(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059079
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】リチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20240422BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240422BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240422BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240422BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20240422BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0569
H01M4/505
H01M4/525
H01M10/0567
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023151147
(22)【出願日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】10-2022-0133211
(32)【優先日】2022-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】崔 ▲ヒョン▼奉
(72)【発明者】
【氏名】金 善大
(72)【発明者】
【氏名】朴 相禹
(72)【発明者】
【氏名】金 多▲ヒョン▼
(72)【発明者】
【氏名】楊 叡知
(72)【発明者】
【氏名】朴 弘烈
(72)【発明者】
【氏名】金 相勳
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ07
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ18
5H050AA05
5H050AA13
5H050BA15
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB12
5H050HA02
5H050HA18
(57)【要約】
【課題】コバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物を含む正極の使用と共にコバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物を含む正極を効果的に保護することができる電解液を組み合わせて高電圧および高温条件で遷移金属の溶出を減少させることによって正極構造の崩壊を抑制し、これにより電池の高電圧特性および高温特性が改善されたリチウム二次電池を提供することにある。
【解決手段】非水性有機溶媒、およびリチウム塩を含む電解液;正極活物質を含む正極;および負極活物質を含む負極を含み、前記非水性有機溶媒は、エチレンカーボネートを5重量%未満含み、前記正極活物質は、コバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物を含む、リチウム二次電池を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水性有機溶媒、およびリチウム塩を含む電解液;
正極活物質を含む正極;および
負極活物質を含む負極を含み、
前記非水性有機溶媒は、エチレンカーボネートを5重量%未満含み、
前記正極活物質は、コバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物を含む、リチウム二次電池。
【請求項2】
前記非水性有機溶媒は、鎖状カーボネートのみで構成されるものである、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記鎖状カーボネートは、下記化学式1で表される、請求項2に記載のリチウム二次電池。
【化1】
(前記化学式1で
R
1およびR
2は、それぞれ独立して置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基である。)
【請求項4】
前記非水性有機溶媒は、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、およびエチルメチルカーボネート(EMC)のうちの少なくとも2種である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記非水性有機溶媒は、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DMC)を10:90~50:50の体積比で含むものである、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
前記電解液は、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、アジポニトリル(AN)、スクシノニトリル(SN)、1,3,6-ヘキサントリシアニド(HTCN)、プロペンスルトン(PST)、プロパンスルトン(PS)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)、リチウムジフルオロホスフェート(LiPO2F2)および2-フルオロビフェニル(2-FBP)のうちの少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
前記コバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物は、下記化学式3で表されるリチウム複合酸化物を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池。
[化学式3]
LiaNixMnyM1
zM2
wO2±bXc
(前記化学式3で、
0.5≦a<1.8、0≦b≦0.1、0≦c≦0.1、0≦w<0.1、0.6≦x<1.0、0<y<0.4、0<z<0.1、w+x+y+z=1であり、
M1およびM2は、それぞれ独立してAl、Mg、Ti、Zr、Cr、Sr、V、B、W、Mo、Si、Ba、Ca、Ce、FeおよびNbより選択される一つ以上の元素であり、Xは、S、F、PおよびClより選択される一つ以上の元素である。)
【請求項8】
前記化学式3は、下記化学式3-1で表される、請求項7に記載のリチウム二次電池。
[化学式3-1]
LiaNix1Mny1Alz1M2
w1O2±bXc
(前記化学式3-1で、
0.5≦a<1.8、0≦b≦0.1、0≦c≦0.1、0≦w1<0.1、0.6≦x1<1.0、0<y1<0.4、0<z1<0.1、w1+x1+y1+z1=1であり、
M2は、それぞれ独立してMg、Ti、Zr、Cr、Sr、V、B、W、Mo、Si、Ba、Ca、Ce、FeおよびNbより選択される一つ以上の元素であり、Xは、S、F、PおよびClより選択される一つ以上の元素である。)
【請求項9】
前記化学式3-1のx1は0.6≦x1≦0.79、y1は0.2≦y1≦0.39、z1は0.01≦z1<0.1である、請求項8に記載のリチウム二次電池。
【請求項10】
前記負極活物質は、黒鉛およびSi複合体のうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項11】
前記リチウム二次電池は、充電上限電圧が4.35V以上である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、リチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、再充電が可能であり、従来の鉛蓄電池、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池などと比較して単位重量当たりのエネルギー密度が3倍以上高く、高速充電が可能であるため、ノートパソコンや携帯電話、電動工具、電気自転車用として商品化されており、追加的なエネルギー密度向上のための研究開発が活発に行われている。
【0003】
特に、IT機器が漸次的に高性能化されることに伴い、高容量の電池が要求されている状況であり、電圧領域の拡張を通じて高容量化を実現することによってエネルギー密度を高めることができるが、高電圧領域では電解液が酸化されて正極性能を劣化させるという問題点がある。
【0004】
特に、正極活物質としてコバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物は、正極活物質組成中にコバルトを含まず、ニッケル、マンガンなどが主成分で構成された正極活物質として、これを含む正極は経済的であり、高いエネルギー密度を実現することができるため、次世代正極活物質として脚光を浴びている。
【0005】
しかし、コバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物を含む正極は、高電圧環境で使用時、正極構造の崩壊により遷移金属の溶出が起こり、これによるセル内部ガス発生および容量減少などの問題を招くことがある。このような遷移金属の溶出現象は、高温環境で激しくなる傾向があり、溶出した遷移金属は負極表面に析出されて副反応を誘発することがあるため、電池の抵抗増加、電池の寿命および出力特性の低下の原因になる。
【0006】
そのために、コバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物を含む正極の使用時、高電圧および高温条件でも適用可能な電解液が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一実施形態の目的は、コバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物を含む正極の使用と共にコバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物を含む正極を効果的に保護することができる電解液を組み合わせて高電圧および高温条件で遷移金属の溶出を減少させることによって正極構造の崩壊を抑制し、これにより電池の高電圧特性および高温特性が改善されたリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、非水性有機溶媒、およびリチウム塩を含む電解液;正極活物質を含む正極;および負極活物質を含む負極を含み、
前記非水性有機溶媒は、エチレンカーボネートを5重量%未満含み、
前記正極活物質は、コバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物を含む、リチウム二次電池を提供する。
前記非水性有機溶媒は、鎖状カーボネートのみで構成されるものであり得る。
【0009】
前記鎖状カーボネートは、下記化学式1で表され得る。
【化1】
前記化学式1で
R
1およびR
2は、それぞれ独立して置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基である。
【0010】
前記非水性有機溶媒は、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、およびエチルメチルカーボネート(EMC)のうちの少なくとも2種であり得る。
【0011】
前記非水性有機溶媒は、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DMC)を10:90~50:50の体積比で含むことができる。
【0012】
前記電解液は、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、アジポニトリル(AN)、スクシノニトリル(SN)、1,3,6-ヘキサントリシアニド(HTCN)、プロペンスルトン(PST)、プロパンスルトン(PS)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)、リチウムジフルオロホスフェート(LiPO2F2)および2-フルオロビフェニル(2-FBP)のうちの少なくとも1種の添加剤をさらに含むことができる。
【0013】
前記コバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物は、下記化学式3で表されるリチウム複合酸化物を含むことができる。
[化学式3]
LiaNixMnyM1
zM2
wO2±bXc
前記化学式3で、
0.5≦a<1.8、0≦b≦0.1、0≦c≦0.1、0≦w<0.1、0.6≦x<1.0、0<y<0.4、0<z<0.1、w+x+y+z=1であり、
M1およびM2は、それぞれ独立してAl、Mg、Ti、Zr、Cr、Sr、V、B、W、Mo、Si、Ba、Ca、Ce、FeおよびNbより選択される一つ以上の元素であり、Xは、S、F、PおよびClより選択される一つ以上の元素である。
【0014】
前記化学式3は、下記化学式3-1で表され得る。
[化学式3-1]
LiaNix1Mny1Alz1M2
w1O2±bXc
前記化学式3-1で、
0.5≦a<1.8、0≦b≦0.1、0≦c≦0.1、0≦w1<0.1、0.6≦x1<1.0、0<y1<0.4、0<z1<0.1、w1+x1+y1+z1=1であり、
M2は、それぞれ独立してMg、Ti、Zr、Cr、Sr、V、B、W、Mo、Si、Ba、Ca、Ce、FeおよびNbより選択される一つ以上の元素であり、Xは、S、F、PおよびClより選択される一つ以上の元素である。
【0015】
前記化学式3-1のx1は0.6≦x1≦0.79、y1は0.2≦y1≦0.39、z1は0.01≦z1<0.1であり得る。
【0016】
前記負極活物質は、黒鉛およびSi複合体のうちの少なくとも1種を含むことができる。
【0017】
前記リチウム二次電池は、充電上限電圧が4.35V以上であり得る。
【発明の効果】
【0018】
一実施形態は、コバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物を含む正極を効果的に保護することができる電解液を組み合わせて使用して高温高電圧環境でも正極の相転移安全性を確保することができ、電解液の分解および電極との副反応を抑制してガス発生低減と同時に電池内部抵抗増加を抑制することによって電池安定性および寿命特性が向上したリチウム二次電池を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態によるリチウム二次電池を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池について添付した図面を参照して詳細に説明する。ただし、これは例示として提示されるものであり、これによって本発明が制限されず、本発明は後述する請求項の範疇のみにより定義される。
【0021】
本明細書で「置換」とは、別途の定義がない限り、置換基または化合物のうちの少なくとも一つの水素が重水素、ハロゲン基、ヒドロキシル基、アミノ基、置換もしくは非置換のC1~C30アミン基、ニトロ基、置換もしくは非置換のC1~C40シリル基、C1~C30アルキル基、C1~C10アルキルシリル基、C6~C30アリールシリル基、C3~C30シクロアルキル基、C3~C30ヘテロシクロアルキル基、C6~C30アリール基、C2~C30ヘテロアリール基、C1~C20アルコキシ基、C1~C10フルオロアルキル基、シアノ基、またはこれらの組み合わせで置換されたことを意味する。
【0022】
本発明の一例で、「置換」は、置換基または化合物のうちの少なくとも一つの水素が重水素、ハロゲン基、C1~C30アルキル基、C1~C10アルキルシリル基、C6~C30アリールシリル基、C3~C30シクロアルキル基、C3~C30ヘテロシクロアルキル基、C6~C30アリール基、C2~C30ヘテロアリール基、C1~C10フルオロアルキル基またはシアノ基で置換されたことを意味する。また、本発明の具体的な一例で、「置換」は、置換基または化合物のうちの少なくとも一つの水素が重水素、ハロゲン基、C1~C20アルキル基、C6~C30アリール基、C1~C10フルオロアルキル基またはシアノ基で置換されたことを意味する。また、本発明の具体的な一例で、「置換」は、置換基または化合物のうちの少なくとも一つの水素が重水素、ハロゲン基、C1~C5アルキル基、C6~C18アリール基、C1~C5フルオロアルキル基またはシアノ基で置換されたことを意味する。また、本発明の具体的な一例で、「置換」は、置換基または化合物のうちの少なくとも一つの水素が重水素、シアノ基、ハロゲン基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、トリフルオロメチル基またはナフチル基で置換されたことを意味する。
【0023】
リチウム二次電池は、使用する分離膜と電解液の種類によりリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池およびリチウムポリマー電池などに分類することができ、形態により円筒型、角型、コイン型、パウチ型などに分類することができ、サイズによりバルクタイプと薄膜タイプに分類することができる。これら電池の構造と製造方法は、当該分野に広く知られているため、詳細な説明は省略する。
【0024】
ここではリチウム二次電池の一例として円筒型リチウム二次電池を例に挙げて説明する。
図1は一実施形態によるリチウム二次電池の構造を概略的に示すものである。
図1を参照すれば、一実施形態によるリチウム二次電池100は、正極114、正極114と対向して位置する負極112、正極114と負極112との間に配置されているセパレータ113、および正極114、負極112およびセパレータ113を含浸する電解液(図示せず)を含む電池セルと、前記電池セルを収容している電池容器120と、前記電池容器120を密封する封入部材140とを含む。
【0025】
以下、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池100のより詳細な構成について説明する。
【0026】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池は、電解液、正極、および負極を含む。
【0027】
前記電解液は、非水性有機溶媒、およびリチウム塩を含み、前記非水性有機溶媒は、エチレンカーボネートを5重量%未満含むことができる。
【0028】
前記正極は、コバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物を含む正極活物質を含むことができる。
【0029】
コバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物を含む正極活物質の場合、高電圧条件で構造的な不安定性が強いため、溶媒分解および遷移金属、特にNiの溶出現象が現れる。
【0030】
このような遷移金属の溶出現象により劣化および短絡の発生により電池の寿命容量が低下し、抵抗急増現象が現れる。
【0031】
しかし、前述した非水性有機溶媒およびリチウム塩が組み合わせられた電解液を共に使用する場合には、電池の寿命容量の低下および抵抗急増現象を緩和することができる。
【0032】
特に、エチレンカーボネートが5重量%未満含まれる電解液内でコバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物を含む正極を使用することによって高電圧および高温条件で遷移金属の溶出を効果的に減少させることができ、そのために正極構造の崩壊を抑制することによって電池の高電圧特性および高温特性が改善され得る。
【0033】
前記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動することができる媒質の役割を果たす。
【0034】
前記非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、または非プロトン性溶媒を使用することができる。
【0035】
前記カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などを使用することができる。前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、t-ブチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、デカノリド(decanolide)、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などを使用することができる。前記エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどを使用することができる。また、前記ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどを使用することができる。また前記アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどを使用することができ、前記非プロトン性溶媒としては、R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分枝状、または環構造の炭化水素基であり、二重結合方向環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類、スルホラン(sulfolane)類などを使用することができる。
【0036】
前記非水性有機溶媒は、単独でまたは一つ以上混合して使用することができ、一つ以上混合して使用する場合の混合比率は、目的とする電池性能により適切に調節することができ、これは当該分野に従事する者に幅広く理解され得る。
【0037】
一例として、前記非水性有機溶媒は、エチレンカーボネートを5重量%未満含むことができる。
【0038】
エチレンカーボネートの含有量が前述した範囲を5重量%以上含まれる場合には、高電圧駆動時にNiの活性度が増加してNiの酸化数が4価から2価に還元される傾向が強くなり、酸化安定性が低いエチレンカーボネートは酸化分解されて結果的にNiが溶出されて負極に析出される結果となる。
【0039】
具体的な一例として、前記非水性有機溶媒は、鎖状(chain)カーボネートのみで構成され得る。この場合、高温保存時、抵抗増加率が顕著に緩和されることによって優れた高温保存特性を実現することができる。
【0040】
本明細書で鎖状カーボネートのみで構成されるという意味は、環状カーボネートなどと混合されずに鎖状カーボネートの範疇に属する有機溶媒を単独または組み合わせて含むことを意味する。
【0041】
一実施例において、前記鎖状カーボネートは、下記化学式1で表され得る。
【化2】
前記化学式1で
R
1およびR
2は、それぞれ独立して置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基である。
【0042】
一例として前記化学式1のR1およびR2は、それぞれ独立して置換もしくは非置換のC1~C10アルキル基であり得、例えば前記R1およびR2は、それぞれ独立して置換もしくは非置換のC1~C5アルキル基であり得る。
【0043】
一実施例において、前記化学式1のR1およびR2は、それぞれ独立して置換もしくは非置換のメチル基、置換もしくは非置換のエチル基、置換もしくは非置換のn-プロピル基、置換もしくは非置換のn-ブチル基、置換もしくは非置換のn-ペンチル基、置換もしくは非置換のiso-ブチル基、置換もしくは非置換のneo-ペンチル基であり得る。
【0044】
例えば具体的な一実施例による非水性有機溶媒は、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、およびエチルメチルカーボネート(EMC)のうちの少なくとも2種であり得る。
【0045】
最も具体的な一実施例による非水性有機溶媒は、ジメチルカーボネート(DMC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)の混合溶媒であり得る。
【0046】
前記非水性有機溶媒は、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DMC)を10:90~50:50の体積比で含むことができる。
【0047】
前記非水性有機溶媒は、ジメチルカーボネート(DMC)を50体積%を超えて含むことが電池特性改善の側面でより有利になり得る。
【0048】
例えば前記非水性有機溶媒は、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DMC)を10:90~40:60、または10:90~30:70の体積比で含むことができる。
【0049】
前記非水性有機溶媒は、前記カーボネート系溶媒に芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含むこともできる。この時、前記カーボネート系溶媒と芳香族炭化水素系溶媒は、1:1~30:1の体積比で混合され得る。
【0050】
前記芳香族炭化水素系溶媒としては、下記化学式2の芳香族炭化水素系化合物を使用することができる。
【化3】
前記化学式2で、R
9~R
14は、互いに同じかまたは異なり、水素、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロアルキル基およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである。
【0051】
前記芳香族炭化水素系溶媒の具体的な例としては、ベンゼン、フルオロベンゼン、1,2-ジフルオロベンゼン、1,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジフルオロベンゼン、1,2,3-トリフルオロベンゼン、1,2,4-トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、ヨードベンゼン、1,2-ジヨードベンゼン、1,3-ジヨードベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1,2,3-トリヨードベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、2,3-ジフルオロトルエン、2,4-ジフルオロトルエン、2,5-ジフルオロトルエン、2,3,4-トリフルオロトルエン、2,3,5-トリフルオロトルエン、クロロトルエン、2,3-ジクロロトルエン、2,4-ジクロロトルエン、2,5-ジクロロトルエン、2,3,4-トリクロロトルエン、2,3,5-トリクロロトルエン、ヨードトルエン、2,3-ジヨードトルエン、2,4-ジヨードトルエン、2,5-ジヨードトルエン、2,3,4-トリヨードトルエン、2,3,5-トリヨードトルエン、キシレン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである。
【0052】
前記リチウム塩は、非水性有機溶媒に溶解されて、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極との間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。このようなリチウム塩の代表的な例としては、LiPF6、LiBF4、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート(lithium difluoro(oxalate)borate:LiDFOB)、LiPO2F2、LiSbF6、LiAsF6、Li(FSO2)2N(リチウムビスフルオロスルホニルイミド(lithium bis(fluorosulfonyl)imide):LiFSI)、LiC4F9SO3、LiClO4、LiAlO2、LiAlCl4、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)(ここで、xは1~20の整数、yは0~20の整数である)、LiCl、LiIおよびLiB(C2O4)2(リチウムビスオキサラトボレート(lithium bis(oxalato) borate):LiBOB)からなる群より選択される一つまたは二つ以上が挙げられる。
【0053】
リチウム塩の濃度は、0.1M~2.0M範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれれば、電解質が適切な伝導度および粘度を有するため、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0054】
一方、前記電解液は、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、アジポニトリル(AN)、スクシノニトリル(SN)、1,3,6-ヘキサントリシアニド(HTCN)、プロペンスルトン(PST)、プロパンスルトン(PS)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)、リチウムジフルオロホスフェート(LiPO2F2)および2-フルオロビフェニル(2-FBP)のうちの少なくとも1種の添加剤を追加的に含むことができる。
【0055】
前記添加剤をさらに含むことによって、寿命がより向上したり高温保存時に正極と負極で発生するガスを効果的に制御することができる。
【0056】
前記添加剤は、前記リチウム二次電池用電解液の全体100重量部に対して0.2~20重量部の含有量で含まれ得、具体的に0.2~15重量部、例えば0.2~10重量部で含まれ得る。
【0057】
添加剤の含有量が前記のような場合、被膜抵抗増加を最小化して電池性能向上に寄与することができる。
【0058】
前記正極は、正極集電体、およびこの正極集電体の上に形成される正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、正極活物質を含む。
【0059】
前記正極活物質は、コバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物を含むことができる。
【0060】
本明細書で正極活物質としてコバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物とは、正極活物質の組成中にコバルトを含まず、ニッケル、マンガンなどが主成分で構成された正極活物質を意味する。
【0061】
一例として前記コバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物は、下記化学式3で表されるリチウム複合酸化物のうちの少なくとも1種を含むことができる。
[化学式3]
LiaNixMnyM1
zM2
wO2±bXc
前記化学式3で、
0.5≦a<1.8、0≦b≦0.1、0≦c≦0.1、0≦w<0.1、0.6≦x<1.0、0<y<0.4、0<z<0.1、w+x+y+z=1であり、
M1およびM2は、それぞれ独立してAl、Mg、Ti、Zr、Cr、Sr、V、B、W、Mo、Si、Ba、Ca、Ce、FeおよびNbより選択される一つ以上の元素であり、Xは、S、F、PおよびClより選択される一つ以上の元素である。
【0062】
もちろん、前記リチウム複合酸化物の表面にコーティング層を有するものも使用することができ、または前記リチウム複合酸化物とコーティング層を有する化合物を混合して使用することもできる。このコーティング層は、コーティング元素のオキシド、コーティング元素のヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネートおよびコーティング元素のヒドロキシカーボネートからなる群より選択される少なくとも一つのコーティング元素化合物を含むことができる。これらコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質であり得る。前記コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはこれらの混合物を使用することができる。コーティング層形成工程は、前記化合物にこのような元素を使用して正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えばスプレーコーティング、浸漬法など)でコーティングすることができれば如何なるコーティング方法を用いてもよく、これについては当該分野に従事する者によく理解され得る内容であるため、詳細な説明は省略する。
【0063】
一例として前記化学式3は、下記化学式3-1で表され得る。
[化学式3-1]
LiaNix1Mny1Alz1M2
w1O2±bXc
前記化学式3-1で、
0.5≦a<1.8、0≦b≦0.1、0≦c≦0.1、0≦w1<0.1、0.6≦x1<1.0、0<y1<0.4、0<z1<0.1、w1+x1+y1+z1=1であり、
M2は、それぞれ独立してMg、Ti、Zr、Cr、Sr、V、B、W、Mo、Si、Ba、Ca、Ce、FeおよびNbより選択される一つ以上の元素であり、Xは、S、F、PおよびClより選択される一つ以上の元素である。
【0064】
一実施例において、前記化学式3-1で、0.6≦x1≦0.9、0.1≦y1<0.4、および0<z1<0.1であり得、0.6≦x1≦0.8、0.2≦y1<0.4、および0<z1<0.1であり得る。
【0065】
例えば前記化学式3-1のx1は0.6≦x1≦0.79、y1は0.2≦y1≦0.39、z1は0.01≦z1<0.1であり得る。
【0066】
前記正極活物質の含有量は、正極活物質層全体重量に対して90重量%~98重量%であり得る。
【0067】
本発明の一実施形態において、前記正極活物質層は、バインダーを含むことができる。この時、前記バインダーの含有量は、正極活物質層全体重量に対して1重量%~5重量%であり得る。
【0068】
前記バインダーは、正極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また正極活物質を電流集電体に良好に付着させる役割を果たし、その代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンラバー、アクリル化スチレン-ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0069】
前記正極集電体としては、Alを使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0070】
前記負極は、負極集電体、およびこの負極集電体の上に形成される負極活物質を含む負極活物質層を含む。
【0071】
前記負極活物質は、リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離することができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質または遷移金属酸化物を含む。
【0072】
前記リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離することができる物質としては、炭素物質であって、リチウム二次電池において一般に使用される炭素系負極活物質は如何なるものでも使用することができ、その代表的な例としては、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらを共に使用することができる。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(soft carbon)またはハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0073】
前記リチウム金属の合金としては、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlおよびSnからなる群より選択される金属との合金を使用することができる。
【0074】
前記リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質としては、Si、Si-C複合体、SiOx(0<x<2)、Si-Q合金(前記Qは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第13族元素、Siを除いた第14族元素、第15族元素、第16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素)、Sn、SnO2、Sn-R11(前記R11は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第13族元素、Snを除いた第14族元素、第15族元素、第16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素)などが挙げられ、またこれらのうちの少なくとも一つとSiO2を混合して使用することもできる。
【0075】
前記元素QおよびR11としては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Tl、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0076】
前記遷移金属酸化物としては、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物またはリチウムチタニウム酸化物などが挙げられる。
【0077】
具体的な一実施例において、前記負極活物質は、黒鉛およびSi複合体のうちの少なくとも1種を含むことができる。
【0078】
前記Si複合体は、Si系粒子を含むコアおよび非晶質炭素コーティング層を含み、例えば前記Si系粒子は、シリコン粒子、Si-C複合体、SiOx(0<x≦2)およびSi合金(Si alloy)のうちの1種以上を含むことができる。
【0079】
一例として前記Si系粒子を含むコアの中心部に空隙を含み、前記中心部の半径は前記Si複合体の半径の30%~50%に該当し、前記Si複合体の平均粒径は5μm~20μmであり、前記Si系粒子の平均粒径は10nm~200nmであり得る。
【0080】
本明細書において、平均粒径は、累積分布曲線(cumulative size-distribution curve)において体積比で50%での粒子サイズ(D50)であり得る。
【0081】
前記Si系粒子の平均粒径が前記範囲に含まれる場合、充放電時に発生する体積膨張を抑制することができ、充放電時に粒子破砕による伝導性経路(conductive path)の断絶を防止することができる。
【0082】
前記Si系粒子を含むコアは、非晶質炭素を追加的に含み、この時、前記中心部は非晶質炭素を含まず、非晶質炭素はSi複合体の表面部にのみ存在することができる。
【0083】
この時、表面部とは、中心部の最表面からSi複合体の最表面までの領域を意味する。
【0084】
また、Si系粒子は、負極活物質に全体的に実質的に均一に含まれるものであって、つまり、中心部と表面部に実質的に均一な濃度で存在することができる。
【0085】
前記非晶質炭素は、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスまたはこれらの組み合わせであり得る。
【0086】
例えば前記Si-C複合体は、シリコン粒子そして結晶質炭素を含むことができる。
【0087】
前記シリコン粒子は、前記Si-C複合体の全体重量に対して1重量%~60重量%で含まれ得、例えば3重量%~60重量%で含まれ得る。
【0088】
前記結晶質炭素は、例えば黒鉛であり得、具体的には天然黒鉛、人造黒鉛、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0089】
前記結晶質炭素の平均粒径は、5μm~30μmであり得る。
【0090】
前記負極活物質が黒鉛およびSi複合体を共に含む場合、前記黒鉛およびSi複合体は混合物の形態で含まれ得、この場合、前記黒鉛およびSi複合体は、99:1~50:50の重量比で含まれ得る。
【0091】
より具体的には、前記黒鉛およびSi複合体は、97:3~80:20、95:5~80:20の重量比で含まれ得る。
【0092】
前記非晶質炭素前駆体としては、石炭系ピッチ、メソフェーズピッチ、石油系ピッチ、石炭系オイル、石油系重質油またはフェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂などの高分子樹脂を使用することができる。
【0093】
前記負極活物質層における負極活物質の含有量は、負極活物質層全体重量に対して95重量%~99重量%であり得る。
【0094】
本発明の一実施形態において、前記負極活物質層は、バインダーを含み、選択的に導電材をさらに含むこともできる。前記負極活物質層におけるバインダーの含有量は、負極活物質層全体重量に対して1重量%~5重量%であり得る。また導電材をさらに含む場合には、負極活物質を90重量%~98重量%、バインダーを1重量%~5重量%、導電材を1重量%~5重量%使用することができる。
【0095】
前記バインダーは、負極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また負極活物質を電流集電体に良好に付着させる役割を果たす。前記バインダーとしては、非水溶性バインダー、水溶性バインダーまたはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0096】
前記非水溶性バインダーとしては、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリイミドまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0097】
前記水溶性バインダーとしては、ゴム系バインダーまたは高分子樹脂バインダーが挙げられる。前記ゴム系バインダーは、スチレン-ブタジエンラバー、アクリル化スチレン-ブタジエンラバー(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンラバー、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴムおよびこれらの組み合わせから選択されるものであり得る。前記高分子樹脂バインダーは、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンプロピレン共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコールおよびこれらの組み合わせから選択されるものであり得る。
【0098】
前記負極バインダーとして水溶性バインダーを使用する場合、粘性を付与できるセルロース系化合物を増粘剤としてさらに含むことができる。このセルロース系化合物としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはこれらのアルカリ金属塩などを1種以上混合して使用することができる。前記アルカリ金属としては、Na、KまたはLiを使用することができる。このような増粘剤の使用含有量は、負極活物質100重量部に対して0.1重量部~3重量部であり得る。
【0099】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を招かない電子伝導性材料であれば如何なるものでも使用可能であり、その例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0100】
前記負極集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステレンス鋼箔、チタニウム箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0101】
リチウム二次電池の種類により正極と負極との間にセパレータが存在することもできる。このようなセパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデンまたはこれらの2層以上の多層膜を使用することができ、ポリエチレン/ポリプロピレンの2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層セパレータなどのような混合多層膜を使用することができることはもちろんである。
【0102】
前記リチウム二次電池は、充電上限電圧が4.35V以上であり得る。例えば、充電上限電圧は4.35V~4.55Vであり得る。
【0103】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。かかる下記の実施例は、本発明の一実施例に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるのではない。
【0104】
リチウム二次電池の作製
実施例1
正極活物質としてLiNi0.75Mn0.23Al0.02O2、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンおよび導電材としてアセチレンブラックをそれぞれ96:3:1の重量比で混合して、N-メチルピロリドンに分散させて正極活物質スラリーを製造した。
【0105】
前記正極活物質スラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の上にコーティングし、100℃で乾燥した後、圧延(press)して正極を製造した。
【0106】
負極活物質として人造黒鉛とSi複合体が93:7の重量比で混合された混合物を用い、負極活物質とスチレン-ブタジエンゴムバインダーおよびカルボキシメチルセルロースをそれぞれ98:1:1の重量比で混合して、蒸溜水に分散させて負極活物質スラリーを製造した。
【0107】
前記Si複合体は、人造黒鉛およびシリコン粒子を含むコアおよび前記コアの表面に石炭系ピッチがコーティングされたものを使用した。
【0108】
前記負極活物質スラリーを厚さ10μmの銅箔の上にコーティングし、100℃で乾燥した後、圧延(press)して負極を製造した。
【0109】
前記製造された正極および負極と厚さ10μmのポリエチレン材質のセパレータを組み立てて電極組立体を製造し、電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。
【0110】
電解液組成は下記のとおりである。
(電解液組成)
リチウム塩:LiPF6 1.5M
非水性有機溶媒:エチルメチルカーボネート:ジメチルカーボネート(EMC:DMC=20:80の体積比)
添加剤:フルオロエチレンカーボネート(FEC:fluoroethylene carbonate)10重量部/スクシノニトリル(SN:succinonitrile)0.5重量部
(ただし、前記電解液組成で「重量部」は、添加剤を除いた電解液全体(リチウム塩+非水性有機溶媒)100重量に対する添加剤の相対的な重量を意味する。)
【0111】
比較例1
前記電解液組成中の非水性有機溶媒全体重量に対してエチレンカーボネートを5重量%添加したことを除き、前記実施例1と同様な方法でリチウム二次電池を製造した。
【0112】
比較例2および比較例3
エチレンカーボネートをそれぞれ10重量%、および20重量%添加したことを除き、前記比較例1と同様な方法でリチウム二次電池を製造した。
【0113】
比較例4~比較例7
正極活物質をLiCoO2に変更したことを除き、前記実施例1および比較例1~3とそれぞれ同様な方法でリチウム二次電池を作製した。
【0114】
比較例8~比較例11
正極活物質をLiNi0.5Co0.2Al0.3O2に変更したことを除き、前記実施例1および比較例1~3とそれぞれ同様な方法でリチウム二次電池を作製した。
【0115】
比較例12~比較例15
正極活物質をLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2に変更したことを除き、前記実施例1および比較例1~3とそれぞれ同様な方法でリチウム二次電池を作製した。
【0116】
実施例2~実施例4
エチルメチルカーボネートおよびジメチルカーボネートの混合比をそれぞれ30:70の体積比(実施例2)、40:60の体積比(実施例3)、そして70:30の体積比(実施例4)に変更したことを除き、実施例1と同様な方法でリチウム二次電池を作製した。
【0117】
評価1:高温保存特性の評価
実施例1~実施例4および比較例1~15により作製されたリチウム二次電池に対して△V/△I(電圧の変化/電流の変化)値で初期直流抵抗(DCIR)を測定した後、電池内部の最大エネルギー状態を満充電状態(SOC 100%)に作り、この状態で高温(60℃)で30日間保管した後に直流抵抗を測定し、DCIR増加率(%)を下記式1により計算してその結果を下記表1、表2および表5に示した。
[式1]
DCIR増加率={(30日後のDCIR)/(初期のDCIR)}X100%
【0118】
評価2:高温寿命特性の評価
実施例1、および比較例1~3により作製されたリチウム二次電池に対して0.2Cで1回充放電を実施して充放電容量を測定した。
【0119】
また、実施例1および比較例1~3により作製されたリチウム二次電池を充電上限電圧(4.25V~4.45V)で充電を実施した後、0.2Cで2.5Vまで定電流条件で放電してそれぞれ充電電圧別の初期放電容量を測定した。
【0120】
再び0.33C充電(CC/CV、4.25V~4.45V、0.025C cut-off)/1.0C放電(CC、2.5V cut-off)、45℃条件で200サイクル充放電を実施しながら放電容量を測定した。前記初期放電容量に対する放電容量比を下記表4に容量回復率(%、recovery)で示した。
【0121】
評価3:高温保存後のガス発生量の測定
実施例1および比較例1~3によるリチウム二次電池に対して、60℃で7日間放置した後、1日目と7日目のガス発生量(ml)をリファイナリーガス分析器(Refinery Gas Analysis、RGA)を利用して測定してその結果を下記表3に示した。
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
表1~表5を参照すれば、本願によるリチウム塩、非水性有機溶媒およびCo-free正極活物質が組み合わせられた組成において、DC-IR増加率が減少して高温保存特性と高温充放電特性が共に改善されたことが分かる。
【0128】
特に、表2を参照すれば、ECを5重量%未満含むことによる抵抗増加率減少がコバルトフリーリチウムニッケルマンガン系酸化物を含む正極活物質においてより顕著に現れることが分かる。
【0129】
また、実施例によるリチウム二次電池は、高温保存後にガス発生量が顕著に減少したことが分かる。
【0130】
以上を通じて本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるのではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明および添付した図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属することは当然である。
【符号の説明】
【0131】
100:リチウム二次電池
112:負極
113:セパレータ
114:正極
120:電池容器
140:封入部材