(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061067
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】保持構造及び端子台
(51)【国際特許分類】
F16B 21/07 20060101AFI20240425BHJP
H02G 3/16 20060101ALI20240425BHJP
H02G 1/14 20060101ALI20240425BHJP
H02G 15/08 20060101ALI20240425BHJP
H01R 9/26 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
F16B21/07 Z
H02G3/16
H02G1/14
H02G15/08
H01R9/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168767
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】元 慎
(72)【発明者】
【氏名】中里 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】大継 雅之
【テーマコード(参考)】
3J037
5E086
5G355
5G361
5G375
【Fターム(参考)】
3J037AA02
3J037DA05
3J037DA13
3J037DB02
3J037DC01
5E086CC26
5E086DD05
5E086HH04
5E086LL20
5G355AA03
5G355BA01
5G355BA11
5G355CA02
5G361BA03
5G361BA07
5G361BB01
5G361BB02
5G361BC01
5G375AA02
5G375AA20
5G375BA26
5G375CA14
5G375CA17
5G375CB05
5G375DB35
5G375EA17
(57)【要約】
【課題】被保持体を係合部で保持する保持構造において、被保持体を挿入する際に係合部が破損しにくい構成を提供する。
【解決手段】保持構造は、ボルト3と、収容部20と、を備える。収容部20には、挿入されたボルト3が収容される。収容部20は、収容面と、係合部22と、を備える。収容面は、ボルト3が挿抜方向の一側(挿入方向側)に移動することを規制する。係合部22は、ボルト3に係合することで、ボルト3が挿抜方向の他側(抜き方向側)に移動することを規制する。係合部22は、爪部22eと、湾曲部22cと、を備える。爪部22eは、先端部に形成され、ボルト3に係合する。湾曲部22cは、先端部と基端部22aの間に形成され、湾曲する。湾曲部22cが変形することにより、爪部22eがボルト3に係合する状態と、爪部22eのボルト3への係合が解除された状態と、が切り替わる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被保持体と、
挿入された前記被保持体が収容される収容部と、
を備え、
前記収容部は、
前記被保持体が挿抜方向の一側に移動することを規制する収容面と、
前記被保持体に係合することで、前記被保持体が挿抜方向の他側に移動することを規制する係合部と、
を備え、
前記係合部は、
先端部に形成され、前記被保持体に係合する爪部と、
前記先端部と基端部の間に形成され、湾曲する湾曲部と、
を備え、
少なくとも前記湾曲部が変形することにより、前記爪部が前記被保持体に係合する状態と、前記爪部の前記被保持体への係合が解除された状態と、が切り替わることを特徴とする保持構造。
【請求項2】
請求項1に記載の保持構造であって、
前記湾曲部がU字状に湾曲することを特徴とする保持構造。
【請求項3】
請求項1に記載の保持構造であって、
前記係合部は、
前記基端部と前記湾曲部を接続する第1棒状体を備え、
前記第1棒状体は、前記基端部から挿抜方向の一側に延びることを特徴とする保持構造。
【請求項4】
請求項1に記載の保持構造であって、
前記係合部が前記被保持体から離れる方向に変形した際に当該係合部に接触して変形を規制する規制構造を備えることを特徴とする保持構造。
【請求項5】
請求項1に記載の保持構造であって、
前記被保持体は、頭部と軸部とを有するボルトであり、前記頭部に前記爪部が係合することを特徴とする保持構造。
【請求項6】
請求項5に記載の保持構造であって、
前記ボルトの前記頭部は、
第1部材と、
前記第1部材よりも前記収容面側に位置する第2部材と、
を備え、
前記第1部材と第2部材により段差形状が形成されており、当該段差形状に前記爪部が係合することを特徴とする保持構造。
【請求項7】
請求項6に記載の保持構造であって、
前記ボルトを軸方向で見たときに、前記第1部材は、前記第2部材よりも径方向外側に突出する第1突出部を備え、
前記第1突出部は、前記収容面に対向しており、前記第1突出部が前記収容面に接触することで、前記ボルトの挿抜方向の一側の移動が規制されることを特徴とする保持構造。
【請求項8】
請求項7に記載の保持構造であって、
前記ボルトを軸方向で見たときに、前記第1部材は、矩形状であり、四隅に前記第1突出部が位置することを特徴とする保持構造。
【請求項9】
請求項1に記載の保持構造を含むホルダを備え、
前記被保持体に端子を取付可能であることを特徴とする端子台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、被保持体を収容部に保持する保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、被保持体としてのナットを保持するナット保持部材を開示する。ナット保持部材は、ナット嵌め込み部と、座部と、係止部と、から構成されている。ナット嵌め込み部には、ナットが嵌め込まれる。座部は、ナットの上面に接触して、ナットの移動を規制する。係止部は、一方向に延びる棒状の部材であり、先端に爪部が形成されている。ナットは、係止部を径方向外側に押しのけるようにして、ナット嵌め込み部に挿入される。ナットがナット嵌め込み部に挿入された状態では、係止部の爪部がナットに引っ掛かるため、ナットが保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の係止部は、一方向に延びる棒状の部材である。従って、係止部が径方向外側に押しのけられた際には、係止部の基端部に応力が集中する。その結果、係止部が破損する可能性がある。なお、被保持体としてナット以外の部材が用いられる場合においても、同様の課題が存在する。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、被保持体を係合部で保持する保持構造において、被保持体を挿入する際に係合部が破損しにくい構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の観点によれば、以下の構成の保持構造が提供される。即ち、保持構造は、被保持体と、収容部と、を備える。前記収容部には、挿入された前記被保持体が収容される。前記収容部は、収容面と、係合部と、を備える。前記収容面は、前記被保持体が挿抜方向の一側に移動することを規制する。前記係合部は、前記被保持体に係合することで、前記被保持体が挿抜方向の他側に移動することを規制する。前記係合部は、爪部と、湾曲部と、を備える。前記爪部は、先端部に形成され、前記被保持体に係合する。前記湾曲部は、前記先端部と基端部の間に形成され、湾曲する。少なくとも前記湾曲部が変形することにより、前記爪部が前記被保持体に係合する状態と、前記爪部の前記被保持体への係合が解除された状態と、が切り替わる。
【0008】
係合部が湾曲部を含むことにより、被保持体を収容部に挿入する際に係合部を変形させ易く、また係合部の変形に伴う応力を分散させることができる。これにより、係合部を破損しにくくすることができる。
【0009】
前記の保持構造においては、前記湾曲部がU字状に湾曲することが好ましい。
【0010】
係合部がU字状の湾曲部を含むことにより、湾曲部が大きく変形可能となるため、係合部の変形に伴う応力をより一層分散させることができる。
【0011】
前記の保持構造においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記係合部は、前記基端部と前記湾曲部を接続する第1棒状体を備える。前記第1棒状体は、前記基端部から挿抜方向の一側に延びる。
【0012】
基端部と湾曲部の間に第1棒状体があることで、湾曲部が変形した際に、その変形が基端部に影響を及ぼしにくいため、係合部を破損しにくくすることができる。
【0013】
前記の保持構造においては、前記係合部が前記被保持体から離れる方向に変形した際に当該係合部に接触して変形を規制する規制構造を備えることが好ましい。
【0014】
これにより、被保持体を収容部から外れにくくすることができる。
【0015】
前記の保持構造においては、前記被保持体は、頭部と軸部とを有するボルトであり、前記頭部に前記爪部が係合することが好ましい。
【0016】
これにより、被保持体としてのボルトを収容部に保持することができる。
【0017】
前記の保持構造においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ボルトの前記頭部は、第1部材と、第2部材と、を備える。前記第2部材は、前記第1部材よりも前記収容面側に位置する。前記第1部材と第2部材により段差形状が形成されており、当該段差形状に前記爪部が係合する。
【0018】
段差形状に爪部を係合させることにより、ボルトの動きが規制されるので、ボルトを収容部から外れにくくすることができる。
【0019】
前記の保持構造においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ボルトを軸方向で見たときに、前記第1部材は、前記第2部材よりも径方向外側に突出する第1突出部を備える。前記第1突出部は、前記収容面に対向しており、前記第1突出部が前記収容面に接触することで、前記ボルトの挿抜方向の一側の移動が規制される。
【0020】
これにより、第1部材を用いてボルトの移動を規制できる。
【0021】
前記の保持構造においては、前記ボルトを軸方向で見たときに、前記第1部材は、矩形状であり、四隅に前記第1突出部が位置することが好ましい。
【0022】
これにより、第1部材の四隅で収容面に対向させることができるので、第1部材に局所的に力が掛かることを抑制できる。
【0023】
前記の端子台においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、端子台は、保持構造を含むホルダを備える。前記被保持体に端子を取付可能である。
【0024】
これにより、係合部が破損しにくい端子台が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図4】保持構造の係合部が含まれる断面の断面斜視図。
【
図6】保持構造の収容面が含まれる断面の断面斜視図。
【
図7】収容部にボルトを挿入する過程で係合部が変形する様子を示す断面図。
【
図8】収容部がボルトを保持した状態でボルトに力が掛かることにより収容部が変形する様子を示す断面図。
【
図9】変形例に係る保持構造の上面側の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、
図1を参照して、端子台1について説明する。
【0027】
端子台1は、複数の端子5同士を電気的に接続するための部材である。本実施形態の端子台1は、自動車に設けられる。ただし、端子台1の設置先は、自動車に限られない。
【0028】
図1に示すように、端子台1は、ホルダ2を備える。ホルダ2は、樹脂製であり、複数の端子5を取付可能である。なお、端子台1は、ホルダ2を覆うカバーを更に備えていてもよい。また、ホルダ2は、自動車等の設置先に固定するための構造(例えば取付孔)を有している。ホルダ2には、複数のボルト(被保持体)3がそれぞれ挿入されて保持されている。ホルダ2がボルト3を保持する構造の詳細については後述する。
【0029】
複数のボルト3は、ホルダ2から軸部を突き出した状態で保持される。ボルト3には、バスバー4、端子5、及び、ナット7が取り付けられる。バスバー4は、金属製であり、導通性を有する板状の部材である。バスバー4には、複数のボルト3をそれぞれ挿入するための複数の貫通孔が形成されている。端子5は例えばO字状又はU字状であり、バスバー4に接触するようにして、ボルト3にセットされる。端子5には電線6が接続されている。そして、ボルト3にナット7を挿入して締め付けることにより、バスバー4及び端子5がホルダ2に固定される。
【0030】
以上により、複数の端子5は、バスバー4を介して電気的に接続される。これにより、例えばバッテリー等から供給された電力を、電線6に接続された機器に分配することができる。
【0031】
次に、ホルダ2がボルト3を保持する構造である保持構造100の詳細について説明する。
図2に示すように、保持構造100は、収容部20と、ボルト3と、を備える。
【0032】
収容部20は、ホルダ2の一部分を構成する。
図2に示されている収容部20は、収容部20に相当する直方体状の部分をホルダ2から切り出したものである。つまり、収容部20は、独立した(分離可能な)直方体状の部分である必要はなく、ホルダ2に作り込まれていればよい。
【0033】
図3に示すように、収容部20には、開口部21が形成されている。開口部21は、貫通状であり、かつ、ボルト3を挿入可能なサイズである。以下の説明では、ボルト3を収容部20に挿入する方向を「挿入方向」、収容部20からボルト3を抜く方向を「抜き方向」、挿入方向と抜き方向をまとめて「挿抜方向」と称する。なお、挿抜方向は、ボルト3の軸方向と平行である。
【0034】
図4に示すように、収容部20には、係合部22が形成されている。係合部22は、収容部20に挿入されたボルト3に係合することにより、ボルト3が抜き方向に移動することを規制する部材である。収容部20には、2つの係合部22が形成されている。2つの係合部22は、ボルト3を挟んで対向する位置に、それぞれ形成されている。なお、本実施形態の係合部22の数及び位置は一例であり、係合部22は1つ又は3つ以上であってもよいし、対向しない位置に配置される係合部22が含まれていてもよい。
【0035】
係合部22は、U字状の細長状の部材である。係合部22のうち、収容部20の本体に接続される側を基端側と称し、ボルト3に係合される側を先端側と称する。係合部22は、基端部22aと、第1棒状体22bと、湾曲部22cと、第2棒状体22dと、爪部22eと、を備える。
【0036】
基端部22aは、開口部21の内壁面に接続されている。なお、基端部22aの接続先は、別の箇所、例えば挿入方向の端部を覆う壁面(
図4の上側の壁面)が存在する場合は、当該壁面に接続されていてもよい。第1棒状体22bは、細長状の部材である。第1棒状体22bの長手方向は、挿抜方向に沿っている。沿っているとは、2つの方向が平行又は略平行という意味であり、完全に平行であることまでは要求されない。湾曲部22cはU字状に湾曲した部分である。本実施形態においてU字状とは、厳密なU字状に限られず略U字状を含む。別の観点で説明すると、湾曲部22cは抜き方向側に凸となるように湾曲した形状である。ただし、湾曲部22cは湾曲を含んでいればU字状以外の形状であってもよい。例えば、L字状の角部分を湾曲させた形状であってもよい。湾曲部22cは、第1棒状体22bに接続されている。湾曲部22cは、第1棒状体22bよりも抜き方向側に位置する。第2棒状体22dは、細長状の部材である。第2棒状体22dの長手方向は、挿抜方向に沿っている。第2棒状体22dは湾曲部22cに接続されている。爪部22eは、引掛け可能な爪形状の部分である。爪部22eは、第2棒状体22dの先端に形成されている。なお、係合部22は、基端部22aを除いて収容部20に接続されていない。そのため、係合部22は、第1棒状体22bと第2棒状体22dの隙間が開くように又は閉じるように弾性変形可能である。
【0037】
図4に示すように、収容部20には、更に、突起23が形成されている。突起23は、開口部21の内壁面のうち、係合部22の近傍に形成されている。詳細には、第1棒状体22b又は湾曲部22cに対向する内壁面に形成されている。詳細は後述するが、突起23は、係合部22(特に基端部22a、第1棒状体22b)の変形を規制する規制構造として機能する。
【0038】
図5及び
図6に示すように、収容部20には、収容面24が形成されている。収容面24は、挿抜方向に垂直な面である。また、収容面24は、挿入方向の端部を閉鎖する面である。収容面24は、収容部20に挿入されるボルト3のストッパとして機能し、ボルト3が適切な位置より挿入方向側に移動することを規制する。
【0039】
本実施形態では、4つの収容面24が形成されている。4つの収容面24は、開口部21の四隅に相当する位置にそれぞれ形成されている。収容面24は、開口部の内壁面から中心側に突出するように形成された部分の一面である。
【0040】
次に、保持構造100を構成するボルト3について説明する。
図3に示すように、ボルト3は、頭部30と、軸部33と、を備える。
【0041】
頭部30は、第1部材31と、第2部材32と、を備える。第1部材31は、略矩形状の板状の部材である。第2部材32は、略十字状の板状の部材である。第2部材32は、第1部材31よりも挿入方向側(軸部33側又は収容面24側)に位置している。
【0042】
また、第1部材31と第2部材32は異なる形状である。そのため、挿抜方向で頭部30を見たときに、第1部材31と第2部材32には重複しない部分が存在する。詳細には、第1部材31には、挿抜方向で見たときに、第2部材32から外側に突出する部分(以下、第1突出部31a)が形成されている。第1突出部31aは、矩形の四隅に相当する部分である。従って、本実施形態では、4つの第1突出部31aが形成されている。また、第2部材32には、挿抜方向で見たときに、第1部材31から外側に突出する部分(以下、第2突出部32a)が形成されている。第2突出部32aは、十字の4つの先端に相当する部分である。従って、本実施形態では、4つの第2突出部32aが形成されている。
【0043】
以下、第1部材31及び第2部材32の機能について詳細に説明する。
図5に示すように、開口部21には、第1部材31に対応する矩形状の開口部分が含まれている。これにより、開口部21に第1部材31を挿入可能である。また、第1部材31は円形状ではなく略矩形状(多角形状)である。従って、第1部材31が開口部21に挿入された後に、頭部30を回転させる力が作用したとしても、第1部材31の縁部が開口部21の内壁面に干渉する。つまり、第1部材31は、頭部30の回り止めの機能を有する。なお、第1部材31は矩形状(四角形状)に限られず、他の多角形状であってもよい。この場合、開口部21の形状を第1部材31に応じた形状にすることが好ましい。
【0044】
上述したように、収容面24は、開口部21の四隅に相当する位置にそれぞれ形成されている。4つの収容面24がそれぞれ形成される位置と、4つの第1突出部31aの位置と、は対応している。従って、ボルト3を収容部20に挿入することにより、
図6に示すように、第1突出部31aがそれぞれ収容面24に接触する。これにより、ボルト3が適切な位置より挿入方向側に移動することが規制される。
【0045】
また、本実施形態の第1部材31は、回り止めの機能と、収容面24に接触する機能と、の両方の機能を有するが、何れか一方の機能を有していなくてもよい。
【0046】
図5に示すように、開口部21には、第2部材32に対応する十字形状の開口部分が含まれている。これにより、開口部21に第2部材32を挿入可能である。また、頭部30には、第1部材31と第2突出部32aにより段差形状が形成されている。この段差に係合部22の爪部22eが係合する。具体的には、ボルト3が収容部20に保持されている状態(例えば
図4)において、爪部22eは段差形状の内部に入り込む。これにより、ボルト3が抜き方向に力を受けても、第2突出部32aと爪部22eが接触(干渉)するため、ボルト3の抜き方向の移動が規制される。また、爪部22eの先端(軸部33の中心軸に最も近い部分)は、第1部材31に接触又は対向するため、爪部22eが径方向の内側に過剰に移動することが規制される。なお、径方向とは、挿抜方向に垂直な方向であり、ボルト3の中心軸に向かう方向が内側であり、ボルト3の中心軸から離れる方向が外側である。なお、2つの爪部22e同士の隙間を広げるように係合部22を変形させることにより、爪部22eの係合を解除できる。
【0047】
軸部33はネジ溝が形成された円柱状の部分である。軸部33には、上述したようにナット7が取り付けられる。
【0048】
次に、
図7を参照して、収容部20にボルト3を挿入する際の係合部22の変形について説明する。
【0049】
外力が掛かっていないときの2つの爪部22eの間隔は、頭部30のサイズよりも狭い。従って、収容部20にボルト3を挿入することにより、頭部30が爪部22eに接触して爪部22eを押圧する。これにより、爪部22eは、径方向の外側向きの力(
図7の上図の太線矢印)を受ける。その結果、2つの爪部22eの間隔が広がるように係合部22が弾性変形する(
図7の上図)。特に、爪部22eの抜き方向側の端部は傾斜面となっているため、ボルト3の挿入方向の力が爪部22eを径方向に広げる方向の力に変換され易い。
【0050】
ここで、特許文献1の係止部は1本の棒状の部材であるため、基端部に応力が集中し易い。その結果、係止部の基端部が破損し易い。この点、本実施形態の係合部22は湾曲部22cを含むため、第2棒状体22dが第1棒状体22bに近づくようにして、湾曲部22c及びその近傍が変形する。これにより、応力を係合部22及びその近傍に分散させることができる。その結果、係合部22が破損しにくい。更に、係合部22が湾曲部22cを含むことにより、第2棒状体22dの向きを大きく変更可能である。その結果、爪部22eを径方向に大きく移動させることができる。
【0051】
ボルト3が収容部20に挿入されていき、頭部30の第2部材32が爪部22eを通過した段階で、係合部22の変形が解消され、係合部22の形状が元に戻る(
図7の下図)。これにより、上述したように、爪部22eがボルト3の頭部30に係合する。
【0052】
次に、
図8を参照して、収容部20に挿入されたボルト3に抜き方向の力が掛かった場合の係合部22の変形について説明する。
【0053】
収容部20にボルト3が挿入されて保持された後に、何らかの理由でボルト3に抜き方向の力(
図8の上図の太線矢印)が掛かったとする。この場合、主として爪部22e及び第2棒状体22dが抜き方向に押圧されるため、湾曲部22c及び第1棒状体22bを径方向外側に広げる力が掛かる。この力により係合部22(主として湾曲部22c)がボルト3から離れる方向に変形して、その変形量が過剰となった場合、2つの爪部22e同士の隙間が大きくなるため、ボルト3が収容部20から外れる可能性がある。この点、本実施形態では第1棒状体22b又は湾曲部22cの径方向外側に突起23が位置しており、係合部22がボルト3から離れる方向に変形した際に係合部22に突起23が接触する。これにより、係合部22の変形が規制され、その結果、ボルト3が収容部20から外れにくい。
【0054】
なお、本実施形態では突起23により、係合部22がボルト3から離れる方向(径方向外側に向かう方向)の変形が規制される。ただし、突起23は規制構造の一例であり、係合部22のボルト3から離れる方向の変形が規制されるのであれば、様々な構造を採用できる。例えば、係合部22と、係合部22の径方向外側の壁面と、を近づけることにより、係合部22のボルト3から離れる方向の変形を規制することもできる。
【0055】
次に、
図9を参照して、上記実施形態の変形例を説明する。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0056】
変形例では、開口部21、収容面24、及び頭部30等の形状が上記実施形態とは異なる。相違点は、具体的には以下のとおりである。即ち、変形例の第2部材32は円形である。頭部30を挿抜方向で見たときに、第1部材31が第2部材32を完全に覆う。開口部21の形状は頭部30に対応するため、開口部21の形状についても上記実施形態とは異なる。
【0057】
変形例を用いて説明したように、上記実施形態のボルト3及び収容部20の形状は一例であり、本発明の効果を発揮できる限り、上記実施形態とは異なる形状又は構成のボルト3及び収容部20を採用することもできる。
【0058】
以上に説明したように、上記実施形態の保持構造100は、ボルト3と、収容部20と、を備える。収容部20には、挿入されたボルト3が収容される。収容部20は、収容面24と、係合部22と、を備える。収容面24は、ボルト3が挿抜方向の一側(挿入方向側)に移動することを規制する。係合部22は、ボルト3に係合することで、ボルト3が挿抜方向の他側(抜き方向側)に移動することを規制する。係合部22は、爪部22eと、湾曲部22cと、を備える。爪部22eは、先端部に形成され、ボルト3に係合する。湾曲部22cは、先端部と基端部22aの間に形成され、湾曲する。少なくとも湾曲部22c(詳細には湾曲部22cと第1棒状体22bと第2棒状体22d)が変形することにより、爪部22eがボルト3に係合する状態と、爪部22eのボルト3への係合が解除された状態と、が切り替わる。
【0059】
係合部22が湾曲部22cを含むことにより、ボルト3を収容部20に挿入する際に係合部22を変形させ易く、また係合部22の変形に伴う応力を分散させることができる。これにより、係合部22を破損しにくくすることができる。
【0060】
上記実施形態の保持構造100において、湾曲部22cがU字状に湾曲する。
【0061】
係合部22がU字状の湾曲部22cを含むことにより、湾曲部22cが大きく変形可能となるため、係合部22の変形に伴う応力をより一層分散させることができる。
【0062】
上記実施形態の保持構造100において、係合部22は、基端部22aと湾曲部22cを接続する第1棒状体22bを備える。第1棒状体22bは、基端部22aから挿抜方向の一側に延びる。
【0063】
基端部22aと湾曲部22cの間に第1棒状体22bがあることで、湾曲部22cが変形した際に、その変形が基端部22aに影響を及ぼしにくいため、係合部22(特に基端部22a)を破損しにくくすることができる。
【0064】
上記実施形態の保持構造100において、係合部22がボルト3から離れる方向に変形した際に係合部22に接触して変形を規制する突起23を備える。
【0065】
これにより、ボルト3を収容部20から外れにくくすることができる。
【0066】
上記実施形態の保持構造100において、頭部30と軸部33とを有するボルト3が被保持体であり、頭部30に爪部22eが係合する。
【0067】
これにより、ボルト3を収容部20に保持することができる。
【0068】
上記実施形態の保持構造100において、ボルト3の頭部30は、第1部材31と、第2部材32と、を備える。第2部材32は、第1部材31よりも収容面24側に位置する。第1部材31と第2部材32により段差形状が形成されており、段差形状に爪部22eが係合する。
【0069】
段差形状に爪部22eを係合させることにより、爪部22eの動きが規制されるので、爪部22eを外れにくくすることができる。
【0070】
上記実施形態の保持構造100において、ボルト3を軸方向で見たときに、第1部材31は、第2部材32よりも径方向外側に突出する第1突出部31aを備える。第1突出部31aは、収容面24に対向しており、第1突出部31aが収容面24に接触することで、ボルト3の挿抜方向の一側の移動が規制される。
【0071】
これにより、第1部材31を用いてボルト3の移動を規制できる。
【0072】
上記実施形態の保持構造100において、ボルト3を軸方向で見たときに、第1部材31は、矩形状であり、四隅に第1突出部31aが位置する。
【0073】
これにより、第1部材31の四隅で収容面24に対向させることができるので、第1部材31に局所的に力が掛かることを抑制できる。
【0074】
上記実施形態の端子台1は、保持構造100を含むホルダ2を備える。ボルト3に端子5を取付可能である。
【0075】
これにより、係合部22が破損しにくい端子台1が実現できる。
【0076】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0077】
上記実施形態では被保持体の例としてボルト3を挙げて説明したが、被保持体はボルト3に限られない。被保持体は、例えば、ナット7又はバスバー4であってもよい。また、上述した保持構造100は、被保持体としてのボルト3又はナット7を備える電気接続箱に適用することもできる。
【符号の説明】
【0078】
1 端子台
2 ホルダ
3 ボルト(被保持体)
20 収容部
21 開口部
22 係合部
23 突起
24 収容面
30 頭部
31 第1部材
32 第2部材
33 軸部
100 保持構造