(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060736
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】光接続構造、光モジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 6/12 20060101AFI20240425BHJP
G02B 6/122 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
G02B6/12
G02B6/12 301
G02B6/122 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168205
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和洋
【テーマコード(参考)】
2H147
【Fターム(参考)】
2H147AB04
2H147AB05
2H147AB24
2H147BB02
2H147BB04
2H147BB07
2H147CC12
2H147CC13
2H147CC14
2H147CC15
2H147CD15
2H147DA08
2H147EA13A
2H147EA13C
2H147EA14B
2H147EA16A
2H147EA16B
2H147EA17A
2H147EA17B
2H147EA19A
2H147EA19B
2H147EA20A
2H147EA20B
2H147FA16
2H147FC08
2H147FD15
2H147FE02
2H147FF05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シリコンフォトニクスチップと光導波路とを有する光接続構造において、シリコンフォトニクスチップと光導波路との位置精度を向上する。
【解決手段】本光接続構造は、第1側面を備えた第1シリコンフォトニクスチップと、前記第1側面と対向する、第2側面を備えた第2シリコンフォトニクスチップと、前記第1シリコンフォトニクスチップと第2シリコンフォトニクスチップとに跨って配置される光導波路と、を有し、前記第1シリコンフォトニクスチップは、第1シリコン基板と、第1シリコン導波路と、を備え、前記第2シリコンフォトニクスチップは、第2シリコン基板と、第2シリコン導波路と、を備え、前記光導波路は、前記第1側面と前記第2側面との間を埋める第1クラッドと、前記第1クラッド上に配置され、前記第1シリコン導波路と前記第2シリコン導波路とを光学的に接続するコアと、前記コアを被覆する第2クラッドと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1側面を備えた第1シリコンフォトニクスチップと、
第2側面を備え、前記第2側面が前記第1側面と対向するように配置された第2シリコンフォトニクスチップと、
前記第1シリコンフォトニクスチップと第2シリコンフォトニクスチップとに跨って配置される光導波路と、を有し、
前記第1シリコンフォトニクスチップは、
第1シリコン基板と、
前記第1シリコン基板の一方の面側に設けられた第1シリコン導波路と、を備え、
前記第2シリコンフォトニクスチップは、
第2シリコン基板と、
前記第2シリコン基板の一方の面側に設けられた第2シリコン導波路と、を備え、
前記光導波路は、
前記第1側面と前記第2側面との間を埋める第1クラッドと、
前記第1クラッド上に配置され、前記第1シリコン導波路の一端と、前記第2シリコン導波路の一端とを被覆し、前記第1シリコン導波路と前記第2シリコン導波路とを光学的に接続するコアと、
前記コアを被覆する第2クラッドと、を備える、光接続構造。
【請求項2】
平面視で、前記第1シリコン導波路の一端は、前記第1クラッドに近づくにつれて幅が狭くなり、
平面視で、前記第2シリコン導波路の一端は、前記第1クラッドに近づくにつれて幅が狭くなる、請求項1に記載の光接続構造。
【請求項3】
支持基板を有し、
前記第1シリコン基板の他方の面は、第1接着層を介して前記支持基板の一方の面と接続され、
前記第2シリコン基板の他方の面は、第2接着層を介して前記支持基板の一方の面と接続されている、請求項1に記載の光接続構造。
【請求項4】
前記支持基板と前記第1シリコンフォトニクスチップ、及び前記支持基板と前記第2シリコンフォトニクスチップとは、電気的に未接続である、請求項3に記載の光接続構造。
【請求項5】
前記第1シリコン導波路は、前記第1シリコン基板上に設けられた第1保護膜と、前記第1保護膜上に設けられた第2保護膜と、の間に配置され、
前記第1シリコン導波路の一端は、前記第2保護膜から露出し、
前記第2シリコン導波路は、前記第2シリコン基板上に設けられた第3保護膜と、前記第3保護膜上に設けられた第4保護膜と、の間に配置され、
前記第2シリコン導波路の一端は、前記第4保護膜から露出している、請求項1に記載の光接続構造。
【請求項6】
前記第2保護膜上及び前記第4保護膜上に、外部接続用の電極パッドを備えた、請求項5に記載の光接続構造。
【請求項7】
前記第1保護膜の前記第1シリコン導波路が配置される面と、前記第3保護膜の前記第2シリコン導波路が配置される面と、前記第1クラッドの前記コアが配置される面とは、面一である、請求項5に記載の光接続構造。
【請求項8】
前記第1シリコンフォトニクスチップは、前記第1シリコン導波路の他端に光を入射する発光素子を備え、
前記第2シリコンフォトニクスチップは、前記第2シリコン導波路の他端から出射される光を受光する受光素子を備えている、請求項1に記載の光接続構造。
【請求項9】
前記第1シリコン基板の一方の面側に、複数の前記第1シリコン導波路が設けられ、
前記第2シリコン基板の一方の面側に、複数の前記第2シリコン導波路が設けられ、
前記光導波路は、
各々の前記第1シリコン導波路の一端と、各々の前記第2シリコン導波路の一端とを被覆し、各々の前記第1シリコン導波路と各々の前記第2シリコン導波路とを光学的に接続する複数の前記コアを備える、請求項1に記載の光接続構造。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の光接続構造と、配線基板と、を有し、
前記第1シリコンフォトニクスチップ及び前記第2シリコンフォトニクスチップが前記配線基板にフリップチップ実装された、光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光接続構造、及び光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
各種のコンピュータやデータ通信などの装置が設置されたデータセンター等において、シリコンフォトニクスチップと光導波路とを有する光接続構造を用いて光信号の送受信が行われている。
【0003】
例えば、光導波路を有する配線基板上にシリコンフォトニクスチップをフリップチップ実装し、シリコンフォトニクスチップに含まれるシリコン導波路と、光導波路に含まれるコアとを空隙を隔てて対向するように配置した光接続構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の光接続構造では、シリコンフォトニクスチップと光導波路との位置合わせが困難であるため、シリコンフォトニクスチップと光導波路との位置精度が十分でない場合があった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、シリコンフォトニクスチップと光導波路とを有する光接続構造において、シリコンフォトニクスチップと光導波路との位置精度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本光接続構造は、第1側面を備えた第1シリコンフォトニクスチップと、第2側面を備え、前記第2側面が前記第1側面と対向するように配置された第2シリコンフォトニクスチップと、前記第1シリコンフォトニクスチップと第2シリコンフォトニクスチップとに跨って配置される光導波路と、を有し、前記第1シリコンフォトニクスチップは、第1シリコン基板と、前記第1シリコン基板の一方の面側に設けられた第1シリコン導波路と、を備え、前記第2シリコンフォトニクスチップは、第2シリコン基板と、前記第2シリコン基板の一方の面側に設けられた第2シリコン導波路と、を備え、前記光導波路は、前記第1側面と前記第2側面との間を埋める第1クラッドと、前記第1クラッド上に配置され、前記第1シリコン導波路の一端と、前記第2シリコン導波路の一端とを被覆し、前記第1シリコン導波路と前記第2シリコン導波路とを光学的に接続するコアと、前記コアを被覆する第2クラッドと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、シリコンフォトニクスチップと光導波路とを有する光接続構造において、シリコンフォトニクスチップと光導波路との位置精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る光接続構造を例示する図である。
【
図2】第1実施形態に係る光接続構造の製造工程を例示する図(その1)である。
【
図3】第1実施形態に係る光接続構造の製造工程を例示する図(その2)である。
【
図4】第1実施形態に係る光接続構造の製造工程を例示する図(その3)である。
【
図5】第1実施形態に係る光接続構造の製造工程を例示する図(その4)である。
【
図6】第1実施形態に係る光モジュールを例示する断面図である。
【
図7】比較例に係る光モジュールを例示する断面図である。
【
図8】第1実施形態の変形例1に係る光接続構造を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
〈第1実施形態〉
[光接続構造]
図1は、第1実施形態に係る光接続構造を例示する図であり、
図1(a)は、平面図、
図1(b)は
図1(a)のA-A線に沿う断面図である。また、
図1では、参考のため、互いに直交するX方向、Y方向、及びZ方向を規定している。以降の図においても、必要に応じて、同様の方向を規定する場合がある。
【0012】
図1に示すように、第1実施形態に係る光接続構造1は、第1シリコンフォトニクスチップ10と、第2シリコンフォトニクスチップ20と、光導波路30とを有している。ここでは、一例として、光接続構造1の平面形状が矩形であり、矩形の長辺がX方向に平行であり、矩形の短辺がY方向に平行である。Z方向は、光接続構造1を構成する各層の積層方向である。なお、Z方向から対象物を視ることを平面視、そのときに視える形状を平面形状とする。
【0013】
第1シリコンフォトニクスチップ10は、第1シリコン基板11と、第1シリコン基板11の一方の面側に設けられた第1シリコン導波路13とを備えている。第1シリコンフォトニクスチップ10は、第1側面10cを備えている。第1側面10cは、例えば、YZ平面に平行である。第1シリコン基板11の厚さは、例えば、100μm~800μm程度である。
【0014】
第1シリコン導波路13は、第1シリコン基板11上に設けられた第1保護膜12と、第1保護膜12上に設けられた第2保護膜14との間に配置されている。第1保護膜12及び第2保護膜14は、例えば、SiO2、SiOx等から形成することができる。第1保護膜12及び第2保護膜14の厚さは、例えば、2μm~6μm程度である。
【0015】
第1シリコン導波路13の個数は必要に応じて決定することができるが、
図1の例では、第1保護膜12上に、平面視でX方向を長手方向とする細長状の4つの第1シリコン導波路13がY方向に所定間隔で並置されている。並置される第1シリコン導波路13のピッチは、例えば、20μm~300μm程度とすることができる。各々の第1シリコン導波路13の一部は、第2保護膜14で被覆されている。第1シリコン導波路13はコアとして機能し、第1保護膜12及び第2保護膜14はクラッドとして機能する。
【0016】
各々の第1シリコン導波路13の一端は、第2保護膜14から露出している。平面視で、各々の第1シリコン導波路13の一端は、テーパー形状になっている。すなわち、平面視で、各々の第1シリコン導波路13の一端は、第1クラッド31(後述)に近づくにつれて幅が狭くなっている。このような形状により、第1シリコン導波路13とコア32(後述)との光結合効率を向上できる。第1シリコン導波路13の幅は、テーパー形状の部分以外では、例えば、200nm~500nm程度である。テーパー形状の部分の先端の幅は、例えば、一定幅の部分の半分程度である。各々の第1シリコン導波路13の厚さは一定である。各々の第1シリコン導波路13の厚さは、例えば、20nm~300nm程度である。
【0017】
第1シリコンフォトニクスチップ10は、さらに、第1シリコン導波路13の他端に光を入射する発光素子15及び16と、第1シリコン導波路13の他端から出射される光を受光する受光素子17及び18とを備えている。発光素子15及び16、並びに受光素子17及び18は、例えば、第1シリコン基板11上に実装されている。第1シリコン基板11に、発光素子15及び16や受光素子17及び18を実装するためのキャビティを設けてもよい。発光素子15及び16は、例えば、レーザダイオードである。受光素子17及び18は、例えば、フォトダイオードである。
【0018】
第1シリコンフォトニクスチップ10は、さらに、外部接続用の電極パッド19を備えている。電極パッド19は、例えば、第2保護膜14上に複数個設けられており、発光素子15及び16、並びに受光素子17及び18と電気的に接続されている。電極パッド19は、例えば、銅やアルミニウムから形成することができる。
【0019】
第2シリコンフォトニクスチップ20は、第2シリコン基板21と、第2シリコン基板21の一方の面側に設けられた第2シリコン導波路23とを備えている。第2シリコンフォトニクスチップ20は、第2側面20cを備えている。第2側面20cは、例えば、YZ平面に平行である。第2シリコンフォトニクスチップ20は、第2側面20cが第1側面10cと対向するように配置されている。第2シリコン基板21の厚さは、例えば、第1シリコン基板11の厚さと同様である。
【0020】
第2シリコン導波路23は、第2シリコン基板21上に設けられた第3保護膜22と、第3保護膜22上に設けられた第4保護膜24との間に配置されている。第3保護膜22及び第4保護膜24は、例えば、SiO2、SiOx等から形成することができる。第3保護膜22及び第4保護膜24の厚さは、例えば、第1保護膜12及び第2保護膜14の厚さと同様である。
【0021】
第2シリコン導波路23の個数は必要に応じて決定することができるが、
図1の例では、第3保護膜22上に、平面視でX方向を長手方向とする細長状の4つの第2シリコン導波路23がY方向に所定間隔で並置されている。並置される第2シリコン導波路23のピッチは、例えば、並置される第1シリコン導波路13のピッチと同様である。各々の第2シリコン導波路23の一部は、第4保護膜24で被覆されている。第2シリコン導波路23はコアとして機能し、第3保護膜22及び第4保護膜24はクラッドとして機能する。
【0022】
各々の第2シリコン導波路23の一端は、第4保護膜24から露出している。平面視で、各々の第2シリコン導波路23の一端は、テーパー形状になっている。すなわち、平面視で、各々の第2シリコン導波路23の一端は、第1クラッド31(後述)に近づくにつれて幅が狭くなっている。このような形状により、第2シリコン導波路23とコア32(後述)との光結合効率を向上できる。第2シリコン導波路23の幅は、第1シリコン導波路13の幅と同様である。テーパー形状の部分の先端の幅は、第1シリコン導波路13と同様である。各々の第2シリコン導波路23の厚さは一定である。各々の第2シリコン導波路23の厚さは、例えば、各々の第1シリコン導波路13の厚さと同様である。
【0023】
第2シリコンフォトニクスチップ20は、さらに、第2シリコン導波路23の他端から出射される光を受光する受光素子25及び26と第2シリコン導波路23の他端に光を入射する発光素子27及び28とを備えている。受光素子25及び26、並びに発光素子27及び28は、例えば、第2シリコン基板21上に実装されている。第2シリコン基板21に、受光素子25及び26や発光素子27及び28を実装するためのキャビティを設けてもよい。受光素子25及び26は、例えば、フォトダイオードである。発光素子27及び28は、例えば、レーザダイオードである。
【0024】
第2シリコンフォトニクスチップ20は、さらに、外部接続用の電極パッド29を備えている。電極パッド29は、例えば、第4保護膜24上に複数個設けられており、受光素子25及び26、並びに発光素子27及び28と電気的に接続されている。電極パッド29は、例えば、銅やアルミニウムから形成することができる。
【0025】
光導波路30は、第1シリコンフォトニクスチップ10と第2シリコンフォトニクスチップ20とに跨って配置されている。光導波路30は、第1クラッド31と、コア32と、第2クラッド33とを備えている。第1クラッド31は、第1シリコンフォトニクスチップ10の第1側面10cと第2シリコンフォトニクスチップ20の第2側面20cとの間を埋めている。第1側面10c第2側面20cとの距離は、例えば、0.3mm~20mm程度である。
【0026】
第1保護膜12の第1シリコン導波路13が配置される上面と、第3保護膜22の第2シリコン導波路23が配置される上面と第1クラッド31のコア32が配置される上面とは、例えば、面一である。第1クラッド31の下面は、第1シリコン基板11の下面及び第2シリコン基板21の下面より突起していてもよい。あるいは、第1クラッド31の下面は、第1シリコン基板11の下面及び第2シリコン基板21の下面と面一であってもよい。
【0027】
第1クラッド31は、例えば、感光性の材料により形成されている。具体的には、第1クラッド31は、例えば、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂等のポリマーにより形成できる。第1クラッド31の厚さは、例えば、10μm以上であることが望ましい。
【0028】
コア32は、第1クラッド31上に選択的に配置され、第1クラッド31上から第1保護膜12上及び第3保護膜22上に延伸する。
図1の例では、第1クラッド31上に、平面視でX方向を長手方向とする細長状の4つのコア32がY方向に所定間隔で並置されている。各々のコア32は、各々の第1シリコン導波路13の一端と、各々の第2シリコン導波路23の一端とを被覆し、第1シリコン導波路13と第2シリコン導波路23とを光学的に接続する。各々のコア32は、各々の第1シリコン導波路13及び各々の第2シリコン導波路23の少なくともテーパー部分を被覆する。並置されるコア32のピッチは、例えば、100μm~300μm程度とすることができる。コア32は、第1クラッド31と同様の材料により形成できる。コア32の厚さは、例えば、3μm~10μm程度とすることができる。コア32の短手方向の断面形状は、例えば、正方形とすることができる。
【0029】
第2クラッド33は、第1クラッド31上に形成され、第1クラッド31上から第1保護膜12上及び第3保護膜22上に延伸する。第2クラッド33は、各々のコア32の少なくとも上面、長手方向の両側面、及び短手方向の両側面を被覆する。第2クラッド33は、第2保護膜14から露出する第1シリコン導波路13、及び第4保護膜24から露出する第2シリコン導波路23を被覆することが好ましい。第2クラッド33は、第2保護膜14及び第4保護膜24の端部を被覆してもよい。これにより、第1シリコン導波路13及び第2シリコン導波路23からの光漏れによる光学損失を低減することができる。第2クラッド33は、第1クラッド31と同様の材料により形成できる。第2クラッド33の厚さは、例えば、10μm~30μm程度とすることができる。
【0030】
上記のように、第1クラッド31、コア32、及び第2クラッド33は同一の材料から形成できるが、コア32の屈折率は、第1クラッド31及び第2クラッド33の屈折率よりも高い。コア32に、例えば、Ge等の屈折率制御用添加剤を含むことにより、コア32の屈折率を第1クラッド31及び第2クラッド33の屈折率よりも高くすることができる。第1クラッド31及び第2クラッド33の屈折率は例えば1.5、コア32の屈折率は例えば1.6とすることができる。
【0031】
図1において、例えば、発光素子15から出射された光は、第1シリコン導波路13内に入射し、第1シリコン導波路13内を伝搬して光導波路30のコア32内に入射する。コア32内を伝搬してコア32内から出射した光は、第2シリコン導波路23内に入射し、第2シリコン導波路23内を伝搬して受光素子25に達し、受光素子25で電気信号に変換される。
【0032】
また、発光素子16から出射された光は、第1シリコン導波路13内に入射し、第1シリコン導波路13内を伝搬して光導波路30のコア32内に入射する。コア32内を伝搬してコア32内から出射した光は、第2シリコン導波路23内に入射し、第2シリコン導波路23内を伝搬して受光素子26に達し、受光素子26で電気信号に変換される。
【0033】
また、発光素子27から出射された光は、第2シリコン導波路23内に入射し、第2シリコン導波路23内を伝搬して光導波路30のコア32内に入射する。コア32内を伝搬してコア32内から出射した光は、第1シリコン導波路13内に入射し、第1シリコン導波路13内を伝搬して受光素子17に達し、受光素子17で電気信号に変換される。
【0034】
また、発光素子28から出射された光は、第2シリコン導波路23内に入射し、第2シリコン導波路23内を伝搬して光導波路30のコア32内に入射する。コア32内を伝搬してコア32内から出射した光は、第1シリコン導波路13内に入射し、第1シリコン導波路13内を伝搬して受光素子18に達し、受光素子18で電気信号に変換される。
【0035】
[光接続構造の製造方法]
次に、光接続構造1の製造方法について説明する。
図2~
図5は、第1実施形態に係る光接続構造の製造工程を例示する図である。
図2~
図5において、(a)は
図1(a)に対応する平面図、(b)は
図1(b)に対応する断面図である。
【0036】
まず、
図2(a)及び
図2(b)に示す工程では、第1シリコンフォトニクスチップ10、第2シリコンフォトニクスチップ20、及び少なくとも一方の面が平坦な支持基板100を準備する。そして、支持基板100の一方の面に、第1シリコンフォトニクスチップ10及び第2シリコンフォトニクスチップ20を、第1側面10cと第2側面20cとが対向するように、第1接着層120及び第2接着層130を用いてフェイスアップで接着する。第1接着層120及び第2接着層130としては、例えば、ダイアタッチフィルム、感光性パターニング接着剤、液状の接着剤等が挙げられる。なお、支持基板100と第1シリコンフォトニクスチップ10及び第2シリコンフォトニクスチップ20とは、機械的に接続するだけであり、電気的に未接続である。
【0037】
支持基板100としては、シリコン、ガラス、セラミック、金属等の基板を用いることができる。支持基板100の厚さは、例えば、500μm程度とすることができる。支持基板100の一方の面には、第1シリコンフォトニクスチップ10及び第2シリコンフォトニクスチップ20を接着する際の位置合わせに使用するアライメントマークが形成されていることが好ましい。
【0038】
支持基板100の一方の面に第1シリコンフォトニクスチップ10及び第2シリコンフォトニクスチップ20を接着する際に、圧力及び熱を印加しながら行ってもよい。このときに必要な圧力及び熱は、一般にデバイスをフリップチップ実装する際に必要な圧力及び熱よりも十分に低くすることができる。
【0039】
なお、支持基板100の一方の面には、光接続構造1を形成する複数の領域が画定されている。複数の領域は、例えば、行列状に2次元に配置される。
図2(a)に示す一点鎖線Cで囲まれた領域が、光接続構造1を形成する1つの領域である。この工程では、支持基板100の一方の面に画定された各領域に、第1シリコンフォトニクスチップ10及び第2シリコンフォトニクスチップ20を接着する。
【0040】
次に、
図3(a)及び
図3(b)に示す工程では、支持基板100の一方の面に、第1シリコンフォトニクスチップ10の第1側面10cと第2シリコンフォトニクスチップ20の第2側面20cとの間を埋めるように、第1クラッド31を形成する。第1クラッド31は、例えば、フィルム状の樹脂材料をラミネートして形成することができる。第1クラッド31は、液状又はペースト状の樹脂材料を、支持基板100の一方の面に塗布した後、紫外線照射や加熱等により硬化させることにより形成してもよい。第1クラッド31の材料等は前述の通りである。この工程では、第1クラッド31の上面を押圧する等により、第1クラッド31の上面を第1保護膜12の上面及び第3保護膜22の上面と面一とすることが好ましい。これにより、コア32の形成が容易となる。
【0041】
次に、
図4(a)及び
図4(b)に示す工程では、第1クラッド31の上面、第1保護膜12の上面、及び第3保護膜22の上面に、複数のコア32を形成する。各々のコア32は、各々の第1シリコン導波路13の一端と、各々の第2シリコン導波路23の一端とを被覆し、第1シリコン導波路13と第2シリコン導波路23とを光学的に接続するように形成される。各々のコア32は、各々の第1シリコン導波路13の少なくともテーパー部分を被覆するように形成される。各々のコア32は、例えば、フィルム状の樹脂材料をラミネートして形成することができる。各々のコア32は、液状又はペースト状の樹脂材料を塗布した後、紫外線照射や加熱等により硬化させることにより形成してもよい。各々のコア32の材料等は前述の通りである。
【0042】
次に、
図5(a)及び
図5(b)に示す工程では、各々のコア32を覆うように、第1クラッド31の上面、第1保護膜12の上面、及び第3保護膜22の上面に第2クラッド33を形成する。第2クラッド33は、各々のコア32の少なくとも上面、長手方向の両側面、及び短手方向の両側面を被覆するように形成される。第2クラッド33は、第2保護膜14から露出する第1シリコン導波路13、及び第4保護膜24から露出する第2シリコン導波路23を被覆することが好ましい。第2クラッド33は、第2保護膜14及び第4保護膜24の端部を被覆してもよい。第2クラッド33は、例えば、第1クラッド31と同様の方法により形成できる。第2クラッド33の材料等は前述の通りである。
【0043】
次に、
図5(a)及び
図5(b)に示す工程の後、支持基板100を除去し、
図5(a)及び
図5(b)に示す一点鎖線Cの位置で切断して個片化することにより、複数の光接続構造1が完成する。切断は、ダイサー等を用いて行うことができる。なお、第1接着層120及び第2接着層130は、支持基板100と同時に除去されてもよいし、一部または全部が光接続構造1側に残存してもよい。
【0044】
このように、光接続構造1では、支持基板100上で、第1シリコンフォトニクスチップ10、第2シリコンフォトニクスチップ20、及び光導波路30を一体化している。支持基板100への第1シリコンフォトニクスチップ10及び第2シリコンフォトニクスチップ20の接着には電気的な接続を伴わないため、フリップチップ実装と比較して加圧や加熱の印加量を低減できる。その結果、第1シリコンフォトニクスチップ10及び第2シリコンフォトニクスチップ20と光導波路30との高精度な位置合わせが可能となり、サブミクロンオーダ(例えば、±0.5μm程度)の位置精度を実現できる。
【0045】
また、光接続構造1では、第1シリコンフォトニクスチップ10の第1シリコン導波路13及び第2シリコンフォトニクスチップ20の第2シリコン導波路23と光導波路30とを、空隙を介さずに直接接続する。そのため、第1シリコン導波路13及び第2シリコン導波路23と光導波路30との間の光学損失を低減することができる。
【0046】
[光モジュール]
図6は、第1実施形態に係る光モジュールを例示する断面図である。
図6に示すように、光モジュール2は、光接続構造1と、配線基板3とを有している。配線基板3は、例えば、絶縁層と配線層とが交互に積層されたビルドアップ基板であるが、これには限定されず、シリコン基板やセラミック基板等の任意の配線基板であり得る。なお、
図6において、光接続構造1は、
図1等に対して上下が反転した状態で描かれている。
【0047】
光モジュール2において、光接続構造1の第1シリコンフォトニクスチップ10及び第2シリコンフォトニクスチップ20は、配線基板3にフリップチップ実装されている。具体的には、配線基板3の上面には、複数の電極パッド50が形成されている。そして、配線基板3の電極パッド50は、接合部材60を介して、第1シリコンフォトニクスチップ10の電極パッド19及び第2シリコンフォトニクスチップ20の電極パッド29と電気的に接続されている。接合部材60は、例えば、はんだボールや銅ピラーバンプ等である。
【0048】
光モジュール2において、配線基板3からの電気信号に応じて第1シリコンフォトニクスチップ10の発光素子15等が光を出射し、第2シリコンフォトニクスチップ20の受光素子25等で電気信号に変換されて配線基板3に送られる。光モジュール2において、フリップチップ実装が採用される理由は、配線基板3から高速の電気信号を第1シリコンフォトニクスチップ10及び第2シリコンフォトニクスチップ20へ入出力させるためである。
【0049】
図7は、比較例に係る光モジュールを例示する断面図である。
図7に示すように、比較例に係る光モジュール2Xでは、互いに独立する第1シリコンフォトニクスチップ10X、第2シリコンフォトニクスチップ20X、及び光導波路30Xが、配線基板3にフリップチップ実装されている。
【0050】
第1シリコンフォトニクスチップ10X、第2シリコンフォトニクスチップ20X、及び光導波路30Xは、配線基板3に実装される際に位置合わせされる。例えば、光導波路30Xが形成された配線基板3に、第1シリコンフォトニクスチップ10X及び第2シリコンフォトニクスチップ20Xを、光導波路30Xとの光学的な位置合わせをしつつフリップチップ実装する。フリップチップ実装は、圧力及び熱を印加しながら行うため、第1シリコンフォトニクスチップ10X及び第2シリコンフォトニクスチップ20Xと光導波路30Xとの位置精度は、ミクロンオーダ(例えば、±2~3μm程度)となる。
【0051】
一方、第1シリコンフォトニクスチップ10X及び第2シリコンフォトニクスチップ20Xと光導波路30Xとの位置合わせには、サブミクロンオーダ(例えば、±0.5μm程度)の位置精度が求められる。光導波路30Xとの光学的な位置合わせをしつつフリップチップ実装することが必要な光モジュール2Xの構造では、サブミクロンオーダ(例えば、±0.5μm程度)の位置精度を達成することは極めて困難である。
【0052】
これに対し、光モジュール2では、第1シリコンフォトニクスチップ10、第2シリコンフォトニクスチップ20、及び光導波路30を一体化した光接続構造1を配線基板3にフリップチップ実装している。第1シリコンフォトニクスチップ10及び第2シリコンフォトニクスチップ20と光導波路30とに必要な位置精度は、光接続構造1で既に達成されている。そのため、光接続構造1を配線基板3にフリップチップ実装する際の位置精度がミクロンオーダ(例えば、±2~3μm程度)であっても光通信には影響がない。
【0053】
このように、光モジュール2では、光接続構造1を配線基板3に通常の位置精度でフリップチップ実装しても、第1シリコンフォトニクスチップ10及び第2シリコンフォトニクスチップ20と光導波路30とに要求されるサブミクロンオーダの位置精度を達成することができる。すなわち、比較例に係る光モジュール2Xと比べて、第1シリコンフォトニクスチップ10及び第2シリコンフォトニクスチップ20と光導波路30との位置精度を向上することができる。
【0054】
〈第1実施形態の変形例1〉
第1実施形態の変形例1では、支持基板を有する光接続構造の例を示す。なお、第1実施形態の変形例1において、既に説明した実施形態と同一構成部品についての説明は省略する場合がある。
【0055】
図8は、第1実施形態の変形例1に係る光接続構造を例示する断面図である。
図8に示すように、光接続構造1Aは、支持基板100を有している点が、光接続構造1と相違する。
【0056】
光接続構造1Aにおいて、第1シリコン基板11の他方の面は、第1接着層120を介して支持基板100の一方の面と接続されている。また、第2シリコン基板21の他方の面は、第2接着層130を介して支持基板100の一方の面と接続されている。支持基板100と第1シリコンフォトニクスチップ10、及び支持基板100と第2シリコンフォトニクスチップ20とは、機械的に接続されているだけであり、電気的に未接続である。光接続構造1Aを製造するには、
図5(a)及び
図5(b)に示す工程で支持基板100を除去せずに個片化を行えばよい。
【0057】
このように、光接続構造1Aは、支持基板100を備えることにより、光接続構造1よりも高剛性化することができる。一方、光接続構造1は支持基板100を備えていないため、支持基板100が設けられていた位置にヒートシンク等の任意の部材を配置できる点で設計自由度が高い。
【0058】
なお、光モジュール2において、光接続構造1に代えて光接続構造1Aを用いてもよい。
【0059】
以上、好ましい実施形態について詳説したが、上述した実施形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0060】
1,1A 光接続構造
2 光モジュール
3 配線基板
10 第1シリコンフォトニクスチップ
10c 第1側面
11 第1シリコン基板
12 第1保護膜
13 第1シリコン導波路
14 第2保護膜
15,16,27,28 発光素子
17,18,25,26 受光素子
19,29 電極パッド
20 第2シリコンフォトニクスチップ
20c 第2側面
21 第2シリコン基板
22 第3保護膜
23 第2シリコン導波路
24 第4保護膜
30 光導波路
31 第1クラッド
32 コア
33 第2クラッド
50 電極パッド
60 接合部材
100 支持基板
120 第1接着層
130 第2接着層