(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006181
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F04D 29/42 20060101AFI20240110BHJP
F04D 7/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F04D29/42 F
F04D7/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106837
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】中村 陽一
(72)【発明者】
【氏名】真武 幸三
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA06
3H130AA23
3H130AB12
3H130BA22A
3H130BA22G
3H130BA23A
3H130BA23G
3H130BA33A
3H130BA33G
3H130BA53A
3H130CA21
3H130DD01Z
3H130EA02A
3H130EA02G
3H130EA06A
3H130EA06G
3H130EA07A
3H130EA07G
3H130EA08A
3H130EA08G
3H130EB01A
3H130EB01G
3H130EC02A
3H130EC14A
(57)【要約】
【課題】液化ガスを漏洩させることなく、電動機を効率よく冷却することができる液化ガス用のポンプ装置を提供する。
【解決手段】ポンプ装置は、羽根車2を有するポンプ1と、羽根車2が固定された回転軸5と、回転軸5および羽根車2を回転させるための電動機7と、電動機7の両側に配置されたポンプ側ブラケット11および反ポンプ側ブラケット12を備える。モータハウジング23は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されており、モータハウジング23の両端は、ポンプ側ブラケット11および反ポンプ側ブラケット12に支持されており、ポンプ側ブラケット11および反ポンプ側ブラケット12の線膨張係数は、モータハウジング23の線膨張係数よりも小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガス用のポンプ装置であって、
羽根車を有するポンプと、
前記羽根車が固定された回転軸と、
前記回転軸および前記羽根車を回転させるための電動機と、
前記電動機の両側に配置されたポンプ側ブラケットおよび反ポンプ側ブラケットを備え、
前記電動機は、
前記回転軸に固定されたモータロータと、
前記モータロータを囲むコイルおよびステータコアを有するモータステータと、
前記モータステータを保持するモータハウジングを備え、
前記モータハウジングは、アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されており、
前記モータハウジングの両端は、前記ポンプ側ブラケットおよび前記反ポンプ側ブラケットに支持されており、
前記ポンプ側ブラケットおよび前記反ポンプ側ブラケットの線膨張係数は、前記モータハウジングの線膨張係数よりも小さい、ポンプ装置。
【請求項2】
前記ポンプ側ブラケットおよび前記反ポンプ側ブラケットの線膨張係数は、前記ステータコアの線膨張係数よりも小さい、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記ポンプ側ブラケットは、前記モータハウジングのポンプ側端部の内面を支持する嵌合部を有し、
前記反ポンプ側ブラケットは、前記モータハウジングの反ポンプ側端部の内面を支持する嵌合部を有している、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記モータハウジングの内周面に接触し、前記モータハウジングを内側から支持する補強環をさらに備えている、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記補強環は前記ステータコアの線膨張係数よりも小さい線膨張係数を有する、請求項4に記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記補強環は、前記モータステータと前記ポンプ側ブラケットとの間に配置されている、請求項4に記載のポンプ装置。
【請求項7】
前記モータハウジングは、その内面に形成された複数の溝を有しており、
前記複数の溝は、前記回転軸の軸方向に延びている、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項8】
前記複数の溝は、前記ステータコアの軸方向長さよりも長い、請求項7に記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を圧送するためのポンプ装置に関し、特に低温の液化ガスを圧送するためのポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を圧送するためのポンプ装置は、一般に、羽根車を有するポンプと、羽根車を回転させるための電動機を備えている。電動機は、ポンプ装置の運転に伴って発熱するため、電動機を冷却することが必要とされる。従来、電動機は、その回転軸に連結された冷却ファンにより冷却されている。冷却ファンは、電動機に隣接して配置され、羽根車と一体に回転することで、電動機の外部から空気を取り込み、電動機に空気を吹き付けることで、電動機を冷却する。
【0003】
近年、二酸化炭素削減のため、液体水素、液化天然ガス等の極低温液を輸送するためのポンプ装置の需要が増える傾向にある。また、ロケットエンジンに極低温の液体酸素を供給するために、ポンプ装置が使用される。液体水素、液化天然ガス、液体酸素、液体窒素、液体アンモニアなどの極低温の液化ガスを取り扱うポンプ装置は、ポンプ装置外への液化ガスの漏洩を防ぐことが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2-9984号公報
【特許文献2】特開2009-191730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の冷却ファン式ポンプ装置は、外部の空気を電動機内に取り込むための通気口があるため、この通気口からポンプ装置の外部に液化ガスが漏洩するおそれがある。すなわち、羽根車の回転によって昇圧された液化ガスの一部は、メカニカルシールなどの軸封装置を通過して電動機内に移動し、さらに通気口を通って電動機の外部に漏洩してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、液化ガスを漏洩させることなく、電動機を効率よく冷却することができる液化ガス用のポンプ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、液化ガス用のポンプ装置であって、羽根車を有するポンプと、前記羽根車が固定された回転軸と、前記回転軸および前記羽根車を回転させるための電動機と、前記電動機の両側に配置されたポンプ側ブラケットおよび反ポンプ側ブラケットを備え、前記電動機は、前記回転軸に固定されたモータロータと、前記モータロータを囲むコイルおよびステータコアを有するモータステータと、前記モータステータを保持するモータハウジングを備え、前記モータハウジングは、アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されており、前記モータハウジングの両端は、前記ポンプ側ブラケットおよび前記反ポンプ側ブラケットに支持されており、前記ポンプ側ブラケットおよび前記反ポンプ側ブラケットの線膨張係数は、前記モータハウジングの線膨張係数よりも小さい、ポンプ装置が提供される。
【0008】
一態様では、前記ポンプ側ブラケットおよび前記反ポンプ側ブラケットの線膨張係数は、前記ステータコアの線膨張係数よりも小さい。
一態様では、前記ポンプ側ブラケットは、前記モータハウジングのポンプ側端部の内面を支持する嵌合部を有し、前記反ポンプ側ブラケットは、前記モータハウジングの反ポンプ側端部の内面を支持する嵌合部を有している。
【0009】
一態様では、ポンプ装置は、前記モータハウジングの内周面に接触し、前記モータハウジングを内側から支持する補強環をさらに備えている。
一態様では、前記補強環は前記ステータコアの線膨張係数よりも小さい線膨張係数を有する。
一態様では、前記補強環は、前記モータステータと前記ポンプ側ブラケットとの間に配置されている。
【0010】
一態様では、前記モータハウジングは、その内面に形成された複数の溝を有しており、前記複数の溝は、前記回転軸の軸方向に延びている。
一態様では、前記複数の溝は、前記ステータコアの軸方向長さよりも長い。
【発明の効果】
【0011】
ポンプ装置の運転中は、電動機(特にコイル)は熱を発する。この熱は、熱伝導率の高いアルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されたモータハウジングに伝わり、さらにポンプ側ブラケットおよびポンプを経由して低温の液化ガスに伝わる。このように、モータステータからモータハウジング、ポンプ側ブラケット、およびポンプを経由して液化ガスに伝わる熱の流れが形成されるので、冷却ファンを用いることなく、電動機を冷却することができる。また、冷却ファンが不要になるので、電動機へ空気を取り込むための通気口が不要となる。結果として、液化ガスまたはそのボイルオフガスの外部への漏洩を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】液化ガスを移送するためのポンプ装置の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】ポンプ装置の他の実施形態を示す断面図である。
【
図3】ポンプ装置のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【
図4】
図3に示すモータハウジングおよびモータステータのA-A線断面図である。
【
図5】モータハウジングが冷却され、収縮したときの状態を説明する図である。
【
図6】ポンプ装置のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【
図7】ポンプ装置のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、液化ガスを移送するためのポンプ装置の一実施形態を示す断面図である。液化ガスの具体例としては、液体水素、液化天然ガス、液体酸素、液体窒素、液体アンモニアなどが挙げられる。液化ガスは、0℃よりも低い沸点を有する低温の液体である。したがって、本実施形態のポンプ装置は、常温より低い温度の液体を取り扱うポンプ装置である。
【0014】
図1に示すように、ポンプ装置は、羽根車2を有するポンプ1と、羽根車2が固定された回転軸5と、回転軸5および羽根車2を回転させるための電動機7と、電動機7の両側に配置されたポンプ側ブラケット11および反ポンプ側ブラケット12を備えている。ポンプ1は、羽根車2が内部に収容される羽根車ケーシング15を備えている。羽根車ケーシング15は、液化ガスの吸込み口16および吐出し口(図示せず)を有している。羽根車2の液体入口2aは、吸込み口16を向いている。羽根車ケーシング15の材料の例としては、鉄、鋳鉄、ステンレス鋼、ニッケル合金などが挙げられる。
【0015】
電動機7は、回転軸5に固定されたモータロータ21と、モータロータ21を囲むモータステータ22と、モータステータ22を保持するモータハウジング23を備えている。モータロータ21およびモータステータ22は、モータハウジング23内に収容されている。モータステータ22は、モータロータ21を囲むように配置された複数のコイル26と、これらコイル26を保持するステータコア27を有する。モータステータ22は、モータハウジング23の内面に面接触している。
【0016】
ポンプ側ブラケット11は、ポンプ1と電動機7との間に挟まれており、羽根車ケーシング15とモータハウジング23の両方に接触している。反ポンプ側ブラケット12は、電動機7を挟んでポンプ側ブラケット11とは反対側に位置している。ポンプ装置は、回転軸5を回転可能に支持する軸受31,32を備えている。軸受31,32は、ポンプ側ブラケット11および反ポンプ側ブラケット12にそれぞれ支持されている。
【0017】
モータハウジング23は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されている。モータハウジング23の両端は、ポンプ側ブラケット11および反ポンプ側ブラケット12に保持されている。より具体的には、ポンプ側ブラケット11は、モータハウジング23のポンプ側端部23Aの内面を支持する嵌合部35を有し、反ポンプ側ブラケット12は、モータハウジング23の反ポンプ側端部23Bの内面を支持する嵌合部36を有している。ポンプ側ブラケット11の嵌合部35は、モータハウジング23のポンプ側端部23Aの内面に嵌合し、ポンプ側端部23Aの内面と面接触する。反ポンプ側ブラケット12の嵌合部36は、モータハウジング23の反ポンプ側端部23Bの内面に嵌合し、反ポンプ側端部23Bの内面と面接触する。このような構造により、モータハウジング23の両端は、その内側からポンプ側ブラケット11および反ポンプ側ブラケット12により支持される。反ポンプ側ブラケット12は、モータハウジング23の内部と外部との流体の連通を許容しない密閉構造を有している。
【0018】
ポンプ装置は、羽根車2の裏側に配置された軸封装置40を備えている。軸封装置40の具体例としては、メカニカルシールが挙げられる。軸封装置40の回転側リングは羽根車2に固定され、軸封装置40の固定側リングは、羽根車ケーシング15に固定されている。
【0019】
ポンプ装置の動作は次の通りである。電動機7が回転軸5および羽根車2を回転させると、液化ガスは吸込み口16を通って羽根車ケーシング15内に流入し、さらに液体入口2aを通って羽根車2内に流入する。液化ガスは、羽根車2の回転に伴って昇圧され、吐出し口(図示せず)から吐き出される。羽根車ケーシング15内の液化ガスの一部は、軸封装置40を通過してモータハウジング23内に移動するが、モータハウジング23の内部空間は、流体の通過を許容しない蓋構造を持つ反ポンプ側ブラケット12によって密閉されているので、液化ガスあるいはそのボイルオフガスが電動機7の外部に漏洩することはない。
【0020】
ポンプ装置の運転中は、電動機7(特にコイル26)は熱を発する。この熱は、熱伝導率の高いアルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されたモータハウジング23に伝わり、さらにポンプ側ブラケット11および羽根車ケーシング15を経由して低温の液化ガスに伝わる。このように、モータステータ22からモータハウジング23、ポンプ側ブラケット11、および羽根車ケーシング15を経由して液化ガスに伝わる熱の流れが形成されるので、冷却ファンを用いることなく、電動機7を冷却することができる。また、冷却ファンが不要になるので、電動機7へ空気を取り込むための通気口が不要となる。結果として、液化ガスまたはそのボイルオフガスの外部への漏洩を防止することができる。
【0021】
一般にモータハウジングに使用される鋳鉄の熱伝導率(約50W/mK)に比べて、アルミニウムまたはアルミニウム合金の熱伝導率(約200W/mK)は高く、アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されたモータハウジング23は、熱を効率よく伝達することができる。
【0022】
アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されたモータハウジング23は、高い熱伝導率を有する反面、鋳鉄に比べて線膨張係数が大きい。すなわち、モータハウジング23は冷却されたときに、収縮しやすい。ポンプ装置の運転中は、上述したように、電動機7が発熱するため、モータハウジング23の温度が上昇し、モータハウジング23は大きくは収縮しない。しかしながら、ポンプ装置の始動前および始動時には、モータハウジング23の温度は液化ガスの温度近くまで低下しているため、モータハウジング23が大きく収縮し、電磁鋼板からなるステータコア27を圧縮し、ステータコア27を破損するおそれがある。
【0023】
そこで、本実施形態では、モータハウジング23によるステータコア27の圧縮を防ぐために、モータハウジング23の両側は、ポンプ側ブラケット11および反ポンプ側ブラケット12で支持されている。より具体的には、ポンプ側ブラケット11および反ポンプ側ブラケット12の嵌合部35,36は、モータハウジング23の両側を内側から支えている。このような構成により、モータハウジング23が冷却されたときに、モータハウジング23がステータコア27を圧縮することが防止できる。
【0024】
ポンプ側ブラケット11および反ポンプ側ブラケット12は、モータハウジング23よりも線膨張係数の小さい材料から構成されている。したがって、ポンプ側ブラケット11および反ポンプ側ブラケット12が冷却されたときに、ポンプ側ブラケット11および反ポンプ側ブラケット12は、モータハウジング23よりも収縮しにくい。モータハウジング23によるステータコア27の圧縮を防止する観点から、本実施形態では、ポンプ側ブラケット11および反ポンプ側ブラケット12は、電磁鋼板から構成されたステータコア27よりも線膨張係数の小さい材料から構成されている。
【0025】
一実施形態では、ポンプ側ブラケット11および反ポンプ側ブラケット12は、鉄から構成される。鉄の線膨張係数は、約11×10-6[/℃]であり、電磁鋼板の線膨張係数は、約13×10-6[/℃]であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金の線膨張係数は、約24×10-6[/℃]である。
【0026】
さらに、アルミニウムまたはアルミニウム合金の比重(約2.7g/cm3)は、鋳鉄の比重(約7.3g/cm3)よりも小さいので、ポンプ装置の全体を軽量化することができる。ポンプ装置の軽量化は、ロケットの打ち上げ時に大きな推力を得ることが必要なロケットエンジンに有利である。加えて、アルミニウムまたはアルミニウム合金は、鋳鉄等の鉄鋼材料と比べて低温脆性が小さいという性質がある。
【0027】
図2は、ポンプ装置の他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図1を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、ポンプ装置は、モータハウジング23の内周面に接触する補強環50を備えている。補強環50は、ステータコア27の線膨張係数よりも小さい線膨張係数を有する。例えば、補強環50は鉄から構成されている。
【0028】
補強環50は、モータステータ22とポンプ側ブラケット11との間に配置されている。本実施形態では、補強環50は、ポンプ側ブラケット11に隣接している。補強環50はモータハウジング23の内周面に嵌合されている。したがって、補強環50はモータハウジング23を内側から支持することができる。
【0029】
補強環50は、モータハウジング23が冷却されたときのモータハウジング23の収縮を防ぎ、ステータコア27の破損を防止するために設けられている。ポンプ1に近いモータハウジング23の部位は、液化ガスによって冷却されやすい。したがって、
図2に示すように、補強環50は、モータハウジング23のポンプ1に近い部位を支持する位置、すなわちポンプ側ブラケット11に隣接した位置に配置されている。追加の補強環を、モータステータ22と反ポンプ側ブラケット12との間に設けてもよい。
【0030】
図3は、ポンプ装置のさらに他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図1を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、モータハウジング23は、その内面に形成された複数の溝60を有している。複数の溝60は、回転軸5の軸方向に延びている。各溝60は、ステータコア27の軸方向長さよりも長い。
図3に示す実施形態では、各溝60の反ポンプ側端部は、モータハウジング23の反ポンプ側端部23Bまで延び、反ポンプ側ブラケット12に達している。各溝60のポンプ側端部は、モータハウジング23のポンプ側端部23Aおよびポンプ側ブラケット11には達していない。
【0031】
図4は、
図3に示すモータハウジング23およびモータステータ22のA-A線断面図である。
図4では、図面の簡略化のために、モータロータ21および回転軸5などいくつかの要素の図示は省略されている。
図4に示すように、複数の溝60は、回転軸5の軸心Oの周りに等間隔で配列されている。
図4に示す実施形態では、4つの溝60が設けられているが、2つまたは3つの溝60でもよく、または5つ以上の溝60が設けられてもよい。
【0032】
図5は、モータハウジング23が冷却され、収縮したときの状態を説明する図である。
図5に示すように、モータハウジング23が収縮すると、モータハウジング23の周方向の長さが減少し、それを補うために、各溝60が周方向に広がる。このように、複数の溝60は、モータハウジング23の収縮を緩和するように変形するので、モータステータ22の圧縮を緩和することができる。
【0033】
一実施形態では、
図6に示すように、各溝60のポンプ側端部は、モータハウジング23のポンプ側端部23Aまで延び、ポンプ側ブラケット11に達している。各溝60の反ポンプ側端部は、モータハウジング23の反ポンプ側端部23Bおよび反ポンプ側ブラケット12には達していない。
【0034】
図3に示す実施形態では、モータハウジング23のポンプ側端部23Aには溝60は形成されていないので、モータステータ22で発生した熱はモータハウジング23を通じてポンプ1内の液化ガスに伝わりやすい。一方、
図6に示す実施形態では、液化ガスによって最も冷却されるモータハウジング23のポンプ側端部23Aに溝60が形成されているので、ポンプ側端部23Aの収縮によるモータステータ22の圧縮を緩和させることができる。
【0035】
一実施形態では、
図7に示すように、各溝60はモータハウジング23の軸方向の全長に亘って延びてもよい。すなわち、各溝60のポンプ側端部は、モータハウジング23のポンプ側端部23Aまで延び、ポンプ側ブラケット11に達している。各溝60の反ポンプ側端部は、モータハウジング23の反ポンプ側端部23Bまで延び、反ポンプ側ブラケット12に達している。図示しないが、一実施形態では、各溝60がステータコア27の軸方向長さよりも長い限りにおいて、各溝60は、ポンプ側ブラケット11および反ポンプ側ブラケット12に達していなくてもよい。
【0036】
一実施形態では、ポンプ装置は、
図2を参照して説明した補強環50と、
図3乃至
図7を参照して説明した溝60の両方を備えてもよい。
【0037】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0038】
1 ポンプ
2 羽根車
5 回転軸
7 電動機
11 ポンプ側ブラケット
12 反ポンプ側ブラケット
15 羽根車ケーシング
16 吸込み口
21 モータロータ
22 モータステータ
23 モータハウジング
26 コイル
27 ステータコア
31,32 軸受
35,36 嵌合部
40 軸封装置
50 補強環
60 溝