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特開2024-60188評価装置、評価システム、評価方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060188
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】評価装置、評価システム、評価方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/0227 20240101AFI20240424BHJP
   B22F 9/00 20060101ALI20240424BHJP
   H01B 1/22 20060101ALN20240424BHJP
【FI】
G01N15/02 C
B22F9/00 B
H01B1/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167387
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】石井 潤志
【テーマコード(参考)】
4K017
5G301
【Fターム(参考)】
4K017AA08
4K017BA03
4K017CA01
4K017DA01
5G301DA10
5G301DA42
5G301DD01
5G301DD02
5G301DE01
(57)【要約】
【課題】無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストに含まれる連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を評価できる評価装置を提供すること。
【解決手段】無機粉末、無機粉末と有機溶剤とを含む導電性スラリー、又は無機粉末とバインダー樹脂と有機溶剤とを含む導電性ペーストの評価装置であって、学習用の無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストの粒子画像を用いて学習済みの評価対象の粒子の粒子数、粒子径、及び粒子最大長を、評価用の無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストの粒子画像から抽出する抽出部と、抽出した評価対象の粒子の粒子径及び粒子最大長を用いて、評価用の無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストに含まれる連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を算出する算出部と、を有する評価装置により上記課題を解決する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粉末、無機粉末と有機溶剤とを含む導電性スラリー、又は無機粉末とバインダー樹脂と有機溶剤とを含む導電性ペーストの評価装置であって、
学習用の前記無機粉末、前記導電性スラリー、又は前記導電性ペーストの粒子画像を用いて学習済みの評価対象の粒子の粒子数、粒子径、及び粒子最大長を、評価用の前記無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストの粒子画像から抽出する抽出部と、
抽出した評価対象の粒子の粒子径及び粒子最大長を用いて、評価用の前記無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストに含まれる連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を算出する算出部と、
を有する評価装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記抽出部が抽出した前記評価対象の粒子の粒子数、粒子径、及び粒子最大長を用いて、評価用の前記無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストに含まれる連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を算出する
請求項1記載の評価装置。
【請求項3】
学習用の前記無機粉末、前記導電性スラリー、又は前記導電性ペーストの複数の粒子画像から特定された評価対象の粒子の領域の画像を教師データとして学習する学習部、を更に有する
請求項1又は2記載の評価装置。
【請求項4】
前記学習部は、更に、前記複数の粒子画像から特定された連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の領域の画像と、を教師データとして学習する
請求項3記載の評価装置。
【請求項5】
前記学習部は、畳み込みニューラルネットワークを用いた深層学習により、前記粒子画像から前記評価対象の粒子となる無機粉末の領域の画像を抽出するように学習する
請求項3記載の評価装置。
【請求項6】
一台以上の情報処理装置により、無機粉末、無機粉末と有機溶剤とを含む導電性スラリー、又は無機粉末とバインダー樹脂と有機溶剤とを含む導電性ペーストの評価を行う評価システムであって、
評価用の前記無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストの粒子画像を取得する取得部と、
学習用の前記無機粉末、前記導電性スラリー、又は前記導電性ペーストの粒子画像を用いて学習済みの評価対象の粒子の粒子数、粒子径、及び粒子最大長を、評価用の前記無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストの粒子画像から抽出する抽出部と、
抽出した評価対象の粒子の粒子径及び粒子最大長を用いて、評価用の前記無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストに含まれる連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を算出する算出部と、
算出した連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を出力する出力部と、
を有する評価システム。
【請求項7】
コンピュータが行う無機粉末、無機粉末と有機溶剤とを含む導電性スラリー、又は無機粉末とバインダー樹脂と有機溶剤とを含む導電性ペーストの評価方法であって、
学習用の前記無機粉末、前記導電性スラリー、又は前記導電性ペーストの粒子画像を用いて学習済みの評価対象の粒子の粒子数、粒子径、及び粒子最大長を、評価用の前記無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストの粒子画像から抽出する抽出ステップと、
抽出した評価対象の粒子の粒子径及び粒子最大長を用いて、評価用の前記無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストに含まれる連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を算出する算出ステップと、
を有する評価方法。
【請求項8】
無機粉末、無機粉末と有機溶剤とを含む導電性スラリー、又は無機粉末とバインダー樹脂と有機溶剤とを含む導電性ペーストの評価装置に、
学習用の前記無機粉末、前記導電性スラリー、又は前記導電性ペーストの粒子画像を用いて学習済みの評価対象の粒子の粒子数、粒子径、及び粒子最大長を、評価用の前記無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストの粒子画像から抽出する抽出ステップ、
抽出した評価対象の粒子の粒子径及び粒子最大長を用いて、評価用の前記無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストに含まれる連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を算出する算出ステップ、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストの評価装置、評価システム、評価方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型化及び大容量化が求められている積層セラミックコンデンサでは、それを構成する内部電極及びセラミック誘電体ともに、薄層化が進められている。積層セラミックコンデンサの薄層化が進むことによって、内部電極に使用されるニッケル粉末には、粒子径を小さくすること、連結粒子及び扁平化粒子などの粗大粒子を含まないこと、が求められている。
【0003】
例えば特許文献1は、湿式ビーズミルによりニッケル粉末をスラリー化する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-147414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ビーズミルで行う粉砕処理の処理条件が適切でない場合、平均粒子径よりも大きく粗大粒子とみなすべき粒子が発生してしまう。例えば粉砕処理前に含まれていたニッケル粒子などの無機粉末、又は無機粉末の連結粒子は、粉砕処理により扁平化粒子に扁平化してしまう場合があった。
【0006】
そこで、無機粉末、無機粉末と有機溶剤とを含む導電性スラリー、又は無機粉末とバインダー樹脂と有機溶剤とを含む導電性ペーストに含まれる可能性のある連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を評価できれば便利である。
【0007】
本開示が解決しようとする課題は、無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストに含まれる連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を評価できる評価装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、無機粉末、無機粉末と有機溶剤とを含む導電性スラリー、又は無機粉末とバインダー樹脂と有機溶剤とを含む導電性ペーストの評価装置であって、学習用の前記無機粉末、前記導電性スラリー、又は前記導電性ペーストの粒子画像を用いて学習済みの評価対象の粒子の粒子数、粒子径、及び粒子最大長を、評価用の前記無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストの粒子画像から抽出する抽出部と、抽出した評価対象の粒子の粒子径及び粒子最大長を用いて、評価用の前記無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストに含まれる連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を算出する算出部と、を有する評価装置である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストに含まれる連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る評価システムの一例の構成図である。
図2】本実施形態に係るコンピュータの一例のハードウェア構成図である。
図3】本実施形態に係る評価システムの一例の機能構成図である。
図4】評価用の粒子画像の一例のイメージ図である。
図5】評価用の粒子画像から抽出した評価対象の粒子の領域の一例のイメージ図である。
図6】学習用の粒子画像に含まれる評価対象の粒子の領域の一例のイメージ図である。
図7】学習モデルの学習時に利用した教師データの一例を説明する図である。
図8】連結粒子を含むSEM画像の一例のイメージ図である。
図9】扁平化粒子を含むSEM画像の一例のイメージ図である。
図10】本実施形態に係る評価システムの処理手順の一例を示すフローチャートである。
図11】評価対象の粒子の領域を抽出する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0012】
[システム構成]
まず、本実施形態に係る無機粉末、無機粉末と有機溶剤とを含む導電性スラリー、又は無機粉末とバインダー樹脂と有機溶剤とを含む導電性ペーストの評価システムの一例について、図1を参照して説明する。図1は本実施形態に係る評価システムの一例の構成図である。図1(A)は評価装置10を有する評価システム1の例である。図1(B)は情報処理装置14及びユーザ端末16がインターネットやローカルエリアネットワーク(LAN)などのネットワーク18を介して通信可能に接続された評価システム1の例である。
【0013】
図1(A)の評価システム1の評価装置10は、無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストに含まれる連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を評価する装置である。評価装置10は、情報処理装置(コンピュータ)を含む構成である。例えば評価装置10はPC(パーソナルコンピュータ)である。評価装置10は、タブレット端末、スマートフォン、又は測定器などであってもよい。
【0014】
評価装置10はユーザからの操作をタッチパネル、コントローラ、マウス、キーボード等で受け付ける。評価装置10はユーザから受け付けた操作に従い、後述するような無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストに含まれる連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を評価するための各種処理を行う。評価装置10はユーザから受け付けた操作内容に従った処理の結果を出力する。
【0015】
また、図1(B)の評価システム1のユーザ端末16は、ユーザからの操作をタッチパネル、コントローラ、マウス、キーボード等で受け付ける装置である。例えばユーザ端末16は、PC、タブレット端末、スマートフォンなどである。ユーザ端末16は情報処理装置14とネットワーク18を介して通信を行う。ユーザ端末16はユーザから受け付けた操作内容に従って情報処理装置14に処理を要求し、情報処理装置14から受信した処理の結果を出力する。処理の結果の出力は表示出力であってもよいし、印刷出力であってもよい。
【0016】
情報処理装置14はユーザ端末16から受け付けた要求に従って、後述するような無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストに含まれる連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を評価するための各種処理を行い、処理の結果をユーザ端末16に送信する。情報処理装置14は、例えばクラウドコンピュータで実現してもよい。情報処理装置14の台数は1台に限定されるものではなく、2台以上で分散処理してもよい。
【0017】
なお、図1の評価システム1は、粒子画像を取得する装置が含まれても良い。走査電子顕微鏡(SEM)は粒子画像を取得する装置の一例である。以下、粒子画像を取得する装置がSEMの例を説明するが、これに限らない。SEMは、電子銃から照射された電子が試料表面で反射された反射電子もしくは二次電子を検出して画像観察を行うための装置である。
【0018】
図1の評価システム1は、SEMと通信可能に接続されていてもよい。SEMと通信可能に接続されている評価システム1はSEMで取得した粒子画像を受信できる。また、図1の評価システム1はSEMで取得した粒子画像を保存したデータベースから受信してもよいし、SEMで取得した粒子画像を保存したUSB(ユニバーサルシリアルバス)メモリなどの記憶媒体から読み出してもよい。
【0019】
なお、図1に示した評価システム1の構成は一例であって、図1の構成に限定されるものではない。本実施形態に係る評価システム1の評価装置10、情報処理装置14、及びユーザ端末16は例えば一般的なコンピュータを構成するハードウェアと、コンピュータで実行されるプログラム(ソフトウェア)との協働により実現することができる。
【0020】
本実施形態に係る評価システム1の評価装置10、情報処理装置14、及びユーザ端末16は、例えば図2のコンピュータ20がプログラムを実行することによって、本実施形態に係る無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストに含まれる連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を評価する評価システム1、評価装置10、及び評価方法を実現できる。
【0021】
[ハードウェア構成]
図2は、本実施形態に係るコンピュータの一例のハードウェア構成図である。図2に示したコンピュータ20は、例えば図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)21などのプロセッサと、ROM(Read Only Memory)22やRAM(Random Access Memory)23などのメモリと、補助記憶装置24と、表示デバイスなどの出力装置25と、入力デバイス等の入力装置27と、I/F装置26と、これら各部を接続するバスと、を備えたハードウェア構成を有する。なお、補助記憶装置24、出力装置25、及び入力装置27は、コンピュータ20の筐体の外部に設けられていてもよい。
【0022】
コンピュータ20が実行するプログラムは、例えば、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ、又はこれに類する記録媒体に記録されて提供され、補助記憶装置24などに格納される。プログラムを記録する記録媒体は、コンピュータ20が読み取り可能な記録媒体であれば、何れの記憶形式の形態であってもよい。また、プログラムはコンピュータ20に予めインストールされた構成であってもよい。また、プログラムはROM22に格納された構成であってもよい。また、プログラムはネットワーク18を介して配布され、コンピュータ20に適宜インストールされる構成であってもよい。
【0023】
CPU21はコンピュータ20の全体の動作を制御する。CPU21がROM22及び補助記憶装置24に格納されたプログラムをRAM23などのメモリ上に適宜読み出して実行することにより、後述の各種処理部を実現する。
【0024】
ROM22はプログラム及びデータを記憶する。RAM23はCPU21のワークエリアとして用いられる。RAM23は不揮発RAMを含んでいてもよい。また、補助記憶装置24はSSD(Solid State Drive)又はHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置である。
【0025】
例えば補助記憶装置24は、無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストに含まれる連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を評価するために必要な各種のプログラム、データ、ファイル等を格納できる。補助記憶装置24は、本実施形態に係る評価システム1が利用する粒子画像の一例である乾燥させた導電性スラリー又は導電性ペーストの断面画像等を格納しておくことができる。なお、乾燥させた導電性ペーストの断面画像は、塗布した導電性ペーストを乾燥させ、断面を露出させて撮像した画像である。
【0026】
出力装置25はモニタ、ディスプレイなどの出力デバイスである。入力装置27はタッチパネル、コントローラ、マウス、キーボード、操作ボタン等の入力デバイスである。I/F装置26は、ネットワーク18を介した通信を行うインタフェース、記録媒体からデータを読み出し又は記録媒体にデータを書き込むI/Fを含む。
【0027】
[機能構成]
以下、本実施形態に係る評価システム1の一例として、図1(A)の評価システム1の例を説明する。ここでは、図1(A)の評価システム1の評価装置10が積層セラミックコンデンサ(MLCC)などに用いられる無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストに含まれる連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を評価する例について説明する。MLCCなどに用いられる導電性スラリーの主な構成成分は、複数の無機粉末及び有機溶剤などである。MLCCなどに用いられる導電性ペーストの主な構成成分は、複数の無機粉末、バインダー樹脂、及び有機溶剤などである。
【0028】
図3は本実施形態に係る評価システムの一例の機能構成図である。図3に示した評価装置10は、取得部50、抽出部52、算出部54、及び出力部56を有する。図3では記憶部60及び学習部62が評価装置10以外の装置(例えば学習装置など)に設けられた例を示している。記憶部60及び学習部62は評価装置10に設けられてもよい。なお、本実施形態に係る評価システム1の説明に不要な機能構成については図示を適宜省略する。
【0029】
取得部50は、評価用の無機粉末、乾燥させた導電性スラリー、又は乾燥させた導電性ペーストの粒子画像を取得する。例えば乾燥させた導電性スラリー又は導電性ペーストの断面画像は次のように得る。ユーザは導電性スラリー又は導電性ペーストを基材上に塗布及び乾燥して塗膜にする。なお、基材は、その上に導電性スラリー又は導電性ペーストを塗布でき、乾燥工程での加熱に耐えうるものであればよい。例えば、基材はポリエチレンテレフタレート(PET)などの支持フィルムである。
【0030】
塗布は、例えば、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、インクジェット印刷といった印刷法を用いて行う。塗布は、ドクターブレード又はアプリケータを用いた手法を用いて行ってもよい。塗膜の厚さは断面を露出する作業ができればよく、1~400μmなどであり、好ましくは、1~100μmであり、より好ましくは1~20μmである。
【0031】
乾燥は、例えば100~150℃の温度で5分間~2時間、行う。導電性スラリー又は導電性ペーストの種類に応じて使用される有機溶剤の種類が異なるため、温度や乾燥時間は適宜設定して行えばよい。
【0032】
SEMで観察する場合には、予め塗膜断面に導電性物質をコーティングし、帯電防止処理を施してもよい。また、観察時の倍率は、無機粉末に含まれる粒子の径に応じて設定すればよい。倍率は、例えば1万倍~10万倍である。
【0033】
また、取得部50は学習用の無機粉末、乾燥させた導電性スラリー、又は乾燥させた導電性ペーストの粒子画像と、その粒子画像に含まれる評価対象の粒子である無機粉末の領域(表示領域)の情報と、連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の領域の情報と、を取得する。
【0034】
取得部50は、評価用の無機粉末、乾燥させた導電性スラリー、又は乾燥させた導電性ペーストの粒子画像を記憶部60に記憶させる。また、取得部50は学習用の無機粉末、乾燥させた導電性スラリー、又は乾燥させた導電性ペーストの粒子画像と、その粒子画像に含まれる評価対象の粒子である無機粉末の領域(表示領域)の情報と、連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の領域の情報と、を記憶部60に記憶させる。
【0035】
記憶部60は、評価用の無機粉末、乾燥させた導電性スラリー、又は乾燥させた導電性ペーストの粒子画像を記憶する。また、記憶部60は学習用の無機粉末、乾燥させた導電性スラリー、又は乾燥させた導電性ペーストの粒子画像と、その粒子画像に含まれる評価対象の粒子である無機粉末の領域の情報と、連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の領域の情報と、を記憶する。
【0036】
抽出部52は、学習用の無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストの粒子画像を用いて学習済みの評価対象の粒子の領域を、評価用の無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストの粒子画像から抽出する。また、抽出部52は評価用の無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストの粒子画像から抽出した評価対象の粒子の領域から、評価対象の粒子の粒子数、粒子径、及び粒子最大長を抽出する。
【0037】
このように、抽出部52は、学習用の無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストの粒子画像を用いて学習済みの評価対象の粒子の粒子数、粒子径、及び粒子最大長を、評価用の無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストの粒子画像から抽出する。抽出部52は学習用の粒子画像と、その粒子画像に含まれる評価対象の粒子である無機粉末の領域の情報と、連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の領域の情報と、を教師データとして学習済みの評価対象の粒子の粒子数、粒子径、及び粒子最大長を、評価用の粒子画像から抽出する。
【0038】
抽出部52は、例えば図4に示したような粒子画像であれば、学習用の無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストの粒子画像を用いて学習済みの評価対象の粒子の領域を図5に示すように抽出する。学習用の無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストの粒子画像は例えば図6に示すようなものである。
【0039】
図4は評価用の粒子画像の一例のイメージ図である。図5は評価用の粒子画像から抽出した評価対象の粒子の領域の一例のイメージ図である。図6は学習用の粒子画像に含まれる評価対象の粒子の領域の一例のイメージ図である。
【0040】
図4の粒子画像は、一例として粒子径100nm以下のニッケル粒子と、粒子最大長が100nmを超えるニッケル粒子の扁平化粒子と、が含まれている。例えば図4の粒子画像では、100nmを超えるニッケル粒子が粗大粒子となる。なお、ニッケル粒子の粗大粒子は、ニッケル粒子が凝集した100nmを超える連結粒子であってもよい。
【0041】
評価装置10は、図6に示すような学習用の粒子画像を用いて学習部62が学習済みの学習モデルにより、図4の粒子画像から図5に示すように評価対象の粒子の領域を抽出できる。
【0042】
例えば図5(A)は抽出部52により抽出した粒子径100nm以下のニッケル粒子の領域500を示している。また、図5(B)は抽出部52により抽出した最大長100nmを超える扁平化粒子の領域502を示している。
【0043】
学習部62は、例えば図6に示すような学習用の粒子画像と、その粒子画像に含まれる評価対象の粒子である無機粉末の領域の情報と、連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の領域の情報と、を教師データとして学習する。図6に示した学習用の粒子画像は導電性ペーストの断面画像の元素マッピングの結果の一例のイメージ図である。
【0044】
例えば図6(A)はSEMで得られた分析結果に基づき、粒子径100nmのニッケル粒子の領域600を着色で示している。また、図6(B)はSEMで得られた分析結果に基づき、扁平化粒子の領域602を着色で示している。
【0045】
評価対象となる無機粉末の領域を識別して抽出するための学習モデルは、例えば畳み込みニューラルネットワーク(CNN)で構成される。CNNは、教師あり学習によって訓練できる機械学習アルゴリズムの一種である。教師あり学習は教師データ(訓練データ)のセットが与えられた予測モデルを推論する機械学習の一つである。
【0046】
教師データの個々のサンプルは、それぞれ、データセット(例えば、複数枚の画像)及び所望の出力値又はデータセットを含むペアとなる。教師あり学習アルゴリズムは、教師データを分析して予測関数を生成する。訓練によって導出された予測関数は有効な入力に対する正しい出力値又はデータセットを、合理的に予測又は推定できる。予測関数は様々な機械学習モデル、アルゴリズム、及び/又はプロセスに基づいて定式化できる。
【0047】
CNNモデルのアーキテクチャは入力を出力に変換するレイヤ(層)を複数含む。レイヤの例としては、コンボリューション層、活性化関数を利用する非線形演算子層、プーリング層、及びアフィン層(結合層)等がある。各レイヤ(層)は、各々1つの前の層と1つの後の層とを接続する。データセットが入力される層は入力層、最終的な出力は出力層と呼ばれる場合もある。
【0048】
また、学習部62は二乗誤差、交差エントロピー誤差等の損失関数に基づいて、誤差逆伝播法(Back Propagation)や、確率的勾配降下法(stochastic gradient descent)等を用いて学習モデルを学習してもよい。また、CNNモデルは異なる層の数を増やしてもよい。深層CNNモデルの例としては、AlexNet、VGGNet、GoogLeNet、及びResNetなどがある。
【0049】
図7は学習モデルの学習時に利用した教師データの一例を説明する図である。例えば図7(A)は、評価対象となる無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストの試料を作製し、SEMを用いて観察した結果である。
【0050】
学習部62は、評価対象の粒子となる無機粉末の領域の画像を、例えば図7(A)の粒子画像から図7(B)に示すように抽出できるように学習する。例えば図7(B)では図7(A)の粒子画像から抽出する評価対象の粒子の位置700が特定されている。例えば図7(B)は粒子画像抽出するニッケル粒子の位置700が特定された例である。
【0051】
また、学習部62は図7(B)で特定した評価対象の粒子の位置700のうち、扁平化粒子の領域の画像を、図7(C)に示すように抽出できるように学習してもよい。例えば図7(C)では図7(B)の評価対象の粒子の位置700から抽出する扁平化粒子の位置702が特定されている。
【0052】
図7(C)の位置702で示した領域の画像は、教師データとして利用できる。評価対象である無機粉末の領域の画像は、SEMで得られた分析結果に基づいて着色された領域を切り取ることで指定するようにしてもよいし、図7(B)の評価対象の粒子の位置700から所定範囲を切り取ることで指定するようにしてもよい。なお、導電性ペーストの場合は、複数の無機粉末を含むことが多いため、教師データとして異なる無機粉末を含んだ粒子画像を用いてもよい。
【0053】
図7に示したように、SEMで得られた無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストの画像観察の結果は、教師データとして用いることができる。
【0054】
算出部54は、抽出部52が評価用の粒子画像から抽出した評価対象である無機粉末の粒子径及び粒子最大長を用いて、評価用の粒子画像に含まれる連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を算出する。また、算出部54は、抽出部52が評価用の粒子画像から抽出した評価対象である無機粉末の粒子数、粒子径、及び粒子最大長を用いて、評価用の粒子画像に含まれる連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を算出するようにしてもよい。
【0055】
出力部56は、算出部54が算出した評価用の粒子画像に含まれる連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を表示出力する。出力部56は、例えばSEMで取得した粒子画像(SEM画像)に、評価用の粒子画像から抽出した評価対象である無機粉末の粒子数、連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の個数、及び連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合の情報を付加して表示出力してもよい。
【0056】
SEM画像に付加して表示する連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合の情報は、ユーザが設定した閾値よりも連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合が多いこと又は少ないことを表す情報であってもよい。また、出力部56は図5(A)に示したような情報が付加されたSEM画像の表示出力と、図5(B)に示したような情報が付加されたSEM画像の表示出力と、をユーザの選択により切り替えてもよい。さらに、出力部56は図5(A)に示したような情報及び図5(B)に示したような情報が付加されたSEM画像の表示出力をユーザの選択により切り替えてもよい。
【0057】
次に、連結粒子及び扁平化粒子について説明する。連結粒子は、複数の粒子が凝集して繋がった状態である。例えば100nmのニッケル粒子の場合、連結粒子は100nmのニッケル粒子が繋がった状態であるため、粒子最大長が100nmよりも大きくなる。
【0058】
図8は連結粒子を含むSEM画像の一例のイメージ図である。図8のSEM画像は連結粒子が表示された領域800が含まれている。なお、連結粒子はビーズミルで行う粉砕処理により分散され、個々の粒子に分かれる。
【0059】
しかし、ビーズミルで行う粉砕処理前に含まれていた粒子、及び連結粒子は、ビーズミルで行う粉砕処理により扁平化し、扁平化粒子となる場合があった。図9は扁平化粒子を含むSEM画像の一例のイメージ図である。図9のSEM画像は、繋がっていない粒子がビーズミルで行う粉砕処理により扁平化した扁平化粒子が表示された領域900と、連結粒子がビーズミルで行う粉砕処理により扁平化した扁平化粒子が表示された領域902とが含まれている。例えば100nmのニッケル粒子の場合、扁平化粒子は100nmよりも大きくなる。
【0060】
[処理]
次に、本実施形態に係る評価装置10が行う処理について、フローチャートを用いて説明する。図10は本実施形態に係る評価システムの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0061】
ステップS10において、評価装置10は例えば図4に示した評価対象を含む粒子画像を取得する。ステップS12において、評価装置10はステップS10で取得した粒子画像において、評価対象となる粒子の指定を受け付ける。評価対象となる粒子の指定の方法は、評価装置10が表示装置等を用いて提示した粒子画像から、ユーザが評価対象となる無機粉末を円形や矩形などの図形で指定してもよいし、連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の粒径を数値範囲で指定してもよい。
【0062】
または、評価対象となる粒子の指定の方法は、ユーザが予め評価対象となる粒子の画像又は大きさを設定し、個別のID(識別番号など)を付与し、登録して用意しておいたものを選択してもよい。
【0063】
ステップS14において、評価装置10はステップS10で取得した粒子画像から特徴量を抽出する。特徴量は粒子画像から得られる画素値を利用する。例えば評価装置10はSEMから得られる粒子画像であれば明度を用いた特徴量を利用する。特徴量は明度自体であってもよいし、ソーベルフィルタを利用してエッジ検出を行った結果の情報であってもよい。また、特徴量は、ステップS16で用いられる学習済みの学習モデルに利用可能であれば、明度と、ソーベルフィルタを利用してエッジ検出を行った結果の情報(フィルタ処理後の情報)とを、組み合わせたものであってもよい。
【0064】
ステップS16において、評価装置10は粒子画像における評価対象の粒子の領域について事前に学習した学習モデル(学習済みの学習モデル)を取得する。本実施形態では評価対象の粒子は無機粉末である。ステップS18において、評価装置10はステップS16で取得した学習済みの学習モデルを用いて、評価対象の粒子の領域を抽出する。評価装置10は抽出した評価対象の粒子の領域から評価対象の粒子の粒子数、粒子径、及び粒子最大長を抽出できる。
【0065】
ステップS18の評価対象の粒子の領域を抽出する処理は、例えば図11に示すように行う。図11は評価対象の粒子の領域を抽出する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0066】
ステップS30において、評価装置10は評価対象の粒子に指定された無機粉末のサイズ、例えばSEMなどの電子顕微鏡から得られた粒子画像(断面画像)の倍率に基づいてn×nの探索ウインドウを設定する。
【0067】
ステップS32において、評価装置10は取得した粒子画像の拡大又は縮小のスケーリングを行う。ステップS34において、評価装置10はスケーリングを行った粒子画像を探索ウインドウで、例えば左上から右下に順次、スキャンしてウインドウ画像を得る。評価装置10は学習済みの学習モデルを用いてウインドウ画像が評価対象の粒子の領域であるか否かを識別し、評価対象の粒子の領域を抽出する。
【0068】
図10に戻り、評価装置10は抽出した評価対象の粒子の領域に基づいて、評価用の無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストに含まれる連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を示す評価指標を算出する。評価用の無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストに含まれる連結粒子及び扁平化粒子は、評価対象の粒子の粒子最大長から抽出できる。
【0069】
連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を示す評価指標は、粒子画像に表示されている評価対象の粒子に含まれている連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を表す。
【0070】
粒子画像に表示されている評価対象の粒子の粒子数は、ステップS18で抽出した評価対象の粒子の領域の数を用いてもよいし、ステップS18で抽出した評価対象の粒子の領域の画素数の合計値を用いてもよいし、複数枚の粒子画像から抽出した評価対象の粒子の領域の数の平均値を用いてもよいし、複数枚の粒子画像から抽出した評価対象の粒子の領域の画素数の合計値の平均値を用いてもよい。
【0071】
評価対象の粒子に含まれている連結粒子の粒子数及び扁平化粒子の粒子数は、ステップS18で抽出した連結粒子及び扁平化粒子の領域の数を用いてもよいし、ステップS18で抽出した連結粒子及び扁平化粒子の領域の画素数の合計値を用いてもよいし、複数枚の粒子画像から抽出した連結粒子及び扁平化粒子の領域の数の平均値を用いてもよいし、複数枚の粒子画像から抽出した連結粒子及び扁平化粒子の領域の画素数の合計値の平均値を用いてもよい。
【0072】
以上、本実施形態によれば、無機粉末、導電性スラリー、及び導電性ペーストに含まれる連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を容易に評価できる評価装置、評価システム、評価方法、及びプログラムを提供できる。
【0073】
本実施形態によれば、例えば積層セラミックコンデンサに使用される無機粉末、導電性スラリー、及び導電性ペーストに含まれる連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を評価できる。
【0074】
また、本実施形態によれば、塗膜中の無機粉末(例えばニッケル粒子)密度の低下、連結粒子による塗膜表面の凹凸の増加、又は扁平化粒子による塗膜表面の凹凸の増加などが原因のコンデンサとしての容量不足を予測できる。一方、本実施形態によれば、塗膜中の無機粉末密度の上昇、連結粒子による塗膜表面の凹凸の減少、又は扁平化粒子による塗膜表面の凹凸の減少などによるコンデンサとしての容量増加を予測できる。さらには、本実施形態を導電性スラリー、及び導電性ペーストの製造工程に用いることができる。これにより塗膜表面の制御が可能になり安定に操業できる。
【0075】
なお、本実施形態では無機粉末の一例であるニッケル粒子の例を説明したが、ニッケル粒子に限定するものではなく、評価対象の粒子の粒子径に基づいて連結粒子及び扁平化粒子を判定できる閾値を設定すれば、ニッケル粒子と異なる他の粒子径の粒子にも適用が可能である。
【0076】
また、本実施形態では評価用の無機粉末、導電性スラリー、又は導電性ペーストに含まれる連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方の割合を評価する例を示したが、連結粒子及び扁平化粒子の少なくとも一方を粗大粒子の割合として評価してもよい。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1 評価システム
10 評価装置
14 情報処理装置
16 ユーザ端末
18 ネットワーク
50 取得部
52 抽出部
54 算出部
56 出力部
60 記憶部
62 学習部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11