(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061491
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】落雷判別システム、及び、落雷判別方法
(51)【国際特許分類】
G01W 1/16 20060101AFI20240425BHJP
G01R 29/00 20060101ALI20240425BHJP
G01R 31/08 20200101ALI20240425BHJP
【FI】
G01W1/16 E
G01R29/00 E
G01R31/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169470
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 幹久
(72)【発明者】
【氏名】工藤 亜美
【テーマコード(参考)】
2G033
【Fターム(参考)】
2G033AC05
2G033AE09
(57)【要約】
【課題】例えば、落雷位置標定システム(Lightning Location Systems:LLS)で観測された雷の電波に基づいて、実際の落雷を的確に判別する。
【解決手段】電波計測手段1で観測された電波における、放射電磁界の電界波形、及び、静電界の波形に基づいて、制御手段2の波形形成手段により抽出波形を形成し、抽出波形の形状に基づいて、大地に雷撃した雷である落雷を落雷抽出手段で抽出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雷の電波を観測する電波観測手段と、
前記電波観測手段で観測された電波における、放射電磁界の電界波形、及び、静電界の波形に基づいて抽出波形を形成する波形形成手段と、
前記波形形成手段で形成された前記抽出波形に基づいて、大地に雷撃した雷である落雷を抽出する落雷抽出手段とを備えた
ことを特徴とする落雷判別システム。
【請求項2】
請求項1に記載の落雷判別システムにおいて、
前記波形形成手段で形成される前記抽出波形は、
放射電磁界の電界波形、及び、静電界の波形を合成した一つの波形である
ことを特徴とする落雷判別システム。
【請求項3】
請求項2に記載の落雷判別システムにおいて、
前記落雷抽出手段は、
前記抽出波形の形状が、
電界を検出した時の電界強度のピークの方向に対し、電波が観測されていない状態を基準にピーク後の電界強度が同方向となる形状である場合に、前記電波観測手段で観測された雷を落雷として抽出する
ことを特徴とする落雷判別システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の落雷判別システムにおいて、
前記電波観測手段は複数備えられ、
前記落雷抽出手段では、前記複数の電波観測手段で観測された結果に基づいて落雷がそれぞれ抽出され、
抽出された結果に基づいて、雷が落雷であるか否かを判断する落雷評価手段を備えた
ことを特徴とする落雷判別システム。
【請求項5】
雷の電波に基づいて落雷を判定する際に、放射電磁界の電界波形、及び、静電界の波形に基づいて、雲放電による落雷判定を排除して、実際の落雷を判別する
ことを特徴とする落雷判別方法。
【請求項6】
請求項5に記載の落雷判別方法において、
放射電磁界の電界波形、及び、静電界の波形を合成した一つの波形である抽出波形が、電界を検出した時の電界強度のピークの方向に対し、電波が観測されていない状態を基準にピーク後の電界強度が少なくとも逆方向となる形状である場合に、観測された雷を雲放電とする
ことを特徴とする落雷判別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落雷の状況を抽出する際に、実際の落雷を的確に判別することができる落雷判別システム、及び、落雷判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
雷発生時の落雷電荷量や位置を推定する技術として、落雷位置標定システム(Lightning Location Systems:LLS)が使用されている(例えば、特許文献1)。LLSは、落雷に伴う電界や磁界の時間変化などを測定し、落雷の位置や時刻を抽出する技術となっている。
【0003】
落雷の状況を抽出する際には、雷が大地に雷撃した場合(落雷)の測定と、雷雲内だけの放電(雲放電)による測定とを分別して、雲放電による落雷判定を排除した状態で落雷の位置や時刻を抽出している。即ち、測定点毎に電界や磁界(電波)の波形に基づいて(例えば、パルス幅に基づいて)落雷と雲放電を分別し、多数の測定点での状況に基づいて落雷を判定している。
【0004】
LLSでは、大地に多大な影響を及ぼす落雷と、大地への影響がない雲放電の分別は重要な機能である。落雷と雲放電の分別は、例えば、電波の波形のパラメータ(例えば、パルス幅)に基づいて行っているため、分別のためのしきい値の設定が重要になっている。しかし、落雷や雲放電は、自然現象であるため、雷雲の形状や、雷以外の気象状況、測定点までの距離などにより、パラメータのしきい値を設定することが困難であった。
【0005】
したがって、落雷と雲放電の分別は、過去のデータの積み重ねなど、経験則により判定しているのが現状であり、定量的に落雷と雲放電の分別が行えることが望まれているのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、例えば、落雷位置標定システム(Lightning Location Systems:LLS)で観測された雷の電波に基づいて、実際の落雷を的確に判別することができる落雷判別システムを提供することを目的とする。
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、例えば、落雷位置標定システム(Lightning Location Systems:LLS)で観測された雷の電波に基づいて、雲放電による落雷判定を排除して、実際の落雷を判別することができる落雷判別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の落雷判別システムは、雷の電波を観測する電波観測手段と、前記電波観測手段で観測された電波における、放射電磁界の電界波形、及び、静電界の波形に基づいて抽出波形を形成する波形形成手段と、前記波形形成手段で形成された前記抽出波形に基づいて、大地に雷撃した(直接、間接)雷である落雷を抽出する落雷抽出手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項1に係る本発明では、電波観測手段で観測された電波における、放射電磁界の電界波形、及び、静電界の波形に基づいて、波形形成手段により抽出波形を形成し、抽出波形の形状に基づいて、大地に雷撃した雷である落雷を落雷抽出手段で抽出する。
【0011】
このため、放射電磁界の電界波形、及び、静電界の波形を用い、雲放電などの落雷以外の雷を排除して、落雷を抽出することができ、例えば、落雷位置標定システム(Lightning Location Systems:LLS)で観測された雷の電波に基づいて、実際の落雷を的確に判別することが可能になる。
【0012】
そして、請求項2に係る本発明の落雷判別システムは、請求項1に記載の落雷判別システムにおいて、前記波形形成手段で形成される前記抽出波形は、放射電磁界の電界波形、及び、静電界の波形を合成した一つの波形であることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る本発明では、放射電磁界の電界波形、及び、静電界の波形を合成した一つの抽出波形の形状により雲放電などの雷を除いて落雷を抽出することができる。即ち、電界を検出したときからの抽出波形(電界:電界強度)の経時的な形状の変化(電界の経時変化:電界強度の経時変化)に基づいて、落雷、雲放電を判断することで、落雷を抽出することができる。
【0014】
また、請求項3に係る本発明の落雷判別システムは、請求項2に記載の落雷判別システムにおいて、前記落雷抽出手段は、前記抽出波形の形状が、電界を検出した時の電界強度のピークの方向に対し、電波が観測されていない状態を基準にピーク後の電界強度が同方向となる形状である場合に、前記電波観測手段で観測された雷を落雷として抽出することを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る本発明では、抽出波形の形状が、電界を検出した時の電界強度のピークの方向に対し、電波が観測されていない状態を基準にピーク後の電界強度が同方向となる形状である場合に、観測された雷を落雷として抽出することができる。
【0016】
例えば、雷雲からマイナスの電荷が大地に落ちた場合(落雷の場合)、及び、雷雲の中でマイナスの電荷が下方に移動した場合(雲放電の場合)、いずれの場合も、放射電磁界の放射成分(電流)の形状は、プラス側のピークが生じる。
【0017】
落雷の場合、マイナスの電荷が消失するため、プラス側のピークが生じた後、静電界成分(電流)の波形は、プラス側に振れる。結果として、ピークが生じた後の抽出波形の形状は、電波が観測されていない状態よりもプラス側の状態が維持される。
【0018】
一方、雲放電の場合、電荷は雷雲の中を移動するだけなので、マイナスの電荷は雷雲の中に留まり、プラスの電荷が存在し続け、プラス側のピークが生じた後、静電界成分(電流もしくは電流の積算値)の波形は、マイナス側に振れる。また、マイナスの電荷の下方への移動に伴いプラスの電荷が上方に移動し、電波観測手段に対してマイナスの電荷が近づくため、静電界成分(電流もしくは電流の積算値)の波形のマイナス側への振れが維持される。結果として、ピークが生じた後の抽出波形の形状は、電波が観測されていない状態とは逆側のマイナス側の状態が維持される。
【0019】
このように、放射電磁界の電界波形、及び、静電界の波形を合成した一つの抽出波形の形状(電界の経時変化:電界強度の経時変化)を比較することで、抽出波形の形状に基づき、落雷の場合の抽出波形か雲放電の場合の抽出波形かを判定することができ、落雷を判別することができる。
【0020】
また、請求項4に係る本発明の落雷判別システムは、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の落雷判別システムにおいて、前記電波観測手段は複数備えられ、前記落雷抽出手段では、前記複数の電波観測手段で観測された結果に基づいて落雷がそれぞれ抽出され、抽出された結果に基づいて、雷が落雷であるか否かを判断する落雷評価手段を備えたことを特徴とする。
【0021】
請求項4に係る本発明では、複数の電波観測手段で観測された結果に基づいて落雷がそれぞれ抽出され、落雷評価手段により、抽出された結果に基づいて、例えば、落雷、雲放電の抽出数(一定割合、一定数)により、複数の電波観測手段で観測された結果で抽出された雷が落雷であるか否かを判断する。
【0022】
上記目的を達成するための請求項5に係る本発明の落雷判別方法は、雷の電波に基づいて落雷を判定する際に、放射電磁界の電界波形、及び、静電界の波形に基づいて、雲放電による落雷判定を排除して、実際の落雷を判別することを特徴とする。
【0023】
請求項5に係る本発明では、例えば、落雷位置標定システム(Lightning Location Systems:LLS)で観測された放射電磁界の電界波形、及び、静電界の波形に基づいて、雲放電による落雷判定を排除し、雷の電波に基づいて、実際の落雷を判別することができる。
【0024】
そして、請求項6に係る本発明の落雷判別方法は、請求項5に記載の落雷判別方法において、放射電磁界の電界波形、及び、静電界の波形を合成した波形である一つの抽出波形が、電界を検出した時の電界強度のピークの方向に対し、電波が観測されていない状態を基準にピーク後の電界強度が少なくとも逆方向となる形状である場合に、観測された雷を雲放電とすることを特徴とする。
【0025】
請求項6に係る本発明では、抽出波形の形状が、電界を検出した時の電界強度のピークの方向に対し、電波が観測されていない状態を基準にピーク後の電界強度が少なくとも逆方向となる形状である場合に、観測された雷を雲放電として抽出し、雲放電による落雷判定を排除することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の落雷判別システムは、例えば、落雷位置標定システム(Lightning Location Systems:LLS)で観測された雷の電波に基づいて、実際の落雷を的確に判別することが可能になる。
【0027】
本発明の落雷判別方法は、例えば、落雷位置標定システム(Lightning Location Systems:LLS)で観測された雷の電波に基づいて、雲放電による落雷判定を排除して、実際の落雷を判別することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施例に係る落雷判別システムの全体構成を説明する概念図である。
【
図2】本発明の一実施例に係る落雷判別システムの全体構成を説明する概念図である。
【
図4】放射電磁界の電界強度の経時変化を表すグラフである。
【
図5】静電界の電界強度の経時変化を表すグラフである。
【
図6】落雷の場合の電界強度の経時変化を表すグラフ(抽出波形)である。
【
図7】雲放電の場合の電界強度の経時変化を表すグラフ(抽出波形)である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1、
図2に基づいて本発明の一実施例に係る落雷判別システムの全体構成を説明する。
図1には落雷を観測している状態の落雷判別システムの全体の概略構成、
図2には雲放電を観測している状態の落雷判別システムの全体の概略構成を示してある。
【0030】
図に示すように、落雷判別システムは、落雷位置標定システム(Lightning Location Systems:LLS)を備えている。即ち、所望の場所には複数の電波計測手段1(電波観測手段)が配されている。電波計測手段1で計測(観測)された電波(電界)は制御手段2に入力される。
図1に示すように、電波計測手段1では、落雷における雷放電路3の電波(電荷Qの大地への移動)が計測される。また、
図2に示すように、電波計測手段1では、雷雲内での雲放電(電荷Qの雷雲同士での移動)による電波が計測される。
【0031】
尚、
図2に示した雷雲内での雲放電(電荷Qの雷雲同士での移動)の態様は、季節や気象条件等により生じる一つ例であり、図示のように上下に移動する対応に限定されるものではない。
【0032】
制御手段2では、複数の電波計測手段1の計測結果に基づいて、大地に落撃した実際の落雷による電波の計測であるか、雷雲内での雲放電による電波の計測であるかが判別される。即ち、電波計測手段1で計測された電波における、放射電磁界の電界波形、及び、静電界の波形に基づいて、大地に雷撃した雷である落雷であるか、雷雲内での雲放電であるかが判別される(大地に雷撃した雷である落雷が抽出される)。
【0033】
このため、放射電磁界の電界波形、及び、静電界の波形を用い、雲放電などの落雷以外の雷を排除して、落雷を抽出することができる。これにより、落雷位置標定システム(Lightning Location Systems:LLS)で観測された雷の電波に基づいて、実際の落雷を的確に判別することが可能になる。
【0034】
図3から
図7に基づいて制御手段2の構成を具体的に説明する。
【0035】
図3に制御手段2のブロック構成、
図4には放射電磁界の電界強度の経時変化を表すグラフ、
図5には静電界の電界強度の経時変化を表すグラフ、
図6には落雷の場合の電界強度(放射電磁界と静電界を合わせた電界強度)の経時変化を表すグラフ(抽出波形)、
図7には雲放電の場合の電界強度(放射電磁界と静電界を合わせた電界強度)の経時変化を表すグラフ(抽出波形)を示してある。
【0036】
図3に示すように、制御手段2には、放射電磁界の電界(距離に反比例する電界)の波形、及び、静電界(距離の3乗に反比例する電界)の波形に基づいて抽出波形を形成する波形形成手段6が備えられている。つまり、波形形成手段6では、
図4に示す、放射電磁界の電界強度の波形(放射電磁界の電界波形)、及び、
図5に示す、静電界の電界強度の波形(静電界の波形)に基づいて、抽出波形(
図6、
図7)が形成される。
【0037】
放射電磁界の電界強度の波形は、
図4に示すように、時刻tでプラス側のピークが生じ、その後、弱くなって収束する。落雷の場合の静電界の電界強度の波形は、
図5に実線で示すように、時刻tで強度が強くなり、その後、強い強度が維持される。また、雲放電の場合の静電界の電界強度の波形は、時刻tで強度が弱くなり、その後、弱い強度が維持される。
【0038】
波形形成手段6で形成される抽出波形(
図6、
図7)は、放射電磁界の電界強度の波形(電界波形)、及び、静電界の波形を合成した一つの電界波形となっている。
【0039】
また、
図3に示すように、制御手段2には、波形形成手段6で形成された抽出波形に基づいて、大地に雷撃した落雷を抽出する落雷抽出手段7が備えられている。落雷抽出手段7は、抽出波形の形状が、電界を検出した時の電界強度のピークの方向に対し、電波が観測されていない状態を基準にピーク後の電界強度が同方向となる形状である場合に、電波観測手段で観測された雷を落雷として抽出するようになっている。
【0040】
例えば、
図1に示すように、雷雲からマイナスの電荷(-Q)が大地に落ちた場合(落雷の場合)、及び、
図2に示すように、雷雲の中でマイナスの電荷(-Q)が下方に移動した場合(雲放電の場合)、いずれの場合も、
図4に示すように、放射電磁界の放射成分(電流)の形状は、マイナスの電荷(-Q)が移動した時刻tでプラス側のピークが生じる。
【0041】
落雷の場合(
図1に示した状態の場合)、マイナスの電荷(-Q)が消失するため、放射電磁界にプラス側のピークが生じた後(
図4中、時刻tの後)、静電界の磁界の静電界成分(電流)の波形(静電界の波形)は、
図5に実線で示すように、プラス側に振れることになる(
図4中一点鎖線の状態参照)。
【0042】
尚、落雷の時にプラスの電荷(+Q)が消失した場合、
図5に実線で示した静電界の磁界の静電界成分(電流)の波形(静電界の波形)は、マイナス側に振れることになる。
【0043】
一方、雲放電の場合(
図2に示した状態の場合)、電荷(Q)は雷雲の中を移動するだけなので、マイナスの電荷(-Q)は雷雲の中に留まり、プラスの電荷(+Q)が存在し続け、放射電磁界にプラス側のピークが生じた後(
図4中、時刻tの後)、静電界の磁界の静電界成分(電流)の波形は、
図5に点線で示すように、マイナス側に振れる(
図4中二点鎖線の状態参照)。
【0044】
また、マイナスの電荷(-Q)の下方への移動に伴いプラスの電荷(+Q)が上方に移動し、電波計測手段1に対してマイナスの電荷(-Q)が近づくため、
図5に点線で示すように、静電界の磁界の静電界成分(電流)の波形のマイナス側への振れが維持される(
図4中二点鎖線の状態参照)。
【0045】
以上の結果として、落雷の場合(
図1に示した状態の場合)、
図6に示すように、抽出波形の形状が、電界を検出した時(時刻t)の電界強度のピークの方向に対し、電波が観測されていない状態(
図6中点線で示した電界強度)を基準に、ピーク後(時刻tの後)の電界強度が同方向(
図6中上方向)となる状態(プラス側の状態)に維持される。
【0046】
また、以上の結果として、雲放電の場合(
図2に示した状態の場合)、
図7に示すように、抽出波形の形状が、電界を検出した時(時刻t)の電界強度のピークの方向に対し、電波が観測されていない状態(
図7中点線で示した電界強度)を基準に、ピーク後(時刻tの後)の電界強度が逆方向(
図7中下方向)となる状態(マイナス側の状態)に維持される。
【0047】
尚、落雷の時にプラスの電荷(+Q)が消失した場合、
図7に示した抽出波形は、上下が逆の状態になる。
【0048】
このように、放射電磁界の電界波形、及び、静電界の波形を合成した一つの抽出波形の形状(電界の経時変化:電界強度の経時変化)は、電波が観測されていない状態(
図6、
図7中点線で示した電界強度)を基準にして、ピーク後(時刻tの後)の電界強度が逆の状態になる。
【0049】
このため、放射電磁界の電界波形、及び、静電界の波形を合成した一つの抽出波形の形状を比較することで、即ち、
図6、
図7に示した抽出波形の形状を比較することで(
図6の抽出波形を抽出することで)、抽出波形の形状に基づき、落雷の場合の抽出波形か雲放電の場合の抽出波形かを判定することができる。
【0050】
つまり、放射電磁界の電界波形、及び、静電界の波形を合成した一つの抽出波形の形状により(
図6、
図7)、雲放電などの雷を除いて落雷を抽出することができる。即ち、電界を検出したときからの抽出波形(電界:電界強度)の経時的な形状の変化(電界の経時変化:電界強度の経時変化)に基づいて、落雷、雲放電を判断することで、落雷を抽出することができる(雲放電による落雷判定を排除することができる)。
【0051】
そして、抽出波形の形状が、電界を検出した時の電界強度のピークの方向に対し、電波が観測されていない状態(
図6、
図7中点線で示した電界強度)を基準にピーク後の電界強度が同方向となる形状である場合に(
図6参照)、観測された雷を落雷として抽出することができる(落雷と判断することができる)。
【0052】
また、抽出波形の形状が、電界を検出した時の電界強度のピークの方向に対し、電波が観測されていない状態(
図6、
図7中点線で示した電界強度)を基準にピーク後の電界強度が逆方向となる形状である場合に(
図7参照)、観測された雷を雲放電と判断することができる。
【0053】
そして、
図3に示すように、制御手段2には、複数の電波計測手段1で計測された結果に基づいて、即ち、落雷抽出手段7で抽出された、
図6、
図7に示した抽出波形の状態に基づいて、雷が落雷であるか否かを判断する落雷評価手段8が備えられている。
【0054】
落雷評価手段8では、複数の電波計測手段1で計測された結果に基づいて、落雷がそれぞれ抽出され、落雷評価手段により、抽出された結果に基づいて(落雷抽出手段7で抽出された、
図6、
図7に示した抽出波形の状態に基づいて)、例えば、落雷、雲放電の抽出数(一定割合、一定数)により、複数の電波計測手段1で計測された結果で計測された雷が、落雷であるか否かを判断する。
【0055】
落雷評価手段8で判断された結果、落雷、もしくは、雲放電として出力される。
【0056】
上述したように、放射電磁界の電界波形、及び、静電界の波形を合成した一つの抽出波形の形状(電界の経時変化:電界強度の経時変化)を比較することで、抽出波形の形状に基づき、落雷の場合の抽出波形か雲放電の場合の抽出波形かを判定することができる。これにより、電波計測手段1で計測された結果に基づいて、雲放電による落雷判定を排除した状態で、実際の落雷(大地に雷撃した雷)を的確に判別することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、落雷の状況を抽出する際に、実際の落雷を的確に判別することができる落雷判別システム、及び、落雷判別方法落雷の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 電波計測手段
2 制御手段
3 雷放電路
6 波形形成手段
7 落雷抽出手段
8 落雷評価手段