(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059837
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】シリカゾルの製造方法、中間生成物の除去方法及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/148 20060101AFI20240423BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20240423BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20240423BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20240423BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C01B33/148
C09K3/14 550D
C09G1/02
B24B37/00 H
H01L21/304 622B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024026870
(22)【出願日】2024-02-26
(62)【分割の表示】P 2020011469の分割
【原出願日】2020-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】京谷 智裕
(72)【発明者】
【氏名】出島 栄治
(72)【発明者】
【氏名】加藤 友寛
(72)【発明者】
【氏名】沢井 毅
(57)【要約】
【課題】中間生成物の少ないシリカゾルの製造方法を提供する。また、シリカゾル中の中間生成物を簡便に少なくできるシリカゾル中の中間生成物の除去方法を提供する。
【解決手段】工程(1)及び工程(2)を含む、シリカ粒子の製造方法。工程(1):テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させ、シリカゾルを得る工程。工程(2):シリカゾルを、分画分子量5,000~80,000の限外濾過膜を用いて限外濾過する工程。前記シリカ粒子の製造方法を含むシリカゾルの製造方法。前記シリカゾルの製造方法により、シリカゾル中の中間生成物を除去する、シリカゾル中の中間生成物の除去方法。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(1)及び工程(2)を含む、シリカ粒子の製造方法。
工程(1):テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させ、シリカゾルを得る工程
工程(2):シリカゾルを、分画分子量5,000~80,000の限外濾過膜を用いて限外濾過する工程
【請求項2】
工程(1)の後に、工程(2)を行う、請求項1に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項3】
シリカゾル中のシリカ粒子の含有率が、シリカゾル全量100質量%中、3質量%~50質量%である、請求項1又は2に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項4】
シリカ粒子のDLS法により測定した平均2次粒子径が、20nm~100nmである、請求項1~3のいずれか1項に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項5】
100℃以上に加熱する工程を含まない、請求項1~4のいずれか1項に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のシリカ粒子の製造方法を含む、シリカゾルの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のシリカゾルの製造方法により、シリカゾル中の中間生成物を除去する、シリカゾル中の中間生成物の除去方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載のシリカ粒子の製造方法で得られたシリカ粒子を含む研磨組成物を用いて研磨する、研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ粒子の製造方法、シリカゾルの製造方法、中間生成物の除去方法及び研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属や無機化合物等の材料の表面を研磨する方法として、研磨液を用いた研磨方法が知られている。中でも、半導体用のプライムシリコンウェハやこれらの再生シリコンウェハの最終仕上げ研磨、及び、半導体デバイス製造時の層間絶縁膜の平坦化、金属プラグの形成、埋め込み配線形成等の化学的機械的研磨(CMP)では、その表面状態が半導体特性に大きく影響するため、これらの部品の表面や端面は、極めて高精度に研磨されることが要求されている。
【0003】
このような精密研磨においては、シリカ粒子を含む研磨組成物が採用されており、その主成分である砥粒として、コロイダルシリカが広く用いられている。コロイダルシリカは、その製造方法の違いにより、四塩化珪素の熱分解によるもの(ヒュームドシリカ等)、水ガラス等の珪酸アルカリの脱イオンによるもの、アルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応(一般に「ゾルゲル法」と称される)によるもの等が知られている。
【0004】
コロイダルシリカを含むシリカゾルの製造方法に関し、これまで多くの検討がなされてきた。例えば、特許文献1~3には、アルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応によりシリカゾルを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-60232号公報
【特許文献2】国際公開第2008/123373号
【特許文献3】国際公開第2004/000922号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、アルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応によるシリカゾルの製造時又は製造後において、中間生成物が発生することがある。この中間生成物は、成長不十分なまま固体として残存したシリカや製造後に溶存ケイ酸から析出したシリカ等と考えられる。また、このようなシリカは、反応活性状態にあるため、中間生成物が起点となり、10nm程度の微小粒子を発生させたり、粒子を想定以上に成長させたりすることがある。そのため、中間生成物を有するシリカゾルは、粘度の上昇やゲル化を引き起こし、その保存安定性を悪化させる。
このような中間生成物や微小粒子は、所望のコロイダルシリカよりも低い縮合度のシリカと考えられるため、得られるシリカゾル中のコロイダルシリカの機械的特性を悪化させ、研磨速度を低下させる等、得られる研磨液の研磨特性に悪影響を及ぼす。また、微小粒子を含む研磨液を研磨に用いると、微小粒子が被研磨体を覆ってしまい、本来研磨に寄与するはずの研磨液中のコロイダルシリカが研磨に寄与しなくなる。更に、縮合度の低いシリカを含む研磨液を研磨に用いると、研磨液の研磨後の被研磨体からの除去性に劣る。
【0007】
特許文献1~3に開示されているアルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応によりシリカゾルを製造する方法は、このような中間生成物や微小粒子の対処について何ら記載されておらず、製造条件次第では中間生成物や微小粒子を多く含むシリカゾルが得られてしまう。特に、中間生成物は、反応活性状態のまま残存していると推定されるため、シリカゾルの保存中に化学変化が進行し、ゲル化や微粒子発生を引き起こす。その結果、シリカゾルの保存安定性に劣り、得られる研磨液の研磨特性に悪影響を及ぼすだけでなく被研磨体からの除去性にも劣る。
【0008】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、中間生成物の少ないシリカゾルの製造方法を提供することにある。また、本発明のもう1つの目的は、シリカゾル中の中間生成物を簡便に少なくできるシリカゾル中の中間生成物の除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来、中間生成物や微粒子を含むシリカゾルが存在し、そのまま中間生成物や微小粒子を除去せずに研磨液として用いられてきたため、得られる研磨液の研磨特性や保存安定性が十分とは言えなかった。しかしながら、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定範囲の分画分子量の限外濾過膜でシリカゾルを限外濾過することで、微小粒子の原因となる中間生成物を除去し、保存安定性に優れるシリカゾルが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
[1]以下の工程(1)及び工程(2)を含む、シリカ粒子の製造方法。
工程(1):テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させ、シリカゾルを得る工程。
工程(2):シリカゾルを、分画分子量5,000~80,000の限外濾過膜を用いて限外濾過する工程。
[2]工程(1)の後に、工程(2)を行う、[1]に記載のシリカ粒子の製造方法。
[3]シリカゾル中のシリカ粒子の含有率が、シリカゾル全量100質量%中、10質量%~50質量%である、[1]又は[2]に記載のシリカ粒子の製造方法。
[4]シリカ粒子のDLS法により測定した平均2次粒子径が、20nm~100nmである、[1]~[3]のいずれかに記載のシリカ粒子の製造方法。
[5]100℃以上に加熱する工程を含まない、[1]~[4]のいずれかに記載のシリカ粒子の製造方法。
[6][1]~[5]のいずれかに記載のシリカ粒子の製造方法を含む、シリカゾルの製造方法。
[7][6]に記載のシリカゾルの製造方法により、シリカゾル中の中間生成物を除去する、シリカゾル中の中間生成物の除去方法。
[8][1]~[5]のいずれかに記載のシリカ粒子の製造方法で得られたシリカ粒子を含む研磨組成物を用いて研磨する、研磨方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシリカゾルの製造方法は、中間生成物の少ないシリカゾルを得ることができ、得られるシリカゾルの保存安定性に優れ、得られる研磨液の研磨特性に優れ、得られる研磨液の研磨後の被研磨体からの除去性に優れる。また、本発明のシリカゾル中の中間生成物の除去方法は、シリカゾル中の中間生成物を簡便に少なくでき、得られるシリカゾルや得られる研磨液の保存安定性に優れ、得られる研磨液の研磨特性に優れ、得られる研磨液の研磨後の被研磨体からの除去性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】中間生成物を含むシリカゾルの電界放出型走査電子顕微鏡で観測された二次 電子像を示す図である。
【
図2】比較例1で得られたシリカゾルの電界放出型走査電子顕微鏡で観測された二 次電子像を示す図である。
【
図3】実施例1で得られたシリカゾルの電界放出型走査電子顕微鏡で観測された二 次電子像を示す図である。
【
図4】実施例2で得られたシリカゾルの電界放出型走査電子顕微鏡で観測された二 次電子像を示す図である。
【
図5】比較例2で得られたシリカゾルの電界放出型走査電子顕微鏡で観測された二 次電子像を示す図である。
【
図6】比較例3で得られたシリカゾルの電界放出型走査電子顕微鏡で観測された二 次電子像を示す図である。
【
図7】参考例1で用いたシリカゾルの電界放出型走査電子顕微鏡で観測された二次 電子像を示す図である。
【
図8】参考例2で得られたシリカゾルの電界放出型走査電子顕微鏡で観測された二 次電子像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明について詳述するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。尚、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いる。
【0014】
(シリカ粒子の製造方法)
本発明のシリカ粒子の製造方法は、以下の工程(1)及び工程(2)を含む。
工程(1):テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させ、シリカゾルを得る工程。
工程(2):シリカゾルを、分画分子量5,000~80,000の限外濾過膜を用いて限外濾過する工程。
【0015】
(工程(1))
工程(1)は、テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させ、シリカゾルを得る工程である。
本発明のシリカ粒子の製造方法は、工程(1)を含むことで、得られるシリカゾルの金属不純物含有率を低減することができる。
【0016】
テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が挙げられる。これらのテトラアルコキシシランは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのテトラアルコキシシランの中でも、加水分解反応が早く、未反応物が残留しづらく、生産性に優れ、安定なシリカゾルを容易に得ることができることから、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましく、テトラメトキシシランがより好ましい。
【0017】
シリカ粒子を構成する原料は、テトラアルコキシシランの低縮合物等のテトラアルコキシシラン以外の原料を用いてもよいが、反応性に優れることから、シリカ粒子を構成する全原料100質量%中、テトラアルコキシシランが50質量%以上で、テトラアルコキシシラン以外の原料が50質量%以下であることが好ましく、テトラアルコキシシランが90質量%以上で、テトラアルコキシシラン以外の原料が10質量%以下であることがより好ましい。
【0018】
加水分解反応及び縮合反応を行う際の反応に用いる溶媒・分散媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。これらの溶媒・分散媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの溶媒・分散媒の中でも、加水分解反応及び縮合反応で用いるものと副生するものとが同一で、製造上の利便性に優れることから、水、アルコールが好ましく、水、メタノールがより好ましい。
【0019】
加水分解反応及び縮合反応を行う際、触媒存在下であってもよく、無触媒下であってもよいが、加水分解反応及び縮合反応を促進できることから、触媒存在下が好ましい。
触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、ギ酸、クエン酸等の酸触媒、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチル水酸化アンモニウム等のアルカリ触媒等が挙げられる。これらの触媒の中でも、触媒作用に優れ、粒子形状を制御しやすいことから、アルカリ触媒が好ましく、金属不純物の混入を抑制することができ、揮発性が高く縮合反応後の除去性に優れることから、アルカリ触媒が好ましく、アンモニアがより好ましい。
【0020】
(工程(1)と工程(2)との関係)
工程(2)は、工程(1)の間に行ってもよく、工程(1)の後に行ってもよいが、成長不十分なまま固体として残存したシリカや製造後に溶存ケイ酸から析出したシリカ等の中間生成物を効率的に除去できることから、工程(1)の後に行うことが好ましい。
【0021】
(工程(2))
工程(2)は、シリカゾルを、分画分子量5,000~80,000の限外濾過膜を用いて限外濾過する工程である。
本発明のシリカ粒子の製造方法は、工程(2)を含むことで、成長不十分なまま固体として残存したシリカや製造後に溶存ケイ酸から析出したシリカ等の中間生成物を効率的に除去でき、ゲル化等の変質を抑制し、シリカゾルの保存安定性を高める。
【0022】
本明細書において、中間生成物は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて倍率10万倍~20万倍で撮影したFE-SEMの画像において、
図1でいう黒い線で囲まれた部分のように見える箇所をいう。
この中間生成物は、アルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応によるシリカゾルの製造時又は製造後における、成長不十分なまま固体として残存したシリカや製造後に溶存ケイ酸から析出したシリカ等と考えられる。
【0023】
限外濾過膜の分画分子量は、5,000~80,000であり、6,000~60,000が好ましく、7,000~40,000がより好ましい。限外濾過膜の分画分子量が5,000以上であると、透過性に優れる。また、限外濾過膜の分画分子量が80,000以下であると、選択性に優れる。
【0024】
限外濾過は、通常なされるミクロンオーダーの細孔径を持つ濾紙やフィルターによる濾過では細孔を通り抜けてしまう成分を、分子量ごとに分画できることが特徴である。したがって、限外濾過で分子量ごとの分画の選択性を上げるためには、遠心分離による方法が好ましい。
【0025】
遠心分離による限外濾過の遠心力は、500g~10,000gが好ましく、800g~5,000gがより好ましい。限外濾過の遠心力が500g以上であると、濾過速度が十分で、シリカ粒子やシリカゾルの生産性に優れる。また、限外濾過の遠心力が10,000g以下であると、限外濾過の選択性に優れる。
【0026】
遠心分離による限外濾過の回転数は、1,000rpm~20,000rpmが好ましく、2,000~10,000rpmがより好ましい。限外濾過の回転数が1,000rpm以上であると、濾過速度が十分で、シリカ粒子やシリカゾルの生産性に優れる。限外濾過の回転数が20,000rpm以下であると、限外濾過の選択性に優れる。
【0027】
遠心分離による限外濾過の遠心分離時間は、10分~300分が好ましく、20分~180分がより好ましい。限外濾過の遠心分離時間が10分以上であると、シリカゾル中の中間生成物を抑制することができる。また、限外濾過の遠心分離時間が300分以下であると、シリカ粒子やシリカゾルの生産性に優れる。
【0028】
(工程(1)と工程(2)以外の工程)
本発明のシリカ粒子の製造方法は、シリカ粒子の性能を損なわない範囲で、工程(1)及び工程(2)以外の工程を含んでもよい。
工程(1)及び工程(2)以外の工程としては、加圧加熱処理工程が挙げられるが、中間生成物が抑制されることにより加圧加熱処理で期待される効果が低減されることから、100℃以上に加熱する工程を含まないことが好ましく、150℃以上に加熱する工程を含まないことがより好ましい。
【0029】
(シリカ粒子の物性)
シリカ粒子の平均1次粒子径は、5nm~100nmが好ましく、10nm~60nmがより好ましい。シリカ粒子の平均1次粒子径が5nm以上であると、シリカゾルの保存安定性に優れる。また、シリカ粒子の平均1次粒子径が100nm以下であると、シリコンウェハに代表される被研磨体の表面粗さや傷を低減でき、シリカ粒子の沈降を抑制することができる。
【0030】
シリカ粒子の平均1次粒子径は、BET法により測定する。具体的には、比表面積自動測定装置を用いてシリカ粒子の比表面積を測定し、下記式(1)を用いて平均1次粒子径を算出する。
平均1次粒子径(nm)=6000/(比表面積(m2/g)×密度(g/cm3)) ・・・ (1)
【0031】
シリカ粒子の平均1次粒子径は、公知の条件・方法により、所望の範囲に設定することができる。
【0032】
シリカ粒子の平均2次粒子径は、10nm~200nmが好ましく、20nm~100nmがより好ましい。シリカ粒子の平均2次粒子径が10nm以上であると、研磨後の洗浄における粒子等の除去性に優れ、シリカゾルの保存安定性に優れる。シリカ粒子の平均2次粒子径が200nm以下であると、研磨時のシリコンウェハに代表される被研磨体の表面粗さや傷を低減でき、研磨後の洗浄における粒子等の除去性に優れ、シリカ粒子の沈降を抑制することができる。
【0033】
シリカ粒子の平均2次粒子径は、DLS法により測定する。具体的には、動的光散乱粒子径測定装置を用いて測定する。
【0034】
シリカ粒子の平均2次粒子径は、公知の条件・方法により、所望の範囲に設定することができる。
【0035】
シリカ粒子のcv値は、15~50が好ましく、20~40がより好ましく、25~35が更に好ましい。シリカ粒子のcv値が15以上であると、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートに優れ、シリコンウェハの生産性に優れる。また、シリカ粒子のcv値が50以下であると、研磨時のシリコンウェハに代表される被研磨体の表面粗さや傷を低減でき、研磨後の洗浄における粒子等の除去性に優れる。
【0036】
シリカ粒子のcv値は、動的光散乱粒子径測定装置を用いてシリカ粒子の平均2次粒子径を測定し、下記式(2)を用いて算出する。
cv値=(標準偏差(nm)/平均2次粒子径(nm))×100 ・・・ (2)
【0037】
シリカ粒子の会合比は、1.0~4.0が好ましく、1.1~3.0がより好ましい。シリカ粒子の会合比が1.0以上であると、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートに優れ、シリコンウェハの生産性に優れる。また、シリカ粒子の会合比が4.0以下であると、研磨時のシリコンウェハに代表される被研磨体の表面粗さや傷を低減でき、シリカ粒子の凝集を抑制することができる。
【0038】
シリカ粒子の会合比は、前述の測定方法にて測定した平均1次粒子径と前述の測定方法にて測定した平均2次粒子径とから、下記式(3)を用いて会合比を算出する。
会合比=平均2次粒子径/平均1次粒子径 ・・・ (3)
【0039】
シリカ粒子の表面シラノール基密度は、0.1個/nm2~10個/nm2が好ましく、0.5個/nm2~7.5個/nm2がより好ましく、2.0個/nm2~7.0個/nm2が更に好ましい。シリカ粒子の表面シラノール基密度が0.1個/nm2以上であると、シリカ粒子が適度な表面反発を有し、シリカゾルの分散安定性に優れる。また、シリカ粒子の表面シラノール基密度が10個/nm2以下であると、シリカ粒子が適度な表面反発を有し、シリカ粒子の凝集を抑制することができる。
【0040】
シリカ粒子の表面シラノール基密度は、シアーズ法により測定する。具体的には、下記に示す条件で測定・算出する。
シリカ粒子1.5gに相当するシリカゾルを採取し、純水を加えて液量を90mLにする。25℃の環境下、pHが3.6になるまで0.1mol/Lの塩酸水溶液を加え、塩化ナトリウム30gを加え、純水を徐々に加えながら塩化ナトリウムを完全に溶解させ、最終的に試験液の総量が150mLになるまで純水を加え、試験液を得る。
得られた試験液を自動滴定装置に入れ、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、pHが4.0から9.0になるのに要する0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の滴定量A(mL)を測定する。
下記式(4)を用いて、シリカ粒子1.5gあたりのpHが4.0から9.0になるのに要した0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の消費量V(mL)を算出し、下記式(5)を用いて、シリカ粒子の表面シラノール基密度ρ(個/nm2)を算出する。
V=(A×f×100×1.5)/(W×C) ・・・ (4)
A:シリカ粒子1.5gあたりのpHが4.0から9.0になるのに要した0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の滴定量(mL)
f:用いた0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の力価
C:シリカゾル中のシリカ粒子の濃度(質量%)
W:シリカゾルの採取量(g)
ρ=(B×NA)/(1018×M×SBET) ・・・ (5)
B:Vから算出したシリカ粒子1.5gあたりのpHが4.0から9.0になるのに要した水酸化ナトリウム量(mol)
NA:アボガドロ数(個/mol)
M:シリカ粒子量(1.5g)
SBET:平均1次粒子径の算出の際に測定したシリカ粒子の比表面積(m2/g)
【0041】
尚、前記シリカ粒子の表面シラノール基密度の測定・算出方法は、「G.W.Sears,Jr., Analytical Chemistry, Vol.28, No.12, pp.1981-1983(1956).」、「羽場真一, 半導体集積回路プロセス用研磨剤の開発, 高知工科大学博士論文, pp.39-45, 2004年3月」、「特許第5967118号公報」、「特許第6047395号公報」を参考にした。
【0042】
シリカ粒子の表面シラノール基密度は、アルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応の条件を調整することで、所望の範囲に設定することができる。
【0043】
シリカ粒子の金属不純物含有率は、5ppm以下が好ましく、2ppm以下がより好ましい。
【0044】
半導体デバイスのシリコンウェハの研磨において、金属不純物が被研磨体の表面に付着・汚染することで、ウェハ特性に悪影響を及ぼすと共に、ウェハ内部に拡散して品質が劣化するため、このようなウェハによって製造された半導体デバイスの性能が著しく低下する。
また、シリカ粒子に金属不純物が存在すると、酸性を示す表面シラノール基と金属不純物とが配位的な相互作用が発生し、表面シラノール基の化学的性質(酸性度等)を変化させたり、シリカ粒子表面の立体的な環境(シリカ粒子の凝集のしやすさ等)を変化させたり、研磨レートに影響を及ぼす。
【0045】
シリカ粒子の金属不純物含有率は、高周波誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)により測定する。具体的には、シリカ粒子0.4g含むシリカゾルを正確に量り取り、硫酸とフッ酸を加え、加温・溶解・蒸発させ、残存した硫酸滴に総量が正確に10gとなるよう純水を加えて試験液を作成し、高周波誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて測定する。対象の金属は、ナトリウム、カリウム、鉄、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、コバルト、クロム、銅、マンガン、鉛、チタン、銀、ニッケルとし、これらの金属の含有率の合計を金属不純物含有率とする。
【0046】
シリカ粒子の金属不純物含有率は、アルコキシシランを主原料として加水分解反応及び縮合反応を行ってシリカ粒子を得ることで、5ppm以下とすることができる。
水ガラス等の珪酸アルカリの脱イオンによる方法では、原料由来のナトリウム等が残存するため、シリカ粒子の金属不純物含有率を5ppm以下とすることが極めて困難である。
【0047】
シリカ粒子の形状としては、例えば、球状、鎖状、繭状(こぶ状や落花生状とも称される)、異形状(例えば、疣状、屈曲状、分岐状等)等が挙げられる。これらのシリカ粒子の形状の中でも、研磨時のシリコンウェハに代表される被研磨体の表面粗さや傷を低減させたい場合は、球状が好ましく、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートをより高めたい場合は、異形状が好ましい。
【0048】
シリカ粒子は、機械的強度、保存安定性に優れることから、細孔を有しないことが好ましい。
シリカ粒子の細孔の有無は、窒素を吸着ガスとした吸着等温線を用いたBET多点法解析により確認する。
【0049】
シリカ粒子は、機械的強度、保存安定性に優れることから、アルコキシシラン縮合物を主成分とすることが好ましく、テトラアルコキシシラン縮合物を主成分とすることがより好ましい。主成分とは、シリカ粒子を構成する全成分100質量%中、50質量%以上であることをいう。
アルコキシシラン縮合物を主成分とするシリカ粒子を得るためには、アルコキシシランを主原料とすることが好ましい。テトラアルコキシシラン縮合物を主成分とするシリカ粒子を得るためには、テトラアルコキシシランを主原料とすることが好ましい。主原料とは、シリカ粒子を構成する全原料100質量%中、50質量%以上であることをいう。
【0050】
(シリカゾルの製造方法)
本発明のシリカゾルの製造方法は、本発明のシリカ粒子の製造方法を含む。
【0051】
シリカゾルは、本発明のシリカ粒子の製造方法で得られたシリカ粒子の分散液をそのまま用いてもよく、得られた分散液中の成分のうち、不必要な成分を除去し、必要な成分を添加して製造してもよい。
【0052】
シリカゾルは、シリカ粒子及び溶媒・分散媒を含むことが好ましい。
シリカゾルの溶媒・分散媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。これらのシリカゾルの溶媒・分散媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのシリカゾルの溶媒・分散媒の中でも、シリカ粒子との親和性に優れることから、水、アルコールが好ましく、水がより好ましい。
【0053】
シリカゾル中のシリカ粒子の含有率は、シリカゾル全量100質量%中、3質量%~50質量%が好ましく、4質量%~40質量%がより好ましく、5質量%~30質量%が更に好ましい。シリカゾル中のシリカ粒子の含有率が3質量%以上であると、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートに優れる。また、シリカゾル中のシリカ粒子の含有率が50質量%以下であると、シリカゾルや研磨組成物中のシリカ粒子の凝集を抑制することができ、シリカゾルや研磨組成物の保存安定性に優れる。
【0054】
シリカゾル中の溶媒・分散媒の含有率は、シリカゾル全量100質量%中、50質量%~97質量%が好ましく、60質量%~96質量%がより好ましく、70質量%~95質量%が更に好ましい。シリカゾル中の溶媒・分散媒の含有率が50質量%以上であると、シリカゾルや研磨組成物中のシリカ粒子の凝集を抑制することができ、シリカゾルや研磨組成物の保存安定性に優れる。また、シリカゾル中の溶媒・分散媒の含有率が97質量%以下であると、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートに優れる。
【0055】
シリカゾル中のシリカ粒子や溶媒・分散媒の含有率は、シリカ粒子の分散液中の成分のうち、不必要な成分を除去し、必要な成分を添加することで、所望の範囲に設定することができる。
【0056】
シリカゾルは、シリカ粒子及び溶媒・分散媒以外に、その性能を損なわない範囲において、必要に応じて、酸化剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、pH緩衝剤、界面活性剤、キレート剤、抗菌・殺生物剤等の他の成分を含んでもよい。
特に、シリカゾルの保存安定性に優れることから、シリカゾル中に抗菌・殺生物剤を含ませることが好ましい。
【0057】
抗菌・殺生物剤としては、例えば、過酸化水素、アンモニア、第四級アンモニウム水酸化物、第四級アンモニウム塩、エチレンジアミン、グルタルアルデヒド、過酸化水素、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、亜塩素酸ナトリウム等が挙げられる。これらの抗菌・殺生物剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの抗菌・殺生物剤の中でも、シリカゾルとの親和性に優れることから、過酸化水素が好ましい。
殺生物剤は、一般に殺菌剤と言われるものも含む。
【0058】
シリカゾル中の抗菌・殺生物剤の含有率は、シリカゾル全量100質量%中、0.0001質量%~10質量%が好ましく、0.001質量%~1質量%がより好ましい。シリカゾル中の抗菌・殺生物剤の含有率が0.0001質量%質量%以上であると、シリカゾルの保存安定性に優れる。シリカゾル中の抗菌・殺生物剤の含有率が10質量%以下であると、シリカゾルの本来の性能を損なわない。
【0059】
シリカゾルのpHは、6.0~8.0が好ましく、6.5~7.8がより好ましい。シリカゾルのpHが6.0以上であると、分散安定性に優れて、シリカ粒子の凝集を抑制することができる。また、シリカゾルのpHが8.0以下であると、シリカ粒子の溶解を防ぎ、長期間の保存安定性に優れる。
シリカゾルのpHは、pH調整剤を添加することで、所望の範囲に設定することができる。
【0060】
(シリカゾル中の中間生成物の除去方法)
本発明のシリカゾル中の中間生成物の除去方法は、本発明のシリカゾルの製造方法による方法であり、具体的な製造方法は、前述した通りである。
【0061】
(研磨組成物)
本発明のシリカ粒子の製造方法で得られるシリカ粒子は、研磨組成物として好適に用いることができる。
研磨組成物は、前述したシリカゾル及び水溶性高分子を含むことが好ましい。
【0062】
水溶性高分子は、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨組成物の濡れ性を高める。水溶性高分子は、水親和性の高い官能基を保有する高分子であることが好ましく、この水親和性の高い官能基とシリカ粒子の表面シラノール基との親和性が高く、研磨組成物中でより近傍にシリカ粒子と水溶性高分子とが安定して分散する。そのため、シリコンウェハに代表される被研磨体への研磨の際、シリカ粒子と水溶性高分子との効果が相乗的に機能する。
【0063】
水溶性高分子としては、例えば、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン骨格を有する共重合体、ポリオキシアルキレン構造を有する重合体等が挙げられる。
【0064】
セルロース誘導体としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、加水分解処理を施したヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
ポリビニルピロリドン骨格を有する共重合体としては、例えば、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとのグラフト共重合体等が挙げられる。
ポリオキシアルキレン構造を有する重合体としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体等が挙げられる。
【0065】
これらの水溶性高分子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの水溶性高分子の中でも、シリカ粒子の表面シラノール基との親和性が高く、相乗的に作用して被研磨体の表面に良好な親水性を与えることから、セルロース誘導体が好ましく、ヒドロキシエチルセルロースがより好ましい。
【0066】
水溶性高分子の質量平均分子量は、1,000~3,000,000が好ましく、5,000~2,000,000がより好ましく、10,000~1,000,000が更に好ましい。水溶性高分子の質量平均分子量が1,000以上であると、研磨組成物の親水性が向上する。また、水溶性高分子の質量平均分子量が3,000,000以下であると、シリカゾルとの親和性に優れ、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートに優れる。
【0067】
水溶性高分子の質量平均分子量は、ポリエチレンオキサイド換算で、0.1mol/LのNaCl溶液を移動相とする条件で、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定する。
【0068】
研磨組成物中の水溶性高分子の含有率は、研磨組成物全量100質量%中、0.02質量%~10質量%が好ましく、0.05質量%~5質量%がより好ましい。研磨組成物中の水溶性高分子の含有率が0.02質量%以上であると、研磨組成物の親水性が向上する。また、研磨組成物中の水溶性高分子の含有率が10質量%以下であると、研磨組成物調製時のシリカ粒子の凝集を抑制することができる。
【0069】
研磨組成物は、シリカゾル及び水溶性高分子以外に、その性能を損なわない範囲において、必要に応じて、塩基性化合物、研磨促進剤、界面活性剤、親水性化合物、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、pH緩衝剤、界面活性剤、キレート剤、抗菌・殺生物剤等の他の成分を含んでもよい。
特に、シリコンウェハに代表される被研磨体の表面に化学的な作用を与えて化学的研磨(ケミカルエッチング)ができ、シリカ粒子の表面シラノール基との相乗効果により、シリコンウェハに代表される被研磨体の研磨速度を向上させることができることから、研磨組成物中に塩基性化合物を含ませることが好ましい。
【0070】
塩基性化合物としては、例えば、有機塩基性化合物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属炭酸塩、アンモニア等が挙げられる。これらの塩基性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの塩基性化合物の中でも、水溶性が高く、シリカ粒子や水溶性高分子との親和性に優れることから、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムが好ましく、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウムがより好ましく、アンモニアが更に好ましい。
【0071】
研磨組成物中の塩基性化合物の含有率は、研磨組成物全量100質量%中、0.001質量%~5質量%が好ましく、0.01質量%~3質量%がより好ましい。研磨組成物中の塩基性化合物の含有率が0.001質量%以上であると、シリコンウェハに代表される被研磨体の研磨速度を向上させることができる。また、研磨組成物中の塩基性化合物の含有率が5質量%以下であると、研磨組成物の安定性に優れる。
【0072】
研磨組成物のpHは、8.0~12.0が好ましく、9.0~11.0がより好ましい。研磨組成物のpHが8.0以上であると、研磨組成物中のシリカ粒子の凝集を抑制することができ、研磨組成物の分散安定性に優れる。また、研磨組成物のpHが12.0以下であると、シリカ粒子の溶解を抑制することができ、研磨組成物の安定性に優れる。
研磨組成物のpHは、pH調整剤を添加することで、所望の範囲に設定することができる。
【0073】
研磨組成物は、本発明のシリカゾル、水溶性高分子、及び、必要に応じて、他の成分を混合することで得られるが、保管・運搬を考慮し、一旦高濃度で調製し、研磨直前に水等で希釈してもよい。
【0074】
(研磨方法)
本発明の研磨方法は、本発明のシリカ粒子の製造方法で得られたシリカ粒子を含む研磨組成物を用いて研磨する方法である。
研磨組成物は、前述した研磨組成物を用いることが好ましい。
具体的な研磨の方法としては、例えば、シリコンウェハの表面を研磨パッドに押し付け、研磨パッド上に本発明の研磨組成物を滴下し、シリコンウェハの表面を研磨する方法が挙げられる。
【0075】
(用途)
本発明のシリカ粒子の製造方法で得られたシリカ粒子や本発明のシリカゾルの製造方法で得られたシリカゾルは、研磨用途に好適に用いることができ、例えば、シリコンウェハ等の半導体材料の研磨、ハードディスク基板等の電子材料の研磨、集積回路を製造する際の平坦化工程における研磨(化学的機械的研磨)、フォトマスクや液晶に用いる合成石英ガラス基板の研磨、磁気ディスク基板の研磨等に用いることができ、中でもシリコンウェハの研磨や化学的機械的研磨に特に好適に用いることができる。
【実施例0076】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0077】
(平均1次粒子径の測定)
比較例1・参考例1で得られたシリカゾルを150℃で乾燥し、比表面積自動測定装置「BELSORP-MR1」(機種名、マイクロトラック・ベル株式会社)を用いて、シリカ粒子の比表面積を測定し、下記式(1)を用い、密度を2.2g/cm3とし、平均1次粒子径を算出した。
平均1次粒子径(nm)=6000/(比表面積(m2/g)×密度(g/cm3)) ・・・ (1)
【0078】
(平均2次粒子径・cv値の測定)
比較例1・参考例1で得られたシリカゾルを、動的光散乱粒子径測定装置「ゼーターサイザーナノZS」(機種名、マルバーン社製)を用いて、シリカ粒子の平均2次粒子径を測定し、下記式(2)を用いてcv値を算出した。
cv値=(標準偏差(nm)/平均2次粒子径(nm))×100 ・・・ (2)
【0079】
(会合比の算出)
測定した平均1次粒子径と平均2次粒子径とから、下記式(3)を用いて会合比を算出した。
会合比=平均2次粒子径/平均1次粒子径 ・・・ (3)
【0080】
(表面シラノール基密度の測定)
比較例1・参考例1で得られたシリカゾルの、シリカ粒子1.5gに相当する量を、200mLトールビーカーに採取し、純水を加えて液量を90mLにした。
25℃の環境下、トールビーカーにpH電極を挿入し、マグネティックスターラーにより試験液を5分間撹拌させた。マグネティックスターラーによる攪拌を続けた状態で、pHが3.6になるまで0.1mol/Lの塩酸水溶液を加えた。トールビーカーからpH電極を取り外し、マグネティックスターラーによる攪拌を続けた状態で、塩化ナトリウムを30g加え、純水を徐々に加えながら塩化ナトリウムを完全に溶解させ、最終的に試験液の総量が150mLになるまで純水を加え、マグネティックスターラーにより試験液を5分間撹拌させ、試験液を得た。
【0081】
得られた試験液の入ったトールビーカーを、自動滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)にセットし、装置付属のpH電極とビュレットをトールビーカーに挿入して、マグネティックスターラーにより試験液を撹拌させながら、ビュレットを通じて0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、pHが4.0から9.0になるのに要する0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の滴定量A(mL)を測定した。
下記式(6)を用いて、シリカ粒子1.5gあたりのpHが4.0から9.0になるのに要した0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の消費量V(mL)を算出し、下記式(7)を用いて、シリカ粒子の表面シラノール基密度ρ(個/nm2)を算出した。
V=(A×f×100×1.5)/(W×C) ・・・ (6)
A:シリカ粒子1.5gあたりのpHが4.0から9.0になるのに要した0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の滴定量(mL)
f:用いた0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の力価
C:シリカゾル中のシリカ粒子の濃度(質量%)
W:シリカゾルの採取量(g)
ρ=(B×NA)/(1018×M×SBET) ・・・ (7)
B:Vから算出したシリカ粒子1.5gあたりのpHが4.0から9.0になるのに要した水酸化ナトリウム量(mol)
NA:アボガドロ数(個/mol)
M:シリカ粒子量(1.5g)
SBET:平均1次粒子径の算出の際に測定したシリカ粒子の比表面積(m2/g)
【0082】
(金属不純物含有率の測定)
比較例1で得られたシリカ粒子0.4g含むシリカゾルを正確に量り取り、硫酸とフッ酸を加え、加温・溶解・蒸発させ、残存した硫酸滴に総量が正確に10gとなるよう純水を加えて試験液を作成し、高周波誘導結合プラズマ質量分析装置「ELEMENT2」(機種名、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて、金属不純物含有率を測定した。
【0083】
(シリカゾル中の中間生成物の評価)
実施例・比較例・参考例で得られたシリカゾルについて、以下の操作により中間生成物の量を評価した。
まず、シリカゾルを分取して、超純水で5,000倍に希釈した。5,000倍に希釈した希釈液を5μL分取して、ミラーシリコンウエハ(株式会社エレクトロニクスエンドマテリアルズコーポレーション製)に滴下して、50℃で10分間乾燥させた。それを、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM、機種名「S-5200型」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)に装着して、加速電圧5kVで、倍率15万倍で、100個~200個のコロイダルシリカの粒子を観察し、画像を撮影した。
撮影した画像から、シリカゾル中の中間生成物の量を、以下の指標により評価した。尚、中間生成物は、
図1でいう黒い線で囲まれた部分のように見える箇所をいう。
A:中間生成物を確認できない又は中間生成物を僅かに確認できる
B:中間生成物を確認できる
C:中間生成物を多量に確認できる
【0084】
[比較例1]
テトラメトキシシランとメタノールとを2.3:1(体積比)で混合した原料溶液と補助溶媒の3質量%アンモニア水溶液とを調液した。温度計、攪拌機、供給管、留出ラインを備えた反応槽に、予めメタノール、純水、アンモニアを混合した反応溶媒を仕込んだ。反応溶媒中の水の濃度は13質量%、反応溶媒中のアンモニアの濃度は0.9質量%であった。
反応溶媒の温度を34℃に保持しながら、反応溶媒と原料溶液と補助溶媒とを0.77:1:0.31(体積比)とし、原料溶液と補助溶媒とを150分間、均等速度で反応槽へ滴下し、シリカゾルを得た。得られたシリカゾルを、シリカ粒子の含有率が約20質量%になるように、液量を純水追加で調整しながら、温度を上げてメタノールとアンモニアの除去を行い、シリカ粒子の含有率が約20質量%のシリカゾルを得た。
【0085】
得られたシリカ粒子は、平均1次粒子径が30.7nm、平均2次粒子径65.0nm、cv値30.6、会合比2.12、表面シラノール基密度6.2個/nm2であった。
また、得られたシリカ粒子中の金属不純物含有率は、ナトリウムが1.1ppm、カリウムが0.140ppm、鉄が0.015ppm、アルミニウムが0.135ppm、カルシウムが0.075ppm、亜鉛が0.07ppm、マグネシウム、コバルト、クロム、銅、マンガン、鉛、チタン、銀、ニッケルがいずれも0.005ppm未満であった。
【0086】
得られたシリカゾルの電界放出型走査電子顕微鏡で観測された二次電子像を、
図2に示す。また、得られたシリカゾル中の中間生成物の量の評価結果を、表1に示す。
【0087】
[実施例1]
比較例1で得られたシリカゾル4.51gを、分画分子量10,000の限外濾過膜(商品名「Microsep Advance with 10K Omega MCP010C41」、Pall Corporation社製)を用いて、遠心力1,075g、回転数3,100rpm、遠心分離時間1時間の条件で遠心分離による限外濾過を行い、シリカゾルを得た。限外濾過膜を透過した液量は2.36g、その透過率は52.3質量%、透過した液中のシリカ濃度は260μg/gであった。
得られたシリカゾルの電界放出型走査電子顕微鏡で観測された二次電子像を、
図3に示す。また、得られたシリカゾルの評価結果を、表1に示す。
【0088】
[実施例2]
限外濾過膜(商品名「Microsep Advance with 30K Omega MCP010C41」、Pall Corporation社製)の分画分子量、遠心分離の条件を表1にように変更した以外は、実施例1と同様に操作し、シリカゾルを得た。
得られたシリカゾルの電界放出型走査電子顕微鏡で観測された二次電子像を、
図4に示す。また、得られたシリカゾルの評価結果を、表1に示す。
【0089】
[比較例2]
限外濾過膜(商品名「Microsep Advance with 3K Omega MCP010C41」、Pall Corporation社製)の分画分子量、遠心分離の条件を表1にように変更した以外は、実施例1と同様に操作し、シリカゾルを得た。
得られたシリカゾルの電界放出型走査電子顕微鏡で観測された二次電子像を、
図5に示す。また、得られたシリカゾルの評価結果を、表1に示す。
【0090】
[比較例3]
限外濾過膜(商品名「Microsep Advance with 100K Omega MCP010C41」、Pall Corporation社製)の分画分子量、遠心分離の条件を表1にように変更した以外は、実施例1と同様に操作し、シリカゾルを得た。
得られたシリカゾルの電界放出型走査電子顕微鏡で観測された二次電子像を、
図6に示す。また、得られたシリカゾルの評価結果を、表1に示す。
【0091】
[参考例1]
市販のシリカゾル(商品名「PL-3」、扶桑化学工業株式会社製)をそのまま用いた。
用いたシリカ粒子は、平均1次粒子径が36.1nm、平均2次粒子径71.2nm、cv値28.6、会合比1.97、表面シラノール基密度5.5個/nm
2であった。
用いたシリカゾルの電界放出型走査電子顕微鏡で観測された二次電子像を、
図7に示す。また、用いたシリカゾルの評価結果を、表1に示す。
【0092】
[参考例2]
市販のシリカゾル(商品名「PL-3」、扶桑化学工業株式会社製)を用い、遠心分離の条件を表1にように変更した以外は、実施例1と同様に操作し、シリカゾルを得た。
得られたシリカゾルの電界放出型走査電子顕微鏡で観測された二次電子像を、
図8に示す。また、得られたシリカゾルの評価結果を、表1に示す。
【0093】
【0094】
限外濾過を行わなかった比較例1で得られたシリカゾルは、中間生成物が多く確認された。一方、特定範囲の分画分子量の限外濾過膜を用いて限外濾過を行った実施例1~2で得られたシリカゾルは、中間生成物がほとんど確認されなかった。更に、特定範囲から外れた分画分子量の限外濾過膜を用いて限外濾過を行った比較例2~3で得られたシリカゾルは、透過率が低く、限外濾過による中間生成物の除去量が少なく、中間生成物が確認された。
尚、市販のシリカゾル(商品名「PL-3」、扶桑化学工業株式会社製)は、そもそも中間生成物が少ないため、本発明の課題を有していないことが分かる。
本発明のシリカ粒子の製造方法で得られたシリカ粒子や本発明のシリカゾルの製造方法で得られたシリカゾルは、研磨用途に好適に用いることができ、例えば、シリコンウェハ等の半導体材料の研磨、ハードディスク基板等の電子材料の研磨、集積回路を製造する際の平坦化工程における研磨(化学的機械的研磨)、フォトマスクや液晶に用いる合成石英ガラス基板の研磨、磁気ディスク基板の研磨等に用いることができ、中でもシリコンウェハの研磨や化学的機械的研磨に特に好適に用いることができる。