(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006118
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】潤滑油用添加剤組成物及び潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 153/02 20060101AFI20240110BHJP
C10M 151/02 20060101ALN20240110BHJP
C10M 145/14 20060101ALN20240110BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20240110BHJP
C10N 30/08 20060101ALN20240110BHJP
C10N 40/00 20060101ALN20240110BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20240110BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20240110BHJP
C10N 40/06 20060101ALN20240110BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20240110BHJP
C10N 40/12 20060101ALN20240110BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20240110BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
C10M153/02
C10M151/02
C10M145/14
C10N30:06
C10N30:08
C10N40:00 A
C10N40:00 D
C10N40:02
C10N40:04
C10N40:06
C10N40:08
C10N40:12
C10N40:25
C10N40:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106711
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幸生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 将太
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB08A
4H104BB31A
4H104CB08C
4H104CG01A
4H104CH01C
4H104DA02C
4H104EA03C
4H104LA03
4H104LA04
4H104PA01
4H104PA02
4H104PA03
4H104PA04
4H104PA05
4H104PA07
4H104PA09
4H104PA20
4H104PA39
4H104PA42
4H104PA44
(57)【要約】
【課題】耐荷重添加剤として好適であり、耐摩耗性、極圧性、及び熱安定性に優れる潤滑油用添加剤組成物、並びに当該潤滑油用添加剤組成物を含有する潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】下記構成単位(a)及び(b)を含み、下記要件(1)~(3)を満たす共重合体(X)を含有する、潤滑油用添加剤組成物とした。
・構成単位(a):(メタ)アクリロイル基と炭素数8~20のアルキル基とを有するモノマー(A)由来の構成単位
・構成単位(b):(メタ)アクリロイル基と極性基とを有するモノマー(B)由来の構成単位
・要件(1):前記共重合体(X)は、側鎖に下記基の少なくともいずれかを有する。
リン及び硫黄含有基
リン含有基及び硫黄含有基(但し、前記リン含有基は硫黄非含有基であり、前記硫黄含有基はリン非含有基である。)
・要件(2):前記共重合体(X)中のリン原子含有量(P)が、前記共重合体(X)の全量基準で、0.01質量%~2.00質量%である。
・要件(3):前記共重合体(X)中の硫黄原子含有量(S)が、前記共重合体(X)の全量基準で、0.01質量%~2.00質量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構成単位(a)及び(b)を含み、下記要件(1)~(3)を満たす共重合体(X)を含有する、潤滑油用添加剤組成物。
・構成単位(a):(メタ)アクリロイル基と炭素数8~20のアルキル基とを有するモノマー(A)由来の構成単位
・構成単位(b):(メタ)アクリロイル基と極性基とを有するモノマー(B)由来の構成単位
・要件(1):前記共重合体(X)は、側鎖に下記基の少なくともいずれかを有する。
リン及び硫黄含有基
リン含有基及び硫黄含有基(但し、前記リン含有基は硫黄非含有基であり、前記硫黄含有基はリン非含有基である。)
・要件(2):前記共重合体(X)中のリン原子含有量(P)が、前記共重合体(X)の全量基準で、0.01質量%~2.00質量%である。
・要件(3):前記共重合体(X)中の硫黄原子含有量(S)が、前記共重合体(X)の全量基準で、0.01質量%以上である。
【請求項2】
前記要件(1)に規定する基を含む1以上の構成単位をさらに含む、請求項1に記載の潤滑油用添加剤組成物。
【請求項3】
さらに、下記要件(4)を満たす、請求項1又は2に記載の潤滑油用添加剤組成物。
・要件(4):前記共重合体(X)中の硫黄原子含有量(S)とリン原子含有量(P)との含有比率[(S)/(P)]が、質量比で、0.10~3.00である、請求項1又は2に記載の潤滑油用添加剤組成物。
【請求項4】
前記構成単位(a)が、下記一般式(a-1)で表されるモノマー(A1)に由来する構成単位(a1)を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物。
【化1】
[上記一般式(a-1)中、R
a1は、水素原子又はメチル基を示す。R
a2は、炭素数8~20のアルキル基を示す。]
【請求項5】
前記構成単位(b)が、下記一般式(b-1)で表されるモノマー(B11)に由来する構成単位(b11)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物。
【化2】
[上記一般式(b-1)中、R
b1は、水素原子又はメチル基である。R
b2は、炭素数2~4のアルキレン基を示す。m1は、1~10の整数を示す。m1が2以上の整数の場合の複数のR
b2は、同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項6】
前記共重合体(X)の質量平均分子量が、5,000~100,000である、請求項1~5のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物。
【請求項7】
前記構成単位(a)の含有量が、前記共重合体(X)の全構成単位基準で、50質量%以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物。
【請求項8】
前記構成単位(b)の含有量が、前記共重合体(X)の全構成単位基準で、1質量%以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物。
【請求項9】
耐荷重添加剤として用いられる、請求項1~8のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物を、耐荷重添加剤として使用する、使用方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物と、潤滑油基油と、を含有する、潤滑油組成物。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物と、潤滑油基油と、を混合する工程を含む、潤滑油組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油用添加剤組成物及び当該潤滑油用添加剤組成物を含有する潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油には、潤滑油として必要な性質及び性能を付与したり、補足増強したりする目的で、各種潤滑油用添加剤が配合される。
代表的な潤滑油用添加剤の一つとして、潤滑油に耐摩耗性及び極圧性を付与する耐荷重添加剤が挙げられる。耐荷重添加剤としては、例えば、ジチオリン酸エステル類等の、硫黄及びリンを含有する低分子量の化合物が汎用されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、硫黄及びリンを含有する低分子量の化合物は、耐摩耗性及び極圧性が十分ではなく、さらなる改善の余地がある。また、硫黄及びリンを含有する低分子量の化合物は、熱安定性に乏しく、高温で長時間使用するとスラッジが発生しやすい等の問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、耐荷重添加剤として好適であり、耐摩耗性、極圧性、及び熱安定性に優れる潤滑油用添加剤組成物、並びに当該潤滑油用添加剤組成物を含有する潤滑油組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、複数の特定のモノマー由来の構成単位を含み、かつ特定の要件を満たすポリ(メタ)アクリレート系共重合体が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明の完成に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記[1]~[4]に関する。
[1] 下記構成単位(a)及び(b)を含み、下記要件(1)~(3)を満たす共重合体(X)を含有する、潤滑油用添加剤組成物。
・構成単位(a):(メタ)アクリロイル基と炭素数8~20のアルキル基とを有するモノマー(A)由来の構成単位
・構成単位(b):(メタ)アクリロイル基と極性基とを有するモノマー(B)由来の構成単位
・要件(1):前記共重合体(X)は、側鎖に下記基の少なくともいずれかを有する。
リン及び硫黄含有基
リン含有基及び硫黄含有基(但し、前記リン含有基は硫黄非含有基であり、前記硫黄含有基はリン非含有基である。)
・要件(2):前記共重合体(X)中のリン原子含有量(P)が、前記共重合体(X)の全量基準で、0.01質量%~2.00質量%である。
・要件(3):前記共重合体(X)中の硫黄原子含有量(S)が、前記共重合体(X)の全量基準で、0.01質量%以上である。
[2] 上記[1]に記載の潤滑油用添加剤組成物を、耐荷重添加剤として使用する、使用方法。
[3] 上記[1]に記載の潤滑油用添加剤組成物と、潤滑油基油と、を含有する、潤滑油組成物。
[4] 上記[1]に記載の潤滑油用添加剤組成物と、潤滑油基油と、を混合する工程を含む、潤滑油組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐荷重添加剤として好適であり、耐摩耗性、極圧性、及び熱安定性に優れる潤滑油用添加剤組成物、並びに当該潤滑油用添加剤組成物を含有する潤滑油組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に記載された数値範囲の上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、数値範囲として「A~B」及び「C~D」が記載されている場合、「A~D」及び「C~B」の数値範囲も、本発明の範囲に含まれる。
また、本明細書に記載された数値範囲「下限値~上限値」は、特に断りのない限り、下限値以上、上限値以下であることを意味する。
また、本明細書において、実施例の数値は、上限値又は下限値として用いられ得る数値である。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、他の類似の用語についても同様の意味である。
【0010】
[潤滑油用添加剤組成物の態様]
本実施形態の潤滑油用添加剤組成物は、下記構成単位(a)及び(b)を含み、下記要件(1)~(3)を満たす共重合体(X)を含有する。
・構成単位(a):(メタ)アクリロイル基と炭素数8~20のアルキル基とを有するモノマー(A)由来の構成単位
・構成単位(b):(メタ)アクリロイル基と極性基とを有するモノマー(B)由来の構成単位
・要件(1):前記共重合体(X)は、側鎖に下記基の少なくともいずれかを有する。
リン及び硫黄含有基
リン含有基及び硫黄含有基(但し、前記リン含有基は硫黄非含有基であり、前記硫黄含有基はリン非含有基である。)
・要件(2):前記共重合体(X)中のリン原子含有量(P)が、前記共重合体(X)の全量基準で、0.01質量%~2.00質量%である。
・要件(3):前記共重合体(X)中の硫黄原子含有量(S)が、前記共重合体(X)の全量基準で、0.01質量%以上である。
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、上記モノマー(A)に由来する構成単位(a)及び上記モノマー(B)に由来する構成単位(b)を含み、上記要件(1)~(3)を満たす共重合体(X)が、耐摩耗性、極圧性、及び熱安定性に優れることを見出し、共重合体(X)を潤滑油用添加剤として(特に耐荷重添加剤として)好適に用いることができることを見出すに至った。
共重合体(X)が、耐摩耗性、極圧性、及び熱安定性に優れる理由は、上記構成単位(a)を含むことによって油溶性(基油(特に鉱油)への溶解性)が確保されること、上記構成単位(b)を含むことによって多点吸着型のポリマーとなっていること、上記要件(1)~(3)を満たすことによって、リン及び硫黄が側鎖に所定量導入されていることによるものと推察される。より詳細には、潤滑油組成物中では、共重合体(X)の立体障害によって、側鎖に導入されたリン及び硫黄が保護されて熱安定性が向上する。その一方で、摺動部では、共重合体(X)が圧縮されて、側鎖に導入されたリン及び硫黄が剥き出しになることによって、当該リン及び硫黄が金属と反応し耐摩耗性及び極圧性が向上するものと推察される。
【0012】
以下、モノマー(A)、モノマー(B)、及び上記要件(1)~(3)について、詳細に説明する。
【0013】
<モノマー(A)>
本実施形態において使用されるモノマー(A)は、(メタ)アクリロイル基と炭素数8~20のアルキル基とを有する。モノマー(A)に由来する構成単位(a)は、共重合体(X)において、主に油溶性(鉱油への溶解性)を発揮させる機能を担う。
モノマー(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。したがって、共重合体(X)は、モノマー(A)に由来する構成単位(a)を1種単独で含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0014】
モノマー(A)が有する(メタ)アクリロイル基は、重合性官能基として機能し、アクリロイル基及びメタクリロイル基のいずれであってもよいが、共重合体(X)の分子量を調整しやすくする観点から、モノマー(A)が有する(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基であることが好ましい。
【0015】
また、モノマー(A)は、炭素数8~20のアルキル基を有する。
当該アルキル基の炭素数が8未満である場合、当該アルキル基の炭素数が20超である場合、いずれも共重合体(X)の油溶性を確保し難くなる。
炭素数8~20のアルキル基としては、例えば、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、及びイコシル基等の鎖状アルキル基が挙げられる。これらは、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
ここで、共重合体(X)の油溶性をより確保しやすくする観点から、当該アルキル基の炭素数は、好ましくは10~18、より好ましくは10~16、更に好ましくは10~14である。
【0016】
ここで、本実施形態において、本発明の効果の向上の観点から、モノマー(A)は、以下に説明するアルキル(メタ)アクリレート(A1)を含むことが好ましい。
【0017】
(アルキル(メタ)アクリレート(A1))
アルキル(メタ)アクリレート(A1)は、下記一般式(a-1)で表されるモノマーである。
【化1】
【0018】
アルキル(メタ)アクリレート(A1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。したがって、共重合体(X)は、アルキル(メタ)アクリレート(A1)に由来する構成単位(a1)を1種単独で含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0019】
上記一般式(a-1)中、Ra1は、水素原子又はメチル基である。すなわち、アルキル(メタ)アクリレート(A1)は、重合性官能基として、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する。
Ra1が水素原子及びメチル基以外の置換基であるモノマーは入手が困難であり、かつ当該モノマーは反応性が低いため、それらを重合することも困難である。
ここで、本実施形態では、共重合体(X)の分子量を調整しやすくする観点から、Ra1は、水素原子であることが好ましい。すなわち、アルキル(メタ)アクリレート(A1)は、重合性官能基として、アクリロイル基を有することが好ましい。
【0020】
上記一般式(a-1)中、Ra2は、炭素数8~20のアルキル基を示す。
当該アルキル基の炭素数が8未満である場合、当該アルキル基の炭素数が20超である場合、いずれも共重合体(X)の油溶性を確保し難くなる。
Ra2として選択し得る、炭素数8~20のアルキル基としては、モノマー(A)を構成するアルキル基として上述したものが挙げられる。これらは、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
ここで、共重合体(X)の油溶性をより確保しやすくする観点から、当該アルキル基の炭素数は、好ましくは10~18、より好ましくは10~16、更に好ましくは10~14である。
【0021】
なお、本実施形態において、アルキル(メタ)アクリレート(A1)由来の構成単位(a1)の含有量は、モノマー(A)由来の構成単位(a)の全構成単位基準で、好ましくは50モル%~100モル%、より好ましくは60モル%~100モル%、更に好ましくは70モル%~100モル%、より更に好ましくは80モル%~100モル%、更になお好ましくは90モル%~100モル%である。
【0022】
<モノマー(B)>
本実施形態において使用されるモノマー(B)は、(メタ)アクリロイル基と極性基とを有する。モノマー(B)に由来する構成単位(b)は、共重合体(X)を多点吸着型の共重合体にする機能を担っており、耐摩耗性の向上に資すると推察される。
なお、モノマー(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。したがって、共重合体(X)は、モノマー(B)に由来する構成単位(b)を1種単独で含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0023】
モノマー(B)が有する(メタ)アクリロイル基は、重合性官能基として機能し、アクリロイル基及びメタクリロイル基のいずれであってもよいが、共重合体(X)の分子量を調整しやすくする観点から、モノマー(B)が有する(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基であることが好ましい。
【0024】
また、モノマー(B)は、極性基を有する。
但し、当該極性基には、リン及び硫黄から選択される少なくとも1種を含む基は、包含されない。当該極性基としては、好ましくはアミド基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、ニトリル基、ウレア基、及びウレタン基等の窒素原子含有基;水酸基;カルボキシル基等が挙げられる。
【0025】
ここで、本実施形態において、本発明の効果の向上の観点から、モノマー(B)は、以下に説明する極性基含有(メタ)アクリレート(B1)を含むことが好ましい。
【0026】
(極性基含有(メタ)アクリレート(B1))
極性基含有(メタ)アクリレート(B1)としては、(メタ)アクリロイル基と窒素原子含有基とを有するモノマー、(メタ)アクリロイル基と水酸基とを有するモノマー、及び(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基とを有するモノマーからなる群から選択される1種以上が挙げられる。したがって、極性基含有(メタ)アクリレート(B1)に由来する構成単位(b1)は、1種を単独で含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0027】
・(メタ)アクリロイル基と窒素原子含有基とを有するモノマー
(メタ)アクリロイル基と窒素原子含有基とを有するモノマーとしては、例えば、アミド基含有アクリル系モノマー、1級アミノ基含有アクリル系モノマー、2級アミノ基含有アクリル系モノマー、3級アミノ基含有アクリル系モノマー、ニトリル基含有アクリル系モノマー、ウレア基含有アクリル系モノマー、ウレタン基含有アクリル系モノマー等が挙げられる。
【0028】
アミド基含有アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド;N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、及びN-イソブチル(メタ)アクリルアミド等のモノアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド;N-メチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアミノ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチルアミノ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、及びN-イソブチルアミノ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等のモノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、及びN,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及びN,N-ジ-n-ブチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド;等が挙げられる。
【0029】
1級アミノ基含有アクリル系モノマーとしては、アミノエチル(メタ)アクリレート等の炭素数2~6のアルキル基を有するアミノアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
2級アミノ基含有アクリル系モノマーとしては、例えば、tert-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のモノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
3級アミノ基含有アクリル系モノマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
ニトリル基含有アクリル系モノマーしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
ウレア基含有アクリル系モノマーとしては、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ウレタン基含有アクリル系モノマーとしては、単官能ウレタンアクリレート等が挙げられる。
【0033】
・(メタ)アクリロイル基と水酸基とを有するモノマー
(メタ)アクリロイル基と水酸基とを有するモノマーとしては、例えば、水酸基含有アクリル系モノマー等が挙げられる。
水酸基含有アクリル系モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;N,N-ジヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等のモノ-又はジ-ヒドロキシアルキル置換(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0034】
・(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基とを有するモノマー
(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基とを有するモノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有アクリル系モノマー等が挙げられる。
カルボキシル基含有アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸カルボキシエチル等の(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルが挙げられる。
【0035】
・好ましいアクリル系モノマー
上記のアクリル系モノマーの中でも、本発明の効果をより向上させやすくする観点から、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルから選択される1種以上が好ましい。
なお、これらのモノマーが有するアルキル基の炭素数は、各々独立に、好ましくは1~6、より好ましくは1~4である。
【0036】
なお、本実施形態において、極性基含有(メタ)アクリレート(B1)由来の構成単位(b1)の含有量は、モノマー(B)由来の構成単位(b)の全構成単位基準で、好ましくは50モル%~100モル%、より好ましくは60モル%~100モル%、更に好ましくは70モル%~100モル%、より更に好ましくは80モル%~100モル%、更になお好ましくは90モル%~100モル%である。
【0037】
ここで、本実施形態において、本発明の効果をより向上させやすくする観点から、極性基含有(メタ)アクリレート(B1)は、水酸基含有(メタ)アクリレート(B11)を含むことが好ましい。
【0038】
(水酸基含有(メタ)アクリレート(B11))
水酸基含有(メタ)アクリレート(B11)は、下記一般式(b-1)で表される。
【化2】
【0039】
水酸基含有(メタ)アクリレート(B11)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。したがって、共重合体(X)は、水酸基含有(メタ)アクリレート(B11)に由来する構成単位(b11)を1種単独で含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0040】
上記一般式(b-1)中、Rb1は、水素原子又はメチル基である。すなわち、水酸基含有(メタ)アクリレート(B11)は、重合性官能基として、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する。
Rb1が水素原子及びメチル基以外の置換基であるモノマーは入手が困難であり、かつ当該モノマーは反応性が低いため、それらを重合することも困難である。
ここで、本実施形態では、共重合体(X)の分子量を調整しやすくする観点から、Rb1は、水素原子であることが好ましい。すなわち、水酸基含有(メタ)アクリレート(B11)は、重合性官能基として、アクリロイル基を有することが好ましい。
【0041】
上記一般式(b-1)中、Rb2は、炭素数2~4のアルキレン基を示す。
当該アルキレン基の炭素数が1である場合、極性が高くなり油溶性が低下する。
また、当該アルキレン基の炭素数が5以上である場合、油溶性が向上し過ぎて金属への吸着性が低下する。
ここで、適切な油溶性と金属への適切な吸着性を確保しやすくする観点から、当該アルキレン基の炭素数は、好ましくは2~3、より好ましくは2である。
【0042】
m1は、1~10の整数を示す。m1が2以上の整数の場合の複数のRb2は、同一であっても異なっていてもよい。また、-(ORb2)m1で表される部分同士の結合態様は、ランダム結合でもブロック結合であってもよいが、重合のしやすさの観点からは、ランダム結合であることが好ましい。
m1が0である場合、水酸基含有(メタ)アクリレート(B11)がカルボン酸となるため油溶性が低下する。
また、m1が11以上の整数である場合、-(ORb2)-部分の影響で極性が高くなり、油溶性が低下する。
ここで、適切な油溶性を確保しやすくする観点から、m1は、好ましくは1~6、より好ましくは1~4、更に好ましくは1~2、より更に好ましくは1である。
【0043】
なお、本実施形態において、水酸基含有(メタ)アクリレート(B11)由来の構成単位(b11)の含有量は、極性基含有(メタ)アクリレート(B1)由来の構成単位(b1)の全構成単位基準で、好ましくは50モル%~100モル%、より好ましくは60モル%~100モル%、更に好ましくは70モル%~100モル%、より更に好ましくは80モル%~100モル%、更になお好ましくは90モル%~100モル%である。
また、本実施形態において、水酸基含有(メタ)アクリレート(B11)由来の構成単位(b11)の含有量は、モノマー(B)由来の構成単位(b)の全構成単位基準で、好ましくは50モル%~100モル%、より好ましくは60モル%~100モル%、更に好ましくは70モル%~100モル%、より更に好ましくは80モル%~100モル%、更になお好ましくは90モル%~100モル%である。
【0044】
<要件(1)>
本実施形態において、要件(1)は、次のように規定される。
共重合体(X)は、側鎖に下記基の少なくともいずれかを有する。
リン及び硫黄含有基
リン含有基及び硫黄含有基(但し、前記リン含有基は硫黄非含有基であり、前記硫黄含有基はリン非含有基である。)
共重合体(X)が、側鎖に上記基のいずれも有しない場合、耐摩耗性及び極圧性を十分に確保することができない。
ここで、リン及び硫黄は熱安定性を低下させる要因となる元素であるため、熱安定性を確保する観点からは一般的には導入されない元素である。しかしながら、本発明者らは、耐摩耗性及び極圧性を向上させる観点から、リン及び硫黄を導入することを検討する中で、モノマー(A)由来の構成単位(a)とモノマー(B)由来の構成単位(b)とが組み合わされた共重合体(X)の側鎖に、上記基を導入することで、リン及び硫黄を導入することによる熱安定性の低下の問題が緩和され、共重合体(X)全体として熱安定性に優れ、しかも耐摩耗性及び極圧性にも優れるポリマーとなることを見出した。
【0045】
本実施形態において、リン及び硫黄含有基としては、例えば、チオリン酸基、チオホスホリル等が挙げられる。
【0046】
本実施形態において、リン含有基としては、例えば、ホスホン酸基、亜ホスホン酸基、ホスフィン酸基、亜ホスフィン酸基、リン酸基、ピロホスファート基;これらのエステル基等が挙げられる。
【0047】
本実施形態において、硫黄含有基としては、例えば、メルカプト基;アセチルチオ基;ベンゾイルチオ基、メチルチオカルボニル基、及びフェニルチオカルボニル基等のチオエステル基;ジチオエステル基;メチルチオ基及びエチルチオ基等のアルキルチオ基;フェニルチオ基、メチルフェニルチオ基、及びナフチルチオ基等のアリールチオ基;チオアシル基;チオエーテル基;チオシアン酸エステル基;イソチオシアン酸エステル基;スルホン酸メチル基、スルホン酸エチル基、及びスルホン酸フェニル基等のスルホンエステル基;フェニルスルホンアミド基、N-メチルスルホンアミド基、及びN-メチル-p-トルエンスルホンアミド基等のスルホンアミド基;チオカルボキシル基;ジチオカルボキシル基;スルホ基;スルホニル基;スルフィニル基;スルフェニル基等が挙げられる。
【0048】
<要件(2)>
本実施形態において、要件(2)は、次のように規定される。
・要件(2):共重合体(X)中のリン原子含有量(P)が、共重合体(X)の全量基準で、0.01質量%~2.00質量%である。
共重合体(X)中のリン原子含有量(P)が、共重合体(X)の全量基準で、0.01質量%未満である場合、耐摩耗性及び極圧性を十分に確保し難くなる。
また、共重合体(X)中のリン原子含有量(P)が、共重合体(X)の全量基準で、2.0質量%超である場合、共重合体(X)の油溶性が低下し得る。
ここで、耐摩耗性及び極圧性を十分に確保しやすくする観点及び油溶性を確保しやすくする観点から、共重合体(X)中のリン原子含有量(P)は、好ましくは0.02質量%~1.50質量%、より好ましくは0.04質量%~1.00質量%、更に好ましくは0.04質量%~0.50質量%である。
共重合体(X)のリン原子含有量(P)は、共重合体(X)を有機溶剤(例えば、潤滑油基油)に所定量溶解した後、当該有機溶剤中のリン量をJIS-5S-38-03に準拠して測定した結果と、有機溶剤への共重合体(X)の溶解量とに基づいて算出することができる。
【0049】
<要件(3)>
本実施形態において、要件(3)は、次のように規定される。
・要件(3):共重合体(X)中の硫黄原子含有量(S)が、共重合体(X)の全量基準で、0.01質量%以上である。
共重合体(X)中の硫黄原子含有量(S)が、共重合体(X)の全量基準で、0.01質量%未満である場合、耐摩耗性及び極圧性を十分に確保し難くなる。
ここで、耐摩耗性及び極圧性を十分に確保しやすくする観点から、共重合体(X)中の硫黄原子含有量(S)は、共重合体(X)の全量基準で、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.04質量%である。
また、共重合体(X)中の硫黄原子含有量と本発明の効果とのバランスを考慮すると、共重合体(X)中の硫黄原子含有量(S)は、共重合体(X)の全量基準で、好ましくは2.00質量%以下、より好ましくは1.50質量%以下、更に好ましくは1.00質量%以下、より更に好ましくは0.50質量%以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは0.02質量%~2.00質量%、より好ましくは0.03質量%~1.50質量%、更に好ましくは0.04質量%~1.00質量%、より更に好ましくは0.04質量%~0.50質量%である。
共重合体(X)の硫黄原子含有量(S)は、共重合体(X)を有機溶剤(例えば、潤滑油基油)に所定量溶解した後、当該有機溶剤中の硫黄量をJIS-5S-38-03に準拠して測定した結果と、有機溶剤への共重合体(X)の溶解量とに基づいて算出することができる。
【0050】
<要件(1)~(3)を満たす共重合体(X)の調製方法>
要件(1)~(3)を満たす共重合体(X)の調製方法は、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは下記調製例1~3が挙げられ、より好ましくは下記調製例1~2が挙げられる。
【0051】
(調製例1)
重合性官能基とリン及び硫黄含有基とを有するモノマー(C)を、モノマー(A)及び(B)とともに重合することにより、上記要件(1)を満たす共重合体(X)を調製し得る。その際、モノマー(C)の投入量を調整することで、上記要件(2)及び(3)も満たす共重合体(X)を調製し得る。
【0052】
(調製例2)
重合性官能基と硫黄含有基とを有するモノマー(D1)及び重合性官能基とリン含有基とを有するモノマー(D2)を、モノマー(A)及び(B)とともに重合することにより、上記要件(1)を満たす共重合体(X)を調製し得る。その際、モノマー(D1)及びモノマー(D2)の投入量を各々調整することで、上記要件(2)及び(3)も満たす共重合体(X)を調製し得る。
【0053】
(調製例3)
重合性官能基とリン及び硫黄含有基とを有するモノマー(C)、並びに、重合性官能基と硫黄含有基とを有するモノマー(D1)及び/又は重合性官能基とリン含有基とを有するモノマー(D2)を、モノマー(A)及び(B)とともに重合することにより、上記要件(1)を満たす共重合体(X)を調製し得る。その際、モノマー(C)、モノマー(D1)、及びモノマー(D2)の投入量を各々調整することで、上記要件(2)及び(3)も満たす共重合体(X)を調製し得る。
【0054】
調製例1~3により、共重合体(X)は、要件(1)に規定する基を含む1以上の構成単位をさらに含むものとなる。
以下に、調製例1~3(好ましくは調製例1~2)に好適に適用し得る、重合性官能基とリン及び硫黄含有基とを有するモノマー(C)、重合性官能基と硫黄含有基とを有するモノマー(D1)、及び重合性官能基とリン含有基とを有するモノマー(D2)について例示する。
【0055】
<重合性官能基とリン及び硫黄含有基とを有するモノマー(C)>
重合性官能基とリン及び硫黄含有基とを有するモノマー(C)(以下、単に「モノマー(C)」ともいう)としては、(メタ)アクリロイル基と、下記一般式(1)で表されるリン及び硫黄を含む1価基とを有する化合物が好ましく挙げられる。
【化3】
【0056】
共重合体(X)が、モノマー(C)に由来する構成単位(c)を含有することで、リン及び硫黄含有基が共重合体(X)の側鎖に導入され、耐摩耗性及び極圧性を向上させ得る。
【0057】
なお、モノマー(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。したがって、共重合体(X)は、モノマー(C)に由来する構成単位(c)を1種単独で含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0058】
モノマー(C)は、重合性官能基として、(メタ)アクリロイル基を有する。本実施形態では、共重合体(X)の分子量を調整しやすくする観点から、モノマー(C)が有する重合性官能基は、アクリロイル基であることが好ましい。
【0059】
上記一般式(1)中、R1及びR2は、本発明の効果の向上の観点から、各々独立に、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましい。
【0060】
R1及びR2として選択し得る、炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の鎖状アルキル基が挙げられる。当該鎖状アルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。なお、本発明の効果の向上の観点から、当該アルキル基の炭素数は、好ましくは2~8、より好ましくは2~6、更に好ましくは2~4、より更に好ましくは3である。
【0061】
ここで、モノマー(C)は、具体的には、下記一般式(c-1)で表される化合物であることが好ましい。
【化4】
【0062】
上記一般式(c-1)中、Rc1は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
ここで、本実施形態では、共重合体(X)の分子量を調整しやすくする観点から、Rc1は、水素原子であることが好ましい。
【0063】
上記一般式(c-1)中、Rc2は、炭素数2~4のアルキレン基であることが好ましい。
当該アルキレン基の炭素数が2以上であると、油溶性を確保しやすい。
また、当該アルキレン基の炭素数が4以下であると、金属への吸着性を良好なものとしやすい。
ここで、適切な油溶性と金属への適切な吸着性を確保しやすくする観点から、当該アルキレン基の炭素数は、好ましくは2~3、より好ましくは2である。
【0064】
m2は、0~10の整数であることが好ましい。m2が2以上の整数の場合の複数のRc2は、同一であっても異なっていてもよい。また、-(ORc2)m2で表される部分同士の結合態様は、ランダム結合でもブロック結合であってもよいが、重合のしやすさの観点からは、ランダム結合であることが好ましい。
m2が10以下の整数であると、油溶性を確保しやすい。
ここで、適切な油溶性を確保しやすくする観点から、m2は、好ましくは1~4、より好ましくは1~2、更に好ましくは1である。
【0065】
上記一般式(c-1)中、L1は、リンカーを示す。
L1として選択され得るリンカーとしては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、及びブチレン基等の炭素数1~4の二価の脂肪族炭化水素基;-O-;-OC(O)-;-O-C(O)-RC3-(RC3は炭素数2~4のアルキレン基である。)等が挙げられる。これらの中でも、L1として選択され得るリンカーとしては、-O-C(O)-RC3-が好ましい。
また、L1は、直接結合であってもよい。すなわち、m2=0である場合、(メタ)アクリロイル基を構成するカルボニル基の炭素原子と上記一般式(1)で表される1価基の硫黄原子とが直接結合していてもよい。m2が1以上である場合、-(ORc2)m2-と上記一般式(1)で表される1価基の硫黄原子とが直接結合していてもよい。
【0066】
上記一般式(c-1)中、R1及びR2は、上記一般式(1)において説明したとおりであり、好ましい範囲も上記一般式(1)において説明したとおりである。
【0067】
<重合性官能基と硫黄含有基とを有するモノマー(D1)>
重合性官能基と硫黄含有基とを有するモノマー(D1)(以下、単に「モノマー(D1)」ともいう)としては、下記一般式(d1-1)で表される化合物が好ましく挙げられる。
【化5】
【0068】
共重合体(X)が、モノマー(D1)に由来する構成単位(d1)を含有することで、硫黄含有基が共重合体(X)の側鎖に導入される。したがって、共重合体(X)がモノマー(D2)に由来する構成単位(d2)をさらに含有することで、リン含有基も共重合体(X)の側鎖に導入され、耐摩耗性及び極圧性が向上し得る。
【0069】
なお、モノマー(D1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。したがって、共重合体(X)は、モノマー(D1)に由来する構成単位(d1)を1種単独で含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0070】
上記一般式(d1-1)中、Rd11は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
ここで、本実施形態では、共重合体(X)の分子量を調整しやすくする観点から、Rd11は、水素原子であることが好ましい。すなわち、モノマー(D1)は、重合性官能基として、アクリロイル基を有することが好ましい。
【0071】
上記一般式(d1-1)中、Rd12は、炭素数2~4のアルキレン基を示す。
当該アルキレン基の炭素数が2以上であると、油溶性を確保しやすい。
また、当該アルキレン基の炭素数が4以下であると、金属への吸着性を良好なものとしやすい。
ここで、適切な油溶性と金属への適切な吸着性を確保しやすくする観点から、当該アルキレン基の炭素数は、好ましくは2~3、より好ましくは2である。
【0072】
m3は、0~10の整数であることが好ましい。m3が2以上の整数の場合の複数のRd12は、同一であっても異なっていてもよい。また、-(ORd12)m3で表される部分同士の結合態様は、ランダム結合でもブロック結合であってもよいが、重合のしやすさの観点からは、ランダム結合であることが好ましい。
m3が10以下の整数であると、油溶性を確保しやすい。
ここで、適切な油溶性を確保しやすくする観点から、m3は、好ましくは1~4、より好ましくは1~2、更に好ましくは1である。
【0073】
上記一般式(d1-1)中、Rd13は、炭素数4~20のアルキル基であることが好ましい。
当該アルキル基の炭素数が4以上である場合、当該アルキル基の炭素数が20以下である場合、本発明の効果が発揮されやすくなる。
【0074】
Rd13として選択し得る、炭素数4~20のアルキル基としては、例えば、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、及びイコシル基等の鎖状アルキル基が挙げられる。これらは、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0075】
なお、共重合体(X)の油溶性をより確保しやすくする観点から、当該アルキル基の炭素数は、好ましくは6~18、より好ましくは6~16、更に好ましくは6~14である。
【0076】
<重合性官能基とリン含有基とを有するモノマー(D2)>
重合性官能基と硫黄含有基とを有するモノマー(D2)(以下、単に「モノマー(D2)」ともいう)としては、下記一般式(d2-1)で表される化合物が好ましく挙げられる。
【化6】
【0077】
共重合体(X)が、モノマー(D2)に由来する構成単位(d2)を含有することで、硫黄含有基が共重合体(X)の側鎖に導入される。したがって、共重合体(X)がモノマー(D1)に由来する構成単位(d1)をさらに含有することで、リン含有基も共重合体(X)の側鎖に導入され、耐摩耗性及び極圧性が向上し得る。
【0078】
なお、モノマー(D2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。したがって、共重合体(X)は、モノマー(D2)に由来する構成単位(d2)を1種単独で含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0079】
上記一般式(d2-1)中、Rd21は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
ここで、本実施形態では、共重合体(X)の分子量を調整しやすくする観点から、Rd21は、水素原子であることが好ましい。すなわち、モノマー(D2)は、重合性官能基として、アクリロイル基を有することが好ましい。
【0080】
上記一般式(d2-1)中、Rd22は、エチレン基を示す。
【0081】
m4は、1~6の整数であることが好ましい。m4が2以上の整数の場合の複数のRd2は、同一であっても異なっていてもよい。また、-(ORd22)m4で表される部分同士の結合態様は、ランダム結合でもブロック結合であってもよいが、重合のしやすさの観点からは、ランダム結合であることが好ましい。
m4が1~6である場合、油溶性を確保しやすい。
ここで、適切な油溶性を確保しやすくする観点から、m4は、好ましくは1~4、より好ましくは1~2、更に好ましくは1である。
【0082】
nは、1又は2の整数を示す。n=1である場合、複数のRd23のうちの少なくとも1つは水素原子を示す。n=2である場合、Rd23は水素原子である。なお、n=1である場合、複数のRd23のうちの一方のみが水素原子であってもよい。この場合、複数のRd23のうちの他方は炭化水素基である。
ここで、n=1である場合、複数のRd23のうちの他方が炭化水素基であるならば、本発明の効果を向上させやすくする観点から、当該炭化水素基は、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
また、n=1である場合、本発明の効果をより向上させやすくする観点から、複数のRd23はいずれも水素原子であることが好ましい。
ここで、本発明の効果を向上させやすくする観点から、モノマー(D2)は、n=1であるモノマー(D21)を主成分として含むことが好ましい。
本明細書において、「主成分」とは、その含有量が50質量%を超える成分をいう。すなわち、n=1であるモノマー(D21)の含有量は、モノマー(D2)の全量基準で、好ましくは50質量%超~100質量%、より好ましくは60質量%~100質量%、更に好ましくは70質量%~100質量%、より更に好ましくは80質量%~100質量%、更になお好ましくは90質量%~100質量%である。
また、n=1であるモノマー(D21)に由来する構成単位(d21)の含有量は、モノマー(D2)に由来する構成単位(d2)の全量基準で、好ましくは50質量%超~100質量%、より好ましくは60質量%~100質量%、更に好ましくは70質量%~100質量%、より更に好ましくは80質量%~100質量%、更になお好ましくは90質量%~100質量%である。
【0083】
<要件(4)>
本実施形態の潤滑油用添加剤組成物は、本発明の効果の向上の観点から、さらに次の要件(4)を満たすことが好ましい。
・要件(4):前記共重合体(X)中の硫黄原子含有量(S)とリン原子含有量(P)との含有比率[(S)/(P)]が、質量比で、0.10~3.00である。
本発明の効果をより向上させやすくする観点から、含有比率[(S)/(P)]は、質量比で、好ましくは0.15~2.80、より好ましくは0.15~2.60、更に好ましくは0.20~2.50である。
【0084】
<他のモノマー>
共重合体(X)は、上記構成単位(a)及び(b)、さらにはモノマー(C)由来の構成単位(c)、モノマー(D1)由来の構成単位(d1)、及びモノマー(D2)由来の構成単位(d2)以外に、本発明の効果を阻害することのない範囲で、他のモノマー由来の構成単位を含有していてもよい。当該他のモノマーとしては、モノマー(A)、(B)、(C)、(D1)、及び(D2)以外の官能基含有モノマーが挙げられる。
但し、本発明の効果の向上の観点から、共重合体(X)は、モノマー(A)、(B)、(C)、(D1)、及び(D2)以外の官能基含有モノマーに由来する構成単位の含有量が、全構成単位基準で、好ましくは50質量%未満、より好ましくは40質量%未満、更に好ましくは30質量%未満、より更に好ましくは20質量%未満、更になお好ましくは10質量%未満である。
また、共重合体(X)は、モノマー(A)、モノマー(B)、及び要件(1)~(3)を満たすために用いられるモノマー由来の構成単位の合計含有量が、共重合体(X)の全構成単位基準で、好ましくは70質量%~100質量%、より好ましくは80質量%~100質量%、更に好ましくは90質量%~100質量%、より更に好ましくは95質量%~100質量%である。
【0085】
<構成単位(a)の含有量>
共重合体(X)中における構成単位(a)の含有量は、油溶性の確保の観点及び本発明の効果の向上の観点から、共重合体(X)の全量基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%~95質量%、更に好ましくは70質量%~90質量%である。
【0086】
<構成単位(b)の含有量>
共重合体(X)中における構成単位(b)の含有量は、本発明の効果の向上の観点から、共重合体(X)の全量基準で、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%~30質量%、更に好ましくは6質量%~25質量%である。
【0087】
<含有比率[(a)/(b)]>
本実施形態の共重合体(X)は、本発明の効果の向上の観点及び油溶性の観点から、上記構成単位(a)と上記構成単位(b)との含有比率[(a)/(b)]が、モル比で、好ましくは50/50~90/10、より好ましくは55/45~85/15である。
【0088】
<共重合体(X)の物性等>
(質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn))
本実施形態の共重合体(X)の質量平均分子量(Mw)は、油溶性の確保の観点及び本発明の効果の向上の観点から、好ましくは5,000~100,000、より好ましくは5,000~70,000、更に好ましくは5,000~50,000である。
また、本実施形態の共重合体(X)の分子量分布(Mw/Mn)は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.6以下、更に好ましくは3.4以下である。なお、本実施形態の共重合体(X)の分子量分布(Mw/Mn)は、1.01以上であってもよく、1.3以上であってもよく、1.5以上であってもよい。
質量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、後述する実施例に記載の方法にて測定又は算出される値である。
【0089】
(重合態様)
本実施形態の共重合体(X)の重合態様は特に限定されず、ブロック共重合、ランダム共重合、ブロック/ランダム共重合のいずれであってもよい。これらの中でも、重合反応の容易さの観点から、ランダム共重合であることが好ましい。
【0090】
[潤滑油用添加剤組成物の製造方法]
本実施形態の潤滑油用添加剤組成物の製造方法は、以下にいずれかの組み合わせでモノマーを重合させて、共重合体(X)を製造する工程(S)を含む。
(1)モノマー(A)、モノマー(B)、及びモノマー(C)
(2)モノマー(A)、モノマー(B)、モノマー(D1)、及びモノマー(D2)
(3)モノマー(A)、モノマー(B)、モノマー(C)、並びに、モノマー(D1)及び/又はモノマー(D2)
【0091】
以下、共重合体(X)を製造する工程(S)について、詳細に説明する。
【0092】
<共重合体(X)を製造する工程(S)>
共重合体(X)の製造方法(重合方法)は、特に限定されず、公知の方法のいずれかを適用して製造される。このような方法としては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法等が挙げられる。
ここで、本発明における共重合体(X)の用途、すなわち、潤滑油用添加剤組成物としての用途の観点から、共重合体(X)の製造方法(重合方法)としては、潤滑油基油に溶解する溶剤を溶媒として使用する溶液重合法を採用することが好ましい。
【0093】
(溶液重合法)
溶液重合法は、例えば、上記各モノマー、並びに溶媒及び開始剤を反応器に仕込み、反応器内を窒素置換した後、60℃~100℃で、2時間~10時間、撹拌して反応させることにより行われる。反応器には、上記各モノマー以外の他のモノマーも任意に仕込まれる。
【0094】
なお、共重合体(X)における各構成単位の含有割合は、通常、共重合体(X)を構成する各モノマーの比率(仕込み比)に一致する。したがって、上記各モノマーの配合割合は、共重合体(X)における上記各構成単位の含有割合を考慮して適宜決定される。
【0095】
溶液重合法において使用される溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メトキシブタノール、エトキシブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;鉱油;ポリ-α-オレフィン、エチレン-α-オレフィン共重合体、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリフェニルエーテル、アルキル置換ジフェニルエーテル、ポリオールエステル、二塩基酸エステル、ヒンダードエステル、モノエステル、GTL基油等の合成油が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
溶液重合法において使用される開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス-(N,N-ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、1,1’-アゾビス(シクロヘキシル-1-カルボニトリル)等のアゾ系開始剤;過酸化水素;過酸化ベンゾイル、t-ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、過安息香酸等の有機過酸化物;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素-Fe2+のレドックス開始剤;その他既存のラジカル開始剤が挙げられる。
【0097】
なお、共重合体(X)の分子量は、公知の方法で制御される。例えば、反応温度、反応時間、開始剤の量、各モノマーの仕込み量、溶媒の種類、連鎖移動剤の使用等により、共重合体(X)の分子量を制御することができる。
【0098】
<潤滑油用添加剤組成物中の共重合体(X)の含有量>
本実施形態の潤滑油用添加剤組成物は、潤滑油基油に添加した際に本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、共重合体(X)の含有量が、潤滑油用添加剤組成物の全量基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、更になお好ましくは90質量%以上、一層好ましくは95質量%以上である。共重合体(X)の純度を考慮すると、共重合体(X)の含有量は、潤滑油用添加剤組成物の全量基準で、通常99質量%未満である。
本実施形態の潤滑油用添加剤組成物は、潤滑油基油との溶解性や取扱性の観点から、希釈溶剤により希釈されていてもよい。なお、潤滑油用添加剤組成物中の共重合体(X)の含有量は、希釈溶剤を除いた、潤滑油用添加剤組成物中の有効成分の全量基準に対する含有量を意味する。
【0099】
<潤滑油用添加剤組成物の用途>
本実施形態の潤滑油用添加剤組成物は、耐摩耗性、極圧性、及び熱安定性に優れる。したがって、耐荷重添加剤として有用である。
したがって、本実施形態では、当該潤滑油用添加剤組成物を、耐荷重添加剤として使用する使用方法が提供される。
【0100】
[潤滑油組成物]
本実施形態の潤滑油組成物は、共重合体(X)を含有する潤滑油用添加剤組成物と、潤滑油基油とを含有する。
潤滑油用添加剤組成物の含有量は、潤滑油用添加剤組成物の添加効果を良好に発揮させる観点から、共重合体(X)の樹脂分の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.3質量%~10質量%、より好ましくは0.6質量%~8.0質量%、更に好ましくは1.0質量%~6.0質量%となるように調整される。
また、潤滑油用添加剤組成物の含有量は、潤滑油用添加剤組成物の添加効果を良好に発揮させる観点から、共重合体(X)由来の硫黄量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは10質量ppm~300質量ppm、より好ましくは20質量ppm~200質量ppm、更に好ましくは30質量ppm~150質量ppmである。
また、共重合体(X)が、リン含有(メタ)アクリレート(D)由来の構成単位(d)を含有する場合、同様の観点から、共重合体(X)由来のリン量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは5質量ppm~150質量ppm、より好ましくは10質量ppm~100質量ppm、更に好ましくは15質量ppm~75質量ppmである。
【0101】
<潤滑油基油>
潤滑油基油は、潤滑油組成物に用いられる一般的な基油を、特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、鉱油及び合成油からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
潤滑油基油の100℃における動粘度は1mm2/s~50mm2/sの範囲にあることが好ましく、2mm2/s~30mm2/sの範囲にあることがより好ましく、3mm2/s~20mm2/sの範囲にあることが更に好ましい。また、潤滑油基油の粘度指数は80以上であることが好ましく、90以上であることがより好ましく、100以上であることがより更に好ましい。
潤滑油基油の動粘度及び粘度指数はJIS K2283:2000に準じて測定又は算出される値である。
【0102】
潤滑油基油の具体例を以下に挙げる。
鉱油としては、例えば、パラフィン基原油、中間基原油、又はナフテン基原油を常圧蒸留及び/又は減圧蒸留して得られる留出油;当該留出油を常法に従って精製することによって得られる精製油;等が挙げられる。精製油を得るための精製方法としては、例えば、溶剤脱ろう処理、水素化異性化処理、水素化仕上げ処理、白土処理等が挙げられる。
合成油としては、例えば、炭化水素系油、芳香族系油、エステル系油、エーテル系油等が挙げられる。また、合成油としては、天然ガスからフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス,Gas To Liquids WAX)を異性化することで得られるGTL(Gas To Liquids)を用いてもよい。
【0103】
<他の添加剤>
本実施形態の潤滑油組成物は、上記潤滑油用添加剤組成物の効果を阻害しない範囲で、酸化防止剤、油性剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、防錆剤、金属不活性化剤、及び消泡剤等の他の添加剤を含有してもよい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本実施形態では、共重合体(X)を含有する潤滑油用添加剤組成物とともに、共重合体(X)を含有する潤滑油用添加剤組成物以外の他の添加剤として、酸化防止剤、油性剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、防錆剤、金属不活性化剤、及び消泡剤等から選択される1種以上の添加剤を含有する潤滑油組成物用の添加剤パッケージも提供される。
【0104】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、従来の潤滑油組成物に使用されているアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤等を使用することができる。これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミン系酸化防止剤としては、例えば、モノオクチルジフェニルアミン及びモノノニルジフェニルアミン等のモノアルキルジフェニルアミン系化合物;4,4’-ジブチルジフェニルアミン、4,4’-ジペンチルジフェニルアミン、4,4’-ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’-ジヘプチルジフェニルアミン、4,4’-ジオクチルジフェニルアミン、及び4,4’-ジノニルジフェニルアミン等のジアルキルジフェニルアミン系化合物;テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、及びテトラノニルジフェニルアミン等のポリアルキルジフェニルアミン系化合物;α-ナフチルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、ブチルフェニル-α-ナフチルアミン、ペンチルフェニル-α-ナフチルアミン、ヘキシルフェニル-α-ナフチルアミン、ヘプチルフェニル-α-ナフチルアミン、オクチルフェニル-α-ナフチルアミン、及びノニルフェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系化合物が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール及び2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール等のモノフェノール系化合物;4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)及び2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)等のビスフェノール系化合物が挙げられる。
酸化防止剤の含有量は、潤滑油組成物の酸化安定性を保つのに必要な最低量を加えれば良い。具体的には、例えば、潤滑油組成物の全量基準で、0.01~1質量%が好ましい。
【0105】
(油性剤)
油性剤としては、脂肪族アルコール;脂肪酸及び脂肪酸金属塩等の脂肪酸化合物;ポリオールエステル、ソルビタンエステル、及びグリセライド等のエステル化合物;脂肪族アミン等のアミン化合物等を挙げることができる。
油性剤の含有量は、添加効果の点から、潤滑油組成物の全量基準で、通常0.1~20質量%であり、好ましくは0.5~10質量%である。
【0106】
(清浄分散剤)
清浄分散剤としては、金属スルホネート、金属サリチレート、金属フェネート、及びコハク酸イミド等が挙げられる。
清浄分散剤の含有量は、添加効果の点から、潤滑油組成物の全量基準で、通常0.01~10質量%であり、好ましくは0.1~5質量%である。
【0107】
(粘度指数向上剤)
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリメタクリレート、分散型ポリメタクリレート、オレフィン系共重合体(例えば、エチレン-プロピレン共重合体等)、分散型オレフィン系共重合体、スチレン系共重合体(例えば、スチレン-ジエン水素化共重合体等)等が挙げられる。
粘度指数向上剤の含有量は、好ましくは、潤滑油組成物の全量基準で、0.3~5質量%である。
【0108】
(防錆剤)
防錆剤としては、金属系スルホネート、コハク酸エステル、並びにアルキルアミン及びモノイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン等を挙げることができる。
防錆剤の含有量は、添加効果の点から、潤滑油組成物の全量基準で、通常0.01~5質量%であり、好ましくは0.03~3質量%である。
【0109】
(金属不活性剤)
金属不活性剤としては、ベンゾトリアゾール及びチアジアゾール等を挙げることができる。
金属不活性剤の好ましい含有量は、添加効果の点から、潤滑油組成物の全量基準で、通常0.01~5質量%であり、好ましくは0.01~1質量%である。
【0110】
(消泡剤)
消泡剤としては、メチルシリコーン油、フルオロシリコーン油、及びポリアクリレート等を挙げることができる。
消泡剤の含有量は、添加効果の点から、潤滑油組成物の全量基準で、通常0.0005~0.01質量%である。
【0111】
<潤滑油組成物の物性等>
(動粘度、粘度指数)
本実施形態の潤滑油組成物の100℃動粘度は、好ましくは1.0mm2/s~50mm2/s、より好ましくは2.0mm2/s~30mm2/s、更に好ましくは3.0mm2/s~20mm2/sである。
本実施形態の潤滑油組成物の粘度指数は、好ましくは90以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは110以上である。
潤滑油組成物の動粘度及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準じて測定又は算出される値である。
【0112】
(耐摩耗性(新油))
本実施形態の潤滑油組成物(新油)は、後述する実施例に記載のシェル摩耗試験による摩耗痕径が、好ましくは0.55mm以下、より好ましくは0.53mm以下、更に好ましくは0.52mm以下である。
【0113】
(耐摩耗性(ISOT試験後の油))
本実施形態の潤滑油組成物(ISOT試験後の油)は、後述する実施例に記載のシェル摩耗試験による摩耗痕径が、好ましくは0.55mm以下、より好ましくは0.50mm以下、更に好ましくは0.45mm以下である。
なお、ISOT試験後の油とは、実施例に記載の方法で行われるISOT試験による強制劣化後の油を意味する。
【0114】
(極圧性(新油))
本実施形態の潤滑油組成物(新油)は、後述する実施例に記載のシェル四球試験耐荷重性(EP)試験による最大非焼付荷重(LNL)が、好ましくは392N以上、より好ましくは490N以上である。
また、同試験による融着荷重(WL)が、好ましくは1236N以上である。
【0115】
(極圧性(ISOT試験後の油))
本実施形態の潤滑油組成物(ISOT試験後の油)は、後述する実施例に記載のシェル四球試験耐荷重性(EP)試験による最大非焼付荷重(LNL)が、好ましくは490N以上である。
また、同試験による融着荷重(WL)が、好ましくは1236N以上、より好ましくは1569N以上である。
なお、ISOT試験後の油とは、実施例に記載の方法で行われるISOT試験による強制劣化後の油を意味する。
【0116】
(熱安定性)
本実施形態の潤滑油組成物は、後述する実施例に記載のISOT試験後において、スラッジの発生量が、好ましくは10mg/100mL未満である。
【0117】
[潤滑油組成物の製造方法]
本実施形態の潤滑油組成物の製造方法は、特に制限されない。
例えば、本実施形態の潤滑油組成物の製造方法は、上記潤滑油用添加剤組成物と、潤滑油基油と、を混合する工程を含む。
上記潤滑油用添加剤組成物と潤滑油基油とを混合する方法としては、特に制限はないが、例えば、潤滑油基油に、上記潤滑油用添加剤組成物を配合する工程を有する方法が挙げられる。その際、上記その他の添加剤も同時に配合してもよい。また、各成分は、希釈油等を加えて溶液(分散体)の形態とした上で配合してもよい。各成分を配合した後、公知の方法により、撹拌して均一に分散させることが好ましい。
【0118】
[潤滑油組成物の用途]
本実施形態の潤滑油組成物は、共重合体(X)を含有するため、耐摩耗性、極圧性、及び熱安定性に優れる。
そのため、本実施形態の潤滑油組成物は、例えば、ギア油(マニュアルトランスミッション油、デファレンシャル油等)、自動変速機油(オートマチックトランスミッション油等)、無段変速機油(ベルトCVT油、トロイダルCVT油等)、パワーステアリング油、ショックアブソーバー油、及び電動モーター油等の駆動系油;ガソリンエンジン用、ディーゼルエンジン用、及びガスエンジン用等の内燃機関(エンジン)用油;油圧作動油;タービン油;圧縮機油;流体軸受け油;転がり軸受油;冷凍機油等をはじめ各種の用途に好適に使用でき、これら各用途で使用される装置に充填し、当該装置に係る各部品間を潤滑する潤滑油組成物として好適に使用することができる。
【0119】
[潤滑油組成物を用いる潤滑方法]
本実施形態の潤滑油組成物を用いる潤滑方法としては、好ましくは、前記潤滑油組成物を、前述した各用途で使用される装置に充填し、当該各装置に係る各部品間を潤滑する方法が挙げられる。
【0120】
[グリース組成物]
本実施形態の潤滑油用添加剤組成物は、グリース組成物に配合して用いることもできる。
すなわち、本実施形態では、上記潤滑油用添加剤組成物と、増ちょう剤と、潤滑油基油とを含有するグリース組成物を提供することもできる。
【0121】
[提供される本発明の一態様]
本発明の一態様によれば、下記[1]~[12]が提供される。
[1] 下記構成単位(a)及び(b)を含み、下記要件(1)~(3)を満たす共重合体(X)を含有する、潤滑油用添加剤組成物。
・構成単位(a):(メタ)アクリロイル基と炭素数8~20のアルキル基とを有するモノマー(A)由来の構成単位
・構成単位(b):(メタ)アクリロイル基と極性基とを有するモノマー(B)由来の構成単位
・要件(1):前記共重合体(X)は、側鎖に下記基の少なくともいずれかを有する。
リン及び硫黄含有基
リン含有基及び硫黄含有基(但し、前記リン含有基は硫黄非含有基であり、前記硫黄含有基はリン非含有基である。)
・要件(2):前記共重合体(X)中のリン原子含有量(P)が、前記共重合体(X)の全量基準で、0.01質量%~2.00質量%である。
・要件(3):前記共重合体(X)中の硫黄原子含有量(S)が、前記共重合体(X)の全量基準で、0.01質量%以上である。
[2] 前記要件(1)に規定する基を含む1以上の構成単位(c)をさらに含む、上記[1]に記載の潤滑油用添加剤組成物。
[3] さらに、下記要件(4)を満たす、請求項1又は2に記載の潤滑油用添加剤組成物。
・要件(4):前記共重合体(X)中の硫黄原子含有量(S)とリン原子含有量(P)との含有比率[(S)/(P)]が、質量比で、0.10~3.00である、上記[1]又は[2]に記載の潤滑油用添加剤組成物。
[4] 前記構成単位(a)が、下記一般式(a-1)で表されるモノマー(A1)に由来する構成単位(a1)を含む、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の潤滑油用添加剤組成物。
【化7】
[上記一般式(a-1)中、R
a1は、水素原子又はメチル基を示す。R
a2は、炭素数8~20のアルキル基を示す。]
[5] 前記構成単位(b)が、下記一般式(b-1)で表されるモノマー(B11)に由来する構成単位(b11)を含む、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の潤滑油用添加剤組成物。
【化8】
[上記一般式(b-1)中、R
b1は、水素原子又はメチル基である。R
b2は、炭素数2~4のアルキレン基を示す。m1は、1~10の整数を示す。m1が2以上の整数の場合の複数のR
b2は、同一であっても異なっていてもよい。]
[6] 前記共重合体(X)の質量平均分子量が、5,000~100,000である、請求項1~5のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物。
[7] 前記構成単位(a)の含有量が、前記共重合体(X)の全構成単位基準で、50質量%以上である、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の潤滑油用添加剤組成物。
[8] 前記構成単位(b)の含有量が、前記共重合体(X)の全構成単位基準で、1質量%以上である、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の潤滑油用添加剤組成物。
[9] 耐荷重添加剤として用いられる、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の潤滑油用添加剤組成物。
[10] 上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の潤滑油用添加剤組成物を、耐荷重添加剤として使用する、使用方法。
[11] 上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の潤滑油用添加剤組成物と、潤滑油基油と、を含有する、潤滑油組成物。
[12] 上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の潤滑油用添加剤組成物と、潤滑油基油と、を混合する工程を含む、潤滑油組成物の製造方法。
【実施例0122】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0123】
[各種物性値の測定方法]
各実施例及び各比較例で用いた各原料並びに各実施例及び各比較例の潤滑油組成物の各性状の測定は、以下に示す要領に従って行ったものである。
【0124】
(1)動粘度、粘度指数
潤滑油組成物の40℃動粘度、100℃動粘度、及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準拠して測定又は算出した。
【0125】
(2)質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)
Waters社製の「1515アイソクラティックHPLCポンプ」、「2414示差屈折率(RI)検出器」に、東ソー社製のカラム「TSKguardcolumn SuperHZ-L」を1本、及び「TSKSuperMultipore HZ-M」を2本、上流側からこの順で取り付け、測定温度:40℃、移動相:テトラヒドロフラン、流速:0.35ml/分、試料濃度1.0mg/mlの条件で測定し、標準ポリスチレン換算にて求めた。
【0126】
(3)硫黄量及びリン量
共重合体(X)の硫黄含有量及びリン含有量は、共重合体(X)を有機溶剤(潤滑油基油)に所定量溶解した後、当該有機溶剤中の硫黄量及びリン量をJIS-5S-38-03に準拠して測定した結果と、有機溶剤への共重合体(X)の溶解量とに基づいて算出した。
【0127】
[実施例A1~A6、実施例B1~B5、比較例1]
以下に示す潤滑油基油及び潤滑油用添加剤組成物を、表3及び表4に示す配合量(質量%)で十分に混合し、実施例A1~A6、実施例B1~B5、及び比較例1の潤滑油組成物をそれぞれ調製した。
実施例A1~A6、実施例B1~B5、及び比較例1で用いた潤滑油基油及び潤滑油用添加剤組成物の詳細は、以下に示すとおりである。
【0128】
<潤滑油基油>
API分類でグループIIに分類される鉱油(150N)
【0129】
<潤滑油用添加剤組成物>
・共重合体(X)-A1:製造例A1に説明する方法で製造した。
・共重合体(X)-A2:製造例A2に説明する方法で製造した。
・共重合体(X)-A3:製造例A3に説明する方法で製造した。
・共重合体(X)-A4:製造例A4に説明する方法で製造した。
・共重合体(X)-A5:製造例A5に説明する方法で製造した。
・共重合体(X)-A6:製造例A6に説明する方法で製造した。
・IRGALUBE 62(BASFジャパン株式会社製):下記構造式で表されるジチオリン酸エステル系誘導体である。表2中では、「硫黄リン含有低分子化合物」と表記する。
【化9】
【0130】
<製造例A1~A6>
(製造例A1~A6で用いたモノマー)
・「ドデシルアクリレート(DOA)」:上記一般式(a-1)中、R
a1が水素原子であり、R
a2がn-ドデシル基(炭素数12のアルキル基)である化合物である。モノマー(A)(モノマー(A1))として使用した。
・「2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)」:上記一般式(b-1)中、R
b1が水素原子であり、R
b2がエチレン基(炭素数2のアルキレン基)であり、m1=1である化合物である。モノマー(B)(モノマー(B11))として使用した。
・「SPM1」:下記構造式で表される化合物を用いた。下記構造式で表される化合物は、上記一般式(c-1)中、R
c1が水素原子であり、R
c2がエチレン基(炭素数2のアルキレン基)であり、m2=1であり、L
1が-O-C(O)-R
c3-であり、R
c3がプロピレン基(炭素数3のアルキレン基)であり、R
1及びR
2がイソブチル基(炭素数4のアルキル基)である化合物である。硫黄含有量は15.0質量%、リン含有量は7.3質量%である。モノマー(C)として使用した。
【化10】
・「SPM2」:下記構造式で表される化合物を用いた。下記構造式で表される化合物は、上記一般式(c-1)中、R
c1が水素原子であり、R
c2がエチレン基(炭素数2のアルキレン基)であり、m2=1であり、L
1が-O-C(O)-R
c3-であり、R
c3がエチレン基(炭素数2のアルキレン基)であり、R
1及びR
2がイソプロピル基(炭素数3のアルキル基)である化合物である。硫黄含有量は16.7質量%、リン含有量は8.1質量%である。モノマー(C)として使用した。
【化11】
・「SPM3」:下記構造式で表される化合物を用いた。下記構造式で表される化合物は、上記一般式(c-1)中、R
c1が水素原子であり、R
c2がエチレン基(炭素数2のアルキレン基)であり、m2=1であり、L
1が-O-C(O)-R
c3-であり、R
c3がエチレン基(炭素数2のアルキレン基)であり、R
1及びR
2がエチレン基(炭素数2のアルキル基)である化合物である。硫黄含有量は18.0質量%、リン含有量は8.7質量%である。モノマー(C)として使用した。
【化12】
【0131】
(SPM1の合成方法)
200mLナスフラスコにIRGALUBE353(BASFジャパン株式会社製、13.2g,40.2mmol)、トルエン(25mL)を加え室温で攪拌している中へ、塩化チオニル(8.75g,74.1mmol)を滴下した。オイルバスで60℃に昇温し、4時間反応させた後、減圧下加熱濃縮した。得られた濃縮物にジクロロメタン(90mL)を加え、氷浴下、ヒドロキシエチルアクリレート(7.00g,60.3mmol)を滴下し、室温で3時間攪拌した。反応終了後、水を加えてジクロロメタン抽出液を、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下加熱濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製する事によりSPM1(6.52g,15.3mmol)を得た。
なお、IRGALUBE353は、下記構造式で表される化合物である。
【化13】
【0132】
(SPM2の合成方法)
1LナスフラスコにIRGALUBE62(31.4g,100mmol)、メタノール(150mL)を加え0℃で攪拌している中へ、5%水酸化ナトリウム水溶液(200mL)を滴下した。反応終了後、2M塩酸水溶液(150mL)を加え、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製する事によりカルボン酸誘導体(24.8g,86.7mmol)を得た。
500mLナスフラスコに上記カルボン酸誘導体、トルエン(54mL)を加え室温で攪拌している中へ、塩化チオニル(18.9g,159.8mmol)を滴下した。オイルバスで60℃に昇温し、4時間反応させた後、減圧下加熱濃縮した。得られた濃縮物にジクロロメタン(200mL)を加え、氷浴下、ヒドロキシエチルアクリレート(15.1g,130mmol)を滴下し、室温で3時間攪拌した。反応終了後、水を加えてジクロロメタン抽出液を、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下加熱濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製する事によりSPM2(36.4g,94.9mmol)を得た。
【0133】
(SPM3の合成方法)
500mLナスフラスコに水酸化カリウム(11.2g,199mmol)、水(40mL)クロロホルム(140mL)、ジチオリン酸 O,O’-ジエチル(32.7g,175mmol)、3-クロロプロピオン酸(20.0g,176mmol)を加えオイルバスで60℃に昇温し、7時間反応させた。有機層を水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥・濃縮することにより、カルボン酸誘導体(21.6g,83.6mmol)を得た。
100mLナスフラスコに上記カルボン酸誘導体(10g,38.7mmol)、ジクロロメタン(50mL)を加え0℃で攪拌している中へ、塩化オキサリル(16.0g,125.9mmol)を滴下した。室温で2時間反応させた後、減圧下加熱濃縮し得られた濃縮物にジクロロメタン(86mL)を加え、氷浴下、ヒドロキシエチルアクリレート(6.7g,58.1mmol)を滴下し、室温で4時間攪拌した。反応終了後、水を加えてジクロロメタン抽出液を、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下加熱濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製する事によりSPM3(4.88g,13.7mmol)を得た。
【0134】
(製造例A1:共重合体(X)-A1の製造)
温度計、窒素導入管、及び撹拌機を取り付けた200mL容の4つ口フラスコに、ドデシルアクリレートを33.9g(137mmоl)、2-ヒドロキシエチルアクリレートを10.5g(90.6mmоl)、SPM1を0.43g(1.0mmоl)、溶媒として2-プロパノールを43.9g仕込んだ。
次いで、フラスコ内を窒素置換し、開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を0.18g添加した後、撹拌しながらゆっくり昇温し、75~85℃の温度で還流させながら4時間反応させて、反応終了後に溶媒を減圧留去することにより、共重合体(X)-A1を得た。
共重合体(X)-A1の質量平均分子量(Mw)は19,800であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。また、共重合体(X)-A1のリン含有量は720質量ppm、硫黄含有量は1560質量ppmであった。
共重合体(X)-A1は、共重合体(X)-A1の含有量が50質量%となるように鉱物油で希釈して、潤滑油基油に混合した。
【0135】
(製造例A2:共重合体(X)-A2の製造)
製造例A1においてSPM1の代わりにSPM2を0.44g(1.1mmоl)仕込んだこと以外は同様の操作を行って、共重合体(X)-A2を得た。
共重合体(X)-A2の質量平均分子量(Mw)は19,700であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。また、共重合体(X)-A2のリン含有量は760質量ppm、硫黄含有量は1700質量ppmであった。
共重合体(X)-A2は、共重合体(X)-A2の含有量が50質量%となるように鉱物油で希釈して、潤滑油基油に混合した。
【0136】
(製造例A3:共重合体(X)-A3の製造)
製造例A1においてSPM1の代わりにSPM3を0.44g(1.2mmоl)仕込んだこと以外は同様の操作を行って、共重合体(X)-A3を得た。
共重合体(X)-A3の質量平均分子量(Mw)は19,100であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。また、共重合体(X)-A3のリン含有量は840質量ppm、硫黄含有量は1760質量ppmであった。
共重合体(X)-A3は、共重合体(X)-A3の含有量が50質量%となるように鉱物油で希釈して、潤滑油基油に混合した。
【0137】
(製造例A4:共重合体(X)-A4の製造)
製造例2においてドデシルアクリレートを47.9g(199mmоl)、2-ヒドロキシエチルアクリレートを5.8g(49.8mmоl)、SPM2を0.52g(1.0mmоl)仕込んだこと以外は同様の操作を行って、共重合体(X)-A4を得た。
共重合体(X)-A4の質量平均分子量(Mw)は19,700であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった。また、共重合体(X)-A4のリン含有量は760質量ppm、硫黄含有量は1660質量ppmであった。
共重合体(X)-A4は、共重合体(X)-A4の含有量が50質量%となるように鉱物油で希釈して、潤滑油基油に混合した。
【0138】
(製造例A5:共重合体(X)-A5の製造)
製造例A2において溶媒として2-プロパノールを22.0g仕込んだこと以外は同様の操作を行って、共重合体(X)-A5を得た。
共重合体(X)-A5の質量平均分子量(Mw)は34,200であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.3であった。また、共重合体(X)-A5のリン含有量は800質量ppm、硫黄含有量は1700質量ppmであった。
共重合体(X)-A5は、共重合体(X)-A5の含有量が50質量%となるように鉱物油で希釈して、潤滑油基油に混合した。
【0139】
(製造例A6:共重合体(X)-A6の製造)
製造例A2において溶媒として2-プロパノールを144.0g仕込んだこと以外は同様の操作を行って、共重合体(X)-A6を得た。
共重合体(X)-A6の質量平均分子量(Mw)は8,700であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.6であった。また、共重合体(X)-A6のリン含有量は760質量ppm、硫黄含有量は1620質量ppmであった。
ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-A6は、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-A6の含有量が50質量%となるように鉱物油で希釈して、潤滑油基油に混合した。
【0140】
共重合体(X)-A1~共重合体(X)-A6の組成、共重合体(X)-A1~共重合体(X)-A6の硫黄量及びリン量、質量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)を表1に示す。
なお、質量平均分子量(Mw)は、有効数字2桁で示した。
【0141】
【0142】
<製造例B1~B5>
(製造例B1~B5で用いたモノマー)
・「ドデシルアクリレート(DOA)」:上記一般式(a-1)中、Ra1が水素原子であり、Ra2がドデシル基(炭素数12のアルキル基)である化合物である。モノマー(A)(モノマー(A1))として使用した。
・「2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)」:上記一般式(b-1)中、Rb1が水素原子であり、Rb2がエチレン基(炭素数2のアルキレン基)であり、m1=1である化合物である。モノマー(B)(モノマー(B11))として使用した。
・「ドデシルチオエチルアクリレート(DTA)」:硫黄含有量=10.7質量%
上記一般式(d1-1)中、Rd11が水素原子であり、Rd12がエチレン基(炭素数2のアルキレン基)であり、m3=1であり、Rd13がドデシル基(炭素数12のアルキル基)である化合物である。モノマー(D1)として使用した。製造法は以下の通りである。
500mLナスフラスコに2-(ドデシルチオ)エタノール(15.3g,61.9mmol)、ジクロロメタン(124ml)を加え0℃で攪拌している中へ、塩化アクリロイル(5.6g,61.9mmol)、ピリジン(4.89g,61.9mmol)を滴下した。室温で1時間反応させた後、水を加えてジクロロメタン抽出液を、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下加熱濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製する事によりDTA(5.19g,17.3mmol)を得た。
・「オクチルチオエチルアクリレート(OTA)」:硫黄含有量=13.1質量%
上記一般式(d1-1)中、Rd11が水素原子であり、Rd12がエチレン基(炭素数2のアルキレン基)であり、m3=1であり、Rd13がオクチル基(炭素数8のアルキル基)である化合物である。モノマー(D1)として使用した。製造法は以下の通りである。
DTA製造法において、2-(ドデシルチオ)エタノールの代わりに2-(オクチルチオ)エタノールを(11.7g,61.9mmol)仕込んだこと以外は同様の操作を行って、OTA(3.88g,15.9mmol)を得た。
・「リン酸エチルアクリレート(PEA)」:共栄社化学株式会社製、P-1A(N)、リン含有量=14.3質量%
上記一般式(d2-1)中、n=1である化合物を主成分とし、n=2である化合物も含む混合物である。なお、両化合物とも、Rd21が水素原子であり、m4=1である。また、両化合物とも、Rd23は水素原子である。モノマー(D2)として使用した。
【0143】
(製造例B1:共重合体(X)-B1の製造)
温度計、窒素導入管、及び撹拌機を取り付けた200mL容の4つ口フラスコに、ドデシルアクリレートを35.7g(148mmоl)、2-ヒドロキシエチルアクリレートを11.4g(98.1mmоl)、DTAを0.46g(1.5mmоl)、PEAを0.95g(4.8mmоl)、溶媒として2-プロパノールを47.5g仕込んだ。
次いで、フラスコ内を窒素置換し、開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を0.2g添加した後、撹拌しながらゆっくり昇温し、75~85℃の温度で還流させながら4時間反応させて、反応終了後に溶媒を減圧留去することにより、共重合体(X)-B1を得た。
共重合体(X)-B1の質量平均分子量(Mw)は18,200であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。また、共重合体(X)-B1のリン含有量は2800質量ppm、硫黄含有量は880質量ppmであった。
共重合体(X)-B1は、共重合体(X)-B1の含有量が50質量%となるように鉱物油で希釈して、潤滑油基油に混合した。
【0144】
(製造例B2:共重合体(X)-B2の製造)
製造例B1においてDTAの代わりにOTAを0.46g(1.9mmоl)仕込んだこと以外は同様の操作を行って、共重合体(X)-B2を得た。
共重合体(X)-B2の質量平均分子量(Mw)は18,200であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.9であった。また、共重合体(X)-B2のリン含有量は3000質量ppm、硫黄含有量は1060質量ppmであった。
共重合体(X)-B2は、共重合体(X)-B2の含有量が50質量%となるように鉱物油で希釈して、潤滑油基油に混合した。
【0145】
(製造例B3:共重合体(X)-B3の製造)
製造例B1において溶媒として2-プロパノールを23.8g仕込んだこと以外は同様の操作を行って、共重合体(X)-B3を得た。
共重合体(X)-B3の質量平均分子量(Mw)は46,400であり、分子量分布(Mw/Mn)は3.2であった。また、共重合体(X)-B3のリン含有量は2800質量ppm、硫黄含有量は1040質量ppmであった。
共重合体(X)-B3は、共重合体(X)-B3の含有量が50質量%となるように鉱物油で希釈して、潤滑油基油に混合した。
【0146】
(製造例B4:共重合体(X)-B4の製造)
製造例B1において溶媒として2-プロパノールを143g仕込んだこと以外は同様の操作を行って、共重合体(X)-B4を得た。
共重合体(X)-B4の質量平均分子量(Mw)は10,100であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.7であった。また、共重合体(X)-B4のリン含有量は2800質量ppm、硫黄含有量は1100質量ppmであった。
共重合体(X)-B4は、共重合体(X)-B4の含有量が50質量%となるように鉱物油で希釈して、潤滑油基油に混合した。
【0147】
(製造例B5:共重合体(X)-B5の製造)
製造例B2において溶媒として2-プロパノールを23.8g仕込んだこと以外は同様の操作を行って、共重合体(X)-B5を得た。
共重合体(X)-B5の質量平均分子量(Mw)は48,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は3.3であった。また、共重合体(X)-B5のリン含有量は2800質量ppm、硫黄含有量は1220質量ppmであった。
共重合体(X)-B5は、共重合体(X)-B5の含有量が50質量%となるように鉱物油で希釈して、潤滑油基油に混合した。
【0148】
共重合体(X)-B1~共重合体(X)-B5の組成、共重合体(X)-B1~共重合体(X)-B5の硫黄量及びリン量、質量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)を表2に示す。
なお、質量平均分子量(Mw)は、有効数字2桁で示した。
【0149】
【0150】
[評価方法]
以下に説明する試験を実施し、耐摩耗性、極圧性、及び熱安定性について評価を行った。
【0151】
<シェル摩耗試験>
シェル摩耗試験機を用いて、ASTM D 4172に準拠して、試験条件を、荷重30kg、回転数1,200rpm、温度80℃、試験時間30分に設定して、潤滑油組成物の耐摩耗性を評価した。結果は、試験剛球の摩耗痕径(mm)で表した。
本試験においては摩耗痕径が0.55mm以下であれば、耐摩耗性が良好であると判断した。
【0152】
<シェル四球試験耐荷重性(EP)試験>
ASTM D 2783に準拠して、四球試験機により回転数1,800回転/分、油温(室温:25±5℃)の条件で行い、最大非焼付荷重(LNL)と、融着荷重(WL)とを測定した。これらの値が大きいほど極圧性が良好である。
本試験においては、最大非焼付荷重(LNL)が392N以上であり、かつ融着荷重(WL)が1236N以上であれば、極圧性が良好であると判断した。
【0153】
<ISOT試験>
試験油(潤滑油組成物)に触媒として銅片と鉄片を入れ、JIS K 2514-1:2013に準拠するISOT試験を実施して、試験油を強制劣化させた。試験温度(油温)は150℃とした。そして、ISOT試験開始から24時間後の試験油について、JIS B 9931に準拠して、スラッジ量(mg/100mL)を測定した。
そして、スラッジ量が10mg/100mL未満であれば、熱安定性が良好であると判断した。
【0154】
また、ISOT試験開始から24時間後の試験油について、既述のシェル摩耗試験及びシェル四球試験耐荷重性(EP)試験を実施した。そして、新油の場合と同様、摩耗痕径が0.55mm以下であれば、耐摩耗性が良好であると判断した。また、最大非焼付荷重(LNL)が392N以上であり、かつ融着荷重(WL)が1236N以上であれば、極圧性が良好であると判断した。
【0155】
結果を表3及び表4に示す。表3及び表4中、潤滑油用添加剤組成物の含有量の括弧内の数値は、樹脂分換算の含有量を意味する。
【0156】
【0157】
【0158】
表3及び表4より、以下のことがわかる。
実施例A1~A6に示す結果から、共重合体(X)-A1、共重合体(X)-A2、共重合体(X)-A3、共重合体(X)-A4、共重合体(X)-A5、又は共重合体(X)-A6を配合した潤滑油組成物は、耐摩耗性、極圧性、及び熱安定性に優れることがわかる。また、ISOT試験後においても耐摩耗性及び極圧性に優れることがわかる。
また、実施例B1~B5に示す結果から、共重合体(X)-B1、共重合体(X)-B2、共重合体(X)-B3、共重合体(X)-B4、又は共重合体(X)-B5を配合した潤滑油組成物は、耐摩耗性、極圧性、及び熱安定性に優れることがわかる。また、ISOT試験後においても耐摩耗性及び極圧性に優れることがわかる。
一方、比較例1に示す結果から、低分子量の硫黄及びリン含有化合物を配合した潤滑油組成物は、耐摩耗性及び極圧性が不十分であり、熱安定性も明らかに劣ることがわかる。