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特開2024-62551予測装置、予測方法、学習装置、学習方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062551
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】予測装置、予測方法、学習装置、学習方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20240501BHJP
   G06N 3/049 20230101ALI20240501BHJP
   E02B 3/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06N3/04 190
E02B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170453
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】木村 延明
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA04
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】リードタイムが長くなっても、調整池や河川の水位を高い精度で予測すること。
【解決手段】水位計によって計測された水位の時系列データを取得する取得部と、前記時系列データに基づく入力データを、水位の時系列データに基づく入力データが入力されると前記水位の将来値を出力するように学習された学習済みモデルに入力することによって、前記水位の将来値を予測する予測部と、を備え、前記入力データは、前記時系列データから前記水位の変化の周期性成分を抽出する処理を実行することによって得られた周期性データを少なくとも含む、予測装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水位計によって計測された水位の時系列データを取得する取得部と、
前記時系列データに基づく入力データを、水位の時系列データに基づく入力データが入力されると前記水位の将来値を出力するように学習された学習済みモデルに入力することによって、前記水位の将来値を予測する予測部と、を備え、
前記入力データは、前記時系列データから前記水位の変化の周期性成分を抽出する処理を実行することによって得られた周期性データを少なくとも含む、
予測装置。
【請求項2】
前記水位の変化の周期性成分を抽出する処理は、前記時系列データにフーリエ変換を施してピーク値を抽出し、抽出した前記ピーク値にフーリエ逆変換を施すことによって前記周期性データを取得する処理である、
請求項1に記載の予測装置。
【請求項3】
前記水位の変化の周期性成分を抽出する処理は、前記時系列データにフーリエ変換を施してピーク値を抽出し、抽出した前記ピーク値にフーリエ逆変換を施し、前記フーリエ逆変換に得られたデータを前記周期性成分にしたがって将来区間にわたって延長することによって前記周期性データを取得する処理である、
請求項1に記載の予測装置。
【請求項4】
前記入力データは、前記時系列データと前記周期性データとを含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載の予測装置。
【請求項5】
コンピュータが、
水位計によって計測された水位の時系列データを取得し、
前記時系列データに基づく入力データを、水位の時系列データに基づく入力データが入力されると前記水位の将来値を出力するように学習された学習済みモデルに入力することによって、前記水位の将来値を予測し、
前記入力データは、前記時系列データから前記水位の変化の周期性成分を抽出する処理を実行することによって得られた周期性データを少なくとも含む、
予測方法。
【請求項6】
コンピュータに、
水位計によって計測された水位の時系列データを取得させ、
前記時系列データに基づく入力データを、水位の時系列データに基づく入力データが入力されると前記水位の将来値を出力するように学習された学習済みモデルに入力することによって、前記水位の将来値を予測させ、
前記入力データは、前記時系列データから前記水位の変化の周期性成分を抽出する処理を実行することによって得られた周期性データを少なくとも含む、
プログラム。
【請求項7】
水位計によって計測された水位の時系列データに基づく入力データが入力されると、前記水位の将来値を出力するように学習する学習装置であって、
前記入力データは、前記時系列データから前記水位の変化の周期性成分を抽出する処理を実行することによって得られた周期性データを少なくとも含む、
学習装置。
【請求項8】
コンピュータが、
水位計によって計測された水位の時系列データに基づく入力データが入力されると、前記水位の将来値を出力するように学習する学習方法であって、
前記入力データは、前記時系列データから前記水位の変化の周期性成分を抽出する処理を実行することによって得られた周期性データを少なくとも含む、
学習方法。
【請求項9】
コンピュータに、
水位計によって計測された水位の時系列データに基づく入力データが入力されると、前記水位の将来値を出力するように学習させるプログラムであって、
前記入力データは、前記時系列データから前記水位の変化の周期性成分を抽出する処理を実行することによって得られた周期性データを少なくとも含む、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予測装置、予測方法、学習装置、学習方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排水管理が行われている排水機場の調整池や河川の水位をリアルタイムで予測する技術が知られている。例えば、非特許文献1には、DNN(deep neural network)によって河川の水位を予測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】一言 正之, 櫻庭 雅明, 清 雄一, 深層学習を用いた河川水位予測手法の開発, 土木学会論文集B1(水工学), 2016, 72 巻, 4 号, p. I_187-I_192
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、DNNは、大量の教師データと十分な学習時間とを必要とする一方、一旦学習が完了すれば、迅速な予測が可能となるものである。しかしながら、従来のDNNによる水位予測技術は、数時間先までの水位予測に関して、リードタイム(予測時間)が長くなるにつれて、その予測精度が低下する傾向があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、リードタイムが長くなっても、調整池や河川の水位を高い精度で予測することができる予測装置、予測方法、学習装置、学習方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る予測装置は、水位計によって計測された水位の時系列データを取得する取得部と、前記時系列データに基づく入力データを、水位の時系列データに基づく入力データが入力されると前記水位の将来値を出力するように学習された学習済みモデルに入力することによって、前記水位の将来値を予測する予測部と、を備え、前記入力データは、前記時系列データから前記水位の変化の周期性成分を抽出する処理を実行することによって得られた周期性データを少なくとも含むものである。
【0007】
前記水位の変化の周期性成分を抽出する処理は、前記時系列データにフーリエ変換を施してピーク値を抽出し、抽出した前記ピーク値にフーリエ逆変換を施すことによって前記周期性データを取得する処理であってもよい。
【0008】
前記水位の変化の周期性成分を抽出する処理は、前記時系列データにフーリエ変換を施してピーク値を抽出し、抽出した前記ピーク値にフーリエ逆変換を施し、前記フーリエ逆変換に得られたデータを前記周期性成分にしたがって将来区間にわたって延長することによって前記周期性データを取得する処理であってもよい。
【0009】
前記入力データは、前記時系列データと前記周期性データとを含んでもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る学習装置は、水位計によって計測された水位の時系列データに基づく入力データが入力されると、前記水位の将来値を出力するように学習する学習装置であって、
前記入力データは、前記時系列データから前記水位の変化の周期性成分を抽出する処理を実行することによって得られた周期性データを少なくとも含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リードタイムが長くなっても、調整池や河川の水位を高い精度で予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】予測装置100の使用環境および構成の一例を示す図である。
図2】予測装置100によって実行される水位予測の概要を示す図である。
図3】周期性データ134の取得方法の概要を説明するための図である。
図4】時系列データ132にフーリエ変換を施した結果の一例を示す図である。
図5】フーリエ逆変換によって得られた周期性データ134の一例を示す図である。
図6】予測装置100によって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】学習装置200の構成の一例を示す図である。
図8】変形例に係る周期性データ134の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[概要]
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係る予測装置100について説明する。図1は、予測装置100の使用環境および構成の一例を示す図である。予測装置100は、例えば、水位計10と、送信機20と協働して動作する。
【0014】
水位計10は、例えば、排水機場の調整池に敷設されたパイプP上に設置され、当該調整池のある基準面からの水面の高さ(すなわち、水位)を時系列に計測するセンサーである。図1において、水位計10は、圧力式水位計や静電容量式水位計などの接触式水位計として表されているが、本発明はそのような構成に限定されず、水位計10は、電波式水位計や超音波式水位計などの非接触式水位計であっても良い。さらに、本実施形態において、水位計10は調整池の水位を計測するものとして説明するが、本発明はそのような構成に限定されず、水位計10は、例えば、河川の水位を測定するものであってもよい。
【0015】
送信機20は、例えば、パイプP内を通る不図示のケーブルによって水位計10と接続される。送信機20は、水位計10によって測定された調整池の水位の時系列データを、ネットワークNWを介して予測装置100に送信する。ネットワークNWは、例えば、LAN、WAN、インターネット回線などの任意のネットワークであり、有線であっても無線であっても良い。また、水位計10そのものが、送信機20を備え、水位計10と送信機20とは一体化されていても良い。
【0016】
予測装置100は、排水機場の調整池の水位の将来値を予測する、ウェブサーバなどのサーバ装置である。図2は、予測装置100によって実行される水位予測の概要を示す図である。図2に示す通り、予測装置100は、水位計10によって測定された調整池の水位の時系列データ132と、時系列データ132から水位の変化の周期性成分を抽出する処理(詳細は後述する)を実行することによって得られた周期性データ134とを、学習済みモデル136に入力することによって、水位の将来値を取得する。
【0017】
時系列データ132は、例えば、1時間間隔で水位計10によって測定された水位値を表し、そのうち、例えば、1~6時間前までに取得された1時間間隔の水位データが入力データとして学習済みモデル136に入力される。さらに、周期性データ134は、過去の所定期間(例えば、数年間)にわたって収集された時系列データ132から周期性成分を抽出する処理を実行することによって得られた水位の時系列データである。出力データは、例えば、1~6時間後までの1時間間隔の水位の将来値である。これら入力対象となる1~6時間前の水位値、および予測対象となる1~6時間後の水位値などの設定はあくまでも一例であり、より短い間隔(例えば、30分間隔)やより長い間隔(例えば、1.5時間間隔)で水位値の入力および出力を行っても良い。
【0018】
学習済みモデル136は、例えば、長期間の連続データのトレンドを記憶しながら、急激な変化にも対応可能なアーキテクチャである長・短期記憶アーキテクチャ(LSTM:Long Short Term Memory)を水位予測モデルとして、上述した入力および出力に対応する時系列データ132および周期性データ134を教師データとして生成されるものである。すなわち、本実施形態において、学習済みモデル136は、水位の時系列データ132のみならず、水位の周期性データ134をさらに考慮して学習されたものである。これにより、従来のDNNによる水位予測技術に比して、リードタイムが長くなっても、調整池や河川の水位を高い精度で予測することができる。以下、予測装置100の機能について、さらに詳細に説明する。
【0019】
[機能構成]
予測装置100は、例えば、データ取得部110と、水位予測部120と、記憶部130とを備える。データ取得部110と水位予測部120のそれぞれは、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。記憶部130は、例えば、ROM、フラッシュメモリ、SDカード、RAM、HDD、レジスタ等によって実現される。記憶部130は、例えば、時系列データ132と、周期性データ134と、学習済みモデル136とを記憶する。
【0020】
データ取得部110は、送信機20から、水位計10によって測定された調整池の水位の時系列データをネットワークNWを介して受信し、時系列データ132として記憶部130に記憶する。データ取得部110は、さらに、記憶された最新の時系列データ132から水位の変化の周期性成分を抽出する処理、より具体的には、フーリエ変換(およびフーリエ逆変換)を実行することによって、周期性データ134を取得する。
【0021】
図3は、周期性データ134の取得方法の概要を説明するための図である。図3の左上部に示される時系列データ132のグラフにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は水位を表す。データ取得部110は、まず、時系列データ132に対して、以下の式(1)に従って、フーリエ変換を施す。
【0022】
【数1】
【0023】
上記の式(1)において、fは、時系列データ132において時間に関する水位を示す関数を表し、Nは、フーリエ変換を施す時系列データ132のデータ数を表し、ωは振動数を表し、tは時間を表す。式(1)は、離散フーリエ変換(discrete Fourier transform)による計算式を表しているが、実際の算出には、高速フーリエ変換(fast Fourier transform)が用いられる。
【0024】
図4は、時系列データ132にフーリエ変換を施した結果の一例を示す図である。図4に示すグラフにおいて、横軸は振動数を表し、縦軸はスペクトル密度を表す。データ取得部110は、例えば、スペクトル密度が閾値Th以上である振動数をピーク値として抽出する一方、スペクトル密度が閾値Th未満である振動数はノイズとして除去する。他の方法として、例えば、データ取得部110は、事前に特定の振動数の範囲を規定し、規定した振動数の範囲に存在するスペクトル密度をピーク値として抽出してもよい。例えば、図4の場合、データ取得部110は、日周期に対応する振動数ω1と、半日周期に対応する振動数ω2とを抽出しているが、事前の検証による知見に基づいて、振動数ω1を含む第1範囲R1と、振動数ω2を含む第2範囲R2とを事前に規定し、これら範囲に含まれる振動数をピーク値として抽出する一方、それ以外の振動数についてはノイズとして除去しても良い。
【0025】
データ取得部110は、スペクトル密度のピーク値を抽出すると、次に、抽出したピーク値に対して、以下の式(2)に従って、フーリエ逆変換を施す。
【0026】
【数2】
【0027】
上記の式(2)において、Fは、式(1)のフーリエ変換によって得られたスペクトル密度を示す関数を表し、Nは、フーリエ逆変換を施す時系列データ132のデータ数を表し、ωは振動数を表し、tは時間を表す。データ取得部110は、フーリエ逆変換を施した結果として、周期性データ134を取得する。
【0028】
図5は、フーリエ逆変換によって得られた周期性データ134の一例を示す図である。図5に示す周期性データ134のうち、上部のグラフは振動数ω1に対応する日周期の水位を表し、下部のグラフは振動数ω2に対応する半日周期の水位を表す。データ取得部110は、以上のようにして、学習済みモデル136に入力する周期性データ134を得る。
【0029】
水位予測部120は、時系列データ132および周期性データ134が取得されると、これらデータを学習済みモデル136に入力することによって、水位の将来値を取得する。上述した通り、本実施形態において、水位予測部120は、例えば、1~6時間後までの1時間間隔の水位の将来値を取得する。このように、水位の時系列データ132のみならず、水位の周期性データ134をさらに考慮して学習された学習済みモデル136を用いて水位の将来値を予測することにより、リードタイムが長くなっても、調整池や河川の水位を高い精度で予測することができる。
【0030】
なお、上記の説明では、データ取得部110は、記憶部130に記憶された最新の時系列データ132に基づいて、学習済みモデル136に入力するための周期性データ134を導出するものとしたが、本発明はそのような構成に限定されない。例えば、データ取得部110は、定期的(例えば、日ごと)に周期性データ134を導出し、水位の予測時には、前回タイミング(例えば、前日)に導出された周期性データ134を学習済みモデル136に入力するものであってもよい。
【0031】
次に、図6を参照して、予測装置100によって実行される処理の流れについて説明する。図6は、予測装置100によって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートに係る処理は、所定の制御サイクル(例えば、1時間ごと)で実行されてもよいし、予測装置100の利用者が保持する端末装置からの指令に応じて実行されてもよい。
【0032】
まず、データ取得部110は、送信機20から、水位計10によって測定された調整池の水位の時系列データ132をネットワークNWを介して受信する(ステップS100)。次に、データ取得部110は、水位の時系列データ132から水位の変化の周期性成分を抽出する処理、より具体的には、フーリエ変換(およびフーリエ逆変換)を実行することによって、水位の周期性データ134を取得する(ステップS102)。次に、水位予測部120は、時系列データ132および周期性データ134を学習済みモデル136に入力する(ステップS104)。次に、水位予測部120は、学習済みモデル136によって出力された水位の将来値を取得して、調整池の水位を予測する(ステップS106)。これにより、本フローチャートの処理が終了する。
【0033】
[学習装置]
次に、図7を参照して、本実施形態の学習済みモデル136を生成する学習装置200について説明する。図7は、学習装置200の構成の一例を示す図である。図7に示す通り、学習装置200は、例えば、学習部210と、記憶部220と、を備える。記憶部220は、例えば、教師データ222と、LSTMモデル224とを記憶する。学習部210は、例えば、CPUなどのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。学習部210のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPUなどのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。記憶部220は、例えば、ROM、フラッシュメモリ、SDカード、RAM、HDD、レジスタ等によって実現される。
【0034】
教師データ222は、水位の時系列データ132と、時系列データ132から導出された所定期間(例えば、数年)にわたる周期性データ134とを含む。学習部210は、時系列データ132のうちの、例えば、1~6時間前までに取得された1時間間隔の水位データと、所定期間にわたる周期性データ134とが入力されると、1~6時間後までの1時間間隔の水位の将来値を出力するように、LSTMモデル224を学習する。より具体的には、学習部210は、損失関数として、水位の予測値と観測値との間の二乗和誤差を最適化するように、例えば、確率的勾配降下法を用いてLSTMモデル224のパラメータを調整することによって、LSTMモデル224を学習する。これにより、学習済みモデル136が生成される。
【0035】
なお、本実施形態では、予測装置100と学習装置200とが別体の装置として構成されているが、本発明はそのような構成に限定されず、予測装置100と学習装置200とは同体の情報処理装置として構成されてもよい。その場合、情報処理装置は、上述した予測装置100と学習装置200の機能部を全て備えることとなる。
【0036】
以上の通り説明した本実施形態によれば、水位計によって計測された水位の時系列データを取得し、時系列データに基づく入力データを、水位の時系列データに基づく入力データが入力されると水位の将来値を出力するように学習された学習済みモデルに入力することによって、水位の将来値を予測し、入力データは、時系列データから周期性成分を抽出する処理を実行することによって得られた周期性データを少なくとも含む。これにより、リードタイムが長くなっても、調整池や河川の水位を高い精度で予測することができる。
【0037】
[変形例]
上記の実施形態では、データ取得部110は、現時点までに得られた水位の時系列データ132にフーリエ変換(およびフーリエ逆変換)を施すことによって、周期性データ134を取得し、時系列データ132と周期性データ134とを学習済みモデル136に入力することによって、水位の将来値を予測している。しかし、本発明はそのような構成に限定されず、周期性データ134は、将来区間における周期性データを含んでも良い。
【0038】
図8は、変形例に係る周期性データ134の一例を示す図である。まず、データ取得部110は、上記で説明した同様の手法により、現時点までの時系列データ132にフーリエ変換を施してスペクトル密度の各ピーク値を抽出し、抽出したピーク値にフーリエ逆変換を施すことによって、時間に関する水位の単振動を得る。次に、データ取得部110は、フーリエ逆変換によって得られた単振動の波形を時間方向にシフト(延長)することによって将来区間における単振動を生成する。データ取得部110は、過去から現時点までの単振動と、将来区間における単振動とを合成することにより、変形例に係る周期性データ134を生成することができる。
【0039】
スペクトル図において複数のピーク値を抽出した結果、複数の振動数が群になった周期の場合には、データ取得部110は、複数の振動数に対応するピーク値から生成される各々の単振動を将来区間まで延長し、単純に線形的に重ね合わせて周期性データ134を生成することができる。このようにして生成された周期性データ134を教師データ222として用いて学習済みモデル136を生成することにより、水位予測部120は、水位に関する将来の周期性を考慮して、水位の将来値を予測することができる。
【0040】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0041】
10 水位計
20 送信機
100 予測装置
110 データ取得部
120 水位予測部
130、220 記憶部
132 時系列データ
134 周期性データ
136 学習済みモデル
200 学習装置
210 学習部
222 教師データ
224 LSTMモデル
P パイプ
NW ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8