(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061227
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】ウエハ温度制御装置、ウエハ温度制御方法及びウエハ温度制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240425BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20240425BHJP
G05D 23/00 20060101ALI20240425BHJP
G05D 23/19 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H05B3/00 310C
G05D23/00 B
G05D23/19 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169033
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】林 大介
(72)【発明者】
【氏名】瀧尻 興太郎
【テーマコード(参考)】
3K058
5F131
5H323
【Fターム(参考)】
3K058AA42
3K058AA71
3K058BA14
3K058CA14
3K058CB12
5F131AA02
5F131BB03
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5F131KA72
5H323AA01
5H323AA38
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5H323GG01
5H323KK05
5H323NN02
(57)【要約】
【課題】熱伝達ガスの圧力を調整することで、ウエハの温度を制御するものにおいて、ウエハ温度を十分な精度で推定し、ウエハ温度を目標温度に制御する。
【解決手段】温度調整されたプレート2にウエハWが載置され、プレート2とウエハWとの間に熱伝達ガスを供給して、ウエハWの温度を制御するウエハ温度制御装置100であって、熱伝達ガスの圧力を調整する圧力調整器43と、ウエハWの近傍温度を測定する近傍温度センサ5と、近傍温度センサ5により測定される近傍温度と圧力調整器43に入力される圧力操作量又は圧力調整器により調整される圧力とに基づいて、ウエハWの温度を推定する温度推定オブザーバ10と、設定温度と温度推定オブザーバ10により推定される推定ウエハ温度とに基づいて、圧力操作量を制御する制御器11とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度調整されたプレートにウエハが載置され、前記プレートと前記ウエハとの間に熱伝達ガスを供給して、前記ウエハの温度を制御するウエハ温度制御装置であって、
前記熱伝達ガスの圧力を調整する圧力調整器と、
前記ウエハの近傍温度を測定する近傍温度センサと、
前記近傍温度センサにより測定される近傍温度と前記圧力調整器に入力される圧力操作量又は前記圧力調整器により調整される圧力とに基づいて、前記ウエハの温度を推定する温度推定オブザーバと、
前記ウエハの設定温度と前記温度推定オブザーバにより推定される推定ウエハ温度とに基づいて、前記圧力操作量を制御する制御器とを備える、ウエハ温度制御装置。
【請求項2】
前記温度推定オブザーバは、前記ウエハの温度と前記熱伝達ガスの圧力との関係を線形とした状態空間モデルを用いたものであり、
前記制御器は、予め取得された前記ウエハの温度と前記熱伝達ガスの圧力との非線形な関係を用いて、前記設定温度を補正し、その補正後の設定温度と前記推定ウエハ温度との温度偏差が小さくなるように前記圧力操作量を制御する、請求項1に記載のウエハ温度制御装置。
【請求項3】
前記制御器は、
予め取得された前記ウエハの温度と前記熱伝達ガスの圧力との非線形な関係を示す非線形関係データと、前記温度推定オブザーバの状態空間モデルで用いられる前記ウエハの温度と前記熱伝達ガスの圧力との線形な関係を示す線形関係データとを格納する関係データ格納部を有しており、
前記設定温度と前記非線形関係データとから、前記設定温度に非線形に対応する換算圧力を求め、
前記換算圧力と前記線形関係データとから、前記換算圧力に線形に対応する換算温度を求め、当該換算温度を前記補正後の設定温度とする、請求項2に記載のウエハ温度制御装置。
【請求項4】
前記温度推定オブザーバが、
前記ウエハの温度と前記近傍温度とを出力変数とする線形の状態空間モデルである温度推定モデルと、
前記温度推定モデルに基づいて推定された前記推定ウエハ温度を出力するウエハ温度出力部と、
前記温度推定モデルに基づいて推定された推定近傍温度を出力する近傍温度出力部と、
オブザーバゲインと、を備え、
前記近傍温度出力部から出力される推定近傍温度と、前記近傍温度センサにより測定される近傍温度との偏差又は偏差から算出される値に前記オブザーバゲインが乗じられた値が、前記温度推定モデル内にフィードバックされるように構成された、請求項1乃至3の何れか一項に記載のウエハ温度制御装置。
【請求項5】
前記温度推定オブザーバが、
前記ウエハの温度と前記近傍温度とを出力変数とする線形の状態空間モデルである温度推定モデルと、
前記温度推定モデルに基づいて推定された前記推定ウエハ温度を出力するウエハ温度出力部と、
前記温度推定モデルに基づいて推定された推定近傍温度を出力する近傍温度出力部と、
前記近傍温度出力部から出力される推定近傍温度を前記プレートの温度の非線形特性を考慮して補正する近傍温度補正部と、
オブザーバゲインと、を備え、
前記近傍温度補正部から出力される補正された推定近傍温度と、前記近傍温度センサにより測定される近傍温度との偏差又は偏差から算出される値に前記オブザーバゲインが乗じられた値が、前記温度推定モデル内にフィードバックされるように構成された、請求項1乃至3の何れか一項に記載のウエハ温度制御装置。
【請求項6】
前記温度推定オブザーバは、温度調整された前記プレートの温度に応じた前記温度推定モデルを備える、請求項4又は5に記載のウエハ温度制御装置。
【請求項7】
温度調整されたプレートにウエハを載置し、前記プレートと前記ウエハとの間に熱伝達ガスを供給して、前記ウエハの温度を制御するウエハ温度制御方法であって、
前記熱伝達ガスの圧力を圧力調整器により調整し、
前記ウエハの近傍温度を近傍温度センサにより測定し、
前記近傍温度センサにより測定される近傍温度と前記圧力調整器に入力される圧力操作量又は前記圧力調整器により調整される圧力とに基づいて、温度推定オブザーバを用いて前記ウエハの温度を推定し、
前記ウエハの設定温度と前記温度推定オブザーバにより推定される推定ウエハ温度とに基づいて、前記圧力操作量を制御する、ウエハ温度制御方法。
【請求項8】
温度調整されたプレートにウエハが載置され、前記プレートと前記ウエハとの間に熱伝達ガスを供給して、前記ウエハの温度を制御するものであり、前記熱伝達ガスの圧力を調整する圧力調整器と、前記ウエハの近傍温度を測定する近傍温度センサとを備えるウエハ温度制御装置に用いられるウエハ温度制御プログラムであって、
前記近傍温度センサにより測定される近傍温度と前記圧力調整器に入力される圧力操作量又は前記圧力調整器により調整される圧力とに基づいて、前記ウエハの温度を推定する温度推定オブザーバとしての機能、
前記ウエハの設定温度と前記温度推定オブザーバにより推定される推定ウエハ温度とに基づいて、前記圧力操作量を制御する制御器としての機能をコンピュータに備えさせる、ウエハ温度制御プログラム。
【請求項9】
入力される温度操作量に応じてウエハを温度調整する温度調整器と、
前記ウエハの近傍温度を測定する近傍温度センサと、
前記近傍温度センサにより測定される近傍温度と前記温度調整器に入力される温度操作量又は前記温度調整器の温度とに基づいて、前記ウエハの温度を推定する温度推定オブザーバと、
前記ウエハの設定温度と前記温度推定オブザーバにより推定される推定ウエハ温度とに基づいて、前記温度操作量を制御する制御器とを備え、
前記温度推定オブザーバは、前記ウエハの温度と前記温度調整器の温度との関係を線形とした状態空間モデルを用いたものであり、
前記制御器は、予め取得された前記ウエハの温度と前記温度調整器の温度との非線形な関係を用いて、前記設定温度を補正し、その補正後の設定温度と前記推定ウエハ温度との温度偏差が小さくなるように前記温度操作量を制御する、ウエハ温度制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ温度制御装置、ウエハ温度制御方法及びウエハ温度制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば成膜処理等の半導体製造プロセスでは、処理対象であるウエハを静電チャック等のプレート上に載置して行われる。ここで、静電チャック等のプレートは、ウエハの温度を所定の目標温度に制御すべく、温度調整されている。
【0003】
そして、ウエハが載置されたプレートは、真空等の低圧な環境下に配置されることから、特許文献1に示すように、温度調整されているプレートからウエハへの熱伝達を促進するために、プレートとウエハとの間にヘリウムガス等の熱伝達ガスを供給するものが考えられている。
【0004】
ここで、プレートとウエハとの間に供給される熱伝達ガスの圧力により熱伝達率が異なるため、その熱伝達ガスの圧力を調整する必要がある。
【0005】
しかしながら、熱伝達ガスの圧力を調整しても、プレートに載置されたウエハ自体の温度を測定することは、様々な技術的な制約から難しい。
【0006】
なお、特許文献2に示すように、ステージ内に温度センサを設けて、ウエハ近傍部分の温度を測定し、オブザーバによってウエハ上に形成されている電子デバイスの温度を推定する温度制御装置が考えられている。
【0007】
ところが、この温度制御装置は、そもそも熱伝達ガスをステージ及びウエハの間に供給するものの対象としておらず、また、オブザーバは熱伝達ガスの圧力を入力変数としていないので、十分な精度でウエハ温度を推定して、ウエハ温度を目標温度で一定に制御することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4034344号公報
【特許文献2】特開2021-19066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は上述した問題を解決すべくなされたものであり、熱伝達ガスの圧力を調整することでウエハの温度を制御するものにおいて、ウエハの温度を十分な精度で推定し、ウエハの温度を目標温度に制御することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明に係るウエハ温度制御装置は、温度調整されたプレートにウエハが載置され、前記プレートと前記ウエハとの間に熱伝達ガスを供給して、前記ウエハの温度を制御するウエハ温度制御装置であって、前記熱伝達ガスの圧力を調整する圧力調整器と、前記ウエハの近傍温度を測定する近傍温度センサと、前記近傍温度センサにより測定される近傍温度と前記圧力調整器に入力される圧力操作量又は前記圧力調整器により調整される圧力とに基づいて、前記ウエハの温度を推定する温度推定オブザーバと、前記ウエハの設定温度と前記温度推定オブザーバにより推定される推定ウエハ温度とに基づいて、前記圧力操作量を制御する制御器とを備えることを特徴とする。
【0011】
このようなウエハ温度制御装置であれば、熱伝達ガスの圧力を入力変数とする温度推定オブザーバを用いてウエハの温度を推定しているので、ウエハの温度を十分な精度で推定することができる。また、ウエハの設定温度と温度推定オブザーバにより推定される推定ウエハ温度とに基づいて、熱伝達ガスの圧力を調整する圧力調整器に入力される圧力操作量を制御するので、ウエハ温度を目標温度に精度良く制御することができる。
【0012】
なお、プレートを温度調整するための冷却器に入力される冷却操作量又は加熱器に入力される加熱操作量を制御することも考えられるが、ウエハ温度の微調整が難しく、本発明のように、圧力調整器に入力される圧力操作量を制御するほうが、ウエハ温度の微調整が容易となる。
【0013】
ここで、近傍温度とは、例えばウエハに対して所定距離以内にある部材又は空間の温度であり、ウエハ温度と近傍温度との間で関係性を示す温度モデルを構築することが可能な温度を含む。また、近傍温度は、ウエハに直接接触している部材の温度、ウエハとの界面が存在する空間又は気体の温度、又は、ウエハWに対して数μmの隙間を介して存在している部材の温度を含む。さらに、近傍温度は、ウエハとの間で伝導、対流又は放射の少なくとも1つによって熱の伝導又は伝達が生じ得る部材の温度を含んでも良い。
【0014】
ここで、ウエハの温度を簡単なシステムにより推定するためには、前記温度推定オブザーバは、前記ウエハの温度と前記熱伝達ガスの圧力との関係を線形とした状態空間モデルを用いたものとすることが考えられる。
ところが、実環境においては、ウエハの温度と熱伝達ガスの圧力との間には非線形な関係があり、ウエハの温度と温度推定オブザーバにより推定された推定ウエハ温度とに誤差が生じてしまう。その結果、ウエハ温度を目標温度に精度良く制御することが難しい。
この問題を好適に解決するためには、前記制御器は、予め取得された前記ウエハの温度と前記熱伝達ガスの圧力との非線形な関係を用いて、前記設定温度を補正し、その補正後の設定温度と前記推定ウエハ温度との温度偏差が小さくなるように前記圧力操作量を制御することが望ましい。
【0015】
予め取得されたウエハの温度と熱伝達ガスの圧力との非線形な関係を用いてウエハの設定温度を補正する具体的な実施の態様としては、前記制御器は、予め取得された前記ウエハの温度と前記熱伝達ガスの圧力との非線形な関係を示す非線形関係データと、前記温度推定オブザーバの状態空間モデルで用いられる前記ウエハの温度と前記熱伝達ガスの圧力との線形な関係を示す線形関係データとを格納する関係データ格納部を有しており、前記設定温度と前記非線形関係データとから、前記設定温度に非線形に対応する換算圧力を求め、前記換算圧力と前記線形関係データとから、前記換算圧力に線形に対応する換算温度を求め、当該換算温度を前記補正後の設定温度とすることが考えられる。
【0016】
初期温度のずれに起因する推定ウエハ温度の推定誤差が修正されるようにして、推定ウエハ温度の推定精度を向上させるには、前記温度推定オブザーバが、前記ウエハの温度と前記近傍温度とを出力変数とする線形の状態空間モデルである温度推定モデルと、前記温度推定モデルに基づいて推定された推定近傍温度を出力する近傍温度出力部と、前記温度推定モデルに基づいて推定された前記推定ウエハ温度を出力するウエハ温度出力部と、オブザーバゲインと、を備え、前記近傍温度出力部から出力される推定近傍温度と、前記近傍温度センサにより測定される近傍温度との偏差又は偏差から算出される値に前記オブザーバゲインが乗じられた値が、前記温度推定モデル内にフィードバックされるように構成されていることが望ましい。
【0017】
また、プレートの温度の非線形性を考慮することで推定ウエハ温度の推定精度を向上させるためには、前記温度推定オブザーバが、前記ウエハの温度と前記近傍温度とを出力変数とする線形の状態空間モデルである温度推定モデルと、前記温度推定モデルに基づいて推定された推定近傍温度を出力する近傍温度出力部と、前記近傍温度出力部から出力される推定近傍温度を前記プレートの温度の非線形特性を考慮して補正する近傍温度補正部と、前記温度推定モデルに基づいて推定された前記推定ウエハ温度を出力するウエハ温度出力部と、オブザーバゲインと、を備え、前記近傍温度補正部から出力される補正された推定近傍温度と、前記近傍温度センサにより測定される近傍温度との偏差又は偏差から算出される値に前記オブザーバゲインが乗じられた値が、前記温度推定モデル内にフィードバックされるように構成されていることが望ましい。
【0018】
制御入力を簡素化しつつ、ウエハの温度を一定値に保ちやすくするためには、プレートを温度調整するための冷却器に入力される冷却操作量又は加熱器に入力される加熱操作量を一定値に設定することが考えられる。この場合、前記温度推定オブザーバは、温度調整された前記プレートの温度に応じた前記温度推定モデルを備えることが望ましい。
【0019】
また、本発明に係るウエハ温度制御方法は、温度調整されたプレートにウエハを載置し、前記プレートと前記ウエハとの間に熱伝達ガスを供給して、前記ウエハの温度を制御するウエハ温度制御方法であって、前記熱伝達ガスの圧力を圧力調整器により調整し、前記ウエハの近傍温度を近傍温度センサにより測定し、前記近傍温度センサにより測定される近傍温度と前記圧力調整器に入力される圧力操作量又は前記圧力調整器により調整される圧力とに基づいて、温度推定オブザーバを用いて前記ウエハの温度を推定し、前記ウエハの設定温度と前記温度推定オブザーバにより推定される推定ウエハ温度とに基づいて、前記圧力操作量を制御することを特徴とする。
【0020】
さらに、本発明に係るウエハ温度制御プログラムは、温度調整されたプレートにウエハが載置され、前記プレートと前記ウエハとの間に熱伝達ガスを供給して、前記ウエハの温度を制御するものであり、前記熱伝達ガスの圧力を調整する圧力調整器と、前記ウエハの近傍温度を測定する近傍温度センサとを備えるウエハ温度制御装置に用いられるウエハ温度制御プログラムであって、前記近傍温度センサにより測定される近傍温度と前記圧力調整器に入力される圧力操作量又は前記圧力調整器により調整される圧力とに基づいて、前記ウエハの温度を推定する温度推定オブザーバとしての機能、前記ウエハの設定温度と前記温度推定オブザーバにより推定される推定ウエハ温度とに基づいて、前記圧力操作量を制御する制御器としての機能をコンピュータに備えさせることを特徴とする。
【0021】
なお、ウエハ温度制御プログラムは、電子的に配信されるものであってもよいし、CD、DVD又はフラッシュメモリ等のプログラム記録媒体に記録されたものであってもよい。
【0022】
上述した本発明は、ウエハの温度と熱伝達ガスの圧力との非線形な関係を用いてウエハの設定温度を補正する態様であったが、ウエハの温度と温度調整器の温度との非線形な関係を用いてウエハの設定温度を補正する態様であっても良い。つまり、本発明に係るウエハ温度制御装置は、入力される温度操作量に応じてウエハを温度調整する温度調整器と、前記ウエハの近傍温度を測定する近傍温度センサと、前記近傍温度センサにより測定される近傍温度と前記温度調整器に入力される温度操作量又は前記温度調整器の温度とに基づいて、前記ウエハの温度を推定する温度推定オブザーバと、前記ウエハの設定温度と前記温度推定オブザーバにより推定される推定ウエハ温度とに基づいて、前記温度操作量を制御する制御器とを備え、前記温度推定オブザーバは、前記ウエハの温度と前記温度調整器の温度との関係を線形とした状態空間モデルを用いたものであり、前記制御器は、予め取得された前記ウエハの温度と前記温度調整器の温度との非線形な関係を用いて、前記設定温度を補正し、その補正後の設定温度と前記推定ウエハ温度との温度偏差が小さくなるように前記温度操作量を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
このように本発明によれば、熱伝達ガスの圧力を調整することでウエハの温度を制御するものにおいて、ウエハ温度を十分な精度で推定し、ウエハ温度を目標温度に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係るウエハ温度制御装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】ウエハ及び吸着プレートの間に供給される熱伝達ガスの圧力と、ウエハ及び吸着プレートの間の熱伝達係数との関係を示す図である。
【
図3】同実施形態におけるウエハ温度制御系を模式的に示す図である。
【
図4】同実施形態におけるウエハ制御装置の機能ブロック図である。
【
図5】同実施形態におけるウエハ温度制御装置の状態空間モデルを示す模式図である。
【
図6】ウエハの温度T
Wと熱伝達ガスの圧力P
HGとの間の線形な関係(T
W_linear)及び非線形な関係(T
W_curve)を示すグラフである。
【
図7】同実施形態における制御器の設定温度の補正方法を示す模式図である。
【
図8】同実施形態におけるウエハ温度制御装置の(a)補正しない設定温度T
SETを用いてオブザーバ制御した場合と、(b)補正した設定温度T
SET’を用いてオブザーバした場合の実験結果である。
【
図9】変形実施形態におけるウエハ制御装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明に係るウエハ温度制御装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0026】
本実施形態のウエハ温度制御装置100は、例えば成膜処理等の半導体製造プロセスを行う半導体製造装置に用いられるものであり、例えば真空チャンバ内においてウエハWの裏面を静電チャックするように構成されている。
【0027】
具体的にウエハ温度制御装置100は、
図1に示すように、上面にウエハWが載置される吸着プレート2と、吸着プレート2の温度を調整する温度調整器3とを備えている。
【0028】
吸着プレート2は、ウエハWを静電吸着力で保持するいわゆる静電チャックを構成するものである。本実施形態の吸着プレート2は、概略円板状をなすセラミックプレートであり、その上面がウエハWを吸着する吸着面2aとなる。吸着プレート2の内部には、吸着プレート2とウエハWとの間で静電力を発生させるための静電電極(図示しない)が設けられている。
【0029】
温度調整器3は、吸着プレート2の温度を予め設定された温度に温度調整するものであり、吸着プレート2を加熱する加熱器31と、吸着プレート2を冷却する冷却器32とを有している。なお、温度調整器3として加熱器31を有さない構成であっても良い。
【0030】
加熱器31は、吸着プレート2の内部に設けられており、吸着プレート2を加熱するための複数のヒータ電極31aを有する。複数のヒータ電極31aは、制御装置COMの加熱制御部(不図示)により供給される電力が制御され、ユーザが設定する加熱操作量に応じてそれぞれ独立に制御される。
【0031】
冷却器32は、吸着プレート2の下面に接触して設けられており、概略円板状をなすベースプレート32aと、ベースプレート32a内に形成された冷却流路32bとを備えている。
【0032】
冷却流路32bは、ベースプレート32aの内部において平面視において螺旋状に形成されている。この冷却流路32bには、例えばチラー等の冷却源(不図示)に繋がる導入流路32c及び導出流路32dが接続されている。また、冷却流路32bに接続される流路には、冷媒流量を制御する制御バルブ32eが設けられており、当該制御バルブ32eは、制御装置COMのバルブ制御部(不図示)によってその弁開度が制御される。
【0033】
また、本実施形態のウエハ温度制御装置100は、吸着プレート2とウエハWとの間に例えばヘリウムガス又はアルゴンガス等の熱伝達ガスを供給するガス供給機構4を備えている。
【0034】
このガス供給機構4は、吸着プレート2の吸着面2aと吸着されているウエハWの裏面との間に所定圧力の熱伝達ガスを供給するものである。
【0035】
具体的にガス供給機構4は、吸着プレート2の吸着面2aに形成されたガス流通溝41と、当該ガス流通溝41に熱伝達ガスを供給するガス供給路42と、ガス流通溝41に供給される熱伝達ガスの圧力を調整する圧力調整器43とを有している。ガス流通溝41に供給された熱伝達ガスは、当該ガス流通溝41から吸着プレート2の吸着面2aと吸着されているウエハWの裏面との間に流入する。
【0036】
ガス流通溝41は、例えば吸着プレート2の中心軸から放射状に形成された複数の直線溝と、吸着プレート2の中心軸から同士円状に形成された複数の円形溝とを有している。また、ガス供給路42は、吸着プレート2の中心軸に沿って形成されおり、熱伝達ガス源(不図示)に接続されている。
【0037】
また、圧力調整器43は、熱伝達ガスの圧力を調整することにより、吸着プレート2からウエハWへの熱伝達率(ウエハW及び吸着プレート2の間の熱伝達係数)を変化させることができる。なお、
図2にウエハW及び吸着プレート2の間に供給される熱伝達ガスの圧力と、ウエハW及び吸着プレート2の間の熱伝達係数との関係を示している。
【0038】
具体的に圧力調整器43は、圧力センサ及び圧力制御バルブを有するものであり、当該圧力制御バルブは、制御装置COMの制御器11によってその弁開度が制御される。
【0039】
また、ウエハ温度制御装置100は、ウエハWの近傍温度を測定する近傍温度センサ5を備えている。この近傍温度センサ5は、ベースプレート32aの裏面側に設けられており、ウエハWの近傍温度としてベースプレート32aの温度を測定するものである。本実施形態の近傍温度センサ5は、例えば赤外線温度センサである。なお、近傍温度センサ5は、ウエハWの近傍温度として吸着プレート2の温度を測定するものであっても良い。
【0040】
<2.ウエハ温度制御系>
さらに、ウエハ温度制御装置100は、少なくとも温度調整器3及び圧力調整器43の動作を制御する制御装置COMを備えている。
【0041】
なお、制御装置COMは、CPU、メモリ、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、各種入出力機器を備えたいわゆるコンピュータである。そして、メモリに格納されているウエハ温度制御プログラムが実行されて、各種機器が協働することによって、
図3及び
図4に示すようなウエハ温度制御系が構成される。
【0042】
まず、本実施形態のウエハ温度制御系の概略について
図3を参照しながら説明する。
【0043】
本実施形態では、温度推定オブザーバ10により推定される推定ウエハ温度TW_est、及び、近傍温度センサ5により測定される近傍温度TP_measに関わらず、加熱器31の各ヒータ電極31aに固定電力が供給され、冷却器32の制御バルブ32eの弁開度が一定となるように制御される。すなわち、動作中は加熱操作量及び冷却操作量が固定されており、温度調整器3による単位時間あたりの温度調整量は一定となるように制御される。
【0044】
これに対して、圧力調整器43は、温度推定オブザーバ10により推定される推定ウエハ温度TW_est、及び、近傍温度センサ5により測定される近傍温度TP_measに基づいて、入力される圧力操作量が逐次変更される。
【0045】
具体的に制御装置COMは、温度推定オブザーバ10を用いて、近傍温度センサ5により測定される近傍温度TP_measに基づいて、ウエハWの温度を推定する。そして、制御装置COMは、推定された推定ウエハ温度TW_estをフィードバックして、推定ウエハ温度TW_estが設定温度TSETに追従するように圧力調整器43を制御する。
【0046】
より具体的に制御装置COMは、
図3に示すように、ウエハWの温度を推定する温度推定オブザーバ10と、ウエハWの設定温度T
SETと温度推定オブザーバ10により推定される推定ウエハ温度T
W_estとに基づいて、圧力調整器43をフィードバック制御する制御器11とを備えている。
【0047】
<2-1.温度推定オブザーバ10>
温度推定オブザーバ10は、少なくともシステムの熱的な振る舞いを模擬し、直接測定できないウエハWの温度を推定するものである。
【0048】
具体的に温度推定オブザーバ10は、近傍温度センサ5により測定される近傍温度TP_measと、圧力調整器43の出力する圧力POUTとに基づいて、ウエハWの温度TWの推定値である推定ウエハ温度TW_estと、近傍温度TPの推定値である推定近傍温度TP_estとを出力するように構成されている。
【0049】
具体的に温度推定オブザーバ10は、
図4に示すように、ウエハWの温度T
Wと近傍温度T
Pを出力変数とする線形の状態空間モデルである温度推定モデル10aと、温度推定モデル10aに基づいて推定された推定ウエハ温度T
W_estを出力するウエハ温度出力部10bと、温度推定モデル10aに基づいて推定された推定近傍温度T
P_estを出力する近傍温度出力部10cと、オブザーバゲイン10dとを備えている。
【0050】
そして、温度推定オブザーバ10は、近傍温度出力部10cから出力される推定近傍温度TP_estと、近傍温度センサ5により測定される近傍温度TP_measとの偏差にオブザーバゲイン10dが乗じられた値が、温度推定モデル10a内にフィードバックされるように構成されている。
【0051】
温度推定モデル10aは、例えば吸着プレート2及びウエハW自体に関する熱伝導、吸着プレート2とウエハWとの間の熱伝達をモデル化したものである。
【0052】
この温度推定モデル10aは、少なくともウエハWの温度T
Wと熱伝達ガスの圧力P
HGとの関係を線形とした状態空間モデルである。状態空間モデルの一例を
図5に示している。本実施形態の温度推定モデル10aの入力変数は、圧力調整器43から出力される圧力P
OUT(
図5におけるp)だけでなく、加熱器31による加熱量q又は冷却器32による冷却量(ベースプレート32aの温度T
c)等を含んでいる。
【0053】
具体的に温度推定モデル10aは、圧力調整器43から出力される圧力POUT等を含む入力変数ベクトルが入力されて、推定ウエハ温度TW_est及び推定近傍温度TP_estを含む状態変数ベクトルを出力する。
【0054】
ウエハ温度出力部10bは、温度推定モデル10aの出力から推定ウエハ温度TW_estを抽出して、制御器11へ出力する。
【0055】
近傍温度出力部10cは、温度推定モデル10aの出力から推定近傍温度TP_estを抽出して出力する。出力された推定近傍温度TP_estと近傍温度センサ5により測定された近傍温度TP_measとの偏差が計算されてオブザーバゲイン10dへと入力される。
【0056】
<2-2.制御器11>
制御器11は、ウエハWの設定温度TSETと温度推定オブザーバ10により推定される推定ウエハ温度TW_estとに基づいて、熱伝達ガスの圧力PHGを調整する圧力調整器43を制御するものである。
【0057】
ここで、実環境においては、
図6に示すように、ウエハWの温度T
Wと熱伝達ガスの圧力P
HGとの間には非線形な関係がある。一方で、上記の温度推定オブザーバ10では、圧力操作量に対する出力(ウエハWの温度T
W)の振る舞いには線形性があると仮定して、ウエハWの温度T
Wと熱伝達ガスの圧力P
HGとの間には線形な関係があるとして取り扱っている。
【0058】
このため、本実施形態の制御器11は、
図3及ぶ
図4に示すように、予め取得されたウエハWの温度T
Wと熱伝達ガスの圧力P
HGとの非線形な関係を用いて、設定温度T
SETを補正し、その補正後の設定温度T
SET’と推定ウエハ温度T
W_estとの温度偏差が小さくなるように圧力操作量を制御するように構成されている。
【0059】
具体的に制御器11は、予め取得されたウエハの温度TWと熱伝達ガスの圧力PHGとの非線形な関係を示す非線形関係データと、温度推定オブザーバ10の状態空間モデルで用いられるウエハWの温度TWと熱伝達ガスの圧力PHGとの線形な関係を示す線形関係データとを格納する関係データ格納部11aを有している。
【0060】
そして、制御器11は、
図7に示すように、入力された設定温度T
SETと非線形関係データとから、設定温度T
SETに非線形に対応する換算圧力P
SETを求める。また、制御器11は、換算圧力P
SETと線形関係データとから、換算圧力P
SETに線形に対応する換算温度を求め、当該換算温度を補正後の設定温度T
SET’とする。
【0061】
次に、制御器11は、補正後の設定温度TSET’と温度推定オブザーバ10で推定される推定ウエハ温度TW_estとの温度偏差にゲインKを乗じて積分演算を行う。また、制御器11は、算出された積分値と、状態変数ベクトルに所定の状態フィードバックゲインFを乗じた値との偏差が算出し、この偏差を圧力操作量として圧力調整器43に入力する。
【0062】
次に、制御器11において、補正しない設定温度T
SETを用いてオブザーバ制御した場合と、補正した設定温度T
SET’を用いてオブザーバした場合の実験結果を
図8に示す。
図8(a)は補正しない設定温度T
SETを用いてオブザーバ制御した場合の結果であり、
図8(b)は補正した設定温度T
SET’を用いてオブザーバ制御した場合の結果である。補正しない設定温度T
SETを用いた場合には、ウエハWの温度T
Wと温度推定オブザーバ10による推定ウエハ温度T
W_estとに誤差が見られる。一方、補正した設定温度T
SET’を用いた場合には、ウエハWの温度T
Wと温度推定オブザーバ10による推定ウエハ温度T
W_estとの誤差が減少している。
【0063】
<3.本実施形態の効果>
このように本実施形態におけるウエハ温度制御装置100によれば、熱伝達ガスの圧力PHGを入力変数とする温度推定オブザーバ10を用いてウエハWの温度TWを推定しているので、ウエハWの温度TWを十分な精度で推定することができる。また、ウエハWの設定温度TSETと温度推定オブザーバ10により推定される推定ウエハ温度TW_estとに基づいて、熱伝達ガスの圧力PHGを調整する圧力調整器43に入力される圧力操作量を制御するので、ウエハの温度を目標温度に精度良く制御することができる。
【0064】
なお、吸着プレート2を温度調整するための冷却器32に入力される冷却操作量又は加熱器31に入力される加熱操作量を制御することも考えられるが、ウエハWの温度TWの微調整が難しく、本実施形態のように、圧力調整器43に入力される圧力操作量を制御するほうが、ウエハWの温度TWの微調整が容易となる。
【0065】
特に本実施形態では、制御器11が、ウエハWの温度TWと熱伝達ガスの圧力PHGとの非線形な関係を用いて設定温度TSETを補正し、その補正後の設定温度TSET’と推定ウエハ温度TW_estとの温度偏差が小さくなるように圧力操作量を制御するので、温度推定オブザーバ10による推定ウエハ温度TW_estの推定誤差を小さくすることができ、ウエハWの温度TWを目標温度に精度良く制御することができる。
【0066】
<4.その他の実施形態>
前記実施形態の温度推定オブザーバは、
図9に示すように、近傍温度出力部10cから出力される推定近傍温度T
P_estを吸着プレート2の温度の非線形特性を考慮して補正する近傍温度補正部10eをさらに備え、近傍温度補正部10eから出力される補正された推定近傍温度T
P_est’と、近傍温度センサ5により測定される近傍温度T
Pとの偏差又は偏差から算出される値にオブザーバゲイン10dが乗じられた値が、温度推定モデル10a内にフィードバックされるように構成しても良い。
【0067】
前記実施形態では、吸着プレート2の温度が一定となるように温度調整された構成であったが、ウエハ温度制御装置100が、吸着プレート2の温度を変更する構成としても良い。この場合、温度推定オブザーバ10は、温度調整された吸着プレート2の温度に応じた温度推定モデル10aを備える構成としても良い。
【0068】
温度推定オブザーバ10は、近傍温度出力部10cから出力される推定近傍温度TP_estと、近傍温度センサ5により測定される近傍温度TPとの偏差を積分するオブザーバ積分器をさらに備え、オブザーバ積分器から出力される積分値にオブザーバゲイン10dが乗じられた値が温度推定モデル10a内にフィードバックされるように構成しても良い。
【0069】
この場合、推定近傍温度TP_estと近傍温度TPとの偏差に比例オブザーバゲインを乗じた値を温度推定モデル10aにフィードバックするとともに、偏差の積分値に積分オブザーバゲインを乗じた値を温度推定モデル10aにフィードバックすることが考えられる。また、偏差の積分値に積分オブザーバゲインを乗じた値だけを温度推定モデル10aにフィードバックすることも考えられる。
【0070】
冷却器及び加熱器については一定出力となるように制御を行っていたが、加熱器又は加熱器についても出力フィードバック制御又は状態フィードバック制御によって冷却操作量又は加熱操作量が変更されるようにしてもよい。
【0071】
温度推定オブザーバについては、外乱影響を考慮してカルマンフィルタとして構成してもよい。なお、オブザーバゲインの代わりにカルマンゲインを設定する方法については既存の種々の方法を用いれば良い。
【0072】
さらに、前記実施形態の加熱器31は、複数のヒータ電極31aによって、吸着プレート2に温度分布を形成することができる。例えば、加熱器31は、吸着プレート2の中央部と外周部で加熱量を異ならせることができ、さらに外周部において概略C字状をなす大領域と、残りの少領域との間でも加熱量を異ならせることができる。すなわち、吸着プレート2には3つの加熱領域が設定され、これにより、吸着プレート2に温度分布が形成される。また、冷却器32も、吸着プレート2の3つの加熱領域に対応させて、ベースプレート32aの表面上に3つの冷却領域を形成するように構成しても良い。
【0073】
ウエハW及び吸着プレート2の加熱又は冷却領域については3つに領域が区成されたものに限られず、さらに多数の領域が区成されていてもよいし、2つの領域が区成されていてもよい。また、領域を設定せずにウエハW又は吸着プレート2全体を1つの温度として取り扱っても良い。また、吸着プレート2については吸着機能がなく、単にウエハWが載置されるプレートであってもよい。
【0074】
上述した本発明は、ウエハの温度と熱伝達ガスの圧力との非線形な関係を用いてウエハの設定温度を補正する態様であったが、ウエハの温度と温度調整器の温度との非線形な関係を用いてウエハの設定温度を補正する態様であっても良い。
具体的に温度推定オブザーバ10は、ウエハWの温度TWと温度調整器3の温度との関係を線形とした状態空間モデルを用いたものである。ここでは、温度推定オブザーバ10は、ウエハWの温度TWと加熱器31及び/又は冷却器32の温度との関係を線形とした状態空間モデルを用いたものである。そして、制御器11は、予め取得されたウエハWの温度TWと加熱器31及び/又は冷却器32の温度との非線形な関係を用いて、設定温度TSETを補正し、その補正後の設定温度TSET’と推定ウエハ温度TW_estとの温度偏差が小さくなるように温度操作量(加熱操作量及び/又は冷却操作量)を制御するものであっても良い。
【0075】
冷却器又は加熱器の構成は前述したものに限られない。例えば冷却器はペルチェ素子等を利用して構成してもよいし、加熱器はヒータ電極に限られず、光照射によってウエハを加熱するように構成されたものであってもよい。
【0076】
近傍温度センサが測定する箇所は前述した箇所に限られるものではなく、その他の場所であってもよい。要するにウエハ温度と何らかの相関あるいは関係性がありそうな温度を近傍温度として測定すればよい。また、制御器は赤外線温度センサに限られるものではなく、例えばプレート内に設けられた熱電対等であってもよい。
【0077】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0078】
100・・・ウエハ温度制御装置
2 ・・・吸着プレート(プレート)
3 ・・・温度調整器
31 ・・・加熱器
32 ・・・冷却器
4 ・・・ガス供給機構
43 ・・・圧力調整器
5 ・・・近傍温度センサ
10 ・・・温度推定オブザーバ
10a・・・温度推定モデル
10b・・・ウエハ温度出力部
10c・・・近傍温度出力部
10d・・・オブザーバゲイン
11 ・・・制御器