(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062598
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】周波数同期回路及び発振回路
(51)【国際特許分類】
H03B 5/32 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
H03B5/32 E
H03B5/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170550
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕樹
【テーマコード(参考)】
5J079
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA39
5J079BA41
5J079CB02
5J079DA25
5J079FA01
5J079FA14
5J079FA24
5J079FB02
5J079FB06
5J079FB35
5J079FB48
(57)【要約】
【課題】発振回路における消費電力及び位相雑音を抑制すること。
【解決手段】実施形態に係る周波数同期回路は、第1のスイッチトキャパシタ回路と、電流源と、周波数帰還回路とを備える。第1のスイッチトキャパシタ回路は、入力された基準周波数の基準周期信号に応じた第1のインピーダンスを発生する。電流源は、第1のインピーダンスに応じた基準電流を発生する。周波数帰還回路は、電圧制御発振回路と、第2のスイッチトキャパシタ回路と、電圧差検出回路とを含み、基準周波数に周波数同期された出力信号を発生する。電圧制御発振回路は、制御電圧に応じた周波数の出力信号を出力する。第2のスイッチトキャパシタ回路は、第1のスイッチトキャパシタ回路にカスコード接続され、出力信号に応じた第2のインピーダンスを発生する。電圧差検出回路は、基準電流及び第2のインピーダンスに応じて制御電圧を発生する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された基準周波数の基準周期信号に応じて容量素子を充放電することにより第1のインピーダンスを発生するように構成された第1のスイッチトキャパシタ回路と、
前記第1のスイッチトキャパシタ回路に電気的に接続され、入力された第1の参照電圧を用いて前記第1のインピーダンスに応じた基準電流を発生するように構成された電流源と、
制御電圧に応じた出力周波数を有する出力信号を出力可能に構成された電圧制御発振回路と、
前記第1のスイッチトキャパシタ回路にカスコード接続され、前記電流源に電気的に接続され、前記出力信号に応じて容量素子を充放電することにより第2のインピーダンスを発生するとともに、前記基準電流を用いて前記第2のインピーダンスに応じた電圧を発生するように構成された第2のスイッチトキャパシタ回路と、
前記第2のスイッチトキャパシタ回路及び前記電圧制御発振回路に電気的に接続され、前記第2のインピーダンスに応じた電圧と入力された第2の参照電圧との差分に応じて前記制御電圧を発生するように構成された電圧差検出回路と
を含み、前記基準周波数に周波数同期された前記出力周波数の前記出力信号を発生するように構成された周波数帰還回路と
を備える周波数同期回路。
【請求項2】
請求項1に記載の周波数同期回路と、
前記第1のスイッチトキャパシタ回路に電気的に接続され、水晶振動子の発振動作により前記基準周波数の前記基準周期信号を生成し、前記基準周期信号を前記第1のスイッチトキャパシタ回路に供給するように構成された水晶発振回路と
を備える発振回路。
【請求項3】
前記水晶発振回路と前記第1のスイッチトキャパシタ回路との間に電気的に接続され、前記基準周波数の基準周期信号のデューティー比を50:50に整形して前記第1のスイッチトキャパシタ回路に供給するように構成された第1の分周回路と、
前記電圧制御発振回路と前記第2のスイッチトキャパシタ回路との間に電気的に接続され、前記出力周波数の前記出力信号のデューティー比を50:50に整形して前記第2のスイッチトキャパシタ回路に供給するように構成された第2の分周回路と
をさらに備える、請求項2に記載の発振回路。
【請求項4】
前記水晶振動子と同一基板上に形成された温度センサと、
前記温度センサ、前記水晶発振回路、前記電流源及び前記電圧差検出回路に電気的に接続され、前記温度センサからの信号と前記基準周期信号と、前記水晶振動子の周波数温度特性とに基づいて、前記第1の参照電圧及び前記第2の参照電圧の電圧値を制御するように構成された制御回路と
を備える、請求項2又は請求項3に記載の発振回路。
【請求項5】
前記制御回路は、前記第2の参照電圧に対する前記第1の参照電圧を示す電圧比を前記水晶振動子の周波数温度特性に反比例させる、請求項4に記載の発振回路。
【請求項6】
前記制御回路は、前記電圧比に予め定められた係数を乗じた値を用いて前記第1の参照電圧及び前記第2の参照電圧の電圧値を制御する、請求項5に記載の発振回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の実施形態は、周波数同期回路及び発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水晶振動子を発振させることにより所望の出力周波数を得る発振回路として、恒温槽型水晶発振回路(Oven Controlled crystal Oscillator:OCXO)や電圧制御水晶発振回路(Voltage-Controlled Crystal Oscillator:VCXO)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、水晶振動子からの出力周波数には温度依存性がある。しかしながら、OCXOにおいては、恒温槽を用いて水晶振動子の温度を保つことにより出力周波数の変化を抑制するため、消費電力が大きいという問題があった。また、VCXOにおいては、恒温槽を用いることなく制御電圧の入力に応じた周波数を出力可能であるためOCXOより消費電力が小さい一方、位相雑音が大きいという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、上記に鑑みてなされたものであって、発振回路における消費電力及び位相雑音を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態に係る周波数同期回路は、第1のスイッチトキャパシタ回路と、電流源と、周波数帰還回路とを備える。前記第1のスイッチトキャパシタ回路は、入力された基準周波数の基準周期信号に応じて容量素子を充放電することにより第1のインピーダンスを発生するように構成されている。前記電流源は、前記第1のスイッチトキャパシタ回路に電気的に接続され、入力された第1の参照電圧を用いて前記第1のインピーダンスに応じた基準電流を発生するように構成されている。前記周波数帰還回路は、電圧制御発振回路と、第2のスイッチトキャパシタ回路と、電圧差検出回路とを含み、前記基準周波数に周波数同期された前記出力周波数の前記出力信号を発生するように構成されている。前記電圧制御発振回路は、制御電圧に応じた出力周波数を有する出力信号を出力可能に構成されている。前記第2のスイッチトキャパシタ回路は、前記第1のスイッチトキャパシタ回路にカスコード接続され、前記電流源に電気的に接続され、前記出力信号に応じて容量素子を充放電することにより第2のインピーダンスを発生するとともに、前記基準電流を用いて前記第2のインピーダンスに応じた電圧を発生するように構成されている。前記電圧差検出回路は、前記第2のスイッチトキャパシタ回路及び前記電圧制御発振回路に電気的に接続され、前記第2のインピーダンスに応じた電圧と入力された第2の参照電圧との差分に応じて前記制御電圧を発生するように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発振回路における消費電力及び位相雑音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る発振回路の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の制御回路により実行される、水晶振動子の温度特性に応じた電圧制御について説明するための図である。
【
図3】
図3は、
図1の周波数同期回路の位相雑音特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、周波数同期回路及び当該周波数同期回路を搭載する発振回路の実施形態について詳細に説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作を行うものとして、重複する説明は適宜省略する。なお、以下の実施形態において、「接続」とは、「電気的な接続」を意味するものとする。
【0010】
図1は、実施形態に係る発振回路1の構成の一例を示す図である。実施形態に係る発振回路1は、
図1に示すように、基準発振回路3及び周波数同期回路5を有する。
【0011】
基準発振回路3は、水晶発振回路31及び温度センサ内蔵型水晶振動子を有する。温度センサ内蔵型水晶振動子は、水晶振動子32、温度センサ33及び基板34を有する。温度センサ内蔵型水晶振動子において、水晶振動子32及び温度センサ33は、同一の基板34上に実装されている。換言すれば、温度センサは、水晶振動子32と同一基板34上に形成されている。つまり、温度センサ33は、基板34を介して水晶振動子32又はその周囲の温度を計測可能に構成されている。温度センサ33としては、熱電対やサーミスタなど、任意の温度センサが適宜利用可能である。
【0012】
基準発振回路3は、固定レベルのバイアス電圧(例えば、電源電圧VDD)が供給され、バイアス電圧に応じて発振動作を行い、基準周波数FREFの信号(周期信号)を生成するように構成されている。具体的には、水晶発振回路31は、水晶振動子32に接続され、固定レベルのバイアス電圧を用いて水晶振動子32を発振させ、水晶振動子32の発振動作により基準周波数FREFの信号を生成するように構成されている。なお、基準発振回路3は、基準周波数FREFの信号を生成できればよく、好ましくは水晶振動子の発振を用いる発振回路であるが、他の発振回路であってもよい。その場合、当該他の発振回路からの出力周波数の温度依存性に応じて参照電圧VREF1及び参照電圧VREF2の電圧値が制御されればよい。
【0013】
基準発振回路3において、水晶発振回路31の出力ノード31bは、制御回路51のクロックノード51cと、第1の分周回路52の入力ノード52aとのそれぞれに接続される。基準発振回路3は、制御回路51及び第1の分周回路52のそれぞれに生成された基準周波数FREFの信号を供給するように構成されている。
【0014】
周波数同期回路5は、制御回路51、第1の分周回路52、第1のスイッチトキャパシタ回路53、電流源54、第2の分周回路55、第2のスイッチトキャパシタ回路56、電圧差検出回路57及び電圧制御発振回路(VCO)58を有する。
【0015】
制御回路51は、基準発振回路3と、電流源54と、電圧差検出回路57とのそれぞれに接続される。制御回路51は、入力ノード51aが温度センサ33に接続され、一対の出力ノード51bの一方が電流源54の制御ノード54cに接続され、一対の出力ノード51bの他方が電圧差検出回路57の制御ノード57cに接続され、クロックノード51cが水晶発振回路31の出力ノード31b及び第1の分周回路52の入力ノード52aに接続される。制御回路51は、温度センサ33からの信号と、基準周波数FREFの信号と、水晶振動子32の周波数温度特性とに基づいて、参照電圧VREF1及び参照電圧VREF2の電圧値を制御するように構成されている。
【0016】
第1の分周回路52は、基準発振回路3及び第1のスイッチトキャパシタ回路53の間に接続される。第1の分周回路52の一対の出力ノード52bは、一方が第1のスイッチトキャパシタ回路53のスイッチ533の制御端に接続され、他方がスイッチ534の制御端に接続される。第1の分周回路52は、基準発振回路3で生成された基準周波数FREFの信号を2分周し、各スイッチ533,534が相補的にオン・オフするように、分周された信号を各スイッチ533,534へ供給するように構成されている。つまり、第1の分周回路52は、基準発振回路3において発振出力された基準周波数FREFの信号のデューティー比を50:50に整形して第1のスイッチトキャパシタ回路53に供給するように構成されている。
【0017】
以下の説明では、基準周波数FREFの信号を基準周期信号と記載し、分周された基準周波数FREFの信号、すなわち周波数FREF/2の信号を分周基準信号と記載する場合もある。
【0018】
第1のスイッチトキャパシタ回路53は、第1の分周回路52と電流源54との間に接続される。第1のスイッチトキャパシタ回路53は、スイッチと容量素子とを組み合わせることで抵抗器のように電流又は電圧を制限するように構成された回路である。第1のスイッチトキャパシタ回路53は、第1の分周回路52からの分周基準信号に応じて容量素子を充放電させることで、分周基準信号に応じた第1のインピーダンスを発生するように構成されている。つまり、第1のスイッチトキャパシタ回路53は、入力された分周基準信号の周波数FREF/2を第1のインピーダンスに変換する周波数-インピーダンス変換回路の一例である。ここで、第1のスイッチトキャパシタ回路53は、第1の分周回路52を介して水晶発振回路31の出力ノード31bに接続される。このことから、第1のスイッチトキャパシタ回路53は、基準周期信号に応じて容量素子を充放電することにより第1のインピーダンスを発生するように構成されていると表現できる。
【0019】
具体的には、第1のスイッチトキャパシタ回路53は、
図1に示すように、容量素子531,532及びスイッチ533,534を有する。スイッチ533,534は、電源電位VDD及び電流源54の入力ノード54aの間に直列に接続される。スイッチ533のスイッチ534とは反対側の一端は、電源電位VDDに接続される。スイッチ534のスイッチ533とは反対側の一端は、第1のスイッチトキャパシタ回路53の出力ノード53bを介して、電流源54の入力ノード54aに接続される。容量素子531は、一端が電源電位VDDに接続され、他端がスイッチ533,534の間のノード535に接続される。つまり、容量素子531は、スイッチ533に並列に電源電位VDD及びノード535の間に接続される。容量素子532は、一端が電源電位VDDに接続され、他端が出力ノード53bに接続される。つまり、容量素子532は、スイッチ533,534に並列に電源電位VDD及び出力ノード53bの間に接続される。
【0020】
電流源54は、第1のスイッチトキャパシタ回路53及び電圧差検出回路57の間に接続される。電流源54は、入力ノード54aが第1のスイッチトキャパシタ回路53の出力ノード53bに接続され、出力ノード54bが電圧差検出回路57の入力ノード57a及び第2のスイッチトキャパシタ回路56の出力ノード56bに接続され、制御ノード54cが制御回路51の出力ノード51bに接続されている。具体的には、電流源54は、制御回路51から入力された参照電圧VREF1を用いて、第1のインピーダンスに応じた電流、すなわち基準周波数FREFに応じた電流IREF2を発生するように構成される。電流源54は、電流IREF2を電圧差検出回路57の入力ノード57aに供給する。ここで、参照電圧VREF1は、第1の参照電圧の一例である。また、電流IREF2は、基準電流の一例である。
【0021】
一例として、電流源54は、
図1に示すように、トランジスタ541及び差動増幅回路542を有する。トランジスタ541は、入力ノード54aと出力ノード54bとの間に接続される。トランジスタ541は、例えばNMOSトランジスタであり、ソースが出力ノード54bに接続され、ドレインが入力ノード54aに接続され、ゲートが差動増幅回路542の出力端子に接続される。差動増幅回路542は、非反転入力端子(+)が入力ノード54aに接続され、反転入力端子(-)が制御回路51の出力ノード51bに接続される。差動増幅回路542の反転入力端子(-)には、制御回路51の出力ノード51bからの参照電圧VREF1が供給される。
【0022】
第2の分周回路55は、第2のスイッチトキャパシタ回路56及び電圧制御発振回路58の間に接続される。第2の分周回路55の一対の出力ノード55bは、一方が第2のスイッチトキャパシタ回路56のスイッチ563の制御端に接続され、他方がスイッチ564の制御端に接続される。第2の分周回路55は、電圧制御発振回路58で生成された出力周波数FOUTの信号を2分周し、各スイッチ563,564が相補的にオン・オフするように、分周された信号を各スイッチ563,564へ供給するように構成されている。つまり、第2の分周回路55は、電圧制御発振回路58において発振出力された出力周波数FOUTの信号のデューティー比を50:50に整形して第2のスイッチトキャパシタ回路56に供給するように構成されている。
【0023】
以下の説明では、出力周波数FOUTの信号を出力信号と記載し、分周された出力周波数FOUTの信号、すなわち周波数FOUT/2の信号を分周出力信号と記載する場合もある。
【0024】
第2のスイッチトキャパシタ回路56は、第2の分周回路55と電圧差検出回路57との間に接続される。また、第2のスイッチトキャパシタ回路56は、第1のスイッチトキャパシタ回路にカスコード接続される。第2のスイッチトキャパシタ回路56は、スイッチと容量素子とを組み合わせることで抵抗器のように電流又は電圧を制限するように構成された回路である。第2のスイッチトキャパシタ回路56は、第2の分周回路55からの分周出力信号に応じて容量素子を充放電させることで、分周出力信号に応じた第2のインピーダンスを発生するように構成されている。つまり、第2のスイッチトキャパシタ回路56は、入力された分周出力信号の周波数FOUT/2を第2のインピーダンスに変換する周波数-インピーダンス変換回路の一例である。ここで、第2のスイッチトキャパシタ回路56は、第2の分周回路55を介して電圧制御発振回路58の出力ノード58bに接続される。このことから、第2のスイッチトキャパシタ回路56は、出力信号に応じて容量素子を充放電することにより第2のインピーダンスを発生するように構成されていると表現できる。
【0025】
具体的には、第2のスイッチトキャパシタ回路56は、
図1に示すように、容量素子561,562及びスイッチ563,564を有する。スイッチ563,564は、電圧差検出回路57の出力ノード57b及び電源電位VSSの間に直列に接続される。スイッチ563のスイッチ564とは反対側の一端は、第2のスイッチトキャパシタ回路56の出力ノード56bを介して、電圧差検出回路57の出力ノード57bに接続される。スイッチ564のスイッチ563とは反対側の一端は、電源電位VSSに接続される。容量素子561は、一端がスイッチ563,564の間のノード565に接続され、他端が電源電位VSSに接続される。つまり、容量素子561は、スイッチ564に並列にノード565及び電源電位VSSの間に接続される。容量素子562は、一端が出力ノード56bに接続され、他端が電源電位VSSに接続される。つまり、容量素子562は、スイッチ563,564に並列に出力ノード56b及び電源電位VSSの間に接続される。
【0026】
電圧差検出回路57は、電流源54及び第2のスイッチトキャパシタ回路56の間に接続される。また、電圧差検出回路57は、第2のスイッチトキャパシタ回路56及び電圧制御発振回路58の間に接続される。電圧差検出回路57は、入力ノード57aが出力ノード57b及び電流源54の出力ノード54bに接続され、出力ノード57bが第2のスイッチトキャパシタ回路56の出力ノード56bに接続され、制御ノード57cが制御回路51の出力ノード51bに接続され、出力ノード57dが電圧制御発振回路58の入力ノード58aに接続される。電圧差検出回路57は、制御ノード57cで参照電圧VREF2を受け、出力ノード57bで電流源54及び第2のスイッチトキャパシタ回路56により電圧VREF_Rを生成する。つまり、電圧差検出回路57は、第2のインピーダンスに応じた電圧VREF_Rと参照電圧VREF2との差分に応じて制御電圧VCを発生するように構成されている。具体的には、電圧差検出回路57は、参照電圧VREF2及び電圧VREF_Rの差分が小さくなるように制御するための制御電圧VCを生成し、出力ノード57dから出力する。ここで、参照電圧VREF2は、第2の参照電圧の一例である。
【0027】
一例として、電圧差検出回路57は、
図1に示すように、差動増幅回路572を有する。差動増幅回路572は、非反転入力端子(+)が制御ノード57cに接続され、反転入力端子(-)が入力ノード57a及び出力ノード57bに接続され、出力端子が出力ノード57dに接続される。差動増幅回路572は、参照電圧VREF2及び電圧VREF_Rの差分に応じた制御電圧VCを生成する。
【0028】
電圧制御発振回路58は、電圧差検出回路57及び第2の分周回路55の間に接続される。電圧制御発振回路58は、入力ノード58aが電圧差検出回路57の出力ノード57dに接続され、出力ノード58bが第2の分周回路55の入力ノード55aに接続される。電圧制御発振回路58は、電圧差検出回路57からの制御電圧VCに応じた出力周波数FOUTを有する出力信号を出力可能に構成される。具体的には、電圧制御発振回路58は、制御電圧VCに応じて発振動作を行い、制御電圧VCに応じた周波数FOUTの出力信号を生成する。
【0029】
発振回路1の出力ノードは、電圧制御発振回路58の出力ノード58b及び第2の分周回路55の入力ノード55aの間に接続される。
【0030】
ここで、実施形態に係る発振回路1の動作例について説明する。
【0031】
基準発振回路3は、例えば、電源電圧VDDに応じた発振動作により基準周波数FREFの基準周期信号を生成し、第1の分周回路52に供給する。第1の分周回路52は、基準発振回路3からの基準周期信号を2分周し、周波数FREF/2の分周基準信号を第1のスイッチトキャパシタ回路53の各スイッチ533,534へ供給する。
【0032】
第1のスイッチトキャパシタ回路53では、スイッチ533,534が、分周基準信号のレベルに応じて相補的にオン・オフする。これにより、容量素子531が充放電される。例えばスイッチ533がオン状態、かつ、スイッチ534がオフ状態のとき、容量素子531の電荷(電子)が電源電位VDDに排出され、容量素子531が放電される。例えばスイッチ533がオフ状態、かつ、スイッチ534がオン状態のとき、電流源54の入力ノード54aを流れる電流IREF1に応じた電荷(電子)が容量素子531に蓄積され、容量素子531が充電される。このとき、容量素子532は、分周基準信号のレベルに関わらず、電流源54の入力ノード54aを流れる電流IREF1に応じた電荷を蓄積した状態を維持している。
【0033】
すなわち、第1のスイッチトキャパシタ回路53は、基準周波数FREFに基づく周波数FREF/2を有する分周基準信号によって容量素子531に対して周期的に充電と放電とを繰り返すことで、等価的に分周基準信号の周波数FREF/2に対応する第1のインピーダンスを発生できる。このとき、第1のスイッチトキャパシタ回路53の出力ノード53bの電圧VREF_Sは、容量素子531の充電時において、時定数的に変化するが、電荷の蓄積を維持する容量素子532によって平均化されながら安定点に収束する。安定点における出力ノード53b(入力ノード54a)の電圧VREF_Sは、電流源54により参照電圧VREF1に等しくなるように制御される。具体的には、トランジスタ541及び差動増幅回路542により形成されるフィードバックループにおいて、差動増幅回路542は、電圧VREF_Sが参照電圧VREF1に等しくなるようにトランジスタ541のゲート電圧を制御する。
【0034】
このため、安定点における電流源54の出力ノード54bでは、VREF1に応じた電流IREF2が発生される。また、電流IREF2は、電流IREF1に等しく、第1のスイッチトキャパシタ回路53で発生する第1のインピーダンスに依存し、分周基準信号に対応している。
【0035】
第2の分周回路55は、電圧制御発振回路58からの出力周波数FOUTの出力信号を2分周し、周波数FOUT/2の分周出力信号を第2のスイッチトキャパシタ回路56の各スイッチ563,564へ供給する。
【0036】
第2のスイッチトキャパシタ回路56では、スイッチ563,564が、分周出力信号のレベルに応じて相補的にオン・オフする。これにより、容量素子561が充放電される。例えばスイッチ564がオン状態、かつ、スイッチ563がオフ状態のとき、容量素子561の電荷(電子)が電源電位VSSに排出され、容量素子561が放電される。例えばスイッチ564がオフ状態、かつ、スイッチ563がオン状態のとき、電流源54によりVREF1に応じて発生された電流IREF2に応じた電荷(電子)が容量素子561に蓄積され、容量素子561が充電される。このとき、容量素子562は、分周出力信号のレベルに関わらず、電流IREF2に応じた電荷を蓄積した状態を維持している。
【0037】
すなわち、第2のスイッチトキャパシタ回路56は、出力周波数FOUTに基づく周波数FOUT/2を有する分周出力信号によって容量素子561に対して周期的に充電と放電とを繰り返すことで、等価的に分周出力信号の周波数FOUT/2に対応する第2のインピーダンスを発生できる。ここで、第2のスイッチトキャパシタ回路56は、電流IREF2を用いて第2のインピーダンスに応じた電圧VREF_Rを発生するように構成されている。このとき、第2のスイッチトキャパシタ回路56の出力ノード56bの電圧VREF_Rは、容量素子561の充電時において、時定数的に変化するが、電荷の蓄積を維持する容量素子562によって平均化されながら安定点に収束する。安定点における出力ノード56b(出力ノード57b)の電圧VREF_Rは、電圧差検出回路57により参照電圧VREF2に等しくなるように制御される。具体的には、差動増幅回路572は、電圧VREF_Rが参照電圧VREF2に等しくなるように、制御電圧VCを生成する。
【0038】
また、周波数同期回路5において、第2の分周回路55、第2のスイッチトキャパシタ回路56、電圧差検出回路57及び電圧制御発振回路58は、周波数帰還回路(フィードバックループ)を形成している。周波数帰還回路は、基準周波数FREFに周波数同期された出力周波数FOUTの出力信号を発生するように構成されている。つまり、電圧差検出回路57→電圧制御発振回路58→第2の分周回路55→第2のスイッチトキャパシタ回路56→電圧差検出回路57の周波数帰還回路を用いて、電圧差検出回路57は、電圧VREF_Rが参照電圧VREF2に等しくなるように、制御電圧VCをフィードバック制御する。
【0039】
このため、安定点における電圧差検出回路57の出力ノード57bでは、電圧VREF_Rは、参照電圧VREF2に等しく、第2のスイッチトキャパシタ回路56で発生する第2のインピーダンス及び電流IREF2に依存し、分周出力信号に対応している。このようにして、分周出力信号の周波数FOUT/2は、分周基準信号の周波数FREF/2に同期される。つまり、出力周波数FOUTは、基準周波数FREFに同期される。
【0040】
電圧制御発振回路58は、電圧差検出回路57からの制御電圧VCに応じた発振動作により周波数FOUTの出力信号を生成し、第2の分周回路55及び発振回路1の出力ノードに供給する。つまり、安定点における発振回路1の出力ノードには、基準周波数FREFに同期された出力周波数FOUTの出力信号が供給される。
【0041】
このように、実施形態に係る周波数同期回路5は、参照電圧VREF1,VREF2を用いて、基準発振回路3で発振した周波数FREFと同じ周波数になるように形成された周波数帰還回路を有する。
【0042】
また、水晶振動子は、その切断方位に応じた周波数温度特性を有することが知られている。
図2は、
図1の制御回路51により実行される、水晶振動子32の周波数温度特性に応じた電圧制御について説明するための図である。
図2は、切断方位Aの水晶振動子の周波数温度特性(実線)と、切断方位Bの水晶振動子の周波数温度特性(破線)とを例示する。
【0043】
このため、実施形態に係る発振回路1の出力周波数FOUTは、以下の関係式で表されるように、水晶振動子32の周波数温度特性に応じた補正値(Fx)を用いて、参照電圧VREF1,VREF2と、基準周波数FREFとの関数として表現することができる。
【0044】
【0045】
ここで、水晶振動子32の周波数温度特性に応じた補正値(Fx)は、
図2に例示するように、例えば、周波数温度特性の周波数軸の正負を反転させた値である。
【0046】
なお、上記の関係式では、第1のスイッチトキャパシタ回路53の容量素子531と、第2のスイッチトキャパシタ回路56の容量素子561とは、容量値が等しいとする。また、第1のスイッチトキャパシタ回路53の容量素子532と、第2のスイッチトキャパシタ回路56の容量素子562とは、容量値が等しいとする。
【0047】
制御回路51は、参照電圧VREF2に対する参照電圧VREF1を示す電圧比VREF1/VREF2を水晶振動子32の周波数温度特性に反比例させる。具体的には、制御回路51は、VREF1/VREF2をα/ΔVとしたとき、ΔVが∂Fx/∂Tとなるように参照電圧VREF1,VREF2を制御し、基準周波数FREFの温度特性をキャンセルする。ここで、係数αは、基準周波数FREFに対する出力周波数FOUTの増幅率(減衰率)を示す。一例として、係数αは、水晶振動子32の切断方位に応じて規定される。制御回路51は、電圧比VREF1/VREF2に予め定められた係数αを乗じた値を用いて、参照電圧VREF1,VREF2の電圧値を制御する。
【0048】
具体的には、制御回路51は、基準発振回路3において水晶振動子32と同一基板上に設けられている温度センサ33からの信号を取得し、水晶振動子32の温度xに応じた補正値(Fx)を、内部のROM(Read Only Memory)等のメモリに格納されたテーブル又は関係式を用いて取得する。これにより、制御回路51は、水晶振動子32の温度xに応じたα/ΔVに基づいてVREF1/VREF2の比を決定し、当該比を満たす参照電圧VREF1,VREF2を出力する。
【0049】
なお、制御回路51の内部のメモリには、温度センサ33からの信号レベル又は水晶振動子32の温度xと、参照電圧VREF1,VREF2又はVREF1/VREF2と、の対応を示すテーブル又は関係式が格納されていてもよい。この場合、制御回路51は、温度センサ33からの信号レベル又は水晶振動子32の温度xに応じた参照電圧VREF1,VREF2を読み出したり、温度センサ33からの信号レベル又は水晶振動子32の温度xに応じたVREF1/VREF2を読み出して当該比を満たす参照電圧VREF1,VREF2を決定したりすればよい。
【0050】
従来、水晶振動子を発振させることにより所望の出力周波数を得る発振回路として、恒温槽型水晶発振回路(Oven Controlled crystal Oscillator:OCXO)や電圧制御水晶発振回路(Voltage-Controlled Crystal Oscillator:VCXO)が知られている。
【0051】
一般に、水晶振動子からの出力周波数には温度依存性がある。しかしながら、OCXOにおいては、恒温槽を用いて水晶振動子の温度を保つことにより出力周波数の変化を抑制する。このため、OCXOでは、ヒーターが必要になり他の発振回路と比較して消費電力が大きいという問題があった。
【0052】
VCXOにおいては、制御電圧の入力に応じた周波数を出力可能であるため、制御電圧を高精度に制御することで恒温槽を用いることなく温度安定性を向上し、OCXOより消費電力を低減することができる。一方、VCXOにおいては、バリキャップダイオード(可変容量素子)の素子Q(Quality Factor)が低いことに起因して、他の水晶発振回路と比較して位相雑音が大きいという問題があった。
【0053】
このような中、実施形態に係る発振回路1において周波数同期回路5は、周波数帰還回路を有する。当該周波数帰還回路は、第2のスイッチトキャパシタ回路56で周波数を電圧比較し、その負帰還により基準周波数FREFに周波数同期された出力周波数FOUTの出力信号を発生するように構成されている。
【0054】
図3は、
図1の周波数同期回路5の位相雑音特性の一例を示す図である。
図3のグラフにおいて、縦軸及び横軸は、それぞれ、位相雑音[dB]及び周波数のオフセット[Hz]を示す。
【0055】
この構成によれば、バリキャップダイオードを使用せずにVCXOを実現することができるため、Q値を向上し、位相雑音をFOUT=FREFに近づけ、
図3の特性曲線の積分値で表現される位相雑音を改善することができる。つまり、
図3に例示するように、バリキャップダイオードを使用するVCXOと比較して低位相雑音化を実現することができる。
【0056】
また、実施形態に係る発振回路1において第1の分周回路52及び第2の分周回路55は、それぞれ、基準周波数FREFの基準周期信号及び出力周波数FOUTの出力信号のデューティー比を50:50に整形するように構成されている。この構成によれば、基準周波数FREF及び出力周波数FOUTが高い場合であっても、第1のスイッチトキャパシタ回路53及び第2のスイッチトキャパシタ回路56における容量素子の充放電を適切に行うことができる。
【0057】
また、実施形態に係る発振回路1において制御回路51は、電圧比VREF1/VREF2を水晶振動子32の周波数温度特性に反比例させるように構成されている。この構成によれば、シンプルパッケージ水晶発振器(Simple Packaged Crystal Oscillator:SPXO)と同様にして高精度な基準周波数FREFの基準周期信号を生成しつつ、SPXOの温度特性を参照電圧VREF1,VREF2の制御によりキャンセルさせることができる。このように、実施形態に係る発振回路1は、出力周波数OUTが参照電圧VREF1,VREF2の関数として表される回路構成を有するため、ヒータレスでOCXOと同様の温度安定性を実現することができる。
【0058】
また、実施形態に係る発振回路1において制御回路51は、水晶振動子32の切断方位などに応じて予め定められた係数αを電圧比VREF1/VREF2に乗じた値を用いて、参照電圧VREF1,VREF2の各電圧値を制御するように構成されている。この構成によれば、係数αを高分解能で制御することにより、出力周波数FOUTを微調整することができる。
【0059】
なお、係数αは、出力周波数の調整パラメータとして使用可能である。このため、実施形態に係る発振回路1によれば、水晶振動子32自体のトリミングを不要とすることもできる。
【0060】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、発振回路における消費電力及び位相雑音を抑制することができる。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
1 発振回路
3 基準発振回路
31 水晶発振回路
32 水晶振動子
33 温度センサ
34 基板
5 周波数同期回路
51 制御回路
52 第1の分周回路
53 第1のスイッチトキャパシタ回路
54 電流源
55 第2の分周回路
56 第2のスイッチトキャパシタ回路
57 電圧差検出回路
58 電圧制御発振回路