(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059262
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】抗菌抗ウイルス性樹脂組成物、硬化塗膜、積層体および成形体
(51)【国際特許分類】
A01N 55/02 20060101AFI20240423BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A01N55/02
A01P1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166838
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】麸山 解
(72)【発明者】
【氏名】宇治川 麻里
(72)【発明者】
【氏名】中野 宏明
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA04
4H011BB16
4H011BC06
(57)【要約】
【課題】高硬度且つ抗菌抗ウイルス活性を有する抗菌抗ウイルス性樹脂組成物、硬化塗膜、積層体および成形体を提供する。
【解決手段】
抗菌抗ウイルス剤及び多官能(メタ)アクリレート化合物を含有する抗菌抗ウイルス性樹脂組成物であって、抗菌抗ウイルス剤は、脂肪酸金属塩、ヘテロ原子含有配位子と金属イオンとの金属錯体、およびヘテロ原子含有配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体からなる群から選択される1種以上であり、前記抗菌抗ウイルス剤由来の金属を樹脂固形分100質量部に対して0.1~4質量部の範囲で含有する抗菌抗ウイルス性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌抗ウイルス剤及び多官能(メタ)アクリレート化合物を含有する抗菌抗ウイルス性樹脂組成物であって、
抗菌抗ウイルス剤は、脂肪酸金属塩、ヘテロ原子含有配位子と金属イオンとの金属錯体、およびヘテロ原子含有配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体からなる群から選択される1種以上であり、
前記抗菌抗ウイルス剤由来の金属を樹脂固形分100質量部に対して0.1~4質量部の範囲で含有する抗菌抗ウイルス性樹脂組成物。
【請求項2】
前記抗菌抗ウイルス剤がアルミニウム錯体又はバリウム錯体である請求項1記載の抗菌抗ウイルス性樹脂組成物。
【請求項3】
前記アルミニウム錯体が、下記一般式(3-1)又は(3-2)で表される化合物である請求項2記載の抗菌抗ウイルス性樹脂組成物。
(前記一般式(3-1)および(3-2)中、
R
311~R
316およびはR
321~R
326は、それぞれ独立に、炭素原子数1~22のアルキル基又は炭素原子数1~22のアルコキシ基である。)
【請求項4】
前記多官能(メタ)アクリレート化合物が、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレートから選択される1種以上である請求項1記載の抗菌抗ウイルス性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4記載の抗菌抗ウイルス性樹脂組成物の硬化物からなる硬化塗膜。
【請求項6】
前記硬化塗膜が透明である請求項5記載の積層体。
【請求項7】
請求項1記載の抗菌抗ウイルス性樹脂組成物を成形した成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌抗ウイルス性樹脂組成物、硬化塗膜、積層体および成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルス感染症の拡大によって、衛生に対する人々の意識が急速に高まっている。生活用品においても、病原菌やウイルスへの感染の可能性を低減する「抗菌抗ウイルス」へのニーズが世界的に拡大している。例えばスマートフォンの外装、スマートフォンのタッチパネル、手すり、ドアノブ、洗面台、エレベーターボタンなどの各種プッシュボタン、公共交通機関の内装等の表面は、一日の中で複数回の利用が想定されるため、抗菌抗ウイルスへの対応が強く求められている。
【0003】
抗菌抗ウイルス剤としては、光触媒系(TiO2等)と金属系(Ag等)が知られており(例えば特許文献1)、これら金属単体又は金属化合物を適用対象に直接塗布したり、バインダー樹脂に混合してコーティング組成物とし、当該組成物を適用対象に塗布して用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の抗菌抗ウイルス剤である無機金属化合物を適用対象に直接塗布した場合、適用対象の色合いが変わってしまうほか、適用対象の触感がザラザラとした触感になってしまう問題がある。また、無機金属化合物とバインダー樹脂のコーティング組成物とした場合であっても、当該コーティング組成物から得られるコーティング層は、無機金属化合物によって色が濁ってしまうほか、バインダー樹脂が透明樹脂のときにはその透明性が損なわれてしまう問題があった。加えて、無機金属化合物を含有する組成物では、無機化合物は一般に粉体であるために分散化処理が必要で生産性の観点の問題もある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、高硬度且つ抗菌抗ウイルス活性を有する硬化塗膜を形成可能な抗菌抗ウイルス性樹脂組成物、硬化塗膜、積層体および成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、 抗菌抗ウイルス剤及び多官能(メタ)アクリレート化合物を含有し、前記抗菌抗ウイルス剤由来の金属の含有量が特定の範囲である抗菌抗ウイルス性樹脂組成物であれば、高硬度且つ抗菌抗ウイルス活性を有する硬化塗膜、積層体、及び成形体が形成可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下に関するものである。
[1]抗菌抗ウイルス剤及び多官能(メタ)アクリレート化合物を含有する抗菌抗ウイルス性樹脂組成物であって、抗菌抗ウイルス剤は、脂肪酸金属塩、ヘテロ原子含有配位子と金属イオンとの金属錯体、およびヘテロ原子含有配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体からなる群から選択される1種以上であり、前記抗菌抗ウイルス剤由来の金属を樹脂固形分100質量部に対して0.1~4質量部の範囲で含有する抗菌抗ウイルス性樹脂組成物。
[2]前記抗菌抗ウイルス剤がアルミニウム錯体又はバリウム錯体である[1]記載の抗菌抗ウイルス性樹脂組成物。
[3]前記アルミニウム錯体が、下記一般式(3-1)又は(3-2)で表される化合物である[2]記載の抗菌抗ウイルス性樹脂組成物。
(前記一般式(3-1)および(3-2)中、
R
311~R
316およびはR
321~R
326は、それぞれ独立に、炭素原子数1~22のアルキル基又は炭素原子数1~22のアルコキシ基である。)
[4]前記多官能(メタ)アクリレート化合物が、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレートから選択される1種以上である[1]~[3]のいずれかの抗菌抗ウイルス性樹脂組成物。
[5][1]~[4]のいずれかの抗菌抗ウイルス性樹脂組成物の硬化物からなる硬化塗膜。
[6]前記硬化塗膜が透明である[5]の積層体。
[7][1]~[4]いずれかの抗菌抗ウイルス性樹脂組成物を成形した成形体。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、高硬度且つ抗菌抗ウイルス活性を有する硬化塗膜を形成可能な抗菌抗ウイルス性樹脂組成物、硬化塗膜、積層体および成形体が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0011】
<<抗菌抗ウイルス性樹脂組成物>>
本発明の抗菌抗ウイルス性樹脂組成物(以下、単に「組成物」ともいう)は、抗菌抗ウイルス剤及び多官能(メタ)アクリレート化合物を少なくとも含有する。
【0012】
[抗菌抗ウイルス剤]
前記抗菌抗ウイルス剤は、脂肪酸金属塩、ヘテロ原子含有配位子と金属イオンとの金属錯体、およびヘテロ原子含有配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体からなる群から選択される1種以上であって、前記脂肪酸金属塩、前記ヘテロ原子含有化合物配位子と金属イオンとの金属錯体、および前記ヘテロ原子含有化合物配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体中の金属が、それぞれ独立に、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、スズ、アンチモン、銅、銀、亜鉛、モリブデン、バナジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、バリウム、ビスマス、鉛、金、白金又はレアアースである。
【0013】
前記抗菌抗ウイルス剤は、脂肪酸金属塩または金属錯体の形態を取り、金属が有する抗菌抗ウイルス性と、脂肪酸または錯体配位子が有する有機物への高い相溶性によって、多官能(メタ)アクリレート化合物等を含有する組成物に添加した場合に、得らえる硬化塗膜に抗菌抗ウイルス性を付与すると同時に、抗菌抗ウイルス剤によって硬化塗膜の透明性が損なわれるといった外観への影響を低減することができると考えられる。
【0014】
本発明において「抗菌」とは、菌の数を減少させる効果、菌を不活化させる効果、菌の感染性を低減させる効果等を包含する意味である。同様に、本発明において「抗ウイルス」とは、ウイルスの数を減少させる効果、ウイルスを不活化させる効果、ウイルスの感染性を低減させる効果等を包含する意味である。
【0015】
本発明において抗菌の対象となる菌は特に限定されず、細菌および真菌のいずれでもよい。細菌としては、大腸菌、緑膿菌、サルモネラ菌、モラクセラ菌、レジオネラ菌等のグラム陰性菌;黄色ブドウ球菌、クロストリジウム属細菌等のグラム陽性菌等が挙げられる。真菌としては、カンジダ菌、ロドトルラ、パン酵母等の酵母類;赤カビ、黒カビ等のカビ類が挙げられる。
【0016】
本発明において抗ウイルスの対象となるウイルスは特に限定されず、公知のエンベロープウイルス(エンベロープを有するウイルス)およびノンエンベロープウイルス(エンベロープを有さないウイルス)のいずれでもよい。
【0017】
上記エンベロープウイルスとしては、例えば、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、風疹ウイルス、エボラウイルス、麻疹ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、ヘルペスウイルス、ムンプスウイルス、アルボウイルス、RSウイルス、SARSウイルス、肝炎ウイルス(例えば、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス等)、黄熱ウイルス、エイズウイルス、狂犬病ウイルス、ハンタウイルス、デングウイルス、ニパウイルス、リッサウイルス等が挙げられる。
【0018】
上記ノンエンベロープウイルスとしては、例えば、アデノウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、ヒトパピローマウイルス、ポリオウイルス、エンテロウイルス、コクサッキーウイルス、ヒトパルボウイルス、脳心筋炎ウイルス、ポリオーマウイルス、BKウイルス、ライノウイルス、ネコカリシウイルス等が挙げられる。
【0019】
以下、本発明の抗菌抗ウイルス性樹脂組成物に使用可能な抗菌抗ウイルス剤について説明する。
【0020】
(脂肪酸金属塩)
抗菌抗ウイルス剤として使用可能な脂肪酸金属塩は例えば下記一般式(1)で表される化合物である。
【0021】
【化1】
(前記一般式(1)中、
R
1は、水素原子または炭素原子数1~21のアルキル基であり、
n1は、1~4の範囲の整数であり、
M
1は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、スズ、アンチモン、銅、銀、亜鉛、モリブデン、バナジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、バリウム、ビスマス、鉛、金、白金又はレアアースである。)
【0022】
前記一般式(1)において、n1が2以上の整数である場合、複数のR1は互いに同じでもよく、異なってもよい。
【0023】
R1の炭素原子数1~21のアルキル基は、直鎖のアルキル基でもよく、分岐のアルキル基でもよく、脂環構造を含んでもよい。
【0024】
R1の炭素原子数1~21のアルキル基は、脂肪酸金属塩の製造に用いるR1COOHで表される炭素原子数1~22のカルボン酸からカルボキシル基(COOH)を除いたカルボン酸残基に対応する。当該カルボン酸残基としては、酢酸残基、プロピオン酸残基、ブタン酸残基、ペンタン酸残基、アクリル酸残基、メタクリル酸残基、オクチル酸残基(2-エチルヘキサン酸残基)、ネオデカン酸残基、ナフテン酸残基、イソノナン酸残基、桐油酸残基、トール油脂肪酸残基、ヤシ油脂肪酸残基、大豆油脂肪酸残基、アマニ油脂肪酸残基、サフラワー油脂肪酸残基、脱水ヒマシ油脂肪酸残基、キリ油脂肪酸残基、ラウリン酸残基、ミリスチン酸残基、パルミチン酸残基、ステアリン酸残基、イソステアリン酸残基、オレイン酸残基等が挙げられる。
【0025】
R1の炭素原子数1~21のアルキル基は、後述する基材密着性の観点から、好ましくは炭素原子数1~15のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1~11のアルキル基であり、さらに好ましくは酢酸残基、プロピオン酸残基、ブタン酸残基、ペンタン酸残基、2-エチルヘキサン酸残基、イソノナン酸残基、ネオデカン酸残基およびナフテン酸残基である。
【0026】
M1は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、スズ、アンチモン、銅、銀、亜鉛、モリブデン、バナジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、バリウム、ビスマス、鉛、金、白金又はレアアースであり、好ましくはビスマス、ネオジム、マグネシウム、コバルト、銅、銀又は亜鉛であり、より好ましくはビスマス、ネオジム又はマグネシウムである。
脂肪酸金属塩の金属がビスマス、ネオジム又はマグネシウムであれば、抗菌抗ウイルス剤の添加による着色を起きにくくすることができる。
【0027】
尚、本発明においてレアアースとは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)から選択される1種以上を意味する。
【0028】
n1はM1の金属原子のイオン価数によって決定される数値であり、例えばM1がホウ素であればn1は3となり、M1がコバルトであれば、n1は2となる。
【0029】
脂肪酸金属塩は、脂肪酸ホウ酸金属塩の形態も包含する。当該脂肪酸ホウ酸金属塩は例えば下記一般式(2)で表される化合物である。
【0030】
【化2】
(前記一般式(2)中、
R
2は、水素原子または炭素原子数1~21のアルキル基であり、
M
2は、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、スズ、アンチモン、銅、亜鉛、モリブデン、バナジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、バリウム、ビスマス、鉛、金、白金又はレアアースである。)
【0031】
前記一般式(2)において、R2の炭素原子数1~21のアルキル基は、前記一般式(1)のR1の炭素原子数1~21のアルキル基と同じである。同様に、前記一般式(2)において、M2の金属は、前記一般式(1)のM1の金属と同じである。
【0032】
前記抗菌抗ウイルス剤として脂肪酸金属塩を使用する場合、使用する脂肪酸金属塩は1種単独でもよく、互いに構造が異なる2種以上の脂肪酸金属塩を使用してもよい。
【0033】
脂肪酸金属塩は公知の方法で製造することができ、市販品を用いてもよい。
【0034】
(金属錯体)
前記抗菌抗ウイルス剤として使用可能なヘテロ原子含有配位子と金属イオンとの金属錯体およびヘテロ原子含有配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体は、金属イオンまたは脂肪酸金属塩とヘテロ原子含有配位子とが配位結合で錯体を形成している化合物である。
【0035】
ヘテロ原子含有配位子が金属錯体を形成する金属イオンとしては、本発明の抗菌抗ウイルス剤として説明した脂肪酸金属塩の金属と同じ金属のイオンを使用できる。
ヘテロ原子含有配位子が金属錯体を形成する脂肪酸金属塩としては、本発明の抗菌抗ウイルス剤として説明した脂肪酸金属塩と同じものを使用できる。
【0036】
金属錯体を形成するヘテロ原子含有配位子は、窒素、酸素、硫黄およびリンからなる群より選ばれる1種以上のヘテロ原子を分子内に有する配位子であればよい。当該ヘテロ原子含有配位子としては、例えば、N-メチルモルフォリン、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、4-ジメチルアミノアミン(DMAP)、ジシアンジアミド(DICY)、トリ-n-ブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ブチルアミン、1,2-プロパンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、オクチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-[[(2-ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ]エタノール、ピコリン酸、2,2’-[プロパン-1,2-ジイルビス(アザニリリデンメタニリリデン)]ジフェノール、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、1,4-ジエチルイミダゾール、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、8-キノリノール、5-クロロ-8-キノリノール、2,2’-ビピリジル及びその誘導体、2,2’-[プロパン-1,2-ジイルビス(アザニリリデンメタニリリデン)]ジフェノール及びその誘導体、2,2’-メチレンビス〔6-(2h-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール〕等のアミン化合物;トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート等の四級アンモニウム塩;トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物;テトラメチルホスホニウムクロライド、テトラエチルホスホニウムクロライド、テトラプロピルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、トリメチル(2-ヒドロキシルプロピル)ホスホニウムクロライド、トリフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩;チオ乳酸、2-アミノチオフェノール、2,2’-ジチオジアニリン等の硫黄系化合物などが挙げられる。
【0037】
ヘテロ原子含有配位子は、好ましくはピコリン酸、2-{[(2-ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ}エタノール、1,2-プロパンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、1,4-ジエチルイミダゾール、8-キノリノール、5-クロロ-8-キノリノール、2,2’-ビピリジルおよびその誘導体、並びに2,2’-[プロパン-1,2-ジイルビス(アザニリリデンメタニリリデン)]ジフェノールおよびその誘導体から選択される1種以上のアミン配位子である。
【0038】
金属錯体を形成するヘテロ原子含有配位子は、1種単独でもよく、互いに構造が異なる2種以上でもよい。
【0039】
金属錯体において、金属イオンまたは脂肪酸金属塩とヘテロ原子含有配位子の比(モル比)としては、金属イオンまたは脂肪酸金属塩の金属原子1モルに対して、例えばヘテロ原子含有配位子が0.1~12モルとなる範囲であり、好ましくは0.3~10モルの範囲であり、さらに好ましくは0.5~10モルの範囲である。
【0040】
金属錯体において金属イオンがアルミニウムイオンである場合、当該アルミニウム錯体は、好ましくは下記一般式(3-1)で表されるアルミニウムキレート化合物および下記一般式(3-2)で表されるアルミニウムキレート化合物から選択される1種以上である。
【0041】
【化3】
(前記一般式(3-1)および(3-2)中、
R
311~R
316およびはR
321~R
326は、それぞれ独立に、炭素原子数1~22のアルキル基又は炭素原子数1~22のアルコキシ基である。)
【0042】
R311~R316およびはR321~R326の炭素原子数1~22のアルキル基および炭素原子数1~22のアルコキシ基のアルキレン基部分は、直鎖でもよく、分岐でもよく、脂環構造を含んでもよい。R311~R316およびはR321~R326のアルキル基およびアルコキシ基のアルキレン基部分の炭素原子数は、好ましくは1~9である。
【0043】
R311~R316およびはR321~R326の炭素原子数1~22のアルキル基は、好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0044】
R311~R316およびはR321~R326の炭素原子数1~22のアルコキシ基は、好ましくはメトキシ基、エトキシ基又はオレイルオキシ基である。
【0045】
アルミニウムキレート化合物の具体例としては、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスオレイルアセトアセテート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0046】
本発明の抗菌抗ウイルス性樹脂組成物に含有される抗菌抗ウイルス剤は、好ましくは非水溶性の抗菌抗ウイルス剤である。抗菌抗ウイルス剤が非水溶性であることで、日常の雨等の水がかかった場合であっても抗菌抗ウイルス性の持続性に優れる。
尚、本願において「非水溶性」とは、20℃で抗菌抗ウイルス剤1gを溶解させるのに必要な水の量が10ml以上であることを意味する。
【0047】
抗菌抗ウイルス剤であるヘテロ原子含有配位子と金属イオンとの金属錯体およびヘテロ原子含有配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体は、公知の方法で製造することができ、金属単体または脂肪酸金属塩とヘテロ原子含有配位子を反応させることにより製造できる。また、当該金属錯体は市販品を用いてもよい。
【0048】
上述した抗菌抗ウイルス剤の中でも、金属錯体がより好ましく、アルミニウム錯体又はバリウム錯体が特に好ましい。
【0049】
本発明の組成物に含まれる本発明の抗菌抗ウイルス剤は1種単独でもよく、2種以上でもよい。
【0050】
本発明の組成物は、抗菌抗ウイルス剤由来の金属を樹脂固形分100質量部に対して0.1~4質量部の範囲で含有し、0.5~4質量部の範囲であることがより好ましく、1~4質量部の範囲であることが特に好ましい。これらの範囲とすることで、硬化塗膜の抗菌抗ウイルス性と硬度をバランス良く向上させることができる。
ここで「樹脂固形分」とは、組成物に含まれる多官能(メタ)アクリレート化合物、単官能(メタ)アクリレート化合物、及びバインダー樹脂等のモノマー又はオリゴマー等の固形分の総量を意味する。
【0051】
[多官能(メタ)アクリレート化合物]
前記多官能(メタ)アクリレート化合物は、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ジ(メタ)アクリレート化合物;1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の脂環型ジ(メタ)アクリレート化合物;ビフェノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート等の芳香族ジ(メタ)アクリレート化合物;グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の水酸基含有ジ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のジ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中にポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシテトラメチレン鎖等のポリオキシアルキレン鎖を導入したポリオキシアルキレン変性ジ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のジ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性ジ(メタ)アクリレート化合物;
【0052】
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等の脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の水酸基含有トリ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のトリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中にポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシテトラメチレン鎖等のポリオキシアルキレン鎖を導入したポリオキシアルキレン変性トリ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のトリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性トリ(メタ)アクリレート化合物;
【0053】
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物;ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の4官能以上の水酸基含有ポリ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のポリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中にポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシテトラメチレン鎖等のポリオキシアルキレン鎖を導入した4官能以上のポリオキシアルキレン変性ポリ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のポリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入した4官能以上のラクトン変性ポリ(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0054】
前記多官能(メタ)アクリレート化合物は、エポキシ(メタ)アクリレート化合物や、ウレタン(メタ)アクリレート化合物でもよい。
【0055】
前記エポキシ(メタ)アクリレート化合物としては、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸またはその無水物を反応させて得られるものであり、前記エポキシ樹脂としては、例えば、ヒドロキノン、カテコール等の2価フェノールのジグリシジルエーテル;3,3’-ビフェニルジオール、4,4’-ビフェニルジオール等のビフェノール化合物のジグリシジルエーテル;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;1,4-ナフタレンジオール、1,5-ナフタレンジオール、1,6-ナフタレンジオール、2,6-ナフタレンジオール、2,7-ナフタレンジオール、ビナフトール、ビス(2,7-ジヒドロキシナフチル)メタン等のナフトール化合物のポリグリジシルエーテル;4,4’,4”-メチリジントリスフェノール等のトリグリシジルエーテル;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;
【0056】
前記ビフェノール化合物、ビスフェノール化合物、またはナフトール化合物と、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の環状エーテル化合物との開環重合によって得られるポリエーテル変性芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル;
【0057】
前記ビフェノール化合物、ビスフェノール化合物、またはナフトール化合物と、ε-カプロラクトン等のラクトン化合物との重縮合によって得られるラクトン変性芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0058】
これらのエポキシ(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0059】
前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ポリイソシアネート化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物と、必要に応じてポリオール化合物とを反応させて得られるものが挙げられる。前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物、及びこれらのヌレート変性体、アダクト変性体、ビウレット変性体などが挙げられる。前記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びこれらのポリオキシアルキレン変性体、ポリラクトン変性体などが挙げられる。前記ポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロプレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ビフェノール、ビスフェノール等が挙げられる。
【0060】
これらの多官能(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。これらの中でも、硬化性(反応性及び架橋密度等)の観点から、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレート等を使用することが特に好ましい。
【0061】
多官能(メタ)アクリレート化合物の含有量は樹脂固形分100質量部に対して、10~100質量部の範囲であることが好ましく、30~100質量部の範囲であることがより好ましく、50~100質量部の範囲であることが特に好ましい。この範囲とすることで硬化させた後の架橋密度が向上し、硬化塗膜の硬度が向上する。
【0062】
本発明の抗菌抗ウイルス性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で抗菌抗ウイルス剤及び多官能(メタ)アクリレート化合物以外のその他添加剤を含有しても良い。
【0063】
[その他添加剤]
その他添加剤としては、例えば、前記多官能(メタ)アクリレートに該当しない化合物バインダー樹脂、分散媒、可塑剤、単官能(メタ)アクリレート化合物、光重合開始剤、光増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シリコーン系添加剤、フッ素系添加剤、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、艶消し剤、硬化剤、硬化促進剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、増粘剤、酸化防止剤、耐候剤、難燃剤、滑剤等が挙げられる。
【0064】
前記バインダー樹脂は、特に限定されず、例えばエマルジョン系樹脂、ラテックス系樹脂、熱硬化型樹脂、活性エネルギー線硬化型樹脂のいずれのタイプでも使用することができる。
【0065】
バインダー樹脂は、水性樹脂および非水溶性樹脂(溶剤系樹脂)のいずれでもよい。
尚、本願において「水溶性樹脂」とは、20℃で樹脂1gを溶解させるのに必要な水の量が10ml未満であることを意味する。「非水溶性樹脂」とは前記「水溶性樹脂」ではない樹脂をさす。
【0066】
バインダー樹脂の具体例としては、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、ウレタン尿素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン共重合樹脂およびアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合(ABS)樹脂等が挙げられる。
バインダー樹脂は上記樹脂を変性したものも含み、例えばフェノール樹脂であればロジン変性フェノール樹脂も含む意味である。
【0067】
本発明の組成物に含まれるバインダー樹脂は1種単独でもよく、2種以上でもよい。
【0068】
本発明の組成物におけるバインダー樹脂の含有量は特に限定されず、例えば組成物の樹脂固形分総質量に対して10~100質量%の範囲で適宜設定するとよい。
【0069】
本発明の組成物の粘度を調整する目的で前記分散媒をさらに添加してもよく、水性媒体でも油性媒体のいずれでもよい。
【0070】
前記分散媒の具体例としては、水、1-ブタノール、イソブタノール、1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の単官能アルコール、各種ジオール、グリセリン等の多価アルコール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、プロピレングリコール、1,2ブタンジオール、3-メチル-1,3ブタンジオール、1、2ペンタンジオール、2-メチル-1,3プロパンジオール、1,2ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール等のジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールAの炭素原子数2又は3のアルキレンオキサイド(平均付加モル数1以上16以下)付加物である芳香族ジオール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオールポリオキシプロピレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、シクロヘキサンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチルカルビトール、γ-ブチロラクトン、各種脂肪酸等が挙げられる。
【0071】
本発明の組成物に含まれる分散媒は1種単独でもよく、2種以上でもよい。
【0072】
本発明の組成物における分散媒の含有量は特に限定されず、例えば組成物の固形分濃度が30~80質量%の範囲となるように適宜設定するとよい。
【0073】
組成物より得られる硬化塗膜に柔軟性を与え基材に対する追従性を向上させることができる目的で可塑剤をさらに添加しても良い。
【0074】
可塑剤としては、特に限定はされず、例えば、フタル酸エステル、非芳香族二塩基酸エステル、脂肪族エステル、ポリアルキレングリコールのエステル、リン酸エステル、トリメリット酸エステル、塩素化パラフィン、炭化水素系油、プロセスオイル、ポリエーテル、エポキシ可塑剤類、ポリエステル系可塑剤等が挙げられ、好ましくはフタル酸エステルである。
可塑剤の具体例としては、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸イソデシル、トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等が挙げられる。
【0075】
本発明の組成物に含まれる可塑剤は1種単独でもよく、2種以上でもよい。
【0076】
本発明の組成物における可塑剤の含有量は特に限定されず、例えば組成物の樹脂固形分100質量部に対して0.1~50質量部の範囲で適宜設定するとよい。
【0077】
前記単官能(メタ)アクリレート化合物として、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等の脂肪族モノ(メタ)アクリレート化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチルモノ(メタ)アクリレート等の脂環型モノ(メタ)アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等の複素環型モノ(メタ)アクリレート化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ベンジルベンジル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族モノ(メタ)アクリレート化合物;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のモノ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中にポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシテトラメチレン鎖等のポリオキシアルキレン鎖を導入したポリオキシアルキレン変性モノ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のモノ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン由来の構造を導入したラクトン変性モノ(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。これら単官能(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0078】
前記単官能(メタ)アクリレート化合物を添加する場合の添加量は、硬化物の硬さや成膜性の観点から、組成物の樹脂固形分中に、0~90質量%の範囲が好ましく、0~50質量%の範囲がより好ましい。
【0079】
前記光重合開始剤として、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,2′-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン等が挙げられる。
【0080】
前記その他の光重合開始剤の市販品としては、例えば、「Omnirad-1173」、「Omnirad-184」、「Omnirad-127」、「Omnirad-2959」、「Omnirad-369」、「Omnirad-379」、「Omnirad-907」、「Omnirad-4265」、「Omnirad-1000」、「Omnirad-651」、「Omnirad-TPO」、「Omnirad-819」、「Omnirad-2022」、「Omnirad-2100」、「Omnirad-754」、「Omnirad-784」、「Omnirad-500」、「Omnirad-81」(IGM社製)、「カヤキュア-DETX」、「カヤキュア-MBP」、「カヤキュア-DMBI」、「カヤキュア-EPA」、「カヤキュア-OA」(日本化薬株式会社製)、「バイキュア-10」、「バイキュア-55」(ストウファ・ケミカル社製)、「トリゴナルP1」(アクゾ社製)、「サンドレイ1000」(サンドズ社製)、「ディープ」(アプジョン社製)、「クオンタキュア-PDO」、「クオンタキュア-ITX」、「クオンタキュア-EPD」(ワードブレンキンソップ社製)、「Runtecure-1104」、「Runtecure-1108」(Runtec社製)等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0081】
前記光重合開始剤を添加する場合の添加量は、例えば、組成物の固形分中に、0.05~20質量%の範囲が好ましく、0.1~10質量%の範囲がより好ましい。
【0082】
前記光増感剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン化合物、o-トリルチオ尿素等の尿素化合物、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s-ベンジルイソチウロニウム-p-トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。これらの光増感剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0083】
前記光増感剤を添加する場合の添加量は、前記組成物中に、0.01~10質量%の範囲が好ましい。
【0084】
<<硬化塗膜>>
本発明の硬化塗膜は、本発明の組成物に、活性エネルギー線を照射することで得られる。前記活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。また、前記活性エネルギー線として、紫外線を用いる場合、紫外線による硬化反応を効率よく行う上で、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で照射してもよく、空気雰囲気下で照射してもよい。
【0085】
紫外線発生源としては、実用性、経済性の面から紫外線ランプが一般的に用いられている。具体的には、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、太陽光、LED等が挙げられる。
【0086】
前記活性エネルギー線の積算光量は、特に制限されないが、0.1~50kJ/m2であることが好ましく、0.3~20kJ/m2であることがより好ましい。積算光量が上記範囲であると、未硬化部分の発生の防止又は抑制ができることから好ましい。
【0087】
なお、前記活性エネルギー線の照射は、一段階で行ってもよいし、二段階以上に分けて行ってもよい。
【0088】
<<積層体>>
本発明の積層体は、基材の少なくとも一面、即ち片面または両面に前記硬化塗膜を有するものであり、例えば任意の基材上に組成物を塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化させることにより得ることができる。このとき、硬化塗膜は透明であっても良い。
【0089】
基材に特に限定はなく、用途に応じて適宜選択すればよく、例えばガラス、木材、金属、金属酸化物、紙、合成紙、シリコーン又は変性シリコーン、鋼板、アルミ箔、織布、編布、不織布、石膏ボード、木質ボード、樹脂基材等が挙げられ、異なる素材を接合して得られた基材であってもよい。
基材の形状も特に制限はなく、平板、シート状、又は3次元形状全面に、若しくは一部に、曲率を有するもの等、目的に応じた任意の形状であってよい。また、基材の硬度、厚み等にも制限はない。
【0090】
上記樹脂基材の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリエチレンフィルム(LLDPE:低密度ポリエチレンフィルム、HDPE:高密度ポリエチレンフィルム)、ポリプロピレンフィルム(CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、エポキシ樹脂フィルム、メラミン樹脂フィルム、トリアセチルセルロース樹脂フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ABS樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、ポリフッ化ビニル樹脂フィルム、ポリフッ化ビニリデン樹脂フィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム等が挙げられる。
使用する樹脂基材は、コロナ処理などの表面処理を施してもよい。
【0091】
また、基材は、本発明の効果を阻害しない範囲で、公知の帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料、有機フィラー、無機フィラー、光安定剤、結晶核剤、滑剤等の公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0092】
前記硬化塗膜の形成方法としては、例えば、塗装法、転写法、シート接着法等が挙げられる。
【0093】
前記塗装法とは、前記塗料をスプレーコートするか、もしくはカーテンコーター、ロールコーター、グラビアコーター等の印刷機器を用いて成形品にトップコートとして塗装した後、活性エネルギー線を照射して硬化させる方法である。
【0094】
前記転写法とは、離型性を有する基体シート上に前記した活性エネルギー線硬化性組成物を塗布して得られる転写材を成形品表面に接着させた後、基体シートを剥離して成型品表面にトップコートを転写し、次いで活性エネルギー線を照射し硬化させる方法、又は、該転写材を成形品表面に接着させた後、活性エネルギー線を照射して硬化させ、次いで基体シートを剥離する事により成型品表面にトップコートを転写する方法である。
【0095】
前記シート接着法とは、基体シート上に前記の硬化性組成物からなる塗膜を有する保護シート、又は、基体シート上に硬化性組成物からなる塗膜と加飾層とを有する保護シートをプラスチック成形品に接着することにより、成形品表面に保護層を形成する方法である。
【0096】
前記シート接着法は、具体的には、予め作製しておいた保護層形成用シートの基体シートと成形品とを接着させた後、加熱により熱硬化せしめてB-ステージ化してなる樹脂層の架橋硬化を行う方法(後接着法)や、前記保護層形成用シートを成形金型内に挟み込み、キャビテイ内に樹脂を射出充満させ、樹脂成形品を得るのと同時にその表面と保護層形成用シートを接着させ後、加熱により熱硬化させて樹脂層の架橋硬化を行う方法(成形同時接着法)等が挙げられる。
【0097】
いずれの形成方法においても、本発明の組成物が有機溶剤を含有する場合には、塗布後に40~120℃の条件下で数十秒~数分間加温して有機溶剤を揮発させたのち、活性エネルギー線を照射して前記組成物を硬化させることが好ましい。
【0098】
本発明の積層体は、前記組成物からなる硬化塗膜と基材以外に、その他の層構成を有していてもよい。これら各種の層構成の形成方法は特に限定されず、例えば、樹脂原料を直接塗布して形成しても良いし、予めシート状になっているものを接着剤にて貼り合せても良い。
【0099】
<<成形体>>
本発明の成形体は、本発明の組成物を用いて成形したものであり、抗菌抗ウイルス性を示す成形体とすることができる。
【0100】
本発明の組成物の成形方法は、使用する樹脂に適した成形方法を採用すればよく、射出成形、押出成形、加圧成形(プレス成形)、圧空成形や真空成形等の溶融成形法やキャスト法等が挙げられる。
【0101】
本発明の組成物を用いて得られる硬化塗膜、積層体、および成形体は抗菌抗ウイルス活性を有する材として人間の手が触れる箇所に好適に用いることができる。適用用途としては、スマートフォン外装、パソコン外装、タッチパネル、手すり、ドアノブ、洗面台、エレベーターボタン等のプッシュボタン、室内内装品(壁紙、フローリングなど)、各種包装材、各種繊維製品、医療装備品(医療用手袋、医療用眼鏡など)等の、幅広い用途に利用可能である。
【実施例0102】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。
尚、本発明は下記実施例に限定されない。
【0103】
(合成例1:抗菌抗ウイルス剤(1)の調製)
撹拌機、コンデンサー、及び温度計を備えた2リットルのフラスコに、アルミニウムイソプロピレート552.0質量部、キシレン294.4質量部を加えて一定時間撹拌し、続いてアセト酢酸エチル368.0質量部を加えて60℃条件下で2時間撹拌し、アルミニウムキレート化合物(一般式(3-1)におけるR311~R316がエチルの化合物)のキシレン/2-プロパノール溶液(抗菌抗ウイルス剤(1))1214.4質量部を得た。得られた抗菌抗ウイルス剤(1)中のアルミニウム含有量は6質量%であった。
【0104】
(合成例2:抗菌抗ウイルス剤(2)の調製)
撹拌機、コンデンサー、及び温度計を備えた2リットルのフラスコに、2-エチルヘキサン酸540.0質量部、水酸化バリウム八水和物400.0質量部を順次加え、110℃条件下で一定時間撹拌したのち、石油系炭化水素401.2質量部を加えた。90℃で減圧脱水した。ブチルジグリコール34.0質量部を加えて2-エチルヘキサン酸バリウムの石油系炭化水素溶液(抗菌抗ウイルス剤(2))1142.0質量部を得た。得られた抗菌抗ウイルス剤(2)中のバリウム含有量は15質量%であった。
【0105】
(実施例1:抗菌抗ウイルス性樹脂組成物(1)の調整)
合成例1で得られた抗菌抗ウイルス剤(1)0.7質量部、ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート(東亜合成社製「アロニックス M-305」)43質量部、光開始剤として1-ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン(IGM社製「Irgacure184」)2質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル54.3質量部を混合均一化し、抗菌抗ウイルス性樹脂組成物(1)を得た。
【0106】
(実施例2-5:抗菌抗ウイルス性樹脂組成物(2)-(5)の調整)
表1に示す組成及び配合比率に変更した以外は実施例1と同様の方法にて組成物(2)-(5)を調整した。
【0107】
(比較例1-4:抗菌抗ウイルス性樹脂組成物(C1)-(C4)の調整)
表1に示す組成及び配合比率に変更した以外は実施例1と同様の方法にて組成物(C1)-(C4)を調整した。なお、比較例1では抗菌抗ウイルス剤を添加せずに樹脂組成物(C1)を調整した。
【0108】
上記の実施例及び比較例で得られた活性エネルギー線硬化性組成物を用いて、下記の測定及び評価を行った。
【0109】
(塗材外観評価)
各実施例及び比較例で得られた抗菌抗ウイルス性樹脂組成物の状態を目視にて観察した。評価基準は下記のとおりである。
〇:白濁、沈降なし ×:白濁または分離
【0110】
(粘度測定)
E型粘度計(東機産業株式会社製「TV-25」)を用いて、各実施例及び比較例で得られた活性エネルギー線硬化性組成物の25℃における粘度(mPa・s)を測定した。
【0111】
(評価用サンプルの作製)
実施例及び比較例で得られた各組成物を、PET基材上に膜厚8μmになるようにアプリケーターで塗工した後、窒素雰囲気下で、紫外線照射装置で積算照射量150mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させた。これらを評価用サンプルとする。
【0112】
(塗膜外観評価)
上記で得られた評価用サンプルの状態を目視にて観察した。評価基準は下記のとおりである。
〇:白化なし ×:白化または変色あり
【0113】
(透明性試験)
上記の評価用サンプルを使用して、波長380nmの透過率を分光光度計U-2800(株式会社日立ハイテクサイエンス社製)を用いて測定した。
【0114】
(ヘイズ試験)
上記の評価用サンプルを使用して、JIS K7136に準じ、25℃、厚み50μmにおけるD65光源でのヘイズ値を測定した。
【0115】
(鉛筆硬度試験)
上記の評価用サンプルを使用して、JIS K5600-5-4(1999)に準拠して鉛筆硬度を750g荷重条件下で測定した。1つの硬度につき5回測定を行い、傷が付かなかった測定が4回以上あった硬度を積層フィルムの表面硬度とした。
なお、鉛筆の硬度は、硬度が高い順から2H、H、F、HB、Bである。
【0116】
(抗ウイルス性試験)
抗ウイルス性評価は、JIS R 1756:2020のバクテリオファージを用いた抗ウイルス性能評価試験を参考に、バクテリオファージQβを対象に行った。なお、比較例1の抗菌抗ウイルス剤(1)を含有しない樹脂組成物(C1)をもちいて作成した評価用サンプルをブランク試験片とした。
ブランク試験片表面と各評価用サンプル表面へのウイルス接種作用条件は暗所25℃で4時間とした。ブランク試験片と評価用サンプルにおける4時間反応後のバクテリオファージQβ感染価より、以下の計算式を用いて抗ウイルス活性値を算出した。結果を表1に示す。抗ウイルス活性値は2.0以上であれば、抗ウイルス効果があると評価する。
V=Log(A/B)=Log(A)-Log(B)
V:抗ウイルス活性値
Log(A):ブランク試験片の4時間反応後の感染価の常用対数値J
Log(B):評価用サンプルの4時間反応後の感染価の常用対数値J
【0117】
実施例1~6及び比較例1~2で調製した活性エネルギー硬化性組成物(1)~(6)、(C1)~(C2)の組成及び評価結果を表1および表2に示す。
【0118】
【0119】
表1における略語は以下の通りである。
M305:ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート(東亜合成社製、商品名「アロニックス M-305」
V6840:アクリルアクリレート(DIC社製、商品名「ルクシディア V6840」)
抗菌抗ウイルス剤(1):合成例1で得られたアルミニウムキレート化合物(一般式(3-1)におけるR311、R313、及びR315がメチル基、R312、R314、及びR316がエトキシ基である化合物)のキシレン/2-プロパノール溶液
抗菌抗ウイルス剤(2):合成例2で得られた2-エチルヘキサン酸バリウムの石油系炭化水素溶液
【0120】
表1において、金属含有量が樹脂固形分100質量部に対して0.1~4質量部の範囲である実施例1~5の組成物では、高硬度且つ抗ウイルス性に優れた硬化塗膜を形成することができた。一方、金属錯体を含有しない比較例1では抗ウイルス性が低下した。金属含有量が100質量部に対して5質量部以上である比較例2~4の組成物では、硬度が著しく低下した。