(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059629
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】流体デバイス
(51)【国際特許分類】
B01J 19/00 20060101AFI20240423BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240423BHJP
G01N 35/08 20060101ALI20240423BHJP
B81B 1/00 20060101ALI20240423BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20240423BHJP
C12M 1/34 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
B01J19/00 321
G01N37/00 101
G01N35/08 A
B81B1/00
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024011747
(22)【出願日】2024-01-30
(62)【分割の表示】P 2020550880の分割
【原出願日】2019-03-19
(31)【優先権主張番号】62/646,492
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】石澤 直也
(72)【発明者】
【氏名】小林 遼
(72)【発明者】
【氏名】上野 太郎
(72)【発明者】
【氏名】高崎 哲臣
(72)【発明者】
【氏名】シーガー ロナルド アダム
(72)【発明者】
【氏名】サロモン マシュー ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】コイフマン アレクセイ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】基材に対する処理基板の固定の信頼性を高めることができる、処理効率を上げることができる等の利点を有する流体デバイスを提供する。
【解決手段】流体デバイス1は、内部に導入される液体に含まれる検出対象を検出する処理部41を有し、処理部と接続する回路パターンを有する処理基板4と、処理基板4に接して配置され、処理部を囲む周状のシール部と、シール部に接して配置される第1基板10と、処理基板4に接して配置され、処理基板4を挟み第1基板10の反対側に配置される第2基板20と、を備え、第1基板10、処理基板4、および第2基板20は、積層された状態でシール部を押圧され、第1基板10及び第2基板20の少なくとも一方は、処理基板4と接する面に処理基板4の一部を収容する収容凹部31を有し、処理基板4が収容凹部31に収容された状態において処理基板4の外縁の一辺は、流体デバイス1の外縁の一辺を形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を積層して形成される流体デバイスであって、
前記流体デバイス内部に導入される液体に含まれる検出対象を検出する処理部を有し、当該処理部と接続する回路パターンを有する処理基板と、
前記処理基板に接して配置され、前記処理部を囲む周状のシール部と、
前記シール部に接して配置される第1基板と、
前記処理基板に接して配置され、前記処理基板を挟み前記第1基板の反対側に配置される第2基板と、を備え、
前記第1基板、前記処理基板、および前記第2基板は、積層された状態で前記シール部を押圧し、
前記第1基板及び前記第2基板の少なくとも一方は、前記処理基板と接する面に前記処理基板の一部を収容する収容凹部を有し、
前記処理基板が前記収容凹部に収容された状態において前記処理基板の外縁の一辺は、前記流体デバイスの外縁の一辺を形成する、
流体デバイス。
【請求項2】
前記処理基板の外縁の一辺は、積層方向から見て前記流体デバイスの外縁の一辺と重なる、請求項1に記載の流体デバイス。
【請求項3】
前記第1基板の収容凹部は段差部を備え、
当該段差部は前記シール部と接触する位置に凹溝を有する、
請求項1又は請求項2に記載の流体デバイス。
【請求項4】
前記第1基板は、前記周状のシール部の内部に前記液体を導入及び排出するための一対の貫通孔を備える、
請求項1~3のいずれか1項に記載の流体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体デバイスに関するものである。
本願は、2018年3月22日に出願された、米国仮出願第62/646,492号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、体外診断分野における試験の高速化、高効率化、および集積化、又は、検査機器の超小型化を目指したμ-TAS(Micro-Total Analysis Systems)の開発などが注目を浴びており、世界的に活発な研究が進められている。
【0003】
μ-TASは、少量の試料で測定、分析が可能なこと、持ち運びが可能となること、低コストで使い捨て可能なこと等、従来の検査機器に比べて優れている。
更に、高価な試薬を使用する場合や少量多検体を検査する場合において、有用性が高い方法として注目されている。
【0004】
μ-TASの構成要素として、流路と、該流路上に配置されるポンプとを備えたデバイスが報告されている(非特許文献1)。このようなデバイスでは、該流路へ複数の溶液を注入し、ポンプを作動させることで、複数の溶液を流路内で混合する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Jong Wook Hong, Vincent Studer, Giao Hang, W French Anderson and Stephen R Quake,Nature Biotechnology 22, 435 - 439 (2004)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の実施態様に従えば、溶液が流れる流路と、第1対向面と、を有する基材と、前記第1対向面に対向し、前記溶液と接触して前記溶液を処理する処理部が設けられた第2対向面を有する処理基板と、前記第1対向面と前記第2対向面との間に挟み込まれるシール部と、を備え、前記処理基板と前記基材との間には、前記処理部を板厚方向から見て前記シール部で囲み、前記流路と接続する処理空間が設けられる、流体デバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態の流体デバイスの斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態の流体デバイスの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、一実施形態の流体デバイスの平面図である。
【
図4】
図4は、
図3のIV-IV線に沿う流体デバイスの断面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態の第2基板の平面図である。
【
図6】
図6は、
図3のVI-VI線に沿う流体デバイスの断面図である。
【
図7】
図7は、
図3のVII-VII線に沿う流体デバイスの断面図である。
【
図9】
図9は、変形例1の流体デバイスの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、流体デバイスの実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0009】
(流体デバイス)
図1は、本実施形態の流体デバイス1の斜視図である。
図2は、流体デバイス1の分解斜視図である。
図3は、流体デバイス1の平面図である。
【0010】
本実施形態の流体デバイス1は、検体試料に含まれる検出対象である試料物質を免疫反応および酵素反応などにより検出するデバイスを含む。試料物質は、例えば、核酸、DNA、RNA、ペプチド、タンパク質、細胞外小胞体などの生体分子である。
【0011】
図2に示すように、流体デバイス1は、基材2と処理基板4とを備える。また、後段において説明するように、基材2には、シール部5が設けられる(
図4参照)。すなわち、流体デバイス1は、シール部5を備える。
【0012】
処理基板4は、基板本体40と、処理部41を有する。
【0013】
基板本体40は、一種類あるいは複数の核酸や抗体などの生体分子が結合しているものや回路パターン(図示略)が設けられたリジット基板である。基板本体40は、例えばガラス基板,石英ガラス基板,金属板,樹脂基板やガラスエポキシから構成される。
【0014】
処理部41は、基板本体40に備えられる。処理部41は、基材2に設けられた流路50を流れる溶液に接触して、溶液に対して何らかの処理を施したり、溶液中の物質と反応したり、溶液中の物質を検出するものである。処理部41は、例えば溶液中の検出対象を検出する検出部である。処理部41は、例えば、GMRセンサ(Giant Magneto Resistive Sensor)である。GMRセンサの各素子の表面には、例えば、検出対象である抗原を捕捉する抗体が固定されている。また、GMRセンサの各素子は、検出対象である抗原と結びついた磁性粒子を検出する。すなわち、本実施形態において、処理部41としてのGMRセンサは、溶液中の検体を捕捉し、検出する。GMRセンサの各素子は、基板本体40の回路パターンに接続されている。
【0015】
処理部41は基材2に設けられた流路50を流れる溶液に接触して、溶液に対して何らかの処理を施すものであればその機能は限定されない。また、処理部41は、例えば溶液を反応させる反応部である。処理部41が溶液に施す処理としては、捕捉処理、検出処理、加熱処理,抗原抗体反応,核酸の交差結合,生体分子の相互作用などが例示できる。処理部41としては、DNAアレイチップ、電界センサ、加熱ヒータ、クロマトグラフィーを行う素子などが例示できる。
【0016】
基材2は、第1基板(基板、トッププレート)10と、第2基板(基板、ミドルプレート)20と、第3基板(基板、ボトムプレート)30と、を有する。すなわち、基材2は、3つの基板を有する。第1基板10、第2基板20および第3基板30は、基板の厚さ方向に積層される。第1基板10と第2基板20とは、レーザ溶着、超音波溶着などの溶着手段によって互いに溶着される。同様に、第2基板20と第3基板30とは、レーザ溶着、超音波溶着などの溶着手段によって互いに溶着される。
【0017】
第1基板10、第2基板20および第3基板30は、樹脂材料から構成される。レーザ溶着により、第1基板10と第2基板20、および、第2基板20と第3基板30とを溶着接合する場合には、貼り合わせる二枚の基板のうち一方が光を透過する透光性の樹脂材料であり、他方が光を吸収する樹脂材料であることが好ましい。例えば、第1基板10および第3基板30は、光を透過する透光性の樹脂材料から構成される。一方で、第2基板20は、レーザの波長の光を吸収する有色の樹脂材料又はレーザの波長の光を吸収する塗料が塗布された樹脂材料から構成される。第1基板10、第2基板20および第3基板30には、熱可塑性の樹脂材料を使用することが好ましい。しかしながら、熱可塑性樹脂材料であっても、炭素繊維強化樹脂は、第1基板10、第2基板20および第3基板30には、適さない。また、熱可塑性樹脂材料であっても、フッ素樹脂などの極端に耐熱性が高い樹脂材料は、第1基板10、第2基板20および第3基板30には、適さない。第1基板10、第2基板20および第3基板30に使用が可能な樹脂材料としては、結晶性樹脂の汎用樹脂(ポリプロピレン;PP、ポリ塩化ビニル;PVCなど)、エンジニアリングプラスチック(ポリエチレンテレフタレート;PETなど)、スーパーエンジニアリングプラスチック(ポリフェニレンサルファイド;PPS、ポリエーテルエーテルケトン;PEEKなど)、並びに非結晶性樹脂の汎用樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合合成樹脂;ABS、ポリメチル・メタクリレート;,PMMAなど)、エンジニアリングプラスチック(ポリカーボネート;PC、ポリフェニレンエーテル;PPEなど)、スーパーエンジニアリングプラスチック(ポリエーテルサルフォン;PESなど)が例示される。
【0018】
第1基板10、第2基板20および第3基板30は、この順で積層される。すなわち、第2基板20は、第1基板10と第3基板30との間に配置される。また、第2基板20と第3基板30との間には、処理基板4が配置される。したがって、処理基板4の一部は基材2の内部に収容される。
【0019】
処理基板4、第1基板10、第2基板20および第3基板30は、1つの平面に沿って平行に延びる板材である。以下の説明においては、処理基板4、第1基板10、第2基板20および第3基板30の配置は、説明の便宜のため、水平面に沿って配置されるものとして説明する。また、以下の説明において、上側から順に第1基板10、第2基板20、処理基板4および第3基板30が、順に積層されるとして、上下方向を規定する。すなわち、本明細書における上下方向は、第1基板10、第2基板20、処理基板4および第3基板30の積層方向および厚さ方向である。
ただし、これは、説明の便宜のために水平方向および上下方向を定義したに過ぎず、本実施形態に係る流体デバイス1の使用時の向きを限定しない。
【0020】
図4は、
図3のIV-IV線に沿う流体デバイス1の断面図である。
処理基板4、第1基板10、第2基板20および第3基板30は、それぞれ上側(積層方向一方側)を向く上面と、下側(積層方向他方側)を向く下面と、を有する。より具体的には、第1基板10は、上面10aと下面10bとを有する。第2基板20は、上面20aと下面(第1対向面)20bとを有する。第3基板30は、上面(第3対向面)30aと下面30bとを有する。すなわち、基材2は、上面10a、20a、30aと、下面10b、20b、30bと、を有する。また、処理基板4は、上面(第2対向面)4aと下面4bと、を有する。
【0021】
第1基板10の下面10bと第2基板20の上面20aとは、上下方向に対向する。第2基板20の下面20bと第3基板30の上面30aとは、上下方向に対向する。処理基板4の上面4aの一部は、第2基板20の下面20bの一部と上下方向に対向する。処理基板4の下面4bの一部は、第3基板30の上面30aの一部と上下方向に対向する。
【0022】
第2基板20の下面20bには、第1収容凹部(収容凹部)21が設けられる。同様に、第3基板30の上面30aには、第2収容凹部(収容凹部)31が設けられる。第1収容凹部21と第2収容凹部31とは、上下方向から見て互いに重なる。第1収容凹部21および第2収容凹部31は、それぞれ処理基板4を収容する。第1収容凹部21の底面21aは、処理基板4の上面4aと接触する。第2収容凹部31の底面31aは、処理基板4の下面4bと接触する。また、第2基板20の下面20bの第1収容凹部21を除く領域の一部と、第3基板30の上面30aの第2収容凹部31を除く領域の一部と、は、互いに接触する。これにより、基材2は、第2基板20の下面20bと第3基板30の上面30aとの間で、処理基板4を挟み込む。すなわち、基材2は、処理基板4を挟み込む一対の基板(第2基板20および第3基板30)を有する。
【0023】
基材2には、溶液を貯留するリザーバー60と、溶液が流れる流路50と、注入孔71と、供給孔74と、廃液槽72と、排出孔75と、空気孔73と、が設けられている。
【0024】
リザーバー60は、第2基板20と第3基板30との間に設けられる。リザーバー60は、第2基板20の下面20bに設けられた溝部22の内壁面と第3基板30の上面30aとによって囲まれた空間である。リザーバー60は、例えば、チューブ状、あるいは筒状に形成された空間である。本実施形態の基材2には、複数のリザーバー60が設けられる。リザーバー60には、溶液が収容される。複数のリザーバー60は、互いに独立して溶液を収容する。本実施形態のリザーバー60は、流路型のリザーバーである。リザーバー60の長さ方向の一端は、注入孔71に接続される。また、リザーバー60の長さ方向の他端は、供給孔74が接続される。流体デバイス1の製造過程において、リザーバー60には、注入孔71から溶液が注入される。また、流体デバイス1の使用時において、リザーバー60は、供給孔74を介し収容した溶液を流路50に供給する。
【0025】
流路50は、第1基板10と第2基板20との間に設けられる。流路50は、例えば、第1基板10と第2基板20の接合面に形成された溝部により構成される。第1基板10の下面10bに設けられた溝部と第2基板20の上面20aとによって囲まれた空間により構成されてもよく、第1基板10の下面10bと第2基板20の上面20aに設けられた溝部とによって囲まれた空間として構成されてもよく、第1基板10の下面10bに設けられた溝部と第2基板20の上面20aに設けられた溝部とによって囲まれた空間として構成されてもよい。本実施形態においては、流路50の一部は、第1基板10の下面10bに設けられた溝部13と第2基板20の上面20aとによって囲まれた空間として構成される。また、流路50の一部は、第1基板10の下面10bと第2基板20の上面20aに設けられた溝部23とによって囲まれた空間として構成される。さらに、流路50の一部は、第1基板10の下面10bに設けられた溝部13と第2基板20の上面20aに設けられた溝部23とによって囲まれた空間として構成される。流路50は、チューブ状、あるいは筒状に形成された空間である。流路50には、リザーバー60から溶液が供給される。溶液は、流路50内を流れる。
流路50の各部に関しては、
図5を基にして後段において詳細に説明する。
【0026】
注入孔71は、第1基板10および第2基板20を板厚方向に貫通する。注入孔71は、第2基板20と第3基板30との境界部に位置するリザーバー60に繋がる。注入孔71は、リザーバー60を外部に繋げる。注入孔71は、1つのリザーバー60に対して1つ設けられる。
【0027】
注入孔71の開口には、セプタム71aが設けられる。作業者(または注入装置)は、例えば、溶液が充填されたシリンジを用いてリザーバー60への溶液の注入作業を行う。作業者は、シリンジに取り付けられた中空針をセプタム71aに突刺してリザーバー60に溶液を注入する。
なお、注入孔71の開口には、セプタム71aが設けられていなくてもよい。この場合、注入孔71の開口には、リザーバー60への溶液の注入後に貼付されるシールが設けられる。
【0028】
供給孔74は、第2基板20に設けられる。供給孔74は、第2基板20を板厚方向に貫通する。供給孔74は、リザーバー60と流路50とを繋ぐ。リザーバー60に貯留された溶液は、供給孔74を介して流路50に供給される。
【0029】
廃液槽72は、流路50中の溶液を廃棄する為に基材2に設けられる。廃液槽72は、排出孔75を介して流路50に接続される。廃液槽72は、第2基板20の下面20bに設けられた廃液用凹部25と、第3基板30の上面30aに囲まれた空間に構成される。廃液槽72には、廃液を吸収する吸収材79が充填される。
【0030】
排出孔75は、第2基板20を板厚方向に貫通する。排出孔75は、流路50と廃液槽72とを繋ぐ。流路50内の溶液は、排出孔75を介して廃液槽72に排出される。
【0031】
空気孔73は、第1基板10および第2基板20を板厚方向に貫通する。空気孔73は、廃液槽72の直上に位置する。空気孔73は、廃液槽72を外部に繋げる。すなわち、廃液槽72は、空気孔73を介して外部に開放される。
【0032】
次に、流路50について、より具体的に説明する。
図5は、第2基板20の平面図である。
なお、
図5において、流路50の一部を二点鎖線又は破線により補完して表示する。また、
図5において、流路50の一部である循環流路51には、ドット模様により強調して表示する。
【0033】
流路50は、循環流路51と、複数の導入流路52と、複数の排出流路53と、を有する。
【0034】
循環流路51は、積層方向から見て、ループ状に構成される。循環流路51の経路中には、ポンプPが配置されている。ポンプPは、流路中に並んで配置された3つの要素ポンプPeから構成されている。要素ポンプPeは、いわゆるバルブポンプである。ポンプPは、3つの要素ポンプPeを順次開閉することにより、循環流路51内において液体を搬送することができる。ポンプPを構成する要素ポンプPeの数は、3個以上であればよく、4以上であってもよい。
【0035】
循環流路51の経路中には、複数(本実施形態では3つ)の定量バルブVが設けられる。複数の定量バルブVは、循環流路51を複数の定量区画に区画する。複数の定量バルブVを閉じることにより、循環流路51において複数の区画が画定される。複数の定量バルブVは、それぞれの定量区画が所定の体積となるように配置されている。それぞれの定量区画の一端には、導入流路52が接続される。また、定量区画の他端には、排出流路53が接続される。
【0036】
導入流路52は、循環流路51の定量区画に溶液を導入するための流路である。導入流路52は、1つの定量区画に少なくとも1つ設けられる。導入流路52は、一端側において供給孔74に接続される。また、導入流路52は、他端側において、循環流路51に接続される。導入流路52の経路中には、導入バルブViと初期クローズバルブVaとが設けられる。
【0037】
初期クローズバルブVaは、流体デバイス1の出荷時の初期状態においてのみ閉塞するバルブである。初期クローズバルブVaが設けられることで、出荷から使用までの輸送中等において、リザーバー60内の溶液が、流路50に流入することを抑制できる。
導入バルブViは、リザーバー60から流路50に溶液を導入する際に開放され、他の状態において閉塞される。
【0038】
排出流路53は、循環流路51の溶液を廃液槽72に排出するための流路である。排出流路53は、一端側において廃液槽72に接続される。また、排出流路53は、他端側において、循環流路51に接続される。排出流路53の経路中には、排出バルブVoが設けられる。
【0039】
排出バルブVoは、流路50から廃液槽72に溶液を排出する際に開放され、他の状態において閉塞される。
【0040】
循環流路51には、処理空間55が含まれる。循環流路51内の溶液は、循環中に処理空間55を通過する。処理空間55には、処理基板4の処理部41が配置される。すなわち、処理部41は、処理空間55の内部に位置する。処理部41は、処理基板4の上面4aに設けられる。処理部41は、処理空間55内の溶液と接触して溶液を処理する。
【0041】
流体デバイス1による溶液の処理について説明する。
流体デバイス1は、複数のリザーバー60内の溶液を、それぞれ循環流路51の異なる定量区画に導入して、溶液の定量を行う。次いで、流体デバイス1は、定量バルブVを開放するとともに、ポンプPを作動させる。これにより、循環流路51においてそれぞれの定量区画で定量した溶液を循環させて混合する。また、処理部41において溶液内の検体(例えば抗原を捕捉する。次いで、循環流路51内の溶液を廃液槽72に排出する。ついで、磁性粒子を含む溶液を循環流路51内に供給するとともに、循環させる。これにより、処理部41に捕捉された抗原に磁性粒子を結び付ける。さらに、処理部41において磁性粒子を検出する。
【0042】
図6は、
図3のVI-VI線に沿う流体デバイス1の断面図である。
第2基板20の下面20bには、処理基板4を収容する第1収容凹部21が設けられる。第1収容凹部21は、第2基板の20の下面20b側が開口したくぼみである。第1収容凹部21は処理凹部26を含む。第1収容凹部において、開口面と逆側の面であり、処理凹部26につながっていない部分を第1収容凹部21の底面21aと呼ぶ。第1収容凹部21の底面21aは、処理基板4の上面4aに接触する。第1収容凹部21の底面21aには、処理凹部(凹部)26が設けられる。上下方向から見て、処理凹部26の底面積は、第1収容凹部21の底面積よりも小さい。すなわち、第1収容凹部21の底面21aの一部において、処理凹部26は設けられている。処理凹部26の内部には、処理空間55が構成される。処理凹部26の底面26aは、処理基板4の処理部41と上下方向に対向する。処理空間55は、上下方向において、処理凹部26の底面と処理基板4の上面4aとの間に設けられる。すなわち、処理空間55は、上下方向において第2基板20と処理基板4との間に設けられる。
【0043】
処理凹部26の底面26aには、一対の挿通孔29が設けられる。挿通孔29は、第2基板20を板厚方向に貫通する貫通孔である。すなわち、第2基板20には、一対の挿通孔29が設けられる。挿通孔29は、第2基板20の上面20a側において、流路50に開口し、第2基板20の下面20b側において、処理空間55に開口する。すなわち、一対の挿通孔29は、第1基板10と第2基板20との間の流路50と、処理空間55と、を接続する。溶液は、一対の挿通孔29のうち、一方の挿通孔29を介して処理空間55に流入し、他方の挿通孔29を介して処理空間55から流路50に流出する。上下方向から見て、一対の挿通孔29の間には、処理部41が配置される。このため溶液は、処理空間55を通過する際に、処理部41の表面に接触する。
【0044】
図3に示すように処理空間55は、上下方向から見てシール部5に囲まれる。処理空間55は、第2基板20における処理凹部26の底面26aと、シール部5と、処理基板4の上面4aとに囲まれる。シール部5は、上下方向から見て環状である。
図6に示すように、シール部5の上側を向く面は、第2基板20の下面20b(より具体的には、段差面26b)と接触する。シール部5の上側を向く面は、処理基板4の上面4aと接触する。また、シール部5は、上下方向から見て、処理空間55を囲む。
なお、本明細書において、「上下方向から見て環状」とは、上下方向から見て円形である場合に限定されない。すなわち、すなわち、シール部5は、上下方向から見て、所定の領域(本実施形態において、処理空間55および処理空間55内の処理部41)を囲む形状であればよい。
【0045】
シール部5は、例えば弾性材料から構成される。シール部5に採用可能な弾性材料としては、ゴム、エラストマー樹脂などが例示される。シール部5と第2基板20とは、互いに異材質で一体的に構成されていてもよい。例えば、シール部5と第2基板20とは、ダブルモード成形としての二色成形、インジェクション成形、インサート成形等により一体的に成形された成形体である。また、第2基板20には、シール部5に加えて、複数のバルブV、Va、Vi、Voおよびセプタム71aが一体的に設けられていてもよい。シール部5と複数のバルブV、Va、Vi、Voおよびセプタム71aとは、同一の材料から構成されていてもよい。この場合、2種の樹脂材料を用いた二色成形(ダブルモード成形)によって、第2基板20と複数のバルブV、Va、Vi、Voおよびセプタム71aを一体的に成形できる。シール部5は処理空間55において処理部41の表面に接触する流体を密閉することが可能であれば、第2基板20とは独立した別個の部材であってもよい。
【0046】
処理凹部26の内周面には、段差面26bが設けられる。段差面26bは、処理基板4の上面4aに対向する。シール部5は、段差面26bと処理基板4の上面4aとの間に挟み込まれる。すなわち、シール部5は、第2基板20の下面20bと処理基板4の上面4aとの間に挟み込まれる。
【0047】
処理凹部26の段差面26bには、凹溝26cが設けられる。凹溝26cは、上下方向から見て、環状に設けられる。凹溝26cの内部にはシール部5を構成する弾性材料が充填される。段差面26bに凹溝26cが設けられることで、段差面26bとシール部5との接触面積が増加する。これにより、第2基板20にシール部5を二色成形する場合に、第2基板20に対するシール部5の剥離強度を高めることができる。
【0048】
本実施形態において、流体デバイス1は、流路50が設けられた基材2と、溶液を処理する処理部41が実装された処理基板4と、を有する。また、処理部41は、流路50と繋がる処理空間55に配置される。このため、処理空間55は、溶液の液漏れを抑制すために、封止することが望まれる。処理基板4と基材2とは、互いに異種材料であるため、溶着などの手段によって処理空間55を封止することは困難である。
【0049】
本実施形態の流体デバイスによれば、基材2と処理基板4との間にシール部5が挟み込まれている。また、上下方向からみてシール部5の内側に処理空間55が設けられる。このため、処理空間55を封止して、処理空間55内の溶液が外部に流出することを抑制できる。
【0050】
本実施形態によれば、処理空間55は、第2基板20に設けられた処理凹部26の内部空間として構成される。処理凹部26の底面26aは、処理部41と上下方向に対向する。これに対して、第2基板に処理部を内包する大きな貫通孔を設けて処理基板の上面と第1基板の下面との間の空間を処理空間とすることも考えられる。しかしながら、処理凹部26を設けることで、上下方向における処理空間55の流路幅を小さくすることができ、処理空間55を通過する溶液内の検体分子が、処理部41に衝突する頻度を増加させることができる。これにより、処理部41による処理効率を高めることができる。
【0051】
本実施形態によれば、処理凹部26の内周面に段差面26bが設けられ、段差面26bと処理基板4の上面4aとの間で、シール部5が挟み込まれる。このため、段差面26bの深さによって、シール部5の圧縮率を容易に設定することができ、シール部5による処理空間55の封止の信頼性を高めることができる。
なお、本実施形態において、シール部5は、第2基板20に一体的に成形されているが、シール部5と第2基板20とは、別部材であってもよい。シール部5が第2基板20と別部材である場合には、段差面26bにシール部5を配置することで、第2基板20に対するシール部5の位置ズレを抑制することができる。
【0052】
本実施形態によれば、第2基板20に設けられた一対の挿通孔29によって、第1基板10と第2基板20との間に設けられた流路50と処理空間55とが繋げられる。このため、シール部5による封止を確保しつつ、流路50から処理空間55に溶液を供給することができる。
なお、本実施形態において、挿通孔29は、第2基板20の板厚方向と平行に延びる。また、本実施形態において、挿通孔29は、板厚方向に沿って一様な断面積の円形である。しかしながら、挿通孔29の形状は、本実施形態に限定されない。例えば、挿通孔29は、第2基板20の板厚方向に対して傾斜して延びていてもよい。この場合、挿通孔29を介して、流路50から処理空間55にスムーズに溶液を導入することができる。
【0053】
本実施形態によれば、第2基板20および第3基板30に、それぞれ上下方向から処理基板4の一部を収容する収容凹部(第1収容凹部21および第2収容凹部31)が設けられる。これにより、第2基板20の下面20bと第3基板30の上面30aとが互いに接触する。したがって、第2基板20と第3基板30とを互いの接触面において溶着などの固定手段により固定することで、基材2に対して処理基板4を容易に固定することができる。加えて、第2基板20と第3基板30との間に処理基板4を挟み込んだ状態で、第2基板20と第3基板30とを接触させて固定することで、第2基板20と処理基板4との間に挟み込まれたシール部5を定常的に圧縮することができる。結果的に、処理空間55の封止の信頼性を高めることができる。なお、基材2には、第1収容凹部21および第2収容凹部31のうち何れか一方が設けられていればよい。
【0054】
図7は、
図3のVII-VII線に沿う流体デバイス1の断面図である。
第2基板20の下面20bと、第3基板30の上面30aとは、処理基板4の周囲において互いに接触する。第2基板20の下面20bおよび第3基板30の上面30aにおいて、互いに接触する領域を接触面6と呼ぶ。すなわち、処理基板4を上下方向から挟み込む一対の基板(第2基板20および第3基板30)は、それぞれ他方の基板と板厚方向に対向して接触する接触面6を有する。
【0055】
接触面6の少なくとも一部には、一対の基板(第2基板20および第3基板30)同士を溶着する溶着部6aが設けられる。
【0056】
溶着部6aは、第2基板20と第3基板30とを互いに接合する。溶着部6aは、第2基板20および第3基板30の接触面6の一部を溶融させ再凝固させることで、第2基板20および第3基板を互いに接合する。溶着手段としては、例えば、レーザ溶着、超音波溶着、熱溶着等が挙げられる。
【0057】
処理基板4には、板厚方向に貫通する複数(本実施形態では3つ)の貫通孔47が設けられる。また、
図2に示すように、本実施形態において、貫通孔47は、上下方向から見て円形である。貫通孔47の直径は、貫通孔47の全長において一様である。3つの貫通孔47は、上下方向から見て、処理部41の周囲において、処理部41を囲んで配置される。貫通孔47は処理基板4において、処理部41以外の部分に設けられている。
【0058】
図8は、
図7の領域VIIIの拡大図である。
図8に示すように、第2基板20には、第3基板30側に突出する第1凸部(凸部、突出部)27が設けられる。第1凸部27は、第2基板20の第1収容凹部21の底面21aから下側に延びる。第1凸部27は、上下方向から見て円形である。第1凸部27は、処理基板4の貫通孔47に挿入される。第1凸部27は、貫通孔47に嵌合する。第1凸部27は、柱状であり、処理基板の貫通孔47に挿入される支柱部材である。第1凸部27は、処理基板4に設けられた貫通孔47と同数だけ、第2基板20に設けられる。すなわち、本実施形態の第2基板20には、3つの第1凸部27が設けられる。
【0059】
第3基板30には、第2基板20側に突出する第2凸部(凸部、突出部)37が設けられる。第2凸部37は、第3基板30の第2収容凹部31の底面31aから上側に延びる。第2凸部37は、上下方向から見て円形である。第2凸部37は、処理基板4の貫通孔47に挿入される。第2凸部37は、貫通孔47に嵌合する。第2凸部37は、柱状であり、処理基板の貫通孔47に挿入される支柱部材である。第2凸部37は、処理基板4に設けられた貫通孔47と同数だけ、第3基板30に設けられる。すなわち、本実施形態の第3基板30には、3つの第2凸部37が設けられる。
【0060】
第1凸部27および第2凸部37は、上下方向から見て互いに重なりあう。第1凸部27および第2凸部37は、処理基板4の貫通孔47に、上側および下側からそれぞれ挿入される。第1凸部27の先端(下端)および第2凸部37の先端(上端)は、貫通孔47の内部で互いに接触する。すなわち、第1凸部27の先端および第2凸部37の先端には、一対の基板(第2基板20および第3基板30)同士が互いに接触する接触面6が設けられる。また、第1凸部27の先端および第2凸部37の先端の接触面6には、溶着部6aが位置する。したがって、第2基板20と第3基板30とは、処理基板4の貫通孔47の内部においても互いに接合されている。
【0061】
本実施形態において、流体デバイス1は、流路50が設けられた基材2と、溶液を処理する処理部41が実装された処理基板4と、を有する。また、処理基板4は、前述の通り、第2基板20と第3基板30との溶着により、基材2に対して固定される。一般的に、実装部品を有する処理基板としては、一般的に絶縁性に優れたガラスエポキシなどが用いられる。一方で、基材は、溶液を流れる流路が設けられるために、加工性に優れた樹脂材料が採用される。すなわち、一般的に処理基板4と基材2とは互いに異種材料である。また、一般的に流体デバイスでは、小型化などを目的として、基板同士の固定に溶着が好適に採用される。異種材料である処理基板4と基材2とを溶着によって直接的に固定する場合、十分な信頼性を得難いという問題があった。
【0062】
本実施形態の流体デバイス1によれば、基材2が、処理基板4を板厚方向に挟み込む第2基板20および第3基板30を有する。また、第2基板20および第3基板30は、互いに接触面6を有し、接触面6に溶着部6aが設けられる。溶着部6aは、第2基板20および第3基板30を互いに溶着する。したがって、処理基板4と基材2との材質が異種材料であっても、基材2に対して、処理基板4を固定することができる。これにより、基材2に対する処理基板4の固定の信頼性を高めることができる。第2基板20と第3基板30とは接合性の良い材料であることが好ましい。また、第2基板20と第3基板30とが同種の材料である場合、異種材料と接合している場合と比べて線膨張係数の違いによる影響を受けにくい。
【0063】
また、本実施形態の第2基板20および第3基板30には、それぞれ処理基板4に設けられた貫通孔47に、反対側から挿入され貫通孔47の内部で接触する凸部(第1凸部27および第2凸部37)がそれぞれ設けられる。また、第1凸部27および第2凸部37の先端には、互いに接触する接触面6が設けられる。第1凸部27および第2凸部37の先端の接触面6には、溶着部6aが位置する。
【0064】
このため本実施形態によれば、上下方向から見て、溶着部6aを処理基板4の外縁より内側に配置させることができる。溶着部6aが処理基板4の外縁より内側に位置するため、基材2に対し処理基板4に応力が加わった場合であっても、溶着部6aの剥離を効果的に抑制できる。結果的に、基材2に対する処理基板4の固定の信頼性をさらに高めることができる。
【0065】
本実施形態によれば、溶着部6aが処理基板4の外縁より内側に位置するため、溶着部6aを第2基板20と処理基板4との間に挟み込まれるシール部5に近づけて配置することができる。シール部5と溶着部6aが離れて配置されると、第2基板20および処理基板4がシール部5の反力によりたわみ、シール部5の圧縮が不十分となる虞がある。本実施形態によれば、溶着部6aが処理基板4の外縁より内側に位置するため、第2基板20および処理基板4のたわみの影響を小さくして、シール部5による処理空間55の封止の信頼性を高めることができる。
【0066】
なお、本実施形態では、第2基板20および第3基板30にそれぞれ、貫通孔47に挿入される凸部(第1凸部27および第2凸部37)が設けられる場合について説明した。しかしながら、一対の基板(第2基板20および第3基板30)のうち何れか一方に、凸部が設けられていてもよい。例えば、第2基板20に第1凸部27が設けられ、第3基板30に凸部が設けられない場合、第1凸部27は、貫通孔47の全長を貫通して、貫通孔47の下端において第2基板に接触し溶着される。
すなわち、一対の基板(第2基板20および第3基板30)のうち少なくとも一方に、他方の基板側に突出し貫通孔47に挿入される凸部が設けられ、凸部の先端に、他方の基板に接触する接触面が設けられ、溶着部が、凸部の先端の接触面に位置していていればよい。このような構成であれば、溶着部6aを処理基板4の外縁より内側に位置させることができる。
【0067】
本実施形態によれば、第2基板20に設けられた第1凸部27が処理基板4の貫通孔47に挿入されるため、処理基板4に対して第2基板20を板厚と直交する方向において位置合わせできる。これにより、第2基板20の処理凹部26の中央に処理部41を正確に配置できる。また、第2基板20の下面20bに一体的に成形されたシール部5を処理基板4の所定の位置に正確に押し当てて、処理空間55の封止の信頼性を高めることができる。
【0068】
同様に、本実施形態によれば、第3基板30に設けられた第2凸部37が処理基板4の貫通孔47に挿入されるため、処理基板4に対して第3基板30を板厚と直交する方向において位置合わせできる。
【0069】
図3に示すように、本実施形態によれば、溶着部6aは、上下方向から見て、処理基板4の外縁の周囲と、処理基板4の外縁より内側に位置する貫通孔47の内側と、にそれぞれ設けられる。これにより、基材2に対して処理基板4をより強固に固定することができる。
【0070】
図8に示すように、本実施形態の第3基板30において、第2収容凹部31の底面31aから突出する第2凸部37の高さは、第2収容凹部31の深さと一致する。したがって、第1凸部27および第2凸部37の先端同士に位置する接触面6の板厚方向の位置は、処理基板4の周囲における第2基板20と第3基板30との接触面6の板厚方向の位置と、一致する。また、本実施形態の溶着部6aは、レーザ光により接触面6の一部を溶融、再凝固させて形成されるレーザ溶着部である。処理基板4の外縁の外側および貫通孔47の内側に位置する溶着部6aの板厚方向の位置を互いに一致させることで、それぞれの溶着部6aを形成する際のレーザ光のスポット径および出力などの溶着条件を同一とすることができる。したがって、本実施形態によれば、処理基板4の外縁の外側および貫通孔47の内側の溶着部6aを、単一の溶着条件によって形成することができ、流体デバイス1の生産性を高めることができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、処理基板4に設けられた複数の貫通孔47が、上下方向から見てシール部5の周囲を囲んで配置される。このため、シール部5を溶着部6aによって一様に圧縮することができ、シール部5による処理空間55の封止の信頼性を高めることができる。
【0072】
本実施形態において、溶着部6aによって互いに溶着される一対の基板(第2基板20および第3基板30)は、同種の樹脂材料である。同種の樹脂材料同士は、熱膨張率が近い。第2基板20と第3基板30とを同種の樹脂材料とすることで、周囲環境の温度変化や、処理部41の発熱によって、第2基板20および第3基板30が熱膨張又は熱収縮した場合であっても、溶着部6aに加わる熱応力を軽減できる。これにより、溶着部6aに損傷が生じることを抑制して、基材2に対する処理基板4の固定の信頼性を高めることができる。
【0073】
第2基板20を構成する樹脂材料と第3基板30を構成する樹脂材料との組み合わせとしては、互いに相溶性を有する樹脂材料を採用することが好ましい。相溶性が高い樹脂材料同士を溶着することで、界面剥離の発生を抑制できる。相溶性が高い樹脂材料としては、同種の樹脂材料である他に、PCとABS、PCとPETの組み合わせ等が例示される。
【0074】
また、本実施形態では、第1基板10と第2基板20についても、互いに溶着されている。このため、第1基板10と第2基板20についても、上述の関係を満たす同種の樹脂材料であることが好ましい。
【0075】
本実施形態において、溶着部6aは、レーザ溶着部である。すなわち、溶着部6aは、接触面6にレーザ光を照射して接触面6における第2基板20および第3基板30を溶融させ再凝固させることで、形成される。レーザ溶着を用いることで、局所的な溶着が可能となる。また、レーザ光を走査させることで、処理基板4の外縁の外側および貫通孔47の内側を、1度の溶着工程で溶着させることができる。
【0076】
溶着部6aがレーザ溶着部である場合、溶着部6aによって互いに溶着される一対の基板(第2基板20および第3基板30)のうち一方が光を透過し、他方が光を吸収する構成とされる。本実施形態においては、第3基板30は、光を透過する樹脂材料から構成され、第2基板20は、光を吸収する樹脂材料から構成される。これにより、光を透過する第3基板30側からレーザ光を照射して、光を吸収する第2基板20の表面を加熱することができる。また、本実施形態では、第1基板10と第2基板20についても、互いにレーザ溶着されている。このため、第1基板10は、光を透過する樹脂材料から構成される。
【0077】
(変形例1)
上述の実施形態に採用可能な処理基板4の固定方法について、変形例1として、
図9を基に説明する。
図9は、上述の実施形態の説明における
図8に対応する図である。
なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0078】
本変形例の基材102は、上述の実施形態と同様に、処理基板4を上下方向から挟み込む第2基板120と第3基板130とを有する。また、処理基板4には、第1貫通孔147が設けられる。
【0079】
本変形例において、第3基板130には、処理基板4の第1貫通孔147と重なる第2貫通孔137が設けられる。第1貫通孔147および第2貫通孔137は、上下方向から見て円形である。また、第1貫通孔147および第2貫通孔137の直径は、略等しい。
【0080】
第2基板120には、第3基板130側に突出する凸部127が設けられる。凸部127は、柱状部127aと、柱状部127aの先端に位置する熱かしめ部127bと、を有する。
【0081】
柱状部127aは、板厚方向と直交する断面形状が円形である。柱状部127aの直径は、第1貫通孔147および第2貫通孔137の直径より小さい。柱状部127aは、第1貫通孔147および第2貫通孔137に挿入される。
【0082】
熱かしめ部127bは、熱かしめ用の治具によって、柱状部127aの先端を熱によって溶融し再凝固させた部分である。熱かしめ部127bは、下側に凸となる略半球形状である。熱かしめ部127bは、第3基板130の下面130bの下側に位置する。熱かしめ部127bは、上下方向から見て第1貫通孔147および第2貫通孔137の径方向外側まで拡がって形成されている。熱かしめ部127bの上側を向く面は、第3基板130の下面130bに接触する。
【0083】
本変形例によれば、熱かしめ部127bが第3基板130の下側への移動を抑制する。このため、第2基板120および第3基板130が処理基板4を挟み込んだ状態で、第2基板120に対し第3基板130が固定される。また、第2基板120と第3基板130との間に挟み込まれる処理基板4が、基材102に固定される。
【0084】
本変形例では、第2基板120が、熱かしめ部127bを有する場合について説明した。しかしながら、第3基板130が熱かしめ部を有していてもよい。すなわち、一対の基板(第2基板および第3基板)のうち一方の基板と処理基板とに互いに重なり合う貫通孔が設けられ、一対の基板(第2基板および第3基板)のうち他方の基板に、2つの貫通孔に挿入される凸部が設けられ、凸部の先端に熱かしめ部が形成されていればよい。
【0085】
以上に、本発明の実施形態およびその変形例について説明したが、各実施形態およびその変形例における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0086】
1…流体デバイス、2,102…基材、4…処理基板、4a…上面(第2対向面)、5…シール部、10…第1基板、20,120…第2基板、20b…下面(第1対向面)、21…第1収容凹部(収容凹部)、26b…段差面、29…挿通孔(貫通孔)、30,130…第3基板、30a…上面(第3対向面)、31…第2収容凹部(収容凹部)、41…処理部、47…貫通孔、50…流路、55…処理空間