(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061658
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】基材上の凹部を充填するための方法および関連する構造
(51)【国際特許分類】
C23C 16/14 20060101AFI20240425BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20240425BHJP
H01L 21/285 20060101ALI20240425BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
C23C16/14
C23C16/455
H01L21/285 C
H01L21/88 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023179547
(22)【出願日】2023-10-18
(31)【優先権主張番号】63/418,197
(32)【優先日】2022-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨンチョル・ビュン
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー・サーレ
(72)【発明者】
【氏名】サルヴァトーレ・ルイソ
(72)【発明者】
【氏名】ジェボム・イ
【テーマコード(参考)】
4K030
4M104
5F033
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA05
4K030AA06
4K030AA07
4K030AA09
4K030AA17
4K030BA12
4K030FA01
4K030FA10
4K030HA01
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4K030LA15
4M104BB16
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5F033PP04
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5F033VV16
5F033XX02
(57)【要約】
【課題】特性が改善された金属などの材料で基材上の凹部を充填する方法を提供する。
【解決手段】基材上の凹部を充填するための方法が開示される。方法は、金属ライナー層を備える凹部を有する基材を提供することと、金属ライナーを部分的にエッチングすることと、その後、エッチングおよび周期的成膜プロセスの組み合わせを用いて凹部をギャップフィル材料で充填することと、を含むことができる。凹部内に配置されるギャップフィル金属膜を備える半導体構造も開示される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面上の凹部を充填するための方法であって、前記方法が、
凹部を含む基材を提供することであって、前記凹部が、
側壁、底面、および開口部、ならびに
少なくとも前記側壁および前記底面上に配置される金属ライナー層を備える、提供することと、
前記金属ライナー層の少なくとも一部を除去することと、
周期的成膜-エッチングプロセスによって、前記凹部をモリブデン金属で部分的に充填することであって、前記周期的成膜-エッチングプロセスの単位サイクルが、
第一の周期的成膜プロセスの一つまたは複数の単位サイクルを実行することによって、前記凹部をモリブデン金属で部分的に充填することであって、前記第一の周期的成膜プロセスが、前記凹部の前記開口部近傍での一サイクル当たりの成膜速度と比較して、前記凹部の前記底面近傍での一サイクル当たりより大きな成膜速度でモリブデン金属を成膜する、部分的に充填することと、
前記モリブデン金属を部分的にエッチングすることと、を含む、部分的に充填することと、
第二の周期的成膜プロセスの一つまたは複数の単位サイクルを実行することによって、前記凹部を追加のモリブデン金属で充填することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記第一の周期的成膜プロセスの単位サイクルおよび前記第二の周期的成膜プロセスの単位サイクルは、前記基材を、オキシハロゲン化モリブデンを含む第一の気相反応物質と接触させることと、前記基材を、還元剤を含む第二の気相反応物質と接触させることと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オキシハロゲン化モリブデンは、二塩化二酸化モリブデン(VI)(MoO2Cl2)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属ライナー層の少なくとも一部を除去することが、前記金属ライナー層を気体塩化物系エッチャントと接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記金属ライナー層を前記気体塩化物系エッチャントと接触させることが、前記凹部の前記底部近傍で除去される前記金属ライナー層の前記部分と比較して、前記凹部の前記開口部近傍の前記金属ライナー層の、より多くの部分を除去することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記気体塩化物系エッチャントが、五塩化モリブデン(MoCl5)および五塩化タングステン(WCl5)のうちの少なくとも一つを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記金属ライナー層が金属窒化物ライナー層を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
周期的成膜-エッチングプロセスによって前記凹部をモリブデン金属で部分的に充填することが、前記凹部の前記開口部の近傍に形成される前記モリブデン金属の厚さと比較して、前記凹部の前記底面の近傍の前記モリブデン金属の厚さをより厚く形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記凹部をモリブデン金属で部分的に充填し、続いて追加のモリブデン金属で充填することは、前記凹部を継ぎ目なく充填することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記モリブデン金属を部分的にエッチングすることが、周期的エッチング-パージプロセスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法に従って形成される構造。
【請求項12】
基材上の凹部をモリブデン金属で継ぎ目なく充填する方法であって、前記方法は、
凹部を備える基材を提供することであって、前記凹部が、金属窒化物ライナーで覆われた開口部ならびに側壁および底面を備える、提供することと、
前記凹部の前記開口部近傍の前記金属窒化物ライナーを選択エッチングすることであって、前記凹部の前記開口部近傍の前記金属窒化物ライナーの前記エッチング速度が、前記凹部の前記底面近傍の前記金属窒化物ライナーの前記エッチング速度よりも最大300%速い、選択エッチングすることと、
周期的成膜-エッチングプロセスによって、前記凹部をモリブデン金属で部分的に充填することであって、前記周期的成膜-エッチングプロセスが、前記凹部の前記底面近傍のモリブデン金属を選択的に形成し、前記周期的成膜-エッチングプロセスの前記エッチング部分である部分的に充填することと、
周期的成膜プロセスの一回または複数回の単位サイクルを実行することによって、前記凹部を追加のモリブデン金属で充填することと、を含む、方法。
【請求項13】
前記金属窒化物ライナーを選択エッチングすることが、前記金属窒化物ライナーを気体塩化物系エッチャントと接触させることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記塩化物系エッチャントが、五塩化モリブデン(MoCl5)および五塩化タングステン(WCl5)のうちの少なくとも一つを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記金属窒化物ライナー層を選択エッチングすることが、前記凹部の前記底部近傍の前記金属窒化物ライナーの前記エッチング速度と比較して、より速いエッチング速度で、前記凹部の前記開口部近傍の前記金属窒化物ライナーをエッチングすることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記凹部の前記開口部近傍の前記金属窒化物ライナーが、5オングストローム未満の厚さに選択エッチングされる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記金属窒化物ライナーが、窒化チタンライナーおよび窒化タンタルライナーのうちの少なくとも一つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記金属窒化物ライナーを選択エッチングすることが、周期的エッチング-パージプロセスを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
請求項12に記載の方法に従って形成される構造。
【請求項20】
請求項12に記載の方法を実行するように構成される装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概ね、半導体処理方法およびシステムの分野、ならびにデバイスおよび集積回路製造の分野に関する。特に、本開示は、概ね、基材上の凹部を充填する方法、および充填された凹部を備える構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス構造、例えば、トランジスター、メモリ素子、および集積回路を形成するための製造プロセスは、広範囲であり、またとりわけ成膜プロセス、エッチングプロセス、熱アニーリングプロセス、リソグラフィープロセス、およびドーピングプロセスを含むことができる。
【0003】
特定の製造プロセスには、基材上の凹部内に材料を成膜し、それによって凹部(またはギャップ)を材料で充填することを含み、このプロセスは一般的に「ギャップフィル」と呼ばれる。非平面基材は、多数の凹部を備えてもよく、例えば、凹部は、基材表面の突起部の間に配置される垂直凹部、または基材表面に形成されるへこんだ凹部を含んでもよい。
【0004】
半導体デバイス構造の幾何学的形状が減少し、デバイス構造、例えば、DRAM、フラッシュメモリ、およびロジックにおいて高アスペクト比の形体がより一般的になるにつれて、多数の凹部を所望の特性を有する材料で充填することがますます複雑になっている。
【0005】
ギャップフィルプロセスでは、成膜方法、例えば、高密度プラズマ(HDP)、準大気圧化学気相成長(SACVD)、減圧化学気相成長(LPCVD)が使用されてきたが、これらのプロセスやその他のプロセスでは、一般的に望ましいギャップフィルの結果が得られない。
【0006】
したがって、特性が改善された金属などの材料で基材上の凹部を充填する方法が望まれている。
【発明の概要】
【0007】
この「発明の概要」は、選択された概念を、単純化した形態で紹介するために提供される。これらの概念は、下記の開示の例示の実施形態の「発明を実施するための形態」において、さらに詳細に記述される。この「発明の概要」は、特許請求される主題の主要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図せず、特許請求される主題の範囲を限定するために使用されることも意図しない。
【0008】
基材上の凹部を充填する方法が提供され、方法は、凹部を備える基材を提供する工程を含み、凹部は、側壁、底面、および開口部、ならびに少なくとも側壁および底面の上に配置される金属ライナー層を備える。この方法は、金属ライナー層の少なくとも一部を除去することと、周期的成膜-エッチングプロセスによって凹部をモリブデン金属で部分的に充填することと、をさらに含み、周期的成膜-エッチングプロセスの単位サイクルは、第一の周期的成膜プロセスの一回または複数回の単位サイクルを実行することによって凹部をモリブデン金属で部分的に充填することを含み、第一の周期的成膜プロセスは、凹部の開口部近傍でのサイクル当たりの成膜速度と比較して、凹部の底面近傍でより速いサイクル当たりの成膜速度でモリブデン金属を成膜し、モリブデン金属を部分的にエッチングする。方法は、第二の周期的成膜プロセスの一回または複数回の単位サイクルを実行することによって、凹部に追加のモリブデン金属を充填することをさらに含むことができる。
【0009】
上記のプロセスのうちの一つあるいは複数に加えて、または代替として、別の例は、第一の周期的成膜プロセスの単位サイクルおよび第二の周期的成膜プロセスの単位サイクルが、基材をオキシハロゲン化モリブデンを含む第一の気相反応物質と接触させることと、基材を還元剤を含む第二の気相反応物質と接触させることと、を含む。
【0010】
上記のプロセスのうちの一つあるいは複数に加えて、または代替として、別の例は、オキシハロゲン化モリブデンが二塩化二酸化モリブデン(VI)(MoO2Cl2)であることを、含んでもよい。
【0011】
上記のプロセスのうちの一つあるいは複数に加えて、または代替として、別の例は、金属ライナー層の少なくとも一部を除去することが、金属ライナー層をガス状塩化物系エッチャントと接触させることをさらに含むことを、含んでもよい。
【0012】
上記のプロセスのうちの一つあるいは複数に加えて、または代替として、別の例は、金属ライナー層をガス状塩化物系エッチャントと接触させることが、凹部の底部近傍で除去される金属ライナー層の部分と比較して、凹部の開口部近傍で金属ライナー層のより大きな部分が選択的に除去されることをさらに含むことを、含んでもよい。
【0013】
上記のプロセスのうちの一つあるいは複数に加えて、または代替として、別の例は、ガス状塩化物系エッチャントが五塩化モリブデン(MoCl5)および五塩化タングステン(WCl5)のうちの少なくとも一つを含むことを、含んでもよい。
【0014】
上記のプロセスのうちの一つあるいは複数に加えて、または代替として、別の例は、金属ライナー層が金属窒化物ライナー層を含むことを、含んでもよい。
【0015】
上記のプロセスのうちの一つあるいは複数に加えて、または代替として、別の例は、周期的成膜-エッチングプロセスによって凹部をモリブデン金属で部分的に充填することが、凹部の開口部の近傍に形成されるモリブデン金属の厚さと比較して、凹部の底面近傍のモリブデン金属の厚さを選択的により厚く形成することをさらに含むことを、含んでもよい。
【0016】
上記のプロセスのうちの一つあるいは複数に加えて、または代替として、別の例は、周期的成膜-エッチングプロセスで使用される第一の周期的成膜プロセスにより、凹部の開口部近傍のモリブデン金属の成膜速度と比較して、凹部の底部近傍でより速い成膜速度でモリブデン金属が成膜されることを、含んでもよい。
【0017】
上記のプロセスのうちの一つあるいは複数に加えて、または代替として、別の例は、凹部をモリブデン金属で部分的に充填し、続いて充填し、追加のモリブデン金属が凹部を継ぎ目なく充填することをさらに含むことを、含んでもよい。
【0018】
上記のプロセスのうちの一つあるいは複数に加えて、または代替として、別の例は、本明細書に概説する方法に従って形成される構造を含んでもよい。
【0019】
基材上の凹部をモリブデン金属で継ぎ目なく充填する方法が提供される。方法は、凹部を備える基材を提供することであって、凹部が、金属窒化物ライナーで覆われる開口部ならびに側壁および底面を備える、提供すること、を含むことができる。方法はまた、凹部の開口部近傍の金属窒化物ライナーを選択エッチングすることであって、凹部の開口部近傍の金属窒化物ライナーのエッチング速度が、凹部の底面近傍の金属窒化物ライナーのエッチング速度よりも最大300%速い、選択エッチングすることを含むことができる。方法は、周期的成膜-エッチングプロセスによって、凹部をモリブデン金属で部分的に充填することであって、周期的成膜-エッチングプロセスが、凹部の底面近傍のモリブデン金属を選択的に形成する、部分的に充填することをさらに含むことができる。方法は、周期的成膜プロセスの一回または複数回の単位サイクルを実行することによって、凹部に追加のモリブデン金属を充填することをさらに含むことができる。
【0020】
上記のプロセスのうちの一つあるいは複数に加えて、または代替として、別の例は、金属窒化物ライナーを選択エッチングすることが、金属窒化物ライナーをガス状塩化物系エッチャントと接触させることをさらに含むことを、含んでもよい。
【0021】
上記のプロセスのうちの一つあるいは複数に加えて、または代替として、別の例は、塩化物系エッチャントが五塩化モリブデン(MoCl5)および五塩化タングステン(WCl5)のうちの少なくとも一つを含むことを、含んでもよい。
【0022】
上記のプロセスのうちの一つあるいは複数に加えて、または代替として、別の例は、金属窒化物ライナー層を選択エッチングすることが、凹部の底部近傍の金属窒化物ライナーのエッチング速度と比較して、より速いエッチング速度で凹部の開口部近傍の金属窒化物ライナーをエッチングすることをさらに含むことを、含んでもよい。
【0023】
上記のプロセスのうちの一つあるいは複数に加えて、または代替として、別の例は、凹部の開口部近傍の金属窒化物ライナーのエッチング速度が、凹部の底面近傍の金属窒化物ライナーのエッチング速度よりも最大300%速いことを含んでもよい。
【0024】
上記のプロセスのうちの一つあるいは複数に加えて、または代替として、別の例は、凹部の開口部近傍の金属窒化物ライナーが、5オングストローム未満の厚さに選択エッチングされることを、含んでもよい。
【0025】
上記のプロセスのうちの一つあるいは複数に加えて、または代替として、別の例は、金属窒化物ライナーが窒化チタンライナー、および窒化タンタルライナーのうちの少なくとも一つを含むことを、含んでもよい。
【0026】
上記のプロセスのうちの一つあるいは複数に加えて、または代替として、別の例は、本明細書に開示の方法のいずれかに従って形成される構造を含んでもよい。
【0027】
上記のプロセスのうちの一つあるいは複数に加えて、または代替として、別の例は、本明細書に開示の方法のいずれかを実行するように構成される装置を備えてもよい。
【0028】
本発明と先行技術に対して達成される利点とを要約する目的で、本発明のある特定の目的および利点が本明細書において上記に説明されている。当然のことながら、必ずしもこうした目的または利点のすべてが本発明の任意の特定の実施形態によって達成されなくてもよいことが理解されるべきである。それ故に、例えば、本明細書で教示または示唆される場合があるような他の目的または利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示または示唆されるような一つの利点または利点の群を達成または最適化する様態で、本発明が具体化または実行されてもよいことを当業者は認識するであろう。
【0029】
これらの実施形態の全ては、本明細書に開示する本発明の範囲内であることが意図されている。当業者には、これらの及び他の実施形態は、添付の図面を参照して、以下のある特定の実施形態の詳細な説明から容易に明らかとなり、本発明は、開示されるいかなる特定の実施形態にも限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本明細書は、本発明の実施形態とみなされるものを具体的に指摘し、明確に特許請求する特許請求の範囲で結論付ける一方で、本開示の実施形態の利点は、添付の図面と併せて読むと、本開示の実施形態のある特定の実施例の説明から、より容易に確認することができる。
【0031】
【
図1】
図1は、継ぎ目形体を備える金属で充填された凹部の断面概略図を例示する。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態による例示的な方法を示す。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態による周期的成膜-エッチングプロセスを示す例示的な方法を示す。
【
図4】
図4は、モリブデン金属の成膜速度とその下にある金属ライナー層の厚さとの間の関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態に従って形成された構造の断面概略図を例示する。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に従って形成された構造の断面概略図を例示する。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態に従って形成された構造の断面概略図を例示する。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態に従って形成された構造の断面概略図を例示する。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態に従って形成された構造の断面概略図を例示する。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態による、本明細書に記載の方法を実行するように構成される例示的な装置を示す。
【0032】
当然のことながら、図内の要素は単純および明瞭のために例示されており、また必ずしも実寸に比例して描かれていない。例えば、図内の要素のうちの一部の寸法は、本開示の例示された実施形態の理解の向上を助けるために他の要素に対して相対的に誇張されている場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に提供される方法、構造体、デバイス、および装置の例示的な実施形態の説明は単なる例示であり、例示のみを目的としており、以下の説明は、本開示の範囲も特許請求の範囲も限定することを意図しない。さらに、記載された特徴を有する複数の実施形態の列挙は、追加の特徴を有する他の実施形態も、記載された特徴の異なる組み合わせを組み込む他の実施形態をも排除することを意図していない。例えば、様々な実施形態が例示的な実施形態として記載され、また従属請求項において列挙されてもよい。別段の記載のない限り、例示的な実施形態またはその構成要素は、組み合わされてもよく、または互いに分離して適用されてもよい。
【0034】
本開示において、「ガス」は、常温常圧(NTP)にて気体である材料、気化した固体、および/または気化した液体を含むことができ、また状況に応じて単一の気体、また気体の混合物によって構成されることができる。プロセスガス以外のガス、すなわち、ガス分配アセンブリ、他のガス分配装置、またはこれに類するものを通過することなく導入されるガスは、例えば、反応空間を密封するために使用することができ、またシールガスを含むことができる。前駆体および反応物質は気体とすることができる。例示的なシールガスとしては、貴ガス、窒素、およびこれに類するものが挙げられる。一部の事例では、「前駆体」という用語は、別の化合物を生成する化学反応に関与する化合物、および具体的には膜マトリクスまたは膜の主骨格を構成する化合物を指すことができ、「反応物質」という用語は、前駆体という用語と同じ意味で使用することができる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「基材」という用語は、本開示の一実施形態による方法によって、デバイス、回路、もしくは膜を形成するために使用することができる、またはデバイス、回路、もしくは膜をその上に形成することができる、任意の下地材料(複数可)を指すことができる。基材は、シリコン(例えば、単結晶シリコン)などのバルク材料、ゲルマニウムなどの他の第IV族材料、または第II-VI族、もしくは第III-V族半導体材料などの他の半導体材料を含むことができ、かつバルク材料の上にある、または下にある一つ以上の層を含むことができる。さらに、基材は、基材の層の少なくとも一部分の中またはその上に形成される凹部、突出部、およびこれに類するものなどの、様々な特徴を含むことができる。例として、基材は、バルク半導体材料と、バルク半導体材料の少なくとも一部分の上にある絶縁または誘電材料層とを含むことができる。さらに、「基材」という用語は、使用されてもよい、またはその上にデバイス、回路、もしくは膜が形成されてもよい、任意の一つまたは複数の下地材料を指す場合がある。「基材」は、連続的または不連続的、剛性または可撓性、中実または多孔質であってもよい。基材は、粉末、プレート、またはワークピースなどの任意の形態であってもよい。プレートの形態の基材は、様々な形状およびサイズのウェーハを含んでもよい。基材は、例えば、ケイ素、シリコンゲルマニウム、酸化ケイ素、ヒ化ガリウム、窒化ガリウム、および炭化ケイ素などの材料から作製されてもよい。連続基材は、堆積プロセスが生じる、プロセスチャンバーの境界を越えて延在してもよく、かつ、連続基材は、基材の端部に到達するまでプロセスが継続するように、プロセスチャンバーを通って移動してもよい。連続基材は、連続基材供給システムから供給され、任意の好適な形態で連続基材を製造および出力することができる。連続基材の非限定的な例としては、シート、不織布フィルム、ロール、ホイル、ウェブ、可撓性材料、連続フィラメントまたは繊維の束(すなわち、セラミック繊維またはポリマー繊維)を挙げることができる。連続基材はまた、非連続基材が取り付けられる担体またはシートを含んでもよい。
【0036】
本明細書で使用される場合、「膜」および/または「層」という用語は、本明細書に開示される方法によって堆積される材料などの、任意の連続的または非連続的な構造および材料を指すことができる。例えば、膜および/または層としては、二次元材料、三次元材料、ナノ粒子、部分的もしくは完全な分子層、または部分的もしくは完全な原子層、または原子および/もしくは分子のクラスタを挙げることができる。膜または層は、基材の表面上の複数の分散した原子を含んでもよく、またはそれらのうち少なくとも部分的でもよく、および/または基材内にあってもよく、もしくは基材内に埋め込まれるようになってもよく、および/またはその基材上に製造されたデバイスに埋め込まれてもよく、もしくは埋め込まれるようになってもよい。膜または層は、ピンホールおよび/または分離された島を有する材料または層を備えてもよい。膜または層は、少なくとも部分的に連続的であってもよい。膜または層は、パターン形成され、例えば、細分化されてもよく、複数の半導体デバイス中に含まれてもよい。膜または層は、基材の一部の上で選択的に成長してもよく、他の部分上では成長しなくてもよい。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「成膜プロセス」は、前駆体(および/または反応物質)を反応チャンバーの中に導入して、基材の上に層を成膜することを指すことができる。「周期的成膜プロセス」は、「成膜プロセス」の例である。
【0038】
「周期的堆積プロセス(cyclic deposition process)」または「周期的堆積プロセス(cyclical deposition process)」という用語は、前駆体(および/または反応物質)を反応チャンバー内へ連続的に導入して基材上に層を堆積させることを指すことができ、かつ、原子層堆積(ALD)、周期的化学蒸着(周期的CVD)、およびALD成分と周期的CVD成分とを含むハイブリッド周期的堆積プロセスなどの処理技術を含む。
【0039】
用語、「原子層堆積」は、堆積サイクル、典型的には複数の連続堆積サイクルがプロセスチャンバー内で行われる蒸着プロセスを指すことができる。本明細書で使用される原子層堆積という用語は、関連する用語、例えば、前駆体/反応性ガス、およびパージ(例えば、不活性キャリア)ガスの交互パルスで実施される場合、化学蒸着原子層堆積、原子層エピタキシー(ALE)、分子線エピタキシー(MBE)、ガス源MBE、または有機金属MBE、ならびに化学ビームエピタキシー、により示されるプロセスを含むことも意味する。パルスは、基材を前駆体または反応物質に曝露することを含むことができる。これは、例えば、基材が存在する反応チャンバーに前駆体または反応物質を導入することによって行われることができる。追加的または代替的に、基材を前駆体に曝露することは、反応物質または前駆体が存在する基材処理システム内の位置に、基材を移動させることを含むことができる。
【0040】
概して、ALDプロセスについては、各サイクル中に、前駆体は、反応チャンバーの中へと導入され、そして堆積表面(例えば、以前のALDサイクルから以前に堆積された材料または他の材料を含むことができる、基材表面)の上へと化学吸着され、また追加的な前駆体と容易に反応しない(すなわち、自己限定的な反応)材料の単分子層または準単分子層を形成する。その後、化学吸着した前駆体を堆積表面上で所望の材料に変換するのに使用するために、反応物質(例えば、別の前駆体または反応ガス)がその後プロセスチャンバーの中へと導入されてもよい。反応物質は、前駆体とさらに反応することができる。あらゆる過剰な前駆体をプロセスチャンバーから除去するために、かつ/又はあらゆる過剰な反応物及び/又は反応副生成物を反応チャンバーから除去するために、一つ以上のサイクル中に(例えば各サイクルの各工程中に)、パージする工程を利用することができる。
【0041】
本明細書で使用される場合、「前駆体」は、ガス状になることができ、かつ本明細書に記述されるように、堆積プロセスの間に組み込まれてもよい要素を含む化学式によって表すことができる、ガスまたは材料を含む。
【0042】
本明細書で使用される「構造」は、本明細書に記載の通りの基材とすることができ、またはそれを含むことができる。構造は、基材の上にある、または基材内の一つまたは複数の層、例えば、本明細書に記載の方法に従って形成される一つまたは複数の層を備えることができる。デバイス全体または部分的なデバイス部分を構造内または構造上に含めることができる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「ハロゲン化モリブデン前駆体」という用語は、少なくともモリブデン成分およびハライド成分を含む前駆体を指し、ハライド成分は、塩素成分、ヨウ素成分、または臭素成分のうちの一つ以上を含み得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、「オキシハロゲン化モリブデン」という用語は、少なくともモリブデン成分、酸素成分、およびハライド成分を含む前駆体を指し得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「凹部」および「ギャップ部」という用語は、非平面の表面と表面との間に配置される開口部または凹みを指す場合がある。例えば、用語「凹部」は、基材の表面から垂直に延在する対向する側壁もしくは突出部の間、または基材の表面内に垂直に延在する凹みの対向する傾斜した側壁の間に配置される開口部または凹みを指す場合がある。
【0046】
本明細書で使用する場合、用語「継ぎ目」は、ギャップフィル金属に形成されるエッジの当接によって形成される空隙線または一つまたは複数の分離された空隙を指す場合がある。「継ぎ目」の存在は、高倍率顕微鏡法、例えば走査形透過電子顕微鏡(STEM)および透過電子顕微鏡(TEM)を使用して確認でき、観察によりギャップフィル金属で充填された凹部に明確な垂直方向の空隙線または一つもしくは複数の垂直方向の空隙が明らかになった場合、「継ぎ目」が存在するとみなされる。
【0047】
本開示の実施形態を通じて多くの例示的な材料が与えられており、例示的な材料のそれぞれに与えられる化学式は限定的であると解釈されるべきではなく、与えられる非限定的な例示的な材料はある例示的な化学量論によって限定されるべきではないことに留意されたい。
【0048】
さらに本開示では、変数の任意の二つの数字は、その変数の実行可能な範囲を構成することができ、また示される任意の範囲は、端点を含んでもよく、または除外してもよい。加えて、示された変数の任意の値は(それらが「約」を有して示されているか否かにかかわらず)、正確な値またはおおよその値を指し、かつ等価物を含み、また平均値、中央値、代表値、または大多数、またはこれに類するものを指してもよい。さらに、この開示では、「含む」「によって構成される」、および「有する」という用語は、一部の実施形態で、「典型的にまたは広く含む」、「含む」、「から本質的に成る」、または「から成る」を独立して指す。本開示において、任意の定義された意味は、一部の実施形態において、通常および慣習的な意味を必ずしも除外するものではない。
【0049】
本明細書では、用語「上に(on)」または「上に(over)」は、相対的位置関係を説明するために使用されることができることが理解されるであろう。別の要素、膜もしくは層は言及した層上に直接存在してもよく、または別の層(中間層)もしくは要素はその間に介在されてもよく、または層が言及した層上に配置されてもよいが言及した層の表面上を完全には覆わない。したがって、用語「直接」が個別に使用されていない限り、用語「上に(on)」または「上に(over)」は相対的概念であると解釈されるであろう。これと同様に、用語「下に(under)」、「下に(underlying)」、または「下方に(below)」は、相対的概念であると解釈されるであろう。
【0050】
本開示は、基材上の凹部を充填する方法を含み、特に、周期的成膜-エッチングプロセスと併せて選択エッチングプロセスを使用することによって、凹部をモリブデン金属で継ぎ目なく(すなわち、継ぎ目を形成せずに)充填する方法を開示する。
【0051】
モリブデン金属は、多くの用途、例えば、低電気抵抗率のギャップフィル、3D-NAND用のライナー層、DRAMワード線形体、またはCMOSロジック用途における相互接続材料、に利用されることができる。凹部にモリブデン金属の成膜が可能であると、ロジック用途の相互接続、つまりCMOS構造、ならびにメモリ用途、例えば3D-NANDおよびDRAM構造のワード線/ビット線の有効電気抵抗率を下げることが可能になる。
【0052】
本開示の実施形態は、既知のものよりも優れたギャップフィルプロセスおよびギャップフィル金属を提供することができる。既知の方法によって金属で充填された凹部を備える構造の実施例が
図1に例示されている。
【0053】
より詳細には、
図1は、金属106で充填された凹部104を有する基材102を備える構造100の簡略化された断面図を例示する。金属106内には継ぎ目108が配置されている。継ぎ目は、凹部の側壁から成長する膜の縁部が通常より早く互いに接触する金属106内の領域を含むことができる。したがって、継ぎ目108は、一般的に、凹部104の近くまたは中心に配置される。金属106内に継ぎ目108が形成されることは、デバイスの性能の低下やデバイスの製造時に問題が発生する可能性があるため、望ましくない。この実施例では、継ぎ目108は、走査形透過電子顕微鏡(STEM)または透過電子顕微鏡(TEM)等を使用して観察可能な縦線ボイドを含む場合がある。
【0054】
したがって、継ぎ目を形成することなく、基材上の凹部を金属(例えば、モリブデン金属)で充填できる方法および構造が望ましい。
【0055】
したがって、本開示の実施形態は、基材上の凹部を充填する方法を含むことができる。本開示の方法は、凹部を含む基材を提供することを含むことができ、凹部は、側壁、底面、および開口部を、ならびに少なくとも側壁および底面の上に配置される金属ライナー層を備えることができる。方法は、金属ライナー層の少なくとも一部を除去することと、周期的成膜-エッチングプロセスによって凹部をモリブデン金属で部分的に充填することと、をさらに含み、周期的成膜-エッチングプロセスの単位サイクルは、第一の周期的成膜プロセスの一回または複数回の単位サイクルを実行することによって凹部をモリブデン金属で部分的に充填することと、モリブデン金属を部分的にエッチングすることとを含むことができる。方法は、第二の周期的成膜プロセスの一回または複数回の単位サイクルを実行することによって、凹部に追加のモリブデン金属を充填することをさらに含むことができる。
【0056】
本開示のプロセスは、エッチングプロセス、周期的成膜プロセス、および周期的成膜-エッチングプロセスを実行するように構成される反応器および関連する反応チャンバー内で実行されることができる。したがって、本開示のプロセスを実行するのに好適な反応器は、好適なエッチャント、前駆体、および/または反応物質を提供するように構成されるALD反応器、ならびにCVD反応器を含んでもよい。いくつかの実施形態によれば、シャワーヘッド反応器を使用し得る。いくつかの実施形態によれば、クロスフロー、バッチ、ミニバッチ、又は空間ALD反応器が使用され得る。
【0057】
本開示のいくつかの実施形態では、バッチ式反応器を使用し得る。いくつかの実施形態では、垂直バッチ式反応器を使用し得る。他の実施形態では、バッチ式反応器は、10枚以下のウェーハ、8枚以下のウェーハ、6枚以下のウェーハ、4枚以下のウェーハ、または2枚以下のウェーハを収容するように構成されたミニバッチ反応器を備える。バッチ式反応器が使用されるいくつかの実施形態では、ウェーハ間の不均一性は3%(1シグマ)未満、2%未満、1%未満またはさらには0.5%未満である。
【0058】
本開示の例示的なプロセスは、必要に応じて、クラスタツールに連結される反応器および関連する反応チャンバー内で実行されてもよい。クラスタツールでは、各反応チャンバーが一つのタイプのプロセス専用であるため、各モジュール内の反応チャンバーの温度を一定に保つことができ、各運転の前に基材をプロセス温度まで加熱する反応器と比較してスループットが向上する。更に、クラスタツールでは、反応チャンバーを基材間で所望のプロセス圧力レベルに排気する時間を短縮することが可能である。本開示の例示的なプロセスは、複数の反応チャンバーを備えるクラスタツール内で実行されることができ、それぞれの個別の反応チャンバーを利用して、基材を個別の前駆体ガスにさらすことができ、基材は、複数の前駆体ガスにさらされるために種々の反応チャンバー間で搬送されることができ、基材の搬送は、基材の酸化/汚染を防ぐために制御された雰囲気下で実行される。例えば、本明細書に記載のエッチングプロセスおよび周期的成膜-エッチングプロセスは、基材および関連する金属膜の汚染または劣化を防ぐために制御された環境下で行われる二つの反応チャンバー間の往復移動を伴うクラスタツールの別個の反応チャンバー内で実行されてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、本開示のプロセスは、ロードロックを備える単一のスタンドアロンの反応器内で実行されてもよい。その場合、各運転と運転との間に反応チャンバーを冷却する必要はない。
【0060】
本開示の実施形態による、基材上の凹部を充填するための例示的な方法200を
図2を参照して説明する。簡潔に述べると、方法200は、金属ライナー層を備える凹部を有する基材を提供する工程(工程202)、金属ライナー層の一部を除去する工程(工程204)、周期的成膜-エッチングプロセスを実行することによって凹部をモリブデン金属で部分的に充填する工程(工程206)、および周期的成膜プロセスを実行することによって、凹部に追加のモリブデン金属を充填する工程(工程208)を含むことができる。
【0061】
より詳細には、例示的なプロセス200は、凹部を備える基材を提供することを含む工程202を含む。いくつかの実施形態では、凹部は、一つまたは複数の側壁、底面、開口部、ならびに少なくとも側壁および底面の上に配置される金属ライナー層を備える。
【0062】
本開示のいくつかの実施形態では、基材は、多数の高アスペクト比の凹部、例えば、トレンチ構造、垂直ギャップ、および/またはフィン構造、を含むパターン形成された基材を含んでもよい。基材は、2:1より大きい、または5:1より大きい、または10:1より大きい、または25:1より大きい、または50:1より大きい、または100:1より大きいアスペクト比(高さ:幅)を有する複数の凹部を備えることができ、この例で使用される「より大きい」とは、凹部の高さがより大きいことを指す。基材は、限定するものではないが、半導体材料、誘電材料、および金属材料を含む、一つ以上の材料および材料表面を含み得る。
【0063】
基材は、基材の表面内または表面上に形成されるデバイス構造をさらに備えることができる。例えば、パターン形成された基材は、部分的に製造されたデバイス構造、例えばトランジスターおよび/またはメモリ素子等を備えることができる。このような実施形態では、部分的に製造されたデバイス構造は、複数の凹部を備えることができる。
【0064】
本開示のいくつかの実施形態では、基材上の凹部は、金属ライナー層によって少なくとも部分的に覆われてもよい。例えば、金属ライナー層は、凹部の上に成膜され、凹部の少なくとも側壁および凹部の底面を覆うことができる。
【0065】
非限定的な例として、
図5は、凹部504および金属ライナー層512を備える基材502の一部を備える例示的な構造500を示す。この実施例では、凹部504は、高アスペクト比の垂直トレンチを備える。凹部504は、側壁506、底面508、および開口部510を備える。
図5に例示される凹部504は例示的なものであり、本明細書に開示の方法は、湾曲、波形、V字形、テーパー状、凹状、ならびにシリコン貫通ビアトレンチを含むがこれらに限定されない別の形状を有する凹部の継ぎ目のない充填を含むことに留意されたい。さらに、
図5に例示するような底面508は、
図5に例示される水平底面以外の別の形状を有してもよい。例えば、底面は湾曲、アーチ状、V字形等であってもよく、底面は単に凹部の最も低い表面領域として画成される。
【0066】
いくつかの実施形態では、金属ライナー層512は、金属窒化物ライナー層、例えば窒化チタンライナーまたは窒化タンタルライナーを含んでもよい。金属ライナー層512は、多くの目的のために使用されることができる。例えば、金属ライナー層512は、凹部504内の後続のギャップフィル金属の成膜または接着を促進するために使用されることができる。さらに、あるいは、金属ライナー層512を拡散バリアとして使用して、凹部504内の後続のギャップフィル金属が周囲の基材502内に拡散するのを防止することができる。
【0067】
本開示の例示的なプロセス200(
図2)に戻ると、プロセス200は、金属ライナー層の一部を除去することによって継続することができる(工程204)。
【0068】
より詳細には、本開示の実施形態は、不均一な厚さを有する金属ライナーを備える凹部を充填することにより、継ぎ目のないギャップフィルが促進されることが見出された。特に、凹部の開口部近傍の金属ライナー層の厚さと比較して、凹部の底面近傍により大きな厚さを有する金属ライナー層の上にギャップフィル金属を形成することにより、凹部のその後の継ぎ目のない充填が可能なる。
【0069】
したがって、本開示の実施形態は、凹部の底面近傍で除去される金属ライナー層の量と比較して、凹部の開口部の近傍の金属ライナー層を選択的に除去する。いくつかの実施形態では、凹部の開口部近傍の金属ライナーの選択エッチングは、金属ライナーをガス状エッチャントと接触させることによって達成されることができ、気体のエッチャントは、(凹部の底面近傍の)金属ライナー層の下部と比較して、(凹部の開口部近傍の)金属ライナー層の上部を選択エッチングする。この不均一なエッチング速度は、ある程度、凹部の下部に接触するためにガス状エッチャントがより長い距離にわたって拡散する必要があることから生じる、底面近傍のガス状エッチャントの濃度が低いことによる可能性がある。
【0070】
したがって、本開示のいくつかの実施形態では、金属ライナー層の一部を除去することは、金属ライナー層を塩化物系エッチャントと接触させることを含んでもよい。いくつかの実施形態では、金属ライナーの一部を除去することは、金属ライナーをガス状塩化物系エッチャントと接触させることを含むことができる。例えば、金属ライナー層は、五塩化モリブデン(MoCl5)および五塩化タングステン(WCl5)のうちの少なくとも一つを含むガス状塩化物系エッチャントと接触させることができる。
【0071】
本開示のいくつかの実施形態では、金属ライナー層の一部を除去することは、周期的エッチング-パージプロセスを含むことができ、金属ライナー層は、一定期間ガス状塩化物系エッチャントと接触し、その後、例えばパージガスの導入および/または反応チャンバーを真空にすることによって、過剰なガス状塩化物系エッチャント(および考えられるあらゆる反応副生成物)が反応チャンバーからパージされる。したがって、周期的エッチングパージプロセスの単位サイクルは、基材(および特に金属ライナー層)をガス状塩化物系エッチャントと一定期間接触させることと、その後、反応チャンバー(およびその中に配置される凹部)から過剰なエッチャントおよびあらゆる反応副生成物をパージすることと、を含むことができる。周期的エッチング-パージは、金属ライナー層の所望の部分が選択エッチングされるまで、一回または複数回繰り返させることができる。例えば、周期的エッチング-パージプロセスの単位サイクルは、基材(および特に金属ライナー層)をガス状塩化物系エッチャントと30秒未満、または15秒未満、または8秒未満、または4秒未満、または1秒未満、もしくは0.1秒未満、または0.1秒~30秒の期間接触させることを含むことができる。エッチング工程が完了すると、当技術分野で知られているように、例えば不活性パージガスを導入すること、および/または反応チャンバーを排気システムに排気することによって、反応チャンバーをパージすることができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、金属ライナーの一部を除去することは、凹部の開口部近傍の金属ライナー層(例えば、金属窒化物ライナー)を選択エッチングすることを含んでもよい。金属ライナー層を選択エッチングすることは、凹部の底面近傍の金属ライナー層のエッチング速度と比較して、より速いエッチング速度で凹部の開口部近傍の金属ライナー層をエッチングすることをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、凹部の開口部近傍の金属ライナー層のエッチング速度は、凹部の底面に近傍の金属ライナー層のエッチング速度より50%より速く、または100%より速く、または150%より速く、または250%より速く、または300%より速くなることができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、金属ライナー層の選択エッチングは、600℃未満、または500℃未満、400℃未満、または300℃未満、または200℃未満、または100℃未満の基材温度で金属ライナー層をガス状塩化物系エッチャントと接触させることによって実行されることができる。いくつかの実施形態では、凹部の開口部近傍の金属ライナー層の選択エッチングは、100℃~600℃、または200℃~500℃、もしくは300℃~450℃の温度で、金属ライナー層をガス状塩化物系エッチャントと接触させることによって実行されることができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、金属ライナー層は、50オングストローム未満、または40オングストローム未満、または30オングストローム未満、または20オングストローム未満、もしくは10オングストローム未満、または10オングストローム~50オングストロームの(エッチング前の)初期厚さを有することができる。金属ライナー層の選択エッチングの際、凹部の開口部近傍の金属ライナー層は、20オングストローム未満、または10オングストローム未満、または5オングストローム未満の厚さを有することができ、あるいは完全に除去されることさえある場合がある。
【0075】
金属ライナー層の選択エッチングにより、凹部内にテーパー形状を有する金属ライナー層が形成される可能性がある。非限定的な例として、
図6は、その後ガス状塩化物系エッチャントと接触させた前述の構造500(
図5)を備える構造600を例示する。
図6に例示するように、エッチング後の構造600は、凹部510の開口部近傍の金属ライナー層612の厚さと比較して、底面508近傍の厚さが厚い金属ライナー層612を備え、その結果、テーパー形状を有する金属ライナー層612が得られる。結果として生じる形状は、凹部510の開口部近傍の金属ライナー層の厚さと比較して、凹部の底面508近傍の金属ライナー層の厚さがより厚いという特徴を有することができるが、
図6に例示される金属ライナー層612の形状は例示的なものであり、他の形状も実現できることに留意されたい。
【0076】
金属ライナー層の一部を除去すると、本開示の例示的なプロセス200(
図2)は工程206に進むことができ、工程206は、周期的成膜-エッチングプロセスを実行することによって凹部をモリブデン金属で部分的に充填することを含み、周期的成膜-エッチングプロセスの単位サイクルが、第一の周期的成膜プロセスの一回または複数回の単位サイクルを実行することによって凹部をモリブデン金属で部分的に充填することと、モリブデン金属を部分的にエッチングすることとを含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、周期的成膜-エッチング工程(206)は、一定の基材温度で実行されることができる。別の実施形態では、基材は、成膜段階では第一の基材温度に加熱され、周期的成膜-エッチング段階のエッチング段階では第二の基材温度に加熱されることができる。
【0078】
本開示のいくつかの実施形態では、基材は、800℃未満、または700℃未満、または600℃未満、または500℃未満、または400℃未満、または300℃未満、または200℃未満の基材温度に加熱されてもよい。本開示のいくつかの実施形態では、例示的なプロセス200の場合、基材は、200℃~800℃、または300℃~700℃、または400℃~600℃、または525℃~575℃のプロセス温度に加熱されてもよい。
【0079】
所望の基材温度を達成することに加えて、反応チャンバー内の圧力も制御して、最適な周期的成膜-エッチングプロセスを得ることができる。例えば、本開示のいくつかの実施形態では、周期的成膜-エッチング工程206は、300Torr未満、または200Torr未満、または100Torr未満、または50Torr未満、または25Torr未満、または10Torr未満の反応チャンバー圧力に調整される反応チャンバー内で実行されてもよい。いくつかの実施形態では、周期的成膜-エッチングプロセス206中の反応チャンバー内の圧力は、10Torr~300Torr、もしくは20Torr~80Torr、または40Torr~50Torr、または20Torr以上の圧力にされてもよい。
【0080】
周期的成膜-エッチングプロセス(工程206)は、周期的成膜-エッチングプロセスのサブ工程を例示する
図3を参照してより詳細に説明される。凹部を充填するために使用される周期的成膜-エッチングプロセスに関するさらなる詳細は、米国特許出願公開第20190067014号(以下、7014先行技術文献と呼ぶ)に記載され、その全内容は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。したがって、以下では、周期的成膜-エッチングプロセスを簡潔に説明し、本開示の別のおよび追加の特徴およびプロセスに焦点を当てる。
【0081】
周期的成膜-エッチングプロセス206(
図3)は、第一の周期的成膜プロセスを実行することによって凹部をモリブデン金属で部分的に充填すること(サブ工程302)と、その後、モリブデン金属を部分的にエッチングすること(サブ工程304)を含んでもよい。したがって、周期的成膜-エッチングプロセス206の単位サイクルは、サブ工程302および304を含み、過剰な前駆体、反応物質、および反応副生成物を除去するパージサイクルが介在する可能性がある。
【0082】
周期的成膜-エッチングプロセスは、所望の厚さのモリブデン金属が凹部を部分的に充填するまで何回も繰り返すことができる。例えば、周期的成膜-エッチングプロセス206(
図3)は決定ゲート(サブ工程306)を含み、周期的成膜-エッチングサブ工程302および304が、凹部内のモリブデン金属の所望の部分的充填厚さを達成していない場合は、サブ工程302および304に繰り返し戻ることによってさらなるサイクルを実行することができるが、サブ工程302と304との間にパージサイクルが介在する可能性がある。
【0083】
周期的成膜-エッチングプロセス206(
図3)は、第一の周期的成膜プロセス(サブ工程302)を実行することによって凹部をモリブデン金属で部分的に充填することによって開始することができる。例えば、第一の周期的成膜プロセスは、原子層堆積(ALD)プロセス、または周期的化学気相成長(CCVD)プロセスを含むことができる。周期的成膜プロセスの詳細は先行技術文献7014に記載されているため、ここでは簡単に要約するだけである。
【0084】
第一の周期的成膜プロセスは、基材をモリブデン前駆体を含む第一の気相反応物質と接触させることと、基材を還元剤を含む第二の気相反応物質と接触させることと、を含んでもよい。第一の周期的成膜サイクルはまた、過剰な前駆体、反応物質、および任意の反応副生成物を除去するために介在するパージサイクルを含むことができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、モリブデン前駆体は、塩化モリブデン、例えば五塩化モリブデン(MoCl5)を含んでもよい。別の実施形態では、モリブデン前駆体は、オキシハロゲン化モリブデン、例えば二塩化二酸化モリブデン(VI)(MoO2Cl2)を含んでもよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、還元剤は、分子状水素(H2)、水素原子(H)、水素プラズマ、水素ラジカル、水素励起種、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、またはボランのうちの少なくとも一つを含むことができる。別の実施形態では、還元剤前駆体は、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、トリシラン(Si3H8)、ゲルマン(GeH4)、ジゲルマン(Ge2H6)、ボラン(BH3)、またはジボラン(B2H6)のうちの少なくとも一つを含むことができる。
【0087】
したがって、第一の周期的成膜プロセスの単位サイクルは、基材をオキシハロゲン化モリブデン前駆体と接触させることと、反応チャンバーをパージすることと、基材を還元剤と接触させることと、および再び反応をパージすることと、を含むことができる。この単位サイクルを何回も繰り返して、所望の厚さのモリブデン金属を成膜させ、基材上の凹部を部分的に充填することができる。いくつかの実施形態では、第一の周期的成膜サイクルを繰り返して、平均膜厚が50オングストローム未満、もしくは40オングストローム未満、もしくは30オングストローム未満、もしくは20オングストローム未満、もしくは10オングストローム未満、または1~50オングストローム、もしくは5~25オングストローム、もしくは5~15オングストロームのモリブデン金属を成膜することができる。
【0088】
本開示の実施形態は、モリブデン金属の周期的成膜速度(すなわち、成膜サイクル当たりの成膜量)が、下にある金属ライナー層の厚さにより異なることを見出した。
図4は、金属ライナー層の厚さの関数として、下にある金属ライナー層上のモリブデン金属のサイクル当たりの成膜速度との関係を示すグラフ400を例示する。グラフ400を参照すると、第一の成膜領域402によって示されるように、モリブデン金属のサイクル当たりの成膜速度は、当初は下にある金属ライナー層の厚さが増加するにつれて増加する。そして、モリブデン金属のサイクル当たりの成膜速度は、金属ライナー層の厚さ408に対応するピーク成膜速度404に達する。第二の成膜領域406によって例示されるように、金属ライナーの厚さを、金属ライナーの厚さ408を超えて増加させると、モリブデン金属のサイクル当たりの成膜速度が低下することになる。
【0089】
本開示の非限定的な実施例として、サイクル当たりのモリブデン金属成膜速度のピーク(404)は、金属ライナー層の厚さが約15オングストロームで発生する可能性があり、これはモリブデン金属のサイクル当たり0.8オングストロームのピーク成膜速度に対応することができる。したがって、この非限定的な実施例では、第一の成膜領域402は、金属ライナー層の0オングストロームから約15オングストロームまでの厚さに及ぶ。一方、第二の成膜領域406は、15オングストロームを超える厚さを有する金属ライナー層にまで及ぶ。サイクル当たりのピーク成膜速度およびこれが生じる金属ライナー層の対応する厚さは、プロセスに依存および材料に依存する可能性があり、本明細書に示される実施例は純粋に本開示の新規プロセスを示すために与えられることに留意されたい。
【0090】
したがって、本開示の実施形態は、不均一な厚さを有する金属ライナー層を使用する。例えば、金属ライナーの厚さは、凹部内の深さの関数として変化(すなわち、増加または減少)することができる。いくつかの実施形態では、金属ライナー層の厚さの変化は、(本明細書で上記のように)凹部開口部近傍の金属ライナー層を選択エッチングすることによって達成されることができ、凹部内のモリブデン金属のサイクル当たりの可変成膜速度が可能となり、この可変成膜速度により、部分的に凹部の継ぎ目のない充填の形成が可能になる。
【0091】
また、モリブデン金属の成膜速度とその下にある金属ライナー層の厚さとの間の開示された関係は、本明細書では開示されていない半導体デバイスの製造および処理において別の利点および用途を有することにも留意されたい。したがって、本開示の実施形態は、本明細書で具体的に説明したものを超えて、他の代替実施形態および/または用途、ならびにそれらの明白な修正および等価物にまで拡張されることが理解されるべきである。
【0092】
いくつかの実施形態では、凹部内の金属ライナー層の厚さは、第一の成膜領域(402)内とすることができ、モリブデン金属のサイクル当たりの成膜速度は、ピーク厚さ408まで金属ライナーの厚さが増加するのに応じて増加する。別の実施形態では、凹部内の金属ライナー層の厚さは、第二の成膜領域(406)内とすることができ、モリブデン金属のサイクル当たりの成膜速度は、金属ライナーの厚さが増加するにつれて減少する。いくつかの実施形態では、金属ライナー層は、不均一な厚さを有してもよく、このような場合、金属ライナー層の厚さは、金属ライナー層の厚さ変化に応じて、第一の成膜領域(402)および第二の成膜領域(406)の双方内にあってもよい。したがって、金属ライナーの厚さは、モリブデン金属の成膜速度を制御する際の別のパラメーターとして使用することができ、それ自体が、好ましい特性および機能を有するモリブデン金属を成膜するために利用されることができる。
【0093】
本開示の実施形態およびモリブデン金属の成膜速度と金属ライナーの厚さとの間の新規な関係をどのように利用するかの一例として、構造600(
図6)を検討する。簡単に説明すると、構造600は、基材502および凹部504を備える。凹部504はまた、前記のような選択エッチングプロセスから生じるテーパー形状を有する金属ライナー612を備える。金属ライナーの厚さが凹部内の深さの関数として変化することにより、モリブデン金属を凹部内に異なる成膜速度で成膜させることができる。
【0094】
非限定的な例として、金属ライナー612が第一の成膜領域(
図4の402)内の厚さ形状を有する場合、モリブデン金属は、凹部504の開口部510近傍のモリブデン金属のサイクル当たりの成膜速度と比較して、凹部504の底面(508)近傍で、サイクル当たりより速い成膜速度で成膜されることになる。したがって、所定の周期的成膜サイクル数に対して、金属ライナーの厚さが薄い凹部の開口部近傍に成膜されるモリブデン金属の厚さに比べて、より厚いモリブデン金属を凹部の底面508近傍に成膜させることができる。
【0095】
成膜速度のこの違いを示すために、
図7は、第一の周期的成膜プロセスの多数の成膜サイクルが実行された後の構造600(
図6)を示す構造700を例示する。結果として凹部702内に成膜されたモリブデン金属702は、凹部の開口部510近傍のモリブデン金属702の厚さと比較して、底面508近傍でより大きな厚さを有する。したがって、本開示の実施形態は、一般的に「ボトムアップギャップフィル」と呼ばれるものを可能にし、凹部は最初に凹部の底面から材料で充填される。「ボトムアップギャップフィル」プロセスの利点には、ギャップフィル材料内の継ぎ目の形成を軽減または排除することさえ含まれる。
【0096】
より詳細には、ギャップフィル材料内に継ぎ目/空隙が形成される原因の一つは、凹部内のギャップフィル材料の早期閉鎖である。ギャップフィル材料の早期閉鎖、つまり、凹部の充填が完了する前にギャップフィル材料の様々な成長面が互いに接触する場合、これにより多くの場合継ぎ目/空隙が形成される可能性がある。したがって、本明細書で説明するボトムアップギャップフィルプロセスは、充填プロセス中の早期閉鎖を防止するのでシームレスなギャップフィルが可能になる。
【0097】
本開示のギャップフィルプロセスをさらに可能にするために、周期的成膜-エッチングプロセスは、成膜されるモリブデン金属の部分エッチングを含む。例えば、凹部内に成膜されたモリブデン金属を部分的にエッチングすることにより、凹部内でモリブデン金属が早期に閉鎖する可能性をさらに軽減することができる。
【0098】
より詳細には、また周期的成膜-エッチングプロセス206(
図3)をさらに参照すると、モリブデン金属の部分エッチング中(サブ工程304)、基材は、第一の周期的成膜プロセス(サブ工程302)で使用されるのと同じプロセス温度に維持されてもよく、あるいは、モリブデン金属の部分エッチング中(サブ工程304)、プロセス温度は、周期的堆積中(サブ工程302)に使用される温度と異なっていてもよい。部分エッチングプロセスの温度および圧力に関する詳細は、先行技術文献7014に詳細に記載されているため、ここでは繰り返さない。
【0099】
成膜されたモリブデン金属の部分的にエッチングすること(サブ工程304)は、エッチャントガスを反応チャンバーに流し、モリブデン金属をエッチャントガスと接触させることを含んでもよい。いくつかの実施形態では、エッチャントガスは、ガス状塩化物系エッチャントガス、例えば、塩素蒸気(Cl2)、または塩酸蒸気(HCl)を含む。本開示の特定の実施形態では、ガス状の塩化物エッチャントガスは、例えば五塩化モリブデン(MoCl5)または五塩化タングステン(WCl5)を含むことができる。
【0100】
本開示のいくつかの実施形態では、成膜されたモリブデン金属を部分的にエッチングすることは、約0.1秒~約30秒、約0.1秒~約10秒、約0.5秒~約5.0秒、または約1.0秒~約2.0秒の期間モリブデン金属をエッチングガスと接触させることを含んでもよい。さらに、モリブデン金属の部分エッチング中、エッチャントガスの流量は、5000sccm未満、または1000sccm未満、または500sccm未満、または100sccm未満であってもよい。
【0101】
本開示のいくつかの実施形態では、成膜されたモリブデン金属を部分的にエッチングすることは、周期的エッチング-パージプロセスの一つまたは複数のサイクルを実行することを含むことができ、モリブデン金属をガス状塩化物系エッチャントと一定期間接触させ、その後、過剰な塩化物系エッチャント(および考えられるあらゆる反応副生成物)が、例えばパージガスの導入および/または反応チャンバーを真空に排気することによって、反応チャンバーからパージされる。したがって、周期的エッチングパージプロセスの単位サイクルは、基材(および特にモリブデン金属)をガス状塩化物系エッチャントと一定期間接触させることと、その後、反応チャンバー(およびその中に配置される凹部)から過剰なエッチャントおよび反応副生成物をパージすることと、を含むことができる。周期的エッチング-パージは、モリブデン金属の所望の部分が除去されるまで、一回または複数回繰り返されることができる。例えば、周期的エッチング-パージプロセスの単位サイクルは、モリブデン金属を塩化物系エッチャントと30秒未満、もしくは15秒未満、もしくは8秒未満、もしくは4秒未満、もしくは1秒未満、もしくは0.1秒未満、または0.1秒~30秒の期間接触させることを含んでもよい。エッチング工程が完了すると、当技術分野で知られているように、例えば不活性パージガスを導入すること、および/または反応チャンバーを排気システムに排気することによって、反応チャンバーをパージすることができる。
【0102】
本開示のいくつかの実施形態では、モリブデン金属のエッチング速度は、10オングストローム/秒未満、または8オングストローム/秒未満、または6オングストローム/秒未満、または4オングストローム/秒未満、または2オングストローム/秒未満、または1オングストローム/秒未満、または0.5オングストローム/秒未満、0.1オングストローム/秒未満であってもよい。例えば、モリブデン金属の部分エッチングは、20オングストローム未満、または10オングストローム未満、または5オングストローム未満のモリブデン金属の厚さをエッチングすることを含んでもよい。いくつかの実施形態では、エッチャントガスは、凹部の開口部近傍に成膜されたモリブデン金属を選択エッチングし、それにより早期閉鎖を防止し、その後の充填完了まで開いた凹部を維持することができる。
【0103】
部分エッチング(サブ工程304)は、反応チャンバーをパージすることによって継続することができる。例えば、エッチャントガスおよび反応副生成物(もしあれば)は、例えば不活性ガスで排気することによって基材の表面から除去されることができる。過剰なガス状塩化物エッチャントガスおよび考えられるあらゆる反応副生成物は、反応チャンバーと流体連通している排気システムによって生成される真空を用いて除去されることができる。
【0104】
周期的成膜-エッチングプロセス206(
図3)は、決定ゲート(サブ工程306)に進むことができ、決定ゲートは、凹部に形成されるモリブデン金属の厚さに依存する。例えば、モリブデン金属が不十分な厚さで形成される場合、サブ工程302および304に繰り返し戻ることによって、周期的成膜-エッチングプロセスを繰り返すことができる。非限定的な例として、凹部が、少なくとも80パーセント、または90パーセント、または95パーセント、または99パーセントがモリブデン金属で充填されるまで、周期的成膜-エッチングプロセスは繰り返されることができる。所望の厚さのモリブデン金属が凹部を部分的に充填すると、プロセス206のサブ工程308で示すように、周期的成膜-エッチングプロセスが停止される。
【0105】
例示的なプロセス200(
図2)に戻ると、周期的成膜-エッチングプロセス(工程206)が完了すると、プロセス200は、第二の周期的成膜プロセスを実行することによって凹部を追加のモリブデン金属で充填することを含む工程208に進むことができる。
【0106】
より詳細には、周期的成膜-エッチングプロセス(工程206)は、凹部をモリブデン金属で部分的に充填し、その後、第二の周期的成膜プロセスを使用して、凹部の残りの部分を追加のモリブデン金属で充填することができる。第二の周期的成膜プロセス(工程208)は、第二の周期的成膜プロセスの一回または複数回の単位サイクルを実行することによって、凹部を追加のモリブデン金属膜で充填することを含むことができる。いくつかの実施形態では、第二の周期的成膜プロセスは、凹部をモリブデン金属膜で部分的に充填するために部分的に利用される第一の周期的成膜プロセスと同じであってもよい。したがって、工程208については、この工程が周期的成膜-エッチング工程206を参照して既に説明されているので、本明細書で以下に簡単に説明する。
【0107】
したがって、部分的に充填される凹部を備える基材は、原子層堆積プロセスおよび/または周期的化学気相成長プロセスのうちの少なくとも一つ用に構成される反応チャンバー内に配置されることができる。いくつかの実施形態では、第二の周期的堆積プロセスは、原子層堆積プロセスまたは周期的化学蒸着プロセスを含んでもよい。
【0108】
いくつかの実施形態では、第二の周期的成膜プロセスに利用されるプロセス温度および圧力は、第一の周期的成膜プロセスに利用されるものと同じであってもよい。プロセス温度および圧力に関する詳細は本明細書で上に説明されているため、本明細書では繰り返さない。
【0109】
本開示のいくつかの実施形態では、第二の周期的成膜プロセスの一回または複数回の単位サイクルを実行することによって凹部を追加のモリブデン金属で充填することは、基材をハロゲン化モリブデン前駆体と接触させることと、反応チャンバーをパージすることと、基材を還元剤と接触させることと、反応チャンバーをパージすることと、を含むことができる。ハロゲン化モリブデン前駆体は、前記のようにハロゲン化モリブデン前駆体のすべてを含んでもよく、特定の実施形態では、ハロゲン化モリブデン前駆体は、オキシハロゲン化モリブデン、例えば二塩化二酸化モリブデン(VI)(MoO2Cl2)を含んでもよい。還元剤は、前述の還元剤のうちの一つまたは複数を含んでもよく、特定の実施形態では、還元剤は分子状水素(H2)を含んでもよい。
【0110】
第二の周期的成膜プロセス208の多数のサイクルは、凹部が追加のモリブデン金属で十分に充填されるまで実行されることができる。次いで、充填された凹部を有する基材をさらに処理して、所望のデバイス構造を完成させることができる。
【0111】
本開示のいくつかの実施形態では、工程208によって成膜される追加のモリブデン金属は、凹部の残りの部分を完全に充填することができる。例えば、いくつかの実施形態では、第二の周期的成膜プロセスは、凹部の少なくとも20パーセント、または15パーセント、または10パーセント、または5パーセント、または1パーセントを充填し、それによって凹部のモリブデン金属による充填を完了することができる。
【0112】
本開示のいくつかの実施形態では、凹部が完全に充填されると、追加のモリブデン金属を必要に応じて成膜してもよい。この追加のモリブデン金属は一般的に「オーバーバーデン」と呼ばれ、第二の周期的成膜プロセスのさらなる繰り返しサイクルによって成膜されることができる。例えば、追加の「オーバーバーデン」モリブデン金属は、200オングストローム未満、もしくは100オングストローム未満、もしくは50オングストローム未満、もしくは25オングストローム未満、または200オングストローム~25オングストロームの平均厚さに成膜されることができる。
【0113】
図8は、第二の周期的成膜プロセス(工程208)の完了時の前の構造700(
図7)を備える構造800を例示する。
図8に例示するように、モリブデン金属802は、モリブデンギャップフィル金属内に継ぎ目も空隙も形成することなく、凹部を完全に充填する。本明細書で上記のように説明される、任意のオーバーバーデンモリブデン膜804は、
図8にも例示されている。
【0114】
本明細書で概説する方法、特にプロセス工程は、凹部の一つの特定の形状に限定されず、多数の形状で凹部を継ぎ目なく充填するために使用されることができる。非限定的な例として、
図9は、内側にへこんだ形状を有する継ぎ目なく充填された凹部を備える構造900を例示する。
図9を参照すると、基材902は、側壁906および底面908を備える内側にへこんだ形状を有する凹部を備える。金属ライナー層912は、本開示の実施形態に従って選択エッチングされ、内側にへこんだ凹部の上面910近傍の金属ライナー層912の厚さと比較して、底面908近傍の金属ライナー層912の厚さをより厚く製造する。モリブデン金属920のギャップフィルは、継ぎ目を形成することなく、内側にへこんだ凹部を完全に充填する。
【0115】
本開示の実施形態はまた、エッチングプロセス、周期的成膜プロセス、および周期的成膜-エッチングプロセスを含む、本開示の例示的な方法を実行するように構成される装置を備えることができる。
【0116】
より詳細には、
図10は、所定の圧力、温度、及び環境条件下で基材(図示せず)を保持し、基材を様々なガスに選択的に曝す機構を更に備える反応チャンバー1002を備える反応システム1000を概略的に例示する。前駆体反応物質源1004は、導管または他の適切な手段1006により反応チャンバー1002に連結していてもよく、更に、マニホールド、バルブ制御システム、質量流量制御システム、または機構に連結して前駆体反応物質源1004に由来する気体前駆体を制御してもよい。前駆体反応物質源1004により供給される前駆体(図示せず)、反応物質(図示せず)は、室温及び標準大気圧条件下で液体又は固体であることができる。このような前駆体は、反応物質源の真空容器内で気化されることができ、そして前駆体は前駆体源チャンバー内で気化温度以上に維持され得る。このような実施形態では、気化された前駆体は、キャリアガス(例えば、不活性ガスまたは貴ガス)で輸送され、そして導管1006を通って反応チャンバー1002の中へ供給されることができる。他の実施形態では、前駆体は、標準的な条件下で気体であることができる。このような実施形態では、前駆体は気化する必要がなく、キャリアガスを必要としない。例えば、一実施形態では、前駆体をガスボンベに貯蔵し得る。例えば、前駆体反応物質供給源1004は、オキシハロゲン化モリブデン前駆体を反応チャンバー1002に供給するように構築および構成されることができる。
【0117】
反応システム1000はまた、上記のように導管1010によって反応チャンバーに連結されることもできる別の前駆体反応物質供給源、例えば前駆体反応物質供給源1008を備えてもよい。例えば、前駆体反応物質供給源1008は、反応チャンバー1002に還元剤を供給するように構築および構成されることができる。さらに、反応システム1000は、導管1020によって反応チャンバー1002に連結されることができるエッチャント源1018も備えることができる。例えば、エッチャント源1018は、ガス状塩化物エッチャントを反応チャンバー1002に供給するように構築および構成されることができる。
【0118】
パージガス源1012も導管1014を通って反応チャンバー1002に連結することができ、反応チャンバーからの前駆体/反応物質/エッチャントガスまたは廃ガスの除去を支援するために、様々な不活性ガスまたは貴ガスを反応チャンバー1002に選択的に供給することができる。供給され得る様々な不活性ガス又は貴ガスは、固体、液体又は貯蔵される気体形態に由来し得る。
【0119】
図10の反応システム1000はまた、反応システム1000に含まれるバルブ、マニホールド、ポンプおよび他の装置を選択的に動作させるための電子回路および機械的構成要素を提供するシステム動作および制御機構1016を備えることができる。このような回路および構成要素は、前駆体、パージガスを、それぞれの前駆体源1004、1008、1018、およびパージガス源1012から導入するように動作する。システム動作および制御機構1016はまた、ガスパルスシーケンスのタイミング、基材および反応チャンバー1002の温度、反応チャンバー1002の圧力、ならびに反応システム1000を適切に動作させるのに必要な様々な他の動作を制御する。動作および制御機構1016は、反応チャンバー1002内外への前駆体、エッチャント、反応物質、およびパージガスの流れを制御するための制御ソフトウェアおよび電気的または空気圧制御バルブを含むことができる。制御システム1016は、特定のタスクを実行するソフトウェアまたはハードウェアコンポーネント、例えばFPGAまたはASIC等のモジュールを含むことができる。モジュールは、有利なことに、制御システムのアドレス指定可能な記憶媒体上に常駐するように構成され、かつ一つ以上のプロセスを実施するように構成することができる。
【0120】
関連技術分野の当業者は、異なる数及び種類の前駆体反応物質源及びパージガス源を備える本反応システムの他の形態が可能であることを理解する。更に、このような当業者はまた、反応チャンバー1002の中へ選択的にガスを供給するという目的を達成するために使用され得るバルブ、導管、前駆体原料、パージガス源の多くの配置があることを理解するであろう。更に、反応システムの略図として、説明を簡単にするために多くの構成要素を省略する。このような構成要素としては、例えば、様々なバルブ、マニホールド、浄化装置、ヒーター、容器、通気孔、及び/又はバイパス等を挙げることができる。
【0121】
上に記載した本開示の例示的実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその法的等価物により定義される、本発明の実施形態の単なる例であるため、これらの実施形態によって本発明の範囲は限定されない。いかなる同等の実施形態も、本発明の範囲内にあることを意図している。実際に、記載した要素の代替の有用な組み合わせなど、本明細書に示し記載したものに加えて、本開示の様々な改変が、説明から当業者に明らかとなってもよい。このような改変及び実施形態もまた、添付の特許請求の範囲に入ると意図される。
【外国語明細書】