(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060694
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】コンバイン及びコンバインの制御方法
(51)【国際特許分類】
A01D 41/127 20060101AFI20240425BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
A01D41/127 130
A01D41/127 110
A01B69/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168111
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】栗原 英治
(72)【発明者】
【氏名】小林 太一
【テーマコード(参考)】
2B043
2B396
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB15
2B043BA02
2B043BB14
2B043EA13
2B043EC12
2B043EC13
2B043EC14
2B043EE01
2B043EE05
2B043EE06
2B396JA04
2B396JC06
2B396PC01
2B396PC05
2B396PC06
2B396PC07
2B396PC12
2B396QA18
2B396QA28
2B396QA29
2B396QE01
2B396QE31
(57)【要約】 (修正有)
【解決手段】刈り取った穀稈から穀粒を脱穀し、脱穀した穀粒をグレンタンクに貯留するコンバイン10であって、当該コンバイン10は、グレンタンク60内に流入する穀粒の単位時間当たりの流量を取得する流量取得部34と、グレンタンク60内に流入する穀粒の水分含有率を取得する水分含有率取得部36と、流量及び水分含有率に基づき、コンバイン10の走行速度を設定する走行速度設定部38と、を有する。
【効果】穀粒の水分含有率が比較的高い状態である場合であっても、脱穀選別損失の増加を抑えることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈り取った穀稈から穀粒を脱穀し、脱穀した前記穀粒をグレンタンクに貯留するコンバインであって、
前記グレンタンク内に流入する前記穀粒の単位時間当たりの流量を取得する流量取得部と、
前記グレンタンク内に流入する前記穀粒の水分含有率を取得する水分含有率取得部と、
前記流量及び前記水分含有率に基づき、前記コンバインの走行速度を設定する走行速度設定部と、
を有する、コンバイン。
【請求項2】
請求項1に記載のコンバインにおいて、
単位面積当たりの収量を取得する収量取得部を有し、
前記走行速度設定部は、前記流量、前記水分含有率及び前記収量に基づき、前記コンバインの走行速度を設定する、コンバイン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコンバインにおいて、
前記コンバインを走行させる走行駆動機構と、
前記走行駆動機構を制御して、前記コンバインを設定された前記走行速度で走行させる走行駆動機構制御部を有する、コンバイン。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のコンバインにおいて、
オペレータに情報を報知する報知部と、
前記報知部を制御して、設定された前記走行速度に基づき、前記走行速度を増速又は減速させる情報を前記オペレータに報知する報知制御部を有する、コンバイン。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のコンバインにおいて、
グレンパン上の滞留物を前記グレンパンから排出する滞留解消装置を有する、コンバイン。
【請求項6】
刈り取った穀稈から穀粒を脱穀し、脱穀した前記穀粒をグレンタンクに貯留するコンバインの制御方法であって、
前記グレンタンク内に流入する前記穀粒の単位時間当たりの流量を取得する流量取得ステップと、
前記グレンタンク内に流入する前記穀粒の水分含有率を取得する水分含有率取得ステップと、
前記流量及び前記水分含有率に基づき、前記コンバインの走行速度を設定する走行速度設定ステップと、
を有する、コンバインの制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載のコンバインの制御方法において、
単位面積当たりの収量を取得する収量取得ステップを有し、
前記走行速度設定ステップは、前記流量、前記水分含有率及び前記収量に基づき、前記コンバインの走行速度を設定する、コンバインの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン及びコンバインの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、コンバインが開示されている。当該コンバインは、穀稈から脱穀された被脱穀物のうち、藁屑等と穀粒とを選別する選別部を有する。選別部により選別された穀粒は、グレンタンクに貯留される。選別部により選別された藁屑等は、コンバインの機外に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された技術では、穀粒の水分含有率が比較的高い状態である場合、選別部における選別精度が低下する。そのため、藁屑等とともに機外に排出される穀粒が増加し、脱穀選別損失が増加する課題がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、刈り取った穀稈から穀粒を脱穀し、脱穀した前記穀粒をグレンタンクに貯留するコンバインであって、当該コンバインは、前記グレンタンク内に流入する前記穀粒の単位時間当たりの流量を取得する流量取得部と、前記グレンタンク内に流入する前記穀粒の水分含有率を取得する水分含有率取得部と、前記流量及び前記水分含有率に基づき、前記コンバインの走行速度を設定する走行速度設定部と、を有する。
【0007】
本発明の第2の態様は、刈り取った穀稈から穀粒を脱穀し、脱穀した前記穀粒をグレンタンクに貯留するコンバインの制御方法であって、当該制御方法は、前記グレンタンク内に流入する前記穀粒の単位時間当たりの流量を取得する流量取得ステップと、前記グレンタンク内に流入する前記穀粒の水分含有率を取得する水分含有率取得ステップと、前記流量及び前記水分含有率に基づき、前記コンバインの走行速度を設定する走行速度設定ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、穀粒の水分含有率が比較的高い状態である場合であっても、脱穀選別損失の増加を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】
図3は、コンバインの制御ブロック図である。
【
図5】
図5は、制御装置において実行される走行制御処理を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、制御装置において実行される滞留解消装置制御処理を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、コンバインの制御ブロック図である。
【
図9】
図9は、制御装置において実行される走行制御処理を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、制御装置において実行される走行制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔第1実施形態〕
[コンバインの構成]
図1は、コンバイン10の左側面図である。
図2は、コンバイン10の右側面図である。コンバイン10は、走行部50、刈取部52、搬送部54、脱穀部56、選別部58、搬送オーガ59、グレンタンク60及び穀粒排出部64を有する。
【0011】
走行部50は、クローラ等の無限軌道を回転させてコンバイン10を走行させる。刈取部52は、圃場の穀稈を刈り取る。搬送部54は、刈取部52によって刈り取られた穀稈を後方の脱穀部56に搬送する。脱穀部56は、搬送部54によって搬送された穀稈から穀粒を脱穀する。選別部58は、脱穀部56によって脱穀された穀粒と穀粒に混ざる異物(藁屑)との中から穀粒を選別する。
【0012】
搬送オーガ59は、選別部58によって選別された穀粒をグレンタンク60の穀粒口62に搬送する。グレンタンク60は、穀粒を一時的に貯留する。穀粒排出部64は、グレンタンク60からコンバイン10の外部のコンテナ等に穀粒を排出する。
【0013】
図3は、コンバイン10の制御ブロック図である。コンバイン10は、重量計測部12、水分含有率計測部14、走行速度計測部16、搬送部駆動状態検出部18、走行駆動機構20、滞留解消装置22及び制御装置24を有する。
【0014】
重量計測部12は、グレンタンク60内に貯留された穀粒の重量を計測する。水分含有率計測部14は、グレンタンク60内に流入する穀粒の水分含有率を計測する。走行速度計測部16は、コンバイン10の走行速度を計測する。搬送部駆動状態検出部18は、搬送部54が駆動状態であるか停止状態であるかを検出する。
【0015】
走行駆動機構20は、コンバイン10の走行部50を駆動する機構である。走行駆動機構20は、例えば、エンジン、無段変速機等である。
【0016】
滞留解消装置22は、選別部58の揺動選別装置25に設けられる。
図4は、揺動選別装置25の模式図である。揺動選別装置25は、グレンパン26、チャフシーブ28及びストローラック30を有する。滞留解消装置22は、グレンパン26に設けられたワイパ32である。ワイパ32が駆動することにより、グレンパン26上の滞留物が排出される。滞留解消装置22は、グレンパン26上の滞留物を排出可能な機構であれば、ワイパ32に限られない。
【0017】
制御装置24は、流量取得部34、水分含有率取得部36、走行速度設定部38、走行駆動機構制御部40及び滞留解消装置制御部42を有する。流量取得部34、水分含有率取得部36、走行速度設定部38、走行駆動機構制御部40及び滞留解消装置制御部42は、例えば処理回路によって実現される。
【0018】
処理回路は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路によって構成される。また、処理回路が、ディスクリートデバイスを含む電子回路によって構成されるようにしてもよい。
【0019】
なお、処理回路が、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサによって構成されるようにしてもよい。この場合、不図示の記憶部に記憶されているプログラムがプロセッサによって実行されることによって処理回路が実現される。
【0020】
流量取得部34は、重量計測部12からグレンタンク60内に貯留された穀粒の重量を取得する。流量取得部34は、穀粒の重量の時間変化に基づいて、グレンタンク60の穀粒口62を通過する穀粒の1時間当たりの重量を求める。以下、グレンタンク60の穀粒口62を通過する穀粒の1時間当たりの重量を、穀粒口流量と記載することがある。
【0021】
流量取得部34は、グレンタンク60の穀粒口62付近に設けられた不図示の流量センサから、グレンタンク60の穀粒口62を通過する穀粒の単位時間当たりの重量を取得してもよい。この場合、流量取得部34は、取得したグレンタンク60の穀粒口62を通過する穀粒の単位時間当たりの重量を1時間当たりの重量に換算する。
【0022】
水分含有率取得部36は、グレンタンク60内に流入する穀粒の水分含有率を水分含有率計測部14から取得する。以下、グレンタンク60内に流入する穀粒の水分含有率を、穀粒水分率と記載することがある。
【0023】
走行速度設定部38は、穀粒口流量及び穀粒水分率に基づいて、コンバイン10の走行速度を設定する。以下では、走行速度設定部38において設定された走行速度を、設定走行速度と記載することがある。走行速度の設定については、後に詳述する。
【0024】
走行駆動機構制御部40は、走行駆動機構20を制御して、コンバイン10の走行速度を設定走行速度にする。
【0025】
滞留解消装置制御部42は、滞留解消装置22を制御して、グレンパン26上の滞留物を排出する。
【0026】
[走行制御処理]
図5は、制御装置24において実行される走行制御処理を示すフローチャートである。走行制御処理は、コンバイン10に対して自動走行モードが選択されている場合に実行される。自動走行モードの選択は、オペレータにより行われてもよい。
【0027】
ステップS1において、流量取得部34は、穀粒口流量を取得する。その後、ステップS2へ移行する。
【0028】
ステップS2において、水分含有率取得部36は、穀粒水分率を取得する。その後、ステップS3へ移行する。
【0029】
ステップS3において、走行速度設定部38は、穀粒口流量が1250kg/h以上であるか否かを判定する。穀粒口流量が1250kg/h以上である場合(ステップS3:YES)には、ステップS4へ移行する。穀粒口流量が1250kg/h未満である場合(ステップS3:NO)には、ステップS6へ移行する。
【0030】
ステップS4において、走行速度設定部38は、穀粒水分率が25%以上であるか否かを判定する。穀粒水分率が25%以上である場合(ステップS4:YES)には、ステップS5へ移行する。穀粒水分率が25%未満である場合(ステップS4:NO)には、ステップS6へ移行する。
【0031】
ステップS5において、走行速度設定部38は、設定走行速度を、現在の走行速度に対して10%減速させた速度に設定する。その後、ステップS7へ移行する。ただし、10%減速させた後の速度が、予め設定された最低走行速度以下となる場合、走行速度設定部38は、設定走行速度を最低走行速度に設定する。
【0032】
ステップS6において、走行速度設定部38は、設定走行速度を、現在の走行速度に対して10%増速させた速度に設定する。その後、ステップS7へ移行する。ただし、10%増速させた後の速度が、予め設定された最高走行速度以上となる場合、走行速度設定部38は、設定走行速度を最高走行速度に設定する。
【0033】
ステップS7において、走行駆動機構制御部40は、走行駆動機構20を制御して、コンバイン10の走行速度を、設定走行速度にする。
【0034】
ステップS8において、走行駆動機構制御部40は、ステップS5又はステップS6において設定走行速度が変更されてからの経過時間が1秒以上であるか否かを判定する。経過時間が1秒以上である場合(ステップS8:YES)、ステップS1へ移行する。経過時間が1秒未満である場合(ステップS8:NO)、ステップS7の処理を繰り返す。すなわち、設定走行速度が変更されてから1秒間は、コンバイン10の走行速度が維持される。
【0035】
[滞留解消装置制御処理]
図6は、制御装置24において実行される滞留解消装置制御処理を示すフローチャートである。滞留解消装置制御処理は、コンバイン10に対して自動滞留解消モードが設定されている場合に実行される。自動滞留解消モードの設定は、オペレータにより行われてもよい。
【0036】
ステップS11において、滞留解消装置制御部42は、搬送部54の駆動状態を取得する。その後、ステップS12へ移行する。
【0037】
ステップS12において、滞留解消装置制御部42は、搬送部54が停止状態であるか否かを判定する。搬送部54が停止状態である場合(ステップS12:YES)、ステップS13へ移行する。搬送部54が駆動状態である場合(ステップS12:NO)、ステップS14へ移行する。
【0038】
ステップS13において、滞留解消装置制御部42は、滞留解消装置22を制御して、滞留解消装置22を駆動させる。その後、ステップS11に戻る。
【0039】
ステップS14において、滞留解消装置制御部42は、滞留解消装置22を制御して、滞留解消装置22を停止させる。その後、ステップS11に戻る。滞留解消装置22が既に停止している場合、滞留解消装置制御部42は、滞留解消装置22を制御して、滞留解消装置22が停止した状態を維持する。
【0040】
自動滞留解消モードが設定されていない場合、オペレータのスイッチ操作により、滞留解消装置22が駆動又は停止する。滞留解消装置22の駆動速度は、低速、中速及び高速の3段階を選択可能である。滞留解消装置22の駆動速度の選択は、オペレータにより行われてもよい。滞留解消装置22の駆動速度は、3段階に限らなくてもよい。
【0041】
[作用効果]
穀粒水分率が比較的高い状態である場合、選別部58における選別精度が低下する。そのため、藁屑等とともに機外に排出される穀粒が増加し、脱穀選別損失が増加する課題がある。脱穀選別損失とは、排稈口損失と排塵口損失との合計である。
【0042】
図7は、脱穀選別損失を示すグラフである。
図7は、穀粒水分率及び穀粒口流量に対する脱穀選別損失を示す。
図7では、脱穀選別損失が円の大きさで示される。
【0043】
図7に示すように、穀粒水分率が25%以上であって、穀粒口流量が1250kg/h以上である場合、脱穀選別損失が3%以上となる。一方、穀粒水分率が25%以上である場合であっても、穀粒口流量が1250kg/h未満である場合、脱穀選別損失が3%未満となる。すなわち、穀粒水分率が比較的高い状態であっても、穀粒口流量を低下させれば、脱穀選別損失の増加を抑制できる。コンバイン10の走行速度を低下させることにより、刈取部52によって刈り取られる穀稈量が減少する。そのため、脱穀部56に搬送される穀稈量が減少する。その結果、グレンタンク60内に供給される穀粒口流量を低下させることが可能である。
【0044】
そこで、本実施形態のコンバイン10では、走行速度設定部38は、穀粒口流量及び穀粒水分率に基づき、コンバイン10の設定走行速度を設定する。これにより、本実施形態のコンバイン10は、穀粒水分率が高い状態である場合に脱穀選別損失の増加を抑制する設定走行速度を設定できる。
【0045】
また、本実施形態のコンバイン10では、走行駆動機構制御部40は、設定走行速度に基づき、走行駆動機構20を制御して、コンバイン10の走行速度を設定走行速度にする。これにより、本実施形態のコンバイン10は、穀粒水分率が高い状態である場合に脱穀選別損失の増加を抑制できる。
【0046】
また、本実施形態のコンバイン10は、滞留解消装置22を有する。これにより、本実施形態のコンバイン10は、グレンパン26上の滞留物をグレンパン26から排出できる。
【0047】
〔第2実施形態〕
[コンバインの構成]
図8は、コンバイン10の制御ブロック図である。本実施形態のコンバイン10は、報知部44を有する。本実施形態のコンバイン10では、制御装置24は、第1実施形態の走行駆動機構制御部40の代わりに、報知制御部46を有する。本実施形態のコンバイン10のその他の構成は、第1実施形態のコンバイン10と同じである。
【0048】
報知部44は、オペレータに情報を報知する装置である。報知部44は、例えば、画像、文字等を表示する表示装置である。表示装置に画像、文字等を表示させることにより、報知部44は、オペレータに情報を報知する。報知部44は、ランプであってもよい。ランプを点灯させることにより、報知部44は、オペレータに情報を報知してもよい。また、報知部44は、音声を出力するスピーカーであってもよい。スピーカーから出力される音声により、報知部44は、オペレータに情報を報知してもよい。
【0049】
報知制御部46は、報知部44を制御して、オペレータに情報を報知する。オペレータに報知する内容は、例えば、コンバイン10の走行速度を増速させる、又は、減速させる情報である。コンバイン10の走行速度を増速させる情報が報知された場合、オペレータは、コンバイン10を操作して、コンバイン10を増速させることが求められる。コンバイン10の走行速度を減速させる情報が報知された場合、オペレータは、コンバイン10を操作して、コンバイン10を減速させることが求められる。
【0050】
[走行制御処理]
図9は、制御装置24において実行される走行制御処理を示すフローチャートである。走行制御処理は、コンバイン10が穀稈の刈り取りを行う間、所定の周期で実行される。
【0051】
ステップS21において、流量取得部34は、穀粒口流量を取得する。その後、ステップS22へ移行する。
【0052】
ステップS22において、水分含有率取得部36は、穀粒水分率を取得する。その後、ステップS23へ移行する。
【0053】
ステップS23において、走行速度設定部38は、穀粒口流量が1250kg/h以上であるか否かを判定する。穀粒口流量が1250kg/h以上である場合(ステップS23:YES)には、ステップS24へ移行する。穀粒口流量が1250kg/h未満である場合(ステップS23:NO)には、ステップS26へ移行する。
【0054】
ステップS24において、走行速度設定部38は、穀粒水分率が25%以上であるか否かを判定する。穀粒水分率が25%以上である場合(ステップS24:YES)には、ステップS25へ移行する。穀粒水分率が25%未満である場合(ステップS24:NO)には、ステップS26へ移行する。
【0055】
ステップS25において、走行速度設定部38は、設定走行速度を、現在の走行速度に対して10%減速させた速度に設定する。その後、ステップS27へ移行する。ただし、10%減速させた後の速度が、予め設定された最低走行速度以下となる場合、走行速度設定部38は、設定走行速度を最低走行速度に設定する。
【0056】
ステップS26において、走行速度設定部38は、設定走行速度を、現在の走行速度に対して10%増速させた速度に設定する。その後、ステップS27へ移行する。ただし、10%増速させた後の速度が、予め設定された最高走行速度以上となる場合、走行速度設定部38は、設定走行速度を最高走行速度に設定する。
【0057】
ステップS27において、報知制御部46は、報知部44を制御して、オペレータに報知する。その後、ステップS28へ移行する。報知制御部46は、コンバイン10の走行速度が設定走行速度よりも速い場合、オペレータにコンバイン10を減速させる情報を報知する。報知制御部46は、コンバイン10の走行速度が設定走行速度よりも遅い場合、オペレータにコンバイン10を増速させる情報を報知する。
【0058】
ステップS28において、報知制御部46は、ステップS25又はステップS26において設定走行速度が変更されてからの経過時間が1秒以上であるか否かを判定する。経過時間が1秒以上である場合(ステップS28:YES)、ステップS21へ移行する。経過時間が1秒未満である場合(ステップS28:NO)、ステップS27の処理を繰り返す。すなわち、設定走行速度が変更されてからの1秒間は、設定走行速度は維持される。
【0059】
[作用効果]
本実施形態のコンバイン10では、報知制御部46は、設定走行速度に基づき、報知部44を制御して、コンバイン10の走行速度を増速又は減速させる情報を、オペレータに報知する。報知された情報に基づいて、オペレータがコンバイン10を操作することにより、本実施形態のコンバイン10は、穀粒水分率が高い状態である場合に脱穀選別損失の増加を抑制できる。
【0060】
〔第3実施形態〕
[コンバインの構成]
図10は、コンバイン10の制御ブロック図である。本実施形態のコンバイン10は、第1実施形態のコンバイン10の構成に加えて、走行距離計測部48及び収量取得部49を有する。
【0061】
走行距離計測部48は、コンバイン10の走行距離を計測する。収量取得部49は、重量計測部12からグレンタンク60内に貯留された穀粒の重量を取得する。収量取得部49は、走行距離計測部48からコンバイン10の走行距離を取得する。収量取得部49は、穀粒の重量の時間変化と、コンバイン10の走行距離とに基づいて、単位面積当たりの収量を求める。本実施形態において、単位面積とは1000m2である。以下、単位面積当たりの収量を、単に収量と記載することがある。
【0062】
[走行制御処理]
図11は、制御装置24において実行される走行制御処理を示すフローチャートである。走行制御処理は、コンバイン10が穀稈の刈り取りを行う間、所定の周期で実行される。
【0063】
ステップS31において、流量取得部34は、穀粒口流量を取得する。その後、ステップS32へ移行する。
【0064】
ステップS32において、水分含有率取得部36は、穀粒水分率を取得する。その後、ステップS33へ移行する。
【0065】
ステップS33において、走行速度設定部38は、穀粒口流量を補正して、補正穀粒口流量を算出する。補正穀粒口流量は、次の式で求められる。なお、次の式において、定数は、過去の収量の平均値である。定数として、過去の収量に代えて、任意の収量が用いられてもよい。
補正穀粒口流量[kg/h]=穀粒口流量[kg/h]×α
α=収量[kg/1000m2]/定数[kg/1000m2]
【0066】
ステップS34において、走行速度設定部38は、補正穀粒口流量が閾値以上であるか否かを判定する。補正穀粒口流量が閾値以上である場合(ステップS34:YES)には、ステップS35へ移行する。補正穀粒口流量が閾値未満である場合(ステップS34:NO)には、ステップS37へ移行する。第1実施形態と異なり、閾値は、穀粒水分率に応じて変化する値に設定される。閾値については、後に詳述する。
【0067】
ステップS35において、走行速度設定部38は、穀粒水分率が閾値以上であるか否かを判定する。穀粒水分率が閾値以上である場合(ステップS35:YES)には、ステップS36へ移行する。穀粒水分率が閾値未満である場合(ステップS35:NO)には、ステップS37へ移行する。
【0068】
ステップS36において、走行速度設定部38は、設定走行速度を、現在の走行速度に対して10%減速させた速度に設定する。その後、ステップS38へ移行する。ただし、10%減速させた後の速度が、予め設定された最低走行速度以下となる場合、走行速度設定部38は、設定走行速度を最低走行速度に設定する。
【0069】
ステップS37において、走行速度設定部38は、設定走行速度を、現在の走行速度に対して10%増速させた速度に設定する。その後、ステップS38へ移行する。ただし、10%増速させた後の速度が、予め設定された最高走行速度以上となる場合、走行速度設定部38は、設定走行速度を最高走行速度に設定する。
【0070】
ステップS38において、走行駆動機構制御部40は、走行駆動機構20を制御して、コンバイン10の走行速度を、設定走行速度にする。
【0071】
ステップS39において、走行駆動機構制御部40は、ステップS36又はステップS37において設定走行速度が変更されてからの経過時間が1秒以上であるか否かを判定する。経過時間が1秒以上である場合(ステップS39:YES)、ステップS31へ移行する。経過時間が1秒未満である場合(ステップS39:NO)、ステップS38の処理を繰り返す。すなわち、設定走行速度が変更されてから1秒間は、コンバイン10の走行速度が維持される。
【0072】
図12は、脱穀選別損失を示すグラフである。
図12は、穀粒水分率及び補正穀粒口流量に対する脱穀選別損失を示す。
図12では、脱穀選別損失が円の大きさで示される。
図12のグラフの横軸は補正穀粒口流量であって、第1実施形態の
図7のグラフの横軸である穀粒口流量とは異なることに注意されたい。
図12の補正穀粒口流量を求めるにあたり、前述の定数を900[kg/1000m
2]とした。
【0073】
図12に一点鎖線で示す閾値よりも上の範囲では、脱穀選別損失が3%以上となる。一方、閾値よりも下の範囲では、脱穀選別損失が3%未満となる。すなわち、穀粒水分率及び補正穀粒口流量が
図12に示す閾値よりも下の範囲になるように、コンバイン10の走行速度が制御されれば、脱穀選別損失は3%未満に抑えられる。
【0074】
[作用効果]
本実施形態のコンバイン10では、走行速度設定部38は、穀粒口流量、穀粒水分率及び収量に基づき、コンバイン10の設定走行速度を設定する。これにより、本実施形態のコンバイン10は、穀粒水分率が高い状態である場合に脱穀選別損失の増加を抑制する設定走行速度を設定できる。
【0075】
〔実施形態から得られる発明〕
上記実施形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0076】
刈り取った穀稈から穀粒を脱穀し、脱穀した前記穀粒をグレンタンク(60)に貯留するコンバイン(10)であって、当該コンバインは、前記グレンタンク内に流入する前記穀粒の単位時間当たりの流量を取得する流量取得部(34)と、前記グレンタンク内に流入する前記穀粒の水分含有率を取得する水分含有率取得部(36)と、前記流量及び前記水分含有率に基づき、前記コンバインの走行速度を設定する走行速度設定部(38)と、を有する。これにより、コンバインは、穀粒水分率が高い状態である場合に脱穀選別損失の増加を抑制する設定走行速度を設定できる。
【0077】
上記のコンバインは、単位面積当たりの収量を取得する収量取得部(49)を有し、前記走行速度設定部は、前記流量、前記水分含有率及び前記収量に基づき、前記コンバインの走行速度を設定してもよい。これにより、コンバインは、穀粒水分率が高い状態である場合に脱穀選別損失の増加を抑制する設定走行速度を設定できる。
【0078】
上記のコンバインは、前記コンバインを走行させる走行駆動機構(20)と、前記走行駆動機構を制御して、前記コンバインを設定された前記走行速度で走行させる走行駆動機構制御部(40)を有してもよい。これにより、コンバインは、穀粒水分率が高い状態である場合に脱穀選別損失の増加を抑制できる。
【0079】
上記のコンバインは、オペレータに情報を報知する報知部(44)と、前記報知部を制御して、設定された前記走行速度に基づき、前記走行速度を増速又は減速させる情報を前記オペレータに報知する報知制御部(46)を有してもよい。報知された情報に基づいて、オペレータがコンバインを操作することにより、コンバインは、穀粒水分率が高い状態である場合に脱穀選別損失の増加を抑制できる。
【0080】
上記のコンバインは、グレンパン(26)上の滞留物を前記グレンパンから排出する滞留解消装置(22)を有してもよい。これにより、コンバインは、グレンパン上の滞留物をグレンパンから排出できる。
【0081】
刈り取った穀稈から穀粒を脱穀し、脱穀した前記穀粒をグレンタンクに貯留するコンバインの制御方法であって、当該制御方法は、前記グレンタンク内に流入する前記穀粒の単位時間当たりの流量を取得する流量取得ステップと、前記グレンタンク内に流入する前記穀粒の水分含有率を取得する水分含有率取得ステップと、前記流量及び前記水分含有率に基づき、前記コンバインの走行速度を設定する走行速度設定ステップと、を有する。これにより、コンバインは、穀粒水分率が高い状態である場合に脱穀選別損失の増加を抑制する設定走行速度を設定できる。
【0082】
上記のコンバインの制御方法は、単位面積当たりの収量を取得する収量取得ステップを有し、前記走行速度設定ステップは、前記流量、前記水分含有率及び前記収量に基づき、前記コンバインの走行速度を設定してもよい。これにより、コンバインは、穀粒水分率が高い状態である場合に脱穀選別損失の増加を抑制する設定走行速度を設定できる。
【0083】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0084】
10…コンバイン 20…走行駆動機構
22…滞留解消装置 26…グレンパン
34…流量取得部 36…水分含有率取得部
38…走行速度設定部 40…走行駆動機構制御部
44…報知部 46…報知制御部
49…収量取得部