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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060698
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】内視鏡用穿刺装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/34 20060101AFI20240425BHJP
   A61B 17/94 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
A61B17/34
A61B17/94
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168119
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】308038613
【氏名又は名称】公立大学法人和歌山県立医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒木 秀洋
(72)【発明者】
【氏名】北野 雅之
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF42
4C160FF56
4C160FF60
4C160MM43
(57)【要約】
【課題】簡単な操作で内視鏡の操作の障害にならない状態に設定できる内視鏡用穿刺装置を提供する。
【解決手段】内視鏡の内部に挿入されるシース3と、シース3の内部に配置される穿刺針2と、シース3の近位端部と穿刺針2の近位端部がそれぞれ接続されるハンドル40、及びハンドル40の遠位端に該ハンドル40と同軸状に設けられ内視鏡側の取付部に着脱自在に螺合される筒状の連結部44を有する操作部とを備える。操作部は、ハンドル40の軸回りの一方向の回転に対して連結部44を連動させるとともに、ハンドル40の軸回りの逆方向の回転に対しては、該逆方向の回転により生じるトルクが所定値を超えるとハンドル40と連結部44との連動を解除させる回転規制部45をハンドル40と連結部44の間に更に備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の内部に挿入されるシースと、
前記シースの内部に配置される穿刺針と、
前記シースの近位端部と前記穿刺針の近位端部がそれぞれ接続されるハンドル、及び前記ハンドルの遠位端に該ハンドルと同軸状に設けられ前記内視鏡側の取付部に着脱自在に螺合される筒状の連結部を有する操作部と、
を備え、前記操作部は、前記ハンドルの軸回りの一方向の回転に対して前記連結部を連動させるとともに、前記ハンドルの軸回りの逆方向の回転に対しては、該逆方向の回転により生じるトルクが所定値を超えると前記ハンドルと前記連結部との連動を解除させる回転規制部を前記ハンドルと前記連結部の間に更に備える内視鏡用穿刺装置。
【請求項2】
前記回転規制部は、前記連結部に連動可能に取り付けられる円筒状本体部と、前記円筒状本体部の外周部に基部を有し前記逆方向と同一方向に延在し且つ内側に弾性的に撓むことのできるフラップと、前記フラップの先端外面に設けられた爪とを備え、前記ハンドルは、前記ハンドルの遠位端に形成された円筒状凸部の内周に、前記爪と噛み合う内歯を備える、請求項1に記載の内視鏡用穿刺装置。
【請求項3】
前記回転規制部は、前記フラップが内側に撓む際に前記フラップの少なくとも一部を収容するように、前記円筒状本体部の前記フラップに対応する部分に凹部を備える、請求項2に記載の内視鏡用穿刺装置。
【請求項4】
前記回転規制部は、前記円筒状本体部の遠位側の端面に該円筒状本体部の中心位置から対称配置された複数の突起を備え、前記連結部の近位側端面に前記突起を収容する凹状部を備える、請求項2に記載の内視鏡用穿刺装置。
【請求項5】
前記連結部には、前記連結部の貫通孔から前記回転規制部を超えて前記ハンドルの内部まで同軸状に延びる円筒状のシース案内管が設けられ、前記シース案内管の遠位端部の外径が先細になっている、請求項1に記載の内視鏡用穿刺装置。
【請求項6】
前記回転規制部は、前記連結部に連動可能に取り付けられる円筒状本体部と、前記円筒状本体部の外周面に設けられた外歯とを備え、前記ハンドルは、前記ハンドルの遠位端に形成された円筒状凸部の内周部に基部を有し前記一方向と同一方向に延在し且つ外側に弾性的に撓むことのできるフラップと、前記フラップの先端内面に、前記外歯と噛み合う爪を備える、請求項1に記載の内視鏡用穿刺装置。
【請求項7】
前記シースの近位端部は、前記ハンドルの内部にて前記ハンドルに対して回転自在に接続され、前記穿刺針の近位端部は、前記ハンドルの内部にて前記ハンドルに対して回転不可能に固定される、請求項1~6のいずれか一項に記載の内視鏡用穿刺装置。
【請求項8】
前記穿刺針は、遠位端側において自然状態で湾曲した湾曲部を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の内視鏡用穿刺装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用穿刺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、切除不能の悪性胆道狭窄又は閉塞症例で、胆道ドレナージを必要とするもののうち、経十二指腸乳頭的アプローチが不可能な場合等において、超音波内視鏡ガイド下胆道ドレナージ(EUS-BD)を施行した報告例が散見されている。EUS-BDは、超音波内視鏡を消化管に挿入し、超音波画像をリアルタイムに観察しながら、十二指腸、胃、食道等の消化管の内側から穿刺針で総胆管(又は肝内胆管)を穿刺し、この穿刺孔を介してガイドワイヤを胆管に挿入した後、そのガイドワイヤに沿わせて消化管内部と総胆管(又は肝内胆管)内部とをつなぐバイパス経路となる管状物を挿入・留置する手技である。この手技により、体内に管状物を埋め込む形で胆道ドレナージが可能となる。
【0003】
EUS-BDの手技では、穿刺針の内腔はガイドワイヤを挿通するための挿通孔として利用され、内視鏡の処置具案内管に挿入されるシースの内部に穿刺針を配置した内視鏡用穿刺装置(以下、穿刺装置ともいう)を用いて、以下に示すような手技が行われる。
【0004】
例えば、胃と肝内胆管とをバイパス接続する場合には、内視鏡の処置具案内管にシースを挿入し、内視鏡の遠位端から突出させたシースの遠位端から、穿刺針の遠位端部を所定長だけ押し出して、胃の内側から肝内胆管に至るように胃及び肝臓を穿刺する。次いで、穿刺針の内腔にガイドワイヤを挿通し、ガイドワイヤを押し出して胃の穿刺孔と肝臓の穿刺孔とを架け渡すように挿通して経路を確保する。次いで、内視鏡の内部の損傷等を避けるため、シース内に穿刺針の遠位端部を引き込んだ状態で、ガイドワイヤに沿ってシースを内視鏡の処置具案内管から引き抜く。その後、ステントデリバリー装置を用意し、ガイドワイヤに沿ってカテーテルチューブを押し出し、該カテーテルチューブのステントを配置した箇所を、該穿刺孔間を架け渡すように配置し、この状態でステントをリリース(拡張)させることにより、胃と胆管とを架け渡すようにステントを留置する(以上、例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/145181号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、内視鏡用穿刺装置を内視鏡に取り付けたとき穿刺装置のハンドルに設けられた調整ネジの位置が内視鏡側に向いてしまうと、内視鏡の操作がやりにくいという問題があった。
【0007】
図12(a)は、内視鏡用穿刺装置1が内視鏡100に取り付けられた状態で、内視鏡100を操作する様子を示し、調整ネジ422、432が内視鏡操作部110の方向を向いている場合を示す図である。図12(a)に示すように、内視鏡用穿刺装置1を内視鏡100に取り付けたとき、調整ネジ422、432の位置が内視鏡側に向いている場合は、内視鏡100の操作がやり難くなる。このように、内視鏡100に内視鏡用穿刺装置1を固定した時に、調整ネジ422、432の位置が内視鏡側を向いてしまうと操作しにくいため、一旦内視鏡用穿刺装置1の連結部44を緩めて図12(b)に示す状態で再度固定する必要があり、手間がかかり操作性が悪かった。
【0008】
また、穿刺針を例えば肝内胆管に穿刺したとき穿刺針の遠位端のカット面の向きが悪いと、ガイドワイヤを肝内胆管内の目的の位置に送り出せないという問題もあった。
【0009】
図13(a)は、穿刺針2を肝内胆管200に穿刺しガイドワイヤ80を挿入する際に目的の方向Dにガイドワイヤ80が挿入されない様子を示す図であり、図13(b)は穿刺針2を穿刺しガイドワイヤ80を挿入する際に目的の方向Dにガイドワイヤ80が挿入されていく様子を示す図である。従来は穿刺針2の遠位端のカット面23の方向が制御できず、図13(a)に示すようにガイドワイヤ80が目的の方向Dに進んでいかないことがあった。
【0010】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、簡単な操作で内視鏡の操作の障害にならない状態に設定できる内視鏡用穿刺装置を提供することを目的とする。また、本発明は、穿刺針の方向を制御することができる内視鏡用穿刺装置を提供することを更なる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る内視鏡用穿刺装置は、内視鏡の内部に挿入されるシースと、前記シースの内部に配置される穿刺針と、前記シースの近位端部と前記穿刺針の近位端部がそれぞれ接続されるハンドル、及び前記ハンドルの遠位端に該ハンドルと同軸状に設けられ前記内視鏡側の取付部に着脱自在に螺合される筒状の連結部を有する操作部と、を備え、前記操作部は、前記ハンドルの軸回りの一方向の回転に対して前記連結部を連動させるとともに、前記ハンドルの軸回りの逆方向の回転に対しては、該逆方向の回転により生じるトルクが所定値を超えると前記ハンドルと前記連結部との連動を解除させる回転規制部を前記ハンドルと前記連結部の間に更に備えることを特徴とする。
【0012】
上記のように、本発明に係る内視鏡用穿刺装置において、操作部は、ハンドルの軸回りの一方向の回転に対して連結部を連動させるとともに、ハンドルの軸回りの逆方向の回転に対しては、逆方向の回転により生じるトルクが所定値を超えるとハンドルと連結部との連動を解除させる回転規制部をハンドルと連結部の間に更に備えている。この構成により、ハンドルを軸回りに逆方向に所定値を超えるトルクで回転させると、ハンドルと連結部との連動が解除されてハンドルが空回りするようになり、ハンドルを任意の回転位置に設定することができる。これにより、内視鏡用穿刺装置が内視鏡に固定された後であっても、再度固定作業をやり直すことなく、ハンドルを空回りさせて、ハンドルに設けられた調整ネジを内視鏡側とは反対側に配置することができる。したがって、内視鏡用穿刺装置のハンドルを、簡単な操作で内視鏡の操作の障害にならない状態に設定することができる。
【0013】
具体的には、ハンドルの軸回りの逆方向の回転を、内視鏡の取付部に対して連結部を締め込む方向に一致させれば、ハンドルを把持して回転させる操作によって連結部を内視鏡の取付部に螺合させることができるので、取付操作が容易である。連結部が所定の締め付けトルクに達すると、ハンドルが空回りするように構成することができ、これにより、上述したようにハンドルを任意の回転位置に設定することができる。一方、回転規制部は、ハンドルの軸回りの上記一方向の回転に対して連結部をハンドルに連動させるようになっているので、ハンドルを把持して上記一方向に回すことにより、連結部を内視鏡の取付部から取り外すことができる。
【0014】
また、本発明の内視鏡用穿刺装置において、前記回転規制部は、前記連結部に連動可能に取り付けられる円筒状本体部と、前記円筒状本体部の外周部に基部を有し前記逆方向と同一方向に延在し且つ内側に弾性的に撓むことのできるフラップと、前記フラップの先端外面に設けられた爪とを備え、前記ハンドルは、前記ハンドルの遠位端に形成された円筒状凸部の内周に、前記爪と噛み合う内歯を備える構成であってもよい。
【0015】
この構成により、本発明に係る内視鏡用穿刺装置は、ハンドルを逆方向に回しトルクが所定値を超えると、フラップが内側に撓んでフラップの爪とハンドルの内歯との噛み合わせが外れて、ハンドルが空回りするようになり、ハンドルを任意の回転位置に設定することができる。これにより、内視鏡用穿刺装置が内視鏡に固定された後であっても、再度固定作業をやり直すことなく、ハンドルを空回りさせて、ハンドルに設けられた調整ネジを内視鏡側とは反対側の任意の回転位置に配置することができる。したがって、内視鏡用穿刺装置のハンドルを、簡単な操作で内視鏡の操作の障害にならない状態に設定することができる。
【0016】
また、本発明の内視鏡用穿刺装置において、前記回転規制部は、前記フラップが内側に撓む際に前記フラップの少なくとも一部を収容するように、前記円筒状本体部の前記フラップに対応する部分に凹部を備える構成であってもよい。
【0017】
この構成により、本発明に係る内視鏡用穿刺装置は、バネなどの弾性手段を用いることなく簡単な構造でフラップを内側に弾性的に撓ませることができる。
【0018】
また、本発明の内視鏡用穿刺装置において、前記回転規制部は、前記円筒状本体部の遠位側の端面に該円筒状本体部の中心位置から対称配置された複数の突起を備え、前記連結部の近位側端面に前記突起を収容する凹状部を備える構成であってもよい。
【0019】
この構成により、本発明に係る内視鏡用穿刺装置は、簡単な構造により回転規制部から連結部に効率的にトルクが伝達され両者が連動するようになる。
【0020】
また、本発明の内視鏡用穿刺装置において、前記連結部には、前記連結部の貫通孔から前記回転規制部を超えて前記ハンドルの内部まで同軸状に延びる円筒状のシース案内管が設けられ、前記シース案内管の遠位端部の外径が先細になっている構成であってもよい。
【0021】
この構成により、本発明に係る内視鏡用穿刺装置は、シースをハンドルから内視鏡の内部に確実に案内するとともに、シース案内管を内視鏡の取付部の挿入口に入れやすいので内視鏡との連結を容易に行うことができる。
【0022】
また、本発明の内視鏡用穿刺装置において、前記回転規制部は、前記連結部に連動可能に取り付けられる円筒状本体部と、前記円筒状本体部の外周面に設けられた外歯とを備え、前記ハンドルは、前記ハンドルの遠位端に形成された円筒状凸部の内周部に基部を有し前記一方向と同一方向に延在し且つ外側に弾性的に撓むことのできるフラップと、前記フラップの先端内面に、前記外歯と噛み合う爪を備える構成であってもよい。
【0023】
この構成により、本発明に係る内視鏡用穿刺装置は、ハンドルを逆方向に回しトルクが所定値を超えると、フラップが外側に撓んでフラップの爪と回転規制部の外歯との噛み合わせが外れて、ハンドルが空回りするようになり、ハンドルを任意の回転位置に設定することができる。これにより、内視鏡用穿刺装置が内視鏡に固定された後であっても、再度固定作業をやり直すことなく、ハンドルを空回りさせて、ハンドルに設けられた調整ネジを内視鏡側とは反対側の任意の回転位置に配置することができる。したがって、内視鏡用穿刺装置のハンドルを、簡単な操作で内視鏡の操作の障害にならない状態に設定することができる。
【0024】
また、本発明の内視鏡用穿刺装置において、前記シースの近位端部は、前記ハンドルの内部にて前記ハンドルに対して回転自在に接続され、前記穿刺針の近位端部は、前記ハンドルの内部にて前記ハンドルに対して回転不可能に固定される構成であってもよい。
【0025】
この構成により、本発明に係る内視鏡用穿刺装置は、ハンドルを逆方向に回転させることにより、ハンドルを連結部に対して空回りさせて、ハンドルに回転不可能に固定された穿刺針の遠位端のカット面を所望の方向に向けることができる。その際、例えば内視鏡の遠位端側にアングルを付けるとか、起上台を上げるなどして、シースが内視鏡内で固定された状態で穿刺針を回転させるようにすると、操作が容易になる。
【0026】
また、本発明の内視鏡用穿刺装置において、前記穿刺針は、遠位端側において自然状態で湾曲した湾曲部を備える構成であってもよい。
【0027】
この構成により、本発明に係る内視鏡用穿刺装置は、例えば内視鏡の遠位端側の屈曲部に穿刺針を挿通させることにより、穿刺針の遠位端のカット面を特定の方向に向けることが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、簡単な操作で内視鏡の操作の障害にならない状態に設定できる内視鏡用穿刺装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係る内視鏡用穿刺装置の全体構成を示す正面図である。
図2図1に示す内視鏡用穿刺装置のハンドルの部分断面図である。
図3図1に示す内視鏡用穿刺装置の操作部遠位端側の部分断面図である。
図4図3のIV-IV断面図である。
図5図1に示す内視鏡用穿刺装置の連結機構部の分解斜視図(遠位端側から見た図)である。
図6図1に示す内視鏡用穿刺装置の連結機構部の分解斜視図(近位端側から見た図)である。
図7】連結機構部に用いられている回転規制部の斜視図である。
図8】穿刺針の遠位端の穿刺部の構造を示す図である。
図9】(a)は穿刺針の遠位端近傍を示す図であり、(b)は内視鏡内を挿通させたシース内の穿刺針の状態を示す図である。
図10】(a)は内視鏡の遠位端側にアングルを付けた状態を示す図であり、(b)は起上台が仰角φ1からφ2に上げられた状態を示す図である。
図11】本発明の別の実施形態に係る内視鏡用穿刺装置に関し、図4と同様の位置で見た断面図である。
図12】内視鏡用穿刺装置が内視鏡に取り付けられた状態で、内視鏡を操作する様子を示し、(a)は調整ネジが内視鏡操作部の方向を向いている場合を示す図であり、(b)は調整ネジが内視鏡操作部の逆方向を向いている場合を示す図である。
図13】(a)は穿刺針を穿刺しガイドワイヤを挿入する際に目的の方向にガイドワイヤが挿入されない様子を示す図であり、(b)は穿刺針を穿刺しガイドワイヤを挿入する際に目的の方向にガイドワイヤが挿入される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る内視鏡用穿刺装置1の全体構成を示す正面図である。図1に示すように、内視鏡用穿刺装置1は、内視鏡の内部に挿入されるシース3と、シース3の内部に配置される穿刺針2と、シース3と穿刺針2を操作するための操作部4とを備えている。内視鏡用穿刺装置1は、例えばEUS-BDの手技において、バイパス接続すべき管腔臓器の周壁に穿刺孔を形成し、該穿刺孔を介して管腔臓器間にガイドワイヤを挿通する際に用いられる。
【0032】
[シース]
図1に示すシース3は、可撓性を有する細長いチューブからなり、その内腔には穿刺針2が挿通されている。シース3の外径は、穿刺針2の外径とほぼ同等あるいは若干大きくするのが好ましい。シース3は、内視鏡(例えば、超音波内視鏡)の処置具案内管の内部に挿入され、操作部4を操作することにより、内視鏡の処置具案内管に対して軸方向にスライド(相対移動)可能となっている。シース3は、例えばステンレス鋼等の金属で形成されたコイルシースからなり、操作部4の内部においてコイルシースの近位端がステンレス鋼等の金属で形成された固定パイプ31の遠位端に溶接等により接続されている(図3参照)。
【0033】
[穿刺針]
穿刺針2は、可撓性を有する細長い円筒体からなり、シース3の内部に進退自在に挿通(配置)される。穿刺針2の内部には、軸方向に沿って延びる内腔が形成されており、内腔の内部にはガイドワイヤを挿通することが可能となっている。
【0034】
穿刺針2の内径(内腔の直径)は、例えば0.3~1.3mmであり、穿刺針2の外径は、例えば0.4~1.7mmである。穿刺針2の材料としては、例えば、ステンレス鋼、ニッケル・チタン合金などの可撓性を有する金属材料を用いることが好ましく、本実施形態では、穿刺針2全体を構成する材料として、ステンレス鋼を用いている。
【0035】
図8に示すように、穿刺針2は、遠位端側に鋭利な形状の穿刺部26を有している。穿刺部26には、穿刺針2の軸線に対して傾斜したカット面23が形成されており、穿刺部26を体内壁に押し当てたときに、体内壁に穿刺孔を形成することが可能となっている。
【0036】
カット面23は、屈折部23cと、屈折部23cの近位側に位置する第1刃面23aと、屈折部23cの遠位側に位置する第2刃面23bとを有し、各刃面23a、23bは屈折部23cを介して不連続に接続されている。第1刃面23aと第2刃面23bとは、それぞれ穿刺針2の軸線に対する傾斜角度が異なっており、第2刃面23bの一部は、第1刃面23aよりも大きな傾斜角度で傾斜しながら湾曲している。
【0037】
穿刺針2の遠位端には先端開口部24が形成されており、この先端開口部24の縁部に沿ってカット面23が形成されている。本実施形態では、穿刺針2の遠位端面がその軸線に対して傾斜しているため、先端開口部24の形状は略楕円形状となっている。
【0038】
穿刺針2の遠位端部22の所定位置表面には、複数の円環状の溝25が設けられている。このような構成とすることにより、穿刺針2の遠位端部22の超音波画像が観察画像上に明瞭に描出され、穿刺針2と、穿刺針2により穿刺される穿刺部位との位置関係を精度良く把握することが可能となる。
【0039】
[操作部]
図1に戻り、操作部4は、シース3及び穿刺針2を操作するためにシース3の近位端部と穿刺針2の近位端部がそれぞれ接続されているハンドル40と、内視鏡100の取付部101に連結するための連結部44とを備えている(図12も参照)。ハンドル40は、例えば樹脂材料で構成され、把持部41と穿刺針移動部42とシース移動部43とを有している。ハンドル40の把持部41の近位端側には、細径部413を介して側注管70が接続されている。側注管70は、一端がハンドル40の近位端に接続され、他端にはシリンジ等と接続可能なルアーロックコネクタが備えられており、側注管70のルアーロックコネクタにシリンジを接続して、造影剤等の液体を固定パイプ31の内腔を介して穿刺針2の内腔に注入できるようになっている。
【0040】
<ハンドル>
図2は、操作部4が備えるハンドル40の部分断面図である。図2に示すように、ハンドル40の把持部41は、円筒状体であり、使用者によって把持される把持部本体410と、その近位端に同軸上に形成された細径部413とを有している。把持部本体410の中空部の直径は、穿刺針移動部42の外径とほぼ同じか少し大きくなっており、穿刺針移動部42に対して摺動自在になっている。細径部413には、穿刺針2の近位端部が回転不可能に固設されている。なお、図2において、側注管70は図示を省略している。
【0041】
図1及び図2に示すように、穿刺針移動部42は、シース3と穿刺針2との位置関係を調整するための機構部であり、把持部41の遠位端側に設けられている。穿刺針移動部42は、細長い円筒状体からなる穿刺針移動部本体420と、目盛窓423を有するストッパ421と、ストッパ421の位置を調整するための調整ネジ422とを備えている。ストッパ421は、穿刺針移動部42の穿刺針移動部本体420に対して摺動自在に配置されている。目盛窓423から見える目盛部(不図示)はストッパ421の配置位置を設定する際の指標となる複数の目盛印を有し、各目盛印は穿刺針移動部42の外周面に各々所定間隔で配置されている。各目盛印は、シース3の遠位端からの穿刺針2の突出長を表しており、例えば、数値「1」に対応する目盛印の位置にストッパ421を配置し、その状態で把持部41を遠位側にスライドさせると、該目盛印が示す長さ分だけ(例えば、1cmだけ)、シース3の遠位端から穿刺針2の遠位端を突出させることが可能となっている。
【0042】
穿刺針移動部本体420の近位端近傍の中空内部には、支持部424により軸受部425が設けられており、固定パイプ31の近位端部が軸受部425により回転自在かつ軸方向移動不可能に支持されている。
【0043】
シース移動部43は、内視鏡とシース3との位置関係を調整するための機構部であり、穿刺針移動部42の遠位端側に設けられている。シース移動部43は、円柱形状を有し軸方向に貫通孔430cが形成されたシース移動部本体430と、目盛窓433を有するストッパ431と、ストッパ431の位置を調整するための調整ネジ432とを備えている。ストッパ431は、シース移動部43のシース移動部本体430に対して摺動自在に配置されている。目盛窓433から見える目盛部(不図示)は、ストッパ431の配置位置を設定する際の指標となる複数の目盛印を有し、各目盛印はシース移動部本体430の外周面に各々所定間隔で配置されている。各目盛印は、内視鏡の遠位端からのシース3の突出長を表しており、例えば、連結部44を内視鏡に連結固定した状態で、数値「1」に対応する目盛印の位置にストッパ431を配置し、その状態で把持部41を遠位側にスライドさせると、該目盛印が示す長さ分だけ(例えば、1cmだけ)、内視鏡の遠位端からシース3の遠位端を突出させることが可能となっている。
【0044】
<連結機構>
次に、内視鏡用穿刺装置1を内視鏡に連結するための連結機構部50について説明する。連結機構部50は、内視鏡の処置具案内管の入口に設けられた雄ネジ付きの取付部に対して、内視鏡用穿刺装置1を連結するための機構である。
【0045】
図3は、連結機構部50を含む操作部4の遠位端側の部分断面図であり、図4は、図3のIV-IV断面図である。図3及び図4に示すように、連結機構部50は、連結部44と、回転規制部45と、ハンドル遠位端連結部434と、シース案内管46とを備えて構成されている。
【0046】
<<連結部>>
連結部44は、図3及び図4に示すように、ハンドル40の遠位端に該ハンドル40と同軸状に設けられ、図12に示すように、内視鏡100側の取付部101に着脱自在に螺合されるようになっている。
【0047】
図5は、内視鏡用穿刺装置1の連結機構部50を遠位端側から見た分解斜視図であり、図6は、近位端側から見た分解斜視図である。図5及び図6に示すように、連結部44は、軸方向に遠位端側から所定長の雌ネジ44bが形成された金属製の円筒状本体部44aを有し、近位端側には、近位側端面の外周縁側から軸方向に突出した円筒状凸部44dと、その内側の近位端面凹状部44eとが形成されている。円筒状凸部44dの基部内周面には、外側に向けて結合用凹部44fが形成されており、後で説明するハンドル遠位端連結部434の円筒状凸部434dの外周端部に形成された凸部434fが嵌まるようになっている。雌ネジ44bの近位端側には、雌ネジ44bより小径の小径雌ネジ44cが形成されている。
【0048】
<<回転規制部>>
回転規制部45は、図3及び図4に示すように、連結部44とハンドル40の遠位端部(ハンドル遠位端連結部434)との間にこれらと同軸状に設けられている。回転規制部45は、ハンドル40の軸回りの一方向Aの回転(すなわち、ハンドル40を近位端側から遠位端側の方向に見た場合の時計回り方向の回転(右回転)、以下同様)に対して連結部44を連動させるとともに、ハンドル40の軸回りの逆方向Bの回転(反時計回り方向の回転(左回転))に対しては、逆方向の回転により生じるトルクが所定値を超えるとハンドル40と連結部44との連動を解除させるようになっている。
【0049】
具体的には、回転規制部45は、図7に示すように、連結部44に連動可能に取り付けられる円筒状本体部45aと、円筒状本体部45aの外周部に基部45cを有し上記逆方向Bと同一方向に延在し、且つ内側に弾性的に撓むことのできるフラップ45bと、フラップ45bの先端外面に設けられた爪45eとを備えている。
【0050】
ハンドル40のハンドル遠位端連結部434は、図5及び図6に示すように、ハンドル40のシース移動部43の遠位端に連設された拡径円筒状の筒状本体部434aと、筒状本体部434aの遠位端面の外縁側に軸方向に突出した円筒状凸部434dと、フラップ45bに設けられた爪45eと噛み合うように円筒状凸部434dの内周に周方向所定間隔で形成された内歯434eとを備えている。
【0051】
回転規制部45は、図4及び図7に示すように、フラップ45bが内側に撓む際にフラップ45bの少なくとも一部を収容するように、円筒状本体部45aのフラップ45bに対応する部分に凹部45fを備えている。この構成により、内視鏡用穿刺装置1は、バネなどの弾性手段を用いることなく簡単な構造でフラップ45bを内側に弾性的に撓ませることができる。
【0052】
回転規制部45は、図7に示すように、円筒状本体部45aの遠位側の端面に、円筒状本体部45aの中心位置から対称配置された2つの突起45gを備えている。連結部44は、近位側端面にて突起45gを収容する近位端面凹状部44eを備えている。突起45gの個数は、2個に限定されるものではなく、2より多い複数個であってもよい。この構成により、簡単な構造により回転規制部45から連結部44に効率的にトルクが伝達され両者が連動するようになる。
【0053】
<<シース案内管>>
シース案内管46は、図5及び図6に示すように、金属製の円筒状本体部46aを有しており、シース3及び穿刺針2が進退自在に挿通されるようになっている。シース案内管46は、連結部44の貫通孔から回転規制部45を超えてハンドル40の内部まで同軸状に延びており、シース案内管46の遠位端部の外径は先細になっている。円筒状本体部46aの外面には、長手方向の一部に雄ネジ46cが形成されている。この雄ネジ46cが連結部44の小径雌ネジ44cと係合して連結部44に固定されるようになっている。このような構成により、シース3をハンドル40から内視鏡100の内部に確実に案内するとともに、シース案内管46を内視鏡100の取付部101の挿入口に入れやすいので内視鏡100との連結を容易に行うことができる。
【0054】
<<連結機構部による作用・効果>>
本実施形態の内視鏡用穿刺装置1は、上記のように構成することにより、ハンドル40を軸回りに時計回り方向に所定値を超えるトルクで回転させると、フラップ45bが内側に撓んでフラップ45bの爪45eとハンドル40の内歯434eとの噛み合わせが外れて、ハンドル40と連結部44との連動が解除されて次の内歯434eの谷部434gまでハンドル40が空回りするようになり、これを繰り返してハンドル40を任意の回転位置に設定することができる。これにより、内視鏡用穿刺装置1が内視鏡100に固定された後であっても、再度固定作業をやり直すことなく、ハンドル40を空回りさせて、ハンドル40に設けられた調整ネジ422、432を内視鏡側とは反対側の任意の回転位置に配置することができる。したがって、内視鏡用穿刺装置1のハンドル40を、簡単な操作で内視鏡100の操作の障害にならない状態に設定することができる。また、ハンドル40を空回りさせることで、調整ネジ422、432を操作しやすい位置に配置したり、ストッパ421、432の目盛窓423、433から目盛が見えやすい位置に配置したりできる。
【0055】
例えば、ハンドル40の軸回りの方向Aの回転を、内視鏡100の取付部101に対して連結部44を締め込む方向に一致させれば、ハンドル40を把持して回転させる操作によって連結部44を内視鏡100の取付部101に螺合させることができるので、取付操作が容易である。連結部44が所定の締め付けトルクに達すると、ハンドル40が空回りするように構成することができ、これにより、上述したようにハンドル40を任意の回転位置に設定することができる。一方、回転規制部45は、ハンドル40の軸回りの方向Bの回転に対して連結部44をハンドル40に連動させるようになっているので、ハンドル40を把持して反時計回り方向に回すことにより、連結部44を内視鏡100の取付部101から取り外すことができる。
【0056】
上記の構成において、ハンドル40を軸回りに時計回り方向に回転させ、フラップ45bの爪45eとハンドル40の内歯434eとの噛み合わせが外れるときのトルクの値(最大トルク)は、ハンドル40を締め付けるために必要なトルクの値と同等或いはそれより大きい適当な値にしてもよい。最大トルクは、フラップ45bの幅、厚み、長さ等を変えることにより調整することができる。
【0057】
<針先カット面の方向の調整機構>
図2に示すように、シース3に接続された固定パイプ31の近位端部は、ハンドル40の穿刺針移動部42の内部にてハンドル40に対して回転自在に接続されている。具体的には、固定パイプ31の近位端部は、穿刺針移動部42の近位端内部にて支持部424により支持された軸受部425によって、回転自在で且つ軸方向の移動ができないように支持されている。
【0058】
また、穿刺針2の近位端部は、ハンドル40の把持部41の内部にてハンドル40に対して回転不可能に固定されている。具体的には、シース3及び固定パイプ31の内部に進退自在に挿通させた穿刺針2の近位端部は、把持部41の近位端に設けられた固定具47によって、回転できない状態で固定されている。穿刺針2の針管20の管路は、細径部413の中空部に連通している。
【0059】
この構成により、ハンドル40を時計回り方向に回転させることにより、ハンドル40を連結部44に対して空回りさせて、ハンドル40に回転不可能に固定された穿刺針2の遠位端のカット面23を所望の方向に向けることができる。その際、例えば内視鏡100の遠位端部104にアングルを付けるとか(図10(a)参照)、起上台105を上げるなどして(図10(b)参照)、シース3が内視鏡100内で固定された状態で穿刺針2を回転させるようにすると、針先カット面の調整操作が容易になる。
【0060】
別法として、図9(a)に示すように、穿刺針2が、針管20の遠位端側において自然状態で湾曲した湾曲部21を備えるようにしてもよい。湾曲部21は、自然状態で長手軸方向に湾曲する曲げ癖が付与されている。遠位端部22の先端には傾斜したカット面23が形成されている。穿刺針2に湾曲部21を設ける場合は、穿刺針2の近位端部は、ハンドル40に対して回転自在に接続されるようにするとよい。
【0061】
本実施形態では、湾曲部21は、仮想点Oを中心として半径r、中心角θの円弧に沿って湾曲している。ただし、湾曲部21の形状は、円弧形状に限定されず、湾曲した状態においてカット面23が特定の方向を向くようになっていれば、任意のカーブ形状を採用できる。
本実施形態では、カット面23は、仮想点Oに対して反対側を向いているが、湾曲部21の形状やカット面23の向きは、本実施形態に限定されるものではなく、例えば使用する部位に応じて変えてもよい。
【0062】
図9(b)は内視鏡100内を挿通させたシース3内の穿刺針2の状態を示す図である。図9(b)に示すように、内視鏡100の遠位端部104にアングルを付与し、その湾曲した処置具案内管103にシース3と穿刺針2を挿通させることにより、あるいは、処置具案内管103にシース3と穿刺針2を挿通させた状態で、内視鏡100の遠位端部104にアングルを付与することにより、穿刺針2の湾曲部21が曲げ癖の自然状態となり、カット面23を特定の方向に向けることが可能となる。
【0063】
[手技説明]
次に、内視鏡用穿刺装置1を用いて、対象部位を穿刺する手技について説明する。まず、内視鏡用穿刺装置1を用意し、穿刺針2をシース3の内部に配置させた状態で、該シース3を内視鏡100の処置具案内管103の内部に挿入するとともに、操作部4の連結部44を内視鏡100の処置具案内管103の入口に設けられた取付部101に連結し、内視鏡用穿刺装置1を内視鏡100に固定する。なお、穿刺針2の内腔には予めスタイレットを挿入しておく。
【0064】
内視鏡用穿刺装置1のハンドル40に設けられた調整ネジ422、432の位置を変えたいときや、目盛を見やすいように目盛の位置を変えたいときや、ハンドル40の近位端に取り付けられた側注管70の向きを変えたいとき等には、操作部4を時計回り方向に回して空回りさせ、所望の回転位置に設定する。
【0065】
次いで、シース移動部43のストッパ431を目盛部の所望の目盛の位置に配置し、把持部41を遠位側にスライドさせ、上記目盛の数値に応じた距離だけ、内視鏡100の遠位端からシース3の遠位端を突出させる。例えば、腹腔内において胃と肝内胆管とをバイパス接続するようにカバードステントを留置する場合には、上記操作により、胃壁から所定距離だけ離れた位置に、シース3の遠位端を配置させることが可能となる。
【0066】
次いで、穿刺針移動部42のストッパ421を目盛部の所望の目盛の位置に配置し、把持部41を遠位側にスライドさせ、上記目盛の数値に応じた距離だけ、シース3の遠位端から穿刺針2の遠位端を突出させる。このようにして、胃壁から腹腔を経て胆管壁(肝臓の肝実質を含む)に至るように穿刺針2で穿刺し、胃と肝内胆管の双方に穿刺孔を形成する。なお、必要に応じて適時に、穿刺針2のカット面23の方向を調整する。
【0067】
次いで、内腔に挿入したスタイレットを穿刺針2から引き抜いた後に、側注管70のルアーロックコネクタにシリンジを接続し、シリンジによる吸引によって胆汁が吸引されることを確認することにより、穿刺針2の遠位端が胆管内に位置していることを確認する。次いで、側注管70のルアーロックコネクタに造影剤を入れたシリンジを接続し、穿刺針2の内腔に造影剤を注入して、穿刺針2の遠位端部近傍をX線造影により観察することによって、穿刺針2の遠位端部が肝内胆管に到達していることを確認する。穿刺針2の遠位端部が肝内胆管に到達しており、正しく穿刺孔が形成されていることが確認できたら、穿刺針2の内腔にガイドワイヤを挿通する。そして、穿刺針移動部42のストッパ421を目盛部の所望の目盛の位置に配置し、把持部41を近位側にスライドさせ、上記目盛の数値に応じた距離だけ、シース3の遠位端から穿刺針2の遠位端を引き込む。これにより、穿刺針2が穿刺孔から抜去され、穿刺孔にガイドワイヤを挿通した状態として、経路を確保する。
【0068】
次いで、内視鏡100の処置具案内管103からシース3を引き抜き、内視鏡用穿刺装置1を内視鏡100から取り外す。その際、シース3の遠位端から穿刺針2の遠位端を引き込んだ状態で、内視鏡100の処置具案内管103からシース3を引き抜くことにより、内視鏡100の内部の損傷等を避けることができる。次いで、ダイレータ、バルーン等で穿刺孔のダイレーションを行った後、ステントデリバリー装置により、ガイドワイヤに沿ってカバードステントを送り込み、胃と胆管とを架け渡すように留置する。
【0069】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る内視鏡用穿刺装置について、図面を参照して説明する。
【0070】
本実施形態に係る内視鏡用穿刺装置1は、連結機構部50Aの構造が第1の実施形態とは異なっている。その他の構成は第1の実施形態と同一であり、同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0071】
図11は、本実施形態に係る内視鏡用穿刺装置1の連結機構部50Aについて図4と同様の位置で見た断面図である。図11に示すように、連結機構部50Aは、外側から順に連結部44と、ハンドル遠位端連結部434Aと、回転規制部45Aと、シース案内管46とを備えており、その内側に、シース3と穿刺針2が挿通されている。
【0072】
本実施形態では、回転規制部45Aは、内視鏡100の取付部101に螺合される連結部44に連動可能に取り付けられる円筒状本体部45aと、円筒状本体部45aの外周面に所定間隔で複数個設けられた外歯45Aaとを備えている。
【0073】
ハンドル40の遠位端には、ハンドル遠位端連結部434Aが設けられている。具体的には、ハンドル遠位端連結部434Aは、第1の実施形態と同様に、ハンドル40のシース移動部43の遠位端に連設された拡径円筒状の筒状本体部434aと、筒状本体部434aの遠位端面の外縁側に軸方向に突出した円筒状凸部434dとを備えている(図5図6参照)。第2の実施形態のハンドル遠位端連結部434Aは、図11に示すように、円筒状凸部434dの内周部に基部を有して符号Bで示す方向に延在し且つ外側(凹部434Acの方)に弾性的に撓むことのできるフラップ434Aaと、フラップ434Aaの先端内面に、外歯45Aaと噛み合う爪434Abを備えている。
【0074】
この構成により、ハンドル40を時計回り方向に回しトルクが所定値を超えると、フラップ434Aaが外側に撓んでフラップ434Aaの爪434Abと回転規制部45Aの外歯45Aaとの噛み合わせが外れて、次の谷部45Abまでハンドル40が空回りするようになり、これを繰り返してハンドル40を任意の回転位置に設定することができる。これにより、内視鏡用穿刺装置1が内視鏡100に固定された後であっても、再度固定作業をやり直すことなく、ハンドル40を空回りさせて、ハンドル40に設けられた調整ネジ422、432を内視鏡100側とは反対側の任意の回転位置に配置することができる(図12参照)。したがって、内視鏡用穿刺装置1のハンドル40を、簡単な操作で内視鏡100の操作の障害にならない状態に設定することができる。
【0075】
本発明の内視鏡用穿刺装置は、超音波内視鏡ガイド下胆道ドレナージ(EUS-BD)を経胃経肝的に施行する場合において、胃の内側から肝内胆管に至るまで胃及び肝臓を穿刺して、その穿刺孔に胃と肝内胆管とをバイパス接続する自己拡張型のカバードステントを留置する場合に好適に使用される。但し、本発明は、胃と肝内胆管とをバイパス接続するときに限らず、十二指腸と総胆管等、管腔臓器と他の管腔臓器とをバイパス接続するときに広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上述べたように、本発明は、簡単な操作で内視鏡の操作の障害にならない状態に設定できるという効果を有し、内視鏡用穿刺装置の全般に有用である。
【符号の説明】
【0077】
1 内視鏡用穿刺装置
2 穿刺針
3 シース
4 操作部
21 湾曲部
31 固定パイプ
40 ハンドル
44 連結部
44a、45a、46a 円筒状本体部
44e 近位端面凹状部(凹状部)
45、45A 回転規制部
45b、434Aa フラップ
45e、434Ab 爪
45f、434Ac 凹部
45g 突起
46 シース案内管
50、50A 連結機構部
70 側注管
80 ガイドワイヤ
100 内視鏡
110 内視鏡操作部
422、432 調整ネジ
434e 内歯
45Aa 外歯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13