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  • 特開-液晶素子及びエマルジョン組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062552
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】液晶素子及びエマルジョン組成物
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1334 20060101AFI20240501BHJP
   G02F 1/13 20060101ALN20240501BHJP
【FI】
G02F1/1334
G02F1/13 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170455
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】濱村 朋史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】柳衛 真人
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝俊
(72)【発明者】
【氏名】小森 尭
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
【Fターム(参考)】
2H088EA34
2H088GA02
2H088GA03
2H088GA10
2H088GA13
2H088GA17
2H088HA02
2H088HA03
2H088KA02
2H088KA06
2H088KA20
2H088KA26
2H088MA09
2H189AA04
2H189CA06
2H189LA03
2H189LA05
(57)【要約】
【課題】 低電圧での駆動が可能な液晶素子の提供。
【解決手段】 透明導電膜が対向するように配置された2枚の透明導電膜付き基板と、前
記2枚の透明導電膜付き基板の間に挟持された液晶-高分子複合膜とを備える液晶素子で
あって、前記液晶-高分子複合膜が、周波数1kHzにおける比誘電率が10以上である
、液晶素子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電膜が対向するように配置された2枚の透明導電膜付き基板と、前記2枚の透明
導電膜付き基板の間に挟持された液晶-高分子複合膜とを備える液晶素子であって、
前記液晶-高分子複合膜の周波数1kHzにおける比誘電率が10以上である、液晶素
子。
【請求項2】
前記液晶-高分子複合膜が電圧の印加により透明状態と散乱状態を切り替えることがで
きる、請求項1に記載の液晶素子。
【請求項3】
前記液晶-高分子複合膜が炭素数5以下のアルコールを含有する、請求項1に記載の液
晶素子。
【請求項4】
前記炭素数5以下のアルコールが多価アルコールである、請求項3に記載の液晶素子。
【請求項5】
前記多価アルコールがエチレングリコールである、請求項4に記載の液晶素子。
【請求項6】
前記液晶-高分子複合膜が高分子マトリクスと液晶組成物を含有し、前記液晶組成物は
前記高分子マトリクス中に存在する、請求項1~5のいずれか1項に記載の液晶素子。
【請求項7】
前記液晶組成物が液晶成分を含有する、請求項6に記載の液晶素子。
【請求項8】
前記液晶成分がネマチック液晶またはカイラルネマチック液晶である、請求項7に記載
の液晶素子。
【請求項9】
前記高分子マトリクスを構成する高分子がポリウレタン、ポリアクリル、ポリビニルア
ルコール及びこれらの変性体からなる群より選択される少なくとも1つを含有するもので
ある、請求項6に記載の液晶素子。
【請求項10】
前記液晶組成物が二色性色素を含有する、請求項6に記載の液晶素子。
【請求項11】
前記二色性色素がアントラキノン色素及び/又はアゾ色素を含有する、請求項10に記
載の液晶素子。
【請求項12】
前記液晶組成物100質量%に対する前記二色性色素の含有量が0.1質量%以上20
質量%以下である、請求項10に記載の液晶素子。
【請求項13】
水を含有する媒体に液晶組成物が分散したエマルジョン組成物であって、
前記媒体は、高分子及び炭素数5以下のアルコールが分散又は溶解したものである、エ
マルジョン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶素子及びエマルジョン組成物に関する。詳しくは、透明状態と散乱状態
の切り替えができる液晶素子及び該液晶素子に用いることのできるエマルジョン組成物に
関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラスの透明度を電気的に切り替えることができるスマートガラスの需要が大き
くなってきている。スマートガラスに用いられる調光材としては、液晶方式、エレクトロ
クロミック方式、SPD(Suspend Particle Device)方式等が
提案されている。この中でも、液晶方式は応答時間が圧倒的に短く、利用者にストレスを
感じさせないために注目されている。
【0003】
液晶方式の中でも、PDLC(Polymer Dispersed Liquid
Crystals)が広く知られている(非特許文献1)。PDLCは粒子状の液晶が高
分子マトリクスに分散した液晶-高分子複合膜が、2枚の透明導電基板に挟まれた構造を
持つ。
【0004】
PDLCの中でもノーマルモード駆動が最も一般的である。ノーマルモード駆動のPD
LCに対して、電圧を印加していない状態では、液晶分子が高分子マトリクスの壁面に沿
って配向し、液晶領域と高分子マトリクスとで屈折率の不一致が生じる。この不一致によ
り光散乱を起こして白濁することで、目隠しとして機能する。一方、PDLCに電圧を印
加した場合、液晶分子が電界方向へ配向することにより、液晶領域と高分子マトリクスと
で屈折率が一致し、光を透過して透明になる。
【0005】
PDLCは、電車、自動車等の車両、ビジネスビル、病院等の建物の窓、扉、間仕切り
等において、意匠性やプライバシーの保護等を目的とした調光シャッターとして実用化さ
れている。また、文字や図形を表示する表示装置としても用いられている。
【0006】
PDLCは前述の液晶-高分子複合膜の構造により可撓性を持つために、フィルム素子
にすることができる。加えて、フィルム素子を切断整形することが可能である。このよう
な特徴を生かし、利用者が簡単にガラスに貼りつけ施工することができる。
【0007】
近年、省エネ志向の高まりから、スマートガラスを窓に活用し、室内に入る日射量を制
御することで冷暖房負荷を減らす試みがなされている。ところがPDLCの場合、光散乱
の有無を切り替えることができるものの、散乱はほとんどが前方散乱であるため光が素子
を透過してしまう。そのため、透過光量をほとんど制御できず、省エネに寄与できない。
【0008】
特許文献1には、液晶成分及び二色性色素を含む液晶組成物中の液晶成分として所定の
誘電率異方性及び屈折率異方性のものを用い、そのNI点(ネマチック相-等方相転移温
度)を高めることにより、液晶素子の、可視光透過率の変化幅(ダイナミックレンジ)が
高く、高温下での駆動後においてもダイナミックレンジが維持される液晶素子を開示され
ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開公報第2022/186062号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】D.A.Higgins,Advanced Materials 2000,12,No.4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
PDLCにおいては、更なる省エネ化を進めるために液晶素子自体の消費電力を抑制す
る必要があり、具体的には駆動電圧を低減させることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、液晶素子を構成する液晶-高分子複合膜の比誘電率を高めることで、液晶
素子の駆動電圧が低減されることを見い出し本発明を完成させた。即ち、本発明の要旨は
以下に存する。
【0013】
[1] 透明導電膜が対向するように配置された2枚の透明導電膜付き基板と、前記2枚
の透明導電膜付き基板の間に挟持された液晶-高分子複合膜とを備える液晶素子であって
、前記液晶-高分子複合膜の周波数1kHzにおける比誘電率が10以上である、液晶素
子。
[2] 前記液晶-高分子複合膜が電圧の印加により透明状態と散乱状態を切り替えるこ
とができる、[1]に記載の液晶素子。
[3] 前記液晶-高分子複合膜が炭素数5以下のアルコールを含有する、[1]又は[
2]に記載の液晶素子。
[4] 前記炭素数5以下のアルコールが多価アルコールである、[3]に記載の液晶素
子。
[5] 前記多価アルコールがエチレングリコールである、[4]に記載の液晶素子。
[6] 前記液晶-高分子複合膜が高分子マトリクスと液晶組成物を含有し、前記液晶組
成物は前記高分子マトリクス中に存在する、[1]~[5]のいずれかに記載の液晶素子

[7] 前記液晶組成物が液晶成分を含有する、[6]に記載の液晶素子。
[8] 前記液晶成分がネマチック液晶またはカイラルネマチック液晶である、[7]に
記載の液晶素子。
[9] 前記高分子マトリクスを構成する高分子がポリウレタン、ポリアクリル、ポリビ
ニルアルコール及びこれらの変性体からなる群より選択される少なくとも1つを含有する
ものである、[6]~[8]のいずれかに記載の液晶素子。
[10] 前記液晶組成物が二色性色素を含有する、[6]~[9]のいずれかに記載の
液晶素子。
[11] 前記二色性色素がアントラキノン色素及び/又はアゾ色素を含有する、[10
]に記載の液晶素子。
[12] 前記液晶組成物100質量%に対する前記二色性色素の含有量が0.1質量%
以上20質量%以下である、[10]又は[11]に記載の液晶素子。
[13] 水を含有する媒体に液晶組成物が分散したエマルジョン組成物であって、前記
媒体は、高分子及び炭素数5以下のアルコールが分散又は溶解したものである、エマルジ
ョン組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低電圧での駆動が可能な液晶素子が提供される。
【0015】
本発明の液晶素子は、透明導電膜が対向するように配置された2枚の透明導電膜付き基
板と、前記2枚の透明導電膜付き基板の間に挟持された液晶-高分子複合膜とを備える液
晶素子であって、前記液晶-高分子複合膜の周波数1kHzにおける比誘電率が10以上
であることで、当該液晶素子を低電圧で駆動することができる。
【0016】
本発明の液晶素子は、上記の特性から、窓、スクリーン、ディスプレイ等に有用である
。例えば、建物及び乗り物の窓、パーテーション等に視野遮断素子として用いることがで
きる。また、広告板、ショーウインドウ、コンピューター端末、プロジェクション等のデ
ィスプレイとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施例1及び比較例1の液晶素子において、印加した交流電圧を0Vrmsから100Vrmsまで変更した際のヘーズ変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明について詳細に説明する。以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であ
り、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではなく、本発
明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
【0019】
<液晶素子>
本発明の液晶素子は、透明導電膜が対向するように配置された2枚の透明導電膜付き基
板と、前記2枚の透明導電膜付き基板の間に挟持された液晶-高分子複合膜とを備える液
晶素子であって、前記液晶-高分子複合膜の周波数1kHzにおける比誘電率は10以上
である。
【0020】
[メカニズム]
本発明の液晶素子においては、前記液晶-高分子複合膜の周波数1kHzにおける比誘
電率が10以上であることで、電圧印加時に液晶成分へかかる実効電圧を上げることがで
き、液晶素子の低電圧駆動を示すことができる。
【0021】
本発明の液晶素子は、電圧の印加により透明状態と散乱状態を切り替えることができる
ものである。
透明状態と散乱状態を切り替えることで、光の透過率を制御することができる。
【0022】
本発明で用いる液晶成分の誘電率異方性(Δε)を正とすることで、得られる液晶-高
分子複合膜は、電圧印加時に透明状態であり、電圧無印加時に散乱状態となるが、透明状
態と散乱状態を切り替えるときにだけ電圧印加を必要とするメモリ性を有していてもよい
【0023】
本発明において電圧とは、閾値以上の実効値を持つ、直流電圧、交流電圧、パルス電圧
又はそれらの組み合わせを表す。
本発明において、透明状態とは、上記電圧印加時又は電圧無印加時の液晶-高分子複合
膜の状態を表し、電圧印加時と電圧無印加時において、液晶-高分子複合膜の全光線透過
率が大きい方を透明状態とする。
また、本発明において、散乱状態とは、上記電圧印加時又は電圧無印加時の液晶-高分
子複合膜の状態を表し、電圧印加時と電圧無印加時において、液晶-高分子複合膜の全光
線透過率が小さい方を散乱状態とする。
本明細書におけるヘーズは、JIS K7136の方法で測定される。
【0024】
<液晶-高分子複合膜>
本発明の液晶素子に含まれる液晶-高分子複合膜(以下、「本発明の液晶-高分子複合
膜」と称す場合がある。)の周波数1kHzにおける比誘電率は10以上が好ましく、1
1以上がより好ましく、12以上が特に好ましい。また、上限は特に制限されないが、通
常は30以下である。
【0025】
本発明における液晶-高分子複合膜の比誘電率を前記下限値以上とする方法として、液
晶-高分子複合膜内に高分子マトリクス成分以外に、誘電率の高い化合物を含有させるこ
とが好ましい。誘電率の高い化合物としては、例えば、極性基を有する有機化合物、無機
粒子が挙げられる。
【0026】
前記極性基を有する有機化合物としては、例えば、アルコール化合物、シアノ化合物、
カルボニル化合物、アミノ化合物が挙げられる。特にアルコール化合物は親水性が高く、
エマルジョン組成物に混合する際に均一分散することができ、液晶-高分子複合膜の比誘
電率を改善することができる傾向があるため好ましい。特に、本発明の液晶-高分子複合
膜は炭素数5以下のアルコールを含有することが好ましい。
【0027】
炭素数5以下のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール
、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、グリセリンが挙
げられる。
【0028】
前記炭素数5以下のアルコールは、水酸基以外の官能基とも結合していてもよい。また
、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0029】
炭素数5以下のアルコールとしては、水酸基を2個以上有する多価アルコールが好まし
い。多価アルコールであれば、分子間での水素結合が増加し沸点が高くなり、造膜時にア
ルコールの揮発を抑制することができる傾向がある。粘性の観点から、多価アルコールが
有する水酸基の数は2以上4以下が好ましい。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリンが挙げられ、エチ
レングリコールが好ましい。
【0030】
本発明の液晶-高分子複合膜は、高分子マトリクス(以下、「本発明の高分子マトリク
ス」と称す場合がある。)と液晶組成物(以下、「本発明の液晶組成物」と称す場合があ
る。)を含有し、前記液晶組成物が前記高分子マトリクス中に存在することが好ましい。
高分子マトリクスと液晶組成物を含有し、前記液晶組成物が前記高分子マトリクス中に存
在することで、低電圧で駆動することができる液晶素子が得られる傾向がある。
【0031】
また、本発明の液晶-高分子複合膜が、高分子マトリクスと液晶組成物を含有し、前記
液晶組成物は前記高分子マトリクス中に存在する場合、液晶素子が可撓性を示す。また、
このような構造を持つことで、液晶素子を切断しても液晶組成物の漏洩が最小限に留めら
れ、加えて高分子マトリクスが酸素や水分等の劣化要因から液晶組成物を保護するため、
切断整形が可能となる。
【0032】
<液晶組成物>
本発明の液晶組成物は高分子マトリクス中に分散していてもよく、規則的に配列してい
てもよい。
本発明の液晶組成物の形状としては、真球、回転楕円体、円柱、三角柱、四角柱、六角
柱等の多角柱のいずれでもよく、またこれらの形状が歪であってもよい。これらの中でも
、真球、回転楕円体、円柱や、正三角柱、正四角柱、正六角柱等の正多角柱が、液晶-高
分子複合膜の光散乱が弱くなり、着色時の二色性色素の光吸収が大きくなるとともに、透
明状態のヘーズが小さくなる傾向があるため好ましい。
【0033】
液晶組成物のサイズは、得られる液晶素子の透明性の観点からは、液晶-高分子複合膜
の膜面から観察した際に、平均粒径が2μm以上であることが好ましく、5μm以上であ
ることがより好ましい。また、50μm以下であることが好ましく、30μm以下である
ことがより好ましい。平均粒径が上記下限値以上であることで、液晶-高分子複合膜の光
散乱が弱くなり、透明状態のヘーズが小さくなる傾向がある。平均粒径が上記上限値以下
であることで、液晶組成物の粒状感が無くなってゆき、液晶素子の外観の均一性が良好に
なる傾向がある。
【0034】
液晶組成物のサイズは、得られる液晶素子の光散乱性の観点からは、液晶-高分子複合
膜の膜面から観察した際に、平均粒径が0.01μm以上であることが好ましく、0.1
μm以上であることがより好ましい。また、2μm未満であることが好ましく、1μm以
下であることがより好ましい。平均粒径が上記上限値未満であることで、液晶-高分子複
合膜の光散乱が強くなり、散乱状態のヘーズが大きく、また、ダイナミックレンジ(散乱
状態と透明状態のヘーズ差)が大きくなる傾向がある。しかし、平均粒径が上記下限値よ
り小さい(可視光波長よりもかなり小さい)とその効果が薄れてしまうので、液晶組成物
の平均粒径は上記下限値以上であることが好ましい。
【0035】
上記の液晶組成物の平均粒径は個数基準のメディアン径とする。
液晶-高分子複合膜の膜面から観察した際に、液晶組成物の形状が円ではなく、楕円、
三角形、四角形、六角形等の多角形、又はこれらの形状が歪である場合、粒径は最小包含
円の直径を参照すればよい。
【0036】
<液晶成分>
本発明の液晶組成物は、液晶成分(以下、「本発明の液晶成分」と称す場合がある。)
を含有することが好ましく、本発明の液晶成分の誘電率異方性(Δε)は正であることが
好ましい。この場合、電圧無印加時に散乱状態で電圧印加時に透明状態のノーマルモード
となる。
【0037】
本発明の液晶成分のNI点(ネマチック相-等方相転移温度)は110℃以上150℃
以下であることが好ましく、120℃以上140℃以下が好ましい。NI点が上記下限以
上であると90℃程度の高温下での連続駆動においても透過率変化のダイナミックレンジ
を維持できる傾向がある。また、NI点が高いほうが透過率変化のダイナミックレンジが
広い傾向がある。一方、NI点が上昇するとネマチック相の温度下限も上昇する傾向があ
るため、低温での動作の観点から、NI点は上記上限以下であることが好ましい。
【0038】
液晶成分のNI点の測定方法は特に限定されないが、液晶組成物を一旦相溶させ、温度
上昇による相転移または相分離を、偏光顕微鏡によって観察することにより得られる。
【0039】
本発明の液晶成分の屈折率異方性(Δn)は、0.01以上が好ましく、0.02以上
がより好ましく、0.03以上がさらに好ましい。また、0.1以下が好ましく、0.1
0以下がより好ましい。Δnが上記上限値以下であることで、高分子マトリクスと液晶組
成物との界面での光散乱が低減され、透明状態のヘーズを低減できる傾向にある。一方、
Δnが上記下限値以上であることで、液晶組成物のオーダーパラメータが大きくなる傾向
がある。
【0040】
液晶成分の屈折率異方性は、液晶成分の常光屈折率(no)と異常光屈折率(ne)を
直接求めることにより、その差(Δn=ne-no)として得られる。直接求めることが
困難な場合は、厚さdの試料中を通過したときの位相差(リタデーション:R)を求め、
これを厚さdで割って求めることも可能である(R=Δnd)。
【0041】
液晶成分に含まれる液晶としては、ネマチック液晶、コレステリック液晶、スメクチッ
ク液晶等が使用できる。ネマチック液晶にカイラル剤を添加してコレステリック液晶(カ
イラルネマチック液晶)にしてもよく、安価に利用できることを鑑みると、ネマチック液
晶またはカイラルネマチック液晶が好ましい。
【0042】
液晶成分として公知の液晶性物質を用いる場合、具体的には日本学術振興会第142委
員会編;「液晶デバイスハンドブック」日本工業新聞社(1989年)、第152頁~第
192頁及び液晶便覧編集委員会編;「液晶便覧」丸善株式会社(2000年)、第26
0頁~第330頁に記載されているようなビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、シ
クロヘキシルシクロヘキサン系等の各種低分子系の化合物又は混合物を使用することがで
きる。また、液晶便覧編集委員会編;「液晶便覧」丸善株式会社(2000年)、第36
5頁~第415頁に記載されているような高分子系化合物又は混合物を使用することもで
きる。ネマチック液晶を構成する化合物としては例えば、以下の化合物等が挙げられる。
【0043】
【化1】
【0044】
ネマチック液晶及びコレステリック液晶(カイラルネマチック液晶)としては、粘度が
低く、誘電率異方性の高いものが、液晶素子の高速応答性やエマルジョンの製造性の点で
好ましい。
【0045】
<二色性色素>
本発明の液晶組成物は、液晶成分以外に二色性色素を含有していてもよい。このような
液晶組成物は、一般的にゲストホスト液晶として知られている。
【0046】
二色性色素としては、液晶成分へ相溶する二色性色素化合物であればいずれでもよく、
Δεが正の二色性色素でも負の二色性色素でもよい。また、それ自体が液晶性を示すもの
でもよい。
【0047】
二色性色素としては、具体的にはアゾ系色素、アントラキノン系色素、ナフトキノン系
色素、ペリレン系色素、キノフタロン系色素、テトラジン系色素、ベンゾチアジアゾール
系色素等が挙げられる。公知の二色性色素を用いる場合、日本学術振興会第142委員会
編;「液晶デバイスハンドブック」日本工業新聞社(1989年)、第192頁~第19
6頁及び第724頁~第730頁に記載されているようなアゾ系色素、アントラキノン系
色素又はこれらの混合物を使用することができる。これらのなかでも、アントラキノン系
色素及び/又はアゾ系色素を含むことが、吸光係数が大きく、液晶成分への溶解度が大き
くなり、耐光性が高くなる傾向になるため好ましい。
二色性色素は1種類でもよく、複数種を混合して用いてもよい。特に限定はないが、好
ましくは二色性色素のうち、アントラキノン系色素及び/又はアゾ系色素を20質量%以
上含むことが好ましく、50質量%以上含むことが好ましい。
【0048】
二色性色素の具体例としては、例えば以下の式で表される化合物等が挙げられる。
【0049】
【化2】
【0050】
上記式中、Xは各々独立に、-NH-又は-S-を示し、nは0又は1を示し、Arは
、フェニレン基又はナフチレン基を示す。
Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、これらの置換基を有していてもよいシク
ロヘキシル基、フェニル基、フェニルシクロヘキシル基又はシクロヘキシルシクロヘキシ
ル基を示す。
【0051】
液晶組成物100質量%に対する二色性色素の含有量は特に限定はされないが、0.1
質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、3質量%以
上であることがさらに好ましい。また、液晶組成物100質量%に対する二色性色素の含
有量は20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく
、10質量%以下であることがさらに好ましい。
二色性色素の含有量が上記下限値以上であることで、得られる液晶素子が着色状態によ
り大きな光吸収を示し、透過光量が小さくなる傾向にある。二色性色素の含有量が上記上
限値以下であることで、二色性色素の分離や析出が生じにくくなり、液晶素子の信頼性が
向上する傾向にある。
上記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。例えば、液晶組成物100質
量%に対する二色性色素の含有量は0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量
%以上15質量%以下がより好ましく、3質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。
【0052】
液晶組成物には、本発明の液晶素子の性能を損なわない範囲で、液晶成分、二色性色素
以外の添加剤を含有していてもよい。具体的には高分子前駆体、重合開始剤、光安定剤、
抗酸化剤、増粘剤、重合禁止剤、光増感剤、接着剤、消泡剤、界面活性剤、カイラル剤等
を有していてもよい。
【0053】
カイラル剤は、液晶成分へ相溶するカイラル化合物であればいずれでもよく、合成品で
も市販品でよい。また、それ自体が液晶性を示すものでもよいし、重合性の官能基を有し
ていてもよい。さらに、右旋性でも左旋性でもよく、右旋性のカイラル剤と左旋性のカイ
ラル剤を併用してもよい。
また、カイラル剤としては、それ自体の誘電異方性が正に大きく、粘度の低いものが液
晶素子の駆動電圧低減及び応答速度の観点から好ましく、カイラル剤が液晶をねじる力の
指標とされるHelical Twisting Powerが大きいほうが好ましい。
【0054】
市販のカイラル剤としては、例えばCB15(商品名 メルク社製)、C15(商品名
メルク社製)、S-811(商品名 メルク社製)、R-811(商品名 メルク社製
)、S-1011(商品名 メルク社製)、R-1011(商品名 メルク社製)等が挙
げられる。
【0055】
本発明の液晶組成物がカイラル剤を含有する場合、その含有量については特に制限はな
いが、用いる液晶成分とカイラル剤の量比で決まるカイラルピッチp[μm]の逆数(1
/p)が0.01~0.5[/μm]であることが好ましく、特に0.01~0.3[/
μm]であることが好ましい。カイラルピッチの逆数(1/p)が上記下限値以上であれ
ば、散乱状態の光散乱性を向上することができ、上記上限値以下であれば電圧上昇を抑え
ることが可能である。
【0056】
<高分子マトリクス>
本発明の高分子マトリクスとしては、好ましくは親水性の高分子を使用する。この場合
、親水性であれば特に限定されないが、屈折率が液晶成分の常光屈折率(no)と一致す
るように選択することが好ましい。典型的には液晶成分のnoは1.5前後であるので、
高分子マトリクスの屈折率は1.45以上1.55以下が好ましい。
【0057】
高分子マトリクスを構成する高分子の重量平均分子量(Mw)は、1000以上が好ま
しく、10000以上がより好ましい。また、1000000以下が好ましく、1000
00以下がより好ましい。上記下限値以上であれば、液晶を高分子マトリクス内に保持し
やすい傾向がある。上記上限値以下であれば、造膜しやすい傾向がある。
【0058】
高分子マトリクスを構成する高分子としては、ゼラチン、アラビアゴム等の天然高分子
;ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアクリル、ポリアミン、ポリ
アミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル等の合成
高分子及びそれらの変性体;メタクリレート/アクリロニトリル、ウレタン/アクリレー
ト、アクリレート/アクリロニトリル等の共重合体;等を用いてもよい。また、架橋剤を
用いて高分子に架橋構造を導入してもよい。
【0059】
該高分子は水への分散性又は溶解性が高いことが好ましく、ゼラチン、ポリビニルアル
コール、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアクリル、ポリアミン及びそれらの変性体が好
ましい。より好ましくは、ポリウレタン、ポリアクリル、ポリビニルアルコール及びこれ
らの変性体からなる群より選択される少なくとも1つであり、更に好ましくはポリウレタ
ン、ポリアクリル及びこれらの変性体からなる群より選択される少なくとも1つであり、
特に好ましくはポリアクリルである。
これらの高分子は1種類のみでもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0060】
ポリウレタンはポリイソシアネートとポリオールのそれぞれの骨格により分類されてい
る。ポリイソシアネート骨格としては、脂肪族炭素骨格からなる脂肪族系ポリウレタンや
、ポリイソシアネートに芳香環を含有する芳香族系ポリウレタンが挙げられる。中でも脂
肪族系ポリウレタンが、耐光性が高い点で好ましい。ポリオール骨格としては、ポリエー
テル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系が挙げられ、中でもポリエーテル系が、膜
の密着性が良好であり好ましい。
【0061】
ポリアクリルは種々のアクリレートモノマーの重合体から成る。アクリルモノマーとし
ては、以下式で表される化合物等が挙げられる。
【0062】
【化3】
【0063】
上記式中、Xは水素原子またはメチル基を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子、ヒ
ドロキシ基、炭素数1以上20以下の置換基を有していてもよい直鎖状もしくは分枝状ア
ルキル基、炭素数1以上20以下の置換基を有していてもよい直鎖状もしくは分枝状アル
コキシ基、炭素数1以上10以下の置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示す。
【0064】
ポリアクリルはアクリレート以外のモノマーと共重合してもよく、共重合体としては、
アクリレート-スチレン、アクリレート-酢酸ビニル、アクリレート-アクリロニトリル
、アクリレート-ウレタン、アクリレート-エステル、アクリレート-シリコーン等が挙
げられる。主鎖をアクリレートと他のモノマーとの共重合体で構成してもよいし、ポリア
クリル主鎖に他のポリマーをグラフトさせてもよい。
【0065】
高分子マトリクスには、本発明の液晶素子の性能を損なわない範囲で、低分子を含有し
ていてもよい。該低分子としては具体的には光安定剤、抗酸化剤、増粘剤、重合禁止剤、
光増感剤、接着剤、消泡剤、界面活性剤、水溶性色素等が挙げられる。
【0066】
<液晶組成物と高分子マトリクスの比>
本発明の液晶-高分子複合膜において、高分子マトリクスの全質量に対する液晶組成物
の全質量の割合は、高分子マトリクスの全質量を1とすると、液晶組成物が0.5以上で
あることが好ましく、1以上であることがより好ましい。また、4以下であることが好ま
しく、3以下であることがより好ましい。高分子マトリクスの全質量に対し、液晶組成物
の全質量の割合が上記下限値以上であることで、透明状態のヘーズが低く、かつ駆動電圧
が低くなる傾向がある。高分子マトリクスの全質量に対し、液晶組成物の全質量の割合が
上記上限値以下であることで、液晶-高分子複合膜の耐衝撃性及び密着性が向上する傾向
がある。
【0067】
[透明導電膜付き基板]
本発明に係る透明導電膜付き基板の代表的な構成を以下に説明するが、これらに限定さ
れるものではない。
【0068】
基板の材質としては、例えば、ガラスや石英等の無機透明物質、金属、金属酸化物、半
導体、セラミック、プラスチック板、プラスチックフィルム等の無色透明のものが挙げら
れる。これらの基板を単板で用いても、複数積層して用いてもよい。
基板にはキズや汚れから守る目的でハードコート層や特定波長域の光線を遮断するシャ
ープカット層やバンドパス層を付与してもよい。
【0069】
電極を構成する透明導電膜は、上記基板の上に、例えば、金属酸化物、金属、半導体、
有機導電物質等の薄膜を基板全面或いは部分的に、既知の塗布法や印刷法やスパッタ等の
蒸着法等により形成される。また、導電性の薄膜形成後に部分的にエッチングしたもので
もよい。特に大面積の液晶素子を得るためには、生産性及び加工性の面からPET等の透
明高分子フィルム上にITO(酸化インジウムと酸化スズの混合物)電極をスパッタ等の
蒸着法や印刷法等を用いて形成した電極基板を用いることが望ましい。
【0070】
基板上に電極間或いは電極と外部を結ぶための配線が設けられていてもよい。例えば、
セグメント駆動用電極基板やマトリックス駆動用電極基板、アクティブマトリックス駆動
用電極基板等であってもよい。
【0071】
更に、基板上に設けられた電極面上が、ポリイミドやポリアミド、シリコーン、シアン
化合物等の有機化合物、SiO、TiO、ZrO等の無機化合物、又はこれらの混
合物よりなる保護膜や配向膜で全面或いは一部が覆われていてもよい。
【0072】
基板は、液晶を基板面に対して配向させるよう配向処理されていてもよく、配向処理さ
れている場合、例えば、2枚の基板ともホモジニアス配向又はホメオトロピック配向であ
ってもよいし、一方がホモジニアス配向で、他方がホメオトロピック配向である、いわゆ
るハイブリッドであってもよい。これらの配向処理には、電極表面を直接ラビングしても
よく、TN液晶、STN液晶等に用いられるポリイミド等の通常の配向膜を使用してもよ
いし、光配向処理を施してもよい。
【0073】
対向する基板は、周辺部に適宜、基板を接着支持する樹脂体を含む接着層を有していて
もよい。
【0074】
本発明の液晶素子の端部あるいは切断面を、粘着テープ、熱圧着テープ、熱硬化性テー
プ等のテープ類、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、湿気硬化型樹脂、室温硬化型接着剤、嫌
気性接着剤、エポキシ系接着剤、シリコ-ン系接着剤、フッ素樹脂系接着剤、ポリエステ
ル系接着剤、塩化ビニル系接着剤等の硬化性樹脂類や熱可塑性樹脂類等で封止することで
、内部の液晶組成物等の染み出しを防ぐことができる。また、この封止により、液晶素子
の劣化を防ぐ効果が得られる場合もある。その際の端面の保護法としては、端面を全体に
覆ってもよいし、端部から液晶素子内部に硬化性樹脂類や熱可塑性樹脂類を流し込み固化
させてもよく、更にこの上をテープ類で覆ってもよい。
【0075】
対向配置される透明導電膜付き基板間には、球状又は筒状のガラス、プラスチック、セ
ラミック、あるいはプラスチックフィルム等のスペーサーを存在させてもよい。スペーサ
ーは、後述するエマルジョン組成物(以下、本発明のエマルジョン組成物と称する場合が
ある。)の成分として含有させることで、基板間の液晶-高分子複合膜に存在させてもよ
く、液晶素子組み立ての際に基板上に散布したり、接着剤と混合して接着層の中に存在さ
せたりしてもよい。
【0076】
[液晶-高分子複合膜の製造方法]
本発明の液晶-高分子複合膜は、透明導電膜付き基板上に後述の本発明のエマルジョン
組成物を塗布し、乾燥させることで製造することができる。塗布方法としては、バーコー
ト、ブレードコート、ナイフコート、ダイコート、スクリーンコート、マイクログラビア
ロールコート、リバースロールコート、キスロールコート、ディップロールコート、スピ
ンコート、スプレーコート等、公知の塗布方法が使用できる。基板の性状に応じ、適宜基
板洗浄をしてもよい。
【0077】
塗布時のウェット膜厚は10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましい。また
、120μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。ウェット膜厚が上記下限
値以上であることで、液晶組成物の粗密が無くなり、均一に塗布できる傾向がある。ウェ
ット膜厚が上記上限値以下であることで、駆動電圧が実用的な値まで下がり、かつ透明状
態のヘーズが低くなる傾向がある。
【0078】
エマルジョン組成物を塗布し、乾燥する際の乾燥温度は、40℃以上が好ましく、50
℃以上がより好ましい。また、100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。
乾燥温度が上記下限値以上であることで、乾燥時間が実用的な時間に短縮されるととも
に、膜中に残留する水分量が少なくなることで液晶素子の信頼性が向上する傾向にある。
乾燥温度が上記上限値以下であることで、乾燥中のエマルジョン組成物の合一や逆相化等
の構造破壊が生じにくくなる傾向がある。
【0079】
〔エマルジョン組成物〕
本発明のエマルジョン組成物は、水を含有する媒体に液晶組成物が分散したエマルジョ
ン組成物であって、前記媒体は、高分子及び炭素数5以下のアルコールが分散又は溶解し
たものである。
【0080】
本発明のエマルジョン組成物に含まれる液晶組成物は特に限定されないが、上述した本
発明の液晶素子に用いられる液晶組成物が挙げられる。また、エマルジョン組成物に含ま
れる水を含む媒体も特には限定されず、純水又は水と有機溶媒の混合物が挙げられる。
【0081】
有機溶媒の例としては、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、カルボン酸、アミ
ン等が挙げられる。有機溶媒は水溶性でもよいし、水にわずかに溶ける程度の油溶性でも
よいが、水と均一に溶解する量を混合することが好ましい。
【0082】
媒体に分散又は溶解している高分子については、上述した本発明の液晶-高分子複合膜
の高分子マトリクスを構成する高分子が挙げられる。
また、媒体に分散又は溶解している炭素数5以下のアルコールについても、上述した本
発明の液晶-高分子複合膜に用いられる炭素数5以下のアルコールが挙げられる。
【0083】
本発明において、高分子及び炭素数5以下のアルコールの分散とは、媒体中に高分子及
び炭素数5以下のアルコールの粒子が懸濁している状態であり、高分子及び炭素数5以下
のアルコールの溶解とは、高分子及び炭素数5以下のアルコールが溶媒和により十分小さ
く解離され、均一系をなす状態のことを示す。高分子の分散及び溶解に関しては、「色材
」一般社団法人色材協会(2004年),77巻4号,169~176頁に詳しい。
【0084】
本発明のエマルジョン組成物中で液晶組成物は水を含む媒体に分散しているが、液状の
ままで分散していてもよく、液晶組成物の周辺部を高分子、シリカ化合物、無機ナノ粒子
等でカプセル化したマイクロカプセル液晶の形で分散していてもよい。
マイクロカプセル液晶のカプセルとなる高分子としては、ゼラチン、アラビアゴム等の
天然高分子;ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアクリル、ポリア
ミン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリ
ル等の合成高分子及びそれらの変性体;メタクリレート/アクリロニトリル、ウレタン/
アクリレート、アクリレート/アクリロニトリル等の共重合体;等が挙げられる。
【0085】
本発明のエマルジョン組成物には、これを用いて製造される液晶素子の性能を損なわな
い範囲で、添加剤を含有していてもよい。添加剤としては具体的には界面活性剤、乳化剤
、分散剤、沈降防止剤、造膜助剤、レベリング剤、光安定剤、抗酸化剤、増粘剤、重合禁
止剤、光増感剤、接着剤、消泡剤、水溶性染料、カイラル剤等が挙げられる。
【0086】
本発明のエマルジョン組成物中における液晶組成物のサイズとしては、得られる液晶素
子の透明性の観点から、平均粒径が2μm以上であることが好ましく、5μm以上である
ことがより好ましい。また、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であるこ
とがより好ましい。平均粒径が上記下限値以上であることで、得られる液晶-高分子複合
膜の光散乱が弱くなり、透明状態のヘーズが小さくなる傾向がある。平均粒径が上記上限
値以下であることで、液晶組成物の粒状感が無くなってゆき、得られる液晶素子の外観の
均一性が良好になる傾向がある。
【0087】
一方、得られる液晶素子の光散乱性の観点からは、液晶組成物の平均粒径は0.01μ
m以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。また、2μm
未満であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。平均粒径は上記上限
値未満であることで、得られる液晶-高分子複合膜の光散乱が強くなり、散乱状態のヘー
ズが大きく、また、ダイナミックレンジ(散乱状態と透明状態のヘーズ差)が大きくなる
傾向がある。しかし平均粒径が上記下限値より小さい(可視光波長よりもかなり小さい)
とその効果が薄れてしまうので、液晶組成物の平均粒径は、上記下限値以上であることが
好ましい。
【0088】
上記の平均粒径は個数基準のメディアン径とする。液晶組成物の形状と平均粒径につい
ては、本発明の液晶組成物について前述した通りである。
【0089】
本発明のエマルジョン組成物において、媒体に分散又は溶解している高分子及び炭素数
5以下のアルコールの全質量を1とした場合、液晶組成物の全質量が0.5以上であるこ
とが好ましく、1以上であることがより好ましい。また、4以下であることが好ましく、
3以下であることがより好ましい。高分子の全質量に対し、液晶組成物の全質量が上記下
限値以上であることで、本発明のエマルジョン組成物を用いて得られる液晶素子の透明状
態のヘーズが低く、かつ駆動電圧が低くなる傾向がある。高分子の全質量に対し、液晶組
成物の全質量が上記上限値以下であることで、本発明のエマルジョン組成物を用いて得ら
れる液晶素子の耐衝撃性及び密着性が向上する傾向がある。
【0090】
本発明のエマルジョン組成物の全質量に対する炭素数5以下のアルコールの含有割合が
、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。また、20質量%以下が好ま
しく、10質量%以下がより好ましい。上記下限以上であれば、高分子に対して均一に分
散する傾向があり、上記上限以下であれば、液晶-高分子複合膜の比誘電率を向上する傾
向がある。
【0091】
[エマルジョン組成物の製造法]
本発明のエマルジョン組成物の製造法は特に限定されないが、例えば以下のような方法
で製造することができる。
製造方法(1) 油相である液晶組成物と水相である水を含有する媒体を混合し、乳化
工程を経た後に、水を含有する媒体に高分子および炭素数5以下のアルコールが分散又は
溶解している液を添加する。
製造方法(2) 油相である液晶組成物と水相である水を含有する媒体に高分子および
炭素数5以下のアルコールが分散又は溶解している液を混合し、乳化工程を行う。
製造方法(3) 液晶組成物の周辺部を高分子、シリカ化合物、無機ナノ粒子等でカプ
セル化したマイクロカプセル液晶の粉体又はスラリーおよび、炭素数5以下のアルコール
と水を含有する媒体を混合し、分散工程を経た後に、水を含有する媒体に高分子が分散又
は溶解している液を添加する。
製造方法(4) 前記マイクロカプセル液晶の粉体又はスラリーと水を含有する媒体に
高分子および炭素数5以下のアルコールが分散又は溶解している液を混合し、分散工程を
行う。
【0092】
この中でも製造方法(1)及び製造方法(3)は、混合物が低粘度の状態で乳化工程又
は分散工程を行うことができるため、低エネルギーで製造でき、さらに、液晶組成物の粒
径を制御しやすいので好ましい。
【0093】
水を含有する媒体に高分子および炭素数5以下のアルコールが分散又は溶解している液
としては、市販の水性樹脂エマルジョンに炭素数5以下のアルコールを分散又は溶解させ
たものが使用できる。以下に、市販の水性樹脂エマルジョンの具体例を示す。
水性ウレタンエマルジョン: DSM社製 NeoRez R-9660、NeoRe
z R-972、NeoRez R-9637、NeoRez R-9679、NeoR
ez R-960、NeoRez R-2170、NeoRez R-966、NeoR
ez R-967、NeoRez R-986、NeoRez R-9603、NeoR
ez R-4000、NeoRez R-9404、NeoRez R-600、Neo
Rez R-650、NeoRez R-1010;第一工業製薬社製 スーパーフレッ
クス 126、スーパーフレックス 130、スーパーフレックス 150、スーパーフ
レックス 150HS、スーパーフレックス 170、スーパーフレックス 210、ス
ーパーフレックス 300、スーパーフレックス 420、スーパーフレックス 420
NS、スーパーフレックス 460、スーパーフレックス 460S、スーパーフレック
ス 470、スーパーフレックス 500M、スーパーフレックス 620、スーパーフ
レックス 650、スーパーフレックス 740、スーパーフレックス 820、スーパ
ーフレックス 830HS、スーパーフレックス 860、スーパーフレックス 870
、スーパーフレックス E-2000、スーパーフレックス E-4800;日華化学社
製 ネオステッカー 200、ネオステッカー 400、ネオステッカー 700、ネオ
ステッカー 1200、ネオステッカー X-7096、エバファノール HA-107
C、エバファノール HA-50C、エバファノール HA-170、エバファノール
HA-560、エバファノール HA-15、エバファノール AP-12、エバファノ
ール APC-55。
水性アクリルエマルジョン:DSM社製 NeoCryl A-633、NeoCry
l A-639、NeoCryl A-655、NeoCryl A-662、NeoC
ryl A-1091、NeoCryl A-1092、NeoCryl A-1093
、NeoCryl A-1094、NeoCryl A-2091、NeoCryl A
-2092、NeoCryl A-6016、NeoCryl A-6057、NeoC
ryl A-6069、NeoCryl A-6092、NeoCryl A-614、
NeoCryl A-550、NeoCryl A-1105、NeoCryl A-1
125、NeoCryl A-1127、NeoCryl XK-12、NeoCryl
XK-16、NeoCryl XK-30、NeoCryl XK-36、NeoCr
yl XK-52、NeoCryl XK-190、NeoCryl XK-188、N
eoCryl XK-240;ジャパンコーティングレジン社製 リカボンド 702、
リカボンド 727、リカボンド 743N、リカボンド 745、リカボンド 752
、リカボンド 801、リカボンド 940、リカボンド 972、リカボンド 171
1、リカボンド 1752、リカボンド 6520、リカボンド 6720、リカボンド
7110、リカボンド 7180、リカボンド 7525、リカボンド 7820、リ
カボンド 8020、リカボンド 8030、リカボンド DM60、リカボンド DM
772、リカボンド DM774、リカボンド LDM6740、リカボンド LDM7
522、リカボンド LDM7523、リカボンド ES-65、リカボンド ES-9
0、リカボンド ES-620、リカボンド ET-700、リカボンド ET-831
、リカボンド HS-5、リカボンド HS-531、リカボンド AP-601、リカ
ボンド AP-96、リカボンド AP-620、リカボンド AP-700、リカボン
ド AP-80、リカボンド 710A、リカボンド 730L、リカボンド 731L
、リカボンド 952B、リカボンド 966A、リカボンド 7320、リカボンド
7400、リカボンド FK-420、リカボンド FK-64S、リカボンド FK-
66IS、FK-66N、FK-68H、リカボンド FK-471、リカボンド FK
-475、リカボンド FK-489、リカボンド FK-284、リカボンド FK-
600S、リカボンド FK-3830、リカボンド FK-3840、リカボンド F
K-6100、モビニール VDM7410、モビニール 4061、モビニール 40
80、モビニール 4090、モビニール 4050、モビニール S-71、モビニー
ル 461、モビニール 650、モビニール AP-60L、モビニール 490;ス
リーボンド社製 ThreeBond 1549、ThreeBond 1549B、T
hreeBond 1555C、ThreeBond 1555D。
【0094】
中でもNeoRez R-966、NeoRez R-967、NeoCryl A-
1125、NeoCryl A-1127、リカボンド FK-471、リカボンド E
S-620、リカボンド LDM7522、モビニール 4061、モビニール 408
0、モビニール 4090、ThreeBond 1549が油相の分散安定性に優れ、
好ましい。
【0095】
安定的なエマルジョンを得るために、乳化工程又は分散工程の前の段階で界面活性剤又
は分散安定剤を添加することが好ましい。界面活性剤としては特に限定はなく、イオン性
でも非イオン性でもよく、低分子でも高分子でもよく、非反応性でも反応性でもよい。
【0096】
界面活性剤の添加量は特に限定されないが、液晶組成物に対し、0.1質量%以上であ
ることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、20質量%以下
が好ましく、10質量%以下がより好ましい。界面活性剤の添加量が上記の範囲にあるこ
とで、エマルジョンの分散が安定化するとともに、液晶組成物の粒径を所望の範囲に制御
することができる傾向にある。
【0097】
上記界面活性剤は溶解性に応じて液晶組成物へ添加してもよいし、水を含有する媒体へ
添加してもよい。
【0098】
界面活性剤の例としては、以下のものなどが挙げられる。
カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等のアニオン性界面
活性剤;
アミン塩、4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;
アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルアミンオキサイド、ベタイン、スルホベタイン、ア
ミドスルホベタイン、カルボベタイン、イミダゾリン等の両性界面活性剤;
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル
、ポリオキシエチレンアラルキルエーテル、ポリオキシエチレンアラルキルアリールエー
テル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック付加物、アルキルグルコシド、
ポリエーテル変性シリコーン等のエーテル型、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂
肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等のエステル型、ポリオキシエチレン脂肪酸エステ
ル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンショ糖脂肪酸エ
ステル等のエステル・エーテル型、アセチル変性ポリビニルアルコール等のアセチル型、
脂肪酸アルカノールアミド等の非イオン性界面活性剤:
【0099】
この中でもアニオン性界面活性剤は水溶性と分散安定性が高い点で好ましく、特に、ス
ルホン酸塩が好ましい。また、非イオン性界面活性剤は液晶素子の電気的な信頼性を高く
できる傾向があり好ましい。中でもエーテル型又はエステル型が好ましく、ポリオキシエ
チレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエ
チレンアラルキルエーテル、ポリオキシエチレンアラルキルアリールエーテル、ポリオキ
シエチレンポリオキシプロピレンブロック付加物等が特に好ましい。
【0100】
分散安定剤としては特に限定はないが、以下のようなものなどが挙げられる。
ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシエチル
セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポ
リエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリウレタン、ポリアミン
、ポリアミド、ポリエーテル、マレイン酸共重合物、ゼラチン、デンプン、キトサン、コ
ーンスターチ等の高分子及びこれらの変性体;
メタクリレート/アクリロニトリル、ウレタン/アクリレート、アクリレート/アクリ
ロニトリル等の共重合体;
シリカ微粒子、チタニア微粒子、アルミナ微粒子等の無機酸化物の微粒子:
この中でもポリビニルアルコール及びこの変性体、ポリウレタン、ポリアミド等が、分
散安定性が高く好ましい。
分散安定剤の例示には高分子マトリクスを構成する高分子として例示したものが含まれ
ており、それらがエマルジョン組成物や液晶-高分子複合膜に含まれる場合は、高分子マ
トリクスを構成する高分子として含まれる。
【0101】
ポリビニルアルコールのケン化度は、80mol%以上が好ましく、85mol%以上
がより好ましい。また、95mol%以下が好ましく、91mol%以下がより好ましい
。ケン化度がこれらの範囲であることで、水を含有する媒体への溶解度が高い傾向にある

ポリビニルアルコールの重合度は、100以上が好ましく、300以上がより好ましい
。また、2500以下が好ましく、1000以下がより好ましい。重合度がこれらの範囲
であることで、膜が可撓性に優れる傾向にある。
【0102】
ポリビニルアルコールの具体例としては、日本合成化学社製 ゴーセノール GL-0
3、ゴーセノール GL-05、ゴーセノール GM-14L、ゴーセノール GM14
、ゴーセノール GH-17、ゴーセノール GH-17R、ゴーセノール GH-20
、ゴーセノール GH-23、ゴーセノール AL-06、ゴーセノール P-610、
ゴーセノール C-500;クラレ社製 クラレポバール 25-88KL、クラレポバ
ール 32-97KL、クラレポバール 3-86SD、クラレポバール 105-88
KX、クラレポバール 200-88KX;デンカ社製 デンカポバール H-12、デ
ンカポバール H-17、デンカポバール H-24、デンカポバール B-05、デン
カポバール B-17、デンカポバール B-20、デンカポバール B-24、デンカ
ポバール B-33等が挙げられる。
【0103】
エマルジョン組成物の製造において、乳化法及び分散法は特に限定はなく、撹拌機、ホ
モジナイザー、ホモミキサー、ディスパーサー、高圧乳化機、ブレンダー、コロイドミル
、超音波分散機等を用いた機械的に粒子を破砕する方法;多孔膜、マイクロチャネル、イ
ンクジェット等を用いて液を孔から押し出す方法;等が挙げられる。
【0104】
上記の中でも、液晶組成物の平均粒径が2μm以上50μm以下のエマルジョン組成物
を製造する場合は、多孔膜を用いて液を孔から押し出す方法(膜乳化法)が、粒子の粒度
分布を精密に制御でき、かつ製造が容易であるため好ましい。多孔膜としては特に制限は
ないが、シラス多孔ガラス等を用いることができる。
【0105】
液晶組成物の平均粒径が0.01μm以上2μm未満のエマルジョン組成物を製造する
場合は、一旦、膜乳化法等で液晶組成物の平均粒径が2μm以上50μm以下のエマルジ
ョン組成物を製造したものを、更に高圧乳化機、若しくは超音波分散機を用いて機械的に
粒子を破砕すると、均一なエマルジョン組成物を簡便に製造することが可能である。
【0106】
エマルジョン組成物には適宜、架橋剤を用いてもよい。架橋剤を用いることで、液晶-
高分子複合膜の耐水性及び耐衝撃性が向上する傾向がある。
【0107】
架橋剤としては、特に限定はないが、例えば、以下のようなものが挙げられる。
エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエー
テル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシ
ジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエー
テル、ジグリシジルアニリン等のエポキシ系化合物;
γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキ
シシラン、γ-グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ-グリシドキシプロピ
ルジエトキシメチルシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシ
シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ
シラン系化合物;
3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N
-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチ
ル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン系化合物;
γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン系化合物;
カルボジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジ
ヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のヒドラジド系化合物;
セミカルバジド樹脂;
ポリカルボジイミド系樹脂;
テトラメチロールメタン-トリス(β-アジリジニルプロピオナート)、トリメチロール
プロパン-トリス(β-アジリジニルプロピオナート)、メチレンビス[N-(1-アジリ
ジニルカルボニル)-4-アニリン]、N,N’-ヘキサメチレンビス(1-アジリジン
カルボアミド)、N,N’-ヘキサアミノエチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカル
ボキシアミド)等のアジリジン系(エチレンイミノ基含有)化合物;
アセトアセトキシ基含有化合物;オキサゾリン基含有化合物;
ポリエチレンポリアミン;ポリエチレンイミン;ポリアミドポリアミン;ポリアミドポ
リ尿素;アルキル化ポリメチロールメラミン;グリオキザール;
水分散イソシアネート;ブロックドイソシアネート;カルボジイミド基含有化合物;ビ
スビニルスルホン;乳酸チタネート:
【0108】
エポキシ系化合物及びエポキシシラン系化合物を用いる場合には、イミダゾール系化合
物、アミン系化合物、リン系化合物等の触媒を加えてもよい。
【0109】
上記の中でも、好ましくはヒドラジド系化合物、オキサゾリン基含有化合物、カルボジ
イミド基含有化合物、ブロックドイソシアネートが、架橋速度が速く、毒性が低いため、
好ましい。
【0110】
高分子と架橋剤は任意の組み合わせで使用することができるが、ポリウレタンとオキサ
ゾリン基含有化合物、ポリウレタンとカルボジイミド基含有化合物、ポリウレタンとブロ
ックドイソシアネート、ポリアクリルとヒドラジド系化合物の組み合わせが架橋反応性が
高く、好ましい。また、得られたエマルジョン組成物の安定性の観点から、ポリアクリル
とカルボジイミド基含有化合物の組み合わせが好ましい。
【0111】
架橋剤の添加量は特に限定はないが、架橋される高分子に対して0.1質量%以上であ
ることが好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。また、20質量%以下で
あることが好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。架橋剤の添加量が上
記の範囲にあることで、液晶-高分子複合膜の耐水性及び耐衝撃性が向上し、かつ可撓性
が保持される傾向にある。
架橋剤の添加タイミングは、初めからエマルジョン組成物に添加しておく1液型にして
もよく、基板への塗布直前に添加する2液型でもよい。
【0112】
本発明のエマルジョン組成物の粘度は10mPa・s以上が好ましく、100mPa・
s以上がさらに好ましい。また、10000mPa・s以下が好ましく、2000mPa
・s以下がさらに好ましい。粘度が上記の範囲にあることで、液晶-高分子複合膜の膜厚
を均一に塗布することが容易になり、かつ塗布速度を速くすることができて生産性が高く
なる傾向がある。
【0113】
本発明のエマルジョン組成物の粘度を上記の範囲に収めるために、増粘剤、チクソ剤、
減粘剤等の粘度調整剤を用いてもよい。
【0114】
粘度調整剤としては特に限定はないが、分散安定剤として例示されたものが挙げられる
【0115】
エマルジョン組成物中の液晶組成物の含有量は20質量%以上が好ましく、30質量%
以上がさらに好ましい。また、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がさらに好ま
しい。液晶組成物の含有量が上記範囲内にあることで、エマルジョン組成物を基板へ塗布
した際に生じるハジキが抑制され、かつ液晶組成物の粒径とエマルジョン組成物の粘度を
上記の範囲に収めることが容易になる傾向にある。
【0116】
エマルジョン組成物に用いる高分子の粒径は、1nm以上が好ましく、10nm以上が
より好ましい。また、1000nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。上
記の範囲内にあることで、エマルジョン組成物の粘度を上記の範囲に収めることが容易に
なる傾向にある。
【0117】
また、エマルジョン組成物に用いる高分子の重量平均分子量は1.0×10以上が好
ましく、1.0×10以上がより好ましい。また、1.0×10以下が好ましく、1
.0×10以下がより好ましい。高分子の分子量が上記の範囲内にあることで、エマル
ジョン組成物の粘度を上記の範囲に収めることが容易になる傾向にある。
【実施例0118】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨
を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0119】
[実施例1]
Δn=0.095、NI点=129.5℃のネマチック液晶とカイラル剤(CB-15
)を下記配合で混合し、液晶組成物(L-1)を得た。
【0120】
<液晶組成物配合>
ネマチック液晶 :92.0質量%
CB-15 : 8.0質量%
【0121】
液晶組成物(L-1)50質量部に対し、1.5質量%のドデシルベンゼンスルホン酸
ナトリウム水溶液を50質量部加え、シラス多孔質ガラス(細孔径10μm)に通して乳
化し、o/wエマルジョン(E-1)を得た。
水性アクリルエマルジョンのリカボンド LDM7522(ジャパンコーティングレジ
ン社製)84質量%にポリビニルアルコールのゴーセノール GH-17R(三菱ケミカ
ル社製)6質量%を加えて撹拌し、さらにエチレングリコール(富士フィルム和光純薬社
製 和光一級)10質量%を加えて攪拌し、白色ラテックス(W-1)を得た。
o/wエマルジョン(E-1)55質量部に白色ラテックス(W-1)45質量部を加
え、均一になるまで撹拌してエマルジョン組成物(I-1)を得た。
【0122】
基板1として、厚さ125μmのPETフィルム基板上に透明なITO電極を製膜した
フィルムを用いた。この基板のITO電極上に、バーコートでエマルジョン組成物(I-
1)を塗布し、90℃で乾燥して膜厚30μmの液晶-高分子複合膜1を形成し、基板1
上に液晶-高分子複合膜1を形成された積層体1を得た。
【0123】
前記積層体1に対して、前記液晶-高分子複合膜1を介してITO電極が対向するよう
に、基板1をさらに積層し、80℃で加熱し貼り合わせることで、長辺8.0cm、短辺
5.0cmの短冊状の液晶素子(F-1)を得た。
【0124】
実施例1の液晶素子(F-1)において、北斗電工社製 電気化学計測システム(Hz
-Pro S4)を使用し、周波数1kHzにおける液晶-高分子複合膜の比誘電率を測
定した。
【0125】
[比較例1]
液晶組成物として、実施例1で用いた液晶組成物(L-1)を用いた。
【0126】
液晶組成物(L-1)50質量部に対し、1.5質量%のドデシルベンゼンスルホン酸
ナトリウム水溶液を50質量部加え、シラス多孔質ガラスに通して乳化し、o/wエマル
ジョン(E-1)を得た。
水性アクリルエマルジョンのリカボンド LDM7522(ジャパンコーティングレジ
ン社製)93質量%にポリビニルアルコールのゴーセノール GH-17R(三菱ケミカ
ル社製)6質量%を加えて撹拌し、白色ラテックス(W-2)を得た。
o/wエマルジョン(E-1)55質量部に白色ラテックス(W-2)45質量部を加
え、均一になるまで撹拌してエマルジョン組成物(I-2)を得た。
【0127】
エマルジョン組成物(I-2)を用い、実施例1と同様にして液晶素子(F-2)を得
た。
液晶素子(F-2)における液晶-高分子複合膜の比誘電率は、実施例1と同様の方法
で測定した。
【0128】
表1に、実施例1と比較例1における液晶-高分子複合膜の比誘電率の結果を示す。
【0129】
【表1】
【0130】
実施例1と比較例1の比較から分かるとおり、実施例1のエチレングリコールを含む液
晶-高分子複合膜の比誘電率は、比較例1の液晶-高分子複合膜の比誘電率に比べて高い
値を示しており、液晶-高分子複合膜内にエチレングリコールを加えることで、液晶-高
分子複合膜の比誘電率は向上することが示された。
【0131】
[実施例2]
実施例1の液晶素子(F-1)を用いて、温度25℃で、周波数100Hz矩形波の印
加電圧を0Vrmsから100Vrmsの範囲で変えた際のヘーズ変化を測定した。結果
図1に示す。
【0132】
[比較例2]
比較例1の液晶素子(F-2)を用いて、実施例2と同様にヘーズ変化を測定した。結
果を図1に示す。
【0133】
図1から分かるとおり、液晶素子(F-1)のヘーズは、50%以下を示す印加電圧の
閾値が、20Vrmsであった。
一方、液晶素子(F-2)は、ヘーズが50%以下を示す印加電圧の閾値が、24Vr
msであった。
【0134】
実施例2と比較例2の結果から分かるとおり、実施例2のエチレングリコールを含有す
る液晶素子(F―1)のヘーズが50%以下を示す電圧の閾値は、比較例2の値に比べ下
がる傾向を示しており、液晶-高分子複合膜の比誘電率が高い値を示した液晶素子(F―
1)は、駆動電圧が低電圧化していることが示された。
図1