(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061194
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂フィルム、樹脂付き金属箔、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
C08L 61/34 20060101AFI20240425BHJP
C08L 35/00 20060101ALI20240425BHJP
C08L 71/12 20060101ALI20240425BHJP
C08L 25/04 20060101ALI20240425BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240425BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240425BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
C08L61/34
C08L35/00
C08L71/12
C08L25/04
C08K3/013
B32B15/08 J
B32B15/08 Q
H05K1/03 610N
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168976
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田端 栞
(72)【発明者】
【氏名】福田 富男
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 圭芸
(72)【発明者】
【氏名】染川 淳生
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 陽佳
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 香織
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AA01A
4F100AA01H
4F100AA19A
4F100AA19H
4F100AA20A
4F100AA20H
4F100AB01B
4F100AB01C
4F100AB17B
4F100AB17C
4F100AB33B
4F100AB33C
4F100AK12A
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4F100AK52A
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4F100BA02
4F100BA03
4F100BA06
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4F100JL08A
4J002BC02Z
4J002BH02W
4J002CC29X
4J002CH07Y
4J002DB017
4J002DE137
4J002DE147
4J002DE187
4J002DE247
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4J002DJ007
4J002DJ017
4J002DJ057
4J002DK007
4J002EG047
4J002EK006
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4J002EV236
4J002EW016
4J002EW176
4J002FD017
4J002FD130
4J002FD156
4J002GF00
4J002GQ01
(57)【要約】
【課題】良好な耐熱性及び誘電特性を維持しながらも、靭性に優れる樹脂組成物、該樹脂組成物を用いた樹脂フィルム、樹脂付き金属箔、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージを提供する。
【解決手段】(A)ベンゾオキサジン樹脂と、(B)ベンゾオキサジン樹脂以外の熱硬化性樹脂と、(C)ポリフェニレンエーテル及びその誘導体からなる群から選択される1種以上と、を含有する、樹脂組成物、該樹脂組成物を用いた樹脂フィルム、樹脂付き金属箔、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ベンゾオキサジン樹脂と、
(B)ベンゾオキサジン樹脂以外の熱硬化性樹脂と、
(C)ポリフェニレンエーテル及びその誘導体からなる群から選択される1種以上と、
を含有する、樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)ベンゾオキサジン樹脂が、ベンゾオキサジン環を2個有する樹脂である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)ベンゾオキサジン樹脂が、下記一般式(A-1)で表される化合物である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式中、R
A1、R
A2、R
A3及びR
A4は、各々独立に、炭素数1~10の炭化水素基である。X
A1は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、-O-、スルホニル基、カルボニルオキシ基、-C(=O)-又は単結合である。n
A1、n
A2、n
A3及びn
A4は、各々独立に、0~4の整数である。)
【請求項4】
前記(A)ベンゾオキサジン樹脂の含有量が、前記(B)ベンゾオキサジン樹脂以外の熱硬化性樹脂100質量部に対して、1~30質量部である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)ベンゾオキサジン樹脂以外の熱硬化性樹脂が、N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド樹脂及び該マレイミド樹脂の誘導体からなる群から選択される1種以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C)成分が、エチレン性不飽和結合を含む官能基を有するポリフェニレンエーテル誘導体である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、(D)スチレン系熱可塑性樹脂を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、(E)硬化促進剤を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、(F)無機充填材を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含有する樹脂フィルム。
【請求項11】
金属箔と、該金属箔の一方の面に積層された請求項10に記載の樹脂フィルムと、を有する樹脂付き金属箔。
【請求項12】
請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物と、金属箔と、を有する積層板。
【請求項13】
請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を有するプリント配線板。
【請求項14】
請求項13に記載のプリント配線板と、半導体素子と、を有する半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、樹脂組成物、樹脂フィルム、樹脂付き金属箔、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される移動体通信機器、その基地局装置、サーバー、ルーター等のネットワークインフラ機器、大型コンピューターなどの電子機器では、使用する信号の高速化及び大容量化が年々進んでいる。これに伴い、これらの電子機器に搭載するプリント配線板の基板材料には、高周波信号の伝送損失を低減できる誘電特性[以下、「高周波特性」と称する場合がある。]、すなわち、低比誘電率及び低誘電正接が求められている。
近年、上述した電子機器の他にも、自動車、交通システム関連等のITS(Intelligent Transport Systems)分野及び室内の近距離通信分野でも、高周波無線信号を扱う新規システムの実用化又は実用計画が進んでいる。そのため、今後、これらの分野で使用するプリント配線板に対しても、高周波特性に優れる基板材料の必要性が高まると予想される。
【0003】
特許文献1には、プリント配線板の絶縁層に適用できる樹脂組成物として、得られる硬化物の比誘電率と誘電正接が低く、耐熱性にも優れる硬化性樹脂組成物を提供することを課題として、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プリント配線板の絶縁層に対しては、使用環境下に耐え得る耐熱性が要求されるが、本発明者等の検討によると、耐熱性及び誘電特性を満足し得る材料組成において、硬化物が脆くなり、靭性が低下する傾向にあることが判明している。
【0006】
本実施形態は、このような現状に鑑み、良好な耐熱性及び誘電特性を維持しながらも、靭性に優れる樹脂組成物、該樹脂組成物を用いた樹脂フィルム、樹脂付き金属箔、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の本発明によって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本実施形態は、下記[1]~[14]に関する。
[1](A)ベンゾオキサジン樹脂と、
(B)ベンゾオキサジン樹脂以外の熱硬化性樹脂と、
(C)ポリフェニレンエーテル及びその誘導体からなる群から選択される1種以上と、
を含有する、樹脂組成物。
[2]前記(A)ベンゾオキサジン樹脂が、ベンゾオキサジン環を2個有する樹脂である、上記[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記(A)ベンゾオキサジン樹脂が、下記一般式(A-1)で表される化合物である、上記[1]に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式中、R
A1、R
A2、R
A3及びR
A4は、各々独立に、炭素数1~10の炭化水素基である。X
A1は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、-O-、スルホニル基、カルボニルオキシ基、-C(=O)-又は単結合である。n
A1、n
A2、n
A3及びn
A4は、各々独立に、0~4の整数である。)
[4]前記(A)ベンゾオキサジン樹脂の含有量が、前記(B)ベンゾオキサジン樹脂以外の熱硬化性樹脂100質量部に対して、1~30質量部である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]前記(B)ベンゾオキサジン樹脂以外の熱硬化性樹脂が、N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド樹脂及び該マレイミド樹脂の誘導体からなる群から選択される1種以上である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]前記(C)成分が、エチレン性不飽和結合を含む官能基を有するポリフェニレンエーテル誘導体である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]さらに、(D)スチレン系熱可塑性樹脂を含有する、上記[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]さらに、(E)硬化促進剤を含有する、上記[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]さらに、(F)無機充填材を含有する、上記[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10]上記[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含有する樹脂フィルム。
[11]金属箔と、該金属箔の一方の面に積層された上記[10]に記載の樹脂フィルムと、を有する樹脂付き金属箔。
[12]上記[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物と、金属箔と、を有する積層板。
[13]上記[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物を有するプリント配線板。
[14]上記[13]に記載のプリント配線板と、半導体素子と、を有する半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態によれば、良好な耐熱性及び誘電特性を維持しながらも、靭性に優れる樹脂組成物、該樹脂組成物を用いた樹脂フィルム、樹脂付き金属箔、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
例えば、数値範囲「X~Y」(X、Yは実数)という表記は、X以上、Y以下である数値範囲を意味する。そして、本明細書における「X以上」という記載は、X及びXを超える数値を意味する。また、本明細書における「Y以下」という記載は、Y及びY未満の数値を意味する。
本明細書中に記載されている数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値又は上限値と任意に組み合わせられる。
本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の下限値又は上限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0010】
本明細書に例示する各成分及び材料は、特に断らない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本明細書において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、樹脂組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、樹脂組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0011】
本明細書において「固形分」とは、溶媒以外の成分を意味し、室温で液状、水飴状及びワックス状のものも含む。ここで、本明細書において室温とは25℃を示す。
【0012】
本明細書における数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC;Gel Permeation Chromatography)によってポリスチレン換算にて測定される値を意味する。具体的には、本明細書における数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、実施例に記載される方法によって測定することができる。
【0013】
本明細書における「半硬化物」とは、JIS K 6800(2006)におけるB-ステージの状態にある樹脂組成物と同義であり、「硬化物」とは、JIS K 6800(2006)におけるC-ステージの状態にある樹脂組成物と同義である。
【0014】
本明細書における「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。同様に「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」及びそれに対応する「メタクリロイル」を意味する。
【0015】
本明細書に記載されている作用機序は推測であって、本実施形態の効果を奏する機序を限定するものではない。
【0016】
本明細書の記載事項を任意に組み合わせた態様も本実施形態に含まれる。
【0017】
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、
(A)ベンゾオキサジン樹脂と、
(B)ベンゾオキサジン樹脂以外の熱硬化性樹脂と、
(C)ポリフェニレンエーテル及びその誘導体からなる群から選択される1種以上と、
を含有する、樹脂組成物である。
なお、本明細書において、上記成分はそれぞれ、(A)成分、(B)成分、(C)成分等と省略して称することがあり、その他の成分についても同様の略し方をすることがある。
【0018】
本実施形態の樹脂組成物が、良好な耐熱性及び誘電特性を維持しながらも、靭性に優れる理由については定かではないが、以下の通り推測される。
本実施形態の樹脂組成物は、耐熱性に寄与する(B)ベンゾオキサジン樹脂以外の熱硬化性樹脂[以下、単に「(B)熱硬化性樹脂」と称する場合がある。]、誘電特性に寄与する(C)ポリフェニレンエーテル及びその誘導体からなる群から選択される1種以上[以下、単に「(C)ポリフェニレンエーテル系樹脂」と称する場合がある。]と共に、(A)ベンゾオキサジン樹脂とを含有するものである。
(A)ベンゾオキサジン樹脂は、それ自体が剛直な骨格を有すると共に、(A)ベンゾオキサジン樹脂の単独重合によって発生した水酸基が(B)熱硬化性樹脂と柔軟なエーテル結合を形成し得るため、耐熱性及び誘電特性を良好に保ちながらも、硬化物を柔軟にし、靭性が向上したものと推測される。
【0019】
<(A)ベンゾオキサジン樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、(A)ベンゾオキサジン樹脂を含有する。
本実施形態の樹脂組成物は、(A)ベンゾオキサジン樹脂を含有することによって、硬化物の靭性に優れるものになる。
なお、本実施形態における「ベンゾオキサジン樹脂」とは、分子中にベンゾオキサジン環を少なくとも1個以上有する樹脂を意味する。
また、本実施形態における「ベンゾオキサジン環」とは、1個の酸素原子と1個の窒素原子を含む6員環構造のオキサジン環が含む2つの二重結合のうちの一方の二重結合がジヒドロ化され、他方の二重結合がベンゼン環に縮合されている環構造を意味する。
(A)ベンゾオキサジン樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
(A)ベンゾオキサジン樹脂は、ベンゾオキサジン環を1個以上有するものであればよく、ベンゾオキサジン環を2~3個有する樹脂であることが好ましく、ベンゾオキサジン環を2個有する樹脂であることがより好ましい。
【0021】
(A)ベンゾオキサジン樹脂としては、公知のベンゾオキサジン樹脂を用いることができ、例えば、P-d型ベンゾオキサジン、F-a型ベンゾオキサジン、ALP-d型ベンゾオキサジン、T-ala型ベンゾオキサジン等が挙げられる。
【0022】
(A)ベンゾオキサジン樹脂としては、例えば、下記一般式(A-1)で表される化合物、下記一般式(A-2)で表される化合物、下記一般式(A-3)で表される化合物等が挙げられる。
【0023】
【化2】
(式中、R
A1、R
A2、R
A3及びR
A4は、各々独立に、炭素数1~10の炭化水素基である。X
A1は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、-O-、スルホニル基、カルボニルオキシ基、-C(=O)-又は単結合である。n
A1、n
A2、n
A3及びn
A4は、各々独立に、0~4の整数である。)
【0024】
【化3】
(式中、R
A5及びR
A6は、各々独立に、炭素数1~10の炭化水素基である。R
A7及びR
A8は、各々独立に、炭素数1~10の炭化水素基又は水素原子である。X
A2は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、-O-、スルホニル基、カルボニルオキシ基、-C(=O)-又は単結合である。n
A5及びn
A6は、0~3の整数である。)
【0025】
【化4】
(式中、R
A9は、炭素数1~10の炭化水素基である。R
A10は、炭素数1~10の炭化水素基又は水素原子である。n
A7は、0~4の整数である。)
【0026】
上記一般式(A-1)中、RA1、RA2、RA3及びRA4が表す炭素数1~10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-オクチル基、n-デシル基等の脂肪族炭化水素基;フェニル基等の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
上記一般式(A-1)中、nA1、nA2、nA3及びnA4は、各々独立に、0~4の整数であり、入手容易性の観点から、0~2の整数が好ましく、0がより好ましい。nA1、nA2、nA3及びnA4が2以上の整数である場合、複数のRA1同士、複数のRA2同士、複数のRA3同士、複数のRA4同士は、各々、同一であっても異なっていてもよい。
上記一般式(A-1)中、XA1が表す炭素数1~5のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,2-ジメチレン基、1,3-トリメチレン基、1,4-テトラメチレン基、1,5-ペンタメチレン基等が挙げられる。該アルキレン基としては、炭素数1~3のアルキレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
上記一般式(A-1)中、XA1が表す炭素数2~5のアルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。これらの中でも、イソプロピリデン基が好ましい。
【0027】
上記一般式(A-2)中、RA5及びRA6が表す炭素数1~10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-オクチル基、n-デシル基等の炭素数1~10のアルキル基;炭素数2~10のアルケニル基;炭素数2~10のアルキニル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6~10の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
上記一般式(A-2)中、nA5及びnA6は、各々独立に、0~3の整数であり、入手容易性の観点から、0~2の整数が好ましく、0がより好ましい。
上記一般式(A-2)中、XA2が表す炭素数1~5のアルキレン基及び炭素数2~5のアルキリデン基としては、上記一般式(A-1)中のXA1が表す炭素数1~5のアルキレン基及び炭素数2~5のアルキリデン基と同じものが挙げられる。
上記一般式(A-2)中、RA7及びRA8が表す炭素数1~10の炭化水素基としては、上記RA5及びRA6が表す炭素数1~10の炭化水素基と同じものが挙げられる。これらの中でも、RA7及びRA8は、芳香族炭化水素基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0028】
上記一般式(A-3)中、RA9が表す炭素数1~10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-オクチル基、n-デシル基等の炭素数1~10のアルキル基;炭素数2~10のアルケニル基;炭素数2~10のアルキニル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6~10の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
上記一般式(A-3)中、nA7は、0~4の整数であり、入手容易性の観点から、0~2の整数が好ましく、0がより好ましい。nA7が2以上の整数である場合、複数のRA9同士は、同一であっても異なっていてもよい。
上記一般式(A-3)中、RA10が表す炭素数1~10の炭化水素基としては、上記RA9が表す炭素数1~10の炭化水素基と同じものが挙げられる。
【0029】
上記一般式(A-1)~(A-3)のいずれかで表される化合物の中でも、低熱膨張性及び耐熱性の観点から、上記一般式(A-1)で表される化合物、上記一般式(A-2)で表される化合物が好ましく、上記一般式(A-1)で表される化合物がより好ましい。
また、上記一般式(A-1)で表される化合物は、下記式(A-4)で表されるものが好ましく、上記一般式(A-2)で表される化合物は、下記式(A-5)で表されるものが好ましい。
【0030】
【0031】
【0032】
本実施形態の樹脂組成物中における(A)ベンゾオキサジン樹脂の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の樹脂組成物中の樹脂成分の総量(100質量%)に対して、好ましくは0.5~30質量%、より好ましくは1~15質量%、さらに好ましくは2~10質量%である。
また、本実施形態の樹脂組成物中における(A)ベンゾオキサジン樹脂の含有量は、特に限定されないが、(B)熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは1~30質量部、より好ましくは2~15質量部、さらに好ましくは3~10質量部である。
(A)ベンゾオキサジン樹脂の含有量が、上記下限値以上であると、靭性がより良好になり易い傾向にある。また、(A)ベンゾオキサジン樹脂の含有量が、上記上限値以下であると、耐熱性がより良好になり易い傾向にある。
【0033】
<(B)熱硬化性樹脂>
(B)熱硬化性樹脂は、ベンゾオキサジン樹脂以外の熱硬化性樹脂である。
(B)熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
(B)熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、(B)熱硬化性樹脂としては、耐熱性及び導体接着性の観点から、エポキシ樹脂、シアネート樹脂及びマレイミド樹脂からなる群から選択される1種以上が好ましく、マレイミド樹脂がより好ましく、N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド樹脂及び該マレイミド樹脂の誘導体からなる群から選択される1種以上がさらに好ましい。
【0034】
なお、以下の説明において、「N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド樹脂及び該マレイミド樹脂の誘導体からなる群から選択される1種以上」を「マレイミド系樹脂」と称する場合がある。
また、以下の説明において、N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド樹脂を「マレイミド樹脂(BX)」又は「(BX)成分」と称する場合がある。
また、以下の説明において、N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド樹脂の誘導体を「マレイミド樹脂誘導体(BY)」又は「(BY)成分」と称する場合がある。
【0035】
(マレイミド樹脂(BX))
マレイミド樹脂(BX)は、N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド樹脂であれば特に限定されない。
【0036】
マレイミド樹脂(BX)は、導体接着性及び耐熱性の観点から、N-置換マレイミド基を2個以上有するマレイミド樹脂であることが好ましく、N-置換マレイミド基を2個以上有する芳香族マレイミド樹脂であることが好ましく、N-置換マレイミド基を2個有する芳香族ビスマレイミド樹脂であることがより好ましい。
なお、本明細書中、「芳香族マレイミド樹脂」とは、芳香環に直接結合するN-置換マレイミド基を有する化合物を意味する。また、本明細書中、「芳香族ビスマレイミド樹脂」とは、芳香環に直接結合するN-置換マレイミド基を2個有する化合物を意味する。
また、本明細書中、「芳香族ポリマレイミド樹脂」とは、芳香環に直接結合するN-置換マレイミド基を3個以上有する化合物を意味する。
また、本明細書中、「脂肪族マレイミド樹脂」とは、脂肪族炭化水素に直接結合するN-置換マレイミド基を有する化合物を意味する。
【0037】
マレイミド樹脂(BX)としては、下記一般式(B1-1)で表されるマレイミド樹脂[以下、「マレイミド樹脂(B1)」と称する場合がある。]が好ましい。
【0038】
【化7】
(式中、X
B11は2価の有機基である。)
【0039】
上記一般式(B1-1)中のXB11は、2価の有機基である。
上記一般式(B1-1)中のXB11が表す2価の有機基としては、例えば、下記一般式(B1-2)で表される2価の基、下記一般式(B1-3)で表される2価の基、下記一般式(B1-4)で表される2価の基、下記一般式(B1-5)で表される2価の基、下記一般式(B1-6)で表される2価の基等が挙げられる。
【0040】
【化8】
(式中、R
B11は、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。n
B11は0~4の整数である。*は結合部位を表す。)
【0041】
上記一般式(B1-2)中のRB11が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等の炭素数1~5のアルキル基;炭素数2~5のアルケニル基;炭素数2~5のアルキニル基などが挙げられる。炭素数1~5の脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。なお、以下、本明細書中の一般式で示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられるものとし、その例示は省略する。
上記一般式(B1-2)中のnB11は0~4の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。
nB11が2以上の整数である場合、複数のRB11同士は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0042】
【化9】
(式中、R
B12及びR
B13は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。X
B12は炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基、単結合、又は下記一般式(B1-3-1)で表される2価の基である。n
B12及びn
B13は、各々独立に、0~4の整数である。*は結合部位を表す。)
【0043】
上記一般式(B1-3)中のRB12及びRB13が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等の炭素数1~5のアルキル基;炭素数2~5のアルケニル基;炭素数2~5のアルキニル基などが挙げられる。炭素数1~5の脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。
【0044】
上記一般式(B1-3)中のXB12が表す炭素数1~5のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,2-ジメチレン基、1,3-トリメチレン基、1,4-テトラメチレン基、1,5-ペンタメチレン基等が挙げられる。
上記一般式(B1-3)中のXB12が表す炭素数2~5のアルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。
【0045】
上記一般式(B1-3)中のnB12及びnB13は、各々独立に、0~4の整数である。
nB12又はnB13が2以上の整数である場合、複数のRB12同士又は複数のRB13同士は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0046】
上記一般式(B1-3)中のXB12が表す一般式(B1-3-1)で表される2価の基は以下のとおりである。
【0047】
【化10】
(式中、R
B14及びR
B15は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。X
B13は炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基又は単結合である。n
B14及びn
B15は、各々独立に、0~4の整数である。*は結合部位を表す。)
【0048】
上記一般式(B1-3-1)中のRB14及びRB15が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等の炭素数1~5のアルキル基;炭素数2~5のアルケニル基;炭素数2~5のアルキニル基などが挙げられる。炭素数1~5の脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。
【0049】
上記一般式(B1-3-1)中のXB13が表す炭素数1~5のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,2-ジメチレン基、1,3-トリメチレン基、1,4-テトラメチレン基、1,5-ペンタメチレン基等が挙げられる。
上記一般式(B1-3-1)中のXB13が表す炭素数2~5のアルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。
上記一般式(B1-3-1)中のXB13としては、上記選択肢の中でも、炭素数2~5のアルキリデン基が好ましく、炭素数2~4のアルキリデン基がより好ましく、イソプロピリデン基がさらに好ましい。
【0050】
上記一般式(B1-3-1)中のnB14及びnB15は、各々独立に、0~4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。
nB14又はnB15が2以上の整数である場合、複数のRB14同士又は複数のRB15同士は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0051】
【化11】
(式中、n
B16は0~10の整数である。*は結合部位を表す。)
【0052】
上記一般式(B1-4)中のnB16は、入手容易性の観点から、好ましくは0~5の整数、より好ましくは0~4の整数、さらに好ましくは0~3の整数である。
【0053】
【化12】
(式中、n
B17は0~5の数である。*は結合部位を表す。)
【0054】
【化13】
(式中、R
B16及びR
B17は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~5の脂肪族炭化水素基である。n
B18は1~8の整数である。*は結合部位を表す。)
【0055】
上記一般式(B1-6)中のRB16及びRB17が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等の炭素数1~5のアルキル基;炭素数2~5のアルケニル基;炭素数2~5のアルキニル基などが挙げられる。炭素数1~5の脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。
上記一般式(B1-6)中のnB18は1~8の整数であり、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数、さらに好ましくは1である。nB18が2以上の整数である場合、複数のRB16同士又は複数のRB17同士は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0056】
マレイミド樹脂(B1)としては、例えば、芳香族ビスマレイミド樹脂、芳香族ポリマレイミド樹脂、脂肪族マレイミド樹脂等が挙げられる。
マレイミド樹脂(B1)の具体例としては、N,N’-エチレンビスマレイミド、N,N’-ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’-(1,3-フェニレン)ビスマレイミド、N,N’-[1,3-(2-メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[1,3-(4-メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-(1,4-フェニレン)ビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)ケトン、ビス(4-マレイミドシクロヘキシル)メタン、1,4-ビス(4-マレイミドフェニル)シクロヘキサン、1,4-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(マレイミドメチル)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、4,4-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス(4-マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビニフェニルアラルキル型マレイミド等が挙げられる。これらの中でも、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンが好ましい。
【0057】
(マレイミド樹脂誘導体(BY))
マレイミド樹脂誘導体(BY)としては、N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド樹脂(すなわち、マレイミド樹脂(BX))由来の構造とジアミン化合物由来の構造とを有する樹脂[以下、「アミノマレイミド樹脂(B2)」又は「(B2)成分」と称する場合がある。]が好ましい。
【0058】
〔アミノマレイミド樹脂(B2)〕
アミノマレイミド樹脂(B2)は、マレイミド樹脂(BX)由来の構造とジアミン化合物由来の構造とを有する。
【0059】
《マレイミド樹脂(BX)由来の構造》
マレイミド樹脂(BX)由来の構造としては、例えば、マレイミド樹脂(BX)が有するN-置換マレイミド基のうち、少なくとも1つのN-置換マレイミド基が、ジアミン化合物が有するアミノ基とマイケル付加反応してなる構造が挙げられる。
アミノマレイミド樹脂(B2)中に含まれるマレイミド樹脂(BX)由来の構造は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0060】
アミノマレイミド樹脂(B2)中におけるマレイミド樹脂(BX)由来の構造の含有量は、特に限定されないが、好ましくは5~95質量%、より好ましくは30~93質量%、さらに好ましくは60~90質量%である。
アミノマレイミド樹脂(B2)中におけるマレイミド樹脂(BX)由来の構造の含有量が上記範囲内であると、誘電特性及びフィルムハンドリング性がより良好になる傾向にある。
【0061】
《ジアミン化合物由来の構造》
ジアミン化合物由来の構造としては、例えば、ジアミン化合物が有する2個のアミノ基のうち、一方又は両方のアミノ基が、マレイミド樹脂(BX)が有するN-置換マレイミド基とマイケル付加反応してなる構造が挙げられる。
アミノマレイミド樹脂(B2)中に含まれるジアミン化合物由来の構造は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0062】
ジアミン化合物が有するアミノ基は第1級アミノ基であることが好ましい。
第1級アミノ基を2個有するジアミン化合物由来の構造としては、例えば、下記一般式(B2-1)で表される基、下記一般式(B2-2)で表される基等が挙げられる。
【0063】
【化14】
(式中、X
B21は2価の有機基であり、*は結合部位を表す。)
【0064】
上記一般式(B2-1)及び上記一般式(B2-2)中のXB21は2価の有機基であり、ジアミン化合物から2個の第1級アミノ基を除いた2価の基に相当する。
【0065】
上記一般式(B2-1)及び上記一般式(B2-2)中のXB21は、下記一般式(B2-3)で表される2価の基であることが好ましい。
【0066】
【化15】
(式中、R
B21及びR
B22は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、炭素数1~5のアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子である。X
B22は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基、フルオレニレン基、単結合、又は下記一般式(B2-3-1)若しくは下記一般式(B2-3-2)で表される2価の基である。n
B21及びn
B22は、各々独立に、0~4の整数である。*は結合部位を表す。)
【0067】
【化16】
(式中、R
B23及びR
B24は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。X
B23は炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、m-フェニレンジイソプロピリデン基、p-フェニレンジイソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基又は単結合である。n
B23及びn
B24は、各々独立に、0~4の整数である。*は結合部位を表す。)
【0068】
【化17】
(式中、R
B25は、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。X
B24及びX
B25は、各々独立に、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基又は単結合である。n
B25は0~4の整数である。*は結合部位を表す。)
【0069】
上記一般式(B2-3)、上記一般式(B2-3-1)及び上記一般式(B2-3-2)中のRB21、RB22、RB23、RB24及びRB25が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等の炭素数1~5のアルキル基;炭素数2~5のアルケニル基;炭素数2~5のアルキニル基などが挙げられる。炭素数1~5の脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。該炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~3の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましい。
【0070】
上記一般式(B2-3)中のXB22、上記一般式(B2-3-1)中のXB23並びに上記一般式(B2-3-2)中のXB24及びXB25が表す炭素数1~5のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,2-ジメチレン基、1,3-トリメチレン基、1,4-テトラメチレン基、1,5-ペンタメチレン基等が挙げられる。該炭素数1~5のアルキレン基としては、炭素数1~3のアルキレン基が好ましく、炭素数1又は2のアルキレン基がより好ましく、メチレン基がさらに好ましい。
【0071】
上記一般式(B2-3)中のXB22、上記一般式(B2-3-1)中のXB23、並びに上記一般式(B2-3-2)中のXB24及びXB25が表す炭素数2~5のアルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。該炭素数2~5のアルキリデン基としては、炭素数2~4のアルキリデン基が好ましく、炭素数2又は3のアルキリデン基がより好ましく、イソプロピリデン基がさらに好ましい。
【0072】
上記一般式(B2-3)中のnB21及びnB22は、各々独立に、0~4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0~3の整数、より好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0又は2である。
nB21又はnB22が2以上の整数である場合、複数のRB21同士又は複数のRB22同士は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0073】
上記一般式(B2-3-1)中のnB23及びnB24は、各々独立に、0~4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。
nB23又はnB24が2以上の整数である場合、複数のRB23同士又は複数のRB24同士は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0074】
上記一般式(B2-3-2)中のnB25は、0~4の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。
nB25が2以上の整数である場合、複数のRB25同士は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0075】
また、上記一般式(B2-1)及び上記一般式(B2-2)中のXB21は、下記一般式(B2-4)で表される構造を含有する2価の基であってもよく、下記一般式(B2-5)で表される2価の基であってもよい。
【0076】
【化18】
(式中、R
B26及びR
B27は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、フェニル基又は置換フェニル基である。*は結合部位を表す。)
【0077】
【化19】
(式中、R
B26及びR
B27は、上記一般式(B2-4)中のものと同じであり、R
B28及びR
B29は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、フェニル基又は置換フェニル基である。X
B26及びX
B27は、各々独立に、2価の有機基であり、n
B26は、2~100の整数である。*は結合部位を表す。)
【0078】
上記一般式(B2-4)及び(B2-5)中のRB26~RB29が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等の炭素数1~5のアルキル基;炭素数2~5のアルケニル基;炭素数2~5のアルキニル基などが挙げられる。炭素数1~5の脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。該炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~3の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
RB26~RB29が表す置換フェニル基におけるフェニル基が有する置換基としては、上記した炭素数1~5の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0079】
XB26及びXB27が表す2価の有機基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-又はこれらが組み合わされた2価の連結基等が挙げられる。
上記アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の炭素数1~10のアルキレン基が挙げられる。
上記アルケニレン基としては、例えば、炭素数2~10のアルケニレン基が挙げられる。
上記アルキニレン基としては、例えば、炭素数2~10のアルキニレン基が挙げられる。
上記アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基等の炭素数6~20のアリーレン基が挙げられる。
これらの中でも、XB26及びXB27としては、アルキレン基、アリーレン基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。
【0080】
nB26は、2~100の整数であり、好ましくは2~50の整数、より好ましくは3~40の整数、さらに好ましくは5~30の整数である。nB26が2以上の整数である場合、複数のRB26同士又は複数のRB27同士は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0081】
アミノマレイミド樹脂(B2)中におけるジアミン化合物由来の構造の含有量は、特に限定されないが、好ましくは5~95質量%、より好ましくは7~70質量%、さらに好ましくは10~40質量%である。
アミノマレイミド樹脂(B2)中におけるジアミン化合物由来の構造の含有量が上記範囲内であると、誘電特性、耐熱性、難燃性及びガラス転移温度がより良好になる傾向にある。
【0082】
ジアミン化合物としては、例えば、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルケトン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3-ビス〔1-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1-メチルエチル〕ベンゼン、1,4-ビス〔1-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1-メチルエチル〕ベンゼン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、3,3’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン等の芳香族ジアミン化合物;第1級アミノ基を2個有するシリコーン化合物などが挙げられる。
なお、本明細書中、「芳香族ジアミン化合物」とは、芳香環に直接結合するアミノ基を2個有する化合物を意味する。
【0083】
これらの中でも、ジアミン化合物は、有機溶媒への溶解性、反応性、耐熱性、誘電特性、低吸水性等に優れるという観点から、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、及び4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリンが好ましく、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンがより好ましい。
【0084】
また、ジアミン化合物は、低熱膨張性の観点からは、第1級アミノ基を2個有するシリコーン化合物が好ましい。
第1級アミノ基を2個有するシリコーン化合物としては、第1級アミノ基を両末端に有するシリコーン化合物が好ましく、第1級アミノ基を両末端に有するポリジメチルシロキサンがより好ましい。
第1級アミノ基を2個有するシリコーン化合物の第1級アミノ基当量は、特に限定されないが、好ましくは300~2,000g/mol、より好ましくは400~1,500g/mol、さらに好ましくは500~1,000g/molである。
【0085】
アミノマレイミド樹脂(B2)中における、ジアミン化合物の-NH2基由来の基の合計当量(Tb2)と、マレイミド樹脂(BX)のN-置換マレイミド基由来の基の合計当量(Tb1)との当量比(Tb2/Tb1)は、特に限定されないが、誘電特性、耐熱性、難燃性及びガラス転移温度の観点から、好ましくは0.05~10、より好ましくは1~8、さらに好ましくは3~7である。なお、上記ジアミン化合物の-NH2基由来の基とは、-NH2自体も含めるものとする。また、上記マレイミド樹脂(BX)のN-置換マレイミド基由来の基とは、N-置換マレイミド基自体も含めるものとする。
【0086】
アミノマレイミド樹脂(B2)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、取り扱い性及び成形性の観点から、好ましくは400~10,000、より好ましくは1,000~5,000、さらに好ましくは1,500~4,000、特に好ましくは2,000~3,000である。
【0087】
(アミノマレイミド樹脂(B2)の製造方法)
アミノマレイミド樹脂(B2)は、例えば、マレイミド樹脂(BX)とジアミン化合物とを有機溶媒中で反応させることによって製造することができる。
マレイミド樹脂(BX)とジアミン化合物とを反応させることによって、マレイミド樹脂(BX)とジアミン化合物とがマイケル付加反応してなるアミノマレイミド樹脂(B2)が得られる。
反応条件は、使用する原料の種類等に応じて適宜調整することができ、特に限定されない。
【0088】
((B)熱硬化性樹脂の含有量)
本実施形態の樹脂組成物において、(B)熱硬化性樹脂の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の樹脂組成物中の樹脂成分の総量(100質量%)に対して、好ましくは20~95質量%、より好ましくは50~90質量%、さらに好ましくは65~85質量%である。
(B)熱硬化性樹脂の含有量が上記下限値以上であると、耐熱性、成形性、加工性及び導体接着性がより良好になり易い傾向にある。また、(B)熱硬化性樹脂の含有量が上記上限値以下であると、誘電特性がより良好になり易い傾向にある。
【0089】
ここで、本明細書において、「樹脂成分」とは、樹脂及び硬化反応によって樹脂を形成する化合物を意味する。
本実施形態の樹脂組成物においては、例えば、(A)成分、(B)成分及び(C)成分が樹脂成分に相当する。
本実施形態の樹脂組成物が、任意成分として、上記成分以外に樹脂又は硬化反応によって樹脂を形成する化合物を含有する場合、これらの任意成分も樹脂成分に含まれる。樹脂成分に該当する任意成分としては、例えば、後述する(D)成分が挙げられる。
一方、(E)成分、(F)成分及び(G)成分は、樹脂成分には含まれないものとする。
【0090】
本実施形態の樹脂組成物中における樹脂成分の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の樹脂組成物の固形分総量(100質量%)に対して、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~60質量%、さらに好ましくは30~40質量%である。
樹脂成分の含有量が上記下限値以上であると、耐熱性、成形性、加工性及び導体接着性がより良好になり易い傾向にある。また、樹脂成分の含有量が上記上限値以下であると、低熱膨張性がより良好になり易い傾向にある。
【0091】
(B)熱硬化性樹脂中における上記マレイミド系樹脂の含有量は、特に限定されないが、(B)熱硬化性樹脂の総量(100質量%)に対して、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~100質量%、さらに好ましくは95~100質量%である。
マレイミド系樹脂の含有量が上記下限値以上であると、耐熱性、成形性、加工性及び導体接着性がより良好になり易い傾向にある。また、マレイミド系樹脂の含有量が上記上限値以下であると、誘電特性がより良好になり易い傾向にある。
【0092】
<(C)ポリフェニレンエーテル系樹脂>
(C)ポリフェニレンエーテル系樹脂は、ポリフェニレンエーテル及びその誘導体からなる群から選択される1種以上である。
本実施形態の樹脂組成物は、(C)ポリフェニレンエーテル系樹脂を含有することによって、誘電特性に優れたものになる傾向にある。
(C)ポリフェニレンエーテル系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
(C)ポリフェニレンエーテル系樹脂は、下記一般式(C-1)で表されるフェニレンエーテル単位を有するものが好ましい。
【0094】
【化20】
(式中、R
C1は、炭素数1~5の炭化水素基又はハロゲン原子である。n
C1は、0~4の整数である。)
【0095】
上記一般式(C-1)中のRC1が表す炭素数1~5の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。炭素数1~5の炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。該炭素数1~5の炭化水素基としては、炭素数1~3の炭化水素基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0096】
上記一般式(C-1)中のnC1は0~4の整数であり、好ましくは1又は2、より好ましくは2である。なお、nC1が1又は2である場合、RC1の置換位置は、酸素原子の置換位置を基準として、ベンゼン環上のオルト位に置換していることが好ましい。また、nC1が2以上の整数である場合、複数のRC1同士は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記一般式(C-1)で表されるフェニレンエーテル単位は、下記一般式(C-1’)で表されるフェニレンエーテル単位であることが好ましい。
【0097】
【0098】
(C)ポリフェニレンエーテル系樹脂は、耐熱性の観点から、エチレン性不飽和結合を含む官能基[以下、「エチレン性不飽和結合含有基」と称する場合がある。]を有するポリフェニレンエーテル誘導体であることが好ましい。
なお、本明細書において「エチレン性不飽和結合」とは、付加反応が可能な炭素-炭素二重結合を意味し、芳香環の二重結合は含まないものとする。
【0099】
エチレン性不飽和結合含有基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-メチルアリル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、スチリル基、マレイミド基、下記一般式(C-2)で表される基等が挙げられる。
【0100】
【化22】
(式中、R
C2は、水素原子又は炭素数1~20のアルキル基である。)
【0101】
上記一般式(C-2)中のRC2が表す炭素数1~20のアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1である。
炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基等が挙げられる。炭素数1~20のアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよいが、直鎖状であることが好ましい。
なお、RC2が水素原子である上記一般式(C-2)で表される基は、アクリロイル基に相当し、RC2がメチル基である上記一般式(C-2)で表される基は、メタクリロイル基に相当する。
【0102】
以上の中でも、(C)ポリフェニレンエーテル系樹脂が有するエチレン性不飽和結合含有基としては、誘電特性の観点から、上記一般式(C-2)で表される基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましく、メタクリロイル基がさらに好ましい。
【0103】
(C)ポリフェニレンエーテル系樹脂が1分子中に有するエチレン性不飽和結合含有基の数は、特に限定されないが、好ましくは1~5個、より好ましくは2~3個、さらに好ましくは2個である。
エチレン性不飽和結合含有基の数が上記下限値以上であると、耐熱性がより良好になり易い傾向にある。また、エチレン性不飽和結合含有基の数が上記上限値以下であると、流動性及び成形性がより良好になり易い傾向にある。
【0104】
(C)ポリフェニレンエーテル系樹脂は、エチレン性不飽和結合含有基を少なくとも片末端に有することが好ましく、両末端に有することがより好ましい。
(C)ポリフェニレンエーテル系樹脂は、末端以外にもエチレン性不飽和結合含有基を有していてもよいが、末端のみにエチレン性不飽和結合含有基を有することが好ましい。
【0105】
(C)ポリフェニレンエーテル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは500~7,000、より好ましくは800~5,000、さらに好ましくは1,000~3,000、特に好ましくは1,200~2,500である。
(C)ポリフェニレンエーテル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が上記下限値以上であると、誘電特性及び耐熱性がより良好になり易い傾向にある。また、(C)ポリフェニレンエーテル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が上記上限値以下であると、成形性がより良好になり易い傾向にある。
【0106】
(C)ポリフェニレンエーテル系樹脂の合成方法は、公知のポリフェニレンエーテルの合成方法及び変性方法を適用することができ、特に限定されない。
【0107】
本実施形態の樹脂組成物中における(C)ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の樹脂組成物中の樹脂成分の総量(100質量%)に対して、好ましくは1~30質量%、より好ましくは2~15質量%、さらに好ましくは4~10質量%である。
(C)ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量が、上記下限値以上であると、誘電特性がより良好になり易い傾向にある。また、(C)ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量が、上記上限値以下であると、耐熱性及び難燃性がより良好になり易い傾向にある。
【0108】
<(D)スチレン系熱可塑性樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、さらに、(D)スチレン系熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、(D)スチレン系熱可塑性樹脂を含有することによって、より誘電特性に優れたものになる傾向にある。
(D)スチレン系熱可塑性樹脂としては、スチレン系化合物由来の構造単位を有する熱可塑性樹脂であれば特に制限はない。
なお、本明細書中、「構造単位」は単量体が重合することによって形成された該単量体に由来する単位を意味する。
(D)スチレン系熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0109】
(D)スチレン系熱可塑性樹脂は、スチレン系化合物由来の構造単位を有する。
スチレン系化合物としては、例えば、スチレン;α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン等のアルキル置換スチレンなどが挙げられる。アルキル置換スチレンが有するアルキル基の炭素数としては、特に限定されないが、好ましくは1~5、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1又は2である。
【0110】
(D)スチレン系熱可塑性樹脂は、スチレン系化合物由来の構造単位以外の構造単位を含有していてもよい。
(D)スチレン系熱可塑性樹脂が有するスチレン系化合物由来の構造単位以外の構造単位としては、例えば、ブタジエン由来の構造単位、イソプレン由来の構造単位、マレイン酸由来の構造単位、無水マレイン酸由来の構造単位等が挙げられる。
上記ブタジエン由来の構造単位及び上記イソプレン由来の構造単位は、水素添加されていてもよい。水素添加されている場合、ブタジエン由来の構造単位はエチレン単位とブチレン単位とが混合した構造単位となり、イソプレン由来の構造単位はエチレン単位とプロピレン単位とが混合した構造単位となる。
【0111】
(D)スチレン系熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物は、ブタジエンブロック中の炭素-炭素二重結合を完全水添してなるSEBSと、ブタジエンブロック中の1,2-結合部位の炭素-炭素二重結合を部分水添してなるSBBSが挙げられる。なお、SEBSにおける完全水添とは、通常、全体の炭素-炭素二重結合の水添率が、90%以上であり、95%以上であってもよく、99%以上であってもよく、100%であってもよい。また、SBBSにおける部分水添率は、例えば、全体の炭素-炭素二重結合に対して60~85%である。スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物は、ポリイソプレン部が水素添加され、SEPSとして得られる。
これらの中でも、誘電特性、導体接着性、耐熱性、ガラス転移温度及び低熱膨張性の観点から、SEBS、SEPSが好ましく、SEBSがより好ましい。
【0112】
上記SEBSにおいて、スチレン系化合物由来の構造単位の含有率[以下、「スチレン含有率」と称する場合がある。]は、特に限定されないが、好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~50質量%、さらに好ましくは20~40質量%である。
【0113】
(D)スチレン系熱可塑性樹脂は、無水マレイン酸等によって酸変性されたものであってもよい。酸変性された(D)スチレン系熱可塑性樹脂の酸価は、特に限定されないが、好ましくは2~20mgCH3ONa/g、より好ましくは5~15mgCH3ONa/g、さらに好ましくは7~13mgCH3ONa/gである。
【0114】
(D)スチレン系熱可塑性樹脂の数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、好ましくは10,000~500,000、より好ましくは50,000~350,000、さらに好ましくは100,000~200,000である。
【0115】
本実施形態の樹脂組成物が(D)スチレン系熱可塑性樹脂を含有する場合、(D)スチレン系熱可塑性樹脂の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の樹脂組成物中の樹脂成分の総量(100質量%)に対して、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~40質量%、さらに好ましくは10~20質量%である。
(D)スチレン系熱可塑性樹脂の含有量が上記下限値以上であると、誘電特性がより良好になり易い傾向にある。また、(D)スチレン系熱可塑性樹脂の含有量が上記上限値以下であると、耐熱性及び難燃性がより良好になり易い傾向にある。
【0116】
<(E)硬化促進剤>
本実施形態の樹脂組成物は、樹脂組成物の硬化反応を促進させるという観点から、さらに、(E)硬化促進剤を含有することが好ましい。
(E)硬化促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
(E)硬化促進剤としては、例えば、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、有機金属塩、酸性触媒、有機過酸化物等が挙げられる。なお、本実施形態において、イミダゾール系硬化促進剤は、アミン系硬化促進剤に分類しないものとする。
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン、ジシアンジアミド等の第1級~第3級アミンを有するアミン化合物;第4級アンモニウム化合物などが挙げられる。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート樹脂と2-エチル-4-メチルイミダゾールの付加反応物等のイソシアネートマスクイミダゾールなどが挙げられる。
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン等の第3級ホスフィン;p-ベンゾキノンのトリ-n-ブチルホスフィン付加反応物等の第4級ホスホニウム化合物などが挙げられる。
有機金属塩としては、例えば、マンガン、コバルト、亜鉛等のカルボン酸塩などが挙げられる。
酸性触媒としては、例えば、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3,2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、α,α’-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。
これらの中でも、誘電特性、耐熱性、導体との接着性及び弾性率の観点から、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、リン系硬化促進剤が好ましく、ジシアンジアミド、イミダゾール系硬化促進剤、第4級ホスホニウム化合物がより好ましく、これらを併用することがさらに好ましい。
【0118】
本実施形態の樹脂組成物が(E)硬化促進剤を含有する場合、その含有量は、(B)熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部、さらに好ましくは1~3質量部である。
(E)硬化促進剤の含有量が、上記下限値以上であると、十分な硬化促進効果が得られ易い傾向にある。また、(E)硬化促進剤の含有量が、上記上限値以下であると、保存安定性がより良好になり易い傾向にある。
【0119】
<(F)無機充填材>
本実施形態の樹脂組成物は、さらに、(F)無機充填材を含有することが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、(F)無機充填材を含有することによって、より優れた低熱膨張性及び耐熱性が得られ易い傾向にある。
(F)無機充填材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
(F)無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素等が挙げられる。これらの中でも、低熱膨張性、耐熱性及び難燃性の観点から、シリカ、アルミナ、マイカ、タルクが好ましく、シリカ、アルミナがより好ましく、シリカがさらに好ましい。シリカとしては、分散性及び成形性の観点から、溶融シリカが好ましい。
【0121】
(F)無機充填材の平均粒子径(D50)は、特に限定されないが、(F)無機充填材の分散性及び微細配線性の観点から、好ましくは0.01~20μm、より好ましくは0.1~10μm、さらに好ましくは0.2~1μm、特に好ましくは0.3~0.8μmである。
なお、本明細書において(F)無機充填材の平均粒子径(D50)は、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒子径のことである。(F)無機充填材の平均粒子径は、例えば、レーザー回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
(F)無機充填材の形状としては、例えば、球状、破砕状等が挙げられ、球状が好ましい。
【0122】
本実施形態の樹脂組成物には、(F)無機充填材の分散性及び(F)無機充填材と有機成分との密着性を向上させる目的で、カップリング剤を用いてもよい。カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等が挙げられる。
【0123】
本実施形態の樹脂組成物が(F)無機充填材を含有する場合、(F)無機充填材の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物の固形分総量(100質量%)に対して、好ましくは20~80質量%、より好ましくは40~70質量%、さらに好ましくは50~60質量%である。
(F)無機充填材の含有量が上記下限値以上であると、低熱膨張性及び耐熱性がより良好になり易い傾向にある。また、(F)無機充填材の含有量が上記上限値以下であると、成形性及び導体接着性がより良好になり易い傾向にある。
【0124】
<(G)難燃剤>
本実施形態の樹脂組成物は、さらに、(G)難燃剤を含有することが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、(G)難燃剤を含有することによって、難燃性がより向上する傾向にある。
(G)難燃剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、必要に応じて難燃助剤を含有させてもよい。
【0125】
(G)難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、金属水和物、ハロゲン系難燃剤等が挙げられ、これらの中でも、リン系難燃剤が好ましい。
リン系難燃剤は、無機系のリン系難燃剤であってもよいし、有機系のリン系難燃剤であってもよい。
無機系のリン系難燃剤としては、例えば、赤リン;リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム;リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物;リン酸;ホスフィンオキシドなどが挙げられる。
有機系のリン系難燃剤としては、例えば、芳香族リン酸エステル化合物、1置換ホスホン酸ジエステル化合物、2置換ホスフィン酸エステル化合物、2置換ホスフィン酸の金属塩、有機系含窒素リン化合物、環状有機リン化合物等が挙げられる。これらの中でも、芳香族リン酸エステル化合物が好ましい。
芳香族リン酸エステル化合物としては、例えば、4,4’-ビフェノール-ジフェニルホスフェート、ビスフェノールA-ジフェニルホスフェート、4,4’-ビフェノール-ジクレジルホスフェート、ビスフェノールA-ジクレジルホスフェート、4,4’-ビフェノール-ジ(2,6-キシレニルホスフェート)、ビスフェノールA-ジ(2,6-キシレニルホスフェート)、4,4’-ビフェノール-ポリフェニルホスフェート、ビスフェノールA-ポリフェニルホスフェート、4,4’-ビフェノール-ポリクレジルホスフェート、ビスフェノールA-ポリクレジルホスフェート、4,4’-ビフェノール-ポリ(2,6-キシレニルホスフェート)、ビスフェノールA-ポリ(2,6-キシレニルホスフェート)等が挙げられる。これらの中でも、高周波特性、導体との接着性及び難燃性の観点から、4,4’-ビフェノール-ジ(2,6-キシレニルホスフェート)が好ましい。
【0126】
本実施形態の樹脂組成物が(G)難燃剤を含有する場合、(G)難燃剤の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の樹脂組成物中の樹脂成分の総和100質量部に対して、好ましくは1~40質量部、より好ましくは2~30質量部、さらに好ましくは4~25質量部、よりさらに好ましくは7~20質量部、特に好ましくは10~18質量部である。
(G)難燃剤の含有量が上記下限値以上であると、難燃性がより良好になり易い傾向にある。また、(G)難燃剤の含有量が上記上限値以下であると、耐熱性がより良好になり易い傾向にある。
【0127】
<その他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、さらに必要に応じて、上記各成分以外の樹脂材料、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、滑剤及びこれら以外の添加剤からなる群から選択される1種以上を含有していてもよい。これらは各々について、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの使用量は特に限定されず、必要に応じて、本実施形態の効果を阻害しない範囲で使用すればよい。
【0128】
(有機溶媒)
本実施形態の樹脂組成物は、取り扱いを容易にするという観点から、有機溶媒を含有していてもよい。
有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本明細書中、有機溶媒を含有する樹脂組成物を、樹脂ワニスと称することがある。
【0129】
有機溶媒としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒;γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒などが挙げられる。
これらの中でも、溶解性の観点から、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、窒素原子含有溶媒、芳香族炭化水素系溶媒が好ましく、芳香族炭化水素系溶媒がより好ましく、トルエンがさらに好ましい。
【0130】
[樹脂フィルム]
本実施形態の樹脂フィルムは、本実施形態の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含有する樹脂フィルムである。
本実施形態の樹脂フィルムは、例えば、有機溶媒を含有する本実施形態の樹脂組成物、つまり樹脂ワニスを支持体に塗布してから、加熱乾燥させることによって製造することができる。
支持体としては、例えば、プラスチックフィルム、金属箔、離型紙等が挙げられる。
加熱乾燥の温度及び時間は、特に限定されないが、生産性及び本実施形態の樹脂組成物を適度にB-ステージ化させるという観点から、50~200℃、1~30分間とすることができる。
【0131】
本実施形態の樹脂フィルムは、プリント配線板を製造する場合において、絶縁層を形成するために用いられることが好ましい。
【0132】
[樹脂付き金属箔]
本実施形態の樹脂付き金属箔は、金属箔と、該金属箔の一方の面に積層された本実施形態の樹脂フィルムと、を有する樹脂付き金属箔である。
本実施形態の樹脂付き金属箔が有する本実施形態の樹脂フィルムの好適な態様の説明は上記の通りである。
金属箔の金属としては、特に限定されず、例えば、銅、金、銀、ニッケル、白金、モリブデン、ルテニウム、アルミニウム、タングステン、鉄、チタン、クロム、これらの金属元素を1種以上含有する合金等が挙げられる。
本実施形態の樹脂付き金属箔は、上記した本実施形態の樹脂フィルムの製造方法において、支持体として金属箔を用いることによって製造することができる。
【0133】
[積層板]
本実施形態の積層板は、本実施形態の樹脂組成物の硬化物と、金属箔と、を有する積層板である。
なお、金属箔を有する積層板は、金属張積層板と称されることもある。
【0134】
金属箔の金属としては、本実施形態の樹脂付き金属箔に用いるものと同じものが挙げられる。
【0135】
本実施形態の積層板は、例えば、本実施形態の樹脂付き金属箔を積層し、加熱加圧成形することによって製造することができる。
加熱加圧成形は、例えば、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用することができる。
加熱加圧成形の条件は、特に限定されないが、例えば、温度100~300℃、時間10~300分間、圧力1.5~5MPaとすることができる。
【0136】
[プリント配線板]
本実施形態のプリント配線板は、本実施形態の樹脂組成物の硬化物を有するプリント配線板である。
本実施形態のプリント配線板は、例えば、本実施形態の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層に対して、公知の方法によって、導体回路形成を行うことによって製造することができる。本実施形態の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層は、例えば、本実施形態の樹脂フィルム、本実施形態の樹脂付き金属箔等を用いて形成することができる。
また、さらに必要に応じて多層化接着加工を施すことによって、多層プリント配線板を製造することもできる。導体回路は、例えば、穴開け加工、金属めっき加工、金属箔のエッチング等を適宜施すことによって形成することができる。
【0137】
[半導体パッケージ]
本実施形態の半導体パッケージは、本実施形態のプリント配線板と、半導体素子と、を有する半導体パッケージである。
本実施形態の半導体パッケージは、例えば、本実施形態のプリント配線板に、公知の方法によって、半導体チップ、メモリ等を搭載することによって製造することができる。
【実施例0138】
以下、実施例を挙げて、本実施形態を具体的に説明する。ただし、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0139】
なお、各例において、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は以下の方法によって測定した。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した。検量線は、標準ポリスチレン:TSKstandard POLYSTYRENE(Type;A-2500、A-5000、F-1、F-2、F-4、F-10、F-20、F-40)[東ソー株式会社製、商品名]を用いて3次式で近似した。GPCの測定条件を、以下に示す。
装置:
ポンプ:L-6200型[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
検出器:L-3300型RI[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
カラムオーブン:L-655A-52[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
カラム:ガードカラム;TSK Guardcolumn HHR-L+カラム;TSKgel G4000HHR+TSKgel G2000HHR(すべて東ソー株式会社製、商品名)
カラムサイズ:6.0×40mm(ガードカラム)、7.8×300mm(カラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:30mg/5mL
注入量:20μL
流量:1.00mL/分
測定温度:40℃
【0140】
製造例1:アミノマレイミド樹脂の製造
温度計、撹拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積5リットルの反応容器に、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン100質量部と、第1級アミノ基を両末端に有するシリコーン化合物(第1級アミノ基当量750g/mol)5.6質量部と、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン7.9質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル171質量部と、を投入し、還流させながら2時間反応させた。これを還流温度にて3時間かけて濃縮し、固形分濃度が65質量%のアミノマレイミド樹脂の溶液を製造した。得られたアミノマレイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、約2,700であった。
【0141】
実施例1~4、比較例1
(樹脂組成物の製造)
表1に記載の各成分を表1に記載の配合組成に従って、トルエン58質量部及びメチルイソブチルケトン10質量部と共に、室温(25℃)で撹拌及び混合して、固形分濃度55~65質量%の樹脂ワニスを調製した。なお、表1中、各成分の配合量の単位は質量部であり、溶液の場合は、固形分換算の質量部を意味する。
【0142】
(樹脂フィルムの製造)
上記で得た樹脂ワニスを、厚さ38μmのPETフィルム(帝人株式会社製、商品名「G2-38」)に、乾燥後の樹脂フィルムの厚さが20μmになるように塗布した後、170℃で5分間加熱乾燥することによって、B-ステージ状態の樹脂フィルムを作製した。
【0143】
(両面銅箔付き樹脂板の製造)
上記で得た樹脂フィルムをPETフィルムから剥離した後、粉砕してB-ステージ状態の樹脂粉末とした。50mm×35mmのサイズで型抜きをした厚さ1mm又は0.3mmのテフロン(登録商標)シートを銅箔の上に配置し、型抜きをした部分に樹脂粉末を投入した。さらに、その上に銅箔を配置し、積層物を得た。なお、銅箔は、厚さ18μmのロープロファイル銅箔(三井金属鉱業株式会社製、商品名「3EC-VLP-18」)を使用し、M面が樹脂粉末側になるように配置した。続いて積層物を、温度230℃、圧力2.0MPa、時間120分間の条件で加熱加圧成形し、樹脂粉末を樹脂板に成形しつつ硬化させることによって、両面銅箔付き樹脂板を作製した。
【0144】
[評価方法]
下記方法に従って各評価を行った。結果を表1に示す。
【0145】
(曲げ強度の測定方法)
各例で得た、樹脂板の厚さが1mmである両面銅箔付き樹脂板をエッチング液に浸漬することによって両面の銅箔を除去し、5mm×50mmに切り出したものを試験片として、下記条件で3点曲げ試験を行った。3点曲げ試験において試験片が破壊に至るまでの最大荷重に基づいて曲げ強度を求めた。
・測定装置:株式会社島津製作所製、製品名「オートグラフ AG-IS」
・ヘッド速度:0.76mm/min
・支点間距離:25.4mm
・測定温度:室温(25℃)
【0146】
(260℃貯蔵弾性率E’の測定方法)
各例で得た、樹脂板の厚さが0.3mmである両面銅箔付き樹脂板をエッチング液に浸漬することによって両面の銅箔を除去し、5mm×40mmに切り出したものを試験片とした。該試験片を測定対象として、動的粘弾性測定装置(株式会社UBM製、商品名「Rheogel-E4000」)を用いて、測定温度領域25~320℃、昇温速度5℃/分、周波数10Hzの条件下で、貯蔵弾性率E’を測定し、260℃における貯蔵弾性率E’を取得した。
【0147】
(銅箔ピール強度の測定方法)
各例で得た、樹脂板の厚さが0.3mmである両面銅箔付き樹脂板の銅箔をエッチングによって3mm幅の直線ライン状に加工したものを試験片とした。形成した直線ライン状の銅箔を小型卓上試験機(株式会社島津製作所製、商品名「EZ-TEST」)に取り付け、室温(25℃)にて、90°方向に引き剥がすことによって銅箔ピール強度を測定した。なお、銅箔を引き剥がす際の引っ張り速度は50mm/minとした。
【0148】
(比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の測定方法)
各例で得た、樹脂板の厚さが0.3mmである両面銅箔付き樹脂板を、銅エッチング液である過硫酸アンモニウム(三菱ガス化学株式会社製)10質量%溶液に浸漬することによって銅箔を除去した。得られた樹脂板を2mm×50mmに切り出した後、105℃で1時間乾燥したものを試験片とした。次いで、空洞共振器摂動法に準拠して、雰囲気温度25℃、10GHz帯にて、上記試験片の比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)を測定した。
【0149】
(はんだ耐熱性の評価方法)
各例で得た、樹脂板の厚さが0.3mmである両面銅箔付き樹脂板の一方の表面のみ半面銅を残し、他方の表面については銅エッチング液に浸漬して全面銅を除去し、40mm×40mmの試験片を作製した。次いで、該試験片を、プレッシャークッカー(株式会社平山製作所製、商品名「HA-300M」)を用い、121℃、0.11MPaの条件で、5時間吸湿処理を行った。処理後の試験片及び未処理の試験片を、288℃の溶融はんだ槽に20秒間浸漬した後、試験片の外観を目視観察し、以下の基準に従ってはんだ耐熱性を評価した。
A:膨れが観察されなかった。
B:膨れが観察された。
【0150】
【0151】
なお、表1に示す各成分の詳細は、以下のとおりである。
【0152】
[(A)成分]
・ベンゾオキサジン樹脂:3,3’-(メチレン-1,4-ジフェニレン)ビス(3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン)、P-d型ベンゾオキサジン化合物とも称され、上記式(A-4)で表される化合物である。
【0153】
[(B)成分]
・マレイミド系樹脂:製造例1で調製したアミノマレイミド樹脂
【0154】
[(C)成分]
・ポリフェニレンエーテル誘導体:両末端にメタクリロイル基を有するポリフェニレンエーテル誘導体(上記一般式(C-4)に包含される化合物、重量平均分子量(Mw)1,700)
【0155】
[(D)成分]
・スチレン系熱可塑性樹脂:無水マレイン酸変性水添スチレン系エラストマー(SEBS)、酸価10mgCH3ONa/g、スチレン含有率30質量%
【0156】
[(E)成分]
・硬化促進剤1:p-ベンゾキノンのトリ-n-ブチルホスフィン付加反応物
・硬化促進剤2:2-ウンデシルイミダゾール
・硬化促進剤3:ジシアンジアミド
【0157】
[(F)成分]
・シリカ:平均粒子径0.5μmの球状溶融シリカ
【0158】
[(G)成分]
・リン系難燃剤:4,4’-ビフェノール-ビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート)
【0159】
表1から、本実施形態の実施例1~4の樹脂組成物は、ベンゾオキサジン樹脂を含有しない比較例1の樹脂組成物よりも、曲げ強度が高く、靭性に優れていることが分かる。