(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060390
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/02 20060101AFI20240424BHJP
C08F 4/34 20060101ALI20240424BHJP
C08F 2/38 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
C08L101/02
C08F4/34
C08F2/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167725
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】丁 仁平
(72)【発明者】
【氏名】茶谷 俊介
(72)【発明者】
【氏名】内田 久夫
(72)【発明者】
【氏名】芝谷 治美
【テーマコード(参考)】
4J002
4J011
4J015
【Fターム(参考)】
4J002AA03X
4J002AA05W
4J002BG01W
4J002BG01X
4J002BG04W
4J002BG04X
4J002BG05W
4J002BG05X
4J011AA05
4J011NA25
4J011NB05
4J011NB06
4J015BA04
4J015BA05
4J015BA06
4J015BA08
(57)【要約】
【課題】直鎖低分子量ポリマーの割合に対して分岐ポリマーの含有量が多く、平均分岐度が多い組成物及びその製造方法の提供。
【解決手段】複数のポリマー鎖が2価以上のチオエーテル構造により連結された高分子化合物(X)と、エーテル結合、エステル結合及び炭素-炭素結合からなる群から選択される少なくとも一つの結合を末端化学構造として有する高分子化合物(Y)とを含む組成物及びその製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のポリマー鎖が2価以上のチオエーテル構造により連結された高分子化合物(X)と、エーテル結合、エステル結合及び炭素-炭素結合からなる群から選択される少なくとも一つの結合を末端化学構造として有する高分子化合物(Y)とを含む組成物。
【請求項2】
光散乱ゲル浸透クロマトグラフィー法で分岐度を求めた際に、慣性半径から求めた質量平均アーム数が2以上であり、かつ、固有粘度から求めた質量平均アーム数が2以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物の相対質量平均分子量をMwaとし、前記高分子化合物(X)のチオエーテル構造部分を切断した際に得られるポリマーの相対質量平均分子量をMwbとするとき、Mwa/Mwb≧2.0である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記高分子化合物(X)が前記2価以上のチオエーテル構造を1分子あたり1~300個有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記2価以上のチオエーテル構造が式(1)で表される構造を含む、請求項4に記載の組成物。
【化1】
式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、1価の炭化水素基、ヒドロキシ基又は1価の電子吸引性基であり、R
3は、酸素原子、2価の炭化水素基又は2価の電子吸引性基である。*は結合点を表す。
【請求項6】
前記高分子化合物(Y)を前記組成物の総質量の0.1~50質量%含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記高分子化合物(Y)が、式(2a)で表される構造、式(2b)で表される構造、及び式(2c)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1種の構造を前記末端化学構造として有する、請求項6に記載の組成物。
【化2】
式(2a)中、R
4、R
5、及びR
6はそれぞれ独立に、水素原子、1価の炭化水素基、ヒドロキシ基、1価の電子吸引性基、及び1価の電子供与性基からなる群から選択されるいずれか1種であり、式(2b)中、R
7は飽和炭化水素基、アリール基、及びこれらの誘導体からなる群から選択されるいずれか1種であり、式(2c)中、R
8、R
9、及びR
10はそれぞれ独立に、水素原子、1価の炭化水素基、ヒドロキシ基、1価の電子吸引性基、及び1価の電子供与性基からなる群から選択されるいずれか1種である。
【請求項8】
多官能チオール化合物及び過酸化物化合物の存在下でビニル系化合物を重合させる重合工程
を含む、組成物の製造方法。
【請求項9】
前記過酸化物化合物は、式(3a)で表される構造、式(3b)で表される構造、式(3c)で表される構造、及び式(3d)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1種の構造を含む、請求項8に記載の組成物の製造方法。
【化3】
式(3a)中、R
11及びR
12はそれぞれ独立に、水素原子、1~3価の炭化水素基、1価の電子吸引性基、及び1価の電子供与性基からなる群から選択されるいずれか1種であり、式(3b)中、R
13は水素原子、1~3価の炭化水素基、1価の電子吸引性基、及び1価の電子供与性基からなる群から選択されるいずれか1種であり、R
14は1~3価の炭化水素基、1価の電子吸引性基、1価の電子供与性基飽和、並びにアリール基及びその誘導体からなる群から選択されるいずれか1種であり、式(3c)中、R
15及びR
16はそれぞれ独立に、水素原子、1~3価の炭化水素基、1価の電子供与性基飽和、並びにアリール基及びその誘導体からなる群から選択されるいずれか1種であり、式(3d)中、R
17及び R
18はそれぞれ独立に、水素原子、1~3価の炭化水素基、並びにアリール基及びその誘導体からなる群から選択されるいずれか1種である。
【請求項10】
前記過酸化物化合物を前記ビニル系化合物の総量100質量部に対して0.0001~10質量部使用する、請求項8に記載の組成物の製造方法。
【請求項11】
前記過酸化物化合物の1時間半減期温度が0~150℃である、請求項10に記載の組成物の製造方法。
【請求項12】
前記重合工程において、前記過酸化物化合物の1時間半減期温度で前記ビニル系化合物を重合させる、請求項8に記載の組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子化合物を含む組成物は、塗料、接着剤、粘着剤、相溶化剤、分散剤等に使用されている。近年の環境に対する配慮から、前述した用途に使用する際の揮発性有機化合物(VOC)の使用量を低減することが求められている。VOCは樹脂を塗布するための溶媒として用いられるため、取扱性の観点から溶液粘度を低くすることができればVOCを低減することが可能となる。
組成物の粘度を低くする方法として、高分子化合物に分岐を導入する方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、多価メルカプタンとビニル系化合物とをマイケル付加させてなる有機スルフィド化合物を連鎖移動剤として用いて、ビニル系モノマーをラジカル重合した高分子化合物が開示されている。
【0004】
特許文献2には、多官能チオール化合物と、チオール基と反応する反応性基を有する化合物とを所定の比率の範囲で反応させてチオール基を有する連鎖移動剤を得て、当該連鎖移動時存在下でビニル系化合物をラジカル重合した高分子化合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-064252号公報
【特許文献2】国際公開第2020/203837号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に高分子化合物を低粘度化させる手法として、低分子量化させたり分岐を導入したりすることが知られている。しかし、低分子量かつ分岐を導入した高分子化合物は、低粘度ではあるものの、機械特性が低下する。
特許文献1及び特許文献2には高分子化合物に分岐を導入することで低粘度化する方法が開示されているが、生成物は低分子量の直鎖ポリマーと分岐ポリマーの混合物であり、分岐ポリマーの高分子量化及び分岐度には改善の余地があった。
【0007】
本発明は、直鎖低分子量ポリマーの割合に対して分岐ポリマーの含有量が多く、平均分岐度が多い組成物及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] 複数のポリマー鎖が2価以上のチオエーテル構造により連結された高分子化合物(X)と、エーテル結合、エステル結合及び炭素-炭素結合からなる群から選択される少なくとも一つの結合を末端化学構造として有する高分子化合物(Y)とを含む組成物。
[2] 光散乱ゲル浸透クロマトグラフィー法で分岐度を求めた際に、慣性半径から求めた質量平均アーム数が2以上であり、かつ、固有粘度から求めた質量平均アーム数が2以上である、[1]に記載の組成物。
[3] 前記組成物の相対質量平均分子量をM
waとし、前記高分子化合物(X)のチオエーテル構造部分を切断した際に得られるポリマーの相対質量平均分子量をM
wbとするとき、M
wa/M
wb≧2.0である、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4] 前記高分子化合物(X)が前記2価以上のチオエーテル構造を1分子あたり1~300個有する、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5] 前記2価以上のチオエーテル構造が式(1)で表される構造を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
【化1】
式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、1価の炭化水素基、ヒドロキシ基又は1価の電子吸引性基であり、R
3は、酸素原子、2価の炭化水素基又は2価の電子吸引性基である。*は結合点を表す。
[6] 前記高分子化合物(Y)を前記組成物の総質量の0.1~50質量%含む、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7] 前記高分子化合物(Y)が、式(2a)で表される構造、式(2b)で表される構造、及び式(2c)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1種の構造を前記末端化学構造として有する、[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
【化2】
式(2a)中、R
4、R
5、及びR
6はそれぞれ独立に、水素原子、1価の炭化水素基、ヒドロキシ基、1価の電子吸引性基、及び1価の電子供与性基からなる群から選択されるいずれか1種であり、式(2b)中、R
7は飽和炭化水素基、アリール基、及びこれらの誘導体からなる群から選択されるいずれか1種であり、式(2c)中、R
8、R
9、及びR
10はそれぞれ独立に、水素原子、1価の炭化水素基、ヒドロキシ基、1価の電子吸引性基、及び1価の電子供与性基からなる群から選択されるいずれか1種である。
[8] 多官能チオール化合物及び過酸化物化合物の存在下でビニル系化合物を重合させる重合工程
を含む、組成物の製造方法。
[9] 前記過酸化物化合物は、式(3a)で表される構造、式(3b)で表される構造、式(3c)で表される構造、及び式(3d)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1種の構造を含む、[8]に記載の組成物の製造方法。
【化3】
式(3a)中、R
11及びR
12はそれぞれ独立に、水素原子、1~3価の炭化水素基、1価の電子吸引性基、及び1価の電子供与性基からなる群から選択されるいずれか1種であり、式(3b)中、R
13は水素原子、1~3価の炭化水素基、1価の電子吸引性基、及び1価の電子供与性基からなる群から選択されるいずれか1種であり、R
14は1~3価の炭化水素基、1価の電子吸引性基、1価の電子供与性基飽和、並びにアリール基及びその誘導体からなる群から選択されるいずれか1種であり、式(3c)中、R
15及びR
16はそれぞれ独立に、水素原子、1~3価の炭化水素基、1価の電子供与性基飽和、並びにアリール基及びその誘導体からなる群から選択されるいずれか1種であり、式(3d)中、R
17及び R
18はそれぞれ独立に、水素原子、1~3価の炭化水素基、並びにアリール基及びその誘導体からなる群から選択されるいずれか1種である。
[10] 前記過酸化物化合物を前記ビニル系化合物の総量100質量部に対して0.0001~10質量部使用する、[8]又は[9]に記載の組成物の製造方法。
[11] 前記過酸化物化合物の1時間半減期温度が0~150℃である、[8]~[10]のいずれかに記載の組成物の製造方法。
[12] 前記重合工程において、前記過酸化物化合物の1時間半減期温度で前記ビニル系化合物を重合させる、[8]~[11]のいずれかに記載の組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、直鎖低分子量ポリマーの割合に対して分岐ポリマーの含有量が多く、平均分岐度が多い組成物及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明は後述する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変形が可能である。
【0011】
本明細書及び特許請求の範囲において、「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
本明細書及び特許請求の範囲において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートを意味する。
本明細書及び特許請求の範囲において、「末端化学構造」は、モノマー単位が連なってできるポリマーの末端部分に化学結合により導入される構造を意味する。
【0012】
[組成物及びその製造方法]
本発明の組成物は、複数のポリマー鎖が2価以上のチオエーテル構造により連結された高分子化合物(X)と、エーテル結合、エステル結合及び炭素-炭素結合からなる群から選択される少なくとも一つの結合を末端化学構造として有する高分子化合物(Y)とを含む組成物である。
【0013】
<組成物の相対質量平均分子量>
本発明の組成物の相対質量平均分子量(relative mass-average molecular weight;以下、単に「相対Mw」とも記す。)の下限値は、特に限定されないが、1000以上が好ましく、5000以上がより好ましく、20000以上がさらに好ましく、60000以上がいっそう好ましい。
本発明の組成物の相対Mwの上限値は、特に限定されないが、2000000以下が好ましく、1800000以下がより好ましく、1500000以下がさらに好ましく、1200000以下がいっそう好ましく、800000以下がよりいっそう好ましく、500000以下が特に好ましい。
本発明の組成物の相対Mwの範囲は、特に限定されないが、1000~2000000が好ましく、5000~1800000がより好ましく、20000~1500000がさらに好ましく、60000~1200000がいっそう好ましく、60000~800000がよりいっそう好ましく、60000~500000が特に好ましい。
【0014】
なお、本発明の組成物の相対Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の測定条件で測定されるポリメチルメタクリレート換算値である。
(相対Mwの測定条件)
装置:HLC-8220(東ソー社製)
カラム:TSK GUARD COLUMN SUPER H-H(4.6×35mm、東ソー社製)と2本のTSK-GEL SUPER HM-H(6.0×150mm、東ソー社製)を直列に接続したもの
検出器:示差屈折率(RI)検出器
カラム及び検出器温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.6mL/分
試料濃度:2mg/mL(テトラヒドロフラン溶液)
標準物質:ポリメチルメタクリレート(Polymer Laboratories社製;Mp(ピーク分子量)=141,500、55,600、11,100、1,590)
【0015】
<組成物の絶対質量平均分子量>
本発明の組成物の絶対質量平均分子量(absolute mass-average molecular weight;以下、単に「絶対Mw」とも記す。)の下限値は、特に限定されないが、1250以上が好ましく、1500以上がより好ましく、5000以上がさらに好ましく、10000以上がいっそう好ましく、20000以上がよりいっそう好ましく、50000以上が特に好ましい。
本発明の組成物の絶対Mwの上限値は、特に限定されないが、2000000以下が好ましく、1800000以下がより好ましく、1500000以下がさらに好ましく、1200000以下がいっそう好ましく、800000以下がよりいっそう好ましく、500000以下が特に好ましい。
本発明の組成物の絶対Mwの範囲は、特に限定されないが、1250~2000000が好ましく、1500~1800000がより好ましく、5000~1500000がさらに好ましく、10000~1200000がいっそう好ましく、50000~800000がよりいっそう好ましく、50000~500000が特に好ましい。
【0016】
なお、組成物の絶対Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)と光散乱検出器とを用いて以下の測定条件で測定される分子量である。
(絶対Mwの測定条件)
装置:汎用HPLC Prominence(島津製作所社製)
カラム:ガードカラム(昭和電工社製)1本と分析カラム(昭和電工社製)2本を直列に接続したもの
検出器:多角度光散乱検出器(((MA)LS)DAWN HELEOS II(Wyatt社製)
カラム及び検出器温度:35℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
試料濃度:2mg/mL(テトラヒドロフラン溶液)
解析ソフトウェア:OmniSEC(Malvern Panalytical社製、装置付属品)
【0017】
<組成物の絶対Mw/相対Mw>
組成物の絶対Mwを相対Mwで割って得られる値[絶対Mw/相対Mw]は、特に限定されないが、1~20が好ましく、2~15がより好ましく、3~10がさらに好ましい。
【0018】
<高分子化合物(X)>
本発明の組成物は、複数のポリマー鎖が2価以上のチオエーテル構造により連結された高分子化合物(X)を含む。
【0019】
前記高分子化合物(X)を連結基部分で化学的に切断した際に得られる本発明の組成物の相対質量平均分子量をMwbとする。
Mwbの下限値は、特に限定されないが、1000以上が好ましく、2000以上がより好ましく、5000以上がさらに好ましく、10000以上がいっそう好ましい。
Mwbの上限値は、特に限定されないが、1000000以下が好ましく、500000以下がより好ましく、250000以下がさらに好ましく、100000以下がいっそう好ましい。
Mwbの範囲は、特に限定されないが、1000~1000000が好ましく、2000~500000がより好ましく、5000~25000がさらに好ましく、10000~100000がいっそう好ましい。
【0020】
なお、本発明の組成物の相対質量平均分子量Mwbは、高分子化合物(X)を連結基部分で化学的に切断した後、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の測定条件で測定されるポリメチルメタクリレート換算値である。
(相対Mwの測定条件)
装置:HLC-8220(東ソー社製)
カラム:TSK GUARD COLUMN SUPER H-H(4.6×35mm、東ソー社製)と2本のTSK-GEL SUPER HM-H(6.0×150mm、東ソー社製)を直列に接続したもの
検出器:示差屈折率(RI)検出器
カラム及び検出器温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.6mL/分
試料濃度:2mg/mL(テトラヒドロフラン溶液)
標準物質:ポリメチルメタクリレート(Polymer Laboratories社製;Mp(ピーク分子量)=141,500、55,600、11,100、1,590)
【0021】
高分子化合物(X)は、前記2価以上のチオエーテル構造を1分子あたり、1~300個有することが好ましく、10~200個有することがより好ましく、30~100個有することがさらに好ましい。
【0022】
前記2価以上のチオエーテル構造は、耐熱性向上の点から、式(1)で表される構造を含むことが好ましい。
【0023】
【0024】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、1価の炭化水素基、ヒドロキシ基又は1価の電子吸引性基であり、R3は、酸素原子、2価の炭化水素基又は2価の電子吸引性基である。*は結合点を表す。
【0025】
前記1価の炭化水素基は、特に限定されないが、アルキル基が好ましく、炭素数6以下のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましく、メチル基がいっそう好ましい。
【0026】
前記1価の電子吸引性基は、特に限定されないが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、トリフルオロメチル基等のハロゲン化炭化水素基、カルボキシル基(-COOH)、メトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基(-COOR)、フェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基(-COOR)、アセチル基等のアシル基(-COR)、シアノ基(-CN)、アリール基又はその置換体、ニトロ基(-NO2)、スルホ基(-SO3H)、アルコキシスルホニル基(-SO3R)、アルカンスルホニル基(-SO2R)、アルカンスルフィニル基(-SOR)、カルバモイル基(-CONH2)、又はアルキルカルバモイル基(-CONHR)が好ましい。
【0027】
R1は、水素原子であることが好ましい。また、R2は、水素原子、メチル基又はヒドロキシ基であることが好ましい。
【0028】
前記2価の炭化水素基は、特に限定されないが、アルキレン基であることが好ましく、炭素数6以下のアルキレン基であることがより好ましく、メチレン基又はエチレン基であることがさらに好ましく、メチレン基であることがいっそう好ましい。
【0029】
前記2価の電子吸引性基は、特に限定されないが、カルボニル基(-CO-)、エステル基(-COO-)、スルホ基(-SO3-)、スルホニル基(-SO2-)、スルフィニル基(-SO-)、アミド基(-CONH-)、又はアリール基若しくはその置換体等であることが好ましい。
【0030】
R3は、メチレン基又はエステル基であることが好ましい。
【0031】
式(1)において、R1が水素原子であり、R2が水素原子、メチル基又はヒドロキシ基であり、R3がメチレン基又はエステル基である組み合わせが好ましく、R1が水素原子であり、R2がヒドロキシ基であり、R3がメチレン基である組み合わせ、又は、R1が水素原子であり、R2が水素原子若しくはメチル基であり、R3がエステル基である組み合わせがより好ましい。
【0032】
<高分子化合物(Y)>
本発明の組成物は、エーテル結合、エステル結合及び炭素-炭素結合からなる群から選択される少なくとも一つの結合を末端化学構造として有する高分子化合物(Y)を含む。
【0033】
前記高分子化合物(Y)は、式(2a)で表される構造、式(2b)で表される構造、及び式(2c)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1種の構造を前記末端化学構造として有することが好ましい。
【0034】
【0035】
式(2a)中、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立に、水素原子、1価の炭化水素基、ヒドロキシ基、1価の電子吸引性基、及び1価の電子供与性基からなる群から選択されるいずれか1種である。“Polymer”は高分子化合物(Y)の前記末端化学構造以外の部分を表す。
前記1価の炭化水素基は、特に限定されないが、アルキル基が好ましく、炭素数6以下のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましく、メチル基がいっそう好ましい。
前記1価の電子吸引性基は、特に限定されないが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、トリフルオロメチル基等のハロゲン化炭化水素基、カルボキシル基(-COOH)、メトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基(-COOR)、フェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基(-COOR)、アセチル基等のアシル基(-COR)、シアノ基(-CN)、アリール基又はその置換体、ニトロ基(-NO2)、スルホ基(-SO3H)、アルコキシスルホニル基(-SO3R)、アルカンスルホニル基(-SO2R)、アルカンスルフィニル基(-SOR)、カルバモイル基(-CONH2)、又はアルキルカルバモイル基(-CONHR)が好ましい。
前記1価の電子供与性基は、特に限定されないが、アミノ基(-NH2)、アルキルアミノ基(-NR2)等のアミン類、ヒドロキシ基(-OH)、アルコキシ基(-OR)、アルキル基、又はこれらの電子供与性基が芳香環に置換されたフェニル化合物誘導体などが好ましい。
R4、R5、及びR6は、それぞれ独立に、1価の電子吸引性基であることが好ましい。
【0036】
式(2b)中、R7は飽和炭化水素基、アリール基、及びこれらの誘導体からなる群から選択されるいずれか1種である。“Polymer”は高分子化合物(Y)の前記末端化学構造以外の部分を表す。
前記飽和炭化水素基は、特に限定されないが、アルキル基であることが好ましく、2級アルキル基又は3級アルキル基であることがより好ましい。前記アルキル基は、1つ以上の水素原子がアミノ基、ヒドロキシ基等の電子供与性基で置換されていてもよく、フェニル基等の電子吸引性基で置換されていてもよい。
前記アリール基は、特に限定されないが、フェニル基又はナフチル基が好ましい。
【0037】
式(2c)中、R8、R9、及びR10はそれぞれ独立に、水素原子、1価の炭化水素基、ヒドロキシ基、1価の電子吸引性基、及び1価の電子供与性基からなる群から選択されるいずれか1種である。“Polymer”は高分子化合物(Y)の前記末端化学構造以外の部分を表す。
前記1価の炭化水素基は、特に限定されないが、アルキル基が好ましく、炭素数6以下のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましく、メチル基がいっそう好ましい。
前記1価の電子吸引性基は、特に限定されないが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、トリフルオロメチル基等のハロゲン化炭化水素基、カルボキシル基(-COOH)、メトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基(-COOR)、フェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基(-COOR)、アセチル基等のアシル基(-COR)、シアノ基(-CN)、アリール基又はその置換体、ニトロ基(-NO2)、スルホ基(-SO3H)、アルコキシスルホニル基(-SO3R)、アルカンスルホニル基(-SO2R)、アルカンスルフィニル基(-SOR)、カルバモイル基(-CONH2)、又はアルキルカルバモイル基(-CONHR)が好ましい。
前記1価の電子供与性基は、特に限定されないが、アミノ基(-NH2)、アルキルアミノ基(-NR2)等のアミン類、ヒドロキシ基(-OH)、アルコキシ基(-OR)、アルキル基、又はこれらの電子供与性基が芳香環に置換されたフェニル化合物誘導体などが好ましい。
R8、R9、及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、1価の電子供与性基、及びフェニル基からなる群から選択されるいずれか1種であることが好ましい。
【0038】
本発明の組成物中の高分子化合物(Y)の含有量は、特に限定されないが、本発明の組成物の総質量の0.1~50質量%が好ましく、0.5~15質量%がより好ましく、1~10質量%がさらに好ましい。
【0039】
<組成物の分岐度>
本発明の組成物の分岐度は、例えば以下の式を満たすαで与えられる。
α=Mwa/Mwb
ここで、Mwaは、本発明の組成物の相対質量平均分子量、すなわち相対Mwである。また、Mwbは、高分子化合物(X)を連結基部分で化学的に切断したときの本発明の組成物の相対質量平均分子量である。Mwaすなわち相対Mwの測定方法及びMwbの測定方法は、それぞれ上述したとおりである。
分岐度αは、特に限定されないが、1以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましく、2以上であることがいっそう好ましい。
分岐度αの上限値は、特に限定されないが、通常10以下である。
【0040】
本発明の組成物の分岐度(質量平均アーム数)は、また、例えば以下の式を満たすfGで与えられる。
G=[η]B/[η]L=(3fG―2)/fG
2
ここで、[η]Bは上述した光散乱検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した際に求まる分岐ポリマーの固有粘度であり、[η]Lは上述した光散乱検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した際に求まる比較モデル直鎖ポリマーの固有粘度である。
分岐度(質量平均アーム数)fGは、特に限定されないが、1以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2以上であることがさらに好ましく、2.5以上であることがいっそう好ましい。
分岐度fGの上限値は、特に限定されないが、通常10以下である。
【0041】
本発明の組成物の分岐度(質量平均アーム数)は、また、例えば以下の式を満たすfgで与えられる。
g=RgB
2/RgL
2=(3fg―2)/fg
2
ここで、RgBは上述した光散乱検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した際に求まる分岐ポリマーの慣性半径であり、RgLは上述した光散乱検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した際に求まる比較モデル直鎖ポリマーの慣性半径である。
分岐度(質量平均アーム数)fGは、特に限定されないが、1以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2以上であることがさらに好ましく、2.5以上であることがいっそう好ましい。
分岐度fgの上限値は、特に限定されないが、通常10以下である。
【0042】
<組成物の製造方法>
本発明の組成物は、例えば、複数のチオール基を有する多官能チオール化合物(A)及び過酸化物化合物の存在下でビニル系化合物を重合することにより、得られる。
すなわち、多官能チオール化合物(A)を用いてビニル系化合物のラジカル重合を行い、多官能チオール化合物(A)が有する複数のチオール基の一部がポリマー鎖の成長の起点となることでチオール基が前記ポリマー鎖と結合し、本発明の組成物を製造できる。
【0043】
多官能チオール化合物(A)は、複数のチオール基を有する化合物である。また、多官能チオール化合物(A)は、異なる複数の化合物の混合物であってもよく、多官能チオール化合物(A)としては、脂肪族ポリチオール化合物又は芳香族ポリチオール化合物が挙げられる。
【0044】
前記脂肪酸ポリチオール化合物としては、チオール基以外に硫黄原子を有しない脂肪族ポリチオール化合物、又はチオール基以外に硫黄原子を有する脂肪族ポリチオール化合物が挙げられる。
【0045】
前記チオール基以外に硫黄原子を有しない脂肪族ポリチオール化合物としては、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,1-プロパンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール、2,2-プロパンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,2,3-プロパントリチオールなどに例示されるアルカンジチオールや(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパンビス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパンビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパンビス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)(ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレートともいう。)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2-メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、並びにジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトブチレート)などの単価・多価アルコールのメルカプトプロピオ―ル酸及びメルカプトグリコール酸が例示される。
【0046】
前記チオール基以外に硫黄原子を有する脂肪族ポリチオール化合物としては、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)などの分子内にスルフィド結合を有する化合物やビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、4-ジチアン、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)及びビス(メルカプトプロピル)ジスルフィドなどの分子内にジスルフィド結合を有する化合物が例示される。
【0047】
前記芳香族ポリチオール化合物としては、チオール基以外に硫黄原子を有しない芳香族ポリチオール化合物、又はチオール基以外に硫黄原子を有する芳香族ポリチオール化合物が挙げられる。
【0048】
前記チオール基以外に硫黄原子を有しない芳香族ポリチオール化合物としては、1,2-ジメルカプトベンゼンなどのベンゼンチオール化合物誘導体、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼンなどのベンゼンアルキルチオール化合物誘導体などが例示される。
【0049】
前記チオール基以外に硫黄原子を有する芳香族ポリチオール化合物としては、1,2-ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、及び1,3,5-トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼンが例示される。
【0050】
多官能チオール化合物(A)は、脂肪酸ポリチオール化合物が好ましく、連鎖移動による連結基の分解を抑制する点から、ジスルフィド結合を有しない脂肪族ポリチオール化合物がより好ましく、チオール基以外に硫黄原子を有しない脂肪族ポリチオール化合物がさらに好ましい。
【0051】
多官能チオール化合物(A)の1分子あたりのチオール基の平均数の下限値は、1.5超が好ましく、2以上がより好ましく、2.5以上がさらに好ましい。
また、多官能チオール化合物(A)の1分子あたりのチオール基の平均数の上限値は、500以下が好ましく、400以下がより好ましく、300以下がさらに好ましい。
多官能チオール化合物(A)の1分子あたりのチオール基の平均数の範囲は、1.5超500以下が好ましく、2~400がより好ましく、2.5~300がさらに好ましい。
【0052】
多官能チオール化合物(A)としては、分子内にエステル結合を有する多官能チオール化合物(以下「多官能チオール化合物(A1)」とも記す。)が好ましい。
多官能チオール化合物(A1)としては、分子内にエステル結合を有する脂肪酸ポリチオール化合物が好ましく、分子内にエステル結合を有し、ジスルフィド結合を有しない脂肪族ポリチオール化合物がより好ましく、分子内にエステル結合を有し、チオール基以外に硫黄原子を有しない脂肪族ポリチオール化合物がさらに好ましく、分子内にエステル結合を有し、チオール基がエステル結合のβ位に存在する脂肪族ポリチオール化合物がいっそう好ましい。
【0053】
多官能チオール化合物(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
多官能チオール化合物(A)としては、国際公開第2020/203837号に記載されているように、複数のチオール基を有する多官能チオール化合物と反応性基を有する化合物とをあらかじめ反応させて得られる多量化連鎖移動剤を用いてもよい。用いる連鎖移動剤の1分子当たりのチオール基数が増えるほど、分岐度の多い組成物を得ることが出来る。
【0055】
前記反応性基を有する化合物としては、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、及びポリエチレングリコールジアクリレート等の多価アルコールのアクリレート変性化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート及びトルエンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物;1,5-ヘキサジエンジエポキシド及び1,7-オクタジエンジエポキシド等のアルキルジエポキシド;並びに、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等の多価アルコールのエポキシド変性化合物などが挙げられる。
【0056】
多官能チオール化合物(A)の分子量の下限値は、特に限定されないが、80以上が好ましく、300以上がより好ましい。多官能チオール化合物(A)の分子量が前記下限値以上であると、臭気による取扱いの困難がより解消されやすい。
多官能チオール化合物(A)の分子量の上限値は、特に限定されないが、100000以下が好ましく、50000以下がより好ましい多官能チオール化合物(A)の分子量が前記上限値以下であると、粘度上昇による取扱いの困難がより解消されやすい。
多官能チオール化合物(A)の分子量の範囲は、80~100000が好ましく、300~50000がより好ましい。
なお、多官能チオール化合物(A)の分子量は、化学構造に基づいて理論的に算出される分子量である。
【0057】
本組成物の合成に用いるラジカル開始剤は分子内にぺルオキシド結合を少なくとも1つ有する過酸化物化合物である過酸化物系開始剤であることが好ましい。
過酸化物系開始剤は、アゾ系開始剤に比べて水素引き抜き能が高いため、開始ラジカルが直接多官能チオール化合物(A)のチオール基の水素を引き抜く反応が起こりやすい。これにより本重合反応におけるチオール基の反応率が上がり、本発明の組成物中の分岐高分子化合物の割合を増やすことができる。
【0058】
前記過酸化物化合物は、アルキルパーオキシエステル構造、パーオキシカーボネート構造、ジアルキルパーオキサイド構造、パーオキシケタ―ル構造、パーオキシジカーボネート構造、アルキルハイドロパーオキサイド構造、又はジアシルパーオキサイド構造を有することが好ましい。
【0059】
前記過酸化物化合物は、式(3a)で表される構造、式(3b)で表される構造、式(3c)で表される構造、及び式(3d)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1種の構造を含むことが好ましい。
【0060】
【0061】
式(3a)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子、1~3価の炭化水素基、1価の電子吸引性基、及び1価の電子供与性基からなる群から選択されるいずれか1種であり、式(3b)中、R13は水素原子、1~3価の炭化水素基、1価の電子吸引性基、及び1価の電子供与性基からなる群から選択されるいずれか1種であり、R14は1~3価の炭化水素基、1価の電子吸引性基、1価の電子供与性基飽和、並びにアリール基及びその誘導体からなる群から選択されるいずれか1種であり、式(3c)中、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、1~3価の炭化水素基、1価の電子供与性基飽和、並びにアリール基及びその誘導体からなる群から選択されるいずれか1種であり、式(3d)中、R17及び R18はそれぞれ独立に、水素原子、1~3価の炭化水素基、並びにアリール基及びその誘導体からなる群から選択されるいずれか1種である。
【0062】
前記過酸化物化合物がアルキルパーオキシエステル構造を有する場合、前記過酸化物化合物として、3-ヒドロキシ-1,1―ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α-クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソノナノエート、t-ブチルパーオキアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-アミルパーオキシネオデカノエート、t-アミルパーオキシピバレート、t-アミルパーオキシイソブチレート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシイソノナノエート、t-アミルパーオキシアセテート、及びt-アミルパーオキシベンゾエートが例示される。
【0063】
前記過酸化物化合物がパーオキシカーボネート構造を有する場合、前記過酸化物化合物として、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルへキシルカーボネート、tert-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、及びtert-アミルパーオキシ-2-エチルへキシルカーボネートが例示される。
【0064】
前記過酸化物化合物がジアルキルパーオキサイド構造を有する場合、前記過酸化物化合物として、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、及びジ-t-アミルパーオキサイドが例示される。
【0065】
前記過酸化物化合物がパーオキシケタ―ル構造を有する場合、前記過酸化物化合物として、1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、n-ブチル4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレート、1,1-ジ(tert-アミルパーオキシ)シクロヘキサンなどが例示される。
【0066】
前記過酸化物化合物がパーオキシジカーボネート構造を有する場合、前記過酸化物化合物として、ジ(2-エチルへキシル)パーオキシジカーボネート及びジ(sec-ブチル)パーオキシジカーボネートが例示される。
【0067】
前記過酸化物化合物がアルキルハイドロパーオキサイド構造を有する場合、前記過酸化物化合物として、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、及びtert-アミルハイドロパーオキサイドが例示される。
【0068】
前記過酸化物化合物がジアシルパーオキサイド構造を有する場合、前記過酸化物化合物として、ジイソノナノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、及びジベンゾイルパーオキサイドが例示される。
【0069】
前記過酸化物化合物の構造は、特に限定されないが、水素引抜き能が高い構造が好ましい。前記水素引抜き能が高い構造としては、ブチルパーオキシド構造が好ましい。
【0070】
前記過酸化物化合物の1時間半減期温度は、特に限定されないが、0~150℃が好ましく、10~120℃がより好ましく、20~100℃がさらに好ましく、30~95℃がいっそう好ましい。
前記過酸化物化合物の分解温度が前記1時間半減期温度の下限値よりも低い場合、ラジカル開始剤としての取り扱い性が悪く、室温で秤量及び仕込みを行うことが困難になる。前記過酸化物化合物の分解温度が前記1時間半減期の上限値よりも高い場合、高温での反応を行う必要があり、例えば溶液重合法で高分子化合物を得る場合は使用可能な溶媒が限られてしまう。また懸濁重合法により高分子化合物を得る場合においても分散媒として水を用いる必要があるので、高温で分解が始まる過酸化物化合物は適さない。
【0071】
本発明の組成物に含まれる高分子化合物(X)及び高分子化合物(Y)は、ラジカル重合性モノマー(以下「ラジカル重合性モノマー(D)」とも記す。)に由来する構成単位を有する。
ラジカル重合性モノマー(D)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、モノ(メタ)アクリレート系化合物、ポリ(メタ)アクリレート系化合物、モノビニル系化合物及びポリビニル系化合物が挙げられる。
ラジカル重合性モノマー(D)に由来する構成単位は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0072】
ラジカル重合性モノマー(D)のラジカル重合の際の多官能チオール化合物(A)の使用量は、ラジカル重合性モノマー(D)の総量100質量部に対して、0.2~20質量部が好ましく、0.6~15質量部がより好ましい。
【0073】
前記ラジカル重合の形態としては、例えば、溶液重合、塊状重合、懸濁重合又は乳化重合が挙げられる。
【0074】
前記ラジカル重合に用いる重合溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素系溶媒(トルエン、エチルベンゼン、キシレン等)、脂肪族炭化水素系溶媒(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等)、エステル系溶媒(酢酸ブチル等)、及びアルコール系溶媒(メタノール、エタノール等)が挙げられる。
前記重合溶媒は、1種でもよく、2種以上でもよい。
前記重合溶媒の使用量は、ラジカル重合性モノマー(D)の総量100質量部に対して、50~500質量部が好ましく、100~300質量部がより好ましい。
【0075】
前記ラジカル重合に用いるラジカル重合開始剤としては、過酸化物化合物を用いることが好ましい。前記ラジカル重合開始剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
前記ラジカル重合開始剤の使用量は、ラジカル重合性モノマー(D)の総量100質量部に対して、0.0001~10質量部が好ましく、0.001~1質量部がより好ましい。
【0076】
前記ラジカル重合の重合温度は、適宜設定でき、例えば、前記ラジカル重合開始剤の使用温度範囲として好適である点で、-100~250℃が好ましい。
【0077】
前記ラジカル重合の重合時間は、適宜設定でき、例えば、0.5~48時間とすることができる。
【0078】
以上説明したように、本発明の組成物は、複数のポリマー鎖が2価以上のチオエーテル基で連結された分岐鎖状の高分子化合物(X)と、過酸化物開始剤由来の末端化学構造であるエーテル結合及びエステル結合又は炭素-炭素結合の少なくとも一つの結合を有する直鎖状の高分子化合物(Y)とを含む組成物である。
さらに前記組成物は光散乱GPC法を用いて分岐度を求めた際に得られる平均アーム数が2.0以上であり、また前記組成物の相対質量平均分子量をMwaとし、チオエーテル構造部分を切断した際に得られる各アームポリマー鎖の相対質量平均分子量をMwbとした際に、Mwa/Mwb≧2.0であることが好ましい。
さらに、本発明の組成物は、熱可塑性樹脂に添加すると溶液の高粘度化を抑制する効果を有する。このため、本組成物を塗料等への添加剤として用いてもよい。
【実施例0079】
以下では実施例によって本発明をより具体的に説明する。しかし、本発明は後述する実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変形が可能である。
【0080】
[原料]
実施例及び比較例で使用した原料及びその略号を以下に示す。
【0081】
<多官能チオール化合物(A)>
PEMP:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(東京化成工業社製)
PEMA:ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)(東京化成工業社製)
DPMP:ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート(SC有機化学社製)
【0082】
C6DA:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(三菱ケミカル社製)
M260:ポリエチレングリコールジアクリレート(アロニックス(登録商標)M260、東亜合成社製)
【0083】
<ラジカル重合性モノマー(D)>
MMA:メチルメタクリレート(アクリルエステルM,三菱ケミカル社製)
【0084】
<溶媒>
DMF:ジメチルホルムアミド(富士フィルム和光純薬社製)
MeOH:メタノール(富士フィルム和光純薬社製)
【0085】
[測定方法及び評価方法]
<相対Mw、絶対Mw、絶対Mw/相対Mw>
(相対Mw)
高分子化合物の相対Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定した。以下に測定条件を示す。
装置:HLC-8220(東ソー社製)
カラム:TSK GUARD COLUMN SUPER H-H(4.6×35mm、東ソー社製)と2本のTSK-GEL SUPER HM-H(6.0×150mm、東ソー社製)を直列に接続したもの
検出器:示差屈折率(RI)検出器
カラム及び検出器温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.6mL/分
試料濃度:2mg/mL(テトラヒドロフラン溶液)
標準物質:ポリメチルメタクリレート(Polymer Laboratories社製;Mp(ピーク分子量)=141,500、55,600、11,100、1,590)
【0086】
(絶対Mw)
高分子化合物の絶対Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定した。測定条件を以下に示す。
装置:汎用HPLC Prominence(島津製作所社製)
カラム:ガードカラム(昭和電工社製)1本と分析カラム(昭和電工社製)2本を直列に接続したもの
検出器:多角度光散乱検出器(((MA)LS)DAWN HELEOS II(Wyatt社製)
カラム及び検出器温度:35℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
試料濃度:2mg/mL(テトラヒドロフラン溶液)
解析ソフトウェア:OmniSEC(Malvern Panalytical社製、装置付属品)
【0087】
(絶対Mw/相対Mw)
測定した絶対Mwを測定した相対Mwで除して絶対Mw/相対Mwを算出した。
【0088】
<分岐度>
組成物の分岐度は以下の3つの方法により算出した。
(1)1つ目の方法として再沈殿後の組成物に対して、公知のエステル交換法、例えば金属アルコキシドなどのルイス酸とアルコールを添加してエステル交換を行う方法を適用した。この方法により星形高分子化合物の分解を行うことができる。分岐度はエステル交換反応前の組成物のMwa(相対質量平均分子量)とエステル交換反応後の高分子化合物のMwbを用いて以下の式で求めた。分岐度=Mwa(反応前の相対質量平均分子量)/Mwb(反応後の相対質量平均分子量)
【0089】
(2)2つ目の方法として本発明の組成物を、光散乱検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した際に求まる組成物固有粘度[η]Bと前記組成物と同じ組成を有する直鎖ポリマーの固有粘度[η]Lの比率であるG=[η]B/[η]Lの値に対して、分岐度fGを以下の式で求めた。
G=(3fG―2)/fG
2
【0090】
(3)3つ目の方法として本発明の組成物を、光散乱検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した際に求まる分岐ポリマーの慣性半径RgBと比較モデル直鎖ポリマーの慣性半径RgLの比率であるg=RgB
2/RgL
2の値に対して、分岐度fgを以下の式で求めた。
g=RgB
2/RgL
2=(3fg―2)/fg
2
【0091】
[製造例1]
多官能チオール化合物であるPEMPの11.3gに、触媒として細かく砕いたTPPの0.1gを加え、均一になるまで撹拌しながら80℃に加熱して完全に溶解させた。得られた混合物に、二官能アクリレートC6DA3.49gを加え、PEMPとC6DAのモル比をPEMP:C6DA=1.5:1.0として、室温(25℃)で撹拌し、連鎖移動剤(A-1)を得た。
【0092】
[製造例2]
多官能チオール化合物としてPEMAの10gを用いたこと、二官能アクリレートとしてM260の10.8gを用いたこと以外は、製造例1と同様にして連鎖移動剤(A-2)を製造した。
【0093】
[製造例3]
多官能チオール化合物としてPEMAの10gを用いたこと以外は、製造例1と同様にして連鎖移動剤(A-3)を製造した。
【0094】
[実施例1]
撹拌装置及び窒素同入管を備えた50mLのシュレンク管に、ラジカル重合性モノマーとしてメチルメタクリレート(MMA)を100質量部、多官能チオール化合物(A)として製造例1で得た連鎖移動剤(A-1)をMMAの100質量部に対して3.44質量部、及び重合開始剤としてパーオクタOをラジカル重合性モノマー(D)に対して0.3mol%加え、さらに、溶媒としてDMFを加えた。ラジカル重合性モノマー、多官能チオール(A-1)、重合開始剤及び溶媒を上記シュレンク管中で混合し、固形分(ラジカル重合性モノマー、連鎖移動剤(A-1)及び重合開始剤)濃度が0.5質量%の混合液を調製した。調製した混合液を窒素雰囲気下で撹拌しながら、80℃に加熱した。混合液を5時間加熱撹拌した後、メタノール貧溶媒として再沈して組成物を得た。
得られた組成物の相対Mw、絶対Mw、絶対Mw/相対Mw、及び分岐度の測定結果を表1の該当欄に示す。
【0095】
[実施例2]
多官能チオール(A-1)の配合量をラジカル重合性モノマー(D)の100質量部に対して5.77質量部にしたこと以外は実施例1と同様にして組成物を得た。
得られた組成物の相対Mw、絶対Mw、絶対Mw/相対Mw、及び分岐度の測定結果を表1の該当欄に示す。
【0096】
[実施例3~4]
多官能チオール化合物(A)を製造例2で得た多官能チオール(A-2)に変更し、多官能チオール化合物(A)の配合量をラジカル重合性モノマー(D)の100質量部に対して4.94質量部(実施例3)、8.21質量部(実施例4)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして組成物を得た。
得られた組成物の相対Mw、絶対Mw、絶対Mw/相対Mw、及び分岐度の測定結果を表1の該当欄に示す。
【0097】
[実施例5~7]
多官能チオール化合物(A)を製造例2で得た多官能チオール(A-2)に変更し、多官能チオール化合物(A)の配合量をラジカル重合性モノマー(D)の100質量部に対して4.94質量部(実施例5)、8.21質量部(実施例6)、10質量部(実施例7)に変更し、開始剤としてルぺロックス10を用いたこと以外は実施例1と同様にして組成物を得た。
得られた組成物の相対Mw、絶対Mw、絶対Mw/相対Mw、及び分岐度の測定結果を表1の該当欄に示す。
【0098】
[実施例8~10]
多官能チオール化合物(A)を製造例2で得た多官能チオール(A-2)に変更し、多官能チオール化合物(A)の配合量をラジカル重合性モノマー(D)の100質量部に対して4.94質量部(実施例8)、8.21質量部(実施例9)、10質量部(実施例10)に変更し、開始剤としてルぺロックス11を用いたこと以外は実施例1と同様にして組成物を得た。
得られた組成物の相対Mw、絶対Mw、絶対Mw/相対Mw、及び分岐度の測定結果を表1又は表2の該当欄に示す。
【0099】
[実施例11]
多官能チオール化合物(A)を製造例3で得た多官能チオール(A-3)に変更し、多官能チオール化合物(A)の配合量をラジカル重合性モノマー(D)の100質量部に対して5.34質量部としたこと以外は実施例1と同様にして組成物を得た。
得られた組成物の相対Mw、絶対Mw、絶対Mw/相対Mw、及び分岐度の測定結果を表2の該当欄に示す。
【0100】
[実施例12]
多官能チオール化合物(A)を多官能チオール化合物であるDPMP(A-4)に変更し、多官能チオール化合物(A)の配合量をラジカル重合性モノマー(D)の100質量部に対して2.33質量部としたこと以外は実施例1と同様にして組成物を得た。
得られた組成物の相対Mw、絶対Mw、絶対Mw/相対Mw、及び分岐度の測定結果を表2の該当欄に示す。
【0101】
[比較例1]
ラジカル重合開始剤としてAIBNを用いたこと以外は実施例1と同様にして組成物を得た。 得られた組成物の相対Mw、絶対Mw、絶対Mw/相対Mw、及び分岐度の測定結果を表2の該当欄に示す。
【0102】
[比較例2]
多官能チオール化合物(A)を製造例2で得た多官能チオール(A-2)に変更し、多官能チオール化合物(A)の配合量をラジカル重合性モノマー(D)の100質量部に対して8.21質量部に変更したこと及びラジカル重合開始剤としてAIBNを用いたこと以外は実施例1と同様にして組成物を得た。
得られた組成物の相対Mw、絶対Mw、絶対Mw/相対Mw、及び分岐度の測定結果を表2の該当欄に示す。
【0103】
[比較例3]
多官能チオール(A)を製造例3で得た多官能チオール(A-3)に変更し、多官能チオール化合物(A)の配合量をラジカル重合性モノマー(D)の100質量部に対して5.34質量部に変更したこと及びラジカル重合開始剤としてAIBNを用いたこと以外は実施例1と同様にして組成物を得た。
得られた組成物の相対Mw、絶対Mw、絶対Mw/相対Mw、及び分岐度の測定結果を表2の該当欄に示す。
【0104】
[比較例4]
多官能チオール化合物(A)を多官能チオールであるDPMP(A-4)に変更し、多官能チオール化合物(A)の配合量をラジカル重合性モノマー(D)の100質量部に対して2.33質量部に変更したこと及びラジカル重合開始剤としてAIBNを用いたこと以外は実施例1と同様にして組成物を得た。
得られた組成物の相対Mw、絶対Mw、絶対Mw/相対Mw、及び分岐度の測定結果を表2の該当欄に示す。
【0105】
【0106】
【0107】
上述した実施例及び比較例から、以下のことがいえる。
比較例のようにアゾ系重合開始剤を重合開始剤に用いた場合、直鎖である低分子量ポリマーが多く生成しており、その結果分岐ポリマーである高分子量成分の生成割合が少なく、平均分岐度が少ない樹脂組成物が得られることが課題であった。
一方で実施例のように過酸化物系開始剤を重合開始剤に用いることで直鎖である低分子量成分の割合が減少し、分岐ポリマーである高分子量成分の含有量が増加した結果、平均分岐度が多い樹脂組成物が得られること示された。
また本発明の効果は、用いる多官能チオール連鎖移動剤の種類によらず、どの多官能チオール連鎖移動剤でも同様の効果が見られた。