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  • 特開-銀粉の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060408
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】銀粉の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 11/00 20060101AFI20240424BHJP
   C22B 3/22 20060101ALI20240424BHJP
   C22B 3/04 20060101ALI20240424BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20240424BHJP
   C22B 5/00 20060101ALI20240424BHJP
   C22B 3/24 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
C22B11/00 101
C22B3/22
C22B3/04
C22B3/44 101A
C22B5/00
C22B3/24
C22B3/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167760
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】永井 秀昌
(72)【発明者】
【氏名】栗本 広大
(72)【発明者】
【氏名】土岐 典久
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA01
4K001BA17
4K001BA21
4K001CA05
4K001DB03
4K001DB04
4K001DB17
4K001DB23
4K001DB35
4K001DB38
4K001HA10
(57)【要約】
【課題】銀粉の製造方法において、Te含有量の多い原料を処理する場合であっても、塩化銀析出工程から得られる塩化銀中のTe品位を効果的に低減することができる方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る銀粉の製造方法は、銀を含む精錬中間物を塩素浸出して得られる塩素浸出残渣を洗浄する残渣洗浄工程S1と、洗浄後スラリーを固液分離して得られる固形分から亜硫酸塩水溶液により銀を浸出させる浸出処理を行う銀浸出工程S2と、得られる浸出液を中和して塩化銀を析出させる塩化銀析出工程S3と、塩化銀を還元して銀粉末を生成する還元工程S5と、を有し、銀浸出工程S2では、酸性白土を含む吸着剤を添加することを特徴としている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀を含む精錬中間物を塩素浸出して得られる塩素浸出残渣を洗浄する残渣洗浄工程と、
洗浄後スラリーを固液分離して得られる固形分から亜硫酸塩水溶液により銀を浸出させる浸出処理を行う銀浸出工程と、
得られる浸出液を中和して塩化銀を析出させる塩化銀析出工程と、
前記塩化銀を還元して銀粉末を生成する還元工程と、を有し、
銀浸出工程では、酸性白土を含む吸着剤を添加する、
銀粉の製造方法。
【請求項2】
前記銀浸出工程では、前記吸着剤の添加量を、生成する浸出後スラリー中に対して25g/L以上の割合となるようにする、
請求項1に記載の銀粉の製造方法。
【請求項3】
前記銀浸出工程では、浸出処理により生成する濾液と残渣とを固液分離する際に、浸出後スラリーに対して前記酸性白土を含む吸着剤を添加する、
請求項1又は2に記載の銀粉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀粉の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銀は貴金属として貨幣や宝飾品に使用されるほか、他の金属に比べて電気伝導性、反射率、殺菌力が高い等の優れた物性を備えている。そのため、様々な工業製品に利用される重要な金属である。
【0003】
銀及び金、白金族元素等を回収する方法として、銅乾式製錬プラントにおいて電解精製操業の残渣として得られるアノードスライムを出発原料とする方法が知られている。アノードスライムには、金(Au)、銀(Ag)等の貴金属、セレン(Se)、テルル(Te)等のVI族元素、ヒ素(As)等のV族元素、及び白金族元素が含有されており、比較的高濃度で含有される金、銀は、上述の回収方法の初期段階で濃縮物として分離される。
【0004】
具体的に、アノードスライムを出発原料とする上述の回収方法では、先ず、アノードスライムを塩素浸出して、金と白金族元素を主要な成分とする浸出後液と、銀を主要な成分とする浸出残渣(以下、「塩素浸出残渣」ともいう)に分離する。その後、浸出後液については、金回収工程及び白金族回収工程で処理することで金及び白金族元素を回収する。一方、塩素浸出残渣については、例えば特許文献1や特許文献2に記載の方法で処理することで、銀を精製銀粉末として回収する。
【0005】
ここで、塩素浸出残渣には、銀以外に、塩素浸出による塩素をはじめ、VI族元素、V族元素、及び塩素浸出では分離しきれなかった微量の金、白金族元素等が含まれている。そのため、図1に示す従来の銀粉の製造方法のフローにあるように、塩素浸出残渣に対して、残渣洗浄工程、銀浸出工程、塩化銀析出工程、洗浄工程、銀粉回収工程等の多段階の工程を経ることで、銀以外の元素を除去している。
【0006】
また、従来の銀粉の製造方法では、塩化銀析出工程で得られる濾液を処理して、亜硫酸ガス(SOガス)を回収する工程が含まれており、回収された亜硫酸ガスは、銀浸出工程での処理に使用される浸出液の原料として繰り返し使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-219359号公報
【特許文献2】特開2021-143415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さて、銀粉の製造方法における塩化銀析出工程では、pH調整剤として硫酸を使用して好ましくは強酸性の領域まで酸性にすることで、銀浸出工程で得られる浸出液(濾液)中に含まれる銀を塩化銀として析出させる際の銀の回収率を向上させることが可能となる。
【0009】
しかしながら、その塩化銀析出工程では、銀を他元素よりも優先的に析出させることができるものの、銀浸出工程から得られる濾液中には、その銀浸出工程で分離しきれなかった金、セレン、テルル、鉛等の不純物が残留している。そのため、塩化銀析出工程において、上述したように銀の回収率を向上させるために処理対象の濾液のpHを低下させると、濾液中の不純物もその一部が析出してしまい、塩化銀の純度を低下させる。そしてその結果、精製銀粉末の不純物含有量が上昇し、特に、塩素浸出残渣(出発原料)の不純物含有割合が多い場合にはスペックアウトしてしまうという問題がある。
【0010】
また一方で、塩化銀の純度を向上させるために、単純にpHを高くして塩化銀の析出量を低下させると、銀の回収率が低下するという問題もある。
【0011】
そこで、得られる銀粉の純度を維持しつつ、銀の回収率の低下を抑制できる銀粉の製造方法が要請されている。例えば、特許文献2に記載の方法では、塩化銀析出工程において、浸出液のpHを弱酸性の領域に調整するとともに、生成した塩化銀を含む固形分を分離した後の析出後液のpHを特定の範囲に調整し、pH調整後のスラリーを固液分離して得られる固形分を、銀浸出工程での処理対処の一部として繰り返し系内に戻し入れることで、上記問題を解決している。
【0012】
しかしながら、昨今、原料事情の悪化から、特にテルル(Te)含有量の多い原料を処理する必要があり、塩化銀析出工程から得られる固形分(粗塩化銀)中のTe品位が65ppmを超える場合がある。このような場合、精製銀粉末(製品)においても、Te濃度が1ppmを超えてスペックアウトしてしまうという問題があり、粗塩化銀中のTe品位を例えば10ppm未満程度に低減できるようにすることが要請されている。
【0013】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、銀粉の製造方法において、Te含有量の多い原料を処理する場合であっても、塩化銀析出工程から得られる塩化銀中のTe品位を効果的に低減することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、銀粉の製造方法において、亜硫酸塩水溶液により銀を浸出させる銀浸出工程での処理に際し、酸性白土を含む吸着剤を添加することで、Teを効果的に分離除去でき、その後の塩化銀析出工程を経て得られる塩化銀中のTe含有量を有効に低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
(1)本発明の第1の発明は、銀を含む精錬中間物を塩素浸出して得られる塩素浸出残渣を洗浄する残渣洗浄工程と、洗浄後スラリーを固液分離して得られる固形分から亜硫酸塩水溶液により銀を浸出させる浸出処理を行う銀浸出工程と、得られる浸出液を中和して塩化銀を析出させる塩化銀析出工程と、前記塩化銀を還元して銀粉末を生成する還元工程と、を有し、銀浸出工程では、酸性白土を含む吸着剤を添加する、銀粉の製造方法である。
【0016】
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記銀浸出工程では、前記吸着剤の添加量を、生成する浸出後スラリー中に対して25g/L以上の割合となるようにする、銀粉の製造方法である。
【0017】
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記銀浸出工程では、浸出処理により生成する濾液と残渣とを固液分離する際に、浸出後スラリーに対して前記酸性白土を含む吸着剤を添加する、銀粉の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、Te含有量の多い原料を処理する場合であっても、塩化銀析出工程から得られる塩化銀中のTe品位を効果的に低減することができる。これにより、純度の高い銀粉を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】銀粉の製造方法のフローの一例を示す図である。
図2】銀浸出工程S2での処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変
更しない範囲で適宜変更することができる。また、本明細書にて、「x~y」(x、yは任意の数値)の表記は、特に断らない限り「x以上y以下」の意味である。
【0021】
本実施の形態に係る銀粉の製造方法は、銀を含む精錬中間物を原料として塩素浸出を施し、残渣洗浄工程と、銀浸出工程と、塩化銀析出工程と、還元工程と、を含む一連の工程を経て高純度な銀粉末を製造する方法である。
【0022】
原料として用いる、銀を含む精錬中間物としては、特に限定されない。例えば、難溶性銀化合物と不純物元素とを含む精錬中間物である、銅精錬における電解精製工程で発生する銅アノードスライムが挙げられる。また、めっき液、写真現像液等の銀含有液の処理工程、貴金属の精錬工程等で発生する中間物等が挙げられる。
【0023】
ここで、銀粉の製造方法において、その精錬中間物に含まれる不純物元素としては、例えば、銅、ニッケル、鉛、鉄、コバルト、マンガン、硫黄、亜鉛、カドミウム、スズ、金のほか、ヒ素、アンチモン、ビスマス等のV族元素、セレン、テルル等のVI族元素、白金族元素等が挙げられる。
【0024】
そして、本実施の形態に係る銀粉の製造方法においては、特に、テルル(Te)含有量の多い原料を処理して得られた精錬中間物を対象として好適であり、詳しくは後述するが、塩化銀析出工程を経て得られる塩化銀(粗塩化銀)中のTe含有量を、例えば10ppm未満程度にまで低減することができる。
【0025】
さて、例えば貴金属を多く含む銅アノードスライムを原料として使用する場合、金やパラジウム等のより高価な貴金属を優先的に回収するため、先ず、塩素ガスによる浸出処理(塩素浸出処理)で金やパラジウムを浸出させる。得られる浸出液は、別の工程で処理され、金やパラジウムが回収される。塩素浸出により同時に生成される塩素浸出残渣には、銀が主として塩化銀の形態でおよそ15質量%~30質量%の割合で含まれている。
【0026】
図1は、本実施の形態に係る銀粉の製造方法のフローの一例を示す図である。なお、以下では、原料として銅アノードスライムを用いた場合を例に挙げて具体的に説明する。
【0027】
図1に示すように、銀粉の製造方法は、銅アノードスライムを塩素浸出して得られる塩素浸出残渣を洗浄する残渣洗浄工程S1と、洗浄後スラリーを固液分離して得られる固形分から亜硫酸塩水溶液により銀を浸出させる銀浸出工程S2と、得られる浸出液を中和して塩化銀を析出させる塩化銀析出工程S3と、塩化銀を還元して銀粉末を生成する還元工程S5と、を有する。また、還元工程S5に先立ち、析出した塩化銀を洗浄する洗浄工程S4を有する構成とすることもできる。
【0028】
そして、本実施の形態に係る銀粉の製造方法では、銀浸出工程S2において、酸性白土を含む吸着剤を添加することを特徴としている。
【0029】
このような方法によれば、Te含有量の比較的多い原料を対象とした場合であっても、銀浸出工程での処理に際して酸性白土を含む吸着剤を添加することで、Teを効果的に分離除去でき、Teをほとんど含まない浸出液をその後の塩化銀析出工程に供することができる。これにより、塩化銀析出工程を経て得られる塩化銀中のTe含有量を有効に低減できる。そしてその結果、純度の高い銀粉末を得ることができ、しかも、銀の回収率を低下させることがない。
【0030】
[残渣洗浄工程]
残渣洗浄工程S1は、銅アノードスライムを塩素浸出して得られる塩素浸出残渣を洗浄(レパルプ洗浄)する工程である。残渣洗浄工程S1では、洗浄処理により、残渣に付着している不純物や、その残渣に含まれる陰イオン、特に余剰の塩素(Cl)を除去する。塩素浸出残渣を洗浄して余剰の塩素を除去することで、次工程の銀浸出工程S2での浸出処理に際してpHが低下することを防ぐことができる。
【0031】
具体的に、残渣洗浄工程S1では、塩素浸出残渣に水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液を添加し、pHを7~10程度の範囲に調整する。これにより、残渣に含まれる余剰の塩素をアルカリ水溶液に吸収させて除去できる。
【0032】
洗浄処理後、得られた残渣洗浄後スラリーを濾過等の処理により固液分離する。残渣洗浄後スラリーにおいては、固相が洗浄後の残渣により構成され、液相が塩素を吸収した液により構成される。そのため、濾過等の固液分離により分離される固形分は、余剰な塩素が除去された、塩化銀を主成分とする残渣となる。なお、固液分離により分離される濾液は、系内にて回収して、溶解している塩素を分離することで、銅アノードスライムに対する塩素浸出処理に再利用することができる。
【0033】
[銀浸出工程]
(銀浸出工程における処理について)
銀浸出工程S2は、残渣洗浄工程S1での洗浄処理後のスラリー(残渣洗浄後スラリー)を固液分離して得られる固形分を処理対象として、亜硫酸塩水溶液を浸出用液として用いて、その固形分から銀を浸出させる工程である。なお、浸出用液とは、浸出処理に用いる溶液であり、ここでは固形分に含まれる銀を浸出させるために用いる溶液を意味する。
【0034】
このように、塩化銀を主成分とする固形分に対し、亜硫酸塩水溶液を添加して浸出処理を施すことで、錯イオンとして溶解した銀の浸出液を得ることができる。以下に、亜硫酸塩水溶液として亜硫酸ナトリウム(NaSO)水溶液を用いた場合における塩化銀の浸出反応の反応式を示す。下記反応式に例示するように、銀浸出工程S2での処理では、塩化銀が亜硫酸ナトリウムと反応し、安定な銀のスルフィド錯塩(Na[Ag(SO)])が形成される。なおこのとき、不純物元素の一部も溶解して浸出液に混入する。
AgCl+NaSO → Na[Ag(SO)]+NaCl
【0035】
浸出用液である亜硫酸塩水溶液を構成する亜硫酸塩としては、水溶性の亜硫酸塩であれば特に限定されず、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸セシウム、亜硫酸ルビジウム等が挙げられる。その中でも、入手容易性、経済性の観点から亜硫酸ナトリウムが好ましい。
【0036】
亜硫酸塩水溶液における亜硫酸塩の濃度は、特に限定されない。例えば、150g/L~250g/L程度であることが好ましく、200g/L~250g/L程度であることがより好ましい。なお、亜硫酸塩の濃度が150g/L未満であると、亜硫酸塩水溶液に対する銀化合物の溶解度が低下し、所望量を得るために大きな容量の設備が必要となる場合がある。また、濃度が250g/Lを超えると、亜硫酸塩が溶解し難くなる。
【0037】
浸出処理におけるpH条件は、8~12であることが好ましく、8~10であることがより好ましい。pHが8未満であると、亜硫酸塩が重亜硫酸塩に急速に変化し始め、銀化合物の溶解が不十分となる場合がある。一方で、pHが12を超えると、銀のスルフィド錯塩(亜硫酸塩が亜硫酸ナトリウムの場合にはNa[Ag(SO)])から金属銀が析出し、銀の見かけ上の浸出率が低下する場合がある。なお、浸出処理におけるpH調整のため、水酸化ナトリウム等のpH調整剤を用いることができる。
【0038】
浸出処理における温度条件は、20℃~80℃であることが好ましく、30℃~60℃であることがより好ましい。温度が20℃未満であると、亜硫酸塩の溶解度が低下するため、亜硫酸塩水溶液における亜硫酸塩濃度を所望の範囲にすることが困難となる場合がある。一方で、温度が80℃を超えると、銀のスルフィド錯塩(亜硫酸塩が亜硫酸ナトリウムの場合にはNa[Ag(SO)])から金属銀が析出し、銀の見かけ上の浸出率が低下する場合がある。
【0039】
浸出処理における銀の浸出率は、95%以上であることが好ましい。銀の浸出率が95%以上であれば、後述する工程を経て最終的に得られる銀の回収率を90%以上とすることができる。
【0040】
浸出処理後においては、得られた濾液と残渣とからなる浸出後スラリーに対して濾過等の処理により固液分離する。この固液分離の操作により、銀を浸出させた浸出液(濾液)と、不純物元素である例えば金(Au)、セレン(Se)、テルル(Te)、鉛(Pb)の大部分を固形分とした残渣と、に分離して回収される。
【0041】
固液分離の後に回収された浸出液は、銀を含む溶液であり、次工程の塩化銀析出工程S3に供される。一方、回収した沈澱物については、当該銀浸出工程S2における浸出処理の処理対象である固形分の一部として繰り返し用いることができる。これにより、沈澱物に分配された銀を、繰り返しの浸出処理により浸出させることができ、銀の回収ロスを抑えて回収率を向上させることができる。
【0042】
ここで、本実施の形態に係る銀粉の製造方法では、図2に示すように、銀浸出工程S2において、酸性白土を含む吸着剤を添加することを特徴としている。図2は、銀浸出工程S2での処理フローを示すものである。なお、浸出処理で得られた浸出後スラリーに対して行う固液分離の操作を含めて、銀浸出工程S2での処理と定義している。
【0043】
酸性白土は、モンモリロナイト(Montmorillonite)を主構成分とする粘土であり、結晶がSi-O-Alからなる微細な層状構造を有している。そのため、優れたイオン交換能、吸着能、触媒能を示す。本発明者らによる検討の結果、銀浸出工程において、得られた濾液(浸出液)と残渣とを固液分離する操作に際し、濾過効率を向上させるために膨潤性のない酸性白土を用いたところ、まったく偶然に、浸出液中のテルル(Te)濃度が低下していることを見出した。なお、優れた性能を有する酸性白土については、様々な利用方法があると考えられるが、銀粉の製造方法において溶液中の不純物成分であるTeを吸着除去し、Te含有量を低減した塩化銀を生成するための利用方法は知られていない。
【0044】
酸性白土としては、特に限定されず、市販されているものを有効に用いることができる。例えば、ミズカエース♯20、ミズカエース♯400(水澤化学(株)製)、ニッカナイトS-200、ニッカナイトA-36(東新化成(株)製)、等が市販品として知られており、比較的容易に入手することが可能である。
【0045】
なお、酸性白土は、一般的に、白色を呈し、例えば200メッシュ通過率が80%以上の微粉末の形態を有している。また、水分含有量は、12質量%程度以下である。また、酸性白土の化学組成は、SiO:60~80質量%、Al:10~20質量%、Fe:1~3質量%、MgO:1~5質量%、CaO:1~3質量%のものを例示できる。なお、これらは、酸性白土の一般的性状、化学組成の例示であり、このような酸性白土の使用に限定されるものではない。
【0046】
本実施の形態では、銀浸出工程S2における処理に際し、酸性白土を含む吸着剤を添加することで、浸出処理により生成する濾液(浸出液)中のTeを効果的に吸着させることができ、例えば浸出液中のTe含有量を10ppm未満程度にまで低減することができる。これにより、Teがほとんど含まれない浸出液を、その後の塩化銀析出工程S3での処理に供することができ、Te含有量を低減した塩化銀を得ることができる。
【0047】
酸性白土を含む吸着剤の添加量としては、浸出処理により生成する濾液を含む浸出後スラリー(L)に対して、25g/L以上の割合となるようにすることが好ましい。また、吸着剤の添加量は、30g/L以上の割合とすることがより好ましく、50g/L以上の割合とすることがさらに好ましい。このような添加量で、酸性白土を含む吸着剤を添加することで、例えば濾液中に65ppm以上の割合でTeが含まれる場合であっても、効率的にそのTeを吸着除去し、10ppm未満程度にまで低減することができる。
【0048】
なお、吸着剤の添加量の上限値は、特に限定されないが、100g/L以下とすることが好ましい。100g/Lを超える割合で吸着剤を添加しても、Te含有量を低減させる効果のそれ以上の上積みが少ないからである。
【0049】
また、酸性白土を含む吸着剤を添加するタイミングとしては、銀浸出工程S2での処理中であって、添加後に撹拌操作を行う限りにおいては、特に限定されない。不純物元素であるTeは、銀浸出工程S2での処理を経て、濾液(浸出液)中にその一部が分配される。酸性白土を含む吸着剤は、濾液中に分配されたTeを吸着し除去するように作用する。したがって、例えば、亜硫酸塩水溶液により浸出処理を行った後、生成した濾液(浸出液)と残渣とを固液分離する操作を行うタイミングで、その浸出後スラリーに対して酸性白土を含む吸着剤を添加することができる。あるいは、浸出処理の対象である固形分に対して浸出用液である亜硫酸塩水溶液を添加するタイミングとほぼ同じタイミングで、酸性白土を含む吸着剤を添加するようにしてもよい。
【0050】
(浸出用液製造工程における処理について)
銀粉の製造方法においては、銀浸出工程S2における浸出処理の浸出用液として用いる亜硫酸塩水溶液の製造工程(浸出用液製造工程S21)を設けることもできる。浸出用液製造工程S21では、例えば原料として水酸化ナトリウム水溶液を用い、そこに亜硫酸ガスを吹き込んで反応させることで、亜硫酸塩(亜硫酸ナトリウム)水溶液を効率的に製造することができる。このようにして製造される亜硫酸塩水溶液を、銀浸出工程S2の浸出処理における浸出用液として用いることができる。
【0051】
例えば、原料として水酸化ナトリウム水溶液を用いる場合、その濃度としては、特に限定されないが、好ましくは10~24質量%である。濃度が10質量%未満であると、亜硫酸ナトリウムの濃度が目的に達しない場合がある。一方で、濃度が24質量%を超えると、冬季の操業では固結する場合がある。また、温度条件としては、特に限定されないが、5~30℃であることが好ましい。
【0052】
また、浸出用液製造工程S21にて得られる、例えば亜硫酸ナトリウム水溶液は、好ましくは亜硫酸ナトリウム濃度を150~250g/L、より好ましくは200~250g/Lに調整した後、銀浸出工程にて使用する浸出用液である亜硫酸塩水溶液の一部として利用する。濃度が150g/L未満であると、亜硫酸ナトリウム水溶液に対する塩化銀の溶解度が低下し、所望量を得るために大きな容量の設備が必要となる場合がある。一方で、濃度が250g/Lを超えると、亜硫酸ナトリウムが溶解し難くなる。
【0053】
なお、次工程の塩化銀析出工程S3にて得られる析出後液のpHを強酸性(1.0~2.0)の領域に調整することで、析出後液中の銀を沈澱物化して銀の回収率の低下を抑制することができる。このとき、pHを強酸性領域に調整する際、析出後液中の亜硫酸塩の分解反応が生じることにより、亜硫酸ガス(SOガス)が発生する。このことから、発生する亜硫酸ガスを回収することで、図1の工程図における工程矢印Bに示すように、当該浸出用液製造工程S21における亜硫酸塩水溶液の製造原料として用いることができる。このような方法によれば、発生した亜硫酸ガスを有効に活用でき、浸出用液である亜硫酸塩水溶液の製造コストを抑えることができる。
【0054】
[塩化銀析出工程]
塩化銀析出工程S3は、銀浸出工程S2での浸出処理により得られた浸出液(濾液)を中和して塩化銀を析出させる工程である。上述したように、銀浸出工程S2における処理により浸出液中には錯イオンとして安定的に銀が溶解しているが、その浸出液に対して中和処理を施すと、銀が安定的に錯イオンとして存在できなくなり、浸出液中の塩化物イオンと結合した塩化銀が析出される。
【0055】
なお、原料として用いる銅アノードスライムに塩化物以外の難溶性銀化合物が含まれる場合には、銀を塩化銀として析出させるために所定量の塩化物イオンを添加する。塩化物イオンの供給源としては、塩酸、塩化ナトリウム等の水溶性塩化物が挙げられる。
【0056】
ここで、本実施の形態に係る銀粉の製造方法では、上述したように、銀浸出工程S2において、酸性白土を含む吸着剤を添加し、浸出処理により生成する濾液(浸出液)中のTeを効果的に吸着除去するようにしている。したがって、当該塩化銀析出工程S3での処理対象である浸出液は、不純物元素であるTeが有効に低減されている。このことから、塩化銀析出工程S3を経て析出される塩化銀は、Te含有量が極めて低いものとなる。
【0057】
中和処理に用いる中和剤は、特に限定されないが、例えば、硫酸、塩酸等が挙げられ、配管の耐食性及びコスト等の観点から硫酸が好ましい。
【0058】
塩化銀を析出させるための中和処理においては、処理対象の浸出液のpHを弱酸性の領域(3.0~6.0)に調整することが好ましい。具体的には、例えばpH5.0~5.5程度の範囲に調整する。なお、より具体的なpH調整範囲は、出発原料に含まれる不純物濃度、またはその出発原料から得られる浸出液中の不純物濃度に応じて適宜設定できる。例えば、不純物濃度が低ければより酸性側にpH調整し、また、その逆の場合にはよりアルカリ側にpH調整することで、銀粉末の純度を維持できる。
【0059】
このように、処理対象の浸出液のpHを弱酸性の領域、例えばpH5.0~5.5程度の範囲に調整することにより、塩化銀を析出するにあたって浸出液中に含まれる不純物の固相への分配率を小さくすることができる。なお、このpH調整を「1段階目のpH調整」ともいう。このような方法によれば、不純物濃度が高い原料を処理する場合であっても、塩化銀析出工程S3を経て析出する塩化銀に含有される不純物量を、より効果的に低減することができ、結果として銀粉末の純度を維持できる。
【0060】
また、塩化銀析出工程S3では、析出させた塩化銀を含む固形分を濾過等で固液分離して回収した後の析出後液(濾液)のpHを、1.0~2.0の範囲に調整することが好ましい。つまり、「2段階目のpH調整」を行う。そして、pH調整後のスラリーを濾過等で固液分離して得られる固形分を回収し、図1の工程図における工程矢印Aに示すように、その固形分を上述した銀浸出工程S2での処理対象である固形分の一部として繰り返し用いる。
【0061】
このように、「2段階目のpH調整」として、塩化銀析出工程S3での処理を経て得られる析出後液のpHを1.0~2.0の範囲に調整することで、塩化銀として析出されずに析出後液に含まれることになった銀のほぼ全量を沈澱物化でき、固液分離して回収することができる。そして、このようにして沈澱物化して回収した固形分を、銀浸出工程S2での処理対象である固形分の一部として用いることで、銀をプロセス系内に繰り返し戻すことができ、銀浸出工程S2での処理と、その後の塩化銀析出工程S3での処理を経て、銀を塩化銀として析出させることができる。これにより、上述したように塩化銀析出工程S3にて所定量の銀が析出後液に分配された場合でも、再度プロセス系内に繰り返すことができるため、銀の回収率の低下を防ぐことができる。つまり、得られる銀粉の純度を高く維持しつつ、銀の回収率の低下も効果的に抑えることができる。
【0062】
析出後液のpHを1.0~2.0の範囲に調整するにあたっては、硫酸等のpH調整剤を用いることができる。
【0063】
なお、塩化銀析出工程S3において上述したように析出後液のpHを1.0~2.0の強酸性の領域に調整すると、析出後液中の亜硫酸塩の分解反応が生じることにより、亜硫酸ガス(SOガス)が発生する。このことから、pH調整に際して発生する亜硫酸ガスを回収し、図1の工程図における工程矢印Bに示すように、浸出用液製造工程S21における亜硫酸塩水溶液の製造原料として用いることが好ましい。
【0064】
また、pH調整後のスラリーから固液分離により沈澱物化した固形分を取り出して銀浸出工程S2での処理対象である固形分の一部として用いるにあたり、固液分離処理としては一般的にはフィルタープレス等の固液分離装置を用いて行う。このとき、固液分離して得られた固形分を取り出すに際しては、その固液分離装置から固形分を取り出す前に、固形分をアルカリ水溶液により洗浄することが好ましい。これにより、固形分が気相(大気)に暴露される際に発生する亜硫酸ガスを有効に低減することができる。洗浄液であるアルカリ水溶液としては、特に限定されないが、水酸化ナトリウムを含むものであることが好ましい。
【0065】
[洗浄工程]
洗浄工程S4は、塩化銀析出工程S3にて析出させた塩化銀を含む固液分を酸性水溶液中で酸化処理して洗浄する工程である。このように固形物を酸性水溶液により酸化処理すると、固形物中に塩化物として析出しているSe、Te等の不純物が溶液中に溶解する。残った固形物は、実質的に塩化銀となるため、濾過等の処理による固液分離によって高純度の塩化銀を得ることができる。つまり、洗浄工程S4は、酸化剤を添加した酸性水溶液を洗浄液として用いた、塩化銀を精製洗浄する工程である。
【0066】
酸化処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、塩化銀を含む固形物を酸性水溶液中に懸濁し、酸化還元電位を調整しながら、塩化銀への汚染が少ない過酸化水素、塩素ガス、塩素酸塩等の酸化剤を添加して行うとよい。酸性水溶液は、特に限定されず、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸等を好適に用いることができる。これらの中でも、塩酸は、酸化剤により塩素を生成して金属の形態で存在する不純物を溶解しやすく、また、想定される不純物の塩化物に対する溶解度が大きい点において特に好ましい。
【0067】
酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、特に限定されないが、800~1200mVに調整することが好ましく、900~1000mVに調整することがより好ましい。酸化還元電位が800mV以上であれば、金属又は金属間化合物として存在し、かつ、酸化により酸性水溶液に可溶となる元素、例えばSe、Te等の不純物を効率的に溶解させることができる。また、温度条件は、特に限定されないが、40~80℃であることが好ましい。温度が40℃未満であると、不純物の溶解反応が遅くなる場合があり、温度が80℃を超えると、酸化剤として例えば過酸化水素又は塩素酸塩を用いた場合にこれらの自己分解も促進され、その結果酸化剤の使用量が増えることになる。
【0068】
なお、このような処理により残った固形分を濾過等の処理で固液分離した後の濾液は、酸性であり、またその濾液には、Se、Te等の不純物や、HSO、HCl等が含まれている。そのため、その濾液に対して、硫酸及び塩酸のいずれか1種以上を添加することにより亜硫酸ガスを発生させることができる。発生した亜硫酸ガスは、塩化銀析出工程S3にて発生し回収した亜硫酸ガスと同様に、浸出用液製造工程S21の製造原料として有効に用いることができる。
【0069】
[還元工程]
還元工程(銀粉回収工程)S5は、塩化銀を還元して銀粉末を生成する工程である。具体的に、還元工程S5では、上述した洗浄工程S4を経て得られた高純度な塩化銀をアルカリ水溶液中において還元剤により還元処理することで、銀メタル粉末を得る。このようにして得られる銀粉は、平均粒径が数百μmの粉状であり、99.99質量%以上の高純度なものである。
【0070】
還元処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、塩化銀をアルカリ水溶液中に懸濁し、酸化還元電位を調整しながら、銀への汚染が少ないヒドラジン、糖類、ホルマリン等の還元剤を添加して行うとよい。アルカリ水溶液は、特に限定されず、銀に対して1~5当量の水酸化アルカリ及び/又は炭酸アルカリを用いて調製されたものが好ましい。1当量に満たないと、未還元の塩化銀が残留して、得られる銀メタルを汚染する場合がある。一方で、5当量を超えると、過剰効果でコスト高となる場合がある。水酸化アルカリ及び/又は炭酸アルカリとしては、特に限定されないが、排水処理の負担が少なく、安価な水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。
【0071】
還元処理において、水酸化アルカリ及び/又は炭酸アルカリは、アルカリ水溶液のpHが13以上になるように添加することが好ましい。なお、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、-700mV以下で安定したところが終点となる。
【0072】
また、塩化銀を還元して得られる銀粉末の回収は、還元処理により得られる塩化銀を含むスラリーに対して濾過処理を施すことにより行うことができる。このような濾過処理により、固形分である銀粉末を効率的に回収することができるとともに、還元処理に用いた水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液を含む濾液を回収することができる。
【0073】
このようにして濾過処理により回収された濾液については、例えば、上述した塩化銀析出工程S3においてpH調整後のスラリーから固液分離装置を用いて固液分離して固形分を取り出すに際し、大気中に取り出す前にその固形分に対して行う洗浄処理の洗浄液として利用することができる。
【0074】
すなわち、還元工程S5での銀粉末の濾過回収により得られる濾液(アルカリ水溶液)を、塩化銀析出工程S3におけるpH調整後スラリーの固液分離に際しての洗浄液として繰り返す。上述したように、その濾液は、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液であることから、その濾液を洗浄液として利用することで、塩化銀析出工程S3におけるpH調整後スラリーから得られる固形分に付着した水分(付着水分)中の亜硫酸ガスや亜硫酸の発生源であるSO 2-を効果的に吸収して除去することができる。また、このように有効利用することで、新規な洗浄液を用いることなく経済的にも効率性が高い処理を実現することができる。
【実施例0075】
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0076】
銅精錬における電解精製工程で発生した銅アノードスライムを出発原料とし、図1に示す銀粉の製造方法のフローに従って、銀粉を製造した。具体的には、まず、銅アノードスライムに対して塩素ガスを用いた塩素浸出処理を施して塩素浸出残渣を得た。
【0077】
塩素浸出残渣に水酸化ナトリウム水溶液をpH9.0となるように添加して洗浄した。洗浄後のスラリーを濾過により固液分離し、固形分を回収した(残渣洗浄工程S1)。
【0078】
500ccのビーカに、残渣洗浄工程S1で得られた固形分と、pH調整剤、浸出用液(亜硫酸塩水溶液)を混合したスラリー(pH8.3、温度50℃)を装入し、銀を浸出させる浸出処理を行った(銀浸出工程S2)。このとき、酸性白土を含む吸着剤を併せて添加し、撹拌機(スターラー)で撹拌しながら処理した。
【0079】
実施例1~4において、酸性白土の添加量を、25g/L、50g/L、75g/L、100g/Lとそれぞれ変化させた。なお、酸性白土の添加量は、生成する浸出後スラリー(L)に対する添加重量を示す。一方、比較例1では、酸性白土を添加せずに浸出処理を行った。
【0080】
浸出処理により得られた浸出後スラリーを濾過により固液分離し、得られた濾液(銀を浸出した浸出液)に、pH調整剤である硫酸を添加して中和処理して塩化銀(粗塩化銀)を析出させた(塩化銀析出工程S3)。実施例1~4、比較例1のそれぞれにおいて、析出した塩化銀中のテルル(Te)含有量をICPにより分析した。
【0081】
下記表1に、銀浸出工程S2における酸性白土の添加条件を示すとともに、塩化銀析出工程S3から得られる塩化銀中のTe含有量の分析結果を示す。
【0082】
【表1】
【0083】
表1に示されるように、Te含有量の比較的多い原料を処理する場合であっても、銀浸出工程S2において酸性白土を含む吸着剤を添加することで、得られる浸出液中のTe含有量を低減し、その後の塩化銀析出工程S3を経て得られる塩化銀中のTe含有量を効果的に低減できることが分かった。
図1
図2