IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大陽日酸株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-排ガス処理設備 図1
  • 特開-排ガス処理設備 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061182
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】排ガス処理設備
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/68 20060101AFI20240425BHJP
   B01D 46/02 20060101ALI20240425BHJP
   B01D 53/46 20060101ALI20240425BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20240425BHJP
   F23J 15/02 20060101ALI20240425BHJP
   F23G 7/06 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
B01D53/68 220
B01D46/02 Z ZAB
B01D53/46
F23J15/00 Z
F23J15/02
F23G7/06 D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168956
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】大石 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】関田 誠
【テーマコード(参考)】
3K070
3K078
4D002
4D058
【Fターム(参考)】
3K070DA07
3K070DA32
3K070DA37
3K070DA72
3K078AA06
3K078BA20
3K078BA29
3K078CA24
4D002AA22
4D002AA26
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA05
4D002BA14
4D002CA01
4D002DA35
4D002EA01
4D002EA05
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB01
4D002GB04
4D002HA06
4D058JA04
4D058PA04
4D058SA20
4D058TA02
(57)【要約】
【課題】長期安定稼働をし、フィルター交換寿命の延命が可能となる排ガス処理設備を提供する。
【解決手段】排ガスの有害成分を無害化処理する除害装置11,21と、該除害装置11,21から排出される排ガス中に含まれる粉体を分離するフィルターユニット31と、除害装置11,21からフィルターユニット31に至る排ガス配管L1とを備えた排ガス処理設備10において、除害装置11,21の出口部において、大気吸入弁12,22を備え、大気吸入弁12,22を開閉制御する制御部は、フィルターユニット31の上流側と下流側の差圧の上昇を検知したら、大気吸入弁12,22を閉じる方向に制御する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスの有害成分を無害化処理する除害装置と、該除害装置から排出される排ガス中に含まれる粉体を分離するフィルターユニットと、前記除害装置から前記フィルターユニットに至る排ガス配管とを備えた排ガス処理設備において、
前記除害装置の出口部において、大気吸入弁を備え、
前記大気吸入弁を開閉制御する制御部は、前記フィルターユニットの上流側と下流側の差圧の上昇を検知したら、前記大気吸入弁を閉じる方向に制御することを特徴とする排ガス処理設備。
【請求項2】
排ガスの有害成分を無害化処理する除害装置と、該除害装置から排出される排ガス中に含まれる粉体を分離するフィルターユニットと、前記除害装置から前記フィルターユニットに至る排ガス配管とを備えた排ガス処理設備において、
前記除害装置の出口部において、大気吸入弁を備え、
前記大気吸入弁を開閉制御する制御部は、前記除害装置に排ガスを導出する製造装置のガス使用信号を受信し、前記除害装置の無害化処理時において粉体を発生するガスを使用している信号でない場合に、前記大気吸入弁を閉じる方向に制御することを特徴とする排ガス処理設備。
【請求項3】
排ガスの有害成分を無害化処理する除害装置と、該除害装置から排出される排ガス中に含まれる粉体を分離するフィルターユニットと、前記除害装置から前記フィルターユニットに至る排ガス配管とを備えた排ガス処理設備において、
前記除害装置の出口部において、大気吸入弁を備え、
前記大気吸入弁を開閉制御する制御部は、前記除害装置の無害化処理時において粉体を発生する燃焼モードでないことを検知した場合に、前記大気吸入弁を閉じる方向に制御することを特徴とする排ガス処理設備。
【請求項4】
前記排ガス配管のフィルターユニットと連結している側と反対側の端部に、搬送速度を調節するために大気を導入する搬送速度調整用大気導入弁が設けられ、
前記制御部は、前記フィルターユニットの上流側と下流側の差圧の低下を検知したら、前記搬送速度調整用大気導入弁が開く方向に制御することを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項に記載の排ガス処理設備。
【請求項5】
前記除害装置は複数設けられていることを特徴とする請求項4記載の排ガス処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理設備に関し、詳しくは、半導体などの各種電子デバイス製造装置から排出される有害成分を含む排ガスの処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体などの各種電子デバイス製造装置において、各種のプロセスガスやクリーニングガスが利用されている。当該プロセスガス及びクリーニングガス(以下、排ガスという)は有害成分を含むため、ポンプを介して除害装置に送られ無害化処理され、無害化処理時に発生した粉体を分離除去してから、外部に排気するようにしている。
【0003】
このような排ガス処理設備において、粉体を分離除去するフィルターユニットを複数設置し、使用するフィルターとメンテナンスするフィルターを切替えることで安定稼働を図るもの(例えば、特許文献1)や、除害装置からフィルターユニットへの排ガス配管上に粉体を堆積させないように、配管内周面にエポキシ樹脂の焼付塗装を施した金属製配管を採用したもの(例えば、特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-21315号公報
【特許文献2】特開2016-017678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されるような排ガス処理設備のように、複数のフィルターユニットを設置しなくても、フィルターの閉塞(目詰まり)を防止し、フィルター交換寿命の延命が可能となる排ガス処理設備が求められている。
【0006】
よって、本発明は、長期安定稼働をし、フィルター交換寿命の延命が可能となる排ガス処理設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の発明は、排ガスの有害成分を無害化処理する除害装置と、該除害装置から排出される排ガス中に含まれる粉体を分離するフィルターユニットと、前記除害装置から前記フィルターユニットに至る排ガス配管とを備えた排ガス処理設備において、前記除害装置の出口部において、大気吸入弁を備え、前記大気吸入弁を開閉制御する制御部は、前記フィルターユニットの上流側と下流側の差圧の上昇を検知したら、前記大気吸入弁を閉じる方向に制御することを特徴としている。
【0008】
また、本発明の第2の発明は、排ガスの有害成分を無害化処理する除害装置と、該除害装置から排出される排ガス中に含まれる粉体を分離するフィルターユニットと、前記除害装置から前記フィルターユニットに至る排ガス配管とを備えた排ガス処理設備において、前記除害装置の出口部において、大気吸入弁を備え、前記大気吸入弁を開閉制御する制御部は、前記除害装置に排ガスを導出する製造装置のガス使用信号を受信し、前記除害装置の無害化処理時において粉体を発生するガスを使用している信号でない場合に、前記大気吸入弁を閉じる方向に制御することを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明の第3の発明は、排ガスの有害成分を無害化処理する除害装置と、該除害装置から排出される排ガス中に含まれる粉体を分離するフィルターユニットと、前記除害装置から前記フィルターユニットに至る排ガス配管とを備えた排ガス処理設備において、前記除害装置の出口部において、大気吸入弁を備え、前記大気吸入弁を開閉制御する制御部は、前記除害装置の無害化処理時において粉体を発生する燃焼モードでないことを検知した場合に、前記大気吸入弁を閉じる方向に制御することを特徴としている。
【0010】
また、前記排ガス配管のフィルターユニットと連結している側と反対側の端部に、搬送速度を調節するために大気を導入する搬送速度調整用大気導入弁が設けられ、前記制御部は、前記フィルターユニットの上流側と下流側の差圧の低下を検知したら、前記搬送速度調整用大気導入弁が開く方向に制御することを特徴としており、さらに、前記除害装置は複数設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、フィルターユニットの上流側と下流側の差圧の上昇を検知したら、大気吸入弁を閉じる方向に制御することにより、通気風量全体を低下させ、フィルターユニットへの粉体の再付着を防止し、差圧回復を行っている。このような差圧回復を行うことにより、フィルター交換目安の差圧に達するまでの期間の長期化が可能となっている。
【0012】
また、第2,第3の発明によれば、定常的に発生粉体の負荷の状態を認識した上で、粉体が発生しない状況で差圧回復を図るので、さらに安定稼働、部品交換寿命の延命が可能となる。
【0013】
さらに、搬送速度調整用大気導入弁を設けることにより、排気ガス配管の粉体搬送速度を常に確保することができ、安定稼働が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の排ガス処理設備の一形態例を示す説明図である。
図2】本発明の排ガス処理設備の一形態例による連続運転と、通常の連続運転とにおけるフィルター差圧ΔPの経過日数による推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の排ガス処理設備の一形態例(実施例)を示す説明図である。本形態例における排ガス処理設備10は、半導体などの各種電子デバイス製造装置1からドライポンプ2を介して排出されたガスの無害化処理を行う複数の除害装置11,21と、除害装置11,21から排出される排ガス中に含まれる粉体を分離するフィルターユニット31と、前記除害装置11,21からフィルターユニット31に至る排ガス配管L1とで、概略構成されている。
【0016】
電子デバイス製造装置1は、例えば半導体製造用のプロセスチャンバ等であるが、成膜の種類や工程に応じて、様々なガスが使用され、そのガスに応じた排ガスが排出される。電子デバイス製造装置1から排出されたこれらのガスは、ドライポンプ2に吸引されて除害装置11に送られる。
【0017】
除害装置11は、いわゆる水冷加熱分解式のものであり、分解部11a、タンク部11b、スクラバ部11cを備えている。分解部11aは、排ガス中の有害成分を加熱分解処理するものであって、内筒と外筒からなる二重筒構造を有し、内筒の内部にバーナーを備える。当該バーナーには、燃料供給管(図示せず)と支燃性流体供給管(図示せず)とが配置されており、燃料供給管から供給される燃料が支燃性流体供給管から供給される支燃性流体と混合されて燃焼する時に、ドライポンプ2から供給される排ガスが加熱分解処理される。
【0018】
分解部11aで処理された排ガスや処理時に発生した粉体は、分解部11aの下部に設けられるタンク部11bへ排出する。タンク部11bは、内部に密閉状態で中間高さまで冷却水が貯留された冷却水槽であり、上部に後述するスクラバ部11cが接続される排気口を備えている。タンク部11bにおいて、分解部11aから排出されたガスは冷却水に接触して冷却され、粉体(二次生成物)の一部は冷却水により捕捉される。なお、図示は省略するが、タンク部11bには、冷却水の貯留量を一定に保ちながら新たな冷却水を導入して水を取り替えるための給水経路及び排水経路が設けられている。
【0019】
スクラバ部11cは、タンク部11bの上部に設けられており、内部に充填材を充填するとともに、充填材の上方にスプレーノズルを設けたものである。スクラバ部11cでは、タンク部11bの冷却水で冷却されたガス中の不純物を充填材によって捕捉した後、スプレーノズルから散水される洗浄水によってガスを洗浄して水溶性成分を除去する。
【0020】
このスクラバ部11cから排出される排ガスには、スプレーノズルからの散水により、ほぼ相対湿度100%かつ微量のミストが含まれており、さらに、まだ一部の粉体も残っている。含水率の高い粉体や、排気ガスに水分ミストが同伴されてしまうと、後述するフィルターユニット31のフィルター表面での付着力が大きくなってしまい、逆洗をしても粉体をフィルター表面から除去することが困難となる場合がある。そのため、排ガス配管L1に合流する前のスクラバ部11cの出口部(除害装置の後段)において、乾燥用の大気を吸入するための大気吸入弁12が設けられている。大気吸入弁12は、導入する大気の流量を調節可能とするため、開度を調節可能な制御弁である。この大気吸入弁12から導入された大気は、上述のように乾燥の用途だけでなく、排ガス配管L1内の粉体を搬送するための用途ともなる。
【0021】
除害装置21も、除害装置11と同様の構成であり、分解部21a、タンク部21b、スクラバ部21cを備え、スクラバ部21cの出口部に、大気吸入弁22を設けている。
【0022】
フィルターユニット31は、内部に複数のバグフィルター31aが設けられている。排ガス配管L1からフィルターユニット31に導入された排ガスは、バグフィルター31aの1次側から2次側へと通過し、排ガス中に含まれる粉体等は、バグフィルター31aの1次側表面に付着、堆積する。バグフィルター31aを通過した排ガスは、排気ポンプ3によって、排ガス処理設備10の外部に放出される。
【0023】
また、バグフィルター31aに付着した粉体等の逆洗のために、逆洗用弁31bを常時一定間隔で開閉し、噴出空気をバグフィルター31aの2次側から1次側に吹き付けることで、バグフィルター31aの1次側表面に付着した粉体等を離脱させ、粉体排出部(ホッパー)31cに落下させる。
【0024】
本形態例における排ガス処理設備10では、フィルターユニット31の上流側の圧力計P1と下流側の圧力計P2によって計測される圧力の差(フィルター差圧ΔP)を制御部(図示せず)で検知している。排ガス処理設備10で、排ガス処理を継続していると、バグフィルター31aの目詰まりが進行し、フィルター差圧ΔPは次第に上昇し、1.0kPaに達したら、フィルター交換のタイミングの目安としている。
【0025】
また、排ガス配管L1のフィルターユニット31と連結している側と反対側の端部には、搬送速度を調節するために大気を導入する搬送速度調整用大気導入弁41が設けられている。
【0026】
ここで、排ガス配管L1からフィルターユニット31への通気風量が多いと、逆洗により除去した付着粉体が、バグフィルター31aの1次側表面に再度付着してしまう現象が発生してしまう。
【0027】
そのため、本形態例における排ガス処理設備10では、排ガス処理の連続運転中に、制御部がフィルター差圧ΔPの上昇を検知した場合に(例えば、0.9~1.0kPaの上昇を検知した場合)、一時的に除害装置11,21の後段に設けられた大気吸入弁12,22の開度を小さくする方向に自動制御することが制御部により行われている。このように、大気吸入弁12,22の開度を小さくすることで、通気風量全体を低下させ、バグフィルター31aの1次側表面への再付着を防止し、差圧回復を行っている。また、開度を小さくした大気吸入弁12,22は、タイマー制御により、バグフィルター31aの数にもよるが例えば10分~60分経過したら、開度が戻るようにしてもよい。このとき、差圧回復が確認できない場合には、再度、大気吸入弁12,22の開度を小さくする方向に制御してもよい。
【0028】
図2は、通常の連続運転と、上述の本発明の実施例による差圧回復機能を追加した制御を実施した場合のフィルター差圧ΔPの経過日数による推移を示すグラフである。通常の連続運転の場合は、黒三角でプロットを示したものであるが、約240日で交換目安となる1.0kPaに達した。本発明の実施例による場合は、黒丸でプロットを示したものであるが、交換目安のフィルター差圧に達するまで約330日となっており、安定稼働、部品交換寿命の延命が可能となっている。
【0029】
次に、本発明の排ガス処理設備10の制御についての変形例(変形例1)を説明する。電子デバイス製造装置1においては、種類や工程に応じて、様々なガスが使用され、そのガスに応じた排ガスが排出される。半導体や液晶パネルを製造するプロセス工程では、シランガス(SiH)や六フッ化タングステン(WF)等の特殊ガスがプロセスガスとして使用される。これら可燃性の特殊ガスを除害装置11で処理する場合、粉体(二次生成物)を生じることとなる。
【0030】
一方、クリーニング工程で使用される三フッ化窒素(NF)等の難分解性のガスを除害装置11で処理する場合には、粉体発生は軽微である。
【0031】
電子デバイス製造装置1からは、どのような工程でどのようなガスを使用しているかのガス使用信号が排ガス処理設備10の制御部に送信される。ガス使用信号としては、例えば、除害装置11において粉体が生じるような成膜工程(プロセス工程)を実施中の信号(DEPO信号)や、クリーニング工程を実施中の信号(CLN信号)等がある。
【0032】
除害装置11で粉体が発生しているような場合には、粉体発生の負荷が生じるため、上述の実施例のような差圧回復制御をしても効果は少ないが、粉体が発生していない状況であることが制御部で確認される場合、大気吸入弁12,22の開度を小さくする方向に自動制御することにより、通気風量全体を低下させ、差圧回復を図ることが可能である。
【0033】
粉体が発生していない状況であることが制御部で確認される場合とは、例えば、DEPO信号、CLN信号の両方を受信可能な場合においては、両方の信号の未入力時である。また、仮にCLN信号しか受信できないような場合においては、CLN信号の入力時であれば少なくとも多量の粉体は発生していない負荷が軽い状況であるので、CLN信号入力時であればよい(本発明の粉体を発生するガスを使用している信号でない場合としてよい。)。
【0034】
実施例においては、フィルター差圧ΔPの上昇が検知された場合に、大気吸入弁12,22の開度を制御するが、日数が経過し、フィルターの目詰まりが進行してしまうと、逆洗による粉体の離脱が困難になる為、十分な効果が得られない場合もあった。変形例1では、定常的に発生粉体の負荷の状態を、電子デバイス製造装置1からの入力信号により認識した上で、差圧回復制御を加えることで、さらに安定稼働、部品交換寿命の延命が可能となる。
【0035】
なお、除害装置11,21について、電子デバイス製造装置1のガス使用信号に基づいて、省エネの観点から運転状況(燃焼モード)を最適化するために、燃焼モードを切替可能な機種も多い。したがって、変形例1のように、電子デバイス製造装置1のガス使用信号に基づいて制御するのではなく、変形例2として、制御部により、除害装置の燃焼モードに基づいて、大気吸入弁12,22の開度を制御することも可能である。
【0036】
燃焼モードとして、例えば、処理対象ガスが流れていないときには、着火用小型バーナーのみがついている状況(燃料使用量1L/min程度)のアイドルモードがあり、処理対象ガスが流れることによって、低エネルギーモード、高エネルギーモードに切り替わるものがある。
【0037】
低エネルギーモードとは、例えば、60-70%の燃料使用量で除害可能なシランガス(SiH)や六フッ化タングステン(WF)といった可燃性ガスを処理しているときのモードである。
【0038】
高エネルギーモードとは、例えば、100%の燃料使用量でないと処理できない三フッ化窒素(NF)等の難分解性のガスを処理しているときのモードである。
【0039】
したがって、アイドルモード及び高エネルギーモードでは、除害装置の処理時粉体が発生していない状況である(高エネルギーモードでは、変形例1のCLN信号入力時と同様に、若干量の粉体が発生するが、本発明の粉体を発生する燃焼モードでないモードとしてよい。)。よって、変形例2として、粉体が発生していない状況であることが、除害装置の燃焼モードにより制御部で確認される場合、大気吸入弁12,22の開度を小さくする方向に自動制御することにより、通気風量全体を低下させ、差圧回復を図るようにしてもよい。
【0040】
また、実施例、変形例1、変形例2のいずれであっても2台の除害装置11,21の両方が稼働している状況下では、排ガス配管L1における粉体の搬送速度が十分に得られているが、どちらかが停止状態となると、排ガス配管L1における粉体の搬送速度が低下してしまい、排ガス配管L1上に粉体が堆積してしまうおそれがある。
【0041】
除害装置が2台、フィルターユニット1台の場合、通常運転時におけるフィルター差圧ΔPの運転値は、0.6-0.8kPaである。ここで、1台の除害装置が停止すると、フィルター差圧ΔPが0.3kPa程度まで下がってしまう。
【0042】
このように、フィルター差圧ΔPが排ガス配管L1における粉体の搬送速度が十分に得られていないと判断されるまで下がったことを制御部が検知した場合、排ガス配管L1に搬送速度調整用大気導入弁41を開き、フィルター差圧ΔPが0.6kPa程度まで戻して、搬送速度を確保するように制御することが好適である。
【0043】
なお、フィルター差圧ΔPの低下がどの程度の場合に、搬送速度調整用大気導入弁41を開くかどうかは、除害装置、フィルターユニットの数等に基づいて、あらかじめ設定しておけばよい。
【0044】
以下の表1は、通常運転時と、実施例1及び変形例1,2の差圧回復制御時、フィルター差圧ΔPが低下して搬送速度調整用大気導入弁41を開いたときの、排ガス処理設備10の各箇所における通気流量の例を示すものである。
【0045】
Q1は除害装置11の除害処理後の排気ガスの流量、Q2は大気吸入弁12から吸入される大気の流量、Q3は除害装置21の除害処理後の排気ガスの流量、Q4は大気吸入弁22から吸入される大気の流量、Q5は搬送速度調整用大気導入弁41から吸入される大気の流量である。
【0046】
【表1】
【0047】
なお、上記実施例において、除害装置が2台、フィルターユニット1台の排ガス処理設備となっているが、それぞれの台数については、特に限定されない。また、除害装置は水冷加熱分解式に限らず、ヒーター式やプラズマ式のもの等、排ガスの有害成分を無害化処理できる公知のものを採用してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…電子デバイス製造装置、2…ドライポンプ、3…排気ポンプ、10…排ガス処理設備、11,21…除害装置、11a,21a…分解部、11b,21b…タンク部、11c,21c…スクラバ部、12,22…大気吸入弁、31…フィルターユニット、31a…バグフィルター、31b…逆洗用弁、31c…粉体排出部、41…搬送速度調整用大気導入弁
図1
図2