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特開2024-59237半導体用接着剤、積層フィルム、並びに、半導体装置及びその製造方法
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  • 特開-半導体用接着剤、積層フィルム、並びに、半導体装置及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059237
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】半導体用接着剤、積層フィルム、並びに、半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20240423BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240423BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240423BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20240423BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J11/08
C09J11/06
C09J7/30
H01L21/60 311Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166797
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】川俣 龍太
(72)【発明者】
【氏名】飯星 瑛仁
(72)【発明者】
【氏名】舛野 大輔
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F044
【Fターム(参考)】
4J004AA11
4J004AA13
4J004AB05
4J004BA03
4J004FA08
4J040EC001
4J040EC061
4J040EC081
4J040EE061
4J040GA22
4J040HA306
4J040HB22
4J040HC04
4J040HC26
4J040JB02
4J040KA16
4J040KA42
4J040LA01
4J040LA08
4J040NA20
5F044LL11
5F044RR17
5F044RR19
(57)【要約】
【課題】室温環境下で長時間放置した後に使用した場合でも、接続性の低下を抑制することができる半導体用接着剤を提供すること。
【解決手段】(a)熱可塑性樹脂、(b)熱硬化性樹脂、(c)イミダゾール系硬化剤及び(d)キレートフラックス剤を含む半導体用接着剤であって、(d)キレートフラックス剤の含有量に対する(c)イミダゾール系硬化剤の含有量のモル比が0.2以上である、半導体用接着剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)熱可塑性樹脂、(b)熱硬化性樹脂、(c)イミダゾール系硬化剤及び(d)キレートフラックス剤を含む半導体用接着剤であって、
前記(d)キレートフラックス剤の含有量に対する前記(c)イミダゾール系硬化剤の含有量のモル比が0.2以上である、半導体用接着剤。
【請求項2】
前記(c)イミダゾール系硬化剤の含有量が、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、0.5~5.0質量%である、請求項1に記載の半導体用接着剤。
【請求項3】
前記(d)キレートフラックス剤の含有量が、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、0.5~10質量%である、請求項1に記載の半導体用接着剤。
【請求項4】
前記(b)熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の半導体用接着剤。
【請求項5】
前記(d)キレートフラックス剤の融点が、235℃以下である、請求項1に記載の半導体用接着剤。
【請求項6】
前記(d)キレートフラックス剤の分子量が、150以上500以下である、請求項1に記載の半導体用接着剤。
【請求項7】
前記(d)キレートフラックス剤が、下記一般式(1)で表されるイミン化合物及び/又は下記一般式(2)で表されるイミン化合物を含有する、請求項1に記載の半導体用接着剤。
【化1】

[式中、Qは、アリーレン基、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロシクリレン基、又はヘテロアリーレン基を示し、R及びRは、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基を示し、R及びRは、各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はヘテロシクリル基を示し、アリーレン基、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロシクリレン基、ヘテロアリーレン基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基については、基に結合する水素原子が、水酸基又はメルカプト基で置換されていてもよい。]
【化2】

[式中、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基を示し、R及びRは、各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はヘテロシクリル基を示し、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、及びヘテロシクリル基については、基に結合する水素原子が、水酸基又はメルカプト基で置換されていてもよい。]
【請求項8】
前記一般式(1)で表されるイミン化合物におけるR及びRが、2-ヒドロキシフェニル基である、請求項7に記載の半導体用接着剤。
【請求項9】
前記(d)キレートフラックス剤が、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミン、及びN,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-フェニレンジアミンからなる群より選択される少なくとも一種を含有する、請求項1に記載の半導体用接着剤。
【請求項10】
前記(c)イミダゾール系硬化剤の構造が、トリアジン環を含む構造である、請求項1に記載の半導体用接着剤。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の半導体用接着剤を用いて形成された接着層と、粘着層と、基材層と、をこの順に備える積層フィルム。
【請求項12】
半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置の製造方法であって、
請求項1~10のいずれか一項に記載の半導体用接着剤を、常圧又は加圧雰囲気下で熱を加えることにより硬化させ、硬化した前記半導体用接着剤により前記接続部の少なくとも一部を封止する封止工程を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記封止工程の前に、
ステージ上に複数の半導体チップを配置する工程と、
前記ステージを60~155℃に加熱しながら、前記ステージ上に配置された複数の前記半導体チップのそれぞれの上に、前記半導体用接着剤を介して他の半導体チップを順次配置し、前記半導体チップ、前記半導体用接着剤及び前記他の半導体チップがこの順に積層されてなる積層体を複数得る仮固定工程と、を更に備える、請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記封止工程の前に、
ステージ上に配線回路基板又は半導体ウェハを配置する工程と、
前記ステージを60~155℃に加熱しながら、前記ステージ上に配置された前記配線回路基板又は前記半導体ウェハの上に、前記半導体用接着剤を介して複数の半導体チップを順次配置し、前記配線回路基板、前記半導体用接着剤及び複数の前記半導体チップがこの順に積層されてなる積層体、又は、前記半導体ウェハ、前記半導体用接着剤及び複数の前記半導体チップがこの順に積層されてなる積層体を得る仮固定工程と、を更に備える、請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置の製造方法であって、
請求項11に記載の積層フィルムの前記接着層を、常圧又は加圧雰囲気下で熱を加えることにより硬化させ、硬化した前記接着層により前記接続部の少なくとも一部を封止する封止工程を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記封止工程の前に、
ステージ上に複数の半導体チップを配置する工程と、
前記ステージを60~155℃に加熱しながら、前記ステージ上に配置された複数の前記半導体チップのそれぞれの上に、前記接着層を介して他の半導体チップを順次配置し、前記半導体チップ、前記接着層及び前記他の半導体チップがこの順に積層されてなる積層体を複数得る仮固定工程と、を更に備える、請求項15に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記封止工程の前に、
ステージ上に配線回路基板又は半導体ウェハを配置する工程と、
前記ステージを60~155℃に加熱しながら、前記ステージ上に配置された前記配線回路基板又は前記半導体ウェハの上に、前記接着層を介して複数の半導体チップを順次配置し、前記配線回路基板、前記接着層及び複数の前記半導体チップがこの順に積層されてなる積層体、又は、前記半導体ウェハ、前記接着層及び複数の前記半導体チップがこの順に積層されてなる積層体を得る仮固定工程と、を更に備える、請求項15に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置であって、前記接続部の少なくとも一部が、請求項1~10のいずれか一項に記載の半導体用接着剤の硬化物によって封止されている、半導体装置。
【請求項19】
半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置であって、前記接続部の少なくとも一部が、請求項11に記載の積層フィルムにおける接着層の硬化物によって封止されている、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体用接着剤、積層フィルム、並びに、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップと基板とを接続するには、金ワイヤ等の金属細線を用いるワイヤーボンディング方式が広く適用されてきた。
【0003】
近年、半導体装置に対する高機能化、高集積化、高速化等の要求に対応するため、半導体チップ又は基板にバンプと呼ばれる導電性突起を形成して、半導体チップと基板とを直接接続するフリップチップ接続方式(FC接続方式)が広まりつつある。
【0004】
例えば、半導体チップ及び基板間の接続に関して、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)等に盛んに用いられているCOB(Chip On Board)型の接続方式もFC接続方式に該当する。また、FC接続方式は、半導体チップ上に接続部(バンプ又は配線)を形成して、半導体チップ間を接続するCOC(Chip On Chip)型、及び、半導体ウェハ上に接続部(バンプ又は配線)を形成して、半導体チップと半導体ウェハとの間を接続するCOW(Chip On Wafer)型の接続方式にも広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、さらなる小型化、薄型化及び高機能化が強く要求されるパッケージでは、上述した接続方式を積層・多段化したチップスタック型パッケージ、POP(Package On Package)、TSV(Through-Silicon Via)等も広く普及し始めている。このような積層・多段化技術は、半導体チップ等を三次元的に配置することから、二次元的に配置する手法と比較してパッケージを小さくできる。また、半導体の性能向上、ノイズ低減、実装面積の削減、省電力化等にも有効であることから、次世代の半導体配線技術として注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-294382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、生産性を向上させる観点から、半導体用接着剤を介して複数の半導体チップを被搭載部材(半導体チップ、半導体ウェハ、配線回路基板等)の上に搭載し仮固定した後、一括もしくは分割して硬化と封止を行うプロセスが提案されている。このプロセスでは、半導体用接着剤が流動可能な程度にステージに熱(60~155℃程度)を加えることで、被搭載部材に半導体チップを仮固定した後、接続部の融点以上の温度(例えば260~300℃程度)でリフローもしくは本圧着することで、半導体用接着剤を一括もしくは分割して硬化する。このプロセスによれば、複数個のパッケージを効率良く作製することができる。
【0008】
しかしながら、上記半導体用接着剤は、室温環境下で長時間放置した後に使用すると、接続性が低下しやすいという問題がある。これは、半導体用接着剤に含有されるフラックス剤が、室温環境下で経時的に、バックグラインドテープ(BGT)等の粘着層を有する部材の粘着層側に移行してしまうこと、及び、フラックス剤と熱硬化性樹脂との反応が進行してしまうこと等が原因であると考えられる。そのため、室温環境下で長時間放置した半導体用接着剤を使用した場合、十分なフラックス活性が発現せず、上記プロセスにおいて製造された半導体装置は良好な接続性を得られない傾向がある。この問題を改善するために、半導体用接着剤には、フラックス剤のBGTへの移行及びフラックス剤と熱硬化性樹脂との反応を抑制し、室温環境下で長時間放置した後であっても良好な接続性を確保することが求められる。
【0009】
そこで、本発明は、室温環境下で長時間放置した後に使用した場合でも、接続性の低下を抑制することができる半導体用接着剤を提供することを目的とする。また、本発明は、上記半導体用接着剤を用いた積層フィルム、半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の半導体用接着剤、積層フィルム、並びに、半導体装置及びその製造方法を提供する。
[1](a)熱可塑性樹脂、(b)熱硬化性樹脂、(c)イミダゾール系硬化剤及び(d)キレートフラックス剤を含む半導体用接着剤であって、上記(d)キレートフラックス剤の含有量に対する上記(c)イミダゾール系硬化剤の含有量のモル比が0.2以上である、半導体用接着剤。
[2]上記(c)イミダゾール系硬化剤の含有量が、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、0.5~5.0質量%である、上記[1]に記載の半導体用接着剤。
[3]上記(d)キレートフラックス剤の含有量が、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、0.5~10質量%である、上記[1]又は[2]に記載の半導体用接着剤。
[4]上記(b)熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載の半導体用接着剤。
[5]上記(d)キレートフラックス剤の融点が、235℃以下である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の半導体用接着剤。
[6]上記(d)キレートフラックス剤の分子量が、150以上500以下である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の半導体用接着剤。
[7]上記(d)キレートフラックス剤が、下記一般式(1)で表されるイミン化合物及び/又は下記一般式(2)で表されるイミン化合物を含有する、上記[1]~[6]のいずれかに記載の半導体用接着剤。
【化1】

[式中、Qは、アリーレン基、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロシクリレン基、又はヘテロアリーレン基を示し、R及びRは、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基を示し、R及びRは、各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はヘテロシクリル基を示し、アリーレン基、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロシクリレン基、ヘテロアリーレン基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基については、基に結合する水素原子が、水酸基又はメルカプト基で置換されていてもよい。]
【化2】

[式中、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基を示し、R及びRは、各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はヘテロシクリル基を示し、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、及びヘテロシクリル基については、基に結合する水素原子が、水酸基又はメルカプト基で置換されていてもよい。]
[8]上記一般式(1)で表されるイミン化合物におけるR及びRが、2-ヒドロキシフェニル基である、上記[7]に記載の半導体用接着剤。
[9]上記(d)キレートフラックス剤が、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミン、及びN,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-フェニレンジアミンからなる群より選択される少なくとも一種を含有する、上記[1]~[8]のいずれかに記載の半導体用接着剤。
[10]上記(c)イミダゾール系硬化剤の構造が、トリアジン環を含む構造である、上記[1]~[9]のいずれかに記載の半導体用接着剤。
[11]上記[1]~[10]のいずれかに記載の半導体用接着剤を用いて形成された接着層と、粘着層と、基材層と、をこの順に備える積層フィルム。
[12]半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置の製造方法であって、上記[1]~[10]のいずれかに記載の半導体用接着剤を、常圧又は加圧雰囲気下で熱を加えることにより硬化させ、硬化した上記半導体用接着剤により上記接続部の少なくとも一部を封止する封止工程を備える、半導体装置の製造方法。
[13]上記封止工程の前に、ステージ上に複数の半導体チップを配置する工程と、上記ステージを60~155℃に加熱しながら、上記ステージ上に配置された複数の上記半導体チップのそれぞれの上に、上記半導体用接着剤を介して他の半導体チップを順次配置し、上記半導体チップ、上記半導体用接着剤及び上記他の半導体チップがこの順に積層されてなる積層体を複数得る仮固定工程と、を更に備える、上記[12]に記載の半導体装置の製造方法。
[14]上記封止工程の前に、ステージ上に配線回路基板又は半導体ウェハを配置する工程と、上記ステージを60~155℃に加熱しながら、上記ステージ上に配置された上記配線回路基板又は上記半導体ウェハの上に、上記半導体用接着剤を介して複数の半導体チップを順次配置し、上記配線回路基板、上記半導体用接着剤及び複数の上記半導体チップがこの順に積層されてなる積層体、又は、上記半導体ウェハ、上記半導体用接着剤及び複数の上記半導体チップがこの順に積層されてなる積層体を得る仮固定工程と、を更に備える、上記[12]に記載の半導体装置の製造方法。
[15]半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置の製造方法であって、上記[11]に記載の積層フィルムの上記接着層を、常圧又は加圧雰囲気下で熱を加えることにより硬化させ、硬化した上記接着層により上記接続部の少なくとも一部を封止する封止工程を備える、半導体装置の製造方法。
[16]上記封止工程の前に、ステージ上に複数の半導体チップを配置する工程と、上記ステージを60~155℃に加熱しながら、上記ステージ上に配置された複数の上記半導体チップのそれぞれの上に、上記接着層を介して他の半導体チップを順次配置し、上記半導体チップ、上記接着層及び上記他の半導体チップがこの順に積層されてなる積層体を複数得る仮固定工程と、を更に備える、上記[15]に記載の半導体装置の製造方法。
[17]上記封止工程の前に、ステージ上に配線回路基板又は半導体ウェハを配置する工程と、上記ステージを60~155℃に加熱しながら、上記ステージ上に配置された上記配線回路基板又は上記半導体ウェハの上に、上記接着層を介して複数の半導体チップを順次配置し、上記配線回路基板、上記接着層及び複数の上記半導体チップがこの順に積層されてなる積層体、又は、上記半導体ウェハ、上記接着層及び複数の上記半導体チップがこの順に積層されてなる積層体を得る仮固定工程と、を更に備える、上記[15]に記載の半導体装置の製造方法。
[18]半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置であって、上記接続部の少なくとも一部が、上記[1]~[10]のいずれかに記載の半導体用接着剤の硬化物によって封止されている、半導体装置。
[19]半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置であって、上記接続部の少なくとも一部が、上記[11]に記載の積層フィルムにおける接着層の硬化物によって封止されている、半導体装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、室温環境下で長時間放置した後に使用した場合でも、接続性の低下を抑制することができる半導体用接着剤を提供することができる。また、本発明によれば、室温環境下で長時間放置した後に使用した場合でも、接続性の低下を抑制することができる積層フィルムを提供することができる。更に、本発明によれば、上記半導体用接着剤を用いた半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
図2】半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
図3】半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の一実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0014】
本明細書に記載される数値範囲の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。実施例に記載される数値も、数値範囲の上限値又は下限値として用いることができる。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はそれに対応するメタクリルを意味する。
【0015】
<半導体用接着剤及びその製造方法>
本実施形態の半導体用接着剤は、(a)熱可塑性樹脂(以下、場合により「(a)成分」という。)、(b)熱硬化性樹脂(以下、場合により「(b)成分」という。)、(c)イミダゾール系硬化剤(以下、場合により「(c)成分」という。)及び(d)キレートフラックス剤(以下、場合により「(d)成分」という。)を含有する。本実施形態の半導体用接着剤において、(d)キレートフラックス剤の含有量に対する(c)イミダゾール系硬化剤の含有量のモル比は0.2以上である。本実施形態の半導体用接着剤は、必要に応じて、(e)フィラー(以下、場合により「(e)成分」という。)を含有していてもよい。上記半導体用接着剤によれば、(c)イミダゾール系硬化剤と(d)キレートフラックス剤とを含有し、且つ、それらのモル比が特定の範囲内であることにより、室温環境下で長時間放置した後に使用した場合でも、接続性の低下を抑制することができる。
【0016】
従来の半導体用接着剤のフラックス剤は、分子骨格に比較的強酸性の官能基であるカルボキシ基又はスルホキシ基等を有している。一方、キレートフラックス剤は分子骨格内にカルボキシ基等の比較的強酸性の基を有していないため、熱硬化性樹脂との反応を抑制することができる。加えて、半導体用接着剤中のキレートフラックス剤とイミダゾール系硬化剤とのモル比を上記範囲内とすることでも上記反応を抑制することができる。また、半導体用接着剤中のキレートフラックス剤とイミダゾール系硬化剤とのモル比を上記範囲内とすることで、キレートフラックス剤にイミダゾール系硬化剤が捕捉されて両者が安定化し、上記反応の抑制に加えて、キレートフラックス剤がBGTの粘着層等に移行することを抑制することができる。ここで、イミダゾール系硬化剤がキレートフラックス剤に対して一定以上の比率で存在することで、イミダゾール系硬化剤とキレートフラックス剤とが錯形成し、それにより安定化しているものと推測される。そして、キレートフラックス剤と熱硬化性樹脂との反応が抑制され、且つ、キレートフラックス剤の移行が抑制された結果、半導体用接着剤中に十分な量のキレートフラックス剤が残存し続ける。すなわち、経時安定性が向上し、数週間室温で放置した後の半導体製造における接続性が確保される。
【0017】
以下、本実施形態の半導体用接着剤を構成する各成分について説明する。
【0018】
(a)熱可塑性樹脂
(a)成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂及びアクリルゴムが挙げられる。これらの中でも耐熱性及びフィルム形成性に優れる観点から、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルゴム、シアネートエステル樹脂及びポリカルボジイミド樹脂が好ましく、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂及びアクリル樹脂がより好ましい。これらの(a)成分は単独で使用することができ、2種以上の混合物又は共重合体として使用することもできる。
【0019】
(a)成分の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10000以上であり、20000以上であることがより好ましく、25000以上であることが更に好ましい。このような(a)成分によれば、フィルム形成性及び接着剤の耐熱性を一層向上させることができる。また、重量平均分子量が10000以上であると、フィルム状の半導体用接着剤に柔軟性を付与しやすいため、一層優れた加工性が得られやすい。また、(a)成分の重量平均分子量は、1000000以下であることが好ましく、500000以下であることがより好ましい。このような(a)成分によれば、フィルムの粘度が低下するため、バンプへの埋め込み性が良好になり、より一層ボイド無く実装することができる。これらの観点から、(a)成分の重量平均分子量は、10000~1000000が好ましく、20000~500000がより好ましく、25000~500000が更に好ましい。
【0020】
なお、本明細書において、上記重量平均分子量とは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー、Gel Permeation Chromatography)を用いて測定された、ポリスチレン換算の重量平均分子量を示す。GPC法の測定条件の一例を以下に示す。
装置:HCL-8320GPC、UV-8320(製品名、東ソー株式会社製)、又はHPLC-8020(製品名、東ソー株式会社製)
カラム:TSKgel superMultiporeHZ-M×2、又は2pieces of GMHXL + 1piece of G-2000XL
検出器:RI又はUV検出器
カラム温度:25~40℃
溶離液:高分子成分が溶解する溶媒を選択する。溶媒としては、例えば、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)、DMA(N,N-ジメチルアセトアミド)、NMP(N-メチルピロリドン)、トルエン等が挙げられる。なお、極性を有する溶剤を選択する場合は、リン酸の濃度を0.05~0.1mol/L(通常は0.06mol/L)、LiBrの濃度を0.5~1.0mol/L(通常は0.63mol/L)と調整してもよい。
流速:0.30~1.5mL/分
標準物質:ポリスチレン
【0021】
(a)成分の含有量Cに対する(b)成分の含有量Cの比C/C(質量比)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは1以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは4.5以下、更に好ましくは4以下である。比C/Cを0.01以上とすることで、より良好な硬化性及び接着力が得られ、比C/Cを5以下とすることで、より良好なフィルム形成性が得られる。これらの観点から、比C/Cは0.01~5であることが好ましく、0.1~4.5であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましい。
【0022】
(a)成分のガラス転移温度は、接続信頼性の向上等の観点から、好ましくは-50℃以上、より好ましくは-40℃以上、更に好ましくは-30℃以上であり、ラミネート性等の観点から、好ましくは220℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは180℃以下である。(a)成分のガラス転移温度は、-50~220℃であることが好ましく、-40~200℃であることがより好ましく、-30~180℃であることが更に好ましい。このような(a)成分を含む半導体用接着剤によれば、ウェハレベルでの実装プロセスに際し、ウェハ反り量を一層低減することができると共に、半導体用接着剤の耐熱性及びフィルム形成性を一層向上させることができる。(a)成分のガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。
【0023】
(a)成分の含有量は、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。(a)成分の含有量が30質量%以下であると、半導体用接着剤は温度サイクル試験の際に良好な信頼性を得ることができ、吸湿後でも260℃前後のリフロー温度で良好な接着力を得ることができる。また、(a)成分の含有量は、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが更に好ましい。(a)成分の含有量が1質量%以上であると、半導体用接着剤はウェハレベルでの実装プロセスに際し、ウェハ反り量を一層低減することができると共に、半導体用接着剤の耐熱性及びフィルム形成性を一層向上させることができる。また、(a)成分の含有量が5質量%以上であると、ウェハ形状に外形加工する際のバリ及び欠けの発生を抑制することができる。(a)成分の含有量は、上記観点、及び、フィルム状の半導体用接着剤に柔軟性を付与しやすく、一層優れた加工性が得られやすい観点から、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、1~30質量%が好ましく、3~30質量%がより好ましく、5~30質量%が更に好ましい。なお、「半導体用接着剤の固形分全量」とは、半導体用接着剤の全量から半導体用接着剤に含まれる溶媒の量を除いた量である。本明細書では、「半導体用接着剤の固形分全量」を、「(a)~(e)成分の合計量」と言い換えてもよい。
【0024】
(b)熱硬化性樹脂
(b)成分としては、分子内に2個以上の反応基を有するものであれば特に制限なく用いることができる。半導体用接着剤が熱硬化性樹脂を含有することで、加熱により接着剤が硬化することができ、硬化した接着剤が高い耐熱性とチップへの接着力を発現し、優れた耐リフロー性が得られる。
【0025】
(b)成分としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、(メタ)アクリル化合物、ビニル化合物が挙げられる。これらの中でも耐熱性(耐リフロー性)及び保存安定性に優れる観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びイミド樹脂が好ましく、エポキシ樹脂及びイミド樹脂がより好ましく、エポキシ樹脂が更に好ましい。これらの(b)成分は単独で使用することができ、2種以上の混合物又は共重合体として使用することもできる。従来の半導体用接着剤の中でも、特に、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合に、60~155℃の温度領域でフラックス剤との反応が進行しやすく、一括硬化の前に部分的な硬化が進行する傾向があるが、本実施形態では、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含む場合であっても、このような反応及び部分的な硬化が起こり難い。
【0026】
エポキシ樹脂及びイミド樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂及び各種多官能エポキシ樹脂、ナジイミド樹脂、アリルナジイミド樹脂、マレイミド樹脂、アミドイミド樹脂、イミドアクリレート樹脂、各種多官能イミド樹脂及び各種ポリイミド樹脂を使用することができる。これらは単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0027】
(b)成分は、高温での接続時に分解して揮発成分が発生することを抑制する観点から、接続時の温度が250℃の場合は、250℃における熱重量減少量率が5%以下のものを用いることが好ましく、接続時の温度が300℃の場合は、300℃における熱重量減少量率が5%以下のものを用いることが好ましい。
【0028】
(b)成分の含有量は、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、例えば5質量%以上であり、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上である。(b)成分の含有量は、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、例えば80質量%以下であり、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下である。(b)成分の含有量は、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、例えば、5~80質量%であり、好ましくは15~70質量%であり、より好ましくは30~60質量%である。
【0029】
(c)イミダゾール系硬化剤
(c)成分は、イミダゾール系硬化剤(イミダゾール類)である。半導体用接着剤がイミダゾール系硬化剤を含むと、接続部に酸化膜が生じることを抑制するフラックス活性を示し、接続信頼性・絶縁信頼性を向上させることができる。また、半導体用接着剤がイミダゾール系硬化剤を含むと、保存安定性が一層向上し、吸湿による分解又は劣化が起こりにくくなる傾向がある。さらに、半導体用接着剤がイミダゾール系硬化剤を含むと、硬化速度の調整が容易となり、また、速硬化性により生産性向上を目的とした短時間接続の実現が容易となる。
【0030】
イミダゾール系硬化剤としては、例えば、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノ-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、及び、エポキシ樹脂とイミダゾール類の付加体が挙げられる。これらの中でも、優れた硬化性、保存安定性及び接続信頼性の観点から、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノ-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールが好ましい。これらは単独で又は2種以上を併用して用いることができる。また、これらをマイクロカプセル化した潜在性硬化剤としてもよい。
【0031】
(c)成分の含有量は、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上であり、更に好ましくは1.5質量%以上であり、好ましくは5.0質量%以下であり、より好ましくは3.0質量%以下であり、更に好ましくは2.0質量%以下である。(c)成分の含有量が0.5質量%以上であると硬化性が向上すると共に、キレートフラックス剤と熱硬化性樹脂との反応、及び、キレートフラック剤の粘着層等への移行を抑制することができ、半導体用接着剤を室温環境下で長時間放置した後の半導体製造における接続性をより向上させることができる。(c)成分の含有量が5.0質量%以下であると金属接合が形成される前に半導体用接着剤が硬化することがなく、接続不良が発生しにくく、また、加圧雰囲気下の硬化プロセスにおいてはボイドの発生を抑制しやすい。これらの観点から、(c)成分の含有量は、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、0.5~5.0質量%が好ましく、1.0~3.0質量%がより好ましく、1.5~2.0質量%が更に好ましい。
【0032】
(c)成分の含有量は、(b)成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上であり、より好ましくは2.0質量部以上であり、更に好ましくは3.0質量部以上であり、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは7.0質量部以下であり、更に好ましくは5.0質量部以下である。イミダゾール系硬化剤の含有量が0.1質量部以上であると硬化性が向上する傾向がある。(c)成分の含有量が1.0質量部以上であると硬化性が向上すると共に、キレートフラックス剤と熱硬化性樹脂との反応、及び、キレートフラック剤の粘着層等への移行を抑制することができ、半導体用接着剤を室温環境下で長時間放置した後の半導体製造における接続性をより向上させることができる。(c)成分の含有量が10質量部以下であると金属接合が形成される前に半導体用接着剤が硬化することがなく、接続不良が発生しにくく、また、加圧雰囲気下の硬化プロセスにおいてはボイドの発生を抑制しやすい。これらの観点から、(c)成分の含有量は、(b)成分100質量部に対して、1.0~10質量部が好ましく、2.0~7.0質量部がより好ましく、3.0~5.0質量部がより好ましい。
【0033】
(c)成分は、1種を単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。また、(c)成分は、(b)成分の硬化剤として機能する、上記イミダゾール系硬化剤以外の他の硬化剤と併用してもよい。他の硬化剤としては、例えばアミン系硬化剤が挙げられる。
【0034】
(d)キレートフラックス剤
(d)成分は、フラックス活性を有する化合物である。半導体用接着剤が(d)成分を含むことで、接続部の金属の酸化膜、及び、OSP処理によるコーティングを除去できるため、優れた接続信頼性が得られやすい。本実施形態に係る(d)成分がキレートフラックス剤であることにより、従来のカルボン酸系のフラックス剤等と比較して弱酸化が達成され、絶縁信頼性の向上が期待される。
【0035】
本実施形態に係る(d)成分は、フリップチップ実装中において、はんだの融点以下でフラックス剤の運動性を高めて金属酸化膜を十分に除去するためのフラックス活性を発現させる観点から、例えば、はんだ種が錫-銀合金となる場合、キレートフラックス剤は単体の状態での融点が235℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましい。融点の下限は特に限定されないが、例えば、-50℃であってよい。
【0036】
また、本実施形態に係る(d)成分は、フリップチップ実装においてフラックス活性が発現する前に揮発してしまうこと、即ち接合部の酸化膜を除去する前に(d)成分が揮発してしまうことを防ぐ必要から、分子量が150以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましい。また、本実施形態に係る(d)成分は、半導体用接着剤中でも高い運動性を有することで、十分なフラックス活性が得られることから、分子量が500以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましい。
【0037】
本実施形態に係る(d)成分は、金属イオン捕捉剤として機能するフラックス剤であれば、特に限定されないが、下記一般式(1)及び/又は下記一般式(2)で表されるイミン化合物であることが好ましい。このようなイミン化合物を用いることにより、銅イオン等の金属イオンを効率的に捕捉することができ、マイグレーションの誘発によるショート不良等の抑止効果が期待される。
【0038】
【化3】
【0039】
【化4】
【0040】
一般式(1)で表されるイミン化合物において、Qは、アリーレン基、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロシクリレン基、又はヘテロアリーレン基であり、R及びRは、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基であり、R及びRは、各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はヘテロシクリル基である。アリーレン基、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ヘテロシクリレン基、ヘテロアリーレン基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基については、基に結合する水素原子が、水酸基又はメルカプト基で置換されていてもよい。
【0041】
アリーレン基としては、特に限定されないが、例えば、フェニレン(o-フェニレン、m-フェニレン、p-フェニレン)、ビフェニレン、ナフチレン、ビナフチレン、アントラセニレン、及びフェナントリレン基が挙げられる。
【0042】
アルキレン基としては、特に限定されないが、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、トリデカメチレン、テトラデカメチレン、ペンタデカメチレン、及びヘキサデカメチレン基の直鎖状アルキレン基;メチルエチレン、メチルプロピレン、エチルエチレン、1,2-ジメチルエチレン、1,1-ジメチルエチレン、1-エチルプロピレン、2-エチルプロピレン、1,2-ジメチルプロピレン、2,2-ジメチルプロピレン、1-プロピルプロピレン、2-プロピルプロピレン、1-メチル-1-エチルプロピレン、1-メチル-2-エチル-プロピレン、1-エチル-2-メチル-プロピレン、2-メチル-2-エチル-プロピレン、1-メチルブチレン、2-メチルブチレン、3-メチルブチレン、2-エチルブチレン、メチルペンチレン、エチルペンチレン、メチルヘキシレン、メチルヘプチレン、メチルオクチレン、メチルノニレン、メチルデシレン、メチルウンデシレン、メチルドデシレン、メチルテトラデシレン、及びメチルオクタデシレン基の分岐鎖状アルキレン基が挙げられる。
【0043】
アルケニレン基としては、特に限定されないが、例えば、ビニレン、1-メチルビニレン、プロペニレン、1-ブテニレン、2-ブテニレン、1-ペンテニレン、及び2-ペンテニレン基が挙げられる。
【0044】
シクロアルキレン基としては、特に限定されないが、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロヘキセニレン、1,2-シクロヘキシレンビス(メチレン)、1,3-シクロヘキシレンビス(メチレン)、及び1,4-シクロヘキシレンビスが挙げられる。
【0045】
シクロアルケニレン基としては、特に限定されないが、例えば、シクロプロペニレン、シクロブテニレン、シクロペンテニレン、シクロヘキセニレン、及びシクロオクテニレン基が挙げられる。
【0046】
ヘテロシクリレン基としては、特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン-2,5-ジイル、モルホリン-2,3-ジイル、ピラン-2,4-ジイル、1,4-ジオキサン-2,3-ジイル、1,3-ジオキサン-2,4-ジイル、ピペリジン-2,4-ジイル、ピペリジン-1,4-ジイル、ピロリジン-1,3-ジイル、モルホリン-2,4-ジイル、及びピペラジン-1,4-ジイルが挙げられる。
【0047】
ヘテロアリーレン基としては、特に限定されないが、上記したアリーレン基の炭素原子のうち一つ以上の炭素原子が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子のようなヘテロ原子に置換された基である。具体的には、フェナントレン、ピロール、ピラジン、ピリジン、ピリミジン、インドリン、イソインドリン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、カルバゾール、フェニルカルバゾール、フェナントリジン、アクリジン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、フェニルジベンゾフラン、ジフェニルジベンゾフラン、チオフェン、フェニルチオフェン、ジフェニルチオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、フェニルベンゾチオフェン、ジフェニルベンゾチオフェン、フェニルジベンゾチオフェン、及びベンゾチアゾールを2価の基としたものが挙げられる。
【0048】
アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、2-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-ペンチル基、tert-ペンチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、2,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、及び2-メチルペンタン-3-イル基が挙げられる。
【0049】
シクロアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0050】
アリール基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナンスレニル基、及びビフェニル基が挙げられる。
【0051】
ヘテロアリール基としては、特に限定されないが、2-オキソピロリジノ基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基、パーヒドロナフチル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、ピリダジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、インドリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フタラジル基、キナゾリル基、ナフチリジル基、シンノリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、及びテトラヒドロナフチル基が挙げられる。
【0052】
式(2)で表されるイミン化合物においては、Rが、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基であり、R及びRは各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はヘテロシクリル基である。アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、及びヘテロシクリル基については、基に結合する水素原子が、水酸基又はメルカプト基で置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、及びヘテロシクリル基については、上記と同様である。
【0053】
式(1)で表されるイミン化合物においては、優れたフラックス活性を発現させ、効率良く金属イオン捕捉させる観点から、R及びRが、2-ヒドロキシフェニル基であることが好ましい。
【0054】
式(1)で表されるイミン化合物は、フリップチップ実装中において、はんだの融点以下でフラックス剤の運動性を高めて金属酸化膜を十分に除去するためのフラックス活性を発現させる観点から、例えば、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミン、及びN,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-フェニレンジアミンであることが好ましい。これらのキレートフラックス剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(d)成分としては、市販のものを用いてもよい。
【0055】
本実施形態の半導体用接着剤中における(d)成分の含有量は、特に限定されないが、半導体用接着剤のフラックス活性と、経時安定性の観点から、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上であり、更に好ましくは2.0質量%以上であり、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは7.0質量%以下であり、更に好ましくは5.0質量%以下である。(d)成分の含有量が0.5質量%以上の場合、充分に接続性が確保される傾向がある。(d)成分の含有量が10質量%以下の場合、揮発性の抑制及びフィルム形成性を担保し、加えて、半導体製造時におけるボイドが残存することを抑制しやすくなると共に、キレートフラックス剤と熱硬化性樹脂との反応、及び、キレートフラック剤の粘着層等への移行を抑制することができ、半導体用接着剤を室温環境下で長時間放置した後の半導体製造における接続性をより向上させることができる。これらの観点から、(d)成分の含有量は、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、0.5~10質量%が好ましく、1.0~7.0質量%がより好ましく、2.0~5.0質量%が更に好ましい。
【0056】
本実施形態の半導体用接着剤中における(d)成分の含有量は、特に限定されないが、半導体用接着剤のフラックス活性と、経時安定性の観点から、(b)成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上であり、より好ましくは2.0質量部以上であり、更に好ましくは3.0質量部以上であり、好ましくは30質量部以下であり、より好ましくは15質量部以下であり、更に好ましくは10質量部以下である。(d)成分の含有量が0.5質量部以上の場合、充分に接続性が確保される傾向がある。(d)成分の含有量が30質量部以下の場合、揮発性の抑制及びフィルム形成性を担保し、加えて、半導体製造時におけるボイドが残存することを抑制しやすくなると共に、キレートフラックス剤と熱硬化性樹脂との反応、及び、キレートフラック剤の粘着層等への移行を抑制することができ、半導体用接着剤を室温環境下で長時間放置した後の半導体製造における接続性をより向上させることができる。これらの観点から、(d)成分の含有量は、(b)成分100質量部に対して、0.5~30質量部が好ましく、2.0~15質量部がより好ましく、3.0~10質量部が更に好ましい。
【0057】
本実施形態の半導体用接着剤において、(d)成分の含有量に対する(c)成分の含有量のモル比((c)成分のモル数/(d)成分のモル数)は0.2以上であり、0.4以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましい。上記モル比が0.2以上であることにより、キレートフラックス剤と熱硬化性樹脂との反応、及び、キレートフラック剤の粘着層等への移行を抑制することができ、半導体用接着剤を室温環境下で長時間放置した後の半導体製造における接続性をより向上させることができる。上記モル比の上限値は特に限定されないが、十分なフラックス活性を発現させる観点から、4.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.5以下であることが更に好ましい。
【0058】
本実施形態の半導体用接着剤において、(d)成分の含有量に対する(c)成分の含有量の質量比((c)成分の質量/(d)成分の質量)は、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.5以上であることが更に好ましい。上記質量比が0.1以上であることにより、キレートフラックス剤と熱硬化性樹脂との反応、及び、キレートフラック剤の粘着層等への移行を抑制することができ、半導体用接着剤を室温環境下で長時間放置した後の半導体製造における接続性をより向上させることができる。上記質量比の上限値は特に限定されないが、十分なフラックス活性を発現させる観点から、3.0以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることが更に好ましい。
【0059】
(e)フィラー
本実施形態の半導体用接着剤は、必要に応じて、フィラー((e)成分)を含有していてもよい。(e)成分によって、半導体用接着剤の粘度、半導体用接着剤の硬化物の物性等を制御することができる。具体的には、(e)成分によれば、例えば、接続時のボイド発生の抑制、半導体用接着剤の硬化物の吸湿率の低減、等を図ることができる。
【0060】
(e)成分としては、絶縁性無機フィラー、ウィスカー、樹脂フィラー等を用いることができる。また、(e)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
絶縁性無機フィラーとしては、例えば、ガラス、シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック、マイカ及び窒化ホウ素が挙げられる。これらの中でも、シリカ、アルミナ、酸化チタン及び窒化ホウ素が好ましく、シリカ、アルミナ及び窒化ホウ素がより好ましい。
【0062】
ウィスカーとしては、例えば、ホウ酸アルミニウム、チタン酸アルミニウム、酸化亜鉛、珪酸カルシウム、硫酸マグネシウム及び窒化ホウ素が挙げられる。
【0063】
樹脂フィラーとしては、例えば、ポリウレタン、ポリイミド等の樹脂からなるフィラーが挙げられる。
【0064】
樹脂フィラーは、有機成分(エポキシ樹脂及び硬化剤等)と比較して熱膨張率が小さいため接続信頼性の向上効果に優れる。また、樹脂フィラーによれば、半導体用接着剤の粘度調整を容易に行うことができる。また、樹脂フィラーは、無機フィラーと比較して応力を緩和する機能に優れている。
【0065】
無機フィラーは、樹脂フィラーと比較して熱膨張率が小さいため、無機フィラーによれば、接着剤組成物の低熱膨張率化が実現できる。また、無機フィラーには汎用品で粒径制御されたものが多いため、粘度調整にも好ましい。
【0066】
樹脂フィラー及び無機フィラーはそれぞれに有利な効果があるため、用途に応じていずれか一方を用いてもよく、双方の機能を発現するため双方を混合して用いてもよい。
【0067】
(e)成分の形状、粒径及び含有量は特に制限されない。また、(e)成分は、表面処理によって物性を適宜調整されたものであってもよい。
【0068】
(e)成分の含有量は、半導体用接着剤の固形分全量基準で、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下である。(e)成分の含有量は、半導体用接着剤の固形分全量基準で、10~80質量%であることが好ましく、15~60質量%であることがより好ましい。
【0069】
(e)成分は、絶縁物で構成されていることが好ましい。(e)成分が導電性物質(例えば、はんだ、金、銀、銅等)で構成されていると、絶縁信頼性(特にHAST耐性)が低下するおそれがある。
【0070】
(その他の成分)
本実施形態の半導体用接着剤には、酸化防止剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、レベリング剤、イオントラップ剤等の添加剤を配合してもよい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの配合量については、各添加剤の効果が発現するように適宜調整すればよい。
【0071】
本実施形態の半導体用接着剤は、フィルム状であってよい。この場合、Pre-applied方式で半導体チップと配線基板の空隙又は複数の半導体チップ間の空隙を封止する場合の作業性を向上させることができる。フィルム状に成形された本実施形態の半導体用接着剤(フィルム状接着剤)の作製方法の一例を以下に示す。
【0072】
まず、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分、並びに必要に応じて添加される(e)成分等を、有機溶媒中に加え、攪拌混合、混錬等により、溶解又は分散させて、樹脂ワニスを調製する。その後、離型処理を施した基材フィルム上に、樹脂ワニスをナイフコーター、ロールコーター、アプリケーター等を用いて塗布した後、加熱により有機溶媒を除去することにより、基材フィルム上にフィルム状接着剤を形成することができる。
【0073】
フィルム状接着剤の厚みは特に制限されないが、例えば、接続前のバンプの高さの0.5~1.5倍であることが好ましく、0.6~1.3倍であることがより好ましく、0.7~1.2倍であることが更に好ましい。
【0074】
フィルム状接着剤の厚さがバンプの高さの0.5倍以上であると、接着剤の未充填によるボイドの発生を充分に抑制することができ、接続信頼性を一層向上させることができる。また、厚さが1.5倍以下であると、接続時にチップ接続領域から押し出される接着剤の量を充分に抑制することができるため、不要な部分への接着剤の付着を充分に防止することができる。フィルム状接着剤の厚さが1.5倍より大きいと、多くの接着剤をバンプが排除しなければならなくなり、導通不良が生じやすくなる。また、狭ピッチ化・多ピン化によるバンプの弱化(バンプ径の微小化)に対して、多くの樹脂を排除することは、バンプへのダメージが大きくなるため好ましくない。
【0075】
一般にバンプの高さが5~100μmであることからすると、フィルム状接着剤の厚さは2.5~150μmであることが好ましく、3.5~120μmであることがより好ましい。
【0076】
樹脂ワニスの調製に用いる有機溶媒としては、各成分を均一に溶解又は分散し得る特性を有するものが好ましく、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ジオキサン、シクロヘキサノン、及び酢酸エチルが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。樹脂ワニス調製の際の攪拌混合及び混錬は、例えば、攪拌機、らいかい機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル又はホモディスパーを用いて行うことができる。
【0077】
基材フィルムとしては、有機溶媒を揮発させる際の加熱条件に耐え得る耐熱性を有するものであれば特に制限はなく、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム及びポリエーテルイミドフィルムを例示できる。基材フィルムは、これらのフィルムからなる単層のものに限られず、2種以上の材料からなる多層フィルムであってもよい。
【0078】
基材フィルムへ塗布した樹脂ワニスから有機溶媒を揮発させる際の乾燥条件は、有機溶媒が充分に揮発する条件とすることが好ましく、具体的には、50~200℃、0.1~90分間の加熱を行うことが好ましい。有機溶媒は、フィルム状接着剤全量に対して1.5質量%以下まで除去されることが好ましい。
【0079】
また、本実施形態の半導体用接着剤は、ウェハ上で直接形成してもよい。具体的には、例えば、上記樹脂ワニスをウェハ上に直接スピンコートして膜を形成した後、有機溶媒を除去することにより、ウェハ上に直接半導体用接着剤からなる層を形成してもよい。
【0080】
本実施形態の半導体用接着剤の最低溶融粘度は、加圧雰囲気下での硬化時にボイドがより一層除去されやすくなり、より一層優れた耐リフロー性が得られる観点から、200~10000Pa・sであることが好ましく、200~5000Pa・sであることがより好ましい。最低溶融粘度は、溶融粘度測定装置を用いて、測定温度:0~200℃、昇温速度:10℃/min、周波数:10Hz、ひずみ:1%の条件で測定することができる。半導体用接着剤が最低溶融粘度を示す温度(溶融温度)は、好ましくは100~250℃であり、より好ましくは120~230℃であり、更に好ましくは140~200である。
【0081】
本実施形態の半導体用接着剤は、60~170℃の温度領域での半導体チップの仮固定が容易となる観点から、80℃での溶融粘度が2000~30000Pa・s又は4000~30000Pa・sであることが好ましく、130℃での溶融粘度が400~20000Pa・sであることが好ましく、80℃での溶融粘度が2000~20000Pa・sであり、且つ、130℃での溶融粘度が400~5000Pa・sであることがより好ましい。上記溶融粘度は、溶融粘度測定装置を用いて、上述した方法で測定することができる。
【0082】
以上説明した本実施形態の半導体用接着剤は、常圧又は加圧雰囲気下で熱を加えることにより硬化させるプロセスに好適に用いることができ、特に、半導体用接着剤を介して複数の半導体チップを被搭載部材(半導体チップ、半導体ウェハ、配線回路基板等)の上に搭載し仮固定した後、常圧又は加圧条件下で一括して硬化と封止を行うプロセスに好適に用いることができる。このプロセスに本実施形態の半導体用接着剤を用いる場合、常圧又は加圧により接着剤内部のボイドが除去されやすく、一層優れた耐リフロー性が得られやすい。
【0083】
<積層フィルム>
本実施形態に係る積層フィルムは、上述した半導体用接着剤を用いて形成された接着層(フィルム状接着剤)と、バックグラインドテープ(BGT)とを備える。バックグラインドテープは、粘着層と基材層とを備え、粘着層が接着層と対向するように配置される。積層フィルムは、接着層の粘着層とは反対側の面上に、上述した基材フィルムを備えていてもよい。
【0084】
バックグラインドテープは、一層以上の粘着層及び一層以上の基材層を含んでいてよく、一層の粘着層と一層の基材層からなるものであってよい。本実施形態の積層フィルムは、バックグラインド及び回路部材接続の両用途を兼ね備えることができる。その場合、接着層が、半導体ウエハの電極が設けられている側の主面に貼り付けられる。
【0085】
粘着層は、室温で粘着力があり、被着体に対する必要な密着力を有することが好ましい。また、放射線等の高エネルギー線又は熱によって硬化する(粘着力が低下する)特性を備えることが好ましいが、放射線等の高エネルギー線又は熱を加えなくとも接着層から容易に剥離可能であることがより好ましい。また、粘着層は、感圧型の粘着層であってもよい。粘着層は例えば、アクリル系樹脂、各種合成ゴム、天然ゴム、ポリイミド樹脂を用いて形成することができる。
【0086】
粘着層の厚さは、5~100μmであってよく、10~80μmであってよい。
【0087】
基材層としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム等のプラスチックフィルムが挙げられる。これらの中でも、ポリエステルフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。また、基材層は、上記の材料から選ばれる2種以上が混合されたもの、又は、上記のフィルムが複層化されたものでもよい。
【0088】
基材層の厚さは、10~100μmであってよく、20~80μmであってよい。
【0089】
バックグラインドテープの厚さは、10~200μmであってよく、20~150μmであってよい。
【0090】
本実施形態に係る積層フィルムは、接着層が上述した半導体用接着剤を用いて形成された層であるため、接着層中のキレートフラックス剤が粘着層に移行することを抑制することができる。そのため、積層フィルムの経時安定性が向上し、室温環境下で長時間放置した後に半導体装置の製造に使用した場合でも、接続性の低下を抑制することができる。
【0091】
<半導体装置>
本実施形態の半導体装置は、半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置である。この半導体装置では、接続部の少なくとも一部が、例えば常圧又は加圧雰囲気下で熱を加えて硬化された、上記半導体用接着剤の硬化物によって封止されている。上記硬化物は、上記積層フィルムにおける接着層の硬化物であってもよい。以下、図1図2及び図3を参照して本実施形態の半導体装置について説明する。図1図2及び図3は、それぞれ、後述する実施形態に係る方法によって製造され得る半導体装置の一実施形態を示す断面図である。
【0092】
図1は、半導体チップ及び基板のCOB型の接続態様を示す模式断面図である。図1に示す半導体装置100は、半導体チップ1及び基板2(配線回路基板)と、これらの間に介在する接着層40とを備える。半導体装置100の場合、半導体チップ1は、半導体チップ本体10と、半導体チップ本体10の基板2側の面上に配置された配線又はバンプ15と、配線又はバンプ15上に配置された接続部としてのはんだ30とを有する。基板2は、基板本体20と、基板本体20の半導体チップ1側の面上に配置された接続部としての配線又はバンプ16とを有する。半導体チップ1のはんだ30と、基板2の配線又はバンプ16とは、金属接合によって電気的に接続されている。半導体チップ1及び基板2は、配線又はバンプ16及びはんだ30によりフリップチップ接続されている。配線又はバンプ15,16及びはんだ30は、接着層40によって封止されることで、外部環境から遮断されている。
【0093】
図2は、半導体チップ同士のCOC型の接続態様を示す。図2に示す半導体装置300の構成は、2つの半導体チップ1が配線又はバンプ15及びはんだ30を介してフリップチップ接続されている点を除き、半導体装置100と同様である。
【0094】
図1及び図2において、配線又はバンプ15等の接続部は、パッドと呼ばれる金属膜(例えば、金めっき)であってもよく、ポスト電極(例えば、銅ピラー)であってもよい。
【0095】
半導体チップ本体10としては、特に制限はなく、シリコン、ゲルマニウム等の同一種類の元素から構成される元素半導体、ガリウムヒ素、インジウムリン等の化合物半導体などの各種半導体を用いることができる。
【0096】
基板2としては、配線回路基板であれば特に制限はなく、ガラスエポキシ、ポリイミド、ポリエステル、セラミック、エポキシ、ビスマレイミドトリアジン等を主な成分とする絶縁基板の表面に形成された金属層の不要な箇所をエッチング除去して配線(配線パターン)が形成された回路基板、上記絶縁基板の表面に金属めっき等によって配線(配線パターン)が形成された回路基板、上記絶縁基板の表面に導電性物質を印刷して配線(配線パターン)が形成された回路基板などを用いることができる。
【0097】
配線又はバンプ15及び16、はんだ30等の接続部の材質としては、主成分として、金、銀、銅、はんだ(主成分は、例えば、スズ-銀、スズ-鉛、スズ-ビスマス、スズ-銅、スズ-銀-銅)、スズ、ニッケル等が用いられ、単一の成分のみで構成されていてもよく、複数の成分から構成されていてもよい。接続部は、これらの金属が積層された構造を有していてもよい。金属材料のうち、銅、はんだが、比較的安価であり、好ましい。接続信頼性の向上及び反り抑制の観点から、接続部がはんだを含んでいてもよい。
【0098】
パッドの材質としては、主成分として、金、銀、銅、はんだ(主成分は、例えば、スズ-銀、スズ-鉛、スズ-ビスマス、スズ-銅、スズ-銀-銅)、スズ、ニッケル等が用いられ、単一の成分のみで構成されていてもよく、複数の成分から構成されていてもよい。パッドは、これらの金属が積層された構造を有していてもよい。接続信頼性の観点から、パッドが金又ははんだを含んでいてもよい。
【0099】
配線又はバンプ15,16(配線パターン)の表面には、金、銀、銅、はんだ(主成分は、例えば、スズ-銀、スズ-鉛、スズ-ビスマス、スズ-銅)、スズ、ニッケル等を主成分とする金属層が形成されていてもよい。この金属層は単一の成分のみで構成されていてもよく、複数の成分から構成されていてもよい。金属層が複数の金属層が積層された構造を有していてもよい。金属層が、比較的安価な銅又ははんだを含んでいてもよい。接続信頼性の向上及び反り抑制の観点から、金属層が、はんだを含んでいてもよい。
【0100】
図1又は図2に示すような半導体装置(パッケージ)を積層して、金、銀、銅、はんだ(主成分は、例えば、スズ-銀、スズ-鉛、スズ-ビスマス、スズ-銅、スズ-銀-銅)、スズ、ニッケル等で電気的に接続してもよい。接続するための金属は、比較的安価な銅又ははんだであってもよい。例えば、TSV技術で見られるような、接着層を半導体チップ間に介して、フリップチップ接続又は積層し、半導体チップを貫通する孔を形成し、パターン面の電極とつなげてもよい。
【0101】
図3は、半導体装置の他の実施形態(半導体チップ積層型の態様(TSV))を示す断面図である。図3に示す半導体装置500では、基板としてのインターポーザー本体50上に形成された配線又はバンプ15が半導体チップ1のはんだ30と接続されることにより、半導体チップ1とインターポーザー5とがフリップチップ接続されている。半導体チップ1とインターポーザー5との間には接着層40が介在している。上記半導体チップ1におけるインターポーザー5と反対側の表面上に、配線又はバンプ15、はんだ30及び接着層40を介して半導体チップ1が繰り返し積層されている。半導体チップ1の表裏におけるパターン面の配線又はバンプ15は、半導体チップ本体10の内部を貫通する孔内に充填された貫通電極34により互いに接続されている。貫通電極34の材質としては、銅、アルミニウム等を用いることができる。
【0102】
このようなTSV技術により、通常は使用されない半導体チップの裏面からも信号を取得することができる。更には、半導体チップ1内に貫通電極34を垂直に通すため、対向する半導体チップ1間、並びに、半導体チップ1及びインターポーザー5間の距離を短くし、柔軟な接続が可能である。接着層は、このようなTSV技術において、対向する半導体チップ1間、並びに、半導体チップ1及びインターポーザー5間の封止材料として適用することができる。
【0103】
<半導体装置の製造方法>
半導体装置の製造方法の一実施形態は、接続部を有する第一の部材と接続部を有する第二の部材とを、第一の部材の接続部と第二の部材の接続部とが対向配置されるように、半導体用接着剤を介して積層する積層工程と、当該半導体用接着剤を常圧又は加圧雰囲気下で熱を加えることにより硬化させ、硬化した半導体用接着剤により接続部の少なくとも一部を封止する封止工程と、を備える。ここで、第一の部材は、例えば、配線回路基板、半導体チップ又は半導体ウェハであり、第二の部材は半導体チップである。封止工程では、積層工程において得られた積層体を常圧又は加圧雰囲気下で対向配置された接続部の融点以上の温度に加熱することにより、対向配置された接続部同士を電気的に接続されるように接合する。
【0104】
第一の部材が半導体チップである場合、積層工程は、例えば、ステージ上に複数の半導体チップを配置する工程と、ステージを加熱しながら、ステージ上に配置された複数の半導体チップのそれぞれの上に、半導体用接着剤を介して他の半導体チップを順次配置し、半導体チップ、半導体用接着剤及び他の半導体チップがこの順に積層されてなる積層体(仮固定体)を複数得る仮固定工程と、を含む。
【0105】
第一の部材が複数の半導体チップを基材配線回路基板又は半導体ウェハである場合、積層工程は、例えば、ステージ上に配線回路基板又は半導体ウェハを配置する工程と、ステージを加熱しながら、ステージ上に配置された配線回路基板又は半導体ウェハの上に、半導体用接着剤を介して複数の半導体チップを順次配置し、配線回路基板、半導体用接着剤及び複数の上記半導体チップがこの順に積層されてなる積層体(仮固定体)、又は、半導体ウェハ、半導体用接着剤及び複数の上記半導体チップがこの順に積層されてなる積層体(仮固定体)を得る仮固定工程と、を含む。
【0106】
仮固定工程では、例えば、まず、第一の部材上又は第二の部材上に半導体用接着剤を配置(例えばフィルム状の半導体用接着剤を貼付)する。次いで、ダイシングテープ上で個片化された半導体チップをピックアップして、圧着機の圧着ツール(圧着ヘッド)に吸着させ、配線回路基板、他の半導体チップ又は半導体ウェハに仮固定する。
【0107】
半導体用接着剤を配置する方法は特に限定されず、例えば、半導体用接着剤がフィルム状である場合には、加熱プレス、ロールラミネート、真空ラミネート等の方法であってよい。配置される半導体用接着剤の面積及び厚みは、第一の部材及び第二の部材のサイズ、接続部(バンプ)の高さ等によって適宜設定される。半導体用接着剤を半導体チップ上に配置してもよいし、半導体用接着剤が配置された半導体ウェハをダイシングした後、これを半導体チップに個片化してもよい。
【0108】
仮固定工程では、接続部同士を電気的に接続するために位置あわせが必要である。そのため、一般的にはフリップチップボンダー等の圧着機が使用される。
【0109】
仮固定のために圧着ツールが半導体チップをピックアップする際に、半導体チップ上の半導体用接着剤等に熱が転写しないように、圧着ツールが低温であることが好ましい。一方、圧着(仮圧着)時には、半導体用接着剤の流動性を高めて、巻き込まれたボイドを効率的に排除できるように、半導体チップが高温に加熱されることが好ましい。ただし、半導体用接着剤の硬化反応の開始温度よりも低温の加熱が好ましい。冷却時間を短縮するため、半導体チップをピックアップする際の圧着ツールの温度と、仮固定の際の圧着ツールの温度との差は、小さい方が好ましい。この温度差は、100℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましく、実質的に0℃であることが更に好ましい。温度差が100℃以上であると、圧着ツールの冷却に時間がかかるため生産性が低下する傾向がある。
【0110】
仮固定のために加えられる荷重は、接続部(バンプ)の数、接続部(バンプ)の高さばらつきの吸収、接続部(バンプ)の変形量等の制御を考慮して適宜設定される。仮固定工程では、圧着(仮圧着)後に、対向する接続部同士が接触していることが好ましい。圧着後に接続部同士が接触していると、封止工程における圧着(本圧着)において接続部の金属結合が形成しやすく、また、半導体用接着剤の噛み込みが少ない傾向がある。荷重は、ボイドを排除し、接続部の接触のために、大きい方が好ましく、例えば、接続部(例えばバンプ)1個辺り、0.0001N~0.2Nが好ましく、0.009N~0.2Nが好ましく、0.001~0.1Nがより一層好ましい。
【0111】
仮固定工程の圧着時間は、生産性向上の観点から、短時間であるほど好ましく、例えば、5秒以下、3秒以下、又は2秒以下であってもよい。
【0112】
ステージの加熱温度は、第一の部材の接続部の融点及び第二の部材の接続部の融点よりも低い温度であり、通常60~155℃、65~120℃、又は、70~100℃であってよい。このような温度で加熱することで、半導体用接着剤中に巻き込まれたボイドを効率的に排除できる。なお、ステージの加熱温度が実際に接着剤自体に加わるわけではない。
【0113】
仮固定の際の圧着ツールの温度は、前述のように半導体チップをピックアップする際の圧着ツールの温度との温度差が小さくなるように設定することが好ましいが、例えば、80~350℃、又は、100~170℃であってよい。
【0114】
積層工程が上記仮固定工程を含む場合、仮固定工程に続く封止工程では、複数の積層体又は複数の半導体チップを備える積層体における半導体用接着剤を一括もしくは分割して硬化させ、複数の接続部を一括もしくは分割して封止してよい。封止工程によって、対向する接続部が金属結合によって接合すると共に、通常、半導体用接着剤によって接続部間の空隙が充てんされる。封止工程は、接続部の金属の融点以上に加熱可能であり、加圧が可能な装置を用いて行われる。装置の例としては、加圧リフロ炉、及び加圧オーブンが挙げられる。
【0115】
封止工程の加熱温度(接続温度)は、対向する接続部(例えば、バンプ-バンプ、バンプ-パッド、バンプ-配線)のうち、少なくとも一方の金属の融点以上の温度で加熱することが好ましい。例えば、接続部の金属がはんだである場合、200℃以上、450℃以下が好ましい。加熱温度が低温であると接続部の金属が溶融せず、充分な金属結合が形成されない可能性がある。加熱温度が過度に高温であると、ボイド抑制の効果が相対的に小さくなったり、はんだが飛散し易くなったりする傾向がある。
【0116】
接続部の接合のための加圧を圧着機を用いて行うと、接続部の側面にはみ出た半導体用接着剤(フィレット)には圧着機の熱が伝わり難いため、圧着(本圧着)後、半導体用接着剤の硬化を充分に進行させるための加熱処理が更に必要となることが多い。そのため、封止工程での加圧は、圧着機ではなく、加圧リフロ炉、加圧オーブン等内での気圧により行うことが好ましい。気圧による加圧であれば、全体に熱を加えることができ、圧着(本圧着)後の加熱処理を短縮、又は無くすことができ、生産性が向上する。また、気圧による加圧であれば、複数の積層体(仮固定体)又は仮固定された複数の半導体チップを備える積層体(仮固定体)の本圧着を、一括して行い易い。さらに、圧着機を用いた直接的な加圧ではなく、気圧による加圧の方が、フィレット抑制の観点からも、好ましい。フィレット抑制は、半導体装置の小型化及び高密度化の傾向に対して、重要である。
【0117】
封止工程における圧着が行われる雰囲気は、特に制限はないが、空気、窒素、蟻酸等を含む雰囲気が好ましい。
【0118】
封止工程における圧着の圧力は、接続される部材のサイズ及び数等に応じて適宜設定される。圧力は、例えば、大気圧を超えて1MPa以下であってもよい。圧力が大きいほうがボイド抑制、接続性向上の観点から好ましく、フィレット抑制の観点からは圧力は小さいほうが好ましい。そのため、圧力は0.05~0.5MPaがより好ましい。
【0119】
圧着時間は、接続部の構成金属により異なるが、生産性が向上する観点から短時間であるほど好ましい。接続部がはんだバンプである場合、接続時間は20秒以下が好ましく、10秒以下がより好ましく、5秒以下が更に好ましい。銅-銅又は銅-金の金属接続の場合は、接続時間は60秒以下が好ましい。
【0120】
TSV構造の半導体装置のように、立体的に複数の半導体チップが積層される場合、複数の半導体チップを一つずつ積み重ねて仮固定された状態とし、その後、積層された複数の半導体チップを一括して加熱及び加圧することで半導体装置を得てもよい。
【0121】
以上の半導体装置の製造方法では、本実施形態に係る半導体用接着剤を用いた場合について説明したが、当該半導体用接着剤に代えて、本実施形態に係る積層フィルムの接着層を用いてもよい。
【実施例0122】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0123】
各実施例及び比較例で使用した化合物は以下の通りである。
(a)成分:熱可塑性樹脂
・フェノキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、商品名「FX293」、Tg:約160℃、Mw:約40000
【0124】
(b)成分:熱硬化性樹脂
・トリフェノールメタン骨格含有多官能固形エポキシ(三菱ケミカル株式会社製、商品名「EP1032H60」)
・ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名「YL983U」)
・柔軟性エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名「YX7110B80」)
【0125】
(c)成分:硬化剤
・イミダゾール系硬化剤:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名「2PHZ-PW」、分子量:204.2)
【0126】
(d)成分:キレートフラックス剤
・N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミン(富士フイルム和光純薬株式会社製、融点:127℃、分子量:268.3)
・N,N’-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミン(富士フイルム和光純薬株式会社製、融点:52℃、分子量:282.3)
(d)’成分:フラックス剤
・グルタル酸(富士フイルム和光純薬株式会社製、融点:98℃、分子量132.1)
・ピメリン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製、融点:105℃、分子量:160.2)
【0127】
(e)成分:フィラー
・メタクリル表面処理シリカフィラー(無機フィラー、株式会社アドマテックス製、商品名「KE180G-HLA」、平均粒径:約180nm)
・アクリルゴム粒子(有機フィラー、DOW製、商品名「EXL2655」)
【0128】
(a)成分の重量平均分子量(Mw)は、GPC法によって求めたものである。GPC法の詳細は以下のとおりである。
装置名:HPLC-8020(製品名、東ソー株式会社製)
カラム:2pieces of GMHXL + 1piece of G-2000XL
検出器:RI検出器
カラム温度:35℃
流速:1mL/分
標準物質:ポリスチレン
【0129】
[実施例1~4及び比較例1~4]
<積層フィルムの作製>
表1に示す配合量(単位:質量部)の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、硬化剤、フラックス剤及びフィラーを、NV値([乾燥後の塗料分質量]/[乾燥前の塗料分質量]×100)が50%になるように有機溶媒(シクロヘキサノン)に添加した。その後、固形分(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、硬化剤、フラックス剤及びフィラー)の配合量と同質量のφ1.0mmのジルコニアビーズ及びφ2.0mmのジルコニアビーズを同容器内に加え、ボールミル(フリッチュ・ジャパン株式会社、商品名「遊星型微粉砕機P-7」)で30分撹拌した。撹拌後、ジルコニアビーズをろ過によって除去し、塗工ワニスを作製した。
【0130】
得られた塗工ワニスを、基材フィルム(東洋紡フイルムソリューション株式会社製、商品名「ピューレックスA55」)上に、小型精密塗工装置(康井精機社製)で塗工し、クリーンオーブン(ESPEC製)で乾燥(100℃/10min)することで、膜厚20μmのフィルム状接着剤(接着層)を得た。
【0131】
次に、接着層上に、粘着層及び基材層からなるバックグラインドテープ(マクセル株式会社製、商品名「MS-3000」、基材層の厚さ:25μm、粘着層の厚さ:60μm)を、接着層と粘着層とが接するように、60℃、線圧3kgf、速度5m/分の条件で貼り付け、基材フィルム/接着層/粘着層/基材層の積層構造を有する積層フィルムを得た。
【0132】
[評価]
以下に、実施例及び比較例で得られた積層フィルムの評価方法を示す。評価結果は表1に示す。
【0133】
<DSC測定>
実施例及び比較例で得られた積層フィルム(初期サンプル)からバックグラインドテープ及び基材フィルムを剥離して得られた接着層を、アルミパン(株式会社エポリードサービス製)に10mg秤量し、アルミ蓋を被せ、クリンパを用いて接着層をサンプルパン内に密閉した。示差走査熱量計(Thermo plus DSC8235E、株式会社リガク製)を使用し、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/min、測定温度範囲30~300℃で測定を行った。オンセット温度の解析手段としては、全面積(JIS法)の解析手法を用い、100℃~250℃の温度範囲で解析指示することにより、各DSC曲線におけるピークの積分を行うことで発熱量(単位:J/g)を算出した。
【0134】
<室温で4週間放置後の発熱量>
実施例及び比較例で得られた積層フィルム(初期サンプル)を、25℃で4週間室温放置した後、サンプルを取り出し、室温4週間放置後の評価用サンプルAを得た。
【0135】
評価用サンプルAからバックグラインドテープ及び基材フィルムを剥離して得られた接着層を用い、室温放置前と同じ手順で示差走査熱量計(Thermo plus DSC8235E、株式会社リガク製)を使用し、100~250℃の温度範囲において、発熱量(単位:J/g)を算出した。これを室温4週間放置後の発熱量とした。
【0136】
得られた2つの発熱量(初期サンプルの接着層の発熱量と評価用サンプルAの接着層の発熱量)を用いて、発熱量の変化率を下記の式で算出した。
変化率(%)=(初期発熱量-室温4週間放置後の発熱量)/初期発熱量×100
【0137】
<室温4週間放置後の接続性評価>
(積層体Aの作製)
実施例及び比較例で得られた積層フィルム(初期サンプル)を、25℃で4週間室温放置した後、サンプルを取り出し、室温4週間放置後の評価用サンプルBを得た。
【0138】
評価用サンプルBからバックグラインドテープ及び基材フィルムを剥離して得られた接着層を7.5mm四方サイズに切り抜き、これを複数のはんだバンプ付き半導体チップ(チップサイズ:7.3mm×7.3mm、厚さ0.1mm、バンプ(接続部)高さ:約45μm(銅ピラーとはんだの合計)、バンプ数:1048ピン、ピッチ80μm、製品名:WALTS-TEG CC80、株式会社ウォルツ製)上に80℃で貼付した。接着層が貼付された半導体用チップを、別の半導体有機基板(基板サイズ:10mm×10mm、厚さ0.1mm、バンプ数:1048ピン、ピッチ80μm、製品名:WALTS-TEG IP80、株式会社ウォルツ製)に、フリップチップボンダー(FCB3、パナソニック株式会社製)で加熱及び加圧することにより順次圧着し、積層体Aを得た。圧着の条件は、80℃、30N、3秒で仮固定した後、200℃、30N、3秒で加熱及び加圧してから15秒かけて285℃まで昇温し、285℃、30N、1秒とした。
【0139】
上記積層体Aについて、卓上研磨機(リファイン・ポリッシャー、リファインテック株式会社製)を用いて、チップ内部に存在するバンプ接続部分が露呈するまで研磨した。研磨に使用した耐水研磨紙としては、初めにサイズ200cmφ、粒度1000のものを使用し、その後粒度2000の耐水研磨紙に張り替えた後、接続部分が露呈するまで研磨した。その後、アルミナ液(懸吊液)(0.3μm、リファインテック株式会社製)を用いて更に研磨した。露呈されたバンプ接続部分をSEM(製品名:TM3030Plus卓上顕微鏡、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で観察し、Cu配線の上面に対するはんだの濡れ率(SEM断面画像における、Cu配線上面の幅に対する、はんだがCu配線上面に接している幅の割合)を測定した。濡れ率は、20箇所測定した値の平均値を求め、濡れ率が60%以上である場合を「A」、濡れ率が60%未満である場合を「B」と評価した。
【0140】
【表1】
【符号の説明】
【0141】
1…半導体チップ、2…基板、10…半導体チップ本体、15,16…配線又はバンプ、20…基板本体、30…はんだ、34…貫通電極、40…接着層、50…インターポーザー本体、100,300,500…半導体装置。
図1
図2
図3