IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

特開2024-60296超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法
<>
  • 特開-超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法 図1
  • 特開-超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法 図2
  • 特開-超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法 図3
  • 特開-超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法 図4
  • 特開-超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法 図5
  • 特開-超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法 図6
  • 特開-超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法 図7
  • 特開-超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法 図8
  • 特開-超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法 図9
  • 特開-超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法 図10
  • 特開-超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法 図11
  • 特開-超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法 図12
  • 特開-超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法 図13
  • 特開-超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060296
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20240424BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167595
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】松本 剛
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601BB03
4C601DD01
4C601DD14
4C601EE09
4C601EE11
4C601FF03
4C601JC06
4C601JC16
4C601KK02
4C601KK16
4C601KK28
4C601KK31
(57)【要約】
【課題】ユーザが被検体の血管に対して容易に且つ正確に穿刺できる超音波診断装置の制御方法および超音波診断装置を提供する。
【解決手段】超音波診断装置は、超音波プローブ(1)と、超音波プローブ(1)を用いて血管の超音波画像を取得する画像取得部(31)と、超音波画像から血管を検出する血管検出部(24)と、血管検出部(24)により検出された血管の血管情報を取得する血管情報取得部(25)と、穿刺針の針情報を取得する針情報取得部(26)と、血管情報と針情報と定められた針挿入角度範囲に基づいて被検体の体表における穿刺針の推奨挿入領域を算出する推奨挿入領域算出部(27)と、モニタ(23)と、推奨挿入領域算出部(27)により算出された推奨挿入領域をモニタ(23)に表示する表示制御部(22)とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の血管に対する穿刺を支援する超音波診断装置であって、
超音波プローブと、
前記超音波プローブを用いて前記血管の超音波画像を連続的に取得する画像取得部と、
前記超音波画像から前記血管を検出する血管検出部と、
前記血管検出部により検出された前記血管の血管情報を取得する血管情報取得部と、
穿刺針の針情報を取得する針情報取得部と、
前記血管情報取得部により検出された前記血管情報と前記針情報取得部により取得された前記針情報と定められた針挿入角度範囲に基づいて前記被検体の体表における前記穿刺針の推奨挿入領域を算出する推奨挿入領域算出部と、
モニタと、
前記推奨挿入領域算出部により算出された前記推奨挿入領域を前記モニタに表示する表示制御部と
を備える超音波診断装置。
【請求項2】
前記血管情報取得部は、前記血管の深さおよび太さを前記血管情報として取得する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記画像取得部により取得された前記超音波画像上に前記推奨挿入領域を重ねて表示する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記推奨挿入領域から前記穿刺針を挿入する際の穿刺難易度を算出する穿刺難易度算出部と、
前記穿刺難易度算出部により算出された前記穿刺難易度をユーザに報知する報知部と
を備える請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記報知部は、前記穿刺難易度に応じて前記モニタへの前記推奨挿入領域の表示方法を変更する、または、前記モニタにメッセージを表示する請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記穿刺難易度算出部は、前記血管情報と前記針情報と前記推奨挿入領域に基づいて前記穿刺難易度を算出する請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記超音波画像から前記血管の周辺に位置する臓器を認識する周辺臓器認識部を備え、
前記穿刺難易度算出部は、前記推奨挿入領域算出部により算出された前記推奨挿入領域と前記周辺臓器認識部により認識された前記臓器に基づいて前記穿刺難易度を算出する請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記超音波画像に基づいて前記血管の3次元画像を生成する3次元画像生成部を備え、
前記推奨挿入領域算出部は、前記3次元画像を加味して前記推奨挿入領域を算出する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記被検体と前記超音波プローブとを撮影して光学画像を取得する光学カメラを備え、
前記表示制御部は、前記光学画像上に前記推奨挿入領域を重ねて前記モニタに表示する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記推奨挿入領域算出部により算出された前記推奨挿入領域を前記被検体の体表に投影するプロジェクトマッピング装置を備える請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記超音波プローブによる前記被検体の体表に対する圧迫を検知する圧迫検知部を備え、
前記圧迫検知部により前記被検体の体表に定められた圧迫値以上の圧迫が加えられたことが検知された場合に、前記推奨挿入領域算出部は、前記血管情報取得部により検出された前記血管情報に基づいて前記推奨挿入領域を再度算出する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記被検体と前記穿刺針を撮影して光学画像を取得する光学カメラと、
前記光学画像から前記被検体の体表と前記穿刺針を認識し且つ認識された前記被検体の体表と前記穿刺針が前記推奨挿入領域算出部により算出された前記推奨挿入領域内になっているか否かを判定する穿刺位置判定部と
を備える請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項13】
前記血管情報取得部は、前記血管の深さおよび太さに加えて前記血管の走行状態を前記血管情報として取得する請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項14】
被検体の血管に対する穿刺を支援する超音波診断装置の制御方法であって、
超音波プローブを用いて前記血管の超音波画像を連続的に取得し、
前記超音波画像から前記血管を検出し、
検出された前記血管の血管情報を取得し、
穿刺針の針情報を取得し、
検出された前記血管情報と取得された前記針情報と定められた針挿入角度範囲に基づいて前記被検体の体表における前記穿刺針の含む推奨挿入領域を算出し、
算出された前記推奨挿入領域をモニタに表示する
超音波診断装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の血管に対する穿刺を支援する超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、いわゆる超音波診断装置を用いて被検体の血管を観察しながら血管に穿刺針を挿入する手技が知られている。超音波診断装置のユーザがこの手技を容易に行えるように、例えば特許文献1~3に開示されるような、血管に対する穿刺を支援する技術が開発されている。
【0003】
特許文献1は、超音波画像と、穿刺針の姿勢データと、穿刺針を被検体に挿入する装置の姿勢データとに基づいて、被検体に挿入される穿刺針の軌跡を決定することを開示している。特許文献2は、超音波画像と、被検体の光学画像と、穿刺針の長さに関する情報に基づいて穿刺針が挿入された血管の画像を生成し、生成された画像のいわゆるAR(Augmented Reality:拡張現実)表示を行うことを開示している。特許文献3は、被検体の光学画像における検査位置に、被検体に穿刺針が挿入されている状態を撮影した超音波画像を重畳して表示することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2022-504768号公報
【特許文献2】特許第06487455号公報
【特許文献3】特開2014-221175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的に穿刺針は、穿刺針を製造するメーカおよび穿刺針の型番等により、被検体に挿入可能な長さが異なり、仮に同一の血管を穿刺する場合でも、穿刺針の種類に応じて血管に到達可能な挿入角度および挿入位置が異なることがある。そのため、ユーザの熟練度によっては、特許文献1~3に開示される技術を用いたとしても、穿刺針を血管に挿入するための被検体の体表における適切な挿入位置を容易に決定できず、血管に対して容易に且つ正確に穿刺できない場合があった。
【0006】
本発明はこのような従来の問題点を解消するためになされたものであり、ユーザが被検体の血管に対して容易に且つ正確に穿刺できる超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の構成によれば、上記目的を達成できる。
〔1〕 被検体の血管に対する穿刺を支援する超音波診断装置であって、
超音波プローブと、
超音波プローブを用いて血管の超音波画像を連続的に取得する画像取得部と、
超音波画像から血管を検出する血管検出部と、
血管検出部により検出された血管の血管情報を取得する血管情報取得部と、
穿刺針の針情報を取得する針情報取得部と、
血管情報取得部により取得された血管情報と針情報取得部により取得された針情報と定められた針挿入角度範囲に基づいて被検体の体表における穿刺針の推奨挿入領域を算出する推奨挿入領域算出部と、
モニタと、
推奨挿入領域算出部により算出された推奨挿入領域をモニタに表示する表示制御部と
を備える超音波診断装置。
〔2〕 血管情報取得部は、血管の深さおよび太さを血管情報として取得する〔1〕に記載の超音波診断装置。
〔3〕 表示制御部は、画像取得部により取得された超音波画像上に推奨挿入領域を重ねて表示する〔1〕または〔2〕に記載の超音波診断装置。
〔4〕 推奨挿入領域から穿刺針を挿入する際の穿刺難易度を算出する穿刺難易度算出部と、
穿刺難易度算出部により算出された穿刺難易度をユーザに報知する報知部と
を備える〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の超音波診断装置。
〔5〕 報知部は、穿刺難易度に応じてモニタへの推奨挿入領域の表示方法を変更する、または、モニタにメッセージを表示する〔4〕に記載の超音波診断装置。
〔6〕 穿刺難易度算出部は、血管情報と針情報と推奨挿入領域に基づいて穿刺難易度を算出する〔4〕に記載の超音波診断装置。
〔7〕 超音波画像から血管の周辺に位置する臓器を認識する周辺臓器認識部を備え、
穿刺難易度算出部は、推奨挿入領域算出部により算出された推奨挿入領域と周辺臓器認識部により認識された臓器に基づいて穿刺難易度を算出する〔4〕に記載の超音波診断装置。
〔8〕 超音波画像に基づいて血管の3次元画像を生成する3次元画像生成部を備え、
推奨挿入領域算出部は、3次元画像を加味して推奨挿入領域を算出する〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の超音波診断装置。
〔9〕 被検体と超音波プローブとを撮影して光学画像を取得する光学カメラを備え、
表示制御部は、光学画像上に推奨挿入領域を重ねてモニタに表示する〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の超音波診断装置。
〔10〕 推奨挿入領域算出部により算出された推奨挿入領域を被検体の体表に投影するプロジェクトマッピング装置を備える〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の超音波診断装置。
〔11〕 超音波プローブによる被検体の体表に対する圧迫を検知する圧迫検知部を備え、
圧迫検知部により被検体の体表に定められた圧迫値以上の圧迫が加えられたことが検知された場合に、推奨挿入領域算出部は、血管情報取得部により取得された血管情報に基づいて推奨挿入領域を再度算出する〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の超音波診断装置。
〔12〕 被検体と穿刺針を撮影して光学画像を取得する光学カメラと、
光学画像から被検体の体表と穿刺針を認識し且つ認識された被検体の体表と穿刺針が推奨挿入領域算出部により算出された推奨挿入領域内になっているか否かを判定する穿刺位置判定部と
を備える〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の超音波診断装置。
〔13〕 血管情報取得部は、血管の深さおよび太さに加えて血管の走行状態を血管情報として取得する〔2〕に記載の超音波診断装置。
〔14〕 被検体の血管に対する穿刺を支援する超音波診断装置の制御方法であって、
超音波プローブを用いて前記血管の超音波画像を連続的に取得し、
前記超音波画像から前記血管を検出し、
検出された前記血管の血管情報を取得し、
穿刺針の針情報を取得し、
検出された前記血管情報と取得された前記針情報と定められた針挿入角度範囲に基づいて前記被検体の体表における前記穿刺針の含む推奨挿入領域を算出し、
算出された前記推奨挿入領域をモニタに表示する
超音波診断装置の制御方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、超音波診断装置が、被検体の血管に対する穿刺を支援する超音波診断装置であって、超音波プローブと、超音波プローブを用いて血管の超音波画像を連続的に取得する画像取得部と、超音波画像から血管を検出する血管検出部と、血管検出部により検出された血管の血管情報を取得する血管情報取得部と、穿刺針の針情報を取得する針情報取得部と、血管情報取得部により取得された血管情報と針情報取得部により取得された針情報と定められた針挿入角度範囲に基づいて被検体の体表における穿刺針の推奨挿入領域を算出する推奨挿入領域算出部と、モニタと、推奨挿入領域算出部により算出された推奨挿入領域をモニタに表示する表示制御部とを備えるため、ユーザが被検体の血管に対して容易に且つ正確に穿刺できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態1における送受信回路の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の形態1における画像生成部の構成を示すブロック図である。
図4】血管を撮影した超音波画像の例を示す図である。
図5】穿刺針の挿入可能な長さ、穿刺針の挿入角度、穿刺針の先端の挿入深さおよび穿刺針の挿入位置の関係を模式的に示す図である。
図6】推奨挿入領域の表示例を示す図である。
図7】本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施の形態2に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
図9】本発明の実施の形態3に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
図10】本発明の実施の形態4に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
図11】光学画像に重畳された推奨挿入領域の例を示す図である。
図12】穿刺針の先端が推奨挿入領域の内部に位置するか外部に位置するかの判定結果の表示例を示す図である。
図13】本発明の実施の形態5に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
図14】本発明の実施の形態6に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「同一」、「同じ」は、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含むものとする。
【0011】
実施の形態1
図1に本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の構成を示す。超音波診断装置は、超音波プローブ1、超音波プローブ1に接続される装置本体2を備えている。超音波診断装置は、被検体の血管を観察し、超音波診断装置のユーザが被検体の血管に対して穿刺針を挿入する支援を行うために用いられる。
【0012】
超音波プローブ1は、振動子アレイ11を有している。振動子アレイ11に送受信回路12が接続されている。
【0013】
装置本体2は、超音波プローブ1の送受信回路12に接続される画像生成部21を有している。画像生成部21に、表示制御部22およびモニタ23が、順次、接続されている。また、画像生成部21に血管検出部24が接続されている。血管検出部24に血管情報取得部25が接続されている。また、装置本体2は針情報取得部26を備えている。血管情報取得部25および針情報取得部26に推奨挿入領域算出部27が接続されている。推奨挿入領域算出部27は表示制御部22に接続している。また、送受信回路12、表示制御部22、血管検出部24、血管情報取得部25、針情報取得部26および推奨挿入領域算出部27に、本体制御部28が接続されている。本体制御部28に入力装置29が接続されている。
【0014】
また、送受信回路12および画像生成部21により、画像取得部31が構成されている。また、画像生成部21、表示制御部22、血管検出部24、血管情報取得部25、針情報取得部26、推奨挿入領域算出部27および本体制御部28により、装置本体2用のプロセッサ32が構成されている。
【0015】
超音波プローブ1の振動子アレイ11は、1次元または2次元に配列された複数の超音波振動子を有している。これらの超音波振動子は、それぞれ送受信回路12から供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に、被検体からの超音波エコーを受信して、超音波エコーに基づく信号を出力する。各超音波振動子は、例えば、PZT(Lead Zirconate Titanate:チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミック、PVDF(Poly Vinylidene Di Fluoride:ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子およびPMN-PT(Lead Magnesium Niobate-Lead Titanate:マグネシウムニオブ酸鉛-チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成することにより構成される。
【0016】
送受信回路12は、本体制御部28による制御の下で、振動子アレイ11から超音波を送信し且つ振動子アレイ11により取得された受信信号に基づいて音線信号を生成する。送受信回路12は、図2に示すように、振動子アレイ11に接続されるパルサ41と、振動子アレイ11から順次直列に接続される増幅部42、AD(Analog to Digital)変換部43およびビームフォーマ44を有している。
【0017】
パルサ41は、例えば、複数のパルス発生器を含んでおり、本体制御部28からの制御信号に応じて選択された送信遅延パターンに基づいて、振動子アレイ11の複数の超音波振動子から送信される超音波が超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号を、遅延量を調節して複数の超音波振動子に供給する。このように、振動子アレイ11の超音波振動子の電極にパルス状または連続波状の電圧が印加されると、圧電体が伸縮し、それぞれの超音波振動子からパルス状または連続波状の超音波が発生して、それらの超音波の合成波から、超音波ビームが形成される。
【0018】
送信された超音波ビームは、例えば、被検体の部位等の対象において反射され、超音波プローブ1の振動子アレイ11に向かって伝搬する。このように振動子アレイ11に向かって伝搬する超音波エコーは、振動子アレイ11を構成するそれぞれの超音波振動子により受信される。この際に、振動子アレイ11を構成するそれぞれの超音波振動子は、伝搬する超音波エコーを受信することにより伸縮して、電気信号である受信信号を発生させ、これらの受信信号を増幅部42に出力する。
【0019】
増幅部42は、振動子アレイ11を構成するそれぞれの超音波振動子から入力された信号を増幅し、増幅した信号をAD変換部43に送信する。AD変換部43は、増幅部42から送信された信号をデジタルの受信データに変換する。ビームフォーマ44は、AD変換部43から受け取った各受信データに対してそれぞれの遅延を与えて加算することにより、いわゆる受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、AD変換部43で変換された各受信データが整相加算され且つ超音波エコーの焦点が絞り込まれた音線信号が取得される。
【0020】
画像生成部21は、図3に示すように、信号処理部45、DSC(Digital Scan Converter:デジタルスキャンコンバータ)46および画像処理部47が順次直列に接続された構成を有している。
【0021】
信号処理部45は、送受信回路12から受信した音線信号に対し、本体制御部28により設定される音速値を用いて超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正を施した後、包絡線検波処理を施すことにより、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。
【0022】
DSC46は、信号処理部45で生成されたBモード画像信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)する。
画像処理部47は、DSC46から入力されるBモード画像信号に階調処理等の各種の必要な画像処理を施した後、Bモード画像信号を表示制御部22および血管検出部24に送出する。以降は、画像処理部47により画像処理が施されたBモード画像信号を、超音波画像と呼ぶ。
【0023】
本発明では、例えば図4に示すように、被検体内の血管Bを写す超音波画像Uを取得する。以降では特に断りが無い限り、血管Bの短軸像を写す超音波画像Uを、単に血管Bを写す超音波画像Uを呼ぶ。なお、血管Bの短軸像とは、血管Bの走行方向に対して垂直な血管Bの断面のことをいう。
【0024】
表示制御部22は、本体制御部28の制御の下で、画像生成部21により生成された超音波画像等に対して所定の処理を施して、モニタ23に表示する。
モニタ23は、表示制御部22の制御の下で、種々の表示を行う。モニタ23は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)、有機ELディスプレイ(Organic Electroluminescence Display)等のディスプレイ装置を含むことができる。
【0025】
本体制御部28は、予め記録されたプログラム等に従って装置本体2の各部および超音波プローブ1を制御する。
入力装置29は、検査者による入力操作を受け付け、入力された情報を本体制御部28に送出する。入力装置29は、例えば、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッドおよびタッチパネル等の検査者が入力操作を行うための装置等により構成される。
【0026】
血管検出部24は、超音波画像Uを解析することにより、超音波画像Uに写る血管Bを検出する。血管検出部24は、血管Bの短軸像に関する複数のテンプレート画像を記憶しており、複数のテンプレート画像を用いて超音波画像Uをサーチする、いわゆるテンプレートマッチングの方法により血管Bを検出できる。血管検出部24は、例えば、血管Bの短軸像が写った多数の超音波画像Uにより学習された、いわゆる機械学習における学習済みモデルを用いて超音波画像Uから血管Bを検出することもできる。
【0027】
血管情報取得部25は、血管検出部24による血管Bの検出結果に基づいて超音波画像Uを解析することにより、血管検出部24により検出された血管Bの血管情報を取得する。
【0028】
血管情報取得部25は、血管情報として、例えば血管Bの深さを取得できる。この際に、血管情報取得部25は、例えば、血管Bの中心Cを検出し、被検体の体表の位置すなわち超音波画像Uの最も浅い位置から血管Bの中心Cまでの距離K1を計測することにより、血管Bの深さを算出できる。もしくは、血管情報取得部25は、例えば、血管Bにおける前壁AWの位置を検出し、被検体の体表の位置から血管Bの前壁AWの位置までの距離K2を計測することにより、血管Bの深さを算出することもできる。なお、血管Bの前壁AWとは、血管Bにおける最も浅い位置に配置された血管壁のことをいう。
【0029】
また、血管情報取得部25は、例えば、血管情報として血管Bの太さを算出することもできる。また、血管Bの走行方向に沿って超音波プローブ1が移動されながら画像生成部21により連続的に複数フレームの超音波画像Uが生成される場合に、血管情報取得部25は、連続的な複数フレームの超音波画像Uを解析することにより、血管Bの走行状態を血管情報として取得することもできる。
【0030】
ところで、一般的に、穿刺針は、穿刺針を製造するメーカおよび穿刺針の型番等により、被検体に挿入可能な長さが異なる場合がある。針情報取得部26は、例えば入力装置29を介してユーザにより入力された情報に基づいて、穿刺針の被検体に挿入可能な長さを少なくとも含む、穿刺針の針情報を取得する。この際に、針情報取得部26は、ユーザにより入力された穿刺針の挿入可能な長さを針情報として取得できる。また、針情報取得部26は、複数の種類の穿刺針の針情報を予め記憶し、穿刺針のメーカ、型番または名称等の情報に基づいて、複数の種類の穿刺針の針情報のうち、ユーザの入力に関連する穿刺針の針情報を選出することで、針情報を取得することもできる。
【0031】
ところで、穿刺針が被検体に挿入可能な長さと穿刺針の挿入角度の関係によっては、穿刺針の先端が血管Bの深さに到達できない場合がある。推奨挿入領域算出部27は、血管情報取得部25により取得された血管情報と、針情報取得部26により取得された針情報に基づいて、穿刺針が血管Bに到達可能な針挿入角度範囲を設定し、血管情報と、針情報と、針挿入角度範囲に基づいて被検体の体表における穿刺針の推奨挿入領域を算出する。
【0032】
推奨挿入領域算出部27は、針挿入角度範囲の上限値として、例えば45度等の定められた角度を設定できる。また、推奨挿入領域算出部27は、針挿入角度範囲の下限値A1を設定する際に、図5に示すように、穿刺針Gの被検体に挿入可能な長さをL1、血管Bの被検体の体表BSからの深さをDとして、arcsin(D/L1)を算出し、深さD<長さL1で且つarcsin(D/L1)が針挿入角度範囲の上限値未満である場合に、arcsin(D/L1)を算出することにより、針挿入角度範囲の下限値A1を設定できる。ここで、「arcsin」はいわゆる正弦関数の逆関数を示す。
【0033】
また、推奨挿入領域算出部27は、設定された針挿入角度範囲の下限値A1を用いてD/[tan(A1)]により図5に示す距離L2を算出し、設定された針挿入角度範囲の上限値A2を用いてD/[tan(A2)]により図示しない距離L3を算出する。ここで、「tan」はいわゆる正接関数を示す。推奨挿入領域算出部27は、血管検出部24および血管情報取得部25により解析された超音波画像Uに対応する断層面Pから距離L2離れた位置と距離L3離れた位置との間の領域、すなわち、超音波プローブ1の先端部から距離L2離れた位置と距離L3離れた位置との間の領域を推奨挿入領域として算出できる。
【0034】
このようにして算出された推奨挿入領域は、針挿入角度範囲の下で穿刺針Gを被検体に挿入した場合に、現在使用している穿刺針Gが血管Bの深さDに到達可能な被検体の体表BS上の穿刺位置の範囲を表している。
【0035】
表示制御部22は、推奨挿入領域算出部27により算出された推奨挿入領域を、例えば図6に示すように超音波画像Uと一緒にメッセージM1によりモニタ23に表示できる。図6の例では、超音波画像Uに重ねて、針挿入角度範囲と推奨挿入領域を含むメッセージM1が表示されている。ユーザは、モニタ23に表示された推奨挿入領域を確認しながら被検体に穿刺針Gを挿入することにより、その熟練度に関わらず、容易に血管Bに穿刺針Gを挿入できる。
【0036】
なお、画像生成部21、表示制御部22、血管検出部24、血管情報取得部25、針情報取得部26、推奨挿入領域算出部27および本体制御部28を有するプロセッサ32は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、および、CPUに各種の処理を行わせるための制御プログラムから構成されるが、FPGA(Field Programmable Gate Array:フィードプログラマブルゲートアレイ)、DSP(Digital Signal Processor:デジタルシグナルプロセッサ)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:アプリケーションスペシフィックインテグレイテッドサーキット)、GPU(Graphics Processing Unit:グラフィックスプロセッシングユニット)、または、その他のIC(Integrated Circuit:集積回路)を用いて構成されてもよく、もしくはそれらを組み合わせて構成されてもよい。
【0037】
また、プロセッサ32の画像生成部21、表示制御部22、血管検出部24、血管情報取得部25、針情報取得部26、推奨挿入領域算出部27および本体制御部28は、部分的にあるいは全体的に1つのCPU等に統合させて構成されることもできる。
【0038】
次に、図7のフローチャートを用いて実施の形態1に係る超音波診断装置の動作の例を説明する。
【0039】
まず、ステップS1において、ユーザが超音波プローブ1を被検体の体表BS上に配置した状態で被検体の血管Bを写す超音波画像Uが取得される。この際に、超音波プローブ1の振動子アレイ11により被検体内に超音波ビームが送信され且つ被検体内から超音波エコーが受信され、受信信号が生成される。画像取得部33の送受信回路12は、受信信号に対して、本体制御部28の制御の下でいわゆる受信フォーカス処理を行って音線信号を生成する。送受信回路12により生成された音線信号は、画像生成部21に送出される。画像生成部21は、送受信回路12から送出された音線信号を用いて超音波画像Uを生成する。
【0040】
次にステップS2において、血管検出部24は、ステップS1で取得された超音波画像Uを解析することにより、超音波画像Uに写る血管Bを検出する。この際に、血管検出部24は、例えばテンプレートマッチングの方法により血管Bを検出でき、血管Bが写る多数の超音波画像Uにより学習された学習済みモデルを用いて血管Bを検出することもできる。
【0041】
ステップS3において、血管情報取得部25は、ステップS2で検出された血管Bの深さDを少なくとも含む血管情報を取得する。この際に、血管情報取得部25は、超音波画像Uを解析することにより、血管Bの中心Cの深さまたは血管Bの前壁AWの深さを血管Bの深さDとして計測できる。
【0042】
ステップS4において、針情報取得部26は、被検体に穿刺する穿刺針Gの針情報を取得する。この際に、針情報取得部26は、例えば、入力装置29を介してユーザにより入力された情報に基づいて針情報を取得できる。
【0043】
ステップS5において、推奨挿入領域算出部27は、ステップS3で取得された血管情報とステップS4で取得された針情報に基づいて針挿入角度範囲を設定し、血管情報と針情報と針挿入角度範囲に基づいて、推奨挿入領域を算出する。
【0044】
この際に、推奨挿入領域算出部27は、例えば、ステップS3で算出された血管Bの深さDとステップS4で算出された被検体に挿入可能な穿刺針Gの長さL1に基づいて、針挿入角度範囲の下限値A1を設定でき、45°等の定められた角度を針挿入角度範囲の上限値A2として設定できる。さらに、推奨挿入領域算出部27は、D/[tan(A1)]により図5に示す距離L2を算出し、D/[tan(A2)]により図示しない距離L3を算出することで、超音波プローブ1の先端部から距離L2離れた位置と距離L3離れた位置との間の領域を推奨挿入領域として算出できる。
【0045】
このようにして算出された推奨挿入領域は、針挿入角度範囲の下で穿刺針Gを被検体に挿入した場合に、現在使用している穿刺針Gが血管Bの深さDに到達可能な被検体の体表BS上の穿刺位置の範囲を表している。
【0046】
最後にステップS6において、表示制御部22は、ステップS5で算出された推奨挿入領域を、例えば図6に示すように、メッセージM1によりモニタ23に表示する。ユーザは、メッセージM1を確認しながら被検体に穿刺することにより、その熟練度に関わらず、穿刺針Gを血管Bに容易に挿入できる。
【0047】
このようにしてステップS6の処理が完了すると、図7のフローチャートに従う超音波診断装置の動作が完了する。
【0048】
以上から、実施の形態1の超音波診断装置によれば、血管検出部24が超音波画像Uに写る被検体の血管Bを検出し、血管情報取得部25が検出された血管Bの血管情報を取得し、針情報取得部26が被検体に挿入される穿刺針Gの針情報を取得し、推奨挿入領域算出部27が血管情報と針情報と針挿入角度範囲に基づいて被検体の体表BSにおける穿刺針Gの推奨挿入領域を算出し、表示制御部22が推奨挿入領域をモニタ23に表示するため、ユーザは、モニタ23に表示された推奨挿入領域を確認しながら被検体へ穿刺針Gを挿入することにより、その熟練度に関わらず被検体の血管Bに対して容易に且つ正確に穿刺できる。
【0049】
なお、送受信回路12が超音波プローブ1に備えられることが説明されているが、送受信回路12は装置本体2に備えられていてもよい。
また、画像生成部21が装置本体2に備えられることが説明されているが、画像生成部21は超音波プローブ1に備えられていてもよい。
【0050】
また、装置本体2は、いわゆる据え置き型でもよく、持ち運びが容易な携帯型でもよく、例えばスマートフォンまたはタブレット型のコンピュータにより構成される、いわゆるハンドヘルド型でもよい。このように、装置本体2を構成する機器の種類は特に限定されない。
【0051】
また、血管情報取得部25により血管情報として血管Bの太さが取得された場合に、推奨挿入領域算出部27は、血管Bの太さを加味して推奨挿入領域を算出することもできる。一般的に、細い血管Bに対しては穿刺が難しい場合があるため、推奨挿入領域算出部27は、例えば、超音波プローブ1の先端部から距離L2離れた位置と距離L3離れた位置との間の領域のうち、血管Bが定められた太さ以上である箇所に針が到達可能な領域を、推奨挿入領域として算出できる。
【0052】
また、血管情報取得部25により血管情報として血管Bの走行状態が取得された場合に、推奨挿入領域算出部27は、血管Bの走行状態を加味して推奨挿入領域を算出することもできる。一般的に、血管Bは、被検体の深部側または浅部側に湾曲しながら走行していることがあり、例えば、穿刺針Gの挿入角度によっては穿刺針Gにより血管Bを貫いてしまうリスクが存在する。そこで、推奨挿入領域算出部27は、例えば、超音波プローブ1の先端部から距離L2離れた位置と距離L3離れた位置との間の領域のうち、深さ方向における血管Bの位置の変化率が定められた変化率以下である箇所に針が到達可能な領域を、推奨挿入領域として算出できる。
【0053】
また、針情報取得部26が入力装置29を介してユーザにより入力された情報に基づいて針情報を取得することが説明されているが、針情報の取得方法はこれに限定されない。例えば、針情報取得部26は、複数の種類の穿刺針Gの針情報を予め記憶しており、被検体に穿刺する穿刺針Gの光学画像を解析して穿刺針Gの種類を認識し、記憶された複数の種類の穿刺針Gの針情報から認識された穿刺針Gに対応する針情報を選出することで針情報を自動的に取得することもできる。この際に、針情報取得部26は、例えばテンプレートマッチングの方法により穿刺針Gを認識できる。針情報取得部26は、複数の種類の穿刺針Gが写った多数の光学画像により学習された学習済みモデルを用いて穿刺針Gを認識することもできる。
【0054】
また、穿刺針Gにバーコード等の2次元コード、穿刺針Gを識別するためのマーカが付与されている場合には、針情報取得部26は、例えば穿刺針Gの光学画像を解析して、これらの2次元コードおよびマーカ等を読み込むことで穿刺針Gの種類を認識することもできる。
【0055】
実施の形態2
通常、血管Bの形状は被検体の部位および被検体により様々であり、血管Bの周囲には様々な臓器が位置しているため、血管Bの位置によっては穿刺における難易度が高い場合がある。本発明の超音波診断装置は、ユーザが難易度の高い箇所を避けて容易に血管Bを穿刺できるように、観察している血管Bに対する穿刺の難易度を算出できる。
【0056】
図8に、実施の形態2の超音波診断装置の構成を示す。実施の形態2の超音波診断装置は、図1に示す実施の形態1の超音波診断装置において、装置本体2の代わりに装置本体2Aを備えている。装置本体2Aは、実施の形態1における装置本体2において、周辺臓器認識部51、穿刺難易度算出部52および報知部53をさらに備え、本体制御部28の代わりに本体制御部28Aを備えている。
【0057】
装置本体2Aにおいて、血管検出部24および本体制御部28Aに周辺臓器認識部51が接続されている。血管情報取得部25、針情報取得部26、推奨挿入領域算出部27、周辺臓器認識部51および本体制御部28Aに、穿刺難易度算出部52が接続されている。穿刺難易度算出部52および本体制御部28Aに報知部53が接続されている。報知部53は表示制御部22に接続している。
【0058】
また、画像生成部21、表示制御部22、血管検出部24、血管情報取得部25、針情報取得部26、推奨挿入領域算出部27、本体制御部28A、周辺臓器認識部51、穿刺難易度算出部52および報知部53により、装置本体2A用のプロセッサ32Aが構成されている。
【0059】
周辺臓器認識部51は、画像生成部21により生成された超音波画像Uを解析することにより、血管検出部24により検出された血管Bの周辺に位置する臓器を認識する。周辺臓器認識部51は、被検体の複数の種類の臓器に関する複数のテンプレート画像を記憶しており、複数のテンプレート画像を用いて超音波画像Uをサーチするテンプレートマッチングの方法により血管Bの周囲に位置する臓器を検出できる。周辺臓器認識部51は、例えば、血管Bの周辺に位置する臓器が写った多数の超音波画像Uにより学習された学習済みモデルを用いて超音波画像Uから血管Bの周辺に位置する臓器を検出することもできる。
【0060】
穿刺難易度算出部52は、推奨挿入領域算出部27により算出された推奨挿入領域から穿刺針Gを挿入する際の穿刺難易度を算出する。穿刺難易度算出部52は、例えば、推奨挿入領域算出部27によって設定される針挿入角度範囲の下限値A1に対して、例えば30°等に設定された角度しきい値を有し、針挿入角度範囲の下限値A1が角度しきい値以下である場合に穿刺難易度を「易」、針挿入角度範囲の下限値A1が角度しきい値よりも大きい場合に穿刺難易度を「難」とすることができる。
【0061】
また、穿刺難易度算出部52は、例えば、血管情報取得部25により取得された血管情報、針情報取得部26により取得された針情報および推奨挿入領域算出部27により算出された推奨挿入領域に基づいて穿刺難易度を算出できる。この際に、穿刺難易度算出部52は、例えば、血管Bが太いほど穿刺難易度を低く算出し、血管Bが細いほど穿刺難易度を高く算出できる。また、穿刺難易度算出部52は、例えば、血管Bの形状および位置の変化率が小さい箇所ほど穿刺難易度を低く算出し、血管Bの形状および位置の変化率が大きい箇所ほど穿刺難易度を高く算出できる。また、穿刺難易度算出部52は、使用する穿刺針Gの種類に応じて穿刺難易度を低くまたは高く算出できる。
【0062】
また、穿刺難易度算出部52は、推奨挿入領域算出部27により算出された推奨挿入領域と、周辺臓器認識部51により認識された臓器に基づいて穿刺難易度を算出できる。穿刺難易度算出部52は、例えば、血管Bの近傍に臓器が認識された場合に穿刺難易度を高く算出し、血管Bの近傍に臓器が認識されなかった場合に穿刺難易度を低く算出できる。
【0063】
また、穿刺難易度算出部52は、周辺臓器認識部51により認識された臓器の種類に応じて穿刺難易度を低くまたは高く算出できる。この際に、例えば、周辺臓器認識部51が穿刺の対象となる静脈の近傍において穿刺の回避が推奨される動脈を認識した場合に、穿刺難易度算出部52は、穿刺難易度を高く算出できる。
【0064】
報知部53は、穿刺難易度算出部52により算出された穿刺難易度をユーザに報知する。報知部53は、例えば、「易」および「難」等、穿刺難易度を段階的に表すメッセージをモニタ23に表示できる。また、報知部53は、例えば、穿刺難易度に応じて推奨挿入領域の表示色を変更する、穿刺難易度に応じて推奨挿入領域の表示を点滅させる、穿刺難易度に応じて推奨挿入領域の輪郭の色または太さを変更する等、穿刺難易度に応じてモニタ23への推奨挿入領域の表示方法を変更することもできる。
【0065】
以上から、実施の形態2の超音波診断装置によれば、穿刺難易度算出部52が、推奨挿入領域と、血管情報、針情報および周辺臓器認識部51により認識された血管Bの周辺の臓器の少なくとも1つとに基づいて穿刺難易度を算出し、報知部53が穿刺難易度をユーザに報知するため、ユーザは、例えば穿刺難易度が高い箇所を避けながら被検体の血管Bに対して容易に且つ正確に穿刺できる。
【0066】
なお、周辺臓器認識部51が血管Bの周辺の臓器を認識することが説明されているが、例えば、血管Bの周辺の神経および血管Bの周辺の病変部等、血管Bの周辺に位置し且つ穿刺を避けるべき回避推奨対象物を認識することもできる。この際に、穿刺難易度算出部52は、例えば、血管Bの周辺に回避推奨対象物が認識された場合に穿刺難易度を高く算出し、血管Bの周辺に回避推奨対象物が認識されない場合に穿刺難易度を低く算出できる。これにより、ユーザは、報知部53により報知される穿刺難易度を確認することにより、回避推奨対象物を避けながら、被検体の血管Bに容易に且つ正確に穿刺できる。
【0067】
また、報知部53がモニタ23における表示により穿刺難易度をユーザに報知することが説明されているが、ユーザへの報知の方法はこれに限定されない。例えば、超音波診断装置が図示しないスピーカを備えている場合に、報知部53は、スピーカを介して音により穿刺難易度をユーザに報知することもできる。
【0068】
実施の形態3
超音波診断装置は、血管Bの3次元画像に基づいて詳細に血管Bの形状を加味することにより推奨挿入領域を算出することもできる。
【0069】
図9に実施の形態3の超音波診断装置の構成を示す。実施の形態3の超音波診断装置は、図1に示す実施の形態1の超音波診断装置において、装置本体2の代わりに装置本体2Bを備えている。装置本体2Bは、実施の形態1における装置本体2において、3次元画像生成部54をさらに備え、本体制御部28の代わりに本体制御部28Bを備えている。
【0070】
装置本体2Bにおいて、血管検出部24および本体制御部28Bに3次元画像生成部54が接続されている。3次元画像生成部54は推奨挿入領域算出部27に接続している。また、画像生成部21、表示制御部22、血管検出部24、血管情報取得部25、針情報取得部26、推奨挿入領域算出部27、本体制御部28Bおよび3次元画像生成部54により、装置本体2B用のプロセッサ32Bが構成されている。
【0071】
3次元画像生成部54は、血管Bの走行方向に沿って超音波プローブ1が移動されながら画像生成部21により生成された複数フレームの連続する超音波画像Uに基づいて、血管検出部24により検出された血管Bの3次元画像を生成する。この3次元画像には、血管Bの形状および3次元における血管Bの位置の変化が詳細に示されている。
【0072】
推奨挿入領域算出部27は、3次元画像生成部54により生成された血管Bの3次元画像を加味して推奨挿入領域を算出する。推奨挿入領域算出部27は、例えば、超音波プローブ1の先端部から距離L2離れた位置と距離L3離れた位置との間の領域から、血管Bの形状が複雑に変化している箇所に針が到達してしまう領域、および、血管Bが肥大している箇所等の異常な形状を有している箇所に針が到達してしまう領域を除くことにより、推奨挿入領域を算出できる。
【0073】
以上から、実施の形態3の超音波診断装置によれば、3次元画像生成部54が血管Bの3次元画像を生成し、推奨挿入領域算出部27が血管Bの3次元画像を加味して、血管Bの詳細な形状を反映した推奨挿入領域を算出するため、ユーザは、血管Bに対して容易に且つ安全に穿刺できる。
【0074】
なお、実施の形態3の超音波診断装置は、実施の形態1の超音波診断装置に対して3次元画像生成部54を追加した構成を有しているが、実施の形態2の超音波診断装置に対して3次元画像生成部54を追加した構成を有することもできる。
【0075】
実施の形態4
本発明の超音波診断装置は、ユーザが被検体の体表BSにおける推奨挿入領域を容易に把握できるように、被検体を撮影した光学画像に推奨挿入領域を重畳して表示することもできる。
【0076】
図10に、実施の形態4の超音波診断装置の構成を示す。実施の形態4の超音波診断装置は、図1に示す実施の形態1の超音波診断装置において、光学カメラ55をさらに備え、装置本体2の代わりに装置本体2Cを備えている。装置本体2Cは、実施の形態2における装置本体2において、穿刺位置判定部56をさらに備え、本体制御部28の代わりに本体制御部28Cをさらに備えている。
【0077】
光学カメラ55は、表示制御部22および本体制御部28に接続している。また、装置本体2Cにおいて、推奨挿入領域算出部27、光学カメラ55および本体制御部28Cに穿刺位置判定部56が接続されている。穿刺位置判定部56は表示制御部22に接続している。また、画像生成部21、表示制御部22、血管検出部24、血管情報取得部25、針情報取得部26、推奨挿入領域算出部27、本体制御部28Cおよび穿刺位置判定部56により、装置本体2C用のプロセッサ32Cが構成されている。
【0078】
光学カメラ55は、例えばいわゆるCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)イメージセンサまたはいわゆるCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサ等のイメージセンサを含み、被検体の体表と、被検体の体表BS上に配置された超音波プローブ1を撮影して光学画像を取得する。光学カメラ55は、取得された光学画像を表示制御部22および穿刺位置判定部56に送出する。
【0079】
表示制御部22は、例えば図11に示すような光学画像Qを、画像生成部21により生成された超音波画像Uと一緒にモニタ23に表示する。また、表示制御部22は、図11に示すように、推奨挿入領域算出部27により算出された推奨挿入領域R1を、光学画像Qに重畳して表示する。ユーザは、光学画像Qに重畳された推奨挿入領域R1を確認することにより、被検体の体表BS上の推奨挿入領域R1の位置を容易に把握できる。
【0080】
穿刺位置判定部56は、光学カメラ55により撮影された光学画像Qを解析して、被検体の体表BSと穿刺針Gの存在を認識し、且つ、認識された被検体の体表BSと穿刺針Gが推奨挿入領域算出部27により算出された推奨挿入領域内になっているか否かを判定する。穿刺位置判定部56は、例えば、光学画像Qに重畳して表示された推奨挿入領域R1に穿刺針Gの先端が重なっている場合に穿刺針Gが推奨挿入領域内に位置していると判定できる。また、穿刺位置判定部56は、例えば、穿刺針Gの先端が推奨挿入領域R1から離れている場合に穿刺針Gが推奨挿入領域内に位置していないと判定できる。
【0081】
表示制御部22は、穿刺位置判定部56による判定結果を、例えば図12に示すようなメッセージM2によりモニタ23に表示できる。図12の例では、光学画像Qにおいて穿刺針Gの先端が推奨挿入領域R1から離れており、「穿刺針の先端が推奨挿入領域外です」という、穿刺針Gが推奨挿入領域R1内に位置していないという判定結果を表すメッセージM2が光学画像Qに重畳して表示されている。ユーザは、穿刺位置判定部56による判定結果を確認することにより、現在の穿刺針Gの先端の位置を明確に把握しながら被検体の体表BS上の適切な位置に容易に且つ正確に穿刺できる。
【0082】
以上から、実施の形態4の超音波診断装置によれば、推奨挿入領域算出部27により算出された推奨挿入領域R1が、被検体の体表BSと超音波プローブ1を撮影した光学画像Qに重畳して表示されるため、ユーザは、被検体の体表BS上における推奨挿入領域R1の位置を容易に把握できる。また、表示制御部22が穿刺位置判定部56による穿刺針Gの先端の位置に関する判定結果をモニタ23に表示するため、ユーザは、現在の穿刺針Gの先端の位置を明確に把握しながら被検体の体表BS上の適切な位置に容易に且つ正確に穿刺できる。
【0083】
なお、実施の形態4の超音波診断装置は、実施の形態1の超音波診断装置に対して光学カメラ55と穿刺位置判定部56を追加した構成を有しているが、実施の形態2の超音波診断装置および実施の形態3の超音波診断装置に対して光学カメラ55と穿刺位置判定部56を追加した構成を有することもできる。
【0084】
実施の形態5
本発明の超音波診断装置は、推奨挿入領域算出部27により算出された推奨挿入領域R1を被検体の体表BS上に投影する、いわゆるプロジェクトマッピングを行うこともできる。
【0085】
図13に、実施の形態5の超音波診断装置の構成を示す。実施の形態5の超音波診断装置は、図1に示す実施の形態1の超音波診断装置において、プロジェクトマッピング装置57をさらに備え、装置本体2の代わりに装置本体2Dを備えている。装置本体2Dは、実施の形態1における装置本体2において、本体制御部28の代わりに本体制御部28Dを備えている。
【0086】
装置本体2Dの推奨挿入領域算出部27に、プロジェクトマッピング装置57が接続されている。また、画像生成部21、表示制御部22、血管検出部24、血管情報取得部25、針情報取得部26、推奨挿入領域算出部27および本体制御部28Dにより、装置本体2D用のプロセッサ32Dが構成されている。
【0087】
プロジェクトマッピング装置57は、推奨挿入領域算出部27により算出された推奨挿入領域R1を被検体の体表BS上に投影する。
【0088】
以上から、実施の形態5の超音波診断装置によれば、ユーザは、被検体の体表BS上に投影された推奨挿入領域R1を確認することにより、推奨挿入領域R1の位置を明確に把握して、推奨挿入領域R1に正確に穿刺針Gを挿入できる。
【0089】
なお、実施の形態5の超音波診断装置は、実施の形態1の超音波診断装置に対してプロジェクトマッピング装置57を追加した構成を有しているが、実施の形態2の超音波診断装置、実施の形態3の超音波診断装置および実施の形態4の超音波診断装置に対してプロジェクトマッピング装置57を追加した構成を有することもできる。
【0090】
実施の形態6
一般的に、検査によっては超音波プローブ1により被検体の体表BSを圧迫した状態で穿刺を行うことがある。この場合には、圧迫前と比較して穿刺を行う血管Bの形状と深さDが変化する。本発明の超音波診断装置は、このようにして血管Bの形状と深さDが変化した場合でも推奨挿入領域R1を精度良く算出できる。
【0091】
図14に、実施の形態6の超音波診断装置の構成を示す。実施の形態6の超音波診断装置は、図1に示す実施の形態1の超音波診断装置において、装置本体2の代わりに装置本体2Eを備えている。装置本体2Eは、実施の形態1における装置本体2において、圧迫検知部58をさらに備え、装置本体2の代わりに装置本体2Eを備えている。
【0092】
装置本体2Eにおいて、画像生成部21および本体制御部28Eに圧迫検知部58が接続されている。圧迫検知部58は推奨挿入領域算出部27に接続している。また、画像生成部21、表示制御部22、血管検出部24、血管情報取得部25、針情報取得部26、推奨挿入領域算出部27、本体制御部28Eおよび圧迫検知部58により、装置本体2E用のプロセッサ32Eが構成されている。
【0093】
圧迫検知部58は、超音波プローブ1による被検体の体表BSに対する圧迫を検知する。一般的に、被検体の体表BSが超音波プローブ1により圧迫されると、静脈および周囲の組織等が深さ方向に圧縮されるように変形し、それらの位置も深部側に移動することが知られている。圧迫検知部58は、例えば、画像生成部21により生成された、連続する複数フレームの超音波画像Uを解析して、血管Bおよびその周辺の組織の形状および位置の変化に基づいて、圧迫の度合いを表す圧迫値を算出する。圧迫検知部58は、例えば、定められた圧迫値以上の圧迫が被検体の体表BSに加えられた場合に、超音波プローブ1によって圧迫が行われたと検知できる。
【0094】
ここで、超音波プローブ1により被検体の体表BSが圧迫されると、血管Bの形状および位置が変化するため、推奨挿入領域R1の位置も変化する。
【0095】
血管情報取得部25は、圧迫検知部58により被検体の体表BSに定められた圧迫値以上の圧迫が加えられたことが検知された場合に、血管検出部24により新たに検出された血管Bの血管情報を取得する。
【0096】
推奨挿入領域算出部27は、圧迫検知部58により被検体の体表BSに定められた圧迫値以上の圧迫が加えられたことが検知された場合に、血管情報取得部25により新たに取得された血管情報と、針情報取得部26により取得された穿刺針Gの針情報に基づいて、推奨挿入領域R1を再度算出する。
【0097】
以上から、実施の形態6の超音波診断装置によれば、圧迫検知部58が、超音波プローブ1による被検体の体表BSに対する圧迫を検知し、推奨挿入領域算出部27が、圧迫検知部58により被検体の体表BSに定められた圧迫値以上の圧迫が加えられたことが検知された場合に推奨挿入領域R1を再度算出するため、被検体の体表BSが超音波プローブ1により圧迫された場合であっても、ユーザは、推奨挿入領域R1の位置を把握して、血管Bに対して容易に且つ正確に穿刺できる。
【0098】
なお、実施の形態6の超音波診断装置は、実施の形態1の超音波診断装置に対して圧迫検知部58を追加した構成を有しているが、実施の形態2の超音波診断装置、実施の形態3の超音波診断装置、実施の形態4の超音波診断装置および実施の形態5の超音波診断装置に対して圧迫検知部58を追加した構成を有することもできる。
【符号の説明】
【0099】
1 超音波プローブ、2,2B,2C,2D,2E 装置本体、11 振動子アレイ、12 送受信回路、21 画像生成部、22 表示制御部、23 モニタ、24 血管検出部、25 血管情報取得部、26 針情報取得部、27 推奨挿入領域算出部、28,28A,28B,28C,28D,28E 本体制御部、29 入力装置、31 画像取得部、32,32A,32B,32C,32D,32E プロセッサ、41 パルサ、42 増幅部、43 AD変換部、44 ビームフォーマ、45 信号処理部、46 DSC、47 画像処理部、51 周辺臓器認識部、52 穿刺難易度算出部、53 報知部、54 3次元画像生成部、55 光学カメラ、56 穿刺位置判定部、57 プロジェクトマッピング装置、58 圧迫検知部、AW 前壁、B 血管、BS 体表、C 中心、D 深さ、G 穿刺針、K1,K2,L2 距離、M1,M2 メッセージ、L1 長さ、P 断層面、Q 光学画像、R1 推奨挿入領域、U 超音波画像。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14