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  • 特開-積層体および包装袋 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006244
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】積層体および包装袋
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240110BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20240110BHJP
   B65D 30/16 20060101ALI20240110BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D30/02
B65D30/16 C
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106956
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】桑原 弘嗣
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 透
【テーマコード(参考)】
3E064
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E064AB25
3E064BA17
3E064BA26
3E064BA30
3E064BA36
3E064BA54
3E064BB03
3E064BC20
3E064EA07
3E064FA01
3E064FA04
3E064FA06
3E064GA04
3E086AA23
3E086AB01
3E086AC12
3E086AC13
3E086AC15
3E086AD01
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BA33
3E086BB23
3E086BB35
3E086BB58
3E086BB62
3E086BB63
3E086CA11
3E086CA28
3E086CA40
4F100AB10E
4F100AK04A
4F100AK07B
4F100AK07D
4F100AK15C
4F100AK25C
4F100AK51C
4F100AK62A
4F100AK66B
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA07
4F100EH46C
4F100EH66E
4F100EJ38B
4F100EJ38D
4F100GB15
4F100HB31C
(57)【要約】
【課題】リサイクル性に加えて、耐摩耗性が得られる積層体および包装袋を提供する。
【解決手段】厚さ方向の一方の端(最内層11a)には、ポリエチレン系樹脂層が配置され、厚さ方向の他方の端(最外層11b)には、コート層11cを外面に有する二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層が配置された積層体であって、積層体に含まれるフィルムがポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂のみからなる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向の一方の端には、ポリエチレン系樹脂層が配置され、厚さ方向の他方の端には、コート層を外面に有する二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層が配置された積層体であって、前記積層体に含まれるフィルムがポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂のみからなることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記コート層が、前記二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の外面の一部にのみ存在することを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記コート層が、グラビア印刷により塗布されたコート層であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記コート層が、2液反応タイプのコート剤からなることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
少なくとも1の部材が、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体から形成されていることを特徴とする包装袋。
【請求項6】
スタンディングパウチであることを特徴とする請求項5に記載の包装袋。
【請求項7】
前記コート層が、前記スタンディングパウチの胴部材の下部にのみ存在することを特徴とする請求項6に記載の包装袋。
【請求項8】
液体を内封する用途であることを特徴とする請求項5に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体および包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の包装袋として、二つ折りにされた底部材が一対の胴部材の間に配置された自立性を有するスタンディングパウチが使用されている。特許文献1の段落0010には、シーラントを最内層とし、延伸フィルムを基材としたラミネートフィルムを用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-7630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の包装袋に使用される複合フィルムは、内面にポリエチレン(PE)等の熱接着性樹脂(シーラント)層、外面には、シーラントよりも耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(Ny)等の基材が積層されている。複合フィルムを熱接着する際には、シーラントを溶融させて複合フィルムの内面が接合される。しかし、異種の樹脂を含む包装袋は、プラスチック製容器包装としてのリサイクルが難しいという問題がある。
【0005】
近年、リサイクルを容易にするため、単一または同種の樹脂を用いるモノマテリアルの容器包装が提唱されている。例えば、二軸延伸ポリプロピレン(BO-PP)を基材とすることは、特許文献1にも記載されている。BO-PPとPEの組み合わせは、BO-PPとPEの融点差があるため、生産性に優れている。しかし、PETやNyとPEとの組み合わせに比べて、耐摩耗性が得られにくい。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、リサイクル性に加えて、耐摩耗性が得られる積層体および包装袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の態様を含む。
本発明の第1の態様は、厚さ方向の一方の端には、ポリエチレン系樹脂層が配置され、厚さ方向の他方の端には、コート層を外面に有する二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層が配置された積層体であって、前記積層体に含まれるフィルムがポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂のみからなることを特徴とする積層体である。
【0008】
本発明の第2の態様は、前記コート層が、前記二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の外面の一部にのみ存在することを特徴とする第1の態様の積層体である。
本発明の第3の態様は、前記コート層が、グラビア印刷により塗布されたコート層であることを特徴とする第1または第2の態様の積層体である。
本発明の第4の態様は、前記コート層が、2液反応タイプのコート剤からなることを特徴とする第1~3のいずれか1の態様の積層体である。
【0009】
本発明の第5の態様は、少なくとも1の部材が、第1~4のいずれか1の態様の積層体から形成されていることを特徴とする包装袋である。
本発明の第6の態様は、スタンディングパウチであることを特徴とする第5の態様の包装袋である。
本発明の第7の態様は、前記コート層が、前記スタンディングパウチの胴部材の下部にのみ存在することを特徴とする第6の態様の包装袋である。
本発明の第8の態様は、液体を内封する用途であることを特徴とする第5~7のいずれか1の態様の包装袋である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リサイクル性に加えて、耐摩耗性が得られる積層体および包装袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の包装袋を例示する正面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0013】
実施形態の積層体は、積層体に含まれるフィルムがポリオレフィン系樹脂のみからなる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂が挙げられる。
【0014】
積層体の厚さ方向の一方の端には、ポリエチレン系樹脂層が配置されている。積層体の厚さ方向の他方の端には、コート層を外面に有する二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層が配置されている。
【0015】
実施形態の積層体に含まれるフィルムは、一方の端に配置されるポリエチレン系樹脂層および他方の端に配置される二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層のみでもよい。これらの中間に、他のフィルムとして、ポリプロピレン系樹脂層またはポリエチレン系樹脂層が積層されてもよい。積層体に含まれるフィルム(樹脂層)の層数は特に限定されず、2層でも、3層でも、4層以上でもよい。
【0016】
図1に、実施形態の包装袋10の外観を示す。また、図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。包装袋10の前後は、図1では紙面に垂直、図2では左右である。
【0017】
包装袋10は、胴部材11と底部材12とから形成されている。胴部材11または底部材12に用いられる積層体を総称して、積層体11,12という場合がある。特に図示しないが、底部材12を省略して、前後の胴部材11のみで包装袋10を形成することも可能である。
【0018】
胴部材11は、少なくとも最内層11a、最外層11b、コート層11cを含む。この胴部材11は、上述した実施形態の積層体から形成されている。最内層11aはポリエチレン系樹脂層であり、最外層11bは二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層である。最内層11aと最外層11bとの間には、特に図示しないが、他のポリプロピレン系樹脂層またはポリエチレン系樹脂層が1層以上積層されてもよい。
【0019】
底部材12は、少なくとも最内層12a、最外層12bを含む。底部材12は、コート層を有しなくてもよい。最内層12aおよび最外層12bは、ポリエチレン系樹脂層またはポリプロピレン系樹脂層であることが好ましい。最内層12aと最外層12bとの間には、特に図示しないが、他のポリプロピレン系樹脂層またはポリエチレン系樹脂層が1層以上積層されてもよい。最外層12bが、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層であってもよい。
【0020】
積層体11,12に含まれるポリエチレン系樹脂層の全重量または樹脂成分全体におけるポリエチレン系樹脂の割合は、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、100重量%であってもよい。ポリエチレン系樹脂層は、樹脂成分以外に添加剤を含有していてもよい。
【0021】
積層体11,12に含まれるポリプロピレン系樹脂層の全重量または樹脂成分全体におけるポリプロピレン系樹脂の割合は、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、100重量%であってもよい。ポリプロピレン系樹脂層は、樹脂成分以外に添加剤を含有していてもよい。
【0022】
実施形態の積層体からなる胴部材11は、最外層11bの外面にコート層11cを有する。これにより、胴部材11の耐摩耗性を改善することができる。また、胴部材11に含まれるフィルムがポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂のみからなるので、PETやNyを基材にした場合に比べて、リサイクル性を改善することができる。
【0023】
コート層11cは、樹脂成分を含むニスや塗料等のコーティング剤から形成してもよい。コーティング剤は、樹脂および溶剤を含有してもよく、無溶剤の樹脂を含有してもよい。コーティング剤に使用される樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂(塩酢ビ)、エポキシ樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、環状オレフィン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース(硝化綿)樹脂等の1種または2種以上が挙げられる。
【0024】
コーティング剤の種類は、特に限定されないが、組成物があらかじめ混合された状態で供給される1液タイプ、主剤と添加剤とが別々に供給されて使用時に混合される2液反応タイプなどが挙げられる。コーティング剤は、濃縮状態で供給されてもよく、適宜の濃度または粘度が得られるように使用時に希釈してもよい。コーティング剤の溶剤は、塗布する際の性能等を考慮して、適宜選択することができる。コーティング剤は、樹脂を硬化させる硬化剤、架橋剤等を含有してもよい。
【0025】
コート層は、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の外面に耐摩耗性が必要となる領域に配置されればよく、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂層の全面にコート層を積層しなくてもよい。例えば、コート層11cが、スタンディングパウチの胴部材11の下部にのみ存在してもよい。ここで、胴部材11の下部とは、胴部材11が底部材12と重ね合わされる領域を含んでもよく、折り線13より上方の領域を含んでもよい。内容物を充填したときに胴部材11が膨出する領域にコート層11cを配置することが好ましい。
【0026】
コート層11cは、胴シール部14、底シール部15等のシール部を避けた位置に配置されてもよい。シール部には内容物が充填されないことから、摩耗が生じにくい。また、シール部は熱接着時に加熱されることから、シール部上のコート層11cに耐熱性を要する。一方、シール部を含む領域にコート層11cを形成することにより、領域の形状が単純化され、製袋時の位置合わせも容易になる。
【0027】
コート層11cの形成方法は特に限定されないが、グラビア印刷により塗布されることが好ましい。グラビア印刷は、凹版に充填したインクを基材に転写するため、樹脂フィルムに対しても再現性の高い印刷が可能であり、インクの厚盛りも容易である。食品包装などの印刷にも広く利用されていることから、コート層11cの塗布を、積層体11,12の印刷と一緒に処理してもよい。
【0028】
積層体11,12は、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂)を主体とする樹脂フィルムであるが、上述した事項以外にも、種々の設計が可能である。
【0029】
ポリエチレン系樹脂は、エチレンの単独重合体(ホモポリマー)でもよく、エチレンを主体とする共重合体(コポリマー)でもよい。エチレン以外のモノマー(コモノマー)としては、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン、ノルボルネン等の環状オレフィン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸等のビニル系モノマー等の1種または2種以上が挙げられる。ポリエチレン系樹脂が、酢酸ビニル等のエステル基を有するモノマーを共重合している場合は、エステル基の一部がケン化されて、ビニルアルコールを含む共重合体となっていてもよい。
【0030】
ポリエチレン系樹脂の構成モノマーにおけるエチレンの割合は、50重量%以上が好ましく、例えば、80~100重量%でもよい。エチレンまたはコモノマーは、石油等の化石資源に由来する化合物でもよく、植物等のバイオマスに由来する化合物でもよい。ポリエチレン系樹脂層に含まれる樹脂が、ポリエチレン系樹脂のみでもよい。ポリエチレン系樹脂の少なくとも一部が、リサイクルされたポリエチレン系樹脂を含んでもよい。
【0031】
上述のポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体(ホモPP)でもよく、プロピレン-エチレン共重合体等におけるランダム共重合体(ランダムPP)またはブロック共重合体(ブロックPP)でもよい。プロピレン以外のモノマー(コモノマー)としては、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸等のビニル系モノマー等の1種または2種以上が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂にコモノマーを用いる場合は、コモノマーが1種でも、2種以上でもよい。
【0032】
ポリプロピレン系樹脂の構成モノマーにおけるプロピレンの割合は、50重量%以上が好ましく、例えば、80~100重量%でもよい。プロピレンまたはコモノマーは、石油等の化石資源に由来する化合物でもよく、植物等のバイオマスに由来する化合物でもよい。ポリプロピレン系樹脂層に含まれる樹脂が、ポリプロピレン系樹脂のみでもよい。ポリプロピレン系樹脂の少なくとも一部が、リサイクルされたポリプロピレン系樹脂を含んでもよい。
【0033】
積層体11,12に含まれるフィルムは、樹脂以外の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、着色剤、架橋剤等が挙げられる。添加剤は、樹脂に相溶する成分でもよく、樹脂に相溶しない成分でもよい。
【0034】
最内層11a,12aは、積層体11,12の接合に用いることができる。最内層11a,12aは、無延伸のポリオレフィン系樹脂から形成されることが好ましい。最内層11a,12aを形成する材料の具体例としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。最内層11a,12aを形成する材料が、1種のポリオレフィン系樹脂でもよく、2種以上のポリオレフィン系樹脂のブレンドでもよい。最内層11a,12aの厚さは、特に限定されないが、例えば、60~180μm程度が挙げられる。
【0035】
最外層11b,12bは、積層体11,12の基材であってもよい。最外層11b,12bを形成する材料の具体例としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。最外層11b,12bを形成する材料が、1種のポリオレフィン系樹脂でもよく、2種以上のポリオレフィン系樹脂のブレンドでもよい。最外層11b,12bの厚さは、特に限定されないが、例えば、10~50μm程度が挙げられる。
【0036】
積層体11,12の厚さに対して最内層11a,12aが占める割合は、50%以上が好ましく、60%、70%、80%、90%、95%程度、あるいは、これらの中間値でもよい。積層体11,12の厚さに対してポリオレフィン系樹脂層の厚さの合計が占める割合は、50%以上が好ましく、60%、70%、80%、90%、95%、99%程度、あるいは、これらの中間値でもよい。
【0037】
積層体11,12に含まれるフィルムの各層は、ドライラミネート等により、接着層を介して接合されてもよく、共押出、熱ラミネート等により、接着層を介することなく接合されてもよい。
【0038】
接着層は、接着剤から形成されてもよく、アンカーコート剤から形成されてもよい。接着層を形成する材料としては、特に限定されないが、ウレタン系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、ポリエチレンイミン、チタンアルコキシド等の有機チタン化合物等が挙げられる。接着剤やアンカーコート剤等を用いた接着層の厚さは、例えば、0.1~10μm程度、1~6μm程度、3~4μm程度が挙げられる。
【0039】
接着層は押出樹脂から形成されてもよい。押出樹脂の材料としては特に限定されないが、接着性樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。押出樹脂を用いた接着層の厚さは3~30μm程度、5~25μm程度、7~20μm程度が挙げられる。
【0040】
積層体11,12にバリア性を付与するには、アルミニウム等の金属、シリカやアルミナ等の無機化合物を薄膜状に積層してもよい。例えば、積層体11,12に含まれるいずれかのフィルムの少なくとも片面に、上述の金属または無機化合物からなるバリア層を蒸着、めっき等によって成膜してもよい。
【0041】
積層体11,12は、印刷層(図示せず)を有してもよい。例えば、最外層11b,12bの内面または外面に印刷層を積層してもよい。印刷層は、グラビア印刷、凸版印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット等の印刷方式でインキをベタ状またはパターン状に印刷することにより、形成することができる。印刷層の厚さは、特に限定されないが、0.5~10μm程度が挙げられる。印刷層は、積層体の全面に形成してもよく、積層体の面内の一部に形成してもよい。2層以上の印刷層を重ね合わせてもよい。
【0042】
印刷層を形成するためのインキは、顔料、染料等の着色材と、バインダーを含んでもよい。バインダーとしては、特に限定されないが、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、アクリル系重合体、ポリブタジエン、環化ゴム等が挙げられる。インキは、水、有機溶剤、植物油などの溶剤を含有してもよい。印刷後は、溶剤の揮発やインキの硬化等によりインキを乾燥させることができる。インキの乾燥を促進するため、加熱、紫外線照射等を実施してもよい。
【0043】
ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂)によるモノマテリアルの容器包装のためには、積層体11,12の全重量に対し、ポリオレフィン系樹脂の合計が80重量%以上であり、ポリオレフィン系樹脂以外の材料の合計が20重量%以下であることが好ましく、ポリオレフィン系樹脂の合計が90重量%以上であり、ポリオレフィン系樹脂以外の材料の合計が10重量%以下であることがより好ましい。これにより、積層体11,12に接着剤等が使用されていても、ポリオレフィン系樹脂のモノマテリアル材料を実現することができる。
【0044】
コート層を有する積層体は、包装袋の作製に用いることができる。包装袋は、少なくとも1の部材が、コート層を有する積層体から形成されていればよい。包装袋の用途は、使い捨て用、詰め替え用、貯蔵用、物品等の収納用など、特に限定されないが、内容物を消費する際に使用される本体容器に対して、1回または複数回、内容物を詰め替える用途には特に好適である。この場合、本体容器を長期間の使用に耐久可能にして、詰め替え容器の包装を簡易にすることができる。また、内容物を使い終えた後の詰め替え容器を処分する際、リサイクルが容易になる。
【0045】
コート層を有する積層体は、包装袋の開封または切り取りを行う部位を有してもよい。開封または切り取りを行う部位は、ミシン目、ノッチ、ハーフカット溝などのようにフィルムの厚さ方向に加工した構造を有してもよく、細く突出させた注出口のように、フィルムの面内に開封または切り取りを示唆する形状を有してもよく、印刷等による矢印、線、ドット等の表示であってもよい。包装袋の切り取りは、開封箇所の切り取りに限定されるものではなく、2以上の包装袋を連続して形成した箇所、包装袋の周囲にタグや表示部等を連続させた箇所等において、包装袋の間または周囲を切り取るために用いてもよい。
【0046】
包装袋の具体例としては、特に限定されないが、三方シール袋、四方シール袋、ピロー袋、平袋、ガセット袋、スタンディングパウチ等が挙げられる。図1に示す包装袋10は、一対の胴部材11と、折り線13により二つ折りにした底部材12とから形成されたスタンディングパウチである。
【0047】
包装袋10の胴部材11は、前後に1枚ずつ配置されている。前後の胴部材11の平面形状が同一でもよい。底部材12は、折り線13により外面が対向するように折り込まれている。折り線13より上側では、左右に胴シール部14が形成されて、前後の胴部材11の内面が互いに接合されている。
【0048】
底部材12は、折り線13を上側にして、前後の胴部材11の間に挟み込まれている。折り線13より下側では、底部材12の内面が胴部材11の内面に接合された底シール部15が形成されている。底シール部15は、底部材12の折り線13で区画される領域を、それぞれ前後方向で同じ側の胴部材11と接合している。側端部15aでは、胴シール部14と底シール部15が重なり合ってもよい。折り線13に対して底部材12を広げることにより、包装袋10を自立させることができる。
【0049】
包装袋10が胴部材11と底部材12とを有する場合は、実施形態のコート層11cを胴部材11と底部材12のいずれか一方に使用してもよく、両方に使用してもよい。耐摩耗性を改善する観点からは、胴部材11にコート層11cを用いることが好ましい。また、液体を内封する用途の包装袋10に好適である。
【0050】
包装袋10の寸法は、特に限定されるものではないが、例えば詰め替え容器の用途では、上下方向の高さが100~500mm程度、左右方向の幅が70~300mm程度、充填量としては100cm~5000cm程度が挙げられる。内容物の状態としては、液体、粉体、粒体等の流体、あるいは物品等の固形物が挙げられる。内容物の種類としては、特に限定されないが、洗剤、薬剤、化粧品、医薬品、飲料、調味料、インキ、塗料、燃料等が挙げられる。
【0051】
包装袋10は、充填口、注出口等を有してもよい。例えば、包装袋10の上部で前後の胴部材11の間が開口されて、内容物の充填または注出に用いることができる。内容物の充填後に胴部材11の間を接合して、包装袋10を密封してもよい。包装袋10を開封する際には、胴部材11の間が接合されていた箇所を容易に引き裂くことができる。特に図示しないが、注出口が包装袋10の上部または隅部で細く突出する形状に形成されてもよい。注出口はフィルム成形でもスパウトタイプでもよい。隅部に斜めにスパウトを設置する場合、落下強度等において二軸延伸が有利である。
【0052】
実施形態の積層体11,12または包装袋10を使用した後にリサイクルする方法は、特に限定されないが、回収時の状態等に応じて、適宜選択することができる。実施形態の積層体11,12は、ポリオレフィン系樹脂の割合を高くすることができるので、ケミカルリサイクル、メカニカルリサイクルのいずれも可能である。実施形態の積層体11,12または包装袋10のリサイクルにより、積層体11,12または包装袋10など、同種の製品に再生することも可能である。リサイクルして得られた材料を、塗料、成形品、炭化水素油等の製品に利用してもよい。
【0053】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。改変としては、構成要素の追加、置換、省略、その他の変更が挙げられる。
【0054】
実施形態の積層体11,12は、ポリオレフィン系樹脂を主体とした積層フィルム状であり、パウチ、バッグ、コンテナ等の包装袋、包装フィルム等の包装用積層体に限られず、種々の用途に用いることができる。積層体11,12が柔軟な積層フィルムである場合は、軟包装の包装袋10を形成することができる。包装袋10は、積層体11,12のみから形成してもよく、ラベル、タグ、ストロー、外箱等の付属部材と組み合わせてもよい。リサイクルの観点では、付属部材を包装袋10から分離できることが好ましい。
【実施例0055】
以下、実施例として、より具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
<積層体の作製>
実施例1は、印刷層を有するBO-PP15μm/VM-BO-PP12μm/PE120μmの層構成でフィルムをラミネートし、最外層のBO-PPまたは印刷層の上に塩酢ビ系2液反応タイプのコート層を形成して、積層体を作製した。
実施例2は、コート層をアクリルウレタン系2液反応タイプとした以外は、実施例1と同様にした。
実施例3は、コート層を塩酢ビ/アクリルポリオール系2液反応タイプとした以外は、実施例1と同様にした。
実施例4は、コート層を硝化綿系1液タイプとした以外は、実施例1と同様にした。
【0057】
比較例1は、Ny15μm/VM-PET12μm/PE120μmの層構成でフィルムをラミネートし、積層体を作製した。
比較例2は、MDO-PE25μm/PE110μmの層構成でフィルムをラミネートし、積層体を作製した。
比較例3は、BO-PP15μm/VM-BO-PP12μm/PE120μmの層構成でフィルムをラミネートし、積層体を作製した。
【0058】
上記の層構成において、PEはポリエチレン、PPはポリプロピレン、PETはポリエチレンテレフタレート、Nyはナイロン、BO-は二軸延伸、MDO-は一軸延伸、VM-はアルミニウム蒸着を表す。
【0059】
<リサイクル性の評価>
積層体のリサイクル性は、対象の積層体に含まれるフィルムがPPまたはPEのみである場合を良(○)、PPまたはPE以外のフィルムが含まれる場合を否(×)と評価した。
【0060】
<生産性の評価>
包装袋の生産性は、PEの融点を135℃、PPの融点を160℃、Nyの融点を260℃として、最内層のシーラントより最外層の基材の融点が高い場合を良(○)、シーラントと基材の融点が同等の場合を否(×)と評価した。
【0061】
<耐摩耗性の評価>
対象の積層体を用いて胴部の幅140mm、胴部の高さ235mm、底部の折込み40mmのスタンディングパウチを12個作製し、430gの液体を充填した包装袋をサンプルとして作製した。奥行き20cm、幅35cm、高さ25cmの段ボールの内部に2列×6個のサンプルを自立状態で箱詰めした。各列で隣接するサンプルを斜めにし、部分的に重なり合わせて少しずつずらしながら、いわゆる刺身状に収容した。包装袋の耐摩耗性は、JIS Z0232に準拠して、Z軸ランダム振動、3時間(レベル1)振動試験を実施した後、サンプルの外観を目視で確認し、胴部に摩耗がない場合を良(○)、胴部に若干の摩耗が確認された場合を可(△)、胴部に摩耗が確認された場合を否(×)と評価した。
【0062】
<評価結果>
実施例1の評価結果は、リサイクル性:○、生産性:○、耐摩耗性:○であった。
実施例2の評価結果は、リサイクル性:○、生産性:○、耐摩耗性:○であった。
実施例3の評価結果は、リサイクル性:○、生産性:○、耐摩耗性:○であった。
実施例4の評価結果は、リサイクル性:○、生産性:○、耐摩耗性:△であった。
比較例1の評価結果は、リサイクル性:×、生産性:○、耐摩耗性:○であった。
比較例2の評価結果は、リサイクル性:○、生産性:×、耐摩耗性:○であった。
比較例3の評価結果は、リサイクル性:○、生産性:○、耐摩耗性:×であった。
【符号の説明】
【0063】
10…包装袋、11…胴部材、11a,12a…最内層、11b,12b…最外層、11c…コート層、12…底部材、13…折り線、14…胴シール部、15…底シール部、15a…側端部。
図1
図2