(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059377
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】冷却装置の製造方法および冷却装置
(51)【国際特許分類】
F28F 3/14 20060101AFI20240423BHJP
F28F 3/12 20060101ALI20240423BHJP
F28F 1/00 20060101ALI20240423BHJP
F28F 1/26 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
F28F3/14 Z
F28F3/12 D
F28F1/00 E
F28F1/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167016
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100173598
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 桜子
(72)【発明者】
【氏名】金井 俊典
(72)【発明者】
【氏名】岸 正幸
(72)【発明者】
【氏名】平野 智哉
(57)【要約】
【課題】サイズを問わず、より簡易に冷却装置を製造できるようにする。
【解決手段】冷却装置1を製造するための工程のうち、重ね合わせ工程では、第1板10と第2板20とを重ね合わせ、接合工程では、第1管40および第2管50の周囲の照射部位Lにレーザ溶接を施すことにより第1板10と第2板20との一部を接合し、加圧成形工程では、第1管40および第2管50の少なくとも一方を介して流体の圧力を加えることにより、第1管40および第2管50を連通する流路になる領域Fを成形する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの管が設けられた2枚の板を重ね合わせる重ね合わせ工程と、
前記2つの管の周囲にレーザ溶接を施すことにより前記2枚の板の一部を接合する接合工程と、
前記2つの管の少なくとも一方の管を介して流体の圧力を加えることにより、当該2つの管を連通する流路になる領域を成形する加圧成形工程と、
を有することを特徴とする冷却装置の製造方法。
【請求項2】
前記加圧成形工程の前に、前記周囲の内側の領域に前記レーザ溶接を施すことにより、前記流路にならない領域を成形する非流路成形工程をさらに有することを特徴とする、
請求項1に記載の冷却装置の製造方法。
【請求項3】
重ね合わされた2枚の板と、
前記2枚の板の少なくとも一方の板に設けられた2つの管と、
前記2つの管の周囲にレーザ溶接が施されることで前記2枚の板の一部が接合された周囲接合部と、
前記周囲接合部の内側に流体の圧力が加えられて前記2枚の板が膨らませられることで成形された、前記2つの管を連通する流路と、
を有することを特徴とする冷却装置。
【請求項4】
前記周囲接合部の内側の領域に前記レーザ溶接が施されることで前記2枚の板の一部が接合された内側接合部をさらに有することを特徴とする、
請求項3に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置の製造方法および冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却装置の部材であって、両面が平坦な薄型で内部に冷却液の流路を有するものを製造する工程には、流路の印刷、乾燥、板合わせ、加熱、および圧延の各工程が含まれるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような工程で製作される部材からなる冷却装置を製造する場合、各工程を実現させるために大規模な設備投資が必要となる。
本発明の目的は、サイズを問わず、より簡易に冷却装置を製造する手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと完成させた本発明は、2つの管が設けられた2枚の板を重ね合わせる重ね合わせ工程と、前記2つの管の周囲にレーザ溶接を施すことにより前記2枚の板の一部を接合する接合工程と、前記2つの管の少なくとも一方の管を介して流体の圧力を加えることにより、当該2つの管を連通する流路になる領域を成形する加圧成形工程と、を有することを特徴とする冷却装置の製造方法である。
ここで、前記加圧成形工程の前に、前記周囲の内側の領域に前記レーザ溶接を施すことにより、前記流路にならない領域を成形する非流路成形工程をさらに有しても良い。
また、他の観点から捉えると、本発明は、重ね合わされた2枚の板と、前記2枚の板の少なくとも一方の板に設けられた2つの管と、前記2つの管の周囲にレーザ溶接が施されることで前記2枚の板の一部が接合された周囲接合部と、前記周囲接合部の内側に流体の圧力が加えられて前記2枚の板が膨らませられることで成形された、前記2つの管を連通する流路と、を有することを特徴とする冷却装置である。
ここで、前記周囲接合部の内側の領域に前記レーザ溶接が施されることで前記2枚の板の一部が接合された内側接合部をさらに有してもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、サイズを問わず、より簡易に冷却装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施の形態に係る冷却装置の外観構成の一例を示す図である。
【
図2】(A)は、第1の実施の形態に係る冷却装置の製造に用いられる部材の構成を示す図である。(B)は、
図1の冷却装置の製造に用いられる第1管の外観構成の一例を示す図である。
【
図3】(A)および(B)は、
図1の冷却装置を製造する工程のうち、加圧成形工程の前後の状態を示すIII-III部の断面図である。
【
図4】製造された冷却装置の外観構成の一例を示す平面図である。
【
図5】第2の実施の形態に係る冷却装置の外観構成の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態に係る冷却装置1の外観構成の一例を示す図である。
図2(A)は、第1の実施の形態に係る冷却装置1の製造に用いられる部材の構成を示す図である。
図2(B)は、
図1の冷却装置1の製造に用いられる第1管40の外観構成の一例を示す図である。
図3(A)は、
図1の冷却装置1を製造するために、第1板および第2板に圧力を加えて変形させる前の状態を示すIII-III部の断面図である。
図3(B)は、
図1の冷却装置1を製造するために、第1板および第2板に圧力を加えて変形させた状態を示すIII-III部の断面図である。
【0009】
第1の実施の形態に係る冷却装置1は、両面が略平坦であり、冷却用の流体を流す流路が内部に形成された部材からなる冷却装置である。
図1および
図2(A)に示すように、冷却装置1は、第1板10と、第2板20と、第1管40と、第2管50とを有する。
【0010】
第1板10および第2板20は、予め定められた強さ以上の圧力を加えることで変形可能な金属製の薄板で構成されている。第1板10と第2板20とは対向するように配置されている。第1板10には、膨らんだ状態の領域F(以下、「膨板領域F」と呼ぶ。)が形成されており、この膨板領域Fの内部が、流体の流路となる空間となる。なお、図示はしないが、この膨板領域Fと同様のものが第2板20にも形成されている。
【0011】
本実施の形態では、
図3(A)および(B)に示すように、第1管40および第2管50から流体を吸入し、流体の圧力を加えることで第1板および第2板を膨らませるように変形させる。これにより、上述の
図1に斜線で示す膨板領域Fが第1板および第2板に形成される。
【0012】
本実施の形態では、第1板10と第2板20との一部がレーザ溶接された状態で、第1管40および第2管50から吸入された流体の圧力が加えられる。これにより、
図3(B)に示すように、第1板10および第2板20が外側に向かって膨らむように変形し、隙間Sが形成されることで冷却用の流路が成形される。ここで、レーザ溶接される「一部」とは、レーザ光が照射された部位L(以下、「照射部位L」と呼ぶ。)のことをいう。また、第1板10と第2板20との間に吸入される「流体」とは、例えば、空気や液体などのように一定の形を持たず、力を加えると自由に変形して流れる物質のことをいう。このように、冷却装置1の製造段階では、第1板10と第2板20との間に成形用の流体を吸入し加圧することで第1板10および第2板20を膨らませるように変形させ、冷却装置1の製造後は、成形された流路に冷却用の流体(例えば、冷却液)を吸入し排出することで冷却装置1の冷却機能を発揮させる。
【0013】
第1管40および第2管50は、第1板10に設けられた金属製の管である。第1板10に第1管40および第2管50を設ける手法は特に限定されない。例えば、後述する
図3(A)および(B)に示す例のように、第1板10と第2板20とで第1管40および第2管50を挟み込み、溶接や接着剤等によって第1板10に第1管40および第2管50を取り付けてもよい。
【0014】
第1管40および第2管50は、冷却装置1の製造段階では第1板10と第2板20との間に流体を吸入して流路を成形するための管として機能し、また、冷却装置1の製造後は流路に冷却用の流体を吸入し排出するための管として機能する。なお、第1板10、第2板20、第1管40、第2管50の各々の構成の詳細、および冷却装置1の製造工程の詳細については後述する。
【0015】
以下では、第1板10および第2板20が積層される方向を、「上下方向」と呼ぶ場合がある。また、直方体状の冷却装置1における、上下方向に直交する矩形の長手方向を「第1方向」、矩形の短手方向を「第2方向」と呼ぶ場合がある。また、製造した冷却装置1の冷却機能として、第1管40から第2管50に向けて冷却用の流体を流す際、第1管40側を「上流側」、第2管50側を「下流側」と呼ぶ場合がある。
【0016】
製造された冷却装置1においては、
図1に示すように、第1板10の上方に、冷却装置1により冷却される被冷却物が載せられる。なお、
図1の例では、被冷却物として、複数の直方体状の単電池101からなる組電池100が示されている。
【0017】
(第1板)
図2(A)に示すように、第1板10は、第1突出部11と、第2突出部12とを有している。第1突出部11は、第1方向の一方(
図3(A)および(B)においては左側(以下、「第1側」と呼ぶ場合がある。))の端部における第2方向の中央部に板面から円柱状に上側に突出した部位である。第1突出部11における中央部には、円柱状の第1貫通孔111が形成されている。第2突出部12は、第1方向の他方(
図3(A)および(B)においては右側(以下、「第2側」と呼ぶ場合がある。))の端部における第2方向の中央部に板面から円柱状に上側に突出した部位である。第2突出部12における中央部には、円柱状の第2貫通孔121が形成されている。
【0018】
(第2板)
図2(A)に示すように、第2板20は、第1突出部21と、第2突出部22とを有している。第1突出部21は、第1方向の第1側の端部における第2方向の中央部に板面から円柱状に下側に突出した部位である。第2突出部22は、第1方向の第2側の端部における第2方向の中央部に板面から円柱状に下側に突出した部位である。第1板10と第2板20とは、第1貫通孔111および第2貫通孔121が形成されている以外は同形状の部材であり、上下方向に直交する面に対して対称となるように配置されている。これにより、第1突出部11と第1突出部21とが対向し、第2突出部12と第2突出部22とが対向する位置関係になっている。
【0019】
(第1管)
図2(B)に示すように、第1管40は、第1筒状部41と、第2筒状部42とを有する。第1筒状部41は、円筒状の部位であり、外周面から凹んだ凹部411が全周にわたって形成されている。凹部411にはOリング45が嵌め込まれている。第2筒状部42は、第1筒状部41の下方に設けられた円筒状の部位であり、上下方向の中央部には、内部と外部とを連通するように上下方向に交差する方向に貫通する連通孔421が形成されている。連通孔421は、周方向の半分または半分程度の領域にわたって形成されている。第1筒状部41および第2筒状部42の内径は同じであるが、第2筒状部42の外径は、第1筒状部41の外径よりも大きい。
【0020】
図3(A)および(B)に示すように、第1管40は、第2筒状部42が、第1板10の第1突出部11と、第2板20の第1突出部21との間に形成される空間内に収容され、第1筒状部41が第1板10の第1貫通孔111から外部に突出するように配置される。つまり、第1管40は、第2筒状部42が上下方向に移動しないように、第1板10および第2板20に保持される。第2筒状部42に形成された連通孔421は、成形用の流体の圧力を加える方向を向くように配置される。
【0021】
(第2管)
第2管50は、第1管40と同様の形状であり、詳細な説明は省略するが、第1筒状部41および第2筒状部42の各々に相当する、第1筒状部51および第2筒状部52の各々を有している。
図3(A)および(B)に示すように、第1筒状部51には、外周面から凹んだ凹部511が全周にわたって形成されている。凹部511にはOリング45が嵌め込まれている。第2筒状部52には、連通孔421に相当する連通孔521が形成されている。
【0022】
また、第2管50は、第1管40と同様に、第1板10および第2板20に保持される。具体的には、第2管50は、第2筒状部52が、第1板10の第2突出部12と、第2板20の第2突出部22との間に形成される空間内に収容され、第1筒状部51が第1板10の第2貫通孔121から外部に突出するように配置される。つまり、第2管50は、第2筒状部52が上下方向に移動しないように、第1板10および第2板20に保持される。第2筒状部52に形成された連通孔521は、流体の圧力を加える方向を向くように配置される。
【0023】
図4は、製造された冷却装置1の外観構成の一例を示す平面図である。
上述のように、第1板10および第2板20はレーザ溶接にて一部が接合されている。具体的には、
図4において太線で示される照射部位Lが、第1板10と第2板20とを溶接させるためにレーザ光が照射された部位である。照射部位Lは、第1管40および第2管50を内側に包含する膨板領域Fの外縁を形成している。膨板領域Fの内側の第1板10と第2板20との間には、上述の
図3(B)に示す隙間Sが形成されている。
【0024】
冷却装置1の製造工程では、重ね合わせた第1板10と第2板20との間に流体を吸入し、その流体の圧力で、膨板領域Fにおける第1板10と第2板20との各々を膨らませるように変形させる。そして、第1板10および第2板20の変形に伴い形成された隙間Sがそのまま冷却用の流体の流路を形成する。具体的には、冷却装置1は、
図4に示すように、第1方向の第1側の端部における第2方向の中央部に第1管40が配置されており、第1方向の第2側の端部における第2方向の中央部に第2管50が配置されている。斜線で示された膨板領域Fは、第1板10が膨らみ、その内部に流路が成形されている領域である。また、図示はしないが、第2板20にも同様の膨板領域Fが形成されている。膨板領域Fの形状は、丸みを帯びた長方形状の領域と、その第1方向の第1側の端部における第2方向の第3側の端部から第1管40に向けて伸びる領域と、第1方向の第2側の端部における第2方向の第4側の端部から第2管50に向けて伸びる領域とを有する形状となっている。膨板領域Fを
図4に示すような形状とすることにより、第1板10の多くの領域を隈なく冷却することが可能となる。
【0025】
(冷却装置の製造方法)
次に、冷却装置1の製造工程の詳細について説明する。冷却装置1の製造方法は、板製造工程と、管製造工程と、取付工程と、重ね合わせ工程と、加圧成形工程とを含み、その順番で進めることで冷却装置1を製造する方法である。
【0026】
板製造工程は、第1板10および第2板20を製造する工程である。板製造工程では、例えばプレス加工により第1板10および第2板20を製造する。管製造工程は、第1管40および第2管50を製造する工程である。管製造工程では、例えば金型鋳造および切削加工により第1管40および第2管50を製造する。取付工程は、製造した第1管40および第2管50を第1板10に取り付ける工程である。取付工程では、第1板10と第2板20とで第1管40および第2管50を挟み込み、溶接や接着剤等によって第1板10に第1管40および第2管50を取り付ける。
【0027】
重ね合わせ工程は、2つの管が設けられた2枚の板を重ね合わせる工程である。重ね合わせ工程では、第1管40および第2管50が設けられた第1板10と、第2板20とを重ね合わせる。接合工程は、2つの管の周囲にレーザ溶接を施すことにより2枚の板の一部を接合する工程である。接合工程では、第1管40および第2管50を包含する膨板領域Fの外縁となる照射部位Lに沿って溶接のためのレーザ光を連続的に照射することで第1板10と第2板20との一部を接合する。
【0028】
加圧成形工程は、2つの管の少なくとも一方の管を介して流体の圧力を加えることにより、その2つの管を連通する流路になる領域を成形する工程である。加圧成形工程では、第1管40および第2管50の少なくとも一方を介して第1板10と第2板20との間に成形用の流体を圧入する。本実施の形態では、第1管40および第2管50の双方から第1板10と第2板20との間に流体を圧入する。すると、成形用の流体の圧力によって第1板10が上方向に膨らみ、第2板20が下方向に膨らむ。その後、流体の圧入を停止すると、第1板10および第2板20は、膨らんだ状態のまま形状が安定する。このようにして第1板10と第2板20との間に隙間Sを形成させる。隙間Sは、第1管40および第2管50を連通する流路となる。
【0029】
以上の工程で製造された冷却装置1は、流路である隙間Sに冷却用の流体を吸入し排出することで冷却機能を発揮することができる。以上の工程は、冷却装置1のサイズを問わずに簡易に適用できる。
【0030】
以上説明したように、冷却装置1の製造方法は、2つの管(例えば、
図2の第1管40および第2管50)が設けられた2枚の板(例えば、
図2の第1板10および第2板20)を重ね合わせる重ね合わせ工程と、2つの管の周囲(例えば、
図4の照射部位L)にレーザ溶接を施すことにより2枚の板の一部を接合する接合工程と、2つの管の少なくとも一方の管(例えば、
図3(A)の第1管40および第2管50の少なくとも一方)を介して流体(例えば、気体、液体)の圧力を加えることにより、2つの管を連通する流路になる領域(例えば、
図3(B)の隙間S)を成形する加圧成形工程と、を有する。
これにより、流路の印刷、乾燥、板合わせ、加熱、圧延といった工程で冷却装置1を製造する場合に比べて大規模な設備投資が不要になる。その結果、サイズを問わず、より簡易に冷却装置1を製造することができる。
【0031】
また、冷却装置1は、重ね合わされた2枚の板(例えば、
図2の第1板10および第2板20)と、2枚の板の少なくとも一方の板に設けられた2つの管(例えば、
図2の第1管40および第2管50)と、2つの管の周囲にレーザ溶接が施されることで2枚の板の一部が接合された周囲接合部(例えば、
図4の照射部位L)と、周囲接合部の内側に流体の圧力が加えられて2枚の板が膨らませられることで成形された、2つの管を連通する流路(例えば、
図3(B)の隙間S)と、を有する。
これにより、レーザ溶接によって流路の形状や大きさを規定することができるので、冷却装置のサイズや流路の形状を自在に変更可能な冷却装置を提供できる。
【0032】
<第2の実施の形態>
図5は、第2の実施の形態に係る冷却装置2の外観構成の一例を示す平面図である。
第2の実施の形態に係る冷却装置2は、上述の第1の実施の形態に係る冷却装置1に対して、第1管40および第2管50の各々が設けられている位置が異なるとともに、冷却装置2の内部に成形された流路の形状が異なる。
【0033】
以下、第1の実施の形態と異なる点について説明する。第2の実施の形態と第1の実施の形態とで、同じものについては同じ符号を用い、その詳細な説明は省略する。また、
図5の左右方向を「第1方向」、
図5の上下方向を「第2方向」と呼ぶ場合がある。
冷却装置2において、第1管40は、第1方向の第1側の端部であって、第2方向の第3側の端部に設けられている。また、第2管50は、第1方向の第2側の端部であって、第2方向の第4側の端部に設けられている。
【0034】
照射部位L1は、第1板10と第2板20とを溶接させるためにレーザ光が照射された部位である。照射部位L1は、第1管40および第2管50を包含する膨板領域Fの外縁を形成している。照射部位L2乃至L8は、照射部位L1と同様にレーザ光が照射された部位である。照射部位L2乃至L8は、膨板領域Fの内側に位置している。このため、照射部位L2乃至L8にレーザ光を照射することで、膨板領域Fの内側で冷却用の流体の流路にならない領域が成形される。すなわち、
図5に示すように、膨板領域Fのうち斜線で示されていない領域A2乃至A8が、冷却用の流体の流路にならない領域となっている。
【0035】
具体的には、冷却装置2は、
図5に示すように、第1方向の第1側の端部における第2方向の第3側の端部に第1管40が配置されており、第1方向の第2側の端部における第2方向の第4側の端部に第2管50が配置されている。
図5に示す膨板領域Fの形状は、第1管40側の一部に窪みを有する丸みを帯びたひし形状となっている。
【0036】
また、冷却用の流体の流路にならない領域A2乃至A8は、間隔を隔てて並列に配置されており、その形状は、いずれも第1方向を短辺とし、第2方向を長辺とする長方形状となっている。そして、長辺の長さはいずれも同じまたは略同じであるが、短辺の長さは、領域A2と領域A3とが同じまたは略同じ、領域A5と領域A6とが同じまたは略同じ、領域A7と領域A8とが同じまたは略同じになっている。また、領域A4の短辺の長さは極めて短く、全体として略線状になっている。
【0037】
領域A2乃至A8の間隔は、領域A5と領域A6との間隔、および領域A6と領域A7との間隔が同じまたは略同じであり、最も狭い間隔となっている。また、領域A2と領域A3との間隔、領域A3と領域A4との間隔、および領域A4と領域A5との間隔が同じまたは略同じであり、2番目に狭い間隔となっている。領域A7と領域A8との間隔は他の間隔よりも広くなっている。
【0038】
膨板領域Fを
図5に示すような形状とすることにより、例えば、以下のような効果が得られる。すなわち、第1板10の第1方向および第2方向の中央部には流路にならない2つの領域A5およびA6が広がっており、また、領域A5とA6との間隔が狭いため、領域A5とA6との間は冷却用の流体が流れ難い。このため、領域A5およびA6には、例えば他よりも冷却を控える必要がある被冷却物を配置することができる。また、膨板領域Fの第1方向の第1側の端部付近に狭い流路が密集しているのに対し、第1方向の第2側の端部付近に広い流路が形成されている。このため、膨板領域Fの第1方向の第2側の端部付近の領域は、膨板領域Fの第1方向の第1側の端部付近の領域よりも冷却用の流体が流れやすいので、被冷却物を冷却しやすい。
【0039】
また、仮に領域A5乃至A7が形成されていなかった場合には、第1管40と第2管50との間を流れる冷却用の流体を遮るものが少ないため、第1管40に吸入された冷却用の流体が第2管50に向けて直線的に流れることになる。この場合、膨板領域Fの縁部の領域に冷却用の流体が滞留しやすくなるので、第1板10の中央部は冷却しやすいが、その周りの領域は冷却し難くなる。これに対して、
図5に示すように、第1板10の中央部に領域A5乃至A7が形成されていると、第1板10の中央部に冷却用の流体が流れ難くなるので、その分、膨板領域Fの縁部の領域に冷却用の流体が流れやすくなる。その結果、膨板領域Fの縁部の領域を冷却しやすくすることができる。
【0040】
以上のように構成された冷却装置2は、上述の冷却装置1の製造方法に下記の工程を加えた手法により製造される。
すなわち、第1板10および第2板20は、レーザ溶接にて一部が接合されている。レーザ溶接を施す部位は、
図5の照射部位L1乃至L8で示される部位である。このうち、照射部位L1は、上述の接合工程において、第1管40および第2管50を包含する膨板領域F1の外縁を形成する部位としてレーザ光が連続的に照射される。これに対して、照射部位L2乃至L8は、上述の冷却装置1の製造方法に加わる非流路成形工程として、膨板領域Fの内側で冷却用の流体の流路にならない領域を形成する部位としてレーザ光がそれぞれ連続的に照射される。非流路成形工程は、上述の工程のうち、重ね合わせ工程よりも後、加圧成形工程よりも前に行われる工程であるが、接合工程とは前後しても構わない。
【0041】
以上説明したように、冷却装置2の製造方法は、2つの管(例えば、
図5の第1管40および第2管50)が設けられた2枚の板(例えば、
図5の第1板10および第2板20)を重ね合わせる重ね合わせ工程と、2つの管の周囲(例えば、
図5の照射部位L1)にレーザ溶接を施すことにより2枚の板の一部を接合する接合工程と、2つの管の少なくとも一方の管(例えば、
図3(A)の第1管40および第2管50の少なくとも一方)を介して流体(例えば、気体、液体)の圧力を加えることにより、2つの管を連通する流路になる領域(例えば、
図3(B)の隙間S)を成形する加圧成形工程と、を有する。
これにより、流路の印刷、乾燥、板合わせ、加熱、圧延といった工程で冷却装置2を製造する場合に比べて大規模な設備投資が不要になる。その結果、サイズを問わず、より簡易に冷却装置2を製造することができる。
【0042】
ここで、加圧成形工程の前に、2つの管の周囲の内側の領域(例えば、
図5の膨板領域F)にレーザ溶接(例えば、
図5の照射領域L2乃至L8へのレーザ照射)を施すことにより、2つの管を連通する流路にならない領域(例えば、
図5の領域A2乃至A8)を成形する非流路成形工程をさらに有しても良い。
これにより、2つの管の周囲の内側の領域にレーザ溶接を施すだけで、2つの管を連通する流路にならない領域を形成できるので、流体の流路を自在に変更することができる。その結果、プレス加工により成形したものよりも容易に流路を細かく成形することができるようになるので、流体の分流を改善し、冷却装置の性能の向上を図ることができる。
【0043】
また、冷却装置2は、重ね合わされた2枚の板(例えば、
図5の第1板10および第2板20)と、2枚の板の少なくとも一方の板に設けられた2つの管(例えば、
図5の第1管40および第2管50)と、2つの管の周囲にレーザ溶接が施されることで2枚の板の一部が接合された周囲接合部(例えば、
図5の照射部位L1)と、周囲接合部の内側に流体の圧力が加えられて2枚の板が膨らませられることで成形された、2つの管を連通する流路(例えば、
図3(B)の隙間S)と、を有する。
これにより、レーザ溶接によって流路の形状や大きさを規定することができるので、冷却装置のサイズや流路の形状を自在に変更可能な冷却装置を提供できる。
【0044】
ここで、周囲接合部の内側の領域(例えば、
図5の膨板領域F)にレーザ溶接(例えば、
図5の照射領域L2乃至L8へのレーザ照射)が施されることで2枚の板の一部が接合された内側接合部(例えば、
図5の領域A2乃至A8)をさらに有してもよい。
これにより、2つの管の周囲の内側の領域にレーザ溶接が施されるだけで、2つの管を連通する流路にならない領域が形成させるので、流体の流路を自在に変更可能な冷却装置とすることができる。その結果、プレス加工により成形されたものよりも流路が細かく成形され、流体の分流が改善され、性能の向上が図られた冷却装置を提供することができる。
【0045】
<他の実施の形態>
以上、第1および第2の実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限るものではない。また、本発明による効果も、上述の実施の形態に記載されたものに限定されない。例えば、
図1に示す冷却装置1の外観構成、
図2(A)に示す部材の構成、
図2(B)に示す第1管40の構成、
図3(A)および(B)に示す断面の構成、
図4および
図5に示す外観構成は、いずれも本発明の目的を達成するための例示に過ぎず、特に限定されない。
【0046】
例えば、上述の実施の形態において、第1板10および第2板20は同様の形状であるが、係る形状に限定されない。第1板10の第1突出部11および第2突出部12と、第2板20の第1突出部21および第2突出部22とで形成される空間内に、第1管40の第2筒状部42、および第2管50の第2筒状部52を収容でき、流体を吸入できるのであれば、第1板10および第2板20は同様の形状でなくても良い。例えば、第2板20は第1突出部21および第2突出部22を有さなくても良い。
【0047】
また、
図3(A)には、第1管40および第2管50の両方から成形用の流体を吸入する様子が示されているが、これに限定されない。例えば、第1管40および第2管50のいずれか一方から成形用の流体を吸入してもよい。
【0048】
また、上述の実施の形態では、第1板10から上方に第1管40および第2管50が突出して、第1板10の上方で流体の吸入および排出を行う態様となっているが、かかる態様に限定されない。例えば、第2板20に図示せぬ貫通孔を設けて、第2板20から下方に第1管40および第2管50を突出させ、第2板20の下方で流体の吸入および排出を行う態様であっても良い。また、例えば、第1板10から上方に第1管40を突出させるとともに第2板20から下方に第2管50を突出させ、第1板10の上方から流体を吸入し、第2板20の下方に流体を排出する態様や、第2板20の下方から流体を吸入し、第1板10の上方に流体を排出する態様であっても良い。
【0049】
また、上述の実施の形態では、第1板10と第2板20とを接合する際、第1板10に向けてレーザ光を照射する態様であるが、かかる態様に限定されない。第1板10と第2板20とを接合する際には、第2板20に向けてレーザ光を照射する態様であっても良い。
【符号の説明】
【0050】
1,2…冷却装置、10…第1板、20…第2板、40…第1管、50…第2管、100…組電池、F,F1…膨板領域、S…隙間、L,L1,L2,L3,L4,L5,L6,L7,L8…照射部位、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8…流路にならない領域