末端のハロゲン原子と、上記のアミン化合物とを反応させることにより得られる。
つまり、末端がアミン化合物により封鎖されたポリマー(A)は、末端基として、封鎖に用いられたアミン化合物から、窒素原子に結合する水素原子を1つ除いた、N-置換アミノ基、又はN,N-ジ置換アミノ基を有する。
ポリマー(A)がハロゲン末端を有する分子を含む場合、末端にハロゲン原子を有する分子と、末端にアミノ基、水酸基、又はメルカプト基を有する分子とが反応することによって、熱硬化性組成物を保管している間に、ポリマー(A)の分子量が高くなり、熱硬化性組成物の性状が経時的に変換し得る。
しかし、ポリマー(A)におけるハロゲン末端がアミン化合物により封鎖されると、熱硬化性組成物の性状の経時的な変化が抑制される。
【0052】
ポリマー(A)におけるハロゲン末端をアミン化合物により封鎖する場合、両末端にハロゲン末端を有するポリマー(A)を調製した後、得られたポリマー(A)の両ハロゲン末端を、アミン化合物により封鎖するのもの好ましい。
両末端にハロゲン末端を有するポリマー(A)は、後述する方法によりポリマー(A)を製造する際に、式(A3)で表されるトリアジン化合物を、下記式(A5-1)で表される芳香族ジアミン化合物、下記式(A5-2)で表される芳香族ジオール、又は下記式(A5-3)で表される芳香族ジチオールに対して用いることにより製造できる。
また、ポリマー(A)が、下記式(A5-1)で表される芳香族ジアミン化合物、下記式(A5-2)で表される芳香族ジオール、又は下記式(A5-3)で表される芳香族ジチオールに由来するアミノ基、水酸基、又はメルカプト基を末端に有する場合、アミノ基、水酸基、又はメルカプト基を末端に有するポリマー(A)と、式(A3)で表されるトリアジン化合物とを反応させることにより、ポリマー(A)の両末端を、式(A3)で表されるトリアジン化合物に由来するハロゲン末端に変換できる。
【0053】
末端の封鎖に用いられるアミン化合物は、第一級アミンであっても、第二級アミンであってもよく、第一級アミンであるのが好ましい。
末端鎖に用いられるアミン化合物としては、アミノ基で置換された炭化水素化合物が好ましく、アルキルアミン、シクロアルキルアミン、アラルキルアミン、及びアリールアミンが好ましい。
【0054】
アルキルアミンの炭素原子数は、1以上10以下が好ましく、2以上8以下がより好ましく、2以上6以下がさらに好ましい。
アルキルアミンの具体例としては、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-へプチルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-ノニルアミン、及びn-デシルアミンが挙げられる。
【0055】
シクロアルキルアミンの炭素原子数は、3以上10以下が好ましく、3以上8以下がより好ましく、3以上6以下がさらに好ましい。
シクロアルキルアミンの具体例としては、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロオクチルアミン、シクロノニルアミン、及びシクロデシルアミンが挙げられる。
【0056】
アラルキルアミンの炭素原子数は、7以上20以下が好ましく、7以上12以下がより好ましい。
アラルキルアミンの具体例としては、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ナフタレン-1-イルメチルアミン、及びナフタレン-2-イルメチルアミンが挙げられる。
【0057】
アリールアミンの炭素原子数は、6以上20以下が好ましく、6以上12以下がより好ましい。
アリールアミンの具体例としては、アニリン、1-アミノナフタレン、2-アミノナフタレン、4-フェニルアニリン、3-フェニルアニリン、及び2-フェニルアニリンが挙げられる。
【0058】
ポリマー(A)の重量平均分子量は、所望する効果が損なわれない限り特に限定されない。重量平均分子量は、500以上100000以下が好ましい。加熱された状態でのポリマー(A)の耐溶剤性の高さの観点から、重量平均分子量は、5000以上が好ましい。ポリマーの種々の溶媒に対する溶解性の高さの観点から、重量平均分子量は、30000以下が好ましい。
【0059】
<ポリマー(A)の製造方法>
以上説明したポリマー(A)の製造方法は、得られるポリマーが単位(A1)を含む限り特に限定されない。
典型的には、下記式(A3)で表されるトリアジン化合物と、下記式(A5-1)で表される芳香族ジアミン化合物、下記式(A5-2)で表される芳香族ジオール、又は下記式(A5-3)で表される芳香族ジチオールとを縮合させる方法により、上記のポリマーが製造される。
【0060】
【化14】
【0061】
式(A3)中、Ar、X、及びRa1は、式(A1)中のこれらと同様である。Halは、ハロゲン原子である。Halとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。これらの中では、塩素原子、及び臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0062】
Ar-(NRa2H)・・・(A5-1)
Ar-(OH)・・・(A5-2)
Ar-(SH)・・・(A5-3)
式(A5-1)~式(A5-3)中、Ar、及びRa2は、式(A1)中のこれらと同様である。
【0063】
式(A5-1)で表される芳香族ジアミン化合物の具体例としては、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノビフェニル、1,4-ジアミノナフタレン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,7-ジアミノナフタレン、9,10-ジアミノアントラセン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジアミノベンズアニリド、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(4-アミノフェノキシ)エタン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ブタン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、1,6-ビス(4-アミノフェノキシ)ヘキサン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、2,2-ビス[4-{4-アミノ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ}フェニル]ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)フルオレン、2,7-ジアミノフルオレン、2-(4-アミノフェニル)-5-アミノベンゾオキサゾール、2-(3-アミノフェニル)-5-アミノベンゾオキサゾール、2-(4-アミノフェニル)-6-アミノベンゾオキサゾール、2-(3-アミノフェニル)-6-アミノベンゾオキサゾール、1,4-ビス(5-アミノ-2-ベンゾオキサゾリル)ベンゼン、1,4-ビス(6-アミノ-2-ベンゾオキサゾリル)ベンゼン、1,3-ビス(5-アミノ-2-ベンゾオキサゾリル)ベンゼン、1,3-ビス(6-アミノ-2-ベンゾオキサゾリル)ベンゼン、2,6-ビス(4-アミノフェニル)ベンゾビスオキサゾール、2,6-ビス(3-アミノフェニル)ベンゾビスオキサゾール、ビス[(3-アミノフェニル)-5-ベンゾオキサゾリル]、ビス[(4-アミノフェニル)-5-ベンゾオキサゾリル]、ビス[(3-アミノフェニル)-6-ベンゾオキサゾリル]、ビス[(4-アミノフェニル)-6-ベンゾオキサゾリル]、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエタン-1,1-ジイル)]ジアニリン、4-アミノ安息香酸4-アミノフェニルエステル、1,3-ビス(4-アニリノ)テトラメチルジシロキサン、1,4-ビス(3-アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、オルト-トリジンスルホン等が挙げられる。
【0064】
式(A5-2)で表される芳香族ジオールの具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、2,4-ジヒドロキシトルエン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、9,10-ジヒドロキシアントラセン、9,10-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アントラセン、4,4’-ジヒドロキシ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’-ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス[4-(4-ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシベンズアニリド、3,3’-ジヒドロキシベンズアニリド、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)エタン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)プロパン、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ブタン、1,5-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ペンタン、1,6-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ヘキサン、ビス[4-(4-ヒドロキシフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-ヒドロキシフェノキシ)フェニル]エーテル、4,4’-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ビフェニル、3,4’-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ビフェニル、3,3’-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3-ヒドロキシフェノキシフェニル)スルホン、ビス[4-(4-ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ケトン、2,2-ビス[4-{4-ヒドロキシ2-(トリフルオロメチル)フェノキシ}フェニル]ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、2,7-ジヒドロキシフルオレン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-5-ヒドロキシベンゾオキサゾール、2-(3-ヒドロキシフェニル)-5-ヒドロキシベンゾオキサゾール、2-(4-ヒドロキシフェニル)-6-ヒドロキシベンゾオキサゾール、2-(3-ヒドロキシフェニル)-6-ヒドロキシベンゾオキサゾール、1,4-ビス(5-ヒドロキシ-2-ベンゾオキサゾリル)ベンゼン、1,4-ビス(6-ヒドロキシ-2-ベンゾオキサゾリル)ベンゼン、1,3-ビス(5-ヒドロキシ-2-ベンゾオキサゾリル)ベンゼン、1,3-ビス(6-ヒドロキシ-2-ベンゾオキサゾリル)ベンゼン、2,6-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゾビスオキサゾール、2,6-ビス(3-ヒドロキシフェニル)ベンゾビスオキサゾール、ビス[(3-ヒドロキシフェニル)-5-ベンゾオキサゾリル]、ビス[(4-ヒドロキシフェニル)-5-ベンゾオキサゾリル]、ビス[(3-ヒドロキシフェニル)-6-ベンゾオキサゾリル]、ビス[(4-ヒドロキシフェニル)-6-ベンゾオキサゾリル]、3,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエタン-1,1-ジイル)]ジアニリン、4-ヒドロキシ安息香酸4-ヒドロキシフェニルエステル、1,3-ビス(4-アニリノ)テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0065】
式(A5-3)で表される芳香族ジチオールの具体例としては、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、2,4-ジメルカプトトルエン、4,4’-ジメルカプトビフェニル、3,3’-ジメルカプトビフェニル、3,4’-ジメルカプトビフェニル、1,4-ジメルカプトナフタレン、1,5-ジメルカプトナフタレン、2,6-ジメルカプトナフタレン、2,7-ジメルカプトナフタレン、9,10-ジメルカプトアントラセン、9,10-ビス(4-メルカプトフェニル)アントラセン、4,4’-ジメルカプト-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’-ジメルカプトベンゾフェノン、3,3’-ジメルカプトベンゾフェノン、3,4’-ジメルカプトベンゾフェノン、4,4’-ジメルカプトジフェニルスルホン、3,3’-ジメルカプトジフェニルスルホン、3,4’-ジメルカプトジフェニルスルホン、4,4’-ジメルカプトジフェニルスルフィド、3,3’-ジメルカプトジフェニルスルフィド、3,4’-ジメルカプトジフェニルスルフィド、4,4’-ジメルカプトジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジメルカプトジフェニルメタン、2,2-ビス(4-メルカプトフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス[4-(4-メルカプトフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-メルカプトフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジメルカプトジフェニルエーテル、3,4’-ジメルカプトジフェニルエーテル、3,3’-ジメルカプトジフェニルエーテル、4,4’-ジメルカプトベンズアニリド、3,3’-ジメルカプトベンズアニリド、1,4-ビス(4-メルカプトフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-メルカプトフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-メルカプトフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-メルカプトフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-メルカプトフェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(4-メルカプトフェノキシ)エタン、1,3-ビス(4-メルカプトフェノキシ)プロパン、1,4-ビス(4-メルカプトフェノキシ)ブタン、1,5-ビス(4-メルカプトフェノキシ)ペンタン、1,6-ビス(4-メルカプトフェノキシ)ヘキサン、ビス[4-(4-メルカプトフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-メルカプトフェノキシ)フェニル]エーテル、4,4’-ビス(4-メルカプトフェノキシ)ビフェニル、3,4’-ビス(4-メルカプトフェノキシ)ビフェニル、3,3’-ビス(4-メルカプトフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-メルカプトフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3-メルカプトフェノキシフェニル)スルホン、ビス[4-(4-メルカプトフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-メルカプトフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-メルカプトフェノキシ)フェニル]ケトン、2,2-ビス[4-{4-メルカプト2-(トリフルオロメチル)フェノキシ}フェニル]ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(4-メルカプトフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-メルカプト3-メチルフェニル)フルオレン、2,7-ジメルカプトフルオレン、2-(4-メルカプトフェニル)-5-メルカプトベンゾオキサゾール、2-(3-メルカプトフェニル)-5-メルカプトベンゾオキサゾール、2-(4-メルカプトフェニル)-6-メルカプトベンゾオキサゾール、2-(3-メルカプトフェニル)-6-メルカプトベンゾオキサゾール、1,4-ビス(5-メルカプト-2-ベンゾオキサゾリル)ベンゼン、1,4-ビス(6-メルカプト-2-ベンゾオキサゾリル)ベンゼン、1,3-ビス(5-メルカプト-2-ベンゾオキサゾリル)ベンゼン、1,3-ビス(6-メルカプト-2-ベンゾオキサゾリル)ベンゼン、2,6-ビス(4-メルカプトフェニル)ベンゾビスオキサゾール、2,6-ビス(3-メルカプトフェニル)ベンゾビスオキサゾール、ビス[(3-メルカプトフェニル)-5-ベンゾオキサゾリル]、ビス[(4-メルカプトフェニル)-5-ベンゾオキサゾリル]、ビス[(3-メルカプトフェニル)-6-ベンゾオキサゾリル]、ビス[(4-メルカプトフェニル)-6-ベンゾオキサゾリル]、3,4’-ジメルカプトジフェニルスルフィド、4,4’-ジメルカプトジフェニルスルフィド、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエタン-1,1-ジイル)]ジアニリン、4-メルカプト安息香酸4-メルカプトフェニルエステル、1,3-ビス(4-アニリノ)テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0066】
式(A3)で表されるトリアジン化合物は、ハロゲン化シアヌルと、下記式(A3-1)で表される芳香族アミン化合物、下記式(A3-2)で表されるヒドロキシ芳香族化合物、又は下記式(A3-3)で表されるメルカプト芳香族化合物とを縮合させることにより製造できる。
a1-Ar-NRa2H・・・(A3-1)
a1-Ar-OH・・・(A3-2)
a1-Ar-SH・・・(A3-3)
【0067】
式(A3-1)~式(A3-3)中、Ar、Ra1、及びRa2は、式(A1)中のこれらと同様である。
【0068】
ハロゲン化シアヌルとしては、フッ化シアヌル、塩化シアヌル、及び臭化シアヌルが挙げられる。これらの中では、塩化シアヌルが好ましい。
【0069】
式(A3)で表されるトリアジン化合物を製造する際の、式(A3-1)で表される芳香族アミン化合物、式(A3-2)で表されるヒドロキシ芳香族化合物、又は式(A3-3)で表されるメルカプト芳香族化合物の使用量は、ハロゲン化シアヌル1モルに対して、0.8モル以上1.2モル以下が好ましく、0.9モル以上1.1モル以下がより好ましく、0.95モル以上1.05モル以下がさらに好ましい。
【0070】
ハロゲン化シアヌルと、式(A3-1)で表される芳香族アミン化合物、式(A3-2)で表されるヒドロキシ芳香族化合物、又は式(A3-3)で表されるメルカプト芳香族化合物との反応は、通常、有機溶媒中で、両者を混合することにより行われる。
かかる反応において使用される有機溶媒としては、反応が良好に進行する限り特に限定されない。有機溶媒としては、ハロゲン化シアヌルと反応しない点で、水酸基、メルカプト基、又はアミノ基を持たない溶媒が好ましい。有機溶媒の具体例としては、例えば、テトラヒドロフラン、及び1,4-ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn-ブチルケトン、及びシクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、p-キシレン、o-キシレン、m-キシレン、エチルベンゼン、及びスチレン等の芳香族炭化水素;エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコール類のモノアルキルエーテルアセテート;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、及びトリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコール類のジアルキルエーテル;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、及び酢酸イソブチル等のエステル類;γ-ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
有機溶媒の使用量は、反応が良好に進行する限り特に限定されない。有機溶媒の使用量は、反応原料100質量部に対して、100質量部以上5000質量部以下が好ましく、200質量部以上4000質量部以下がより好ましい。
【0071】
ハロゲン化シアヌルと、式(A3-1)で表される芳香族アミン化合物、式(A3-2)で表されるヒドロキシ芳香族化合物、又は式(A3-3)で表されるメルカプト芳香族化合物とを反応させる温度は、例えば、-20℃以上150℃以下が好ましく、-10℃以上50℃以下がより好ましい。
式(A3-1)で表される芳香族アミン化合物、式(A3-2)で表されるヒドロキシ芳香族化合物、又は式(A3-3)で表されるメルカプト芳香族化合物が、Ra1として、tert-ブトキシカルボニルオキシ基、又はtert-ブトキシカルボニルアミノ基を有する場合、tert-ブトキシカルボニルオキシ基、又はtert-ブトキシカルボニルアミノ基の熱による脱保護を防ぐために、反応温度は、-10℃以上50℃以下が好ましい。
反応時間は、特に限定されない。例えば、反応時間は、30分以上50時間以下が好ましく、1時間以上30時間以下がより好ましい。
【0072】
式(A3-1)で表される芳香族アミン化合物、式(A3-2)で表されるヒドロキシ芳香族化合物、及び式(A3-3)で表されるメルカプト芳香族化合物の好適な具体例としては、以下の化合物が挙げられる。下記式中のRa1は、式(A1)におけるRa1と同様である。
【化15】
【0073】
【化16】
【0074】
【化17】
【0075】
式(A3)で表されるトリアジン化合物とともに、式(A3)で表されるトリアジン化合物以外のジハロトリアジン化合物を用いることで、単位(A1)、及び単位(A2)を得ることができる。
式(A3)で表されるトリアジン化合物以外のジハロトリアジン化合物としては、下記式(A2-1)で表されるジハロトリアジン化合物が好ましい。下記式(A2-1)で表されるジハロトリアジン化合物を用いることにより、ポリマー(A)中に、単位(A2)として、式(A2)で表される構成単位が導入される。
【0076】
【化18】
【0077】
式(A2-1)中のXは、式(A1)中のXと同様である。式(A2-1)中のArは、式(A2)中のArと同様である。式(A2-1)中のHalは、式(A3)中のHalと同様である。
【0078】
式(A3)で表されるトリアジン化合物を含むジハロトリアジン化合物と、式(A5-1)で表される芳香族ジアミン化合物、式(A5-2)で表される芳香族ジオール、又は式(A5-3)で表される芳香族ジチオールとを縮合させる方法は特に限定されない。
典型的には、式(A3)で表されるトリアジン化合物を含むジハロトリアジン化合物と、式(A5-1)で表される芳香族ジアミン化合物、式(A5-2)で表される芳香族ジオール、又は式(A5-3)で表される芳香族ジチオールとを有機溶媒中で混合することにより、前述のポリマー(A)を製造できる。
【0079】
縮合反応に使用される有機溶媒は、生成するポリマー(A)が可溶である有機溶媒が好ましい。このような有機溶媒としては、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルプロピオン酸アミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピペリドン、N-アセチルピロリジン、N,N’-ジメチルエチレン尿素(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)、N,N’-ジメチルプロピレン尿素、N,N,N’,N’-テトラメチルマロン酸アミド、N-メチルカプロラクタム、及びN,N,N’,N’-テトラメチルウレア等の含窒素極性有機溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ヘキサメチルリン酸トリアミド;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、及びジオキサン等のエーテル類が挙げられる。
有機溶媒の使用量は、反応が良好に進行する限り特に限定されない。有機溶媒の使用量は、反応原料100質量部に対して、100質量部以上5000質量部以下が好ましく、200質量部以上4000質量部以下がより好ましい。
【0080】
ポリマー(A)を製造する際の、式(A5-1)で表される芳香族ジアミン化合物、式(A5-2)で表される芳香族ジオール、又は式(A5-3)で表される芳香族ジチオールの使用量は、式(A3)で表されるトリアジン化合物を含むジハロトリアジン化合物1モルに対して、0.8モル以上1.2モル以下が好ましく、0.9モル以上1.1モル以下がより好ましく、0.95モル以上1.05モル以下がさらに好ましい。
【0081】
ポリマー(A)を製造する際の反応温度は、例えば、0℃以上200℃以下が好ましく、20℃以上150℃以下がより好ましい。
反応時間は、特に限定されない。例えば、反応時間は、5分以上24時間以下が好ましく、10分以上18時間以下がより好ましく、30分以上12時間以下がさらに好ましい。
【0082】
また、式(A5-1)で表される芳香族ジアミン化合物、式(A5-2)で表される芳香族ジオール、又は式(A5-3)で表される芳香族ジチオールに由来するアミノ基、水酸基、又はメルカプト基を末端に有するポリマー(A)と、式(A3)で表されるトリアジン化合物を含むジハロトリアジン化合物とを反応させて、ポリマー(A)の末端を、式(A3)で表されるトリアジン化合物に由来するハロゲン末端に変換する場合、式(A3)で表されるトリアジン化合物の使用量は、末端基としてのアミノ基、水酸基、又はメルカプト基1モルに対して、0.8モル以上が好ましく、0.8モル以上5.0モル以下がより好ましく、0.9モル以上2.0モル以下がより好ましい。
【0083】
アミノ基、水酸基、又はメルカプト基を末端に有するポリマー(A)と、式(A3)で表されるトリアジン化合物との反応は、式(A3)で表されるトリアジン化合物と、式(A5-1)で表される芳香族ジアミン化合物、式(A5-2)で表される芳香族ジオール、又は式(A5-3)で表される芳香族ジチオールとの反応と、同様の条件下で行われる。
【0084】
ハロゲン末端を有するポリマー(A)のハロゲン末端を、前述のアミン化合物により封鎖する場合、アミン化合物の使用量は、ポリマー(A)の末端のハロゲン基1モルに対して、0.8モル以上が好ましく、0.8モル以上5.0モル以下がより好ましく、0.9モル以上2.0モル以下がより好ましい。
また、ハロゲン末端の封鎖に使用されるアミン化合物の使用量は、ポリマー(A)の製造に使用された式(A3)で表されるトリアジン化合物1モルに対して、0.5モル以上10モル以下であってもよい。
ハロゲン末端を有するポリマー(A)の末端の、アミン化合物による封鎖は、典型的には有機溶媒中で行われる。有機溶媒としては、ポリマー(A)の製造において使用できる、前述の有機溶媒を使用できる。
有機溶媒の使用量は、反応が良好に進行する限り特に限定されない。有機溶媒の使用量は、ハロゲン末端を有するポリマー(A)100質量部に対して、100質量部以上5000質量部以下が好ましく、200質量部以上4000質量部以下がより好ましい。
ポリマー(A)が有するハロゲン末端を、アミン化合物と反応させる温度は、例えば、0℃以上200℃以下が好ましく、20℃以上150℃以下がより好ましい。
反応時間は、特に限定されない。例えば、反応時間は、5分以上24時間以下が好ましく、10分以上18時間以下がより好ましく、30分以上12時間以下がさらに好ましい。
【0085】
<架橋性化合物(B)>
架橋性化合物(B)は、2以上の架橋性基と、トリアジン環、置換基を有してもよいフルオレン環、又は置換基を有してもよいビナフタレン環とを含む芳香族化合物(Bi)であるか、2以上の架橋性基を含む含硫黄化合物(Bii)であるか、2以上のイソシアネート基を含むイソシアネート化合物(Biii)である。
含硫黄化合物(Bii)は、芳香族化合物(Bi)に該当しない化合物である。
イソシアネート化合物(Biii)は、芳香族化合物(Bi)、及び含硫黄化合物(Bii)に該当しない化合物である。
架橋性基は、フェノール性水酸基、アミノ基、又はカルボキシ基と反応して架橋し得る基である。架橋性基の好適な例としては、エポキシ基、エピスルフィド基、及びイソシアネート基が挙げられる。
【0086】
上記の架橋性化合物(B)が、前述のポリマー(A)に由来する、脱保護により生成したフェノール性水酸基、アミノ基、又はカルボキシ基を有するポリマー(A’)を架橋することにより、熱硬化性組成物を用いて、屈折率の高い硬化物を形成できる。
特に、上記の架橋性化合物(B)が、イソシアネート化合物(Biii)である場合、架橋部位にカルボニル基を有するため屈折率が低下しないという点で好ましい。
【0087】
以下、2以上の架橋性基と、トリアジン環とを含む化合物を「架橋性トリアジン化合物(Bi-1)」とも記す。2以上の架橋性基と、フルオレン環とを含む化合物を「架橋性フルオレン化合物(Bi-2)」とも記す。2以上の架橋性基と、ビナフタレン環とを含む化合物を「架橋性ビナフタレン化合物(Bi-3)」とも記す。
【0088】
〔架橋性トリアジン化合物(Bi-1)〕
架橋性トリアジン化合物としては、下記式(b1)で表される化合物が好ましい。
【化19】
【0089】
式(b1)において、Arb1、Arb2、及びArb3は、それぞれ独立に、芳香族基含有基である。Rb1、Rb2、及びRb3は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-O-CO-NH-Xb4-NCOで表される基、グリシジルオキシ基、又はチイラン-2-イルメチルオキシ基である。Xb1、Xb2、及びXb3は、それぞれ独立に、-NRb4-、-O-、又は-S-である。Xb4は、2価の有機基である。Rb1、Rb2、及びRb3のうちの2つ、又は3つが、グリシジルオキシ基、又はチイラン-2-イルメチルオキシ基である。Rb4は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。Xb1は、Arb1としての芳香族基含有基中の芳香環に結合する。Xb2は、Arb2としての芳香族基含有基中の芳香環に結合する。Xb3は、Arb3としての芳香族基含有基中の芳香環に結合する。
【0090】
式(b1)における、Arb1、Arb2、及びArb3としての芳香族基含有基は、前述の式(a1)における、Arとしての芳香族基含有基と同様である。Arb1、Arb2、及びArb3は、同一の芳香族基含有基であるのが好ましい。
式(b1)における、Rb4は、前述の式(a1)における、Ra2と同様である。
【0091】
b1、Rb2、及びRb3としてのアルキル基の炭素原子数は特に限定されない。Rb1、Rb2、及びRb3としてのアルキル基の炭素原子数は、1以上6以下が好ましく、1以上4以下がより好ましい。
b1、Rb2、及びRb3としてのアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、及びn-ヘキシル基が挙げられる。
【0092】
b1、Rb2、及びRb3としてのアルコキシ基の炭素原子数は特に限定されない。Rb1、Rb2、及びRb3としてのアルコキシ基の炭素原子数は、1以上6以下が好ましく、1以上4以下がより好ましい。
b1、Rb2、及びRb3としてのアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、及びn-ヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0093】
b1、Rb2、又はRb3が、-O-CO-NH-Xb4-NCOで表される基である場合、-O-CO-NH-Xb4-NCOで表される基は、Arb1、Arb2、及びArb3としての芳香族基含有基に結合する水酸基に、過剰量のジイソシアネート化合物を反応させることにより、式(b1)で表される化合物中に導入され得る。
b4は、2価の有機基である。Xb4は、2価の有機基であり、典型的にはジイソシアネート化合物から2つのイソシアネート基を除いた残基である。
【0094】
-O-CO-NH-Xb4-NCOで表される基の導入に使用できるジイソシアネート化合物の例としては、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、及びダイマー酸ジイソシアネート等の鎖状脂肪族ジイソシアネート;1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、3-イソシアナトメチル-3,3,5-トリメチルシクロヘキシルシソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、ビス-(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、及びノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、及びα,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0095】
b1、Rb2、及びRb3としては、架橋性を有する基である、-Xb4-CO-NH-Xb5-NCOで表される基、グリシジルオキシ基、及びチイラン-2-イルメチルオキシ基が好ましく、グリシジルオキシ基、及びチイラン-2-イルメチルオキシ基がより好ましい。
【0096】
式(b1)で表される化合物の好適な例としては、下記の化合物が挙げられる。
【化20】
【0097】
【化21】
【0098】
【化22】
【0099】
【化23】
【0100】
〔架橋性フルオレン化合物(Bi-2)〕
架橋性フルオレン化合物(Bi-2)としては、合成や入手が容易であり、架橋反応性が良好であり、屈折率の高い硬化物を得やすい点で、下記式(b2)で表される化合物が好ましい。
【化24】
(式(b2)中、W及びWは、それぞれ独立に、下記式(b2-1):
【化25】
で表される基であり、
式(b2-1)中、環Zは芳香族炭化水素環を示し、Xは単結合又は-S-で示される基を示し、Rは単結合、炭素原子数が1以上4以下であるアルキレン基、又は炭素原子数が1以上4以下であるアルキレンオキシ基を示し、Rがアルキレンオキシ基である場合、アルキレンオキシ基中の酸素原子が環Zと結合し、Rは1価炭化水素基、水酸基、-OR4aで示される基、-SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシ基、アミノ基、カルバモイル基、-NHR4cで示される基、-N(R4dで示される基、スルホ基、又は1価炭化水素基、-OR4aで示される基、-SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、-NHR4cで示される基、もしくは-N(R4dで示される基に含まれる炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一部が1価炭化水素基、水酸基、-OR4aで示される基、-SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシ基、アミノ基、カルバモイル基、-NHR4cで示される基、-N(R4dで示される基、メシルオキシ基、もしくはスルホ基で置換された基を示し、R4a~R4dは独立に1価炭化水素基を示し、mは0以上の整数を示し、Rは、-CO-NH-Xb4-NCOで表される基、チイラン-2-イルメチル基、又はグリシジル基であり、
環Y及び環Yは同一の又は異なる芳香族炭化水素環を示し、R3a及びR3bは独立にシアノ基、ハロゲン原子、又は1価炭化水素基を示し、n1及びn2は独立に0以上4以下の整数を示す。)
【0101】
上記式(b2-1)において、環Zとしては、例えば、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環[例えば、縮合二環式炭化水素環(例えば、ナフタレン環等のC8-20縮合二環式炭化水素環、好ましくはC10-16縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式芳香族炭化水素環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環等)等の縮合2乃至4環式芳香族炭化水素環]等が挙げられる。環Zは、ベンゼン環又はナフタレン環であるのが好ましく、ナフタレン環であるのがより好ましい。なお、式(b2)中のW及びWは、それぞれ独立に、式(b2-1)で表される基であるため、W及びWは、それぞれ環Zを含む。Wに含まれる環ZとWに含まれる環Zとは、同一でも異なっていてもよく、例えば、一方の環がベンゼン環、他方の環がナフタレン環等であってもよいが、いずれの環もナフタレン環であることが特に好ましい。
【0102】
また、W及びWの両方が直結する炭素原子にXを介して結合する環Zの置換位置は、特に限定されない。例えば、環Zがナフタレン環の場合、上記炭素原子に結合する環Zに対応する基は、1-ナフチル基、2-ナフチル基等であってもよい。
【0103】
式(b2-1)において、Xは、独立に単結合又は-S-で示される基を示し、典型的には単結合である。
【0104】
式(b2-1)において、Rとしては、例えば、単結合;メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブタン-1,2-ジイル基等の炭素原子数が1以上4以下であるアルキレン基;メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基等の炭素原子数が1以上4以下であるアルキレンオキシ基が挙げられ、単結合;C2-4アルキレン基(特に、エチレン基、プロピレン基等のC2-3アルキレン基);C2-4アルキレンオキシ基(特に、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基等のC2-3アルキレン基)が好ましく、単結合がより好ましい。なお、Rがアルキレンオキシ基である場合、アルキレンオキシ基中の酸素原子が環Zと結合する。また、式(b2)中のW及びWは、それぞれ独立に、式(b2-1)で表される基であるため、W及びWは、それぞれ2価の基であるRを含む。Wに含まれるRとWに含まれるRとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0105】
式(b2-1)において、Rとしては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のC1-12アルキル基、好ましくはC1-8アルキル基、より好ましくはC1-6アルキル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基等のC5-10シクロアルキル基、好ましくはC5-8シクロアルキル基、より好ましくはC5-6シクロアルキル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のC6-14アリール基、好ましくはC6-10アリール基、より好ましくはC6-8アリール基等)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基等のC6-10アリール-C1-4アルキル基等)等の1価炭化水素基;水酸基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のC1-12アルコキシ基、好ましくはC1-8アルコキシ基、より好ましくはC1-6アルコキシ基等)、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等のC5-10シクロアルコキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基等のC6-10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等のC6-10アリール-C1-4アルキルオキシ基)等の-OR4aで示される基[式中、R4aは1価炭化水素基(上記例示の1価炭化水素基等)を示す。];アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等のC1-12アルキルチオ基、好ましくはC1-8アルキルチオ基、より好ましくはC1-6アルキルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(シクロヘキシルチオ基等のC5-10シクロアルキルチオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基等のC6-10アリールチオ基)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基等のC6-10アリール-C1-4アルキルチオ基)等の-SR4bで示される基[式中、R4bは1価炭化水素基(上記例示の1価炭化水素基等)を示す。];アシル基(アセチル基等のC1-6アシル基等);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基等のC1-4アルコキシ-カルボニル基等);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等);ニトロ基;シアノ基;メルカプト基;カルボキシ基;アミノ基;カルバモイル基;アルキルアミノ基(メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基等のC1-12アルキルアミノ基、好ましくはC1-8アルキルアミノ基、より好ましくはC1-6アルキルアミノ基等)、シクロアルキルアミノ基(シクロヘキシルアミノ基等のC5-10シクロアルキルアミノ基等)、アリールアミノ基(フェニルアミノ基等のC6-10アリールアミノ基)、アラルキルアミノ基(例えば、ベンジルアミノ基等のC6-10アリール-C1-4アルキルアミノ基)等の-NHR4cで示される基[式中、R4cは1価炭化水素基(上記例示の1価炭化水素基等)を示す。];ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基等のジ(C1-12アルキル)アミノ基、好ましくはジ(C1-8アルキル)アミノ基、より好ましくはジ(C1-6アルキル)アミノ基等)、ジシクロアルキルアミノ基(ジシクロヘキシルアミノ基等のジ(C5-10シクロアルキル)アミノ基等)、ジアリールアミノ基(ジフェニルアミノ基等のジ(C6-10アリール)アミノ基)、ジアラルキルアミノ基(例えば、ジベンジルアミノ基等のジ(C6-10アリール-C1-4アルキル)アミノ基)等の-N(R4dで示される基[式中、R4dは独立に1価炭化水素基(上記例示の1価炭化水素基等)を示す。];(メタ)アクリロイルオキシ基;スルホ基;上記の1価炭化水素基、-OR4aで示される基、-SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、-NHR4cで示される基、もしくは-N(R4dで示される基に含まれる炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一部が上記の1価炭化水素基、水酸基、-OR4aで示される基、-SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシ基、アミノ基、カルバモイル基、-NHR4cで示される基、-N(R4dで示される基、(メタ)アクリロイルオキシ基、メシルオキシ基、もしくはスルホ基で置換された基[例えば、アルコキシアリール基(例えば、メトキシフェニル基等のC1-4アルコキシC6-10アリール基)、アルコキシカルボニルアリール基(例えば、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基等のC1-4アルコキシ-カルボニルC6-10アリール基等)]等が挙げられる。
【0106】
これらのうち、代表的には、Rは、1価炭化水素基、-OR4aで示される基、-SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-NHR4cで示される基、-N(R4dで示される基等であってもよい。
【0107】
好ましいRとしては、1価炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C1-6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C5-8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6-10アリール基)、アラルキル基(例えば、C6-8アリール-C1-2アルキル基)等]、アルコキシ基(C1-4アルコキシ基等)等が挙げられる。特に、R2a及びR2bは、アルキル基[C1-4アルキル基(特にメチル基)等]、アリール基[例えば、C6-10アリール基(特にフェニル基)等]等の1価炭化水素基(特に、アルキル基)であるのが好ましい。
【0108】
なお、mが2以上の整数である場合、複数のRは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、Wに含まれるRとWに含まれるRとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0109】
式(b2-1)において、Rの数mは、環Zの種類に応じて選択でき、例えば、0以上4以下、好ましくは0以上3以下、より好ましくは0以上2以下であってもよい。なお、WにおけるmとWにおけるmとは、同一でも異なっていてもよい。
【0110】
上記式(b2-1)において、Rは、-CO-NH-Xb4-NCOで表される基、チイラン-2-イルメチル基、又はグリシジル基である。これらの基の中では、チイラン-2-イルメチル基、及びグリシジル基が好ましい。-CO-NH-Xb4-NCOで表される基について、式(b1)について前述した、-O-CO-NH-Xb4-NCOで表される基と同様である。
【0111】
に含まれるRとWに含まれるRとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。Wに含まれるRとWに含まれるRとは、双方が、チイラン-2-イルメチル基、又はグリシジル基であるのが好ましく、双方が、チイラン-2-イルメチル基、及びグリシジル基からなる群より選択される同一の基であるのがより好ましい。
【0112】
上記式(b2)において、環Y及び環Yとしては、例えば、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環[例えば、縮合二環式炭化水素環(例えば、ナフタレン環等のC8-20縮合二環式炭化水素環、好ましくはC10-16縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式芳香族炭化水素環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環等)等の縮合2乃至4環式芳香族炭化水素環]等が挙げられる。環Y及び環Yは、ベンゼン環又はナフタレン環であるのが好ましく、ベンゼン環であるのがより好ましい。なお、環Y及び環Yは、同一でも異なっていてもよく、例えば、一方の環がベンゼン環、他方の環がナフタレン環等であってもよい。
【0113】
上記式(a1)において、R3a及びR3bとしては、通常、非反応性置換基、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、1価炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基等のC6-10アリール基)等]等が挙げられ、シアノ基又はアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基等のC1-6アルキル基(例えば、C1-4アルキル基、特にメチル基)等が例示できる。なお、n1が2以上の整数である場合、R3aは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、n2が2以上の整数である場合、R3bは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。さらに、R3aとR3bとが同一であってもよく、異なっていてもよい。また、環Y及び環Yに対するR3a及びR3bの結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数n1及びn2は、0又は1、特に0である。なお、n1及びn2は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0114】
上記式(b2)で表される化合物のうち、特に好ましい具体例としては、9,9-ビス[4-[2-(グリシジルオキシ)エトキシ]フェニル]-9H-フルオレン、9,9-ビス[4-[2-(グリシジルオキシ)エチル]フェニル]-9H-フルオレン、9,9-ビス[4-(グリシジルオキシ)-3-メチルフェニル]-9H-フルオレン、9,9-ビス[4-(グリシジルオキシ)-3,5-ジメチルフェニル]-9H-フルオレン、9,9-ビス(6‐グリシジルオキシナフタレン-1-イル)-9H-フルオレン及び9,9-ビス(5‐グリシジルオキシナフタレン-2-イル)-9H-フルオレン等のエポキシ基含有フルオレン化合物;並びに下記式で表される化合物が挙げられる。
【0115】
【化26】
【0116】
【化27】
【0117】
【化28】
【0118】
【化29】
【0119】
【化30】
【0120】
〔架橋性ビナフタレン化合物(Bi-3)〕
架橋性ビナフタレン化合物(Bi-3)としては、1,1’-ビナフタレン等のビナフタレン上に、-O-CO-NH-Xb4-NCOで表される基、グリシジルオキシ基、及びチイラン-2-イルメチルオキシ基から選択される基が2つ以上結合した化合物が好ましい。-O-CO-NH-Xb4-NCOで表される基、グリシジルオキシ基、及びチイラン-2-イルメチルオキシ基の中では、グリシジルオキシ基、及びチイラン-2-イルメチルオキシ基が好ましい。
-O-CO-NH-Xb4-NCOで表される基について、式(b1)について前述した、-O-CO-NH-Xb4-NCOで表される基と同様である。
架橋性ビナフタレン化合物(Bi-3)が有する、グリシジルオキシ基、及びチイラン-2-イルメチルオキシ基から選択される基の数は、2以上4以下が好ましく、2、又は3がより好ましく、2がさらに好ましい。
【0121】
架橋性ビナフタレン化合物(B3)の好適な具体例としては、2,2’-ジグリシジルオキシ-1,1’-ビナフタレン、2,2’-ジグリシジルオキシ-3,3’-ジグリシジルオキシカルボニル-1,1’-ビナフタレン、2,2’-ジグリシジルオキシ-6,6’-ジグリシジルオキシカルボニル-1,1’-ビナフタレン、2,2’-ジ(チイラン-2-イルメチル)オキシ-1,1’-ビナフタレン、2,2’-ジ(チイラン-2-イルメチル)オキシ-3,3’-ジ(チイラン-2-イルメチル)オキシカルボニル-1,1’-ビナフタレン、及び2,2’-ジ(チイラン-2-イルメチル)オキシ-6,6’-ジ(チイラン-2-イルメチル)オキシカルボニル-1,1’-ビナフタレンが挙げられる。
【0122】
〔含硫黄化合物(Bii)〕
含硫黄化合物(Bii)は、2以上の架橋性基を含む含硫黄化合物である。架橋性基は、前述した通りである。ただし、エピスルフィド基に含まれる硫黄原子以外に硫黄原子を含まない化合物は、含硫黄化合物(Bii)に該当しない。
【0123】
含硫黄化合物(Bii)が有する架橋性基としては、グリシジル基、及びチイラン-2-イルメチル基が好ましく、チイラン-2-イルメチル基がより好ましい。
【0124】
含硫黄化合物(Bii)の好適な例として、下記式(b4-1)で表される化合物が挙げられる。
b5-CH-S-[-(CH-S-]-CH-Rb5・・・(b4-1)
式(b4-1)において、Rb5は、チイラン-2-イル基である。pは、0以上4以下の整数である。qは0以上2以下の整数である。
式(b4-1)で表される化合物の具体例としては、ビス(チイラン-2-イルメチル)スルフィド、ビス(チイラン-2-イルメチル)メタン、1,2-ビス(チイラン-2-イルメチル)エタン、1,3-ビス(チイラン-2-イルメチル)プロパン、1,4-ビス(チイラン-2-イルメチル)ブタン、及びビス(チイラン-2-イルメチルチオエチル)スルフィドが挙げられる。
【0125】
含硫黄化合物(Bii)の好適な例として、下記式(b4-2)で表される化合物が挙げられる。
b5-CH-S-(CH-CHX-(CH-S-CH-Rb5・・・(b4-2)
式(b4-2)において、Rb5は、チイラン-2-イル基である。CHXは、シクロヘキサンジイル基である。r、及びsは、それぞれ独立に、0以上4以下の整数である。
式(b4-2)で表される化合物の具体例としては、1,3-ビス(チイラン-2-イルメチルチオ)シクロヘキサン、1,4-ビス(チイラン-2-イルメチルチオ)シクロヘキサン、1,3-ビス(チイラン-2-イルメチルチオメチル)シクロヘキサン、及び1,4-ビス(チイラン-2-イルメチルチオメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0126】
含硫黄化合物(Bii)の好適な例として、下記式(b4-3)で表される化合物が挙げられる。
b5-CH-S-(CH-DTA-(CH-S-CH-Rb5・・・(b4-3)
式(b4-3)において、Rb5は、チイラン-2-イル基である。DTAは、1,4-ジチアンジイル基である。t、及びuは、それぞれ独立に、0以上4以下の整数である。
式(b4-3)で表される化合物の具体例としては、2,5-ビス(チイラン-2-イルメチルチオ)-1,4-ジチアン、及び2,5-ビス(チイラン-2-イルメチルチオメチル)-1,4-ジチアンが挙げられる。
【0127】
含硫黄化合物(Bii)の好適な例として、下記式(b4-4)で表される化合物が挙げられる。
b5-CH-S-(CH-Ph-(CH-S-CH-Rb5・・・(b4-4)
式(b4-4)において、Rb5は、チイラン-2-イル基である。Phは、フェニレン基である。v、及びwは、それぞれ独立に、0以上4以下の整数である。
式(b4-4)で表される化合物の具体例としては、1,3-ビス(チイラン-2-イルメチルチオ)ベンゼン、1,4-ビス(チイラン-2-イルメチルチオ)ベンゼン、1,3-ビス(チイラン-2-イルメチルチオメチル)ベンゼン、及び1,4-ビス(チイラン-2-イルメチルチオメチル)ベンゼンが挙げられる。
【0128】
〔イソシアネート化合物(Biii)〕
イソシアネート化合物(Biii)は、1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物である。イソシアネート化合物(Biii)は、芳香族化合物(Bi)、及び含硫黄化合物(Bii)に該当しない化合物である。
【0129】
熱硬化性組成物の経時安定性が良好である点からは、イソシアネート化合物(Biii)は、公知のブロック剤と反応したブロックイソシアネート化合物として使用されるのが好ましい。ブロックイソシアネート化合物では、反応性に富むイソシアネート基がブロック剤で封止されているため、ブロックイソシアネート化合物を含む熱硬化性組成物の経時安定性が良好である。
【0130】
イソシアネート化合物(Biii)は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されない。公知のイソシアネート化合物(Biii)としては、鎖状脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートやこれらの変性ポリイソシアネート等が挙げられる。芳香族ポリイソシアネートは、芳香族基を有するポリイソシアネートである。芳香族ポリイソシアネートにおいて、イソシアネート基は、芳香族基に結合しても、脂肪族基に結合していてもよい。
これらのイソシアネート化合物(Biii)は、単独で使用されても、2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0131】
鎖状脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、及びダイマー酸ジイソシアネート等が挙げられる。
【0132】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、3-イソシアナトメチル-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、ビス-(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、及びノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0133】
芳香族基に結合するイソシアネート基を有する芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、及び1,5-ナフチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0134】
脂肪族基に結合するイソシアネート基を有する芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0135】
ブロック剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、2-エチルヘキサノール、及びブチルセロソルブ等のアルカノール類;フェノール、クレゾール、及び2-ヒドロキシピリジン等のフェノール類;ジイソプロピルアミン等のアミン類;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、及びγ-ブチロラクタム等のラクタム類;ホルムアルデヒドオキシム、アセトアルデヒドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、及びメチルイソブチルケトオキシム等のオキシム類;アセチルアセトン等のケトエノール類;1,2-ピラゾール、及び3,5-ジメチルピラゾール等のピラゾール類;トリアゾール等のトリアゾール類等が挙げられる。
これらのブロック剤の中では、ラクタム類、オキシム類、及びピラゾール類が好ましく、ε-カプロラクタム、メチルエチルケトオキシム、及び3,5-ジメチルピラゾールがより好ましい。
【0136】
熱硬化性組成物における、架橋性化合物(B)の使用量は、所望する効果が損なわれない範囲で特に限定されない。熱硬化性組成物の硬化性が良好であり、硬化物の耐溶剤性が優れる点で、熱硬化性組成物における架橋性化合物(B)の使用量は、ポリマー(A)100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下が好ましく、30質量部以上150質量部以下がより好ましい。
【0137】
<有機溶媒(S)>
有機溶媒(S)としては、ポリマー(A)を溶解させることができる溶媒を好ましく使用できる。有機溶媒(S)としては、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルプロピオン酸アミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピペリドン、N-アセチルピロリジン、N,N’-ジメチルエチレン尿素(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)、N,N’-ジメチルプロピレン尿素、N,N,N’,N’-テトラメチルマロン酸アミド、N-メチルカプロラクタム、及びN,N,N’,N’-テトラメチルウレア等の含窒素極性有機溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn-ブチルケトン、シクロペンタノン、及びシクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、及び1,4-ジオキサン等のエーテル類;トルエン、p-キシレン、o-キシレン、m-キシレン、エチルベンゼン、及びスチレン等の芳香族炭化水素;エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコール類のモノアルキルエーテルアセテート;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、及び1-メトキシ-2-ブタノール等のグリコール類のモノアルキルエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、及びトリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコール類のジアルキルエーテル;エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ヘキシレングリコール、及びジエチレングリコール等のグリコール類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、1-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、2-メチル-1-ペンタノール、1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、アリルアルコール、1-メトキシ-2-ブタノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、及びベンジルアルコール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、及び酢酸イソブチル等のエステル類;γ-ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
ポリマー(A)が特に良好に溶解しやすい点から、有機溶媒(S)が、ケトン系溶媒、又は含窒素極性有機溶媒を含むのが好ましい。
【0138】
有機溶媒(S)の使用量は、熱硬化性組成物を所望する形状に成形可能である限り特限定されない。有機溶媒(S)は、熱硬化性組成物の固形分濃度が、好ましくは1質量%以上50質量%以下、より好ましくは5質量%以上40質量%以下であるように使用される。
【0139】
<熱酸発生剤(C)>
ポリマー(A)が、Ra1として酸解離性基で保護されたカルボキシ基を有する場合、熱硬化性組成物は、さらに熱酸発生剤(C)を含む。
熱酸発生剤(C)としては、加熱により酸を発生させる化合物であれば特に限定されない。熱酸発生剤(C)としては、公知の熱酸発生剤が適宜選択されうる。
熱酸発生剤(C)としては、加熱による酸発生能の点で、オニウム塩型熱酸発生剤が好ましい。オニウム塩としては、スルホニウムイオン、アンモニウムイオン、ヨードニウムイオン、及びホスホニウムイオンが挙げられる。これらは、安定で取り扱いが容易なため好ましい。これらのオニウム塩の中では、スルホニウムイオン、及びヨードニウムイオンがより好ましく、スルホニウムイオンがより好ましい。
【0140】
熱酸発生剤(C)の使用量は、所望する効果が損なわれない限り特に限定されない。熱酸発生剤(C)の使用量は、熱硬化性組成物の固形分の質量に対して、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、0.5質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0141】
<界面活性剤(D)>
熱硬化性組成物は、成膜性、塗布性、消泡性、レベリング性等を向上させるため、さらに界面活性剤(表面調整剤)を含有してもよい。界面活性剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、高分子湿潤分散剤が挙げられ、特に成膜性向上の観点で、高分子湿潤分散剤が好ましい。
【0142】
シリコーン系界面活性剤としては、具体的には、BYK-077、BYK-085、BYK-300、BYK-301、BYK-302、BYK-306、BYK-307、BYK-310、BYK-320、BYK-322、BYK-323、BYK-325、BYK-330、BYK-331、BYK-333、BYK-335、BYK-341、BYK-344、BYK-345、BYK-346、BYK-348、BYK-354、BYK-355、BYK-356、BYK-358、BYK-361、BYK-370、BYK-371、BYK-375、BYK-380、BYK-390(BYK Chemie社製)等が挙げられる。
【0143】
フッ素系界面活性剤としては、具体的には、F-114、F-177、F-410、F-411、F-450、F-493、F-494、F-443、F-444、F-445、F-446、F-470、F-471、F-472SF、F-474、F-475、F-477、F-478、F-479、F-480SF、F-482、F-483、F-484、F-486、F-487、F-172D、MCF-350SF、TF-1025SF、TF-1117SF、TF-1026SF、TF-1128、TF-1127、TF-1129、TF-1126、TF-1130、TF-1116SF、TF-1131、TF-1132、TF-1027SF、TF-1441、TF-1442(DIC社製);ポリフォックスシリーズのPF-636、PF-6320、PF-656、PF-6520(オムノバ社製)等が挙げられる。
【0144】
高分子湿潤分散剤としては、具体的には、BYK-140、BYK-145、BYK-161、BYK-162、BYK-163、BYK-164、BYK-167、BYK-168、BYK-170、BYK-171、BYK-174、BYK-180、BYK-182、BYK-184、BYK-185、BYK-2050、BYK-2055、BYK-2015、BYK-9077(BYK Chemie社製)等が挙げられる。
【0145】
界面活性剤の使用量は特に限定されない。熱硬化性組成物の成膜性、塗布性、消泡性、レベリング性の点等から、界面活性剤の使用量は、熱硬化性組成物の固形分の質量に対して、例えば、0.01質量%以上2質量%以下が好ましく、0.05質量%以上1質量以下がより好ましい。
【0146】
<その他の成分>
熱硬化性組成物は、必要に応じて、消泡剤、シランカップリング剤、着色剤(顔料、染料)、架橋剤等の添加剤を含んでいてもよい。いずれの添加剤も、従来公知の化合物を用いることができる。
【0147】
<熱硬化性組成物の製造方法>
熱硬化性組成物は、以上説明した必須の成分に対して、必要に応じて任意の成分を混合した後、各成分を有機溶媒(S)に均一に溶解させることにより製造することができる。熱硬化性組成物は、必要に応じて、所望する目開きのフィルターを用いてろ過されてもよい。
【0148】
≪硬化物の製造方法≫
前述の熱硬化性組成物を、成形することと、
成形された熱硬化性組成物を加熱して硬化させることと、を含む方法により、硬化物を製造できる。
【0149】
成形方法としては特に限定されず、硬化物の形状に応じて適宜選択される。成形方法としては、例えば、塗布や、型への注型等が挙げられる。また、いわゆる3Dプリンティング法を用いて、熱硬化性組成物を所望する立体形状に成形することもできる。
以下、硬化物の製造方法の代表例として、フィルムの製造方法について説明する。
【0150】
まず、熱硬化性組成物を、所望する基板上に塗布して塗布膜を形成する。
【0151】
基板上に熱硬化性組成物を塗布する方法は、特に限定されない。例えば、ロールコーター、リバースコーター、バーコーター、スリットコーター等の接触転写型塗布装置や、スピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いて、熱硬化性組成物を基板上に所望の膜厚となるよう塗布して塗布膜を形成できる。
【0152】
次いで、塗布膜を加熱し、塗布膜から有機溶媒(S)を除去しつつ熱硬化性組成物を硬化させる。加熱温度は、有機溶媒(S)の沸点や、酸発生剤(C)が酸を発生させる温度等を勘案して適宜決定される。
塗布膜を加熱する温度は、例えば、100℃以上400℃以下が好ましく、150℃以上300℃以下がより好ましい。加熱時間は、30秒以上30分以下が好ましく、1分以上10分以下がより好ましい。
【0153】
このようにして得られる硬化物は、高い屈折率を示す。具体的には、硬化物の屈折率は、波長550nmの光線の屈折率として、1.72以上が好ましく、1.74以上がより好ましい。
このような高い屈折率を示す硬化物は、硬化膜、又はマイクロレンズの材料として好適に用いられる。硬化膜は、種々の光学素子において、高屈折率膜として使用され得る。マイクロレンズとしての硬化物は、CCDやCMOS等の光学素子において特に好適に使用され得る。
【0154】
以上の通り、本発明者により、以下の(1)~(11)が提供される。
(1)トリアジン環含有ポリマー(A)と、架橋性化合物(B)と、有機溶媒(S)とを含む熱硬化性組成物であって、
トリアジン環含有ポリマーが、下記式(A1):
【化31】
(式(A1)中、Ar、及びArは、芳香族基含有基であり、Ra1は、tert-ブトキシカルボニルオキシ基、tert-ブトキシカルボニルアミノ基、又は酸解離性基により保護されたカルボキシ基であり、X、及びXは、それぞれ独立に、-NRa2-、-O-、又は-S-であり、Ra2は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基であり、Xは、Arとしての前記芳香族基含有基中の芳香環に結合し、Xは、Arとしての前記芳香族基含有基中の芳香環に結合する。)
で表される構成単位を含み、
架橋性化合物(B)が、2以上の架橋性基と、トリアジン環、置換基を有してもよいフルオレン環、又は置換基を有してもよいビナフタレン環とを含む芳香族化合物(Bi)であるか、2以上の架橋性基を含む含硫黄化合物(Bii)であるか、2以上のイソシアネート基を含むイソシアネート化合物(Biii)であり、
含硫黄化合物(Bii)は、芳香族化合物(Bi)に該当しない化合物であり、
イソシアネート化合物(Biii)は、芳香族化合物(Bi)、及び含硫黄化合物(Bii)に該当しない化合物であり、
a1が、酸解離性基により保護されたカルボキシ基である場合、熱硬化性組成物が、さらに熱酸発生剤(C)を含む、熱硬化性組成物。
(2)Ra1が、tert-ブトキシカルボニルオキシ基である、(1)に記載の熱硬化性組成物。
(3)架橋性基が、エポキシ基、エピスルフィド基、又はイソシアネート基である、(1)、又は(2)に記載の熱硬化性組成物。
(4)有機溶媒(S)が、ケトン系溶媒、又は含窒素極性有機溶媒である、(1)~(3)のいずれか1つに記載の熱硬化性組成物。
(5)(1)~(4)のいずれか1つに記載の熱硬化組成物を、成形することと、
成形された熱硬化性組成物を加熱して硬化させることと、を含む硬化物の製造方法。
(6)熱硬化性組成物が、熱硬化性組成物を基板上に塗布することにより膜状に成形される、(5)に記載の硬化物の製造方法。
(7)(1)~(4)のいずれか1つに記載の熱硬化性組成物の硬化物。
(8)波長550nmの光線の屈折率が1.72以上である、(7)に記載の硬化物。
(9)(7)、又は(8)に記載の硬化物からなる硬化膜。
(10)(7)、又は(8)に記載の硬化物からなるマイクロレンズ。
(11)(10)に記載のマイクロレンズを備える光学素子。
【実施例0155】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0156】
〔調製例1〕
容量500mLの三口フラスコに、p-アミノフェノール(16.4g、150mmol)及び二炭酸ジ-tert-ブチル(34.4g、158mmol)、及びテトラヒドロフラン(THF)300mLを加えて溶液を得た。次いで、フラスコ内に、4-N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP、3.66g、30mmol)を少しずつ加えた。DMAPの添加後、フラスコ内の溶液を、室温で一晩撹拌した。
一晩撹拌後、反応液からTHFを留去し、固体状の残渣を得た。
得られた残渣を、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、4-tert-ブトキシカルボニルオキシアニリン24.4gを得た。
【0157】
容量500mLの三口フラスコに、85mLのTHFに溶解した塩化シアヌル(4.41g、24mmol)を加え、フラスコ内の液を氷浴により0℃に冷却した。次いで、フラスコ内の液を撹拌しながら、85mLのTHFに溶解した4-tert-ブトキシカルボニルオキシアニリン(5.00g、24mmol)を、フラスコ内に滴下した。
滴下後、フラスコ内の反応液を、2時間撹拌し続けた。反応液を、分液漏斗に入れた後、分液漏斗内に、炭酸カリウム(3.34g、24mmol)が純水50mLに溶解した炭酸カリウム水溶液を加えた。分液漏斗内で有機相を、炭酸カリウム水溶液で洗浄した後、水相を分液により除去した。回収された有機相からTHFを除去して、固体状の残渣を得た。
得られた残渣を、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、下記構造のジハロトリアジン化合物である2,4-ジクロロ-6-(4-tert-ブトキシカルボニルオキシフェニル)アミノ-1,3,5-トリアジン5.9gを得た。
【化32】
【0158】
〔調製例2〕
容量500mLの三口フラスコに、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(4.39g、15mmmol)と、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)35mLとを加えて溶液を得た。フラスコ内の得られた溶液を、オイルバスにより100℃に加熱した。次いで、フラスコ内に、調整例1で得たジハロトリアジン化合物(5.35g、15mmol)がDMAc55mLに溶解した溶液を加えて重合を開始した。重合開始から3時間反応を行った後、反応液を室温まで冷却した。
フラスコ内に、濃度28質量%のアンモニア水溶液4gと、純水270mLと、メタノール100mLとを加え、フラスコ内の反応液から生成したポリマーを沈殿させた。
粗製ポリマーをろ過により回収した後、粗製ポリマーをヘキサン50mLで洗浄した。洗浄されたポリマーを、減圧乾燥機で100℃、10時間乾燥して、下記の構成単位からなるポリマーA-1を得た。
1.0gの得られたポリマーA-1を、9gのシクロペンタノン、N-メチル-2-ピロリドン、又はプロピレングリコールモノメチルエーテルと混合した。混合液に対して、30分間超音波を照射し、ポリマーA-1の各溶媒に対する溶解性を確認した。
超音波照射後、ポリマーA-1は、いずれの溶媒に対しても均一に溶解した。
【化33】
【0159】
〔調製例3〕
1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(15mmmol)を、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド(15mmmol)に変更することの他は、調製例2と同様にして、下記の構成単位からなるポリマーA-2を得た。
1.0gの得られたポリマーA-2を、9gのシクロペンタノン、N-メチル-2-ピロリドン、又はプロピレングリコールモノメチルエーテルと混合した。混合液に対して、30分間超音波を照射し、ポリマーA-2の各溶媒に対する溶解性を確認した。
超音波照射後、ポリマーA-2は、シクロペンタノン、及びN-メチル-2-ピロリドンに対しては均一に溶解した。ポリマーA-2は、プロピレングリコールモノメチルエーテルに対しては一部溶け残った。
【化34】
【0160】
〔調製例4〕
容量300mLの三口フラスコに、m-ニトロフェノール(9.74g、70mmol)及び二炭酸ジ-tert-ブチル(16.0g、74mmol)、及びテトラヒドロフラン(THF)140mLを加えて溶液を得た。次いで、フラスコ内に、4-N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP、1.71g、14mmol)を加えた。DMAPの添加後、フラスコ内の溶液を、室温で一晩撹拌した。
一晩撹拌後、反応液からTHFを留去し、固体状の残渣を得た。
得られた残渣を、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、3-tert-ブトキシカルボニルオキシニトロフェノール16.2gを得た。
【0161】
容量300mLの三口フラスコに、3-tert-ブトキシカルボニルオキシニトロフェノール(16.2g、68mmol)及びギ酸アンモニウム(21.3g、339mmol)、及びメタノール330mLを加えて溶液を得た。次いで、フラスコ内に、パラジウム/炭素(パラジウム5重量%、0.72g、0.339mmol(パラジウム換算))を加えた。パラジウム/炭素の添加後、フラスコ内の溶液を、室温で一晩撹拌した。
一晩撹拌後、反応液をセライトでろ過した。得られたろ液からメタノールを留去し、固体状の残渣を得た。
得られた残渣を、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、3-tert-ブトキシカルボニルオキシアニリン13.1gを得た。
【0162】
容量500mLの三口フラスコに、90mLのTHFに溶解した塩化シアヌル(11.5g、63mmol)を加え、フラスコ内の液を氷浴により0℃に冷却した。次いで、フラスコ内の液を撹拌しながら、90mLのTHFに溶解した3-tert-ブトキシカルボニルオキシアニリン(13.1g、63mmol)を、フラスコ内に滴下した。
滴下後、フラスコ内の反応液を、2時間撹拌し続けた。反応液に炭酸カリウム(5.19g、38mmol)が純水60mLに溶解した炭酸カリウム水溶液を加えて、室温で20分間撹拌した。反応混合液と400mLの酢酸エチルを分液漏斗に入れた後、水相を分液により除去した。回収された有機相からTHFと酢酸エチルを除去して、固体状の残渣を得た。
得られた残渣を、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、下記構造のジハロトリアジン化合物である2,4-ジクロロ-6-(3-tert-ブトキシカルボニルオキシフェニル)アミノ-1,3,5-トリアジン19.3gを得た。
得られた化合物のH NMRの測定結果を以下に記す。
H NMR(400MHz,CDCl):δ7.90(brs,1H),7.50(dd,JHH=2.4,2.0Hz,1H),7.35-7.27(m,2H),7.02-6.99 (m,1H),1.59(s,9H)
【化35】
【0163】
〔調製例5〕
2,4-ジクロロ-6-(4-tert-ブトキシカルボニルオキシフェニル)アミノ-1,3,5-トリアジン(15mmmol)を2,4-ジクロロ-6-(3-tert-ブトキシカルボニルオキシフェニル)アミノ-1,3,5-トリアジン(15mmmol)に変更し、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(15mmmol)をビス(4-アミノフェニルスルフィド(15mmmol)に変更することの他は、調製例2と同様にして、下記の構成単位からなるポリマーA-3を得た。
1.0gの得られたポリマーA-3を、9gのシクロペンタノン、N-メチル-2-ピロリドン、又はプロピレングリコールモノメチルエーテルと混合した。混合液に対して、30分間超音波を照射し、ポリマーA-3の各溶媒に対する溶解性を確認した。
超音波照射後、ポリマーA-3は、シクロペンタノン、及びN-メチル-2-ピロリドンに対しては均一に溶解した。ポリマーA-3は、プロピレングリコールモノメチルエーテルに対しては一部溶け残った。
【化36】
【0164】
〔調製例6〕
調製例1で得たジハロトリアジン化合物(15mmol)を、2,4-ジクロロ-6-フェニルアミノ-1,3,5-トリアジン(15mmol)に変更することの他は、調製例2と同様にして、下記の構成単位からなるポリマーA-4を得た。
【化37】
【0165】
〔調製例7〕
調製例1で得たジハロトリアジン化合物(15mmol)を、2,4-ジクロロ-6-フェニルアミノ-1,3,5-トリアジン(15mmol)に変更することの他は、調製例3と同様にして、下記の構成単位からなるポリマーA-5を得た。
【化38】
【0166】
〔実施例1~3、比較例1、及び比較例2〕
表1に記載の種類、及び量(質量部)のポリマーと、表1に記載の種類、及び量(質量部)の架橋性化合物と、フッ素系界面活性剤(PF-656、OMNOVA社製)0.003質量部とを、シクロペンタノン26.4質量部に溶解させて溶液を得た。得られた溶液を、目開き0.45μmのフィルターでろ過して、熱硬化性組成物を得た。
表1に記載の架橋性化合物B-1、及び架橋性化合物B-2は、それぞれ以下の化合物である。
B-1:2,4-ジ(4-グリシジルフェニルアミノ)-6-(4-シアノフェニルアミノ)-1,3,5-トリアジン
B-2:両末端のイソシアネート基が、3,5-ジメチルピラゾールによりブロックされた、ヘキサメチレンジイソシアネート(N,N’-ジ(3,5-ジメチルピラゾール-1-イルカルボニル)ヘキサメチレンジアミン)
得られた熱硬化性組成物の光線透過率を、以下の方法に従い評価した。評価結果を表1に記す。
得られた熱硬化性組成物を用いて、以下の方法でフィルムを形成した。以下の方法に従い、形成されたフィルムの光線透過率と、屈折率と、アセトン浸漬後の残膜率とを評価した。これらの測定結果を、表1に記す。
【0167】
<フィルム形成>
熱硬化性組成物を、ガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布した。形成された塗布膜を、100℃で1分間加熱し、次いで200℃で5分間加熱して、厚さ約1μmのフィルムを得た。
【0168】
<光線透過率評価>
形成されたフィルムの減衰係数(k値)を、分光エリプソメーターにより測定し、波長400nmにおけるフィルムの光線透過率を算出した。算出された光線透過率が90%以上である場合を○と判定し、90%未満である場合を×と判定した。
【0169】
<屈折率測定>
分光エリプソメーターを用いて、波長550nmにおける得られたフィルムの屈折率を測定した。屈折率が1.74以上である場合を◎と判定した。屈折率が1.72以上1.74未満である場合を○と判定した。屈折率が1.72未満である場合を×と判定した。
【0170】
<残膜率測定>
得られたフィルムを、室温でアセトンに10分間浸漬した。浸漬前のフィルムの膜厚T1と、浸漬後のフィルムの膜厚T2とを測定した。下記式に基づいて、残膜率を算出した。残膜率が90%以上である場合を○と判定した。残膜率が90%未満である場合を×と判定した。
残膜率(%)=T2/T1×100
【0171】
【表1】
【0172】
実施例1~4によれば、前述の式(A1)で表される単位(A1)を含むポリマーを用いると、高い屈折率と、高い有機溶剤耐性とを兼ね備える硬化物を形成できることが分かる。
他方、比較例1、及び比較例2によれば、前述の式(A1)に該当しない構造の構成単位からなるポリマーを用いると、高い屈折率と、高い有機溶剤耐性とを兼ね備える硬化物を形成しにくいことが分かる。
【0173】
〔調製例8〕
3-tert-ブトキシカルボニルオキシアニリンを、3-tert-ブトキシカルボニルアミノアニリンに変えることの他は、調製例4と同様にして、下記構造のジハロトリアジン化合物である2,4-ジクロロ-6-(3-tert-ブトキシカルボニルアミノフェニル)アミノ-1,3,5-トリアジン19.0gを得た。
得られた化合物のH NMRの測定結果を以下に記す。
H NMR(400MHz,DMSO-d6):δ11.06(brs,1H),9.47(brs,1H),7.72(s,1H),7.72-7.20(m,3H),1.48(s,9H)
【化39】
【0174】
容量500mLの三口フラスコに、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド(15mmmol)と、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)35mLとを加えて溶液を得た。フラスコ内の得られた溶液を、オイルバスにより60℃に加熱した。次いで、フラスコ内に、2,4-ジクロロ-6-(3-tert-ブトキシカルボニルアミノフェニル)アミノ-1,3,5-トリアジン(15mmmol)がDMAc55mLに溶解した溶液を加えて重合を開始した。重合開始から6時間反応を行った後、反応液を室温まで冷却した。
生成したポリマーは、両末端にクロル基を有する分子、一方の末端にクロル基を有し、他方の末端にアミノ基を有する分子、及び両末端にアミノ基を有する分子との混合物である。
室温に冷却された反応液に、n-プロピルアミン(75mmol、原料ジクロロトリアジン化合物の5倍モル)を加えた後、ポリマが有する末端クロル基を、室温で1時間n-プロピルアミンと反応させた。
フラスコ内に、濃度28質量%のアンモニア水溶液4gと、純水270mLと、メタノール100mLとを加え、フラスコ内の反応液から生成したポリマーを沈殿させた。
粗製ポリマーをろ過により回収した後、粗製ポリマーをヘキサン50mLで洗浄した。洗浄されたポリマーを、減圧乾燥機で100℃、10時間乾燥して、下記の構成単位からなるポリマーA-6を得た。ポリマーA-6は、アミノ基末端、又はn-プロピルアミノ基末端を有し、クロル基末端を有さない。
【化40】
【0175】
1.0gの得られたポリマーA-6を、9gのシクロペンタノン、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと混合した。混合液に対して、30分間超音波を照射し、ポリマーA-6の各溶媒に対する溶解性を確認した。
超音波照射後、ポリマーA-6は、シクロペンタノン、及びN-メチル-2-ピロリドンに対しては均一に溶解した。ポリマーA-6は、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対しては一部溶け残った。
【0176】
〔調製例9〕
n-プロピルアミンを、アニリンに変えることの他は、調製例8と同様にして、ポリマーA-7を得た。ポリマーA-7は、アミノ基末端、又はフェニルアミノ基末端を有し、クロル基末端を有さない。
【0177】
1.0gの得られたポリマーA-7を、9gのシクロペンタノン、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと混合した。混合液に対して、30分間超音波を照射し、ポリマーA-7の各溶媒に対する溶解性を確認した。
超音波照射後、ポリマーA-7は、シクロペンタノン、及びN-メチル-2-ピロリドンに対しては均一に溶解した。ポリマーA-7は、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対しては一部溶け残った。
【0178】
〔実施例5~8〕
実施例5~8において、ポリマーとして、調製例8で得たポリマーA-6と、調製例9で得たポリマーA-7とを用いた。
表2に記載の種類、及び量(質量部)のポリマーと、表2に記載の種類、及び量(質量部)の架橋性化合物と、と、フッ素系界面活性剤(PF-656、OMNOVA社製)0.003質量部とを、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア11.5質量部に溶解させて溶液を得た。得られた溶液を、目開き0.45μmのフィルターでろ過して、熱硬化性組成物を得た。
表2に記載の架橋性化合物B-3、及び架橋性化合物B-4は、それぞれ以下の化合物である。
B-3:両末端のイソシアネート基が、メチルエチルケトンオキシムによりブロックされたヘキサメチレンジイソシアネート(HC(HCHC)C=N-O-CO-NH-(CH-NH-CO-O-N=C(CHCH)CH
B-4:メチルエチルケトンオキシムによりブロックされたm-キシリレンジイソシアネート(HC(HCHC)C=N-O-CO-NH-CH-mPh-CH-NH-CO-O-N=C(CHCH)CH。mPhは、m-フェニレン基である。)
【0179】
得られた実施例5~8の熱硬化性組成物を用いて、以下の方法でフィルムを形成した。以下の方法に従い、形成されたフィルムの光線透過率と、屈折率と、アセトン浸漬後の残膜率とを評価した。これらの測定結果を、表2に記す。
【0180】
<フィルム形成>
熱硬化性組成物を、ガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布した。形成された塗布膜を、100℃で1分間加熱し、次いで200℃で10分間加熱して、厚さ約1μmのフィルムを得た。
【0181】
<光線透過率評価>
形成されたフィルムの減衰係数(k値)を、分光エリプソメーターにより測定し、波長400nmにおけるフィルムの光線透過率を算出した。算出された光線透過率が90%以上である場合を○と判定し、90%未満である場合を×と判定した。
【0182】
<屈折率測定>
分光エリプソメーターを用いて、波長550nmにおける得られたフィルムの屈折率を測定した。屈折率が1.74以上である場合を◎と判定した。屈折率が1.72以上1.74未満である場合を○と判定した。屈折率が1.72未満である場合を×と判定した。
【0183】
<残膜率測定>
得られたフィルムを、室温でアセトンに10分間浸漬した。浸漬前のフィルムの膜厚T1と、浸漬後のフィルムの膜厚T2とを測定した。下記式に基づいて、残膜率を算出した。残膜率が90%以上である場合を○と判定した。残膜率が90%未満である場合を×と判定した。
残膜率(%)=T2/T1×100
【0184】
【表2】
【0185】
実施例5~8によれば、前述の式(A1)で表される単位(A1)を含むポリマーを用いると、高い屈折率と、高い有機溶剤耐性とを兼ね備える硬化物を形成できることが分かる。