IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新光電気工業株式会社の特許一覧

特開2024-6058配線基板及びその製造方法、配線基板の識別方法
<>
  • 特開-配線基板及びその製造方法、配線基板の識別方法 図1
  • 特開-配線基板及びその製造方法、配線基板の識別方法 図2
  • 特開-配線基板及びその製造方法、配線基板の識別方法 図3
  • 特開-配線基板及びその製造方法、配線基板の識別方法 図4
  • 特開-配線基板及びその製造方法、配線基板の識別方法 図5
  • 特開-配線基板及びその製造方法、配線基板の識別方法 図6
  • 特開-配線基板及びその製造方法、配線基板の識別方法 図7
  • 特開-配線基板及びその製造方法、配線基板の識別方法 図8
  • 特開-配線基板及びその製造方法、配線基板の識別方法 図9
  • 特開-配線基板及びその製造方法、配線基板の識別方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006058
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】配線基板及びその製造方法、配線基板の識別方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
H05K1/02 R
H05K1/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106602
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】和田 一輝
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA03
5E338AA16
5E338BB31
5E338DD11
5E338EE44
(57)【要約】
【課題】識別情報を備えた小型の配線基板を提供する。
【解決手段】本配線基板は、絶縁層と分散層と配線層が積層された配線基板であって、前記分散層は、主材料に充填材を分散させた固有の分散パターンを備え、前記分散パターンは、前記配線基板の外側から画像認識が可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と分散層と配線層が積層された配線基板であって、
前記分散層は、主材料に充填材を分散させた固有の分散パターンを備え、
前記分散パターンは、前記配線基板の外側から画像認識が可能である、配線基板。
【請求項2】
前記充填材は、非導電性の粒子及び/又は繊維である、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
平面視において、前記充填材の密度は不均一である、請求項1又は2に記載の配線基板。
【請求項4】
絶縁層と分散層と配線層が積層された配線基板の製造方法であって、
前記分散層は、主材料に充填材を分散させた固有の分散パターンを備え、
前記配線基板に、前記配線基板の外側から前記分散パターンの参照画像を撮影し、前記参照画像を前記配線基板の製造情報と関連付けて記録する、配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記充填材は、非導電性の粒子及び/又は繊維である、請求項4に記載の配線基板の製造方法。
【請求項6】
平面視において、前記充填材の密度は不均一である、請求項4又は5に記載の配線基板の製造方法。
【請求項7】
絶縁層と分散層と配線層が積層された配線基板の識別方法であって、
前記分散層は、主材料に充填材を分散させた固有の分散パターンを備え、
前記配線基板に、前記配線基板の外側から前記分散パターンの参照画像を撮影し、前記参照画像を前記配線基板の製造情報と関連付けて記録するステップと、
前記配線基板に、前記配線基板の外側から前記分散パターンの検査画像を撮影するステップと、
前記参照画像と前記検査画像を照合するステップと、
前記参照画像と前記検査画像が一致しているか否か判定するステップと、を有する、配線基板の識別方法。
【請求項8】
前記判定するステップでは、前記参照画像と前記検査画像において、特定項目の一致率を計算し、前記一致率が所定の閾値以上である場合に、前記参照画像と前記検査画像が一致していると判定する、請求項7に記載の配線基板の識別方法。
【請求項9】
前記充填材は、非導電性の粒子及び/又は繊維である、請求項7又は8に記載の配線基板の識別方法。
【請求項10】
平面視において、前記充填材の密度は不均一である、請求項7又は8に記載の配線基板の識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及びその製造方法、配線基板の識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板において、識別用のマークが形成される場合がある。例えば、複数の個片を切り出す配線基板において、各個片の境界の絶縁体部分に側面からその一部が露出するようなマークを形成する。個片に切断後、各個片の側面を見ることでマークの個数や埋め込み位置の違いから配線基板内の位置情報がわかる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-39028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の配線基板では、決められた位置にマークを正確に埋め込む必要があるため、個片はある程度の大きさが必要であり、また、マークを埋め込むためのスペースも必要である。そのため、配線基板の大型化につながりやすい。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、識別情報を備えた小型の配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本配線基板は、絶縁層と分散層と配線層が積層された配線基板であって、前記分散層は、主材料に充填材を分散させた固有の分散パターンを備え、前記分散パターンは、前記配線基板の外側から画像認識が可能である。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、識別情報を備えた小型の配線基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る配線基板を例示する断面図である。
図2】分散層を例示する平面模式図である。
図3】分散層において充填材の密度を変える例を説明する平面模式図である。
図4】分散層を複数層の積層構造にする例を説明する断面図である。
図5】分散層を複数層の積層構造にする例を説明する平面模式図である。
図6】複数枚に個片化される配線基板の例を説明する平面模式図である。
図7】本実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図(その1)である。
図8】本実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図(その2)である。
図9】分散層を用いて配線基板を識別する方法を例示する図である。
図10】一致率を計算する方法について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
[配線基板の構造]
図1は、本実施形態に係る配線基板を例示する断面図である。図1を参照すると、本実施形態に係る配線基板1は、配線層11と、絶縁層12と、分散層13と、配線層14と、ソルダーレジスト層15とを有するコアレスの配線基板である。なお、ソルダーレジスト層15は、必要に応じて設けられる。
【0011】
なお、本実施形態では、便宜上、配線基板1のソルダーレジスト層15側を上側、絶縁層12側を下側とする。又、各部位のソルダーレジスト層15側の面を上面、絶縁層12側の面を下面とする。ただし、配線基板1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。又、平面視とは対象物をソルダーレジスト層15の上面の法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物をソルダーレジスト層15の上面の法線方向から視た形状を指すものとする。
【0012】
配線基板1において、配線層11は、最下層の配線層である。配線層11の材料としては、例えば、銅等を用いることができる。配線層11として、銅層や金層等を含む積層膜を用いてもよい。配線層11の厚さは、例えば、10μm~20μm程度とすることができる。配線層11の下面は絶縁層12から露出している。配線層11は、例えば、他の配線基板等と電気的に接続されるパッドとして利用できる。配線層11は、パッド以外に配線パターンを含んでもよい。
【0013】
絶縁層12は、配線層11の上面と側面とを覆い、下面を露出するように形成されている。絶縁層12の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂を主成分とする熱硬化性の絶縁性樹脂を用いることができる。絶縁層12の材料として用いる絶縁性樹脂は、感光性であってもよいし、非感光性であってもよい。絶縁層12は、シリカ(SiO)等のフィラーを含有していてもよい。
【0014】
分散層13は、絶縁層12上に積層されている絶縁性の層である。分散層13については、後述する。
【0015】
絶縁層12及び分散層13には、絶縁層12及び分散層13を連続的に貫通し配線層11の上面を露出するビアホール12xが設けられている。ビアホール12xは、例えば、ソルダーレジスト層15側に開口されている開口部の径が配線層11の上面によって形成された開口部の底面の径よりも大きい逆円錐台状の凹部である。
【0016】
配線層14は、ビアホール12xを充填して配線層11と電気的に接続され、ビアホール12x内から分散層13の上面に延びている。詳細には、配線層14は、ビアホール12x内に充填されたビア配線、及び分散層13の上面に形成された配線パターンを含んでいる。配線層14の配線パターンは、ビアホール12x内のビア配線を介して、配線層11と電気的に接続されている。配線層14の材料や配線パターンの厚さは、例えば、配線層11と同様である。
【0017】
ソルダーレジスト層15は、配線基板1の一方の側の最外層に位置する絶縁層であり、分散層13の上面に、配線層14を覆うように形成されている。ソルダーレジスト層15は、例えば、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂等の感光性樹脂等から形成することができる。ソルダーレジスト層15の厚さは、例えば15~35μm程度とすることができる。
【0018】
ソルダーレジスト層15は、開口部15xを有し、開口部15xの底部には配線層14の上面の一部が露出している。開口部15xの平面形状は、例えば、円形とすることができる。必要に応じ、開口部15x内に露出する配線層14の上面に金属層を形成したり、OSP(Organic Solderability Preservative)処理等の酸化防止処理を施したりしてもよい。金属層の例としては、Au層や、Ni/Au層(Ni層とAu層をこの順番で積層した金属層)、Ni/Pd/Au層(Ni層とPd層とAu層をこの順番で積層した金属層)等を挙げることができる。開口部15x内に露出する配線層14は、例えば、半導体チップと電気的に接続するための外部接続端子として使用できる。
【0019】
[分散層]
分散層13は、配線基板1を識別するための識別情報を有する層であり、樹脂等の主材料に充填材を分散させた固有の分散パターンを備えている。分散パターンは、配線基板の外側から画像認識が可能である。例えば、配線基板の出荷前に、配線基板の外側から分散パターンの参照画像を撮影し、参照画像を配線基板の製造情報と関連付けて記録しておく。そして、例えば、この配線基板が出荷後に不良品として返還されたときに、配線基板の外側から分散パターンの検査画像を撮影し、検査画像と参照画像を照合することで、製造情報を知ることができる。製造情報とは、例えば、製造日、製造所、個片化される前の配線基板の位置情報等である。
【0020】
分散層13を構成する主材料は、エポキシ系樹脂やフェノール系樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリイミド系樹脂やアクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂、各種エラストマーおよびこれらの前駆体、共重合体などから配線基板に通常用いられている任意の材料を選択することができる。分散層13を構成する主材料は、絶縁層12を構成する材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。なお、非晶性熱可塑性樹脂および非晶部を有する結晶性熱可塑性樹脂を用いることで分散層13の透明度が向上し、光学的手法を用いた場合の充填材の検出が容易になる。
【0021】
分散層13において、充填材としては、例えば、粒子や繊維等を用いることができる。粒子や繊維は、粒状、針状、角状、板状等でもよく、柔軟性があってもなくても良い。充填材は非導電性であることが好ましい。詳細には、充填材として、無機酸化物や無機窒化物または有機物を、粒子状あるいは繊維状にしたものを用いることができる。無機酸化物としては、例えば、SiOやAl等が挙げられる。無機窒化物としては、例えば、BNやAlN等が挙げられる。有機物としては、例えば、ポリイミド、フェノール、ゴム、セルロース等が挙げられる。また、これら以外に、カルシウム化合物、カリウム化合物なども利用可能である。充填材は、染料、顔料等の混錬、塗布等により着色しても良い。
【0022】
図2は、分散層を例示する平面模式図である。図2(a)は、主材料131に粒子132を分散させた例である。粒子132は1種類でもよいが、配線基板1の識別性を向上するために、例えば、粒径の異なる2種類以上の粒子を混在させてもよい。また、粒子132の大きさや形状が均一でない方が、配線基板1の識別性を向上することができる。
【0023】
図2(b)は、主材料131に繊維133を分散させた例である。繊維133の大きさや形状が均一でない方が、配線基板1の識別性を向上することができる。図2(c)のように、主材料131に粒子132及び繊維133を分散させてもよい。これにより、複数の配線基板が類似する分散パターンを備えにくくなるため、配線基板1の識別性をさらに向上することができる。
【0024】
また、配線基板1の識別性を向上するために、平面視において、充填材の密度は不均一であることが好ましい。ここで、充填材の密度が不均一とは、平面視において、分散層を5行5列の同面積の区画に分割し、各区画における充填材の密度、及び各区画における充填材の密度の平均値を算出し、平均値に対する各区画の充填材の密度の最大値及び最小値が±30%を超えていることをいう。各区画における充填材の密度は、分散層の画像を拡大し、各区画の面積に対する各区画の充填材の面積により求めることができる。
【0025】
例えば、平面視において、所定方向から反対方向に向かって、粒子132や繊維133の密度が低くなってもいてもよい。この場合、所定方向から反対方向に向かって、粒子132や繊維133の密度が段階的に低くなってもよいし、連続的に低くなってもよい。
【0026】
図3(a)は、分散層13内において、粒子132の密度を変えた例であり、中央より左側には粒子132が高密度で配置されており、中央より右側には粒子132が低密度で配置されている。つまり、図3(a)では、左方向から右方向に向かって、粒子132の密度が段階的に低くなっている。密度の変化を3段階以上にしてもよい。
【0027】
図3(b)は、分散層13内において、繊維133の密度を変えた例であり、中央より上側には繊維133が高密度で配置されており、中央より下側には繊維133が低密度で配置されている。つまり、図3(b)では、上方向から下方向に向かって、繊維133の密度が段階的に低くなっている。密度の変化を3段階以上にしてもよい。
【0028】
図3(c)は、分散層13内において、粒子132及び繊維133の密度を変えた例であり、中央より左側には粒子132が高密度で配置されており、中央より右側には粒子132が低密度で配置されている。また、中央より上側には繊維133が高密度で配置されており、中央より下側には繊維133が低密度で配置されている。つまり、図3(c)では、左方向から右方向に向かって、粒子132の密度が段階的に低くなっており、かつ上方向から下方向に向かって、繊維133の密度が段階的に低くなっている。密度の変化を3段階以上にしてもよい。
【0029】
このように、分散層13内において粒子132や繊維133の密度を一方向に傾斜させる等の方法により充填材の密度が不均一になるようにすることで、配線基板1内の位置の認識精度を向上できる。
【0030】
なお、通常の絶縁層にもフィラー等の粒子が分散される場合があるが、フィラー等の粒子は絶縁層の物理特性(例えば、熱膨張係数等)の改善を目的として分散されるため、大きさや形状が同程度である粒子が、絶縁層の全体に均一に分散されている。一方、分散層に分散する充填材が均一に分散していると、類似する参照画像が多くなり識別性が低下する。そのため、分散層に分散される充填材は、絶縁層に分散される粒子等に比べて、不均一であることが好ましい。
【0031】
また、図4に示す配線基板1Aのように、分散層を複数層の積層構造としてもよい。配線基板1Aでは、分散層13Aは、第1層13A1、第2層13A2、及び第3層13A3の積層構造である。図5(a)に示すように、第1層13A1は、主材料131に粒子132を分散させた層である。図5(b)に示すように、第2層13A2は、主材料131に繊維133を分散させた層である。図5(c)に示すように、第3層13A3は、主材料131に粒子132とは形状の異なる粒子134を分散させた層である。分散層13Aを平面視すると、図5(d)に示すように、主材料131に粒子132、繊維133、及び粒子134が混在した状態に視認できるため、配線基板1の識別性を向上できる。なお、分散層の積層構造は、3層には限定されず、2層でもよいし、4層以上でもよい。
【0032】
配線基板1は、単体の配線基板であってもよいし、複数枚に個片化される配線基板であってもよい。図6は、16枚に個片化される配線基板の分散層の例である。図6において、縦横の破線は個片化する際の切断線を示している。通常、個片化後の各配線基板の配線パターン等は共通しているため、目視などでは位置情報を知ることはできないが、分散層13内の充填材のパターンの識別により、トレースすることができる。例えば、図6の分散層13において、領域aと領域bと領域cでは、充填材である粒子132と繊維133の形成するパターンが異なるため、識別が可能である。
【0033】
[配線基板の製造方法]
図7及び図8は、本実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図である。
【0034】
まず、図7(a)に示す工程では、支持体500を準備し、支持体500の上面に配線層11を形成する。支持体500としては、樹脂板、金属板、シリコン板、ガラス板等を用いることができる。配線層11を形成するには、例えば、支持体500の上面に銅箔を配置し、さらに銅箔上に所定形状のエッチングマスクを配置して、銅箔をエッチングすればよい。支持体500が金属板である場合は、金属板を給電層とする電解めっき法により、配線層11を形成してもよい。
【0035】
次に、図7(b)に示す工程では、配線層11を覆うように支持体500の上面に絶縁層12、分散層13を順次積層する。具体的には、例えば、絶縁層12として熱硬化性を有するフィルム状のエポキシ系樹脂を主成分とする絶縁性樹脂を準備し配線層11を覆うように支持体500の上面にラミネートする。次に、例えば、分散層13として、充填材として粒子や繊維を分散した熱硬化性を有するフィルム状のエポキシ系樹脂を主成分とする絶縁性樹脂を準備し、絶縁層12の上面にラミネートする。そして、ラミネートした絶縁層12を押圧しつつ、絶縁層12を硬化温度以上に加熱して硬化させる。
【0036】
あるいは、絶縁層12の材料として、例えば、熱硬化性を有する液状又はペースト状のエポキシ系樹脂を主成分とする絶縁性樹脂を準備し、配線層11を覆うように支持体500の上面にスピンコート法等により塗布して硬化させてもよい。同様に、分散層13の材料として、充填材として粒子や繊維を分散した熱硬化性を有する液状又はペースト状のエポキシ系樹脂を主成分とする絶縁性樹脂を準備し、絶縁層12の上面にスピンコート法等により塗布して硬化させてもよい。
【0037】
次に、図7(c)に示す工程では、絶縁層12及び分散層13に、絶縁層12及び分散層13を貫通し配線層11の上面を露出させるビアホール12xを形成する。ビアホール12xは、例えばCOレーザ等を用いたレーザ加工法により形成できる。レーザ加工法により形成したビアホール12xは、配線層14が形成される側に開口されている開口部の径が配線層11の上面によって形成された開口部の底面の径よりも大きい逆円錐台状の凹部となる。ビアホール12xをレーザ加工法により形成した場合には、デスミア処理を行い、ビアホール12xの底部に露出する配線層11の上面に付着した絶縁層12の樹脂残渣を除去することが好ましい。なお、絶縁層12及び分散層13に感光性樹脂を用い、フォトリソグラフィ法によりビアホール12xを形成してもよい。
【0038】
次に、図7(d)に示す工程では、分散層13上に配線層14を形成する。配線層14は、例えば、セミアディティブ法やサブトラクティブ法等の各種配線形成方法を用いて形成することができる。例えば、配線層14をセミアディティブ法で形成する場合は、まず、無電解めっき法又はスパッタ法により、ビアホール12xの底部に露出した配線層11の上面、及びビアホール12xの内壁面を含む分散層13上にシード層を形成する。次に、シード層上に配線層14に対応する開口部を備えたレジスト層を形成する。そして、シード層を給電層に利用した電解めっき法により、レジスト層の開口部に電解めっき層を形成する。次に、レジスト層を除去した後に、電解めっき層をマスクにして、電解めっき層に覆われていない部分のシード層をエッチングにより除去する。これにより、シード層上に電解めっき層が積層された配線層14が形成される。
【0039】
次に、図7(e)に示す工程では、分散層13の上面に配線層14を被覆するソルダーレジスト層15を形成する。ソルダーレジスト層15は、例えば、液状又はペースト状の絶縁性樹脂を、スクリーン印刷法、ロールコート法、又は、スピンコート法等により、配線層14を被覆するように塗布することで形成できる。或いは、フィルム状の絶縁性樹脂を、配線層14を被覆するようにラミネートしてもよい。絶縁性樹脂としては、例えば、感光性のエポキシ系絶縁性樹脂やアクリル系絶縁性樹脂等を用いることができる。そして、塗布又はラミネートした絶縁性樹脂を露光及び現像することでソルダーレジスト層15に配線層14を選択的に露出する開口部15xを形成する(フォトリソグラフィ法)。
【0040】
必要に応じ、開口部15x内に露出する配線層14の上面に、例えば無電解めっき法等により金属層を形成してもよい。金属層の例としては、前述の通りである。又、開口部15x内に露出する配線層14の上面に、OSP処理等の酸化防止処理を施してもよい。以上の工程で、配線基板1の形状ができ上る。
【0041】
次に、図8のステップS101では、配線基板1の外側(例えば、ソルダーレジスト層15の上方)から分散パターンの参照画像を撮影し、参照画像を配線基板1の製造情報と関連付けて記録する。参照画像は、分散層13における充填材の分散パターンが撮影できれば、配線基板1の全体を撮影してもよいし、一部を撮影してもよい。撮影は、例えば、可視光等を用いた光学的手法や、X線等の電磁波を用いる手法等により行う。なお、配線基板の識別ができればよいので、分散パターンのみが撮影される必要はなく、分散パターンに加えて他の情報(例えば、配線パターン等)が撮影されてもよい。なお、ソルダーレジスト層15の色が濃い場合、ソルダーレジスト層15の上方から撮影すると、粒子や繊維がはっきり写らない場合もあり得る。その場合、画像処理ソフトなどで検査画像を加工してもよい。また、参照画像も検査画像と同様に、画像処理ソフトなどで加工してもよい。
【0042】
次に、ステップS102では、配線基板1を個片化(切断)する。例えば、図7(e)に示す構造体をスライサー等により所定の切断位置で切断して個片化する。個片化の必要がない単体の配線基板の場合は、ステップS102はスキップする。次に、ステップS103では、配線基板1を出荷する。なお、ステップS101からステップS103の前までに、必要に応じて配線基板1の製品検査等を実施してもよい。また、ステップS101とステップS102は、順番を入れ替えてもよい。すなわち、個片化が必要な配線基板において、個片化後に参照画像を撮影してもよい。この際も個片化前の配線基板の位置情報と、参照画像を関連付けるように記録する。
【0043】
[配線基板の識別方法]
ここでは、分散層を用いて配線基板を識別する方法の一例について説明する。図9は、分散層を用いて配線基板を識別する方法を例示する図である。ここでは、図8のステップS103で出荷した配線基板1が返還された場合について説明する。なお、配線基板1が返還される場所は、配線基板1を出荷した工場等であってもよいが、参照画像を撮影した撮影装置と同じ型の撮影装置が設置されてる場所であれば、配線基板1を出荷した工場等以外であってもよい。
【0044】
まず、ステップS201では、返還された配線基板1の外側(例えば、ソルダーレジスト層15の上方)から分散パターンの検査画像を撮影する。配線基板1の識別性を向上するため、検査画像の撮影条件は参照画像の撮影条件と同じであることが好ましい。なお、ヒートスプレッダやアンダーフィル樹脂等、配線基板1の出荷後に配線基板1に付与された物が有る場合は、必要に応じ、付与された物を除去した後、検査画像の撮影を行う。
【0045】
次に、ステップS202では、参照画像及び検査画像を二値化する。参照画像及び検査画像を二値化することにより、参照画像と検査画像との照合精度を向上できる場合がある。なお、分散層を構成する主材料と粒子の色味や輝度差が小さく、二値化した検査画像では二値化した参照画像との照合が困難な場合もある。その場合は、ステップS202はスキップし、二値化の処理をせずに参照画像と検査画像とを照合してもよい。すなわち、ステップS202は、必要に応じて実行される。また、二値化の代わりに、グレイスケール処理やコントラスト調整処理などを適用することも可能である。
【0046】
次に、ステップS203では、二値化した検査画像と参照画像のデータベースを照合する。例えば、検査画像を回転したり、位置をずらしたりしながら、検査画像の分散パターンと参照画像のデータベースに記録されている分散パターンとを照合する。なお、ステップS202をスキップした場合には、検査画像の生画像を参照画像のデータベースと照合する。なお、検査画像と参照画像とを比較する際に、位置の当たりを付けるために、配線基板内の配線やパッド等を目印にしても良い。
【0047】
次に、ステップS204では、参照画像と検査画像が一致しているか否か判定する。具体的には、例えば、参照画像と検査画像において、特定項目の一致率を計算し、一致率が所定の閾値以上である場合に、参照画像と検査画像が一致していると判定し、配線基板1の製造情報を特定する。一致率は、分散層の全体で計算してもよいし、分散層の一部で計算してもよい。なお、分散層の一部で一致率を計算する場合、分散層の一カ所のみで一致率を計算すると複数の参照画像候補が出てくるおそれがあるため、分散層の二カ所以上で一致率を計算することが好ましい。
【0048】
一致率を計算する方法は任意でよいが、例えば、特定の粒子に注目し、その粒子の中心を順番に直線で結んで図形を作製し、その図形の面積を比較してもよい。例えば、図10に示す検査画像において、6個の粒子を選択し、各粒子の中心を順番に直線で結んでできる6角形の面積を計算する。次に、参照画像のデータベースからおおよそ類似する位置に粒子が存在する参照画像を抽出する。そして、検査画像と同様に6角形の面積を計算する。例えば、参照画像の6角形の面積が、検査画像の6角形の面積の±10%以内であれば、両画像は一致していると判定する。また、複数の候補が抽出された場合には、参照画像の6角形の面積が検査画像の6角形の面積に最も近いものを選択する。
【0049】
また、図10において、選択した6個の粒子のそれぞれの位置や面積や円形度に着目し、位置の一致率、面積の一致率、及び円形度の一致率に基づいて、検査画像と参照画像の一致を判定してもよい。この際、上記の面積の比較と併用してもよい。さらに、配線基板の識別には、分散層の分散パターンの情報に、フィデュ―シャルマークや刻印等の他の識別子の情報を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
このように、絶縁層と分散層と配線層が積層された配線基板において、画像解析ソフト等により参照画像と検査画像の分散層の分散パターンを比較して照合することにより、配線基板の識別が可能となり、特定の配線基板を製造情報と関連付けることができる。すなわち、配線基板のトレーサビリティを向上できる。
【0051】
また、分散層は特許文献1のように平面方向に追加スペースを必要としないため、識別情報を備えた小型の配線基板を実現できる。また、分散層は絶縁層に比べて薄くてよいため、配線基板の薄化の妨げにもなりにくい。
【0052】
また、分散層の分散パターンの形成にシリカやセルロース等の配線基板で一般的に使用される材料を用いることで、配線基板の製造や配線基板の特性に悪影響を与えない。また、配線基板の識別に分散パターンのみを用い、シリアルナンバー等の刻印を行わない場合は、刻印する際の粉塵の発生の抑制や、刻印のためのスペースの削減等を実現できる。
【0053】
以上、好ましい実施形態について詳説したが、上述した実施形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0054】
例えば、上記の実施形態では、コアレスの配線基板について説明したが、本発明は、コア基板を有する配線基板をはじめ、様々な配線基板に適用可能である。
【0055】
また、絶縁層と分散層と配線層が積層された配線基板であれば、分散層は任意の位置に積層されてよい。例えば、分散層は、配線基板の最下層に配置されてもよいし、最上層に配置されてもよい。例えば、最上層のソルダーレジスト層中に充填材を添加して分散層として機能させてもよい。また、配線基板は、図1に示した例に対し、さらに多くの配線層や絶縁層を有してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1,1A 配線基板
11,14 配線層
12 絶縁層
12x ビアホール
13,13A 分散層
13A1 第1層
13A2 第2層
13A3 第3層
15 ソルダーレジスト層
15x 開口部
131 主材料
132,134 粒子
133 繊維
500 支持体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10