(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060665
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法及び窒化物半導体エピタキシャルウエーハ用複合基板
(51)【国際特許分類】
C30B 29/38 20060101AFI20240425BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20240425BHJP
C30B 25/18 20060101ALI20240425BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
C30B29/38 D
H01L21/205
C30B25/18
H01L21/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168075
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】土屋 慶太郎
(72)【発明者】
【氏名】久保埜 一平
(72)【発明者】
【氏名】萩本 和徳
【テーマコード(参考)】
4G077
5F045
5F152
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077BE15
4G077DB08
4G077ED04
4G077ED06
4G077EF02
4G077EF03
4G077HA12
4G077TK04
4G077TK08
5F045AA04
5F045AB09
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5F045BB11
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5F152LL05
5F152LN03
5F152LN05
5F152MM05
5F152MM10
5F152MM18
5F152NN03
5F152NN12
5F152NN30
5F152NP09
5F152NQ09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】反りが小さく、クラック、剥がれのない窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法を提供する。
【解決手段】セラミックス含有基板1とセラミックス含有基板上に貼り合わされた単結晶層2を有する複合基板3と、複合基板上にエピタキシャル成長された窒化物半導体層4を有し、複合基板として、窒化物半導体層の熱膨張係数の±10%以内の熱膨張係数を有するセラミックス含有基板を備え、-150<Bow(μm)≦40、Warp(μm)<150かつWarp(μm)<90-Bow(μm)の形状を有するものを準備する工程と複合基板の単結晶層上に窒化物半導体層に対して圧縮応力を付与する中間層を形成する工程と中間層上に窒化物半導体層をエピタキシャル成長させる工程を含み、中間層の膜厚を調整することにより、Warp(μm)<50、|Bow(μm)|≦40の形状を有する窒化物半導体エピタキシャルウエーハ100を製造する方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス含有基板と前記セラミックス含有基板上に貼り合わされた単結晶層とを有する複合基板と、前記複合基板上にエピタキシャル成長された窒化物半導体層と、を有する窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法であって、
前記複合基板として、前記窒化物半導体層の熱膨張係数の±10%以内の熱膨張係数を有するセラミックス含有基板を備え、-150<Bow(μm)≦40、Warp(μm)<150かつWarp(μm)<90-Bow(μm)の形状を有するものを準備する工程と、
前記複合基板の前記単結晶層上に前記窒化物半導体層に対して圧縮応力を付与する中間層を形成する工程と、
前記中間層上に前記窒化物半導体層をエピタキシャル成長させる工程と、を含み、
前記中間層の膜厚を調整することにより、Warp(μm)<50、|Bow(μm)|≦40の形状を有する窒化物半導体エピタキシャルウエーハを製造することを特徴とする窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法。
【請求項2】
前記セラミックス含有基板として、セラミックスコアと前記セラミックスコアを被覆する封止層とを有する耐熱性支持基板と、前記耐熱性支持基板上に設けられた平坦化層と、を有するものを用いることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法。
【請求項3】
前記セラミックスコアとして、多結晶AlNセラミックスを主成分とするものを用いることを特徴とする請求項2に記載の窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法。
【請求項4】
前記封止層を、SiOxNy(ここで、x=0~2、y=0~1.5、x+y>0)で表される組成物により形成することを特徴とする請求項2に記載の窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法。
【請求項5】
前記平坦化層を、SiOxNy(ここで、x=0~2、y=0~1.5、x+y>0)及び砒化アルミニウムのいずれかにより形成することを特徴とする請求項2に記載の窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法。
【請求項6】
前記単結晶層を、Si、SiGe、SiC、サファイヤ、GaN、AlGaN及びAlNのいずれかにより形成することを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法。
【請求項7】
前記中間層を、AlN、InN及びGaNの混晶により形成することを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法。
【請求項8】
窒化物半導体層をエピタキシャル成長させるための下地基板として用いる窒化物半導体エピタキシャルウエーハ用複合基板であって、
セラミックス含有基板と前記セラミックス含有基板上に貼り合わされた単結晶層とを備え、前記セラミックス含有基板は、前記窒化物半導体層の熱膨張係数の±10%以内の熱膨張係数を有し、-150<Bow(μm)≦40、Warp(μm)<150かつWarp(μm)<90-Bow(μm)の形状を有するものであることを特徴とする窒化物半導体エピタキシャルウエーハ用複合基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法及び窒化物半導体エピタキシャルウエーハ用複合基板に関する。
【背景技術】
【0002】
GaNやAlNをはじめとする窒化物半導体は、2次元電子ガスを用いた高電子移動度トランジスタ(HEMT)を作製することができるので、高周波用途の半導体デバイスとしての応用が期待されている。また、上記の窒化物は、機械的特性に優れた圧電体でもあり、通信用高周波フィルターや、センサー、エナジーハーベスターなどへの利用も期待されている。さらに、通信用途に留まらず、ディスプレイ用のマイクロLEDにおいても窒化物半導体で作製することが検討されており、さらなる大口径化、高品質化、低価格化が求められている。
【0003】
しかしながら、これらの窒化物のウエーハを作製することは難しく、シリコン単結晶基板のような一般的な融液法での成長は難しい。産業応用上は、サファイヤやSiC、Si基板上への気相成長による薄膜が使用されているが、成長中の応力により基板の変形やクラック、剥がれの発生が懸念され、成長条件やデバイス構造が制限されている。
【0004】
デバイス工程では反りが大きくなることで、吸着不良による落下や露光不良による歩留まり低下が懸念されるため、基板の反りは、Warp<50μm,|Bow|≦40μmであることが望ましい。
一方、クラックが発生すると、クラックの発生個所では、デバイスを作製することができず、歩留まりが低下する。さらに大量のクラックが発生したり、応力が印加されたりすると、エピタキシャル層の剥がれが起こる。意図せず表層の薄膜が剥離すると、工程を汚染してデバイスの歩留まりが低下することが懸念される。
【0005】
例えば、特許文献1、2では、エピタキシャル成長による応力を緩衝層で緩和することによって、反りを低減する技術が開示されている。しかしながら、Si基板上にGaNを成長する、ヘテロエピタキシャル成長では、膜厚や組成に分布が生じて、特性の面内均一性が低下する恐れがある。
【0006】
一方、特許文献3では、GaNと熱膨張係数がそろっている基板の上にGaNをエピタキシャル成長することで、エピタキシャル成長後の冷却による応力を低減する技術が開示されている。しかしながら、窒化物半導体を成長する単結晶層には、SiやSiGeが使われているため、格子定数差による応力が発生する。格子定数差による応力によって反り不良、クラック、膜剥がれが発生することが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5159858号公報
【特許文献2】特開2005-72561号公報
【特許文献3】特表2020-505767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、反りが小さく、クラック、剥がれのない窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法及びこれに用いられる窒化物半導体エピタキシャルウエーハ用複合基板を提供することを目的とする。特に、マイクロLED、高周波スイッチ、パワーアンプ、パワースイッチングデバイス用のGaN系高移動度トランジスタ(HEMT)に適した、III族窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、セラミックス含有基板と前記セラミックス含有基板上に貼り合わされた単結晶層とを有する複合基板と、前記複合基板上にエピタキシャル成長された窒化物半導体層と、を有する窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法であって、前記複合基板として、前記窒化物半導体層の熱膨張係数の±10%以内の熱膨張係数を有するセラミックス含有基板を備え、-150<Bow(μm)≦40、Warp(μm)<150かつWarp(μm)<90-Bow(μm)の形状を有するものを準備する工程と、前記複合基板の前記単結晶層上に前記窒化物半導体層に対して圧縮応力を付与する中間層を形成する工程と、前記中間層上に前記窒化物半導体層をエピタキシャル成長させる工程と、を含み、前記中間層の膜厚を調整することにより、Warp(μm)<50、|Bow(μm)|≦40の形状を有する窒化物半導体エピタキシャルウエーハを製造することを特徴とする窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法を提供する。
【0010】
このような窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法によれば、反りが小さく、クラック、剥がれのない窒化物半導体エピタキシャルウエーハを製造できる。
【0011】
このとき、前記セラミックス含有基板として、セラミックスコアと前記セラミックスコアを被覆する封止層とを有する耐熱性支持基板と、前記耐熱性支持基板上に設けられた平坦化層と、を有するものを用いることができる。
【0012】
このような窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法によれば、より確実に、反りが小さく、クラック、剥がれのない窒化物半導体エピタキシャルウエーハを製造できる。
【0013】
このとき、前記セラミックスコアとして、多結晶AlNセラミックスを主成分とするものを用いることができる。
【0014】
このような窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法によれば、より確実に、反りが小さく、クラック、剥がれのない窒化物半導体エピタキシャルウエーハを製造できる。
【0015】
このとき、前記封止層を、SiOxNy(ここで、x=0~2、y=0~1.5、x+y>0)で表される組成物により形成することができる。
【0016】
このような窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法によれば、より確実に、反りが小さく、クラック、剥がれのない窒化物半導体エピタキシャルウエーハを製造できる。
【0017】
このとき、前記平坦化層を、SiOxNy(ここで、x=0~2、y=0~1.5、x+y>0)及び砒化アルミニウムのいずれかにより形成することができる。
前記単結晶層を、Si、SiGe、SiC、サファイヤ、GaN、AlGaN及びAlNのいずれかにより形成することができる。
【0018】
平坦化層、単結晶層としては、上記のようなものを用いることができ、これにより、より確実に、反りが小さく、クラック、剥がれのない窒化物半導体エピタキシャルウエーハを製造できる。
【0019】
このとき、前記中間層を、AlN、InN及びGaNの混晶により形成することができる。
【0020】
このような窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法によれば、より確実に、反りが小さく、クラック、剥がれのない窒化物半導体エピタキシャルウエーハを製造できる。
【0021】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、窒化物半導体層をエピタキシャル成長させるための下地基板として用いる窒化物半導体エピタキシャルウエーハ用複合基板であって、セラミックス含有基板と前記セラミックス含有基板上に貼り合わされた単結晶層とを備え、前記セラミックス含有基板は、前記窒化物半導体層の熱膨張係数の±10%以内の熱膨張係数を有し、-150<Bow(μm)≦40、Warp(μm)<150かつWarp(μm)<90-Bow(μm)の形状を有するものであることを特徴とする窒化物半導体エピタキシャルウエーハ用複合基板を提供する。
【0022】
このような窒化物半導体エピタキシャルウエーハ用複合基板によれば、反りが小さく、クラック、剥がれのない窒化物半導体エピタキシャルウエーハの下地基板として適したものとなる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明の窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法によれば、反りが小さく、クラック、剥がれのない窒化物半導体エピタキシャルウエーハを製造することが可能となり、Warp<50μm、|Bow|≦40μmで、クラックやエピ剥がれの無い安価なGaNエピタキシャル基板を歩留まり良く得ることが可能となり、また、成長中の反りを小さくして、様々な特性の面内均一性を向上させることが可能となる。
また、本発明の窒化物半導体エピタキシャルウエーハ用複合基板によれば、これを下地基板として用いることで、反りが小さく、クラック、剥がれのない窒化物半導体エピタキシャルウエーハを製造できるものとなり、Warp<50μm、|Bow|≦40μmで、クラックやエピ剥がれの無い安価なGaNエピタキシャル基板を提供できるものとなる。また、様々な特性の面内均一性を向上させたGaNエピタキシャル基板を製造できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法で製造した窒化物半導体エピタキシャルウエーハの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
上述のように、反りが小さく、クラック、剥がれのない窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法が求められていた。
【0027】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、セラミックス含有基板と前記セラミックス含有基板上に貼り合わされた単結晶層とを有する複合基板と、前記複合基板上にエピタキシャル成長された窒化物半導体層と、を有する窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法であって、前記複合基板として、前記窒化物半導体層の熱膨張係数の±10%以内の熱膨張係数を有するセラミックス含有基板を備え、-150<Bow(μm)≦40、Warp(μm)<150かつWarp(μm)<90-Bow(μm)の形状を有するものを準備する工程と、前記複合基板の前記単結晶層上に前記窒化物半導体層に対して圧縮応力を付与する中間層を形成する工程と、前記中間層上に前記窒化物半導体層をエピタキシャル成長させる工程と、を含み、前記中間層の膜厚を調整することにより、Warp(μm)<50、|Bow(μm)|≦40の形状を有する窒化物半導体エピタキシャルウエーハを製造することを特徴とする窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法により、反りが小さく、クラック、剥がれのない窒化物半導体エピタキシャルウエーハを提供できることを見出し、本発明を完成した。
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法及び窒化物半導体エピタキシャルウエーハ用複合基板について説明する。
【0029】
(窒化物半導体エピタキシャルウエーハ)
図1は、本発明の窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法で製造した窒化物半導体エピタキシャルウエーハの一例を示す断面図である。
図1に示すように、窒化物半導体エピタキシャルウエーハ100は、複合基板3上に、窒化物半導体層4が積層されて構成されている。
窒化物半導体層4として、デバイス層13が中間層10上に積層されている。
デバイス層13は、例えば、窒化ガリウム層11に電子供与層12が積層されてなり、窒化物半導体層を形成している。
複合基板3は、セラミックス含有基板1に単結晶層2が貼り合わされてなる。
セラミックス含有基板1は、耐熱性支持基板7に平坦化層8が積層されてなる。
耐熱性支持基板7は、セラミックスコア5が封止層6で被覆されてなる。
【0030】
(セラミックスコア5)
セラミックスコア5は、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化ガリウム(GaN)、窒化ホウ素(BN)またはこれらの混合体などを用いることができるが、熱膨張係数差や熱伝導度の観点からAlNを主成分とするセラミックスで作製されるのが望ましい。
【0031】
(封止層6)
封止層6は、セラミックスコア5に含有されている物質が外部に漏洩することを防止するための層で、セラミックスコア5を包み込むように全面に形成されている。封止層6は、SiOxNy(ここで、x=0~2、y=0~1.5、x+y>0)の組成式で表される組成物で作製される。封止層6はMOCVD法、常圧CVD法、LPCVD(低圧CVD)法、スパッター法などの成膜法を用いて成膜することができる。特に、LPCVD法を用いると緻密な膜を形成できるうえ、膜のカバレッジ性に優れるため好ましい。
【0032】
(耐熱性支持基板7)
セラミックスコア5と封止層6からなる耐熱性支持基板7に、0.2μm~3.0μmの平坦化層8が積層される。平坦化層8を成長することによって、耐熱性支持基板7のボイドや凹凸を埋めて、単結晶層2の貼り合せを容易にすることができる。平坦化層8は、窒化ケイ素や酸窒化ケイ素、砒化アルミニウムのいずれかを含むことが望ましい。成膜方法は、これに限定されないが、プラズマCVDやLPCVD, 低圧MOCVDで成膜することができる。
また、必要に応じてポリシリコンを含む導電層を形成しても良い。導電層は、ポリシリコンを含み、LPCVDプロセス等によって堆積され、約50~500nmの厚さを有する。これは導電性を付与するための層であり、例えばホウ素(B)やリン(P)等がドープされる。この導電層は、必要に応じて設けるものであって、なくても良く、また片面のみに成膜されていても良い。成膜される位置も、封止層6の内側(セラミックスコア5側)に限定されず、外側に設けても良い。
【0033】
(単結晶層2)
単結晶層2は、例えばシリコン単結晶層とすることができる。シリコン単結晶層は、シリコン単結晶から剥離、転写することで作製することができる。剥離・転写方法は、下記の方法に限定されないが、シリコン単結晶を準備する工程と、前記シリコン単結晶にイオン注入して脆弱層を形成する工程と、前記セラミックス含有基板1の平坦化層8と貼り合せて単結晶層2を分離する工程で作製することができる。イオン注入は、下記の元素に限定されないが、例えばH2,Ar,Heなどを用いることができる。また、単結晶層2は、品質の良い窒化物半導体をエピタキシャル成長できればよく、シリコン単結晶層以外でも例えば、SiGe,SiC,サファイヤ,GaN,AlGaN,AlNなどを使用することができる。
【0034】
(中間層10)
中間層10は、デバイス層13の結晶性改善や応力の制御のために挿入される緩衝層として働く。中間層10は、デバイス層13と同一の設備で作製できるので、窒化物で作製されることが望ましい。例えば、中間層10は、AlN、InN及びGaNの混晶により形成することができる。
【0035】
(窒化物半導体層4)
窒化物半導体層4の形成で、窒化物半導体層4に引張応力が印加されると、クラックの発生や剥離が懸念されるので、窒化物半導体層4に圧縮応力が印加されるように、中間層10を設計することが望ましい。中間層10によって圧縮応力を印加する方法は、下記の方法に限定されないが、窒化物半導体層4の格子定数より小さい格子定数の中間層を形成し、その直上に窒化物半導体層4を気相成長させることによって圧縮応力を発生させる方法で作製することができる。
一方、デバイス工程では反りが大きくなることで、吸着不良による落下や歩留まり低下が懸念されるので、窒化物半導体層4形成後の基板の反りは、Warp<50μm,|Bow|≦40μm、できればWarp<40μm,|Bow|≦30μmであることが望ましく、クラック、剥がれ防止のための圧縮応力により、反りが増大してしまうことを防止する必要がある。
【0036】
(デバイス層13)
複合基板3と中間層10の上に、MOVPE法やスパッタリングなどの気相成長で、窒化物の薄膜からなるデバイス層13を作製する。窒化物は、例えば、GaN,AlN,InN,AlGaN,InGaN,AlInN、AlScNなどを用いることができる。窒化物の薄膜は1~10μmで、デバイスに合わせて設計することができる。
例えば、高移動度トランジスタ(HEMT)構造では、デバイス層13は窒化ガリウム層11とその上に形成されるAlGaNからなる電子供給層12で構成される。デバイス層13は、デバイス特性の向上のため、結晶欠陥が少なく、炭素や酸素などの不純物が少ない結晶が望ましく、例えばMOVPE法を用いて900℃~1350℃で作製される。
デバイス層13は、窒化物半導体層4でもある。
【0037】
(窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法)
本発明の窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法は、セラミックス含有基板1とセラミックス含有基板1上に貼り合わされた単結晶層2とを有する複合基板3と、複合基板3上に中間層10を介してエピタキシャル成長された窒化物半導体層4と、を有する窒化物半導体エピタキシャルウエーハ100の製造方法である。
【0038】
以下に、GaN HEMTに好適なエピタキシャル層の成長方法を示す。
窒化物半導体エピタキシャルウエーハ100の製造方法は、例えば、複合基板準備工程と、複合基板導入工程と、複合基板クリーニング工程と、中間層形成工程と、窒化ガリウム層エピタキシャル成長工程と、電子供給層成長工程と、を有することができる。但し、本発明の方法はこれに限定されない。
【0039】
(複合基板準備工程)
複合基板準備工程は、複合基板3を準備する工程である。
複合基板3は、窒化物半導体層4をエピタキシャル成長させるための下地基板として用いる基板である。
複合基板3は、セラミックス含有基板1とセラミックス含有基板1上に貼り合わされた単結晶層2とを備え、窒化物半導体層4の熱膨張係数の±10%以内の熱膨張係数を有するセラミックス含有基板1を備え、-150<Bow(μm)≦40、Warp(μm)<150かつWarp(μm)<90-Bow(μm)の形状を有する。
複合基板3は、本発明の窒化物半導体エピタキシャルウエーハ用複合基板でもある。
【0040】
セラミックス含有基板1として、セラミックスコア5とセラミックスコア5を被覆する封止層6とを有する耐熱性支持基板7と、耐熱性支持基板7上に設けられた平坦化層8と、を有するものを用いることが好ましく、セラミックスコア5として、多結晶AlNセラミックスを主成分とするものを用いることが好ましい。これにより、セラミックス含有基板1の熱膨張係数を窒化物半導体層4の熱膨張係数の±10%以内にできる。
なお、熱膨張係数差が±10%以内というのは、800~1400℃(エピ成長中の温度域)における差である。
【0041】
封止層6を、SiOxNy(ここで、x=0~2、y=0~1.5、x+y>0)で表される組成物により形成することが好ましい。これにより、容易にセラミックスコア5を密封できる。
【0042】
平坦化層8を、SiOxNy(ここで、x=0~2、y=0~1.5、x+y>0)及び砒化アルミニウムのいずれかにより形成することが好ましい。これにより、容易に平坦面を形成できる。
【0043】
単結晶層2を、Si、SiGe、SiC、サファイヤ、GaN、AlGaN及びAlNのいずれかにより形成することが好ましい。
【0044】
(複合基板導入工程)
複合基板3を薬品によりクリーニングしてから、MOVPE装置の反応炉内に導入する。
複合基板3を反応炉内に導入後、窒素などの高純度不活性ガスで炉内を満たして、炉内を置換する。
【0045】
(複合基板クリーニング工程)
複合基板3を反応炉内で加熱して、基板の表面をクリーニングする。
クリーニングを行う温度は、基板表面の温度で1000℃から1200℃の間で決めることができるが、特に1050℃でクリーニングを行うことで清浄な表面を得ることができる。
クリーニングは、炉内の圧力が減圧された後に実施し、炉内圧力は200mbarから30mbarの間で決めることができる。例えば、炉内圧力を50mbarに設定してクリーニングを実施する。炉内に水素あるいは窒素を供給した状態で10分間クリーニングを行う。
【0046】
(中間層形成工程)
中間層形成工程は、複合基板3の単結晶層2上に窒化物半導体層4に対して圧縮応力を付与する中間層10を形成する工程である。
この工程では、規定の炉内圧力および基板温度において、原料であるAl,Ga,N源となるガスを導入することによって、複合基板3の単結晶層2上に、AlNあるいはAlxGa1-xN(0≦x<1)をエピタキシャル成長させる。
また、この工程では、例えば、炉内圧力は50mbar、基板温度1120℃で成長を行う。Al源としてはトリメチルアルミニウム(TMAl),Ga源としてはトリメチルガリウム(TMGa),N源としてはアンモニア(NH3)を用いる。また、所望のAl組成の混晶を得るために、原料ガスの材料効率を考慮して、薄膜中に取り込まれるAl/Ga比が設定している比率になるように、原料のTMAl,TMGaの流量を設定する。この工程では、TMAlの流量を標準状態で0.24(L/min)(240sccm),NH3の流量は2(L/min)(2000sccm)でAlNの成長を行う。TMAl,TMGa,NH3のキャリアガスは、例えば、水素を使用することができる。これらの条件は一例であり、特に限定されるものではない。
【0047】
中間層10の膜厚を調整することにより、Warp(μm)<50、|Bow(μm)|≦40の形状を有する窒化物半導体エピタキシャルウエーハ100を製造する。
中間層10の膜厚を調整するとは、例えば、(1)複合基板3上に、MOCVD法でAlNとAlGaNからなる中間層10を形成する、AlN層は250nm成長し、AlGaN層はAl組成を基板側から表面側に向かって減少するように450nm成膜すること、(2)複合基板3上に、MOCVD法でAlNとAlGaNからなる中間層10を形成する、AlN層は250nm成長し、AlGaN層はAl組成を基板側から表面側に向かって減少するように90nm成膜すること、(3)MOCVD法でAlNとAlGaNからなる中間層10を形成する、AlN層は250nm成長し、AlGaN層はAl組成を基板側から表面側に向かって減少するように150nm成膜することなどである。Al組成を減少させる方法は、連続的でも不連続的でも良く、また層全体として表面側に向かって減少し窒化物半導体層4に対して圧縮応力をかけられるものであれば局部的にAl組成が高くなる箇所を伴っても良い。
【0048】
中間層10を、AlN、InN及びGaNの混晶により形成することが好ましい。
【0049】
(窒化ガリウム層エピタキシャル成長工程)
窒化ガリウム層エピタキシャル成長工程は、中間層10上に窒化ガリウム層11をエピタキシャル成長させる工程である。
この工程では、規定の炉内圧力および基板温度において、原料であるGa,N源となるガスを導入することによって、中間層10上に、GaNあるいはAlxGa1-xN(0<x≦1)からなる窒化ガリウム層11をエピタキシャル成長させる。
また、この工程では、例えば、炉内圧力は200mbar、基板温度1120℃で成長を行う。Ga源としてはトリメチルガリウム(TMGa),N源としてはアンモニア(NH3)を用いた。また、所望のAl組成の混晶を得るために、原料ガスの材料効率を考慮して、薄膜中に取り込まれるAl/Ga比が設定している比率になるように、原料のTMAl,TMGaの流量を設定する。TMAl,TMGa,NH3のキャリアガスは、例えば、水素を使用することができる。これらの条件は一例であり、特に限定されるものではない。
【0050】
(電子供給層成長工程)
この工程では、規定の炉内圧力および基板温度において、原料であるAl,Ga,N源となるガスを導入することによって、窒化ガリウム層11上に、AlxGa1-xN(0<x≦1)からなる電子供給層12をエピタキシャル成長させる。
この工程では、例えば、炉内圧力は150mbar、基板温度1120℃で成長を行う。Al源としてはトリメチルアルミニウム(TMAl),Ga源としてはトリメチルガリウム(TMGa),N源としてはアンモニア(NH3)を用いる。また、所望のAl組成の混晶を得るために、原料ガスの材料効率を考慮して、薄膜中に取り込まれるAl/Ga比が設定している比率になるように、原料のTMAl,TMGaの流量を設定する。TMAl,TMGa,NH3のキャリアガスは、例えば、水素を使用することができる。これらの条件は一例であり、特に限定されるものではない。
【0051】
(WarpとBowの基準についての説明)
購入した複合基板3はフラットなものばかりではない。こうした複合基板3にGaNを積むと、GaNは基板の形状や素材の違いから生じる様々な応力をうけ、エピ形成後基板の反りが決まる。また、Si上に品質の良いGaNを直接成長させることは難しいため、下地層の機能が優れているAl含有窒化物層を中間層10として設ける。中間層10の厚さや組成構成によって基板から窒化ガリウム(GaN)層11にかかる応力を調整し、ひいては全体の反りを制御することが可能とわかった。中間層10でGaNに対し引っ張り応力を書けるとGaNエピを-方向に反らせるはずだが、GaNエピに対して引っ張り応力をかけるとエピが剥がれるとわかった。よって、中間層10ではGaNに対し圧縮応力、すなわち+に反りが発生する方向に応力をかけることが望ましいとわかった。
【0052】
このようにGaNに対して圧縮応力を持つ中間層10を加えたエピ形成後基板の反りは、元の複合基板3の反りにこの+反りが乗ることになる。このため、複合基板3の段階で-の反りなら、エピ形成で+の圧縮応力をかけることで、相殺してエピ形成後の反りの絶対値は小さくできるが、複合基板3の段階で+の反りがエピ後の目標値上限である40μmを超えると、エピ形成後の反りを40μm以下にするには引っ張り応力を持つ中間層10とするしかなく、それだと剥がれが発生してしまう。
圧縮応力の大きさは厚さなどで制御できるため、複合基板3が+に反っているほど、小さな圧縮応力の中間層10を採用すればよい。
【0053】
また、複合基板3のWarpに関しても、中間層10で圧縮歪をかけてエピタキシャル層基板(窒化物半導体層4形成後の基板100のこと)のBowが40μmになるまでは正側に反りを修正が可能になるので、エピタキシャル工程(中間層+デバイス層こと)で最大で(40-複合基板のBow)μm修正が可能と考えられる。よって、エピタキシャル基板のWarp50μm未満を実現するには、複合基板のWarpは50+(40-Bow)μmが最大の反り量と考えられる。一方、成長中の変位量が大きいとウエーハの形状変化により膜厚分布が変化するので、Bow,Warpは150μm未満が望ましい。
【0054】
上記の段落は、複合基板3のWarpの数値の根拠を説明している。前半は90-bowにすべき説明である。エピ工程は+反りを生むことが望ましいが、エピ工程での反り変化値を+Δとしたとき、+Δは(40-複合基板Bow)まで許容できるという事である。具体的には、エピ後に目指す+反り上限はBow≦40なので、例えば、複合基板Bow=40なら、+Δ=40-40=0で中間層10以降の工程で+に反らせる余裕はなく、Bow=39なら+Δ=1でとなり、1μmだけ反らせられる余地があるということである。この余地分+ΔをWarpの上限50に加えてWarpの上限<(90-複合基板Bow)に到達しているとみられる。
【0055】
このように前半部分は、複合基板3が既に+に反っていてエピ工程で加えられる+Δがエピ後のBow=+40を上限にして決まるものであることを説明しているのに対し、最後の一文は、+Δが大きすぎると良くないという話であるから、複合基板3の許容できる-側の下限に言及している。複合基板3が-に反っていれば、当然エピ後の+上限までの余裕が大きくなる。例えば、複合基板3のBow=-150なら、エピ工程で+110反らせてエピの目標下限-40にもできるし、+190反らせてエピの上限+40にすることもできる。逆に、エピ工程で+190以上反らせてもよいのであれば、複合基板3はもっと大きな-値まで許容できるが、そこまで+Δを大きくすると問題が生じる。
【0056】
複合基板3の形状をコントロールする方法は、下記の方法に限定されないが、セラミックスコア5を研磨加工によって凹形状にする方法やSiO2膜を片面に成膜して反らせる方法、凹形状のセラミックスコア5を選別する方法で作製することができる。
例えば、セラミックスコア5を研磨加工によってBow-50μm狙いで加工を行う。凹形状に加工する方法は、下記に限定されないが、例えば、表面側に接触する研磨定盤の形状を凸形状にすることによって作製することができる。その後、セラミックスコア5を包み込むように封止層6を0.05~1.5μm成膜し、耐熱性支持基板7を作製する。成膜方法は、下記に限定されないが例えば、LPCVD法で成長すると良い。
【0057】
続いて、耐熱性支持基板7の上面に、0.2~3μmの平坦化層8を成膜してセラミックス含有基板1を作製する。平坦化層8の成膜は、下記に限定されないがプラズマCVD,LPCVD,減圧MOCVD法で成膜することができる。また、耐熱性支持基板7の下面に応力調整層を形成し、反りを調整しても良い。耐熱性支持基板7に 前記セラミックス含有基板1に単結晶層2を転写することで複合基板を得ることができる。
平坦化層8は、基板7の表面側のみに形成されるため複合基板3に反りを生じさせる原因となるが、セラミックスコア5を加工することによって、複合基板3のBowを-150~40μmの範囲で、Warp<150μmかつWarp<90-Bowにコントロールすることができる。あるいは、平坦化層8の成膜と同時、あるいは成膜後に耐熱性支持基板7の裏面に応力調整層を形成して、複合基板3のBowが-150~40μmの範囲で、Warp<150μmかつWarp<90-Bowにコントロールすることができる。
【0058】
以上のように、本発明の窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法を用いることによって、Warp(μm)<50,|Bow(μm)|≦40で、クラックやエピ剥がれの無い安価なGaNエピタキシャル基板を歩留まり良く得ることができる。
【実施例0059】
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0060】
[実施例1]
AlNセラミックス(抵抗率1014Ωcm以上)で作製したセラミックスコアを準備した。
セラミックスコアの形状を機械研磨で凹形状になるように加工を行った。
加工後の基板を形状測定器(大塚電子製 OPTM)で測定した結果、Bowは-189μmで,Warpは189μmであった。
続いて、窒化ケイ素からなる封止層と、酸化ケイ素からなる平坦化層を2μm成長させ、セラミックス含有基板を作製した。
その後、セラミックス含有基板にシリコン単結晶膜300nmを貼り合わせ、複合基板を作製した。
シリコン単結晶膜は、Si<111>基板を準備し、イオン注入により脆弱層を形成、セラミックス含有基板に転写することで形成した。
【0061】
このようにして作製した複合基板上に、MOCVD法でAlNとAlGaNからなる中間層を形成した。
AlN層は250nm成長し、AlGaN層はAl組成を基板側から表面側に向かって減少するように、450nmのAlGaN層を成膜した。
中間層の成膜後、デバイス層となる窒化ガリウム層5750nmとAlGaNからなる電子供給層25nmを成長し、窒化物半導体エピタキシャルウエーハを作製した。
窒化ガリウム層の膜厚としては、GaN HEMTデバイスを作製するのに十分な転位密度や耐圧が得られる膜厚として5750nmを採用した。
また、デバイス設計の都合で、窒化ガリウム層の膜厚をさらに増大させても、中間層との界面の格子定数差による応力は緩和しているため、反りに大きな影響は与えない。
【0062】
[実施例2]
セラミックスコアの加工後のBowを-1μm,Warpを47μmにした以外、材質、作製条件は実施例1と同様にした複合基板を作製した。
【0063】
このようにして作製した複合基板上に、MOCVD法でAlNとAlGaNからなる中間層を形成した。
AlN層は250nm成長し、AlGaN層はAl組成を基板側から表面側に向かって減少するように、90nmのAlGaN層を成膜した。
中間層の成膜後、デバイス層となる窒化ガリウム層5750nmとAlGaNからなる電子供給層25nmを成長し、窒化物半導体エピタキシャルウエーハを作製した(エピ工程は中間層以外実施例1と同じ)。
【0064】
[実施例3]
セラミックスコアの加工後のBowを-100μm,Warpを189μmにした以外、複合基板、中間層、窒化物半導体層の材質、作製条件は実施例1と同様にした窒化物半導体エピタキシャルウエーハを作製した。
【0065】
[実施例4]
セラミックスコアの加工後のBowを-30μm,Warpを49μmにした以外、材質、作製条件は実施例1と同様にした複合基板を作製した。
【0066】
このようにして作製した複合基板上に、MOCVD法でAlNとAlGaNからなる中間層を形成した。
AlN層は250nm成長し、AlGaN層はAl組成を基板側から表面側に向かって減少するように、150nmのAlGaN層を成膜した。
中間層の成膜後、デバイス層となる窒化ガリウム層5750nmとAlGaNからなる電子供給層25nmを成長し、窒化物半導体エピタキシャルウエーハを作製した。
【0067】
[比較例1]
セラミックスコアの加工後のBowを-191μm,Warpを191μmにした以外、複合基板、中間層、窒化物半導体層の材質、作製条件は実施例1と同様にした窒化物半導体エピタキシャルウエーハを作製した。
【0068】
[比較例2]
セラミックスコアの加工後のBowを1μm,Warpを49μmにした以外、複合基板、中間層、窒化物半導体層の材質、作製条件は実施例2と同様にした窒化物半導体エピタキシャルウエーハを作製した。
【0069】
[比較例3]
セラミックスコアの加工後のBowを-100μm,Warpを190μmにした以外、複合基板、中間層、窒化物半導体層の材質、作製条件は実施例1と同様にした窒化物半導体エピタキシャルウエーハを作製した。
【0070】
[比較例4]
セラミックスコアの加工後のBowを-30μm,Warpを50μmにした以外、複合基板、中間層、窒化物半導体層の材質、作製条件は実施例4と同様にした窒化物半導体エピタキシャルウエーハを作製した。
【0071】
[比較例5]
セラミックスコアの加工後のBowを0μm,Warpを49μmにした以外、材質、作製条件は実施例1と同様にした複合基板を作製した。
【0072】
このようにして作製した複合基板上に、MOCVD法でAlNとGaN,AlGaNからなる中間層を形成した。
比較例5では、AlN層は250nm成長し、AlGaN層をAl組成50%のAlGaN層を180nm,Al組成60%のAlGaN層を800nm成長させることで、Al組成を基板側から表面側に向かって増加するように成膜した。
中間層の成膜後、デバイス層となる窒化ガリウム層5750nmとAlGaNからなる電子供給層25nmを成長し、窒化物半導体エピタキシャルウエーハを作製した。
【0073】
上記の実施例と比較例で作製されたウエーハの反り(Bow,Warp)を形状測定器(大塚電子製 OPTM)で測定した。また、外周部の剥がれを、目視と実体顕微鏡で観察した。
反り測定の結果と、外周部の剥がれ観察の結果を表1に示す。
【0074】
【0075】
実施例1~4では、本発明の方法に従って作製されており、窒化物半導体層の成長後の反りは、|Bow|≦40μm,Warp<50μmであった。また、外周部観察の結果、剥がれは見られなかった。
比較例1~4では、窒化物半導体層の成長後の反りは、エピタキシャル工程中に増大し、反り不良となった。
また、比較例5では、エピタキシャル成長中の応力によって引張応力が印加されて、反りは|Bow|≦40μm,Warp<50μmであったが、外周部からエピタキシャル層が剥離しており、不良になった。
また、比較例4、5では、複合基板がWarp(μm)<90-Bow(μm)の形状を有しないものとなった。
【0076】
以上のとおり、本発明の実施例によれば、反りが小さく、クラック、剥がれのないエピタキシャル基板を得ることができた。
【0077】
本明細書は、以下の態様を包含する。
[1]:セラミックス含有基板と前記セラミックス含有基板上に貼り合わされた単結晶層とを有する複合基板と、前記複合基板上にエピタキシャル成長された窒化物半導体層と、を有する窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法であって、前記複合基板として、前記窒化物半導体層の熱膨張係数の±10%以内の熱膨張係数を有するセラミックス含有基板を備え、-150<Bow(μm)≦40、Warp(μm)<150かつWarp(μm)<90-Bow(μm)の形状を有するものを準備する工程と、前記複合基板の前記単結晶層上に前記窒化物半導体層に対して圧縮応力を付与する中間層を形成する工程と、前記中間層上に前記窒化物半導体層をエピタキシャル成長させる工程と、を含み、前記中間層の膜厚を調整することにより、Warp(μm)<50、|Bow(μm)|≦40の形状を有する窒化物半導体エピタキシャルウエーハを製造することを特徴とする窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法。
[2]:前記セラミックス含有基板として、セラミックスコアと前記セラミックスコアを被覆する封止層とを有する耐熱性支持基板と、前記耐熱性支持基板上に設けられた平坦化層と、を有するものを用いることを特徴とする上記[1]の窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法。
[3]:前記セラミックスコアとして、多結晶AlNセラミックスを主成分とするものを用いることを特徴とする上記[2]の窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法。
[4]:前記封止層を、SiOxNy(ここで、x=0~2、y=0~1.5、x+y>0)で表される組成物により形成することを特徴とする上記[2]又は上記[3]の窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法。
[5]:前記平坦化層を、SiOxNy(ここで、x=0~2、y=0~1.5、x+y>0)及び砒化アルミニウムのいずれかにより形成することを特徴とする上記[2]~上記[4]のいずれかの窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法。
[6]:前記単結晶層を、Si、SiGe、SiC、サファイヤ、GaN、AlGaN及びAlNのいずれかにより形成することを特徴とする上記[1]~上記[5]のいずれかの窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法。
[7]:前記中間層を、AlN、InN及びGaNの混晶により形成することを特徴とする上記[1]~上記[6]のいずれかの窒化物半導体エピタキシャルウエーハの製造方法。
[8]:窒化物半導体層をエピタキシャル成長させるための下地基板として用いる窒化物半導体エピタキシャルウエーハ用複合基板であって、セラミックス含有基板と前記セラミックス含有基板上に貼り合わされた単結晶層とを備え、前記セラミックス含有基板は、前記窒化物半導体層の熱膨張係数の±10%以内の熱膨張係数を有し、-150<Bow(μm)≦40、Warp(μm)<150かつWarp(μm)<90-Bow(μm)の形状を有するものであることを特徴とする窒化物半導体エピタキシャルウエーハ用複合基板。
【0078】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
1…セラミックス含有基板、2…単結晶層、3…複合基板(「窒化物半導体エピタキシャルウエーハ用複合基板」)、4…窒化物半導体層、5…セラミックスコア、6…封止層、7…耐熱性支持基板、8…平坦化層、10…中間層、11…窒化ガリウム層、12…電子供与層、13…デバイス層、100…窒化物半導体エピタキシャルウエーハ。