(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062378
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
G01R15/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128202
(22)【出願日】2023-08-04
(62)【分割の表示】P 2022169617の分割
【原出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻本 真規
(72)【発明者】
【氏名】石田 拓也
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA02
2G025AA04
2G025AA05
2G025AA17
2G025AB01
2G025AC01
(57)【要約】
【解決手段】電流センサは、少なくとも1つの磁電変換素子、導体、及び信号処理ICが封止部で封止されることで構成される。電流センサは、封止部の外部に一部が露出し、導体と電気的に接続され、計測電流を導体に入力し、導体からの計測電流を出力する一対の第1リード端子と、封止部の外部に一部が露出し、前記導体と離隔する金属製部材と、記少なくとも1つの磁電変換素子、信号処理IC、及び金属製部材とを第1面で支持し、導体とは離隔する、前記金属製部材とは別個の支持部とを備える。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの磁電変換素子と、
前記少なくとも1つの磁電変換素子を平面視で少なくとも部分的に取り囲み、前記少なくとも1つの磁電変換素子で計測される計測電流が流れる導体と、
前記少なくとも1つの磁電変換素子から出力される信号を処理する信号処理ICと、
前記少なくとも1つの磁電変換素子、前記導体、及び前記信号処理ICを封止する封止部と、
前記封止部の外部に一部が露出し、前記導体と電気的に接続され、前記計測電流を前記導体に入力し、前記導体からの前記計測電流を出力する一対の第1リード端子と、
前記封止部の外部に一部が露出し、前記導体と離隔する金属製部材と、
前記少なくとも1つの磁電変換素子、前記信号処理IC、及び前記金属製部材とを第1面で支持し、前記導体とは離隔する、前記金属製部材とは別個の支持部と、
前記封止部の外部に一部が露出し、少なくとも1つが前記信号処理ICと電気的に接続される複数の第2リード端子と
を備え、
前記金属製部材は、前記複数の第2リード端子のうちの少なくとも1つの第2リード端子であり、平面視で前記信号処理ICと重ならず、
前記一対の第1リード端子と、前記複数の第2リード端子とは、前記信号処理ICの厚さ方向と交差する第1方向において、前記信号処理ICを介して対向して配置され、
前記支持部は、絶縁体または半導体で構成される、電流センサ。
【請求項2】
前記金属製部材は、前記複数の第2リード端子のうちの1つの第2リード端子である第1金属製部材と、前記複数の第2リード端子とは別個である第2金属製部材とを含む、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記第1金属製部材と前記第2金属製部材とは、前記信号処理ICの前記厚さ方向及び前記第1方向と交差する第2方向において離間しており、
前記支持部の前記第2方向において対向する2つの端部の一方は、前記第1金属製部材を支持し、前記2つの端部の他方は、前記第2金属製部材を支持する、請求項2に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記支持部は、貫通孔を有する、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記導体は、前記支持部の前記第1面と、前記導体の前記第1面と対向する面とが前記導体の厚さ方向において離隔するように段差部を有する、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項6】
前記支持部のヤング率は、100GPa以下、または前記支持部の厚さは、0.1mm未満、または前記支持部の線膨張係数は、10×10-6/K以下である、請求項1から5の何れか1つに記載の電流センサ。
【請求項7】
前記支持部は、高分子材料で構成される、あるいは前記支持部の材料の90%以上がシリコンまたはゲルマニウムで構成される、請求項1から5の何れか1つに記載の電流センサ。
【請求項8】
前記信号処理ICの厚さ方向と交差する前記第1方向から見て、前記信号処理ICの前記支持部の前記第1面に支持される面と反対側の面は、前記第1面と同じ側の前記導体の面から0.15mm以上突出していない、請求項1から5の何れか1つに記載の電流センサ。
【請求項9】
前記支持部は、
前記信号処理ICと、前記金属製部材とを前記第1面で支持するIC支持部と、
前記IC支持部とは別個であり、前記少なくとも1つの磁電変換素子と、前記金属製部材とを前記第1面で支持する素子支持部と
を含む、請求項1から5の何れか1つに記載の電流センサ。
【請求項10】
前記素子支持部の前記第1方向における幅は、0.4mm以上である、請求項9に記載の電流センサ。
【請求項11】
前記支持部の前記第1方向における幅は、0.4mm以上である、請求項1から5の何れか1つに記載の電流センサ。
【請求項12】
前記IC支持部と前記素子支持部とは前記第1方向において離隔している、請求項9に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、磁電変換素子を有する電流センサが開示されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特許第6415148号
[特許文献2] 特許第6017182号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
磁電変換素子を有する電流センサにおいて、より確実に絶縁性を維持することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様に係る電流センサは、少なくとも1つの磁電変換素子を備えてよい。前記電流センサは、前記少なくとも1つの磁電変換素子を平面視で少なくとも部分的に取り囲み、前記少なくとも1つの磁電変換素子で計測される計測電流が流れる導体を備えてよい。前記電流センサは、前記少なくとも1つの磁電変換素子から出力される信号を処理する信号処理ICを備えてよい。前記電流センサは、前記少なくとも1つの磁電変換素子、前記導体、及び前記信号処理ICを封止する封止部を備えてよい。前記電流センサは、前記封止部の外部に一部が露出し、前記導体と電気的に接続され、前記計測電流を前記導体に入力し、前記導体からの前記計測電流を出力する一対の第1リード端子を備えてよい。前記電流センサは、前記封止部の外部に一部が露出し、前記導体と離隔する金属製部材を備えてよい。前記電流センサは、前記少なくとも1つの磁電変換素子、前記信号処理IC、及び前記金属製部材とを第1面で支持し、前記導体とは離隔する、前記金属製部材とは別個の支持部を備えてよい。
【0005】
前記電流センサは、前記封止部の外部に一部が露出し、少なくとも1つが前記信号処理ICと電気的に接続される複数の第2リード端子をさらに備えてよい。前記金属製部材は、前記複数の第2リード端子のうちの少なくとも1つの第2リード端子でよい。
【0006】
いずれかの前記電流センサは、前記封止部の外部に一部が露出し、少なくとも1つが前記信号処理ICと電気的に接続される複数の第2リード端子をさらに備えてよい。前記金属製部材は、前記複数の第2リード端子とは別個である。
【0007】
いずれかの前記電流センサは、前記封止部の外部に一部が露出し、前記信号処理ICと電気的に接続される複数の第2リード端子をさらに備えてよい。前記金属製部材は、前記複数の第2リード端子のうちの1つの第2リード端子である第1金属製部材と、前記複数の第2リード端子とは別個である第2金属製部材とを含んでよい。
【0008】
いずれかの前記電流センサにおいて、前記支持部は、貫通孔を有してよい。
【0009】
いずれかの前記電流センサにおいて、前記導体は、前記支持部の前記第1面と、前記導体の前記第1面と対向する面とが前記導体の厚さ方向において離隔するように段差部を有してよい。
【0010】
いずれかの前記電流センサにおいて、前記支持部のヤング率は、100GPa以下、または前記支持部の厚さは、0.1mm未満、または前記支持部の線膨張係数は、10×10-6/K以下でよい。
【0011】
いずれかの前記電流センサにおいて、前記支持部は、絶縁体または半導体で構成されてよい。
【0012】
いずれかの前記電流センサにおいて、前記支持部は、高分子材料で構成される、あるいは前記支持部の材料の90%以上がシリコンまたはゲルマニウムで構成されてよい。
【0013】
いずれかの前記電流センサにおいて、前記信号処理ICの厚さ方向と交差する第1方向から見て、前記信号処理ICの前記支持部の前記第1面に支持される面と反対側の面は、前記第1面と同じ側の前記導体の面から0.15mm以上突出していなくてよい。
【0014】
いずれかの前記電流センサにおいて、前記支持部は、前記信号処理ICと、前記金属製部材とを前記第1面で支持するIC支持部と、前記IC支持部とは別個であり、前記少なくとも1つの磁電変換素子と、前記金属製部材とを前記第1面で支持する素子支持部とを含んでよい。
【0015】
いずれかの前記電流センサにおいて、前記一対の第1リード端子と、前記複数の第2リード端子とは、前記信号処理ICの厚さ方向と交差する第1方向において、前記信号処理ICを介して対向して配置され、前記素子支持部の前記第1方向における幅は、0.4mm以上でよい。
【0016】
いずれかの前記電流センサにおいて、前記一対の第1リード端子と、前記複数の第2リード端子とは、前記信号処理ICの厚さ方向と交差する第1方向において、前記信号処理ICを介して対向して配置され、前記IC支持部と前記素子支持部とは前記第1方向において離隔していてよい。
【0017】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】第1実施形態に係る電流センサの天井面側から見た模式的な平面図である。
【
図1C】電流センサが2つの磁電変換素子を有する場合の導体及びリード端子の一例を示す平面図である。
【
図1D】支持部を支持するリード端子の他の例について説明するための図である。
【
図2A】第2実施形態に係る電流センサの天井面側から見た模式的な平面図である。
【
図3A】第3実施形態に係る電流センサの天井面側から見た模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
電流センサは、計測対象の計測電流が流れる1次導体と、計測電流に起因して発生する磁界を検出する磁電変換素子と、磁電変換素子の信号を増幅して外部に出力する信号処理ICとを備え、1次導体、磁電変換素子、及び信号処理ICを樹脂で封止することで1つの半導体パッケージとして提供される。
【0021】
例えば、特許文献1には、U字形状の1次導体と、1次導体の開口部に配置される磁電変換素子と、信号処理ICとを備える電流センサが開示されている。磁電変換素子を支持する絶縁部材は、1次導体とは接触せずに、信号処理ICを支持する支持部の底面に接触するように配置されている。
【0022】
また、特許文献2には、同様にU字形状の1次導体と、1次導体の開口部に配置される磁電変換素子と、信号処理ICとを備える電流センサが開示されている。磁電変換素子を支持する絶縁部材は、1次導体の裏面に接触するように配置されている。
【0023】
特許文献1及び特許文献2に記載の電流センサでは、信号処理ICを支持するIC支持部が、2次側のリード端子である信号端子部と同一の金属製部材で構成されている。しかしながら、IC支持部に剛性が高い金属部材を使用すると、使用環境の温度変化により大きな熱応力が発生する。特に電流センサは、1次導体に大電流を流すことがあり、パッケージ内部で大きな発熱が起こることから、温度変化が日常的に起きやすく、信号処理ICが割れる懸念がある。
【0024】
上記のような懸念に対して、信号処理ICを厚くすることである程度の対策が可能である。しかしながら、特許文献1及び特許文献2において、IC支持部は、信号端子部と同一の厚さの金属部材であり、IC支持部の一面に信号処理ICが配置されている。信号端子部の厚さは、一次導体と同じリードフレームを用いる場合には、電流の印加に耐えるため、0.15mm以上の厚さのものを使うことが多い。そのため、IC支持部上に信号処理ICが配置された状態でパッケージングすると、パッケージの厚さが大きくなってしまう。
【0025】
特許文献1及び特許文献2に記載の電流センサにおいて、磁電変換素子及び信号処理ICは、一次導体を跨ぐワイヤで電気的に接続されている。よって、ワイヤが、一般的なICパッケージで使用されるワイヤよりも長くなり、ワイヤが、モールド工程中に接触するリスクが高くなる。そこで、ワイヤをできるだけ短くするために、IC支持部と一次導体との距離は短く設計されることが好ましい。しかしながら、IC支持部と一次導体との距離を短くし、IC支持部を一次導体を取り囲むように配置し、さらにIC支持部の下面に絶縁部材が存在する形態の場合、モールド樹脂の埋め込み性が悪くなり、沿面が形成されることにより一次導体と信号処理ICとの間の絶縁性が保てなくなる懸念がある。
【0026】
そこで、第1実施形態~第3実施形態では、一次導体と信号処理ICとの間の絶縁性をより確実に確保可能な電流センサを提供する。
【0027】
図1A及び
図1Bは、第1実施形態に係る電流センサ10として機能する半導体パッケージの内部構成を示す。
図1Aは、第1実施形態に係る電流センサ10の天井面側(Z方向)から見た模式的な平面図である。
図1Bは、
図1Aに示す電流センサ10のA-A線断面図である。
【0028】
電流センサ10は、信号処理IC100、磁電変換素子20、支持部110、導体120、封止部130、一対のリード端子140、複数のリード端子150、及び吊りピン160を備える。磁電変換素子20は、ワイヤ30を介して信号処理IC100と電気的に接続される。信号処理IC100は、ワイヤ108を介して複数のリード端子150と電気的に接続される。
【0029】
封止部130は、磁電変換素子20、導体120、信号処理IC100、ワイヤ30、及びワイヤ108を樹脂で封止する。樹脂は、例えば、シリカが添加されたエポキシ系の熱硬化型樹脂でよい。一対のリード端子140は、一次側のリード端子であり、一対の第1リード端子の一例である。複数のリード端子150は、二次側のリード端子であり、複数の第2リード端子の一例である。
【0030】
座標は、
図1Aにおいて、紙面に対して平行で下から上の向きをX軸方向、紙面に対して平行で右から左の向きをY軸方向、紙面に対して垂直で奥から手間の向きをZ軸方向と定義する。X軸、Y軸、及びZ軸の何れか1つの軸は、他の軸と直交する。
【0031】
磁電変換素子20が、導体120に流れる計測電流に応じて変化する特定方向の磁場を検出して、信号処理IC100が、磁界の大きさに応じた信号を増幅して、増幅された信号をリード端子150を介して出力する。磁電変換素子20は、GaAs基板上に形成された化合物半導体からなり、Z軸方向からの平面視で正方形または長方形で切り出されたチップでよい。磁電変換素子20は、シリコン、または化合物半導体で構成された基板と、基板上に設けられる磁電変換部とを有してよい。基板の厚さは、Z方向負側の面を研磨することで調整される。基板は、50μmから600μmの範囲の所望の厚さを有してよい。Z方向の磁界を検出することになるので、ホール素子が、図示の磁電変換素子として適当である。また、磁電変換素子20がXY平面上の何れか1軸方向の磁界を検出する位置に配置されるのであれば、例えば、X方向の磁界を検出する位置に配置されるのであれば、磁気抵抗素子、またはフラックスゲート素子が、磁電変換素子として適当である。
【0032】
第1実施形態では、電流センサ10は、1つの磁電変換素子20を備える例について説明する。しかし、電流センサ10は、2つ以上の磁電変換素子20を備えてもよい。導体120は、複数の磁電変換素子20のそれぞれの側面の少なくとも一部を取り囲むように構成されてよい。複数の磁電変換素子20のそれぞれの間には、導体120の一部が配置されてよい。電流センサ10が2つの磁電変換素子20a及び20bを備える場合、導体120は、例えば、
図1Cに示すように、側面130a側に開口するスリット140aを有し、側面130d側に開口するスリット140cを有する。磁電変換素子20aは、スリット140a内に配置され、磁電変換素子20bは、スリット140c内に配置されてよい。
【0033】
信号処理IC100は、大規模集積回路(LSI)である。信号処理IC100は、ワイヤ30を介して磁電変換素子20と電気的に接続される。信号処理IC100は、平面視で、長方形、または正方形に切り出される。さらに、信号処理IC100は、ワイヤ108を介して複数のリード端子150のうちの少なくとも2つのリード端子150と電気的に接続される。ワイヤ30及びワイヤ108は、Au、Ag、Cu、またはAlを主成分とする導電体材料で形成されてよい。信号処理IC100は、Si基板上に形成されたSiモノリシック半導体からなる信号処理回路である。Si基板の代わりに化合物半導体基板でもよい。信号処理回路は、磁電変換素子20から出力される磁界の大きさに応じた出力信号を処理する。信号処理回路は、出力信号に基づいて導体120に流れる計測電流の電流値を示す出力信号をリード端子150を介して出力する。信号処理IC100は、平面視で、長方形、または正方形に切り出される。信号処理IC100の基板の厚さは、Z方向負側の面を研磨することで調整される。基板は、50μmから600μmの範囲の所望の厚さを有する。信号処理IC22の信号処理回路は、磁電変換素子の磁界の大きさに応じた微小な出力信号を入力して、少なくとも入力信号を増幅する回路が備えられる。
【0034】
導体120は、平面視でU字形状を成し、磁電変換素子20の側面を少なくとも部分的に取り囲み、磁電変換素子20で計測される計測電流が流れる。導体120は、一対のリード端子140と電気的に接続される。導体120は、一対のリード端子140と物理的に一体的に構成されてよい。一対のリード端子140の一方のリード端子140から計測電流が入力され、導体120を介して他方のリード端子140から計測電流が出力される。一対のリード端子140及び導体120は、銅を主成分とする導電体材料のリードフレームにより一体的に構成されてよい。一対のリード端子140及び導体120には、磁電変換素子20で計測される計測電流が流れる。導体120は、側面130a側に開口するスリット140aを有する。磁電変換素子20は、スリット140a内に配置される。導体120を流れる計測電流は、U字形状の一方の端から他方の端に沿って流れる。これにより、導体120の周囲に、計測電流の大きさと、導体120からの距離とに応じた磁界が生成される。磁電変換素子20が配置された位置では、Z方向成分が最も大きくなるような磁界が発生する。磁電変換素子20は、スリット140aの中に配置されるので、計測電流に対して高い感度が得られる。
【0035】
一対のリード端子140と、複数のリード端子150とは、信号処理IC100の厚さ方向(Z軸方向)と交差する方向(Y方向)において、信号処理IC100を介して対向して配置される。一対のリード端子140の一部は、封止部130の側面130aから露出する。複数のリード端子150の一部は、封止部130の側面130aとは反対側の側面130bから露出する。吊りピン160の一部は、封止部130の側面130a及び側面130bとは異なるX方向において対向する側面130c及び側面130dから露出する。吊りピン160は、製造段階で半導体パッケージをリードフレームに支持するための金属製部材である。吊りピン160は、組立工程を通して、成型されたモールド樹脂である封止部130を支えるためのリードである。
【0036】
複数のリード端子150の少なくとも2つのリード端子150が信号処理IC100と電気的に接続される金属製部材であり、吊りピン160は、信号処理IC100から出力される信号を直接外部に取り出すことがない金属製部材である。吊りピン160は、信号処理IC100と電気的に接続されなくてもよい。吊りピン160は、複数の第2リード端子とは別個である。複数のリード端子150、及び吊りピン160は、一対のリード端子140及び導体120とともに銅を主成分とする導電体材料のリードフレームにより構成されてよい。複数のリード端子150、及び吊りピン160は、導体120と隔離され、導体120と電気的に絶縁されている。リードフレームは、50μmから600μmの範囲の所望の厚さを有する。
【0037】
支持部110は、板状の部材であり、磁電変換素子20、及び信号処理IC100を封止部130の天井面側の面110aで支持し、導体120とは離隔する。支持部110は、導体120と電気的に絶縁されている。導体120は、支持部110と接触することを防止すべく、支持部110から離隔する方向に段差部140bを有する。すなわち、導体120は、支持部110の面110aと、回路面110aと対向する導体120の面とが導体120の厚さ方向において離隔するように段差部140bを有する。支持部110と導体120とが接触しないように、段差部140bは、半抜き加工により導体120に設けられてよい。段差部140bは、コイニング加工で導体120に設けられてもよい。磁電変換素子20は、接着層22を介して支持部110の面110aに接着されてよい。信号処理IC100は、接着層116を介して支持部110の面110aに接着されてよい。接着層22及び接着層116は、粘着テープでよい。粘着テープは、エポキシ系の樹脂で構成されるテープでよく、一般的な接着層を有するダイボンドテープ、もしくは接着層を有するダイジングテープを兼ねたダイボンドテープでよい。
【0038】
支持部110は、封止部130の天井面側の面110aで、複数のリード端子150のうちの2つのリード端子150a及び150bをさらに支持する。リード端子150a及び150bは、磁電変換素子20及び信号処理IC100と同様に接着層を介して支持部110の面110aに接着されてよい。2つのリード端子150a及び150bは、他のリード端子150より一対のリード端子140側に伸びる。平面視(Z方向から見て)において、2つのリード端子150a及び150bの間には、信号処理IC100及び磁電変換素子20が配置される。2つのリード端子150a及び150bは、支持部110に支持される金属製部材の一例である。
図1Aに示す例では、リード端子150aは、最も封止部130の側面130c側に位置し、信号処理IC100と電気的に接続されていない。また、リード端子150bは、最も封止部130の側面130d側のリード端子150の内側に位置し、信号処理IC100と電気的に接続されている。しかし、2つのリード端子150a及び150bは、複数のリード端子150の任意の2つのリード端子でよい。例えば、
図1Dに示すように、リード端子150aは、最も封止部130の側面130c側のリード端子150の内側に位置し、信号処理IC100と電気的に接続されてもよい。また、支持部110に支持される金属製部材は、吊りピン160でもよい。さらに、支持部110に支持される金属製部材は、吊りピン160とリード端子150の両方でもよい。
【0039】
リード端子140の封止部130からの露出開始部分、及びリード端子150の封止部130からの露出開始部分は、信号処理IC100の厚さ方向と交差する方向(Y方向)から見て、信号処理IC100と重なっている。リード端子140の封止部130からの露出開始部分、及びリード端子150の封止部130からの露出開始部分は、信号処理IC100の厚さ方向と交差する方向(Y方向)から見て、支持部110とは重なっていない。
【0040】
ここで、支持部110は、絶縁体または半導体で構成されてよい。支持部110の線膨張係数は、10×10-6/K以下でよい。すなわち、支持部110の材料の90%以上は、シリコンまたはゲルマニウムで構成されてよい。または、支持部110のヤング率は、100GPa以下でよい。すなわち、支持部110は、高分子材料で構成されてよい。このように、支持部110は、金属製部材ではなく、絶縁性または半導体製の部材で構成されてよい。または、ヤング率が100GPaよりも高かったとしても支持部110の厚さは、0.1mm未満であればよい。
【0041】
支持部110は、例えば、ポリイミドテープなどの高分子テープなど、弾性率が低い絶縁部材で構成されてよい。支持部110は、シリコンなどの線膨張係数が信号処理ICまたは磁電変換素子20の線膨張係数に近い部材で構成されてよい。支持部110は、厚さが0.1mm未満である部材で構成されてよい。これにより、封止部130内で発生する熱の変化で信号処理ICに作用する応力を低減できる。
【0042】
また、信号処理IC100の厚さ方向と交差する方向(X方向またはY方向)から見て、信号処理IC100の支持部110の面110aに支持される面と反対側の面100aは、面100aと同じ側の導体120の面120aから0.15mm以上、信号処理IC100の厚み方向に突出していない。すなわち、信号処理IC100の面100aが、導体120の面120aから信号処理IC100の厚み方向に突出する高さは、0.15mm未満である。これにより、信号処理IC100が、パッケージの高さの制限にならず、薄型のパッケージを実現できる。
【0043】
信号処理IC100と磁電変換素子20とを電気的に接続するワイヤ30は、導体120の上を跨ぐ。加工上のばらつきも考慮した上で耐圧を確保するために、0.15mm程度、ワイヤ30を導体120から離隔させる必要がある。よって、信号処理IC100の面100aが導体120の面120aから0.15mm以上突出しなければ、信号処理IC100が、パッケージの高さの制限にならない。
【0044】
信号処理IC100の厚さ方向における高さは、リード端子140と同程度の高さを実現できるので、パッケージを薄くできる。また、支持部110が、導体120を取り囲む形状でなく、リード端子150と一体的に構成され、信号処理IC100を支持する支持部が存在しない。よって、パッケージを薄くでき、樹脂も埋め込みやすくできる。
【0045】
ここで、支持部110は複数の貫通孔を有してよい。これにより、複数の貫通孔内にも樹脂が埋め込まれるので、樹脂の埋め込み性をさらに向上させることができる。
【0046】
以上、第1実施形態に係る電流センサ10によれば、薄型のパッケージで、絶縁性をより確実に実現できる。
【0047】
図2A及び
図2Bは、第2実施形態に係る電流センサ10として機能する半導体パッケージの内部構成を示す。
図2Aは、第2実施形態に係る電流センサ10の天井面側(Z方向)から見た模式的な平面図である。
図2Bは、
図2Aに示す電流センサ10のA-A線断面図である。
【0048】
第2実施形態に係る電流センサ10は、支持部110が、信号処理IC100を支持するIC支持部112と、IC支持部112とは別個であり、磁電変換素子20を支持する素子支持部114とを有する点で、第1実施形態に係る電流センサ10と異なる。
【0049】
IC支持部112、及び素子支持部114は、封止部130の天井面側の面112a及び面114aを含む第1面で、複数のリード端子150のうちの2つのリード端子150a及び150bをさらに支持する。第1面は、IC支持部112及び素子支持部114の同じ側の面であるIC支持部112の面112a及び素子支持部114の面114aを含み、面112a及び面114aは、同一平面上にあっても良いが、必ずしも同一平面上に無くても良い。リード端子150a及び150bは、磁電変換素子20及び信号処理IC100と同様に接着層を介してIC支持部112の面112aに接着されてよい。2つのリード端子150a及び150bは、複数のリード端子150のうちの両端の2つのリード端子150より内側のリード端子でよい。複数のリード端子150のうち、IC支持部112を支持するリード端子150は、任意のリード端子150でよく、IC支持部112のX方向における幅に応じて選択されてよい。
【0050】
素子支持部114とリード端子150a及び150bとが接着される接着領域が小さ過ぎると、素子支持部114が変形しやすくなり、撓みまたは捻じれにより磁電変換素子20の位置がずれ、感度の個体間のばらつきが大きくなってしまう。また、接着領域が小さすぎると、製造工程で素子支持部114とリード端子150a及び150bとが剥がれてしまう可能性が高まる。さらに、素子支持部114としてポリイミドテープなどの高分子テープを使うことが考えられるが、幅が狭すぎる加工が一般的に難しい。そのため、加工の実現性を考慮して、接着領域の少なくとも1辺は、0.4mm以上であることが好ましい。すなわち、素子支持部114のY方向における幅は、0.4mm以上であることが好ましい。
【0051】
第2実施形態に係る電流センサ10によれば、支持部110として機能するIC支持部112と素子支持部114とが別個で構成され、IC支持部112と素子支持部114とが離隔して配置される。よって、IC支持部112と素子支持部114との間にも樹脂が埋め込まれ、樹脂の埋め込み性がさらに向上する。よって、第2実施形態に係る電流センサ10によれば、絶縁性をより確実に実現できるようになる。
【0052】
なお、IC支持部112と素子支持部114とは異なる材料で構成されてもよい。
【0053】
図3A及び
図3Bは、第3実施形態に係る電流センサ10として機能する半導体パッケージの内部構成を示す。
図3Aは、第3実施形態に係る電流センサ10の天井面側(Z方向)から見た模式的な平面図である。
図3Bは、
図3Aに示す電流センサ10のA-A線断面図である。
【0054】
第3実施形態に係る電流センサ10は、IC支持部112が支持する金属製部材がリード端子150a及び150bであるが、素子支持部114が支持する金属製部材が吊りピン160である点で、第2実施形態に係る電流センサ10と異なる。リード端子150a及び150bが、第1金属製部材の一例であり、吊りピン160は、第2金属製部材の一例である。吊りピン160によってIC支持部112と素子支持部114の両方を保持してもよい。
【0055】
第3実施形態に係る電流センサ10において、吊りピン160は、封止部130の側面130c及び130dから磁電変換素子20に向かって、導体120に対向する位置まで延びる。吊りピン160は、導体120とは離隔し、導体120と電気的に絶縁されている。
【0056】
素子支持部114と吊りピン160とが接着される接着領域が小さ過ぎると、素子支持部114が変形しやすくなり、撓みまたは捻じれにより磁電変換素子20の位置がずれ、感度の個体間のばらつきが大きくなってしまう。また、接着領域が小さすぎると、製造工程で素子支持部114と吊りピン160とが剥がれてしまう可能性が高まる。さらに、素子支持部114としてポリイミドテープなどの高分子テープを使うことが考えられるが、幅が狭すぎる加工が一般的に難しい。そのため、加工の実現性を考慮して、接着領域の少なくとも1辺は、0.4mm以上であることが好ましい。すなわち、素子支持部114のY方向における幅は、0.4mm以上であることが好ましい。
【0057】
IC支持部112の両端の接着領域の部分が互いに離れると、捻じれたり、リード端子150との接着が剥がれやすくなり、信号処理IC100の位置が変動したり、信号処理IC100の姿勢が傾いたりする可能性がある。これにより、磁電変換素子20と信号処理IC100とを電気的に接続させるワイヤ30に応力がかかりやすくなる懸念がある。そこで、リード端子150を信号処理IC100に近づけ、IC支持部112が、信号処理IC100の幅に対して大き過ぎない長さを有することで、捻じれたり、リード端子150との接着が剥がれやすくなることを防止できる。
【0058】
また、IC支持部112と素子支持部114とが別個で構成され、IC支持部112と素子支持部114とが離隔して配置される。よって、IC支持部112と素子支持部114との間にも樹脂が埋め込まれ、樹脂の埋め込み性がさらに向上する。よって、第3実施形態に係る電流センサ10によれば、絶縁性をより確実に実現できるようになる。また、IC支持部112と素子支持部114とが別個で構成され、素子支持部114により支持される金属製部材が、信号処理IC100と電気的に接続されない吊りピン160であるので、リード端子150に余計なノイズが載りにくくなる。
【0059】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0060】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0061】
10 電流センサ
20 磁電変換素子
22,116 接着層
30,108 ワイヤ
100 信号処理IC
110 支持部
112 IC支持部
114 素子支持部
120 導体
130 封止部
130a,130b,130c,130d 側面
140 リード端子
140a スリット
150,150a,150b リード端子
160 吊りピン