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特開2024-60015シリカ質膜形成時にボイドの発生を抑制する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060015
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】シリカ質膜形成時にボイドの発生を抑制する方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20240423BHJP
   C08K 5/092 20060101ALI20240423BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240423BHJP
   C09D 183/08 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K5/092
C09D7/63
C09D183/08
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024035277
(22)【出願日】2024-03-07
(62)【分割の表示】P 2021511580の分割
【原出願日】2019-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2018197702
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】会田 健介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敦彦
(72)【発明者】
【氏名】小崎 力生
(72)【発明者】
【氏名】有馬 一弥
(57)【要約】
【課題】シリカ質膜形成時にボイドの発生を抑制する方法の提供。
【解決手段】ポリシロキサンと、第1酸解離定数pKaが4.0以下であり、式HOOC-L-COOH (式中、Lは、単結合、炭素数1~6の、ヒドロキシ置換アルキレンもしくはアミノ置換アルキレン、置換もしくは非置換の、炭素数2~4のアルケニレン、置換もしくは非置換の、炭素数2~4のアルキニレン、または置換もしくは非置換の、炭素数6~10のアリーレンである)で表されるジカルボン酸と、溶剤とを含んでなる、ポリシロキサン組成物を基板に塗布して塗膜を形成させること、および前記塗膜を加熱することを含む、シリカ質膜形成時にボイドの発生を抑制する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシロキサン組成物を基板に塗布して塗膜を形成させること、および前記塗膜を加熱することを含む、シリカ質膜形成時にボイドの発生を抑制する方法;
ここで前記ポリシロキサン組成物は、
(I)ポリシロキサンと、
(II)第1酸解離定数pKaが4.0以下であり、以下の式(II):
HOOC-L-COOH (II)
(式中、Lは、
単結合、
炭素数1~6の、ヒドロキシ置換アルキレンもしくはアミノ置換アルキレン、
置換もしくは非置換の、炭素数2~4のアルケニレン、
置換もしくは非置換の、炭素数2~4のアルキニレン、または
置換もしくは非置換の、炭素数6~10のアリーレン
である)
で表されるジカルボン酸と、
(III)溶剤と
を含んでなり、
前記ポリシロキサンのモル数に対する、前記ジカルボン酸のモル数比が、0.15~2.0であり、
前記ポリシロキサンが、以下の式(Ia):
【化1】
(式中、
は、メチルである)
で示される繰り返し単位、および/または
以下の式(Ib):
【化2】
で示される繰り返し単位を含んでなり、
前記ポリシロキサンに含まれる、式(Ia)および式(Ib)で表される繰り返し単位の個数の合計に対する、式(Ib)で表される繰り返し単位の個数の比率が、1~100%であり、
前記組成物全体にしめる(I)~(III)以外の成分の含有量が、全体の質量に対して、5%以下であり、
ただし、(I)ポリシロキサンは、以下のシロキシ単位(I.1):
【化3】
(式中、
a=1または2であり、
b=0、1、または2であり、
a+b=1、2、または3であり、
Yは、同一または相違して、式(I.3):
-E-(NH-G)-(NH (I.3)
(式中、
h=0または1であり、
i=0または1であり、
h+i=1または2であり、
Eは、1~30の炭素原子を有する脂肪族、脂環族、または芳香族の二価の炭化水素基であり、
存在する場合、Gは、1~10の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基であり、i=0である場合には一価であり、i=1である場合には二価である)であり、
は、同一または相違して、1~30の炭素原子を有し、任意に1以上の不飽和及び/または1以上のフッ素原子またはヒドロキシル基を含む一価の炭化水素基であり、任意に1以上のフッ素原子を含む一価の炭化水素基である)
を含むポリシロキサンを除く。
【請求項2】
前記Lが、
単結合、
炭素数2~4の、ヒドロキシ置換アルキレン、
非置換の、C=C結合を1つ有する、炭素数2~4のアルケニレン、または
非置換の、炭素数6~10のアリーレン
である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ジカルボン酸が、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、およびo-フタル酸からなる群から選択されるものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリシロキサンの質量平均分子量が、500~5,000である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ質膜形成時にボイドの発生を抑制する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子デバイス、とりわけ半導体デバイスの製造において、トランジスター素子とビットラインとの間、ビットラインとキャパシターとの間、キャパシターと金属配線との間、複数の金属配線の間などに、層間絶縁膜が形成されることがある。さらに、基板表面などに設けられたアイソレーション溝に絶縁物質が埋設されることがある。さらには、基板表面に半導体素子を形成させた後、封止材料を用いて被覆層を形成させてパッケージにすることがある。このような層間絶縁膜や被覆層は、シリカ質材料から形成されていることが多い。
【0003】
一方、電子デバイスの分野においては、徐々にデバイスルールの微細化が進んでおり、デバイスに組み込まれる各素子間を分離する絶縁構造などの大きさも微細化が要求されている。しかし、絶縁構造の微細化が進むにつれて、トレンチなどを構成するシリカ質膜における欠陥発生が増大してきており、電子デバイスの製造効率低下の問題が大きくなってきている。
【0004】
一方、シリカ質膜の形成方法としては化学気相成長法(CVD法)、ゾルゲル法、ケイ素含有ポリマーを含む組成物を塗布および焼成する方法などが用いられている。これらのうち、比較的簡便であるため、組成物を用いたシリカ質膜の形成方法が採用されることが多い。このようなシリカ質膜を形成させるためには、ポリシラザン、ポリシロキサン、ポリシロキサザン、またはポリシランなどのケイ素含有ポリマーを含む組成物を基板などの表面に塗布し、焼成をすることでポリマーに含まれるケイ素を酸化して、シリカ質膜とする。
【0005】
高耐熱性、高透明性の材料としてポリシロキサン、特にシルセスキオキサンが知られている。シルセスキオキサンは、3官能性のシロキサン構造単位RSi(O1.5)からなるポリマーで、化学構造的には無機シリカ(SiO)と有機シリコーン(RSiO)の中間的存在であるが、有機溶剤に可溶ながら硬化物は無機シリカに特徴的な高い耐熱性を示す特異的な化合物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-93111号公報
【特許文献2】特開2004-277502号公報
【特許文献3】米国特許8642437号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特に、シロキサン構造単位に有機基が少ない構造を有するポリシロキサンを用いて、シリカ質膜を製造した場合に、膜中にボイドが発生する傾向にあることがわかっている。
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、シリカ質膜形成時に、ボイドの発生を抑制することができる、ポリシロキサン組成物を提供することを目的とするものである。また、それを用いたシリカ質膜や電子素子の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるシリカ質膜形成時にボイドの発生を抑制する方法は、ポリシロキサン組成物を基板に塗布して塗膜を形成させること、および前記塗膜を加熱することを含む。
【0009】
ここで前記ポリシロキサン組成物は、
(I)ポリシロキサンと、
(II)第1酸解離定数pKaが4.0以下であり、以下の式(II):
HOOC-L-COOH (II)
(式中、Lは、
単結合、
炭素数1~6の、ヒドロキシ置換アルキレンもしくはアミノ置換アルキレン、
置換もしくは非置換の、炭素数2~4のアルケニレン、
置換もしくは非置換の、炭素数2~4のアルキニレン、または
置換もしくは非置換の、炭素数6~10のアリーレン
である)
で表されるジカルボン酸と、
(III)溶剤と
を含んでなり、
前記ポリシロキサンのモル数に対する、前記ジカルボン酸のモル数比が、0.15~2.0であり、
前記ポリシロキサンが、以下の式(Ia):
【化1】
(式中、
は、メチルである)
で示される繰り返し単位、および/または
以下の式(Ib):
【化2】
で示される繰り返し単位を含んでなり、
前記ポリシロキサンに含まれる、式(Ia)および式(Ib)で表される繰り返し単位の個数の合計に対する、式(Ib)で表される繰り返し単位の個数の比率が、1~100%であり、
前記組成物全体にしめる(I)~(III)以外の成分の含有量が、全体の質量に対して、5%以下である。
【0010】
ただし、(I)ポリシロキサンは、以下のシロキシ単位(I.1):
【化3】
(式中、
a=1または2であり、
b=0、1、または2であり、
a+b=1、2、または3であり、
Yは、同一または相違して、式(I.3):
-E-(NH-G)-(NH (I.3)
(式中、
h=0または1であり、
i=0または1であり、
h+i=1または2であり、
Eは、1~30の炭素原子を有する脂肪族、脂環族、または芳香族の二価の炭化水素基であり、
存在する場合、Gは、1~10の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基であり、i=0である場合には一価であり、i=1である場合には二価である)であり、
は、同一または相違して、1~30の炭素原子を有し、任意に1以上の不飽和及び/または1以上のフッ素原子またはヒドロキシル基を含む一価の炭化水素基であり、任意に1以上のフッ素原子を含む一価の炭化水素基である)
を含むポリシロキサンを除く。
【発明の効果】
【0011】
本発明に用いられるポリシロキサン組成物は、高アスペクト比の基板に塗布する際にも、埋め込み性に優れている。そして、シリカ質膜の製造時に、ボイドの発生を抑制することができる。本発明の方法で得られたシリカ質膜は、平坦性、電気的絶縁特性も優れていることから、半導体素子の層間絶縁膜、パッシベーション膜、基板平坦化膜、反射防止フィルム、光学フィルター、高輝度発光ダイオード、タッチパネル、太陽電池、光導波路などの光学デバイスに好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<ポリシロキサン組成物>
本発明によるポリシロキサン組成物(以下、単に、組成物ということがある)は、ポリシロキサンと、特定の構造を有するジカルボン酸と、溶剤とを含んでなるものである。以下、本発明による組成物に含まれる各成分について、詳細に説明する。
【0013】
(I)ポリシロキサン
本発明において用いられるポリシロキサンは、その構造は特に制限されず、目的に応じて任意のものから選択することができる。ポリシロキサンの骨格構造は、ケイ素原子に結合している酸素数に応じて、シリコーン骨格(ケイ素原子に結合する酸素原子数が2)、シルセスキオキサン骨格(ケイ素原子に結合する酸素原子数が3)、およびシリカ骨格(ケイ素原子に結合する酸素原子数が4)に分類できる。本発明においては、これらのいずれであってもよい。ポリシロキサン分子が、これらの骨格構造の複数の組み合わせを含んだものであってもよい。
【0014】
好ましくは、本発明に用いられるポリシロキサンは、以下の式(Ia):
【化4】
(式中、
は、水素、1~3価の、C1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または1~3価の、C6~30の芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1つ以上のメチレンが、非置換、またはオキシ、イミドもしくはカルボニルで置換されており、1つ以上の水素が、非置換、またはフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されており、かつ1つ以上の炭素が、非置換、またはケイ素で置換されており、
が2価または3価である場合、Rは複数の繰り返し単位に含まれるSi同士を連結する)
で示される繰り返し単位
および/または
以下の式(Ib):
【化5】
で示される繰り返し単位を含んでなる。
【0015】
一般式(Ia)において、Rが1価基である場合、Rとしては、例えば、(i)メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、およびデシルなどのアルキル、(ii)フェニル、トリル、およびベンジルなどのアリール、(iii)トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピルなどのフルオロアルキル、(iv)フルオロアリール、(v)シクロヘキシルなどのシクロアルキル、(vi)イソシアネートおよびアミノ等の、アミノまたはイミド構造を有する窒素含有基、(vii)グリシジルなどのエポキシ構造、またはアクリロイル構造もしくはメタクリロイル構造を有する、酸素含有基が挙げられる。好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニル、トリル、グリシジル、イソシアネートである。フルオロアルキルとしては、ペルフルオロアルキル、特にトリフルオロメチルやペンタフルオロエチルが好ましい。Rがメチルの化合物は、原料が入手し易く、硬化後の膜硬度が高く、高い薬品耐性を有するため好ましい。また、フェニルは、当該ポリシロキサンの溶剤への溶解度を高め、硬化膜がひび割れにくくなるため、好ましい。Rがヒドロキシ、グリシジル、イソシアネート、またはアミノを有していると、基板との密着性が向上するため、好ましい。
【0016】
また、Rが2価基または3価基である場合、Rは、例えば、(i)メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、およびデカンなどのアルカンから2つまたは3つの水素を除去した基、(ii)シクロヘプタン、シクロヘキサン、およびシクロオクタンなどのシクロアルカンから、2つまたは3つの水素を除去した基、(iii)ベンゼンおよびナフタレンなどの炭化水素のみで構成された芳香族化合物から2つまたは3つの水素を除去した基、および(iv)ピペリジン、ピロリジン、およびイソシアヌレートなどのアミノ基、イミノ基および/またはカルボニル基を含む、窒素および/または酸素含有環状脂肪族炭化水素化合物から2つまたは3つの水素を除去した基、であることが好ましい。パターンだれを改善し、また基板との密着性が向上するため、(iv)であることがより好ましい。
【0017】
好ましくは、Rが、水素、または、C1~10の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、脂肪族炭化水素基、またはC6~10の芳香族炭化水素基である。
より好ましくは、Rが、水素、メチル、エチル、およびフェニルからなる群から選択されるものであり、さらに好ましくは、Rが、メチルである。
【0018】
本発明に用いられるポリシロキサンは、以下の式(Ic):
【化6】
(式中、Rは、それぞれ独立に、水素、1~3価の、C1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または1~3価の、C6~30の芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1つ以上のメチレンが、非置換、またはオキシ、イミドもしくはカルボニルで置換されており、1つ以上の水素が、非置換、またはフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されており、かつ1つ以上の炭素が、非置換、またはケイ素で置換されており、
が2価または3価である場合、Rは複数の繰り返し単位に含まれるSi同士を連結する)
で表される繰り返し単位をさらに含んでいてもよい。
【0019】
好ましくは、Rが、水素、または、C1~10の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、脂肪族炭化水素基、またはC6~10の芳香族炭化水素基である。
より好ましくは、Rが、それぞれ独立に、水素原子、メチル、エチル、およびフェニルからなる群から選択される。さらに好ましくは、Rは、メチルである。
【0020】
本発明に用いられるポリシロキサンは、末端にシラノールを有することが好ましい。シラノールの含有量は、Si-Oに帰属される赤外吸収スペクトルの1100±100cm-1の範囲の吸収帯の面積強度S1に対する、SiOHに帰属される900±100cm-1の範囲の吸収帯の面積強度S2の比S2/S1とする。本発明ではS2/S1が0.05~0.25が好ましい。
【0021】
本発明に用いられるポリシロキサンは、高硬度と耐熱性が求められるため、分子中に含まれる、式(Ia)および(Ib)で表される繰り返し単位の個数の合計に対する、式(Ib)で表される繰り返し単位の個数の比率が、1~100%であることが好ましく、より好ましくは20~100%である。また、分子中の全繰り返し単位に対する、繰り返し単位(Ia)および(Ib)以外の繰り返し単位の比率が、90%以下であることが好ましく、より好ましくは80%以下である。
【0022】
本発明に用いられるポリシロキサンの質量平均分子量は、通常500~5,000であり、有機溶剤への溶解性、基板への塗布性、アルカリ現像液への溶解性の点から500~4,000であることが好ましく、より好ましくは1,000~3,000である。ここで質量平均分子量とは、ポリスチレン換算質量平均分子量であり、ポリスチレンを基準としてゲル浸透クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0023】
このようなポリシロキサンは、例えば式(ia):
1’[Si(OR (ia)(式中、
pは1~3の整数であり、
1’は、水素、1~3価の、C1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または1~3価の、C6~30の芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1つ以上のメチレンが、非置換、またはオキシ、イミドもしくはカルボニルで置換されており、1つ以上の水素が、非置換、またはフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されており、かつ1つ以上の炭素が、非置換、またはケイ素で置換されており、
はC1~10のアルキルを表す)
で表されるケイ素化合物、および/または
式(ib):
Si(OR (ib)
(式中、Rは、C1~10のアルキルであり、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、およびn-ブチルである)
で表されるケイ素化合物を
必要に応じて酸性触媒または塩基性触媒の存在下で、加水分解及び縮合して得ることができる。
【0024】
一般式(ia)において、好ましいR1’は、上述で記載の好ましいRと同様である。
一般式(ia)において、Rとしては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、およびn-ブチルなどが挙げられる。一般式(ia)において、Rは複数含まれるが、それぞれのRは、同じでも異なっていてもよい。
【0025】
一般式(ia)で表されるケイ素化合物の具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn-ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn-ブトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリメトキシシリルエチル)イソシアヌレートなどが挙げられ、その中でもメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシランが好ましい。
【0026】
一般式(ib)で表されるケイ素化合物の具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-iso-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブト
キシシラン、テトラキス(2-エチルブトキシ)シラン等が挙げられ、その中でもテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-iso-プロポキシシランが好ましい。
【0027】
ここで、ケイ素化合物は、それぞれ2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0028】
(II)ジカルボン酸
本発明に用いられるジカルボン酸は、
第1酸解離定数pKaが4.0以下であり、以下の式(II):
HOOC-L-COOH (II)
(式中、Lは、
単結合、
炭素数1~6の、ヒドロキシ置換アルキレンもしくはアミノ置換アルキレン、
置換もしくは非置換の、炭素数2~4のアルケニレン、
置換もしくは非置換の、炭素数2~4のアルキニレン、または
置換もしくは非置換の、炭素数6~10のアリーレン
である)
で表されるものである。
ここで、本発明において、アルケニレンとは、1以上の二重結合を有する二価基を意味するものとする。同様に、アルキニレンとは、1以上の三重結合を有する二価基を意味するものとする。
【0029】
好ましくは、Lは、
単結合、
炭素数2~4の、ヒドロキシ置換アルキレン、
非置換の、C=C結合を1つ有する、炭素数2~4のアルケニレン、または
非置換の、炭素数6~10のアリーレン
であり、
より好ましくは、Lは、単結合、ビニレン、ヒドロキシエチレンである。
【0030】
第1酸解離定数は、CRC Handbook of Chemistry and Physics 97th Edition pp 5-88に記載されている値であり、代表的なジカルボン酸の値は以下である。
マレイン酸 1.92、
フマル酸 3.02、
シュウ酸 1.25、
o-フタル酸 2.94、
リンゴ酸 3.40、
コハク酸 4.21、
マロン酸 2.85、
アスパラギン酸 1.99、
グルタミン酸 2.13、
3-アミノヘキサン二酸 2.14
【0031】
本発明に用いられるジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、o-フタル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、3-アミノヘキサン二酸が挙げられ、好ましくは、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、またはo-フタル酸であり、さらに好ましくは、マレイン酸、シュウ酸である。ここで、ジカルボン酸は単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
本発明による組成物において、本発明に用いられるポリシロキサンのモル数に対して、本発明に用いられるジカルボン酸のモル比が、0.1~6.0であり、より好ましくは0.15~2.0であり、さらに好ましくは0.2~1.0である。
【0033】
(III)溶剤
溶剤は、前記した、ポリシロキサンとジカルボン酸、および必要に応じて添加される添加剤を均一に溶解または分散させるものであれば特に限定されない。本発明に用いることができる溶剤の例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、乳酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類、γ-ブチロラクトンなどの環状エステル類などが挙げられる。かかる溶剤は、それぞれ単独または2種以上を組み合わせて用いられ、その使用量は塗布方法や塗布後の膜厚の要求によって異なる。
【0034】
本発明による組成物の溶剤含有率は、採用する塗布方法により作業性がよくなるように、また微細な溝内への溶液の浸透性や溝外部において必要とされる膜厚を考慮して、用いるポリシロキサンの質量平均分子量、その分布及び構造に応じて適宜選択することができる。本発明による組成物は、組成物の全質量を基準として、一般に50~99.9質量%、好ましくは60~99質量%の溶剤を含む。
【0035】
本発明による組成物は、前記した(I)~(III)を必須とするものであるが、必要に応じて更なる化合物を組み合わせることができる。これらの組み合わせることができる材料について説明すると以下の通りである。なお、組成物全体にしめる(I)~(III)以外の成分は、全体の質量に対して、10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下である。
【0036】
本発明による組成物は、必要に応じて、その他の添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、例えば、界面活性剤、密着増強剤、消泡剤、熱硬化促進剤などが挙げられる。
【0037】
界面活性剤は、塗布特性、現像性等の向上を目的として添加される。本発明で使用することのできる界面活性剤としては、例えば非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0038】
上記非イオン系界面活性剤としては、例えば、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類やポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンポリオキシピロピレンブロックポリマー、アセチレンアルコール、アセチレンアルコールのポリエトキシレートなどのアセチレンアルコール誘導体、アセチレングリコール、アセチレングリコールのポリエトキシレートなどのアセチレングリコール誘導体、フッ素含有界面活性剤、例えばフロラード(商品名、住友スリーエム株式会社製)、メガファック(商品名、DIC株式会社製)、スルフロン(商品名、旭硝子株式会社製)、または有機シロキサン界面活性剤、例えばKP341(商品名、信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。前記アセチレングリコールとしては、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0039】
またアニオン系界面活性剤としては、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキル硫酸のアンモニウム塩または有機アミン塩などが挙げられる。
【0040】
さらに両性界面活性剤としては、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリル酸アミドプロピルヒドロキシスルホンベタインなどが挙げられる。
【0041】
これら界面活性剤は、単独でまたは2種以上混合して使用することができ、その配合量は、本発明による組成物に対し、通常50~10000ppm、好ましくは100~8000ppmである。
【0042】
密着増強剤は、本発明による組成物を用いて硬化膜を形成させたときに、焼成後にかかる応力によりパターンが剥がれることを防ぐ効果を有する。密着増強剤としては、イミダゾール類やシランカップリング剤などが好ましく、イミダゾール類では、2-ヒドロキシベンゾイミダゾール、2-ヒドロキシエチルベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2-ヒドロキシイミダゾール、イミダゾール、2-メルカプトイミダゾール、2-アミノイミダゾールが好ましく、2-ヒドロキシベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2-ヒドロキシイミダゾール、イミダゾールが特に好ましく用いられる。
【0043】
消泡剤としては、アルコール(C18)、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、グリセリンモノラウリレート等の高級脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(PEG)(Mn200~10000)、ポリプロピレングリコール(PPG)(Mn200~10000)等のポリエーテル、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル等のシリコーン化合物、および上記の有機シロキサン系界面活性剤が挙げられる。これらは単独または複数を組み合わせて使用することができ、その添加量はポリシロキサンの総質量100質量部対して、0.1~3質量部とすることが好ましい。
【0044】
熱硬化促進剤としては、熱塩基発生剤、熱酸発生剤等が挙げられる。本発明による組成物は熱硬化促進剤を含ませることで、塗布膜の加熱時の硬化速度を大きくすることができる。
本発明において、熱酸発生剤または熱塩基発生剤とは、熱によって結合開裂を起こして、酸または塩基を発生する化合物のことをいう。これらは、組成物の塗布後、プリベーク時の熱では酸または塩基を発生しない、もしくは少量しか発生しないことが好ましい。
熱酸発生剤の例としては、各種脂肪族スルホン酸とその塩、クエン酸、酢酸、マレイン酸等の各種脂肪族カルボン酸とその塩、安息香酸、フタル酸等の各種芳香族カルボン酸とその塩、芳香族スルホン酸とそのアンモニウム塩、各種アミン塩、芳香族ジアゾニウム塩及びホスホン酸とその塩など、有機酸を発生する塩やエステル等を挙げることができる。熱酸発生剤の中でも特に、有機酸と有機塩基からなる塩であることが好ましく、スルホン酸と有機塩基からなる塩が更に好ましい。好ましいスルホン酸としては、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-ドデシルベンゼンスルホン酸、1,4-ナフタレンジスルホン酸、メタンスルホン酸、などが挙げられる。これら酸発生剤は、単独又は混合して使用することが可能である。
熱塩基発生剤の例としては、イミダゾール、第三級アミン、第四級アンモニウム等の塩基を発生させる化合物、これらの混合物を挙げることができる。放出される塩基の例として、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(3-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(4-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(5-メチル-2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(4-クロロ-2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾールなどのイミダゾール誘導体、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7が挙げられる。これら塩基発生剤は、酸発生剤と同様、単独又は混合して使用することが可能である。
熱硬化促進剤の添加量は、ポリシロキサンの総質量100質量部に対して、0.01~1質量部とすることが好ましい。
【0045】
また、本発明による組成物は、さらに光塩基発生剤、光酸発生剤等を含ませることで、感光性を有する組成物として使用することもできる。
【0046】
<シリカ質膜の製造方法>
本発明によるシリカ質膜の製造方法は、本発明による組成物を基板に塗布して塗膜を形成させること、および前記塗膜を加熱することを含んでなるものである。シリカ質膜の形成方法を工程順に説明すると以下の通りである。
【0047】
(1)塗布工程
基板の形状は特に限定されず、目的に応じて任意に選択することができる。しかしながら、本発明による組成物は、狭い溝部などにも容易に浸透し、溝の内部においても均一なシリカ質膜を形成できるという特徴があるため、アスペクト比の高い溝部や孔を有する基板に適用することができる。具体的には最深部の幅が0.2μm以下でそのアスペクト比が2以上である溝を少なくとも一つ有する基板などに適用することができる。ここで溝の形状に特に限定はなく、断面が長方形、順テーパー形状、逆テーパー形状、曲面形状、等いずれの形状であってもよい。また、溝の両端部分は開放されていても閉じていてもよい。
【0048】
アスペクト比の高い溝を少なくとも一つ有する基板の代表例として、トランジスター素子、ビットライン、キャパシター、等を具備した電子デバイス用基板が挙げられる。このような電子デバイスの製作には、PMDと呼ばれるトランジスター素子とビットラインとの間、トランジスター素子とキャパシターとの間、ビットラインとキャパシターとの間、またはキャパシターと金属配線との間の絶縁膜や、IMDと呼ばれる複数の金属配線間の絶縁膜の形成、或いはアイソレーション溝の埋封、といった工程に続き、微細溝の埋封材料を上下に貫通する孔を形成するスルーホールめっき工程が含まれる場合がある。
【0049】
塗布は、任意の方法により行うことができる。具体的には、浸漬塗布、ロールコート、バーコート、刷毛塗り、スプレーコート、ドクターコート、フローコート、スピンコート、およびスリット塗布等から任意に選択することができる。また組成物を塗布する基板としては、シリコン基板、ガラス基板、樹脂フィルム等の適当な基板を用いることができる。これらの基板には、必要に応じて各種の半導体素子などが形成されていてもよい。基板がフィルムである場合には、グラビア塗布も利用可能である。所望により塗膜後に乾燥工程を別に設けることもできる。また、必要に応じて塗布工程を1回または2回以上繰り返して、形成される塗膜の膜厚を所望のものとすることができる。
【0050】
(2)プリベーク工程
組成物を塗布することにより、塗膜を形成させた後、その塗膜を乾燥させ、且つ塗膜中の溶剤残存量を減少させるため、その塗膜をプリベーク(前加熱処理)することが好ましい。プリベーク工程は、一般に70~250℃、好ましくは100~200℃の温度で、ホットプレートによる場合には10~300秒間、好ましくは30~180秒間、クリーンオーブンによる場合には1~30分間実施することができる。
【0051】
(3)キュア工程
塗膜を加熱することにより、シリカ質膜を形成させる。ここで、本発明において、シリカ質膜とは、ポリマー中のケイ素原子数に対する酸素原子数の比率が、1.2以上のものを意味するものとする。
キュア工程に使う加熱装置には、前記したプリベーク工程に用いたものと同じものを用いることができる。この加熱工程における加熱温度としては、シリカ質膜の形成される温度であれば特に限定されず、任意に定めることができる。ただし、シラノール基が残存すると、シリカ質膜の薬品耐性が不十分となったり、シリカ質膜の誘電率が高くなることがある。このような観点から加熱温度は一般的には相対的に高い温度が選択される。具体的には360℃以下で加熱することが好ましく、300℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることが特に好ましい。一方で、硬化反応を促進するために、加熱温度は70℃以上であることが好ましく、100℃以上がより好ましく、110℃以上が特に好ましい。また、加熱時間は特に限定されず、一般に10分~24時間、好ましくは30分~3時間とされる。なお、この加熱時間は、膜の温度が所望の加熱温度に達してからの時間である。通常、加熱前の温度から膜が所望の温度に達するまでには数分から数時間程度要する。また、キュア工程は、窒素雰囲気下で行われることが好ましい。
【0052】
このキュア工程で、ボイド発生が起こることがある。特に、ポリシロキサンに含まれる有機基が少なくなると、ボイド発生が増える傾向にある。しかしながら、本発明の組成物を用いた場合には、ポリシロキサンに含まれる有機基が少ない場合であっても、そのボイド発生が抑えられるのである。
【0053】
<シリカ質膜およびそれを含んでなる電子素子>
本発明によるシリカ質膜は、本発明による組成物を基板に塗布して硬化させることにより製造することができる。
本発明による組成物を用いて形成されたシリカ質膜は、優れた透明性、耐薬品性、耐環境性、電気絶縁性、耐熱性等を達成することができる。このため、低温ポリシリコン用層間絶縁膜あるいはICチップ用バッファーコート膜、透明保護膜などとして多方面で好適に利用することができる。
【0054】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例、比較例により何ら限定されるものではない。
【0055】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、allianceTM e2695型高速GPCシステム(商品名、日本ウォーターズ株式会社製)およびSuper Multipore HZ-N型GPCカラム(商品名、東ソー株式会社製)を用いて測定した。測定は、単分散ポリスチレンを標準試料とし、テトラヒドロフランを展開溶媒として、流量0.6ミリリットル/分、カラム温度40℃の測定条件で行った上で、標準試料への相対分子量として質量平均分子量を算出した。
【0056】
<合成例1(ポリシロキサンAの合成)>
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、40質量%テトラ-n-ブチルアンモニウムハイドロキサイド(TBAH)水溶液32.5g、2-メトキシプロパノール(PGME)308mlを仕込んだ。次いで滴下ロートにメチルトリメトキシシラン19.6gおよびテトラメトキシシラン9.2gの混合溶液を調製した。その混合溶液をフラスコ内に滴下し、室温下で2時間撹拌した後、ノルマルプロピルアセテート(n-PA)500mlを加えた後に、TBAHに対し1.1等量の3%マレイン酸水溶液を加え、1時間中和攪拌した。中和液にノルマルプロピルアセテート(n-PA)500ml、水250mlを添加し、反応液を2層に分離させ、得られた有機層を水250ccで3回洗浄後に減圧下濃縮することで水分と溶媒を除去し、濃縮物の固形分濃度7質量%となるようにPGMEを添加調整した。
得られたポリシロキサンAの分子量(ポリスチレン換算)をGPCにて測定したところ、質量平均分子量(以下「Mw」と略記することがある)は、2068であった。
【0057】
<合成例2(ポリシロキサンBの合成)>
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、メチルトリメトキシシラン14.0gおよびテトラメトキシシラン15.4g、2-メトキシプロパノール(PGME)308mlを仕込み、0.2℃に冷却した。次いで滴下ロートから37質量%テトラ-n-ブチルアンモニウムハイドロキサイド(TBAH)メタノール溶液96.6gをフラスコ内に滴下し2時間撹拌した後、ノルマルプロピルアセテート(n-PA)500mlを加えた後に、再度0.2℃に冷却し、TBAHに対し1.1等量の3%塩酸水溶液を加えた後に1時間中和攪拌した。中和液にノルマルプロピルアセテート(n-PA)1000ml、水250mlを添加し、反応液を2層に分離させ、得られた有機層を水250ccで3回洗浄後に減圧下濃縮することで水分と溶媒を除去し、濃縮物の固形分濃度7質量%となるようにPGMEを添加調整した。
得られたポリシロキサンBは、Mwが1157であった。
【0058】
<合成例3(ポリシロキサンCの合成)>
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、40質量%テトラ-n-ブチルアンモニウムハイドロキサイド(TBAH)水溶液49.9g、水3.7g、2-メトキシプロパノール(PGME)37mlを仕込んだ。次いで滴下ロートにメチルトリエトキシシラン13.4gおよびテトラエトキシシラン15.6g、2-メトキシプロパノール(PGME)47mlの混合溶液を調製した。その混合溶液をフラスコ内に滴下し、40℃で2時間撹拌した後、室温に冷却後にメチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)110mlを加えた後、TBAHに対し1.1等量の3%塩酸水溶液を加え、15分間中和攪拌した。中和液にメチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)1000ml、水250mlを添加し、反応液を2層に分離させ、得られた有機層を水250ccで3回洗浄後に減圧下濃縮することで水分と溶媒を除去し、濃縮物の固形分濃度7質量%となるようにPGMEを添加調整した。
得られたポリシロキサンCは、Mwが2495であった。
【0059】
<合成例4(ポリシロキサンDの合成)>
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、テトラエトキシシラン84.3g、イソプロパノール(IPA)566mlを仕込んだ。次いで滴下ロートに塩酸8.0gおよび水30g、を調製した。その混合溶液をフラスコ内に滴下し、25℃で3時間撹拌した後、2-メトキシプロパノール(PGME)を200ml加えた後に減圧下濃縮することで酸触媒及び水分と溶媒を除去し、濃縮物の固形分濃度45質量%となるようにPGMEを添加調整した。
得られたポリシロキサンDは、Mwが1066であった。
【0060】
<合成例5(ポリシロキサンEの合成)>
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、メチルトリメトキシシラン29.1g、フェニルトリメトキシシラン0.6gおよびテトラメトキシシラン0.4g、2-メトキシプロパノール(PGME)308mlを仕込み、0.2℃に冷却した。次いで滴下ロートから37質量%テトラ-n-ブチルアンモニウムハイドロキサイド(TBAH)メタノール溶液96.6gをフラスコ内に滴下し2時間撹拌した後、ノルマルプロピルアセテート(n-PA)500mlを加えた後に、再度0.2℃に冷却し、TBAHに対し1.1等量の3%塩酸水溶液を加えた後に1時間中和攪拌した。中和液にノルマルプロピルアセテート(n-PA)1000ml、水250mlを添加し、反応液を2層に分離させ、得られた有機層を水250ccで3回洗浄後に減圧下濃縮することで水分と溶媒を除去し、濃縮物の固形分濃度7質量%となるようにPGMEを添加調整した。
得られたポリシロキサンEは、Mwが1286であった。
【0061】
<実施例1~18および比較例1~4(ポリシロキサン組成物の調製)>
以下の表1に示す比率で、表1に記載のポリシロキサンとマレイン酸とを含み、残部はPGMEAである、実施例1~18および比較例1~4のポリシロキサン組成物を調製した。表中、%は質量%を意味する(表2においても同じである)。
【表1】
なお、マレイン酸の分子量は、116.1として計算した。
【0062】
このポリシロキサン組成物を、スピンコートにて、トレンチ(幅:約20nm、高さ:500nm)を有するSiウエハ上に塗布し、塗布後ホットプレート上200℃で2分間プリベークした。その後、窒素雰囲気下で、クリーンオーブン内で、200℃2時間加熱しキュアを行った。この後、走査型電子顕微鏡(SEM、S-4700、日立ハイテクノロジーズ社製)により、断面形状を観察し、ボイドの有無を確認した。評価基準は以下のとおりとした。
A:トレンチは充填され、ボイドが確認されなかった。
B:トレンチは充填され、ボイドが確認された。
【0063】
<実施例19~23および比較例5~14(マレイン酸以外のジカルボン酸を用いたポリシロキサン組成物の調製)>
以下の表2に示す比率で、表2に記載のポリシロキサンとジカルボン酸とを含み、残部はPGMEである、実施例19~23および比較例5~14のポリシロキサン組成物を調製した。上記と同様にボイドの有無を確認し、得られた結果は表2のとおりであった。
【表2】
なお、分子量は、以下として、計算した。
マレイン酸 116.1、
フマル酸 116.1、
シュウ酸 90.0、
リンゴ酸 134.1、
o-フタル酸 166.1、
コハク酸 118.1、および
マロン酸 104.1。